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ディープスペースナイン エピソードガイド
第12話「エイリアン殺人事件」
Vortex

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・イントロダクション
異星人船が停泊している DS9。
クワークの店をオドーが見回っている。
クワーク:「いつものかい、オドー?」
オドー:「何もいらん。」
「いつもの答えだ。客がみんなあんたみたいだったら、俺は路頭に迷うところだよ。」
「いやあ、そいつはどうだろうな。ミラドーン※1の武装海賊船がいれば商売の相手には事欠かないんじゃないか?」
「武装海賊船? それじゃミラドーンの船がドック入りしてるのか?」
「ああ、武装船がな。」
「ミラドーン人は俺と同じで悪い評判が先に立っちまってるんだ。どっちにしろ、俺はミラドーン人に知り合いはいねえ。」
「船がドック入りするといつも乗組員をバーに招待するのに、今回はしないのか。」
「奴らはトラブルメーカーでな。触らぬ神に祟りなしって言うだろ?」
「あいつはいつも私と目が合うと視線をそらす。」
「誰だい。」
「あそこで飲んでる、クリンゴン人たちがガンマ宇宙域から連れてきた奴だ。」
異星人の男がいる。
クワーク:「クローデン※2か? 奴は心配ねえ。」
オドー:「そうかねえ、何でそう言い切れるんだ。奴を知ってるのか。」
「…飲みに来た時いろいろ話を聞いたんだよ。」
「到着して司令官に会いに来た時はえらく無口だったがな。」
「当たり前だろ? 宇宙艦隊の士官がズラッと並んで迎えに出たんだぜ、俺だってビビっちまうよ。初めて会う奴を歓迎する時は、もっとほかにやり方があるってもんだ!」
「そうか、奴はビビったのか。」
「決まってらあ。」
「それじゃ何かビビる理由でもあるのか。」
ドアが開いた。同じ姿をした 2人の異星人が入ってくる。
一人がクワークに向かってうなずく。歩いていった。モーンは店にいる。
オドー:「どういうことだ。今のミラドーン人の双子は、明らかにお前に会釈したように見えたぞ?」
笑うクワーク。「そりゃ俺がここの支配人だからさ。きっと今の二人はホロスイートを使いたいんだろうよ。他人を見るたんびそうやって、疑ってかかるのはやめた方がいいぜ? 猜疑心が強いのはあんたら種族の特徴かもな! だからいつまでも仲間の流動体生物に巡り会えねえんだよ。みんな隠れてんだ! とにかく客のあら探しをするのはやめてもらいたいねえ。飲み物を頼むとか、ゲームをするとかしろよ? でなきゃとっとと出てってくれ!」 カウンター内のロム※3に言う。「ロム、特製のやつ運んでこい。」
声を上げ、クワークは女性たちの間を抜けてホロスイートへ向かった。
クローデンが出ていく。
4つのグラスを用意していくロムを、オドーは見ていた。
瓶を置き、5つのグラスと共に運ぶロム。


※1: Miradorn

※2: Croden
(クリフ・デヤング Cliff DeYoung) 声:中村秀利

※3: Rom
(マックス・グローデンチック Max Grodenchik) 前話 "The Nagus" 「宇宙商人フェレンギ星人」に引き続き登場。声:山崎たくみ

・本編
ロムがやってきた。
話しているミラドーン人。「ラチナムの延べ棒、しめて 1,000本でどうだ。嫌ならこの話は終わりだ。」
クワークは台に置かれた品物を凝視している。「…ああ。結構なお話だ。」 笑う。「でも残念だが…一つ問題がある。」
ミラドーン人のロー・ケル※4。「問題?」
ロム:「お飲みになります?」 ロー・ケルに払いのけられる。
もう一人の双子、アー・ケル※5。「どんな問題だ。」
クワーク:「買い手が注文を撤回してねえ。」
ロー・ケル:「買い手はお前が保証するはずだ。」
「品物の確かさにちょいと怪しいところがあってねえ? …ここから 2光年離れた場所で、ヴァノベンの輸送船※6が襲われてこれと似たようなのが盗まれた。もし保証書があれば…」
取り上げるロー・ケル。「この前の話じゃ、保証書がいるなんて一言も言ってなかっただろ! 買い手が引いたんなら、別の買い手を見つけてこい。」
クワーク:「保証書なしでも OK の買い手を?」
うなずくロー・ケル。
クワーク:「すぐには見つからんよ。」
アー・ケル:「こっちもそう長く待つわけにはいかん。」
クローデンがやってきた。手には銃を持っている。「動かないで、動かないで下さいよ。いいですね。」
ロー・ケル:「…これはどういうことだ。」
クワーク:「…おい、撃つなよ。要求は何だ?」
クローデン:「危害を加えるつもりはありません。それを、渡して下さい。」
アー・ケル:「誰だか知らんがこんなことをしてただでは済まんぞ。」
「お願いです、おとなしく渡して下されば何もしません。さあ、それをこちらへ。」
手を伸ばすロー・ケル。だがその隙を突き、アー・ケルがテーブル台でクローデンに殴りかかった。
飛んだグラスが割れる。床に飛び散った破片は、液状化して一つにまとまっていく。
銃を撃つロー・ケル。おびえ、隠れるクワークとロム。
クローデンは避け、反撃した。
倒れるロー・ケル。
クローデンはアー・ケルも撃とうとしたが、オドーに取り押さえられた。
ロー・ケルに近づくアー・ケル。
オドー:「保安チーム、至急ホロスイート1 へ。」
クワーク:「オドーの奴グラスに化けてたんだ!」
アー・ケル:「…駄目だ、死んでる。兄のかたきだ!」
飛びかかろうとするアー・ケルを、オドーは殴り倒した。
到着した保安部員にクローデンを引き渡すオドー。「保安部へ連れて行くんだ。」
クワーク:「頼むよ、さっさと連れてっちまってくれや。あんたがいてくれて助かったよ、オドー。」
「全員連れて行くんだ、さあ行け! 早くしろ!」
到着したベシアがロー・ケルをトリコーダーで調べるが、首を振った。

保安室。
アー・ケル:「ミラドーン人※7のことを御存知か、シスコ司令官。」
シスコ:「いや、今まで会ったことがないので。」
「我が一族では、双子はただの双子ではない。我々は、二人揃って一人なのだ。…二つに分かれた一つの存在ともいえる。だから今は不完全なのだ。」 クワークとロムも部屋にいる。
オドー:「しかし盗んだ物を売りつけようとした君たちにもこうなった責任はある。」
「盗んだんじゃない!」
「これを運んでいた輸送船では盗まれる時 2人死んでいるんだ!」
「私と兄はこれをアルトラ※8の貿易商から買ったのだ!」
「ならその貿易商の名前を言ってみろ!」
「兄を殺された私がなぜ責められるのだ!」
「証拠がなければ…」
シスコ:「自分の船に戻って待機してもらいたい。…今回はお気の毒でした。しかし尋問もありますのでステーションからは出ないでいただきたい。」
アー・ケル:「兄を殺した男と直に話をつけさせてもらいたい。」
「裁きは法に任せて下さい。」
「…ああ…。これからの私の人生の目的はただ一つ。…兄を殺した男の死を見届けることだ。」 ふらつきながら出ていくアー・ケル。
クワーク:「だから、ミラドーン人はトラブルメーカーだって言ったろ? もう俺たちは行ってもいいかな?」
シスコ:「クワークたちを拘留しておく理由はあるのかね?」
「オドーも喜んで証言してくれるでしょうけど? 私も奴らに盗品は扱えないって断った。そこへ、クローデンがね?」
オドー:「ああ…不思議なことに、その通りなんです。」
「帰らせてもらうよ?」
「もう一つ不思議なことがありましてね。あのクローデンって男、なぜかフェレンギのフェイザーガンを持ってたんだ。」
「…フェイザーガンぐらいどこでも買える。」
「しかも、クローデンはミラドーン人がクワークに何か売りつけるってことを知ってたわけだ。こいつも不思議ですよね?」
ロム:「何だってあんたは、クワーク兄貴がこの事件の黒幕みたいな言い方をするんだよ!」
「そいつは面白い仮説だな、ロム?」
クワークはロムに言う。「そんな噂がミラドーン人に知れたら、俺の命はないも同然だぞ、馬鹿野郎! オドー、何の証拠もない噂は流さないようにしてくれよな? 頼んだぜえ?」
出ていくクワーク。ロムも続く。
ロムに怒るクワーク。「余計なこと言うんじゃねえ、このタコ!」

独房で横になっているクローデン。ペンダントを見ている。
近づくシスコとオドー。
クローデン:「囚人には食事は出ないんですか?」
オドー:「ハ、人一人殺しておいてよく食欲があるもんだな。」
「やらなければやられていました。正当防衛ですよ、先に撃ったのはあっちだ。」
シスコ:「それよりこれからどういう展開になるのかよく聞いておいてくれ。君が無罪か有罪かは裁判で決まることになる。弁護人は我々が用意してもいいし、君が同族の者を頼んでもいい。」
「ああ…頼んでもラカー星※9からは、誰も来ないでしょうよ。」
「なぜだ。ラカーでは殺人は重罪とは見なされていないのか。」
「ラカーでは、いかなる犯罪も重罪です。裁判というものがないだけで。」
「君たちとの初めての遭遇が、このような事態になって私も非常に残念だ。」
「私のせいでこうなったのならすいません。でも、選択の余地がなかった。」
「それはなぜだ。」
「私の能力では、あれしかやりようがなかったんです。…もしも、彼のような能力があれば…もっと楽に事が運べたでしょう。」 オドーを見るクローデン。「彼のような可変種※10は初めてだ。あれほど変化するとは。」
オドー:「何だって。」
「あなたは可変種なんでしょ?」
「…じゃガンマ宇宙域には、私のような流動体生物がいるのか。」
「まだワームホールから現れていませんか? 私はてっきり…」
「嘘だ! 私とクワークの話を聞いてでっち上げたんだな?」
「そりゃ…ハ…信じられない話だというのはわかるが、『嘘つき』呼ばわりは心外だ。まあ可変種は非常にモラルに厳しいそうですがね。食事を頼みます。そのお返しに、あなたと同じような種族に会った時のことを、話してあげてもいい。」


※4: Ro-Kel
名前は言及されていません

※5: Ah-Kel
(ランディ・オグルスビー Randy Oglesby TNG第31話 "Loud as a Whisper" 「無言の調停者」の学者 (Scholar)、DS9第109話 "The Darkness and the Light" 「一人、また一人、そして…」のシララン・プリン (Silaran Prin)、VOY第104話 "Counterpoint" 「偽りの亡命者」のキア (Kir)、ENT第5話 "Unexpected" 「予期せぬ亡命者」のトレナル (Trena'L)、第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」などの Degra 役) 当然ロー・ケルも同じ俳優が演じています。声:大川透、DS9 ガラックなど

※6: Vanoben transport

※7: 吹き替えではここだけ「ミラドーン

※8: Altoran

※9: ラカー Rakhar
種族名は Rakhari

※10: changeling

司令官室。
シスコ:「しかし、クローデンの惑星に連絡を取るしかないだろ。」
オブライエン:「初めての遭遇で印象が悪いですよ。」
ダックス:「友好関係を築いていこうという第一歩が殺人だなんて、アカデミーでは教えませんものね?」
キラ:「そんなことないと思うわ?」
シスコ:「じゃあどう思うんだ。」
「きっと感謝されますよ。」
「感謝される?」
「私だったらそうしますね。クローデンはきっといくつも罪を犯している凶悪犯なんですよ。喜んでクローデンを送還してくれって言ってくるわ?」
「どっちにしろ連絡しないとな、ダックス?」
ダックス:「ラカーを見つけるのは簡単でしょう。クローデンはワームホールから 3光年離れたところで、壊れたシャトルに乗ってるところを発見されたそうです。…近くの Mクラスの惑星を当たれば。」
「その通りだな。キラ少佐、あのミラドーン人は、クローデンを狙うだろうから気を付けてくれ。我々の保護下にいる間に殺されたら、まずいからな。」
キラ:「オドーに警備を強化させましょう。」

出発するランナバウト。
ワームホールに入った。

クワークは店にやってきたオドーに尋ねた。「俺が逃げないか見に来たのか?」
オドー:「ハ! お前がいなくなりゃ万々歳だ。…クワーク、あのクローデンは…実に面白い男だな。」
「…おりゃ知らんよ。」
「おかしいな、いろいろと話をしたんじゃなかったのか?」
「…そりゃ言葉のあやってもんだ。あいつが一、二杯飲む間に、ちょっとした世間話をしただけだよ!」
「お前がクローデンと話し込んでたのを見たっていう目撃者は大勢いるんだぞ? モーンが言うにはお前は奴に食事をおごったそうじゃないか。」
こちらを見ているモーンに怒るクワーク。「このおしゃべりめ、余計なことしゃべるな!」
グラスを片づける手つきもおぼつかないクワーク。
オドー:「クローデンと一体何を話し込んでた。」
クワーク:「だからただの世間話だよ!」
「ほう…?」
「クローデンは、独りぼっちで寂しそうだったからさ。おりゃあ…何だか可哀想になってよう。」
「ハ!」
「俺が人に親切にしちゃおかしいのか?」
「親切は何の得にもならんからな。」
「俺が何かいいことをするとすぐにそうやって疑うんだから!」
「お前がいいことをするのは下心がある時だけだ。そうそう、下心といえばだな。噂じゃお前ワームホールを通り抜けられるような小型の船を探してるそうじゃないか。」
「関係ないだろ、それとこれとは…」
「いやあ、関係あるね。お前はクローデンにガンマ宇宙域に帰れるようにしてやるって、例の盗品をミラドーン人から奪う茶番劇に協力させたんだろ?」
「…おい、オドー。声をもうちょい低くしてくれよ。でないと俺がヤバくなっちまう。」
「クローデンは自分のことを何て言ったんだ、教えろ。」
「知らねえよ! 取引以外の話はしてねえ。…後はくだらねえことばかりだ。」
「お前にはくだらなくても私には重要かもしれん。奴は自分の惑星について何か言ってなかったか?」
「いいや?」
「ガンマ宇宙の生命体のことは。」
「…いいや?」
通信が入る。『保安チームよりオドー・チーフ。』
オドー:「何かあったか?」
保安部員:『ミラドーンのアー・ケルが、オフィスを占拠しました。逮捕しましょうか。』
「待ってろ、今行く。」 向かうオドー。
微笑むクワーク。

保安部員が集まっている。
到着するオドー。「自分の船にいろと言われてるはずだ。」
保安室の前に立つアー・ケル。「しかしとても黙って待ってはおれん。あいつは私の片割れである兄を殺したのだからな。あいつを殺すまでは、私はじっとしてはおれんのだ。」 傭兵らしき男たちもいる。
オドー:「勝手なことはしないでもらおう。裁きは法に任せるんだ、もしまたこんなことをしたら、君も拘留するぞ?」
去るアー・ケルたち。オドーは中に入り、拘束室へ向かった。

食事をしているクローデン。
オドー:「ここに来てまだ間もないのにずいぶん友達を作ったようだな。」
クローデン:「あなたには私の気持ちがわかるはずだ。似た者同士ですからね、そうでしょ?」
「君と似たところなど私にあるもんか。」
「私達はここではエイリアンだ。同じ仲間もいないし…いつも孤独を抱えて、独りぼっちで…寂しいもんですよ。私達のような種族は、ガンマ宇宙域にしかいない。…それにしても、可変種ってのはどうしてそう他人の言うことを素直に信じようとしないんですかねえ。不思議だなあ。」
「君がそんなだからだ。ガンマ宇宙域の可変種だって君を信用しないだろうよ。」
笑うクローデン。「ええ、そりゃそうですよ、ラカーには可変種はいませんからね。」
オドー:「でも君はさっき…」
「ん?」
「…いるようなこと言ったじゃないか。」
「勘違いさせたならすいません。ラカーに可変種がいた時代もありましたが、何世紀も前のことでね。」
「彼らはどうなったんだ。」
「迫害を受けてね。…追い出されました。」
ため息をつくオドー。
クローデン:「でも、今でも彼らがいるコロニーもあります。私が訪れたのは、数年前ですが。」
オドー:「機会があれば私をそこへ連れてってくれないか。」
「…ええ、もちろん構いませんよ?」
「でそのコロニーはどこにあるんだ。」
「ああ…いやそれは。…私が御案内します。言葉で言ってもわかりませんから。」
「…教えられないってことは嘘なんだろ? 今度嘘をついたらただじゃおかないからな。」
「またそんな怖い顔をする。…私だって、本当のことを言う時はあるんですよ。」
「そんなこと誰が信じるか。お前は嘘の塊だ。」
オドーが出ていこうとした時、クローデンはペンダントを見せた。
首から外す。
クローデン:「可変種のコロニーで手に入れた物です。」
ふたを開けると、中の紫色の物が変化し、ある形になって固体化した。
しばらくすると元に戻る。ふたを閉めるクローデン。手に持ってオドーに見せる。
オドーはフォースフィールドを解除し、ペンダントを受け取った。



惑星に近づくランナバウト。
ダックス:「軌道に乗りました。」
シスコ:「宇宙チャンネル、オープンだ。」
「オープン。」
「こちら惑星連邦のシャトル、リオグランデ。惑星ラカーとのコンタクトを希望。応答願います。」
返事がない。首を振るダックス。
シスコ:「ラカー人※11が殺人を犯し、こちらで収容しています。名前はクローデンです。」
ダックス:「南半球にシグナルを確認しました。…応答があります。」
「スクリーン、オン。」
ラカー人が映る。『私はネヘリク州※12の総督※13、ハドラン※14だ。クローデンはこちらへ転送していただきたい。』
シスコ:「いや、一緒に連れてきてはいないのです。」
ハドラン:『なぜだ。クローデンは君たちが収容してるんじゃないのか。』
「ええ、宇宙ステーションにおります。私達はワームホールの向こうから来たのです。」
『あの新しい次元ホールなら我々も気づいていたが、しかし君たちの宇宙域と関係をもつつもりはない。』
「そうですか、残念です。もちろんそちらの希望は尊重いたしますが。しかしクローデンの逮捕後、連絡を取り合う必要もある…」
『クローデンはラカーにとっては社会の敵だ。身柄の引き渡しを要求する!』
「彼は我々のステーションで裁判を受ける予定なのです。」
『裁判? クローデンは行方不明の間にこちらでも無数の罪で有罪が確定している。もちろんこちらの判決の方が優先だ。クローデンを引き渡してくれれば、そちらの世界で犯した罪を償うように取り計らおう。』
「しかしそう一方的に言われましても、我々としてはただ…」
『君たちがどういう種族なのか、私は知りたいとすら思わない。お互いのルールに干渉しないのは、どの宇宙でも原則だ。直ちにクローデンを引き渡せ。』
「……では引き渡しましょう。このようなシャトルに乗せて、52時間以内に。」
通信を終えるハドラン。シスコはため息をついた。

DS9。
ペンダントを調べるベシア。「これは何らかの有機物質と、ある種のクリスタルの混合物だな。」
オドー:「それじゃあ、生きてるのか。」 構造図を見る。
「まあそういうこと。有機物と無機物の間の、過渡の段階にある生命体ですね。こういう形態を有する生命体は僕は一人しか知らないな。」
「…私か。」
「ある意味じゃ、この石は…君には遠縁に当たる生命体かもしれない。君の出生の手がかりになるかも。で、これをどこで。」
「…ところがそれを知ってる奴はクワークより信用できない奴でね。困ったもんだよ。」 診療室を出て行くオドー。

クローデンはオドーが入ってきたことに気づいた。「私の石が気に入ったようですね。」
オドー:「どこで見つけた。」
「…教えれば何かしてくれます?」
「それは断る。」
「ああ。ああ…そうか。それは残念だなあ。お互いワームホールの向こうから来た者同士のよしみで、助けてくれるかと思ったのに。」
「いやお前には軽蔑しか感じないね。ものを盗んだり、人を殺したり。根っからの悪党だ。」
「やっぱりね、そういうと思った…」
「『可変種はモラルに厳しい』んでな。何とでも言え。」 出ていこうとするオドー。
「ああ、すいません。」
オドーはフォースフィールドを解除し、ペンダントを返した。
クローデン:「…私の世界には、チャムラの渦※15っていう星雲がありましてね? そこには小惑星がたくさんあるんですが、そこの一つで見つけたんです。…もちろん、案内してあげてもいい。」
オドー:「場所を知ってる者はほかにもいるだろう。」
「いや、チャムラの渦はまだ星図にも載っていないんです。でも私は、ここを隠れ家として使っていましてね。可変種のコロニーも偶然見つけたんです。…案内できるのは私だけです。」

ステーションの構造図を見ていたシスコ。ドアチャイムが鳴る。「入れ。」
オドー:「私をお呼びで。」
「実はクローデンの身柄引き渡しを君に頼もうと思ってね。」
「…でも、裁判を受けるんじゃないですか? ここで。」
「クローデンはラカーでも、お尋ね者らしいんだ。向こうの政府が強硬でね。ベイジョーも引き渡しに同意したよ。」
「でもこのまま返せばミラドーン人が怒るでしょうね?」
「そこが問題だ。出ていく船全部に目を光らせているからな。…で、いつ出発できる。」
「いつでも大丈夫です。」
「ガンマ宇宙域へ向かう、ライジェルの輸送船※16が 1時間後に出る。その船の陰に隠れて出れば、ミラドーン人をやり過ごせるかもしれん。」
「ではすぐにクローデンをシャトルに移します。」
「待て、オドー。ガンマ宇宙域へ出たら、君独りだぞ。ミラドーン人の船は、シャトルよりずっとスピードも速い。恐らく、追跡してくるだろう。しかし我々の方からはもう助けてはやれんぞ。」
「ええ、わかってます。」 司令官室を出ていくオドー。

ランナバウトへ入る、後ろ手に手錠をかけられたクローデン。オドーが座るよう指示する。
操縦席につくオドー。
クローデン:「ついに私と一緒に行く気になったんですね。」
オドー:「違う、ラカーへ行くのさ。」
「…うーん。」

司令室のオブライエン。「司令官。…ライジェル輸送船の発進準備完了。」
シスコ:「オドーに知らせろ。」
DS9 を離れるライジェル船。その下に隠れるように、ランナバウトが近づく。
モニターを見るキラ。「ミラドーンがスキャンの電波を出しています。…シャトルには気づいていないみたいだわ。」
ワームホールへ入るライジェル輸送船とランナバウト。


※11: 吹き替えではここだけ「ラカー人」

※12: Nehelik Province

※13: Exarch

※14: Hadron
(ゴードン・クラップ Gordon Clapp) 声:乃村健次

※15: Chamra Vortex

※16: Rigelian freighter
冒頭から出ている異星人船。TNG第43話 "Samaritan Snare" 「愚かなる欲望」に登場した、パクレド船の再利用?

一隻で航行するランナバウト。
クローデン:「しかしよく生きていけますねえ。仲間が一人もいないところで。……それでいいんですか?」
オドー:「…私には DS9 が我が家だからね?」
「そりゃあ表面は仲良くしてくれてたって、内心はどうだかね。あなたの能力をもってすりゃ、四角い穴にでも丸い穴にでも収まれるでしょうが、無理をしてるのには違いない。私の石と同じ…」
「君がラカーでどんな罪を犯したのかわかってきたぞ。もちろん盗みと殺しのほかにな?」
「それは何です?」
「しゃべりすぎの罪だ。」
笑うクローデン。「そうかもしれませんね。全てはそこから始まったのかも。私がいろいろと聞いて回ったのがいけなかったんだな。…だからきっと、あんなことになったんでしょうよ。」
オドー:「あんなことってそりゃどういうことだ。」
「…あの夜当局が来たことです。…私はその日まで何も知らされていなかった。当局は、じき夜が明けるという時に家に踏み込んできて、私が止める間もなく、妻を 2人とも殺したんです。…ラカーでは、社会の敵と見なされた人物への罰はねえ、その人物の家族を皆殺しにすることなんですよ。私は大した武器を持っていなかった。夕食に食べた鳥をさばいた時に使った、刃渡りの短い肉切り包丁が手元にあっただけでした。…いやあ、あの時は驚きましたよ。警官の首をちょん切るのも、鳥の首をちょん切るのもそう変わらないだなんて、思ってもいなかったですからねえ。しかも、断末魔の悲鳴だって人も鳥も似たような声を出すなんてことはねえ。」
「…そんな滅茶苦茶な話を信じろとでもいうのか。」
「信じたら何か不都合でもあるんですか。」
「いや?」
「…なら信じて下さい、本当ですから。…私をラカーに連れて帰ったら、大歓迎されますよ。それどころか、一躍国民の英雄になるだろうなあ。これをきっかけに外交が樹立できるかもしれませんよ?」
「いい加減に黙らないとラカーに着くまで隔離室に閉じこめるぞ!」
「…すいませんでした。ついつい気がつかなくて。」

異星人船が停泊している、DS9。
アー・ケル:「さっさと吐け!」
クワークの店に駆け込むロム。「でもクローデンなんか俺たちかくまってませんよ…!」
アー・ケル:「奴をどこへやった、クワーク。」
クワーク:「クローデンか、保安部にいるだろ…?」
クワークをラチナムが置いてあるカウンターに押しつけるアー・ケル。「嘘をつくな! 奴はいない。お前が隠したんだろ。最初からお前はクローデンとグルだったんだ。ということは兄の死はお前にも責任があるってことになる。」
クワーク:「そんな、誤解だよ! …全部オドーの計略だ。…わからねえのか? 俺たちを反目させようとしてやがんだよ…」 隠れて見ているロム。
「誰がお前なんぞ信じるか! クローデンはどこにいるんだ。教えなければお前を奴の代わりに殺す。」
「居場所なんか知らねえったら! でも自由にしてくれるなら探してやってもいいぜ?」
離すアー・ケル。
クワーク:「…保安部のチップをくれ。クリアランスレベル4 だ。」 コンピューターのパネルを外す。
たくさんのアイソリニアロッドの中から、必要な物を探すロム。
指を鳴らし、急かすクワーク。ロッドをコンピューターに差し込む。
画面がアー・ケルに見えないように操作するクワーク。「ああ、何だかよくわからねえ…」
アー・ケル:「ならどけ!」 自分で操作する。「コースはちゃんとログエントリーに表示されているじゃないか。クローデンはシャトルでこっから出てったんだ。」 怯えるロムを見る。「いいか、これだけは覚えておけよ。もし今度ごまかそうとすれば、容赦はしないぞ。戻ってきて殺す。」
クワークの首をつかみ、離すアー・ケル。店を出て行く。
ロム:「兄貴…これからどうするつもりなんだよ。アー・ケルはクローデンもオドーも一緒に殺しちまう気でいるみたいだぜ。」
クワーク:「オドーがクローデンを渡せば別だが。」
「それもヤバいよ。そしたら、クローデンの口から俺たちの計画がアー・ケルにバレちまうだろ。もうダメだ、もうおしまいだよ。どっちへ転んでも殺される。」
「ピーピー言うんじゃねえ。オドーのこった、きっと命を賭けてでも…クローデンは渡さねえだろう。」
「ほんとにそう思う?」
「いいからてめえはすっこんでろ! バカ。」

司令官室から出てくるシスコ。「どうした、オブライエン。」
オブライエン:「ミラドーン船が発進の準備中です。」
「少佐。何とかして時間を稼いでくれ。」
キラ:「司令室よりミラドーン船へ。現在位置のまま、発進手順の指示に従って下さい。」
オブライエン:「応答なし、動きも止めません。」
シスコ:「ダックス、オドーがラカーに着くのはいつだ。」
ダックス:「…あと 5時間強かかります。」
キラ:「ミラドーン船へ。あなた方はベイジョー政府の定めた航行法に違反しています。直ちにドッキングリングへ戻って下さい。」
オブライエン:「反動推進エンジンのパワーを上げました。」
シスコ:「スクリーン、オン。」
DS9 を離れたミラドーン武装海賊船※17は、そのままワームホールに入っていくのが見えた。

星雲に近づくランナバウト。
クローデン:「渦の中を通った方が時間が短くて済む。回っていくと大変ですよ。…ああ。…自分の種族のことを知りたいとは思わないんですか?」
オドー:「…もちろん知りたいさ。ただし今は任務の途中だからな? 個人的なことのために寄り道はできないだけの話だ。」
「今では彼らは、人間の形は保っていません。ラカー人に同化することを拒んだんでね。プライドの高い種族なだけに、迫害もひどかったんです。…でも、彼らの名誉のために言っておきますが、私がコロニーに不時着した時助かったのは、彼らのおかげです。重傷だったからあのまま放っておかれれば死んでいた。…あなたが彼らと同じ種族なのは間違いない。真面目で正義感にあふれるところが、そっくりだ。」
「君もしつこい男だな。」
警報が鳴り、ランナバウトが揺れた。
オドー:「コンピューター、何だ今のは。」
コンピューター:『集中プラズマチャージを受けた衝撃により、一時的にですが船が安定を失いました。』
「攻撃されたってことか。」
『その通りです。追跡船の接近コースは、181、マーク 12。』
「その船をモニターで認識できるか。」
『ミラドーン船、セータ・クラスです。』
「アー・ケルからの通信だ。」
映るアー・ケル。『さっきの一撃は警告だ。降伏してクローデンをこちらに引き渡してもらおうか。』
オドー:「私は任務を放棄したりはしないぞ、アー・ケル!」
『よし、わかった。それなら貴様も奴と共に死ぬがいい。』 通信を終えるアー・ケル。
攻撃してくるミラドーン船。
爆発するコンソール。
コンピューター:『ワーニング。シールドに損傷発生。』
オドー:「コンピューター、回避行動を取れ!」
逃げるランナバウト。
コンピューター:『ワーニング。シールドが 41%※18にダウン…』
クローデン:「このコンピューターじゃあいつには勝てませんよ!」
オドー:「私は保安チーフだ、戦闘員じゃない。※19
「じゃあ私が操縦します!」
「お前が?」
「渦へ逃げ込むんです、そうすればイオンガスがあっちのセンサーから隠してくれる。…人を疑うのもいいけど、時と場合ってもんがあるでしょうが! このままじゃ 2人ともあの世行きだ。」
「クソー!」 オドーはクローデンの手錠を外した。操縦するクローデンを見る。
チャムラの渦に入っていくランナバウト。
オドー:「…何でスピードを落としたんだ。」
クローデン:「渦の中には、至る所にトー・メイアー※20っていう揮発性のガスポケットがあるんです。下手に突っ込んでいけば、大爆発を起こして船ごと木っ端微塵だ。」
「……お前本当にここに来たことがあったんだな。」
「私だって時には本当のことを言いますよ。」
「いつも本当のことを言った方が楽だと思うがね?」
また攻撃を受けた。
オドー:「ガスがセンサーを遮ってくれるんじゃないのか!」
クローデン:「きっと通常エンジンの音を拾われてるんです。コンピューター! 通常エンジンを切って、反動推進エンジンに切り替えてくれ。」
コンピューター:『了解、反動推進エンジンに切り替えます。』
オドー:「…次はどうする。」
クローデン:「通常エンジンの音が拾えなくなれば、反動推進エネルギーを探知しようとするでしょう。ここは一度、着陸しましょう。…さあいよいよですよ。あなたのふるさとまで、後もう少しだ。」
向かうランナバウト。


※17: 少し前に映っていた船。Robert Delgado デザイン。後に TNG第156・157話 "Gambit, Part I and II" 「謎のエイリアン部隊」のバランの傭兵船、VOY第62話 "Favorite Son" 「女たちの星」のタレージア船として再利用

※18: 吹き替えでは「45%」

※19: "I'm a security chief, not a combat pilot."
ドクター・マッコイの有名なセリフ、"I'm a doctor, not a ***." より

※20: toh-maire
初登場

小惑星に着陸したランナバウトは、洞窟の前にいる。
中を急ぐクローデン。「急いで! こっちです!」
オドー:「クローデン、おい待て。クローデン! 独りで先に行くな。クローデン!」 戻ってきたクローデンに言う。「何だってそんなに急いでるんだ。」
「コロニーがもうすぐそこなんですよ。」
「そんなに早く会いたいのか。」
「当たり前じゃないですか!」
「何のためにここへ来たのかは知らないが、もう帰るぞ?」
「そんな!」
「さあ来い!」 岩にクローデンを押しつけるオドー。「さあほんとのことを言え。私の仲間が、ほんとにいるのか!」
「いいえ。いません。…でもラカーには、可変種についての言い伝えがあるんですよ。あなたに会うまではてっきり…神話だと思っていたが。」
「じゃああの石は。」
「ああ、どの星で採れた物なのかは知りません。私はただ、辺境の貿易商から買っただけなんです。実はこれは、鍵なんです…」
「鍵って何の鍵だ!」
「私にとって唯一の生きる理由のです。この先の洞窟にあるんですよ…。」
オドーはクローデンを離した。走って向かうクローデン。

クローデンは言った。「お願いです、手伝って下さい。洞窟が崩れたんだ。」 容器の上に岩や砂が覆い被さっている。
オドー:「何なんだ、これは。」
「保存冬眠室です。」 中に人が見えた。「私の娘です、あの夜救えたのはこの子一人だけだった。」
岩をどかす 2人。
ペンダントを開けるクローデン。「自動的に、鍵の形になってくれるんです。」
石を使い、容器を開ける。
目を覚ますラカー人の少女。微笑むクローデン。
少女:「お父さん? お父さんの夢を見てたの。」
クローデン:「迎えに来たよ、ヤレス※21。これからは夢を見なくても会える。」
抱き合う二人。その様子を見ているオドー。
ヤレスはオドーに気づいた。「こんにちは。」
クローデン:「ん…ああ。ああ、こちらはオドーさんだ。遠いところから一緒に来たんだよ。」 怯えるヤレスに言う。「いやあ、大丈夫だ。この方はお前を殺しに来たんじゃない。お前を安全なところへ連れて行って下さるんだよ。…お願いします。」
オドーは、うなずいた。
ヤレス:「でも、お父さんはどうするの?」
クローデン:「ああ…ラカーへ戻る。」
「…でも戻ったら殺されてしまうわ!」
「ヤレス。私は罪を償わねばならないんだ。」
「でもお父さんは私達を守るために…」
洞窟が揺れた。
オドー:「生命体反応を感知されたらしい、急いでシャトルへ戻るんだ!」
崩れてくる洞窟。オドーは巨大な岩にぶつかり、倒れた。
クローデン:「オドー!」
動かないオドー。近づくクローデン。
ヤレス:「どう? 傷は深そうなの?」
クローデン:「ああ…わからないよ。彼の種族のことは何も知らないんだ。とにかく、シャトルへ連れ戻ろう。」 オドーを運ぼうとしたが、やめた。
ヤレス:「どうしたの、お父さん。」
また洞窟が攻撃を受ける。
クローデン:「何でもないよ、ヤレス。」 オドーをかつぎ、歩き出した。「気にするな。さあ、行こう! さあ、早く。」

チャムラの渦内に戻ったランナバウト。
目を覚ますオドー。
クローデン:「見かけよりずっと、重かったですよ。」
状況に気づくオドー。「…私を助けてくれたのか。」
クローデン:「ええ、なぜかね。自分でも信じられないけど。」 攻撃が続く。「どうしても奴を振り切れないんですよ。いずれ奴の光子ミサイルがトー・メイアーの爆発を引き起こすでしょう。そしたらおしまいです。」
オドー:「よし私が操縦しよう。君はここから一番近いトー・メイアーを探すんだ。」
「何考えてるんです、爆発に巻き込まれたらアウトなんですよ!」
「いいから一番近いトー・メイアーを探せ。」
「ああ…右舷の方角に、6度ですね。」
「コース変更。アー・ケルはきっと追ってくる。上手くトー・メイアーに突っ込んでくれれば。」
「あっちのセンサーはトー・メイアーの揮発性を探知できないかもしれない。ど真ん中でぶっ放せば、大爆発だ。」
「誘い込んでやる。」
オドーを見るクローデン。
トー・メイアーの中に入るランナバウト。
オドー:「内部ペリメーターに沿ってコース設定。」
クローデン:「…完了。」
「コンピューター、エンジンを全て停止せよ。」
コンピューター:『全エンジンを停止しました。』
「非常態勢を取りつつ、私の命令で通常エンジンを点火。」
クローデン:「これじゃ見つけて下さいと言わんばかりだ。」
ランナバウトに近づくミラドーン船。
クローデン:「呼びかけてきます。」
オドー:「スクリーン、オン。」
アー・ケル:『どうだ、クローデンを引き渡す気になったか。』
「宇宙艦隊のシャトルが武装していることを知らないわけじゃないだろうな? いちいちどんな装備かは説明しないが、お前の船ぐらい一発で吹き飛ばすだけの威力はある。わかったら今のうちに引き上げた方が身のためだぞ?」
『そっちこそこっちの攻撃をまともに受けたらかけらも残らないだろうな、フン。』 通信を切るアー・ケル。
近づいてくるミラドーン船。
クローデン:「出てきましたよ。…シールドをアップしてます。右舷の光子バンクは発射準備を完了。」
オドー:「コンピューター。エンジン噴射!」
逃げるランナバウト。
クローデン:「光子ミサイルが来ます!」
ミサイルを発射するミラドーン船。その直後トー・メイアーが爆発した。
揺れるランナバウト。
逃げるすぐ後ろから、爆発が迫ってくる。
揺れは収まった。
オドー:「お嬢さんは大丈夫だったかな?」
怯えていたヤレス。「ええ…。」
オドー:「よかった。…じゃあさっさと渦からおさらばするとしよう。」 ため息をつく。
チャムラの渦を出るランナバウト。

話すクローデン。「あのう、最後にもう一つだけ。…ヤレスは、あなたの世界ではたった一人のラカー人だ。あなたと同じ立場になります。…でもまだ子供ですから、保護者が必要だ。」
ヤレスはクローデンと額を合わせた。
オドー:「…まさか私にお嬢さんを見ろとでも。」
クローデン:「独りぼっちは辛いものですよ。いくら強がっていても、あなただって寂しいはずだ。でなきゃ、あの石に興味を示すはずがない。」
コンピューター:『亜空間通信が入っています。周波数はヴァルカン帯です。』
オドー:「スクリーン、オン。」
ヴァルカン人の女性※22が映し出される。『宇宙艦隊シャトルへ。こちらヴァルカンの科学船トヴラン※23です。何かトラブルがあったのですか?』
オドー:「DS9 保安士官のオドーですが、全て順調です。」
『チャムラの渦で、大規模な爆発を観測したので。そちらのような小さなシャトルでは…損傷したかと思って。』
「ご心配ありがとうございます。これからどちらへ。」
『ワームホールを通り、故郷のヴァルカンへ。』
「…実はあの爆発でやられた船から 2名生存者を収容したんですが、任務がありまして。…この 2名をヴァルカンまでお願いできますでしょうか。」
『構いませんよ? ランデブーまでそれほど時間はかかりません。では転送の準備を。』 通信を終えるヴァルカン人。
「…礼なんか言うなよ、背中がかゆくなるから。」
クローデン:「……でも、ラカーにはどうやって言いつくろうつもりですか。」
「…渦の中でアー・ケルから…攻撃を受けた時に死んだってことにしておくさ。私だって、その気になりゃ嘘だってつけるだろう、フン。異邦人の間で暮らすことになる、がんばれよ?」
「あなたこそ。でもふるさとを忘れることはないし、いつかは帰れる日もくるかもしれませんからね。」
うなずくオドー。
ペンダントを外すクローデン。「この石が、あなたをふるさとに導いてくれますように。」 オドーの首にかける。
ヴァルカン人:『トヴランよりガンジス※24へ。どうぞ転送の用意を。』
オドー:「わかりました。」
ヤレス:「オドーさんは本当に可変種なの?」
ペンダントを手にするオドー。「…ああ…どうやらそうらしいね。」 微笑んだ。「…さあ入って。待たせたら失礼だよ?」
転送台に乗り、手をつなぐクローデンとヤレス。
オドー:「ビーム転送。」 二人は転送されていった。
オドー:「……コンピューター、ワームホールへ向かってくれ。」
コンピューター:『コース設定完了。』
「エンジン噴射。…ふるさと。フン、いい響きだ。」 石を見つめるオドー。「いつか行こうな、兄弟? …発進。」
帰還するガンジス。


※21: Yareth
(レスリー・エンゲルバーグ Leslie Engelberg) 声:白鳥由里

※22: ヴァルカン人士官 Vulcan officer
(キャスリーン・ギャレット Kathleen Garrett VOY第142話 "Muse" 「ヴォイジャーの神々」の Tanis 役) 一部クレジットではヴァルカン人船長 Vulcan captain

※23: T'Vran

※24: 吹き替えでは「シャトル」

・感想
初めてオドーが可変種と呼ばれる話。今更ではありますが、日本のドラマが 10話か 11話そこらで終わってしまうのが多いのに比べて、12話で「少しだけ」設定を明らかにする…。レベルの違いをまざまざと見せつけてくれます。最後にオドーが初めて笑顔を見せるシーンもありますね。本来は「取り替え子」を意味する changeling に当てられた「可変種」という訳は、首をひねってしまう吹き替えが多い中で、珍しく見事なものだと思います。その代わり、この邦題は全く印象に残らないのが残念です。
善人が悪人を連れて行くというストーリーは、「裸の拍車」(1953) といった西部劇を意識し、その映画の共同脚本でアカデミー賞にもノミネートされたサム・ロルフ (Sam Rolfe) が担当しました。この話の放送直後に亡くなったロルフは、「0011 ナポレオン・ソロ」では TNG/DS9 脚本家の Peter Allan Fields の先輩であり、その関係で呼ばれています。ST ではこの話以外に TNG "The Vengeance Factor" 「復讐の虜」しか担当していません。


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