ホロデッキの壁に、巨大なドクターの写真が表示されている。その前で説明しているドクター。「そして、その強い酸性の大気に耐えられるクルーは私だけだったため、データモジュールを回収できるかどうかは私にかかっていたのです。」
ジェインウェイやトゥヴォックたちは、並べられた椅子でそれを鑑賞している。いや、鑑賞させられている。
ドクターが手元のボタンを押すと写真が切り替わり、今度は右手に機械を抱えている。顔はカメラ目線で笑顔のまま。「おお! 私です。任務を完了しました。」
ジェインウェイ:「そう。」
立ち上がるジェインウェイたち。
ドクターは話し続ける。「ラヴォティ5号星※1での危険な任務もありました。パリス中尉、覚えているかな?」
パリス:「忘れっこない。」
また座る。次は頭から泥をかぶったパリスの写真。
ドクター:「これが中尉の写真。パロ・マー※1で臭い泥の沼に、運悪く落ちてしまいました。」
笑い出すトレス。
パリス:「押されたんだよ。」
ドクター:「ああ、そうだった。」
「ありがとう、ドクター。面白いホロデッキプログラムだったわ。」 立ち上がるジェインウェイ。
「いえ、まだあるんですよ。」
トレス:「まだあるの?」
「ここからが本当の見所だよ。12章からなるホログラムエッセイを作ったんです。タイトルが、『一皮むけば、芸術としての解剖学』。ではまず、このヴァルカン人の生殖腺の拡大図を見て頂きましょう。どうです、見事でしょう。微妙な、この色の美しさ。」 今度は赤色の人体の器官が表示される。また座るクルー。ドクターは写真の前で手を広げて説明する。
キムはチャコティに報告する。「副長、21時現在、全システム正常です。」
「わかった。」
「……ですから今 21時ですよ。」
「ああ、ちゃんと聞こえてるさ。」
「1時間以上になりますけど?」
「ああ、そうだな。」
「艦長は 30分で助けに来てくれって。」
「ハリー、俺とお前はドクターの素晴らしい講演会をたっぷり 2時間聞いたろ? 艦長たちにも同じ経験をさせてやらなきゃ不公平ってもんだ。」
「そりゃそうですよね。」
笑うチャコティ。
ホロデッキ。ドアが開き、ジェインウェイたちが出ていく。出口で礼を言うドクター。「ありがとう。どうも、ありがとう。またやりましょうね。地球に帰るまでまだ何万光年もあるんですし。毎週のイベントにします?」
立ち去るクルー。ドクターだけが残される。
廊下を急ぐトレス。「30分で警戒警報が鳴るはずじゃなかった?」
トゥヴォック:「副長は、艦長命令に背いたようだな。」
ジェインウェイは笑う。「チャコティを軍法会議にかけなきゃ。」
パリスとトレスは食堂に入った。
トレス:「ニーリックス。」
ニーリックス:「コーヒーかい?」
パリス:「ああ、ポットごとくれ。」
「あれのせいだろ。ドクターのヴィジュアルエッセイ見せられたな。」
「ハ、退屈な写真が次から次へと。」
トレス:「そうかな。すっごく面白いのもあったけど。」
ニーリックス:「ああ、トムが沼に落ちたのなんかな。」
笑う 3人。テーブルにつく。
トレス:「有名人ね。」
ニーリックス:「とある機関主任が、プラズマ注入装置に足引っかけてるとこも笑ったね。」
「何?」
パリス:「ほんとか? おかしいな、それ見てないぞ。」
ニーリックス:「きっと慌てて、抜いといたんだろうな。」
「その写真手に入れなきゃ。みんなのデータベースに送ってやったら喜ばれるな。」
トレス:「やれば? 殺されたければ。ドクターのプログラムからも削除してやる。」
ふいに船内が揺れ始め、テーブル上のカップの中身がこぼれる。
パリス:「コーヒーに何入れたんだ?」 ブリッジへ向かう 2人。調理場の道具も棚から落ちる。
揺れるブリッジ。
キム:「巨大エネルギー波を感知。現在位置は、右舷前方 90万キロ。こちらへ向かっています。」
チャコティ:「発信源は。」
トゥヴォック:「不明です。」
ジェインウェイ:「シールド、アップ。回避行動をとって。」
到着するトレスたち。
キム:「エネルギー波、コース変更しました。我々を追って来てます。」
ジェインウェイ:「ワープ8 に。」
チャコティ:「間に合わない。エンジン停止です。」
「みんなしっかりつかまって!」
広大なエネルギー波がヴォイジャーを突き抜けていく。
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※1: La'voti V
※2: Pala Mar
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