ヴォイジャー 簡易エピソードガイド
第102話「寄生生命体の恐怖」
Nothing Human
イントロダクション
ホロデッキの壁に、巨大なドクターの写真が表示されている。その前で説明しているドクター。「そして、その強い酸性の大気に耐えられるクルーは私だけだったため、データモジュールを回収できるかどうかは私にかかっていたのです。」 ジェインウェイやトゥヴォックたちは、並べられた椅子でそれを鑑賞している。いや、鑑賞させられている。 ドクターが手元のボタンを押すと写真が切り替わり、今度は右手に機械を抱えている。顔はカメラ目線で笑顔のまま。「おお! 私です。任務を完了しました。」 ジェインウェイ:「そう。」 立ち上がるジェインウェイたち。 ドクターは話し続ける。「ラヴォティ5号星※1での危険な任務もありました。パリス中尉、覚えているかな?」 パリス:「忘れっこない。」 また座る。次は頭から泥をかぶったパリスの写真。 ドクター:「これが中尉の写真。パロ・マー※1で臭い泥の沼に、運悪く落ちてしまいました。」 笑い出すトレス。 パリス:「押されたんだよ。」 ドクター:「ああ、そうだった。」 「ありがとう、ドクター。面白いホロデッキプログラムだったわ。」 立ち上がるジェインウェイ。 「いえ、まだあるんですよ。」 トレス:「まだあるの?」 「ここからが本当の見所だよ。12章からなるホログラムエッセイを作ったんです。タイトルが、『一皮むけば、芸術としての解剖学』。ではまず、このヴァルカン人の生殖腺の拡大図を見て頂きましょう。どうです、見事でしょう。微妙な、この色の美しさ。」 今度は赤色の人体の器官が表示される。また座るクルー。ドクターは写真の前で手を広げて説明する。 キムはチャコティに報告する。「副長、21時現在、全システム正常です。」 「わかった。」 「……ですから今 21時ですよ。」 「ああ、ちゃんと聞こえてるさ。」 「1時間以上になりますけど?」 「ああ、そうだな。」 「艦長は 30分で助けに来てくれって。」 「ハリー、俺とお前はドクターの素晴らしい講演会をたっぷり 2時間聞いたろ? 艦長たちにも同じ経験をさせてやらなきゃ不公平ってもんだ。」 「そりゃそうですよね。」 笑うチャコティ。 ホロデッキ。ドアが開き、ジェインウェイたちが出ていく。出口で礼を言うドクター。「ありがとう。どうも、ありがとう。またやりましょうね。地球に帰るまでまだ何万光年もあるんですし。毎週のイベントにします?」 立ち去るクルー。ドクターだけが残される。 廊下を急ぐトレス。「30分で警戒警報が鳴るはずじゃなかった?」 トゥヴォック:「副長は、艦長命令に背いたようだな。」 ジェインウェイは笑う。「チャコティを軍法会議にかけなきゃ。」 パリスとトレスは食堂に入った。 トレス:「ニーリックス。」 ニーリックス:「コーヒーかい?」 パリス:「ああ、ポットごとくれ。」 「あれのせいだろ。ドクターのヴィジュアルエッセイ見せられたな。」 「ハ、退屈な写真が次から次へと。」 トレス:「そうかな。すっごく面白いのもあったけど。」 ニーリックス:「ああ、トムが沼に落ちたのなんかな。」 笑う 3人。テーブルにつく。 トレス:「有名人ね。」 ニーリックス:「とある機関主任が、プラズマ注入装置に足引っかけてるとこも笑ったね。」 「何?」 パリス:「ほんとか? おかしいな、それ見てないぞ。」 ニーリックス:「きっと慌てて、抜いといたんだろうな。」 「その写真手に入れなきゃ。みんなのデータベースに送ってやったら喜ばれるな。」 トレス:「やれば? 殺されたければ。ドクターのプログラムからも削除してやる。」 ふいに船内が揺れ始め、テーブル上のカップの中身がこぼれる。 パリス:「コーヒーに何入れたんだ?」 ブリッジへ向かう 2人。調理場の道具も棚から落ちる。 揺れるブリッジ。 キム:「巨大エネルギー波を感知。現在位置は、右舷前方 90万キロ。こちらへ向かっています。」 チャコティ:「発信源は。」 トゥヴォック:「不明です。」 ジェインウェイ:「シールド、アップ。回避行動をとって。」 到着するトレスたち。 キム:「エネルギー波、コース変更しました。我々を追って来てます。」 ジェインウェイ:「ワープ8 に。」 チャコティ:「間に合わない。エンジン停止です。」 「みんなしっかりつかまって!」 広大なエネルギー波がヴォイジャーを突き抜けていく。 |
※1: La'voti V ※2: Pala Mar |
あらすじ
エネルギー波が通過した後、ヴォイジャーのコンピューターに大量のデータがダウンロードされていた。音声は解読できず、発生源へ向かう。損傷した船を見つけ、乗員である非ヒューマノイド型の異星生命体を医療室へ転送した。トレスの報告によれば、生命体は船のシステムに直接とりつき、操縦していたらしい。その時突然、生命体がフォースフィールドを突き破り、トレスの体に取りついた。転送でも離すことはできない。宇宙生物学の専門的知識が必要になるため、ホログラムで宇宙生物学者の第一人者を作り出すことにする。キムの協力により呼び出されたのは、ドクター・クレル・モセット。彼はカーデシア人だった。 モセットは友好的で、すぐにドクターと共に生命体を調べ始める。生命体のメッセージを解読するために船からデータをダウンロードするが、不安定だった船は爆発してしまった。モセットとドクターは、生命体がトレスの体を緊急避難的に利用し、臓器を代用していると仮定する。宇宙艦隊の機材では不十分というモセットのために、彼の研究室がホロデッキで再現されることになった。意識を取り戻したトレスは、モセットがホログラムであってもカーデシア人であることに嫌悪感を抱く。 再現されたモセットの研究室に入る 2人。彼は占領下のベイジョーで恐ろしいウィルスの治療法を見つけたという経歴があった。生命体をホログラムで作り、研究が続く。エネルギー波が救難信号だったと確信したジェインウェイは、ヴォイジャーからその信号を送れば仲間が助けに来ると判断し、実行させた。モセットはスキャナーなどよりもメスでの診断を優先するタイプだった。プログラムが不安定になり、キムたちの協力で再びモセットを呼び出す。その時一緒に作業していたベイジョー人士官のテイバーは彼を見て驚愕する。モセットはテイバーの家族をはじめ何千人を殺した、大量殺人犯だというのだ。 否定するモセット。テイバーによると、モセットはベイジョー人を使って人体実験を行ったのだという。モセットのホログラムが知らないのは、カーデシアが全ての情報を公開していないためかもしれない。ウィルスの治療法も大量のベイジョー人を犠牲にした上で発見されたといい、彼のホログラムと研究成果の削除を要求するテイバー。トレスは、モセットの手術を受ければ犠牲者の死を利用することになるため、治療を拒否する。容体は悪化していく。ヴォイジャーのデータベースをみても、モセットが人体実験を行ったことは明白だった。プログラムが削除されるかもしれないことをモセットに告げるドクター。モセットは倫理よりも治療を優先するべきだと話す。トレスの意志、そして正義を尊重するか、トレスの命を守るべきかで対立するチャコティとパリス。ジェインウェイはトレスを救うことが優先だとし、モセットの治療を許可した。手術が始まる。 生命体の仲間の船が現れたが、音声の翻訳は未だできない。こちらの意志を伝えようとするが、無駄に終わった。生命体を殺してでも手術を続けようとするモセットを止め、ドクターは別の方法を試みる。相手の船は一種のトラクタービームを使って手術を妨害しようとするが、ジェインウェイは武器を使うことは禁ずる。仲間を助けたがっているだけなのだ。ついにトレスから生命体は分離され、生命反応も安定した。相手の船に転送し、最後の通信が送られてくる。ジェインウェイは「どういたしまして」と応えた。治療を決める権利はなかったというトレスに、上官の判断として正しかったことを話すジェインウェイ。そしてモセットのプログラムの処遇を任せられたドクターは、彼にプログラムを消すことを告げた。消しても研究成果を利用したという事実は消えない、同罪だというモセット。ドクターは何も答えず、コンピューターに削除の命令を下すのだった。 |
用語解説など
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感想
倫理か治療か、現代につながるテーマを視聴者の判断に任せたエピソード。やりっぱなしといえばそれまでですが、重い内容はカーデシアやマキといった設定を含め、DS9 に通ずるものがあって良いですね。 |
第101話 "Infinite Regress" 「遥かなるボーグの記憶」 | 第103話 "Thirty Days" 「水の惑星に消えた夢」 |