アノラックスの部屋に入ったチャコティは「あの星を消す必要はなかった」という。 
 「私は歴史を書き換えているのだ。無数の星系の運命が私の手の中にある。一種族の運命など、取るに足らん。」"You're trying to rationalize genocide. One species is significant. A single life is significant."
  「あれはただの大量虐殺だ。たった一つの命がどんなに大切か、わからないのか!」 
 アノラックスは少しの間の後、話し始めた。「最初はとても、簡単に思えた。わずか一瞬で、歴史が書き変えられ、我が種族は蘇った。だが 2度目に歴史を変えた時、かけがえのないものを失った。」 
 「キアナ・プライムのことか?」 
 「なぜ知っている。」 
 「侵略記録を調べさせてもらった。何度帝国の復活を試みても、常に一個所だけ欠けている。キアナ・プライムだ。誰がいた? 何を失った?」 
 「妻と、彼女との未来だ。子供たち、孫たち、全て私が消した。時空コアと引き換えに。」 三角錐の置物の中に入っているのは、一束の茶色い髪の毛だった。置物をなでるように触るアノラックス。「毎晩のように彼女が眠りに就いたあと、計算を続けた。それが妻の運命を変えることになるとも知らず。キアナ・プライムを蘇らせるまではやめん。妻のいた時間を取り戻すまではな。」 
 「可能とは思えん。」 
 「私は時間にムードがあると言った。私は本能で感じ取っている。比喩を言ってるわけじゃない。」 
 「どういう意味だ。」 
 「時間が怒っているのだ。怒り、私への怒りだ。私への報復、復讐。時間が、私を罰しているのだ。私の傲慢さを。だから妻を遠ざけ、未来を奪った!」 
 ドアが開き、オブリストがやって来た。「閣下、42%の復活に成功です。」 
 「キアナ・プライムも?」 
 「いいえ閣下。」 
 「連続体のスキャンを再開。」 
 「了解。」 出て行くオブリスト。 
 「君の…計算値を見せてもらったよ、チャコティ君。見込みはあるが、まだ未熟だ。やり直してくれ。それまでは、時空侵略を続ける。」 
 「そんな権利はない!」 
 「私が招いた結果だ。最後まで責任を取りたい。私に審判を下せるのは、時だけだ。」
  
 いらつくパリス。「あんなことがあっても、まだ考えは変わらないのか? 奴はいかれてる。」 
 パッドで計算を続けるチャコティ。「それは違う。傷つき、苦しんではいるが、俺はまだ彼を説得できると信じてる。」 
 「あんたさっき何て言った? あいつは、時間に罰せられ復讐されてると思ってんだろ? そういうのをパラノイアっていうんだ。誇大妄想も入ってる。」 
 「彼の過去を?」 
 「家族を失ったってことか? そりゃ気の毒だとは思うよ。だけどこの船のクルーだって同じだ。俺たちもな、チャコティ。」 
 パッドを置くチャコティ。「お前の方はどうなってる。」 
 「もうすぐオブリストが来る。信用できる奴だ。通信アレイに、アクセスしてくれるといってる。俺の部屋からヴォイジャーにメッセージを送るつもりだ。」 
 「時空コアは?」 
 「それが、ちょっとばかり難しい。オブリストの助けで、停止はさせられるが、その前に船中の警報を解除しなきゃならない。チャンスは一度だけだ。」 
 「全てはタイミング次第か。俺たちは中から…」 
 「艦長にはヴォイジャーから攻撃してもらう。もしも、まだ生きていたらの話だが。」 
 「生きてるさ。……ヴォイジャーに、ここの座標を送ってくれ。」 
 「了解。」 
 ドアへ向かうパリスを呼び止めるチャコティ。「それから…キャスリンによろしくと。」
微笑み、うなずくパリス。チャコティも笑みを浮かべていた。
  
 226日目。「艦長日誌、宇宙暦 51682.2。ニハイドロン※13、マワシ※14両国と同盟を組むことができた。共にクレニム艦への攻撃に挑むつもりだ。」 ヴォイジャーの後に、2種類の船が 2隻ずつついている。 
 クルーに説明するジェインウェイ。「あらゆる送信波の周波数を分析してみたところ、連邦宇宙艦隊の IDコードが含まれてたの。トム・パリスしか発信できないものよ。本物だった。彼が送って来た座標を目指せば、クレニム艦を見つけられる。」 
 トゥヴォック:「場所は。」 
 「約 50光年離れたところ。新たな同盟国が援軍を集めてくれてるの。射程内に入り次第、トムがクレニム艦の時空コアを停止させることになってる。それが成功すれば、普通の武器でも攻撃できる。トムが時空コアの正確な位置を知らせてくるのを待って、私たちは敵艦を沈黙させ、2人を助け出す。いいわね。」 
 トレス:「了解。」 キム:「了解。」 うなずくセブン。 
 「ベラナ、ハリー、ニハイドロン船へ乗り込んでちょうだい。機関士に協力して。」 
 うなずくキム。 
 「艦隊全体に時空シールドを装備させるの。」 
 トレス:「了解。」 
 「トゥヴォック、ニーリックス、セブン。あなたたちはマワシの船へ。」 
 ニーリックス:「了解。」 うなずくトゥヴォック。 
 「ドクター、攻撃が始まったら、必ずあなたが必要になる。トゥヴォックのチームへ。」 
 ドクター:「あなたは。」 
 「ヴォイジャーを操縦し、攻撃を指揮する。」 
 トレス:「艦長、この船がこれ以上もつとは思えません。まして戦闘にはとても。」 
 「ヴォイジャーはまだやれる。時空シールドもあるし、光子魚雷も 6発ある。それで十分よ。それによく言うでしょ、船長は船と共に死ぬって。命令は以上。解散。」 
 一人一人、ブリッジを出て行く。ジェインウェイは残るトゥヴォックに話しかける。「トゥヴォック、異論があるのはわかってる。でも、私は残る。」 
 「今のヴォイジャーの状態では、あなたが戦闘を生き残れる可能性は、ない。」 
 「それもわかってる。でも残らなきゃ。ヴォイジャーに恩返しするの。」"Curious. I've never understood the human compulsion to emotionally bond with inanimate objects. This vessel has 'done' nothing. It's an assemblage of bulkheads, conduits, tritanium. Nothing more."
  「興味深い。命なきものに対する、地球人の感情というものは不思議だ。この船は何もしていない。ただの隔壁と、コンジットと、トリタニアムの集合に過ぎん。」
  "Oh, you're wrong. It's much more than that... this ship has been our home... it's kept us toghther... it's been part of our family. As illogical as this might sound... I feel as close to Voyager as I do to any other member of the crew. It's carried us, Tuvok, even nurtured us... and right now, it needs one of us."
  「いえ違う。それだけじゃない。この船は私たちの、家だったの。家族の一員なのよ。非論理的かもしれないけど、私にとってこのヴォイジャーはほかのクルーと同じ存在なの。私たちを運び、生かしてくれた。そして今私たちを必要としてる。」 
 「あなたに敬意を表します。」 ヴァルカン・サイン。「長寿と、繁栄を、艦長。」 
 ジェインウェイはトゥヴォックの頬に触れた。「あなたもね。良き友よ。」 トゥヴォックと抱き合うジェインウェイ。トゥヴォックもジェインウェイの肩に手を置いた。補佐するセブンと共に、トゥヴォックはブリッジを出て行った。 
 独り残ったジェインウェイは、腰の懐中時計を見つめ、艦長席にゆっくりと腰を下ろした。
 
 
  | 
※13: Nihydron
  
※14: Mawasi
 |