テン・フォワード。
ガイナン:「やっぱりあんたね!」
Q:「貴様! ピカード、艦長としての自覚があるなら今すぐこの女を追い出すんだな! 何なら私が君に代わって追い出してやっても、一向に構わんのだぞ。」 手を挙げる。
ガイナンはそれに応じるように、手を挙げ指を曲げた。
ピカード:「彼を知ってるのか。」
ガイナン:「ちょっとした因縁です!」
Q:「200年も前のことをいつまで根にもっている。…いいか、見かけにだまされるな! そいつは悪魔だ、行く先々で必ずトラブルが起きる。」
ピカード:「それはお前だ、ガイナンのことではない。」
「ガイナン。今の名前か。」
「問題は彼女のことじゃなくお前だ。我々にちょっかいを出すのはやめると約束しただろ…」
「ああしたとも。」
「何が望みだ、Q。要求があるんだろ、早く言え。」
「それもそうだなあ。こんな女はどうでもいい。私がここに来た目的はもっとほかにあるんだ。」 手を下ろす Q。
ガイナンも構えをやめた。
ウォーフと共に来たライカー。「目的とは?」
Q:「おお、敬愛すべきライカー副長。それにクリンゴン君※12もか。愛の雄叫びでも上げてくれるのか。」 胸に両手を当てる。
近づくウォーフ。
ピカードは制する。「ウォーフ。」
Q:「この船に乗せてもらいたい。」
ライカー:「それでどうする気なんだ。」
「乗組員として雇ってくれ※13、役に立つぞ? この船には既に無能な役立たずや、招かれざる不吉な者もいる。家のない私をおいてくれてもいいだろう。」
「家のない?」
「ああ。」
「Q連続体のほかのメンバーに追い出されたのか。」
ガイナン:「Q にもいろいろいるんです。尊敬すべき立派な Q もね。」
ピカード:「役に立つ、さっきそう言ったな。…何ができる。…一乗務員から始められるか、うん? きっと、君のような…偉大な男には、退屈だと思うがね。」 制服の裾を伸ばし、カウンター席に座る。
Q:「バカにしているのか?」
「いいや、そんなつもりは毛頭ない。君は尊重すべき存在だ。我々の任務は新たな生命体を探すことで、君は紛れもなく特別ユニークな生命体だ。正直言って興味をそそられるのは確かだが…君の存在は混乱そのものだ。」
「艦長、せめて話ぐらい聞いてくれ。」
また近づくウォーフに合図するピカード。「ウォーフ。」
ウォーフは出ていき、ドアの前に立つ。
Q:「最後に君らと会った後連続体を出て行けと言われた。以来ボンヤリ宇宙を漂い、すっかり退屈した。目的を失ったんだ。そこで君らとの楽しい時を思い出した。」
ライカー:「楽しいだと? 初めて会った時は我々を人類の罪で裁判にかけたな…※14」
「無罪放免になったろ。」
「それから 2度目は Q連続体に入れと私を誘ったな。※15」
「あの申し出を蹴るとは実に愚かだよ。考えれば考えるほどこの船こそが私の居場所だ。君たちの得にもなるんだ。特別待遇は一切なしの普通の乗組員としてで構わんぞ? どうにも不可解だが君らには気にいらんようだから…私のパワーは捨てることにしてもいい。君らと同じく、弱く無能な存在になろう。」
うなるガイナンは、カウンターに戻る。
ピカード:「ダメだ。」
Q:「ダメ? 私にも公平にチャンスを与えてくれ。それぐらいしてくれてもいいだろう。」
ライカー:「公平に? 一方的に艦長を誘拐した君にか?」
「退屈な日常に刺激を与えてやってるのに、君らは不平ばかりだ。冒険心や遊び心はどこへやった。よく考えてみろ、ピカード。私は役に立つんだ。」
ピカード:「一言で言って、君は信用できん。」
「…あ、あ。だが、信用はしなくとも必要になる。この先に何があるか知っているか?」
「まだ見たこともないものを知っているわけはないだろう。だが未知のものと、向き合う準備はできている。」
「そうか。」
「ああ、もちろんだ。そのためにここにいる。」
笑う Q。「何と思い上がった男だ。何が起こるか知りもせずに。」
ガイナン:「学んでいくのよ、徐々にね。それがこの人たちの強さなの。」
「だが人間は能力以上に進出しすぎている。」
ピカード:「それは誰の判断だ。」
「自分でわからんか、あんなつまらん奴らにあれほど手こずっておいて。ロミュラン人やクリンゴン人だ。これから出会う敵に比べれば何でもない。ピカード。君たちがこれから踏み込んでいこうとしている深宇宙には、君らの想像力を遥かに超えるものが待ち受けているんだぞ? 魂も凍りつくような恐怖だ。案内役を買って出たんだぞ、それを断るとは信じられん。」
ライカー:「君がいなくても何とかやっていけるよ?」
「独り善がりもいいところだ。」
ピカード:「独り善がりでも思い上がりでもない。揺るぎない決意があるだけだ。…我々は君の助けはいらない。」
「では本当にそうかどうか見てみるとしよう!」
止めようとするガイナン。「Q!」
Q は指を鳴らした。
光は宇宙空間にも見え、その瞬間エンタープライズは回転しながら移動を始めた。
艦長席に座っているデータ。
エンタープライズは光速を越え、飛ばされ続ける。
テン・フォワードの窓から、横に流れる星の軌跡が見える。
やっとで停止した。
ピカード:「ブリッジ、こちら艦長だ。エンジン停止。」
ウェスリー:『了解、エンジン停止。』
「現在位置は。」
データ:「この座標によれば、我々は 7,000光年※16進んだことになります。現在 J-25星系※17の付近です。」
ライカー:「一番近い宇宙基地までの距離は。」
データ:『最も近いのは、第185宇宙基地※18。最大ワープ速度で、2年7ヶ月3日と 18時間※19です。』
「なぜだ!」
Q:「なぜ? 君らに未来を見せてやるのさ。来たるべき恐怖の予行演習だ。一休みだ、艦長。ホールは借りた。オーケストラも雇った。君たちのダンスのお手並みを拝見しよう。」
消える Q。
ピカード:「ガイナン、君の種族はこの領域にいたんだな※20。」
ガイナン:「ええ。」
ライカー:「何があるんだ。」
「……私なら今すぐ、ここから引き返します。」
『航星日誌、宇宙暦 42761.9。ガイナンの警告を受けた上で、私はこの銀河の未知の星域にしばらくの間留まり、調査をしてみることにした。』
ブリッジ。
ウォーフ:「艦長、この恒星系の第6惑星は M級です。」
データ:「地表には高度に工業化された文明の存在を示す道路が見られますが、都市のあるべき場所には、地表をえぐったような跡しか見当たりません。」
「まるで、何か大きな力が地表にあるものを全てすくい取ってしまったようです。」
「中立地帯※21の前哨基地で、全く同じ現象を見たことがあります。」
「艦長、艦が探査されています。」
ライカー:「探査源は何だ。」
「船です。…インターセプトコースを取っています。」
ピカード:「メインビューワへ。」
船が映った。
ピカード:「拡大しろ。」
それは、無機質な立方体※22だ。
ライカー:「フルスキャン。」
ピカード:「警戒警報だ。」
ウォーフ:「了解、警戒警報。」
ライカー:「防御スクリーンは解除。余計な刺激を与えるな。」
「了解。」
ピカード:「データ少佐、分析してくれ。」
データ:「この船は、ほとんどの部分が均一化されています。特定のブリッジもなければ、司令センターもありません。機関部すら見られませんね。…乗組員居住区も存在しません。」
「生命反応は。」
「全く反応なしです。」
ライカー:「ウォーフ中尉、あの船の武装状況は?」
ウォーフ:「既存の武器は、全く装備されていません。」
ピカード:「宇宙チャンネルオン。」
「了解。」
「U.S.S.エンタープライズ※11艦長ピカードだ。」
「…応答ありません。」
「惑星連邦宇宙艦隊エンタープライズ※11艦長ピカードだ。…ガイナン。そちらのビューワをつけて今ここで起こっていることをよく見てくれ。意見を聞きたい。」
窓から相手の船を見ていたガイナン。テン・フォワードを出て、部屋※23に入る。「今つけます。不気味な船の姿がよく見えています。」
ピカード:「この船について何か知っているか。」
ウォーフ:『ええ、100年前に私達の星に来ました。』
大きなスクリーンを見つめるガイナン。「全てが破壊されて、我が民族は銀河中に散らばりました。ボーグ※24というものです。守りを固めて下さい。でないと全滅です。」
ライカー:「防御スクリーン。」
ウォーフ:「了解。」
ライカーの通信が機関室にも流れる。『全デッキ、待機せよ※25。』
ラフォージは音がした方を振り向いた。何者かがワープコアのそばに転送されてきたようだ。
その生命体は、機械的な腕を作動させている。
ラフォージ:「保安部、至急機関室へ来てくれ! 侵入者がいる。」
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※12: 原語では「微少脳 (micro-brain)」
※13: 原語では「クルーの一員としてだ」
※14: TNG パイロット版 "Encounter at Farpoint" 「未知への飛翔」より
※15: TNG "Hide and Q" より
※16: 吹き替えでは「7万光年」と誤訳
※17: System J-25
※18: Starbase 185
※19: 吹き替えでは「8時間」
※20: 吹き替えでは「この星域へ来たことがあるな」。ガイナンの種族がエル・オーリアン (El-Aurians) ということは映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」で触れられ、難民という設定も引き継がれます
※21: ロミュラン中立地帯 (Romulan Neutral Zone) のこと。TNG第26話 "The Neutral Zone" 「突然の訪問者」での出来事を意味しています。当初はその内容が連続エピソードにふくらまされ、ボーグも登場する予定でした
※22: ボーグ船、ボーグ艦 Borg ship 模型は Rick Sternbach と Richard James によるデザイン。3フィート (約90cm)。まだ「ボーグ・キューブ」とは呼ばれていません
※23: このオフィスは最初で最後の登場
※24: Borg 初登場。この話の脚本 (共同製作総指揮)、Maurice Hurley によるアイデア。当初はデザインも昆虫型になる予定でしたが、予算の都合で変わりました
※25: 吹き替えでは「戦闘態勢」
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