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TNG エピソードガイド
第47話「限りなき戦い」
Peak Performance

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・イントロダクション
静止しているエンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 42923.4。宇宙艦隊の要請に応えエンタープライズは予定を変更して、ブラスロタ恒星系※1に向かい艦隊初の軍事演習を行う。本部からは監督役としてザクドン人※2の戦略の達人、ミスター・コルラミが本艦に派遣された。』
船に近づくシャトル。

ブリッジに入ってきた異星人は、腕を振りながらライカーの後を追う。
そのシルナ・コルラミ※3を見るクルー。見えなくなる直前、コルラミは振り返った。

観察ラウンジで待っていたピカード。「ミスター・コルラミ、艦長のピカードです。ようこそ。」
コルラミ:「艦長、お噂は本部の方でよーくうかがっておりますぞ?」
「部屋でお休みになりますか。」
「いやあ、ご心配には及びません。…早速説明に取りかかりましょう。」 コルラミは椅子に座り、息をついた。
微笑むライカー。

ブリッジのウォーフ。「噂には聞いていたものの、あのザクドン人の先生はどう見ても無敵の戦士とは思えないな。」
データは艦長席についている。「現代における戦闘形態では、個人個人のもつ体力や筋力はそれほど意味をもたなくなっているんだ。…ザクドン人には先天的に戦略的な才能があるとの評価は、今や銀河系では共通の認識だ※4。」
ウォーフ:「だから今まで一度も他国から戦争を仕掛けられたことがないと?」
「その通り。」
「…戦場も知らずに戦略家とは※5。」

星図※6の前に立つコルラミ。「ブラスロタ系です。第2惑星の軌道上に 80年前※7のモデルの巡洋艦※8ハサウェイ※9を置いてきました。…本気でこの人に任せると?」
ピカード:「ライカー中佐がハサウェイの艦長となります。」
「…エンタープライズがハサウェイを攻撃するのは 48時間後です。」
ライカー:「実際に戦闘隊形を取るんですね?」
「そうだ。…エンタープライズの武器は全てエネルギー源から外して、そのままシステムを改造レーザーパルスビーム※10につなぐんです。攻撃が電気的に記録されてダメージを受けたとコンピューターが判断すれば、機能は停止しますが? …修復に必要と思われる期間が経過次第回復します。うーん、よろしいかな? ……うーん、ピカード艦長。最初あなたは演習に参加したくなかったと聞きましたが、それは本当の話ですかな。」
ピカード:「そうです。」
「理由を、お聞かせ下さい。」
「宇宙艦隊の目的は軍事行動ではなく探索です。」
「ではなぜ、お気が変わられた。」
「ボーグ※11との出会いで、私も部下もつくづく感じたんです。…万一の事態に備えて戦略的技術を磨き、選択の幅を広げるべきだとね。」
うなずくコルラミ。
ライカー:「私はどちらかというと反対です。…力より頭で解決したい方ですし、戦闘技術がそれほど重要とは思われません。」
コルラミ:「その言葉、覚えておきましょう。あなたが演習に対してもつ嫌悪感というものが、実際の戦闘活動に影響しないといいですな?」
「ミスター・コルラミ、私もやると言ったからには本気です。…遠慮はしませんよ?」
ピカードは微笑んだ。コルラミはため息をつき、腕を組んだ。


※1: ブラスロタ星系 Braslota system

※2: Zakdorn
初登場。形容詞形で "Zakdornian" という言葉も使われています

※3: Sirna Kolrami
(ロイ・ブロックスミス Roy Brocksmith DS9第77話 "Indiscretion" 「デュカットの娘」のラズカ・カーン (Razka Karn) 役。映画「トータル・リコール」(1990)、ドラマ「ピケット・フェンス ブロック捜査メモ」(92〜96、サブレギュラー)、新スーパーマン「仕組まれた能力テスト」(93) に出演。2001年12月に死去) ファーストネームのシルナは訳出されていません。声:神山卓三、旧ST4 スコットなど

※4: 原語では「9,000年以上前から」とも言っています

※5: 原語では「そんな評判は無意味だ」

※6: この図にはアニメネタの内輪向けジョークとして、「ラブリーエンジェル作戦」、星系内の 3つの惑星名で「ケイ」「ユリ」(いずれも「ダーティペア」より)、「トトロ」(「となりのトトロ」より) と書かれているそうですが、視認は難しいと思われます

※7: 吹き替えでは「8年前」

※8: 宇宙巡洋艦 (starcruiser)。このような種別が言及されるのは珍しいこと

※9: Hathaway
U.S.S.ハサウェイ、コンステレーション級、NCC-2593。ウィリアム・シェイクスピアの妻、アン・ハサウェイにちなんでかもしれません

※10: laser pulse beam
吹き替えでは「(システムを) 通信用電波システム」

※11: TNG第42話 "Q Who" 「無限の大宇宙」より

・本編
通常航行中のエンタープライズ。
※12ピカード:「副長、ハサウェイに乗船する 40名を選んでおいてくれ。だがデータはおいていけ、君がいない間の代理を務めてもらう。」
コルラミ:「そのことなら、私が選んでおきましたよ※13。」
「…本艦では、派遣チームの権限は全て副長に任せてあります。…彼の能力を判断するなら、初めからどうぞ※14。」 制服の裾を伸ばすピカード。
「結構ですよ、艦長?」 コルラミは鼻歌を唄いながら、ブリッジを出ていった。
笑うポラスキー。「まあ、可愛らしい方?」
ピカード:「ドクター?」
「大先生なのにまるで子供がすねてるみたい。」
データ:「ザクドン人の精神は、過剰なほどの自信であふれているんです※15。実際、実力もあります。例えばミスター・コルラミは、戦略ゲーム※16の第3位グランドマスターですから。」
ピカードはポラスキーを見た。

部下に指示するラフォージ。「もう一ミリ。そう、もう少し。そこだ! よーしいいぞ。」
機関室に入るライカー。「ジョーディ。」
ラフォージ:「どうしました。」
「ハサウェイの演習の件は聞いたか。」
「もちろん。頑張って下さい。ハサウェイのアヴィダイン・エンジン※17は調べました。古くて扱いにくそうですよ。」
「最悪の場合でも、48時間以内に起動できるかな。」
「実は、乗員に選ばれると思って準備しておきました。」 カバンを持っていくラフォージ。

船の模型を組み立てているウォーフ。そばにはクティンガ級巡洋戦艦の模型が置いてある。
ドアチャイムが鳴ったとき、力が入りすぎて棒が折れてしまった。
ウォーフ:「……入れ!」
ウォーフの部屋に入るライカー。「…邪魔したかな。」
ウォーフは模型を全てゴミ箱に入れた。「…何でしょう。」
ライカー:「演習のことは知ってるな、どう思う。」
「時間の無駄です。」
「足慣らしだと思えばいい。」
「下らない。何も失う心配のない戦争など、得るものはありません。」
戦士が闘っている像を見るライカー。「プライドを賭けるのはどうだ。と言っても、しょうがないな。今回は勝ち目がないだろう。」
ウォーフ:「チャンスは必ずあります。」
「まさか。ハサウェイに搭載された旧式の武器が運良く動いたとしても、エンタープライズには勝てない。」
「いや、しかし…」
「君は強く大胆で頭もいい。ほかに何が売りだ。」
ウォーフは腕を組んだ。「……駆け引きです。」
ライカー:「来てくれるか。」
立ち上がるウォーフ。「喜んでお受けします。」

ブリッジ。
ターボリフトを出たライカー。
ピカード:「ブラスロタ系周囲 3光年をスキャンして、安全確認しておけ。クルーは選んだか?」
ライカー:「はい、それで一人追加したいんですが。」
「特に誰か。」
「許可がいただければ、クラッシャー少尉を研修も兼ねて乗せたいと思います。」
微笑み、振り返るウェスリー。ピカードはうなずいた。
ウェスリー:「ありがとうございます。」 出ていく。
ライカー:「ブラスロタ系に着くまで少し時間があります。よろしければ、戦略ゲームの御相手をしていただけませんか。」
コルラミ:「はあ、私に挑戦したいという気概は評価しますがね。ご自分の実力を考えた上でのお申し出なんでしょうな?」
「挑戦したいんです。」
「なるほど、はー。ま素人さんとお手合わせを願うのも、たまには新鮮でいいもんです。」 コルラミは鼻歌を口ずさみながら、去った。
「では後で。」

廊下。
ラフォージ:「期待してます。」
ライカー:「無理だ。」
「でも、勝算はありますよね。」
「いや?」
「きっと勝てますよう。」
「まさか!」
「じゃ負けを承知でやるんですか?」
「そうだ。相手はグランドマスターだぞ、対戦できるだけでも名誉だろ。」
「そりゃ名誉は名誉ですけど、見せ場ぐらい作って下さい。」
「無理だ。」
「応援しがいがありそうです。」

コルラミの指に、ケーブルのついた装置をはめていくトロイ。
話すクルー。「楽しみだわ…」
前に座っているライカーにも、同じようにウォーフによって準備が進む。
テン・フォワードに来ているポラスキー。「実力の接近した者同士でやると決着が 1万点※18前後でつくはずなんだけど。」
ラフォージ:「フン、そんなに長く見物できそうもないですよ?」
ウォーフ:「先ほどみんなで、賭けをしたんです。副長の勝ちに大きく、注ぎ込みましたから。」
ライカー:「もし負けたら。」
「…その時は、暴れますよ。」
ウォーフを見るライカー。
データ:「未だにわからないのが、競争への欲望です。」
ポラスキー:「人間の生理よ。…対決することで自分の力を証明したいっていう本能なの。」
「能力を試すなら、独りでもできます。」
笑うポラスキー。「そうだけど、それじゃスリルがないじゃない。」
トロイ:「データ? 人には時々、他人に自分の実力を判定して欲しいと思うこともあるのよ。」
データ:「第三者の評価ですか?」
ポラスキー:「そうだ、あなたもこの際だから挑戦しなさいよ。」
「なぜです?」
「あんなに自信過剰な人は、時々ガツンと凹ましてやった方がいいのよ?」
ラフォージ:「そりゃいい。さすがのミスターもグウの音も出なくなるぜ?」
データ:「何の音だって?※19
微笑むトロイとポラスキー。
ウォーフ:「コンピューター、戦略ゲームの対戦準備を。用意、スタート。」
ライカーとコルラミの間に盤面の映像が現れた。2人の点数が表示され、指を激しく動かす。
応援するクルー。「頑張って、そこ!」 「右よ、右。そこ!」 「しっかりして!」
すぐに決着がついた。ライカー 23点、コルラミ 100点。
クルー:「あーあー。」「あれ?」
映像も消える。
コルラミ:「うーん。」
ポラスキー:「もう終わり?」
ライカー:「残念ながら。」
「でもたった 23点で。」
「ええ。お見事でした。」
コルラミ:「うーん。」 指を振り、微笑む。


※12: この辺のシーンが最もわかりやすいと思いますが、ブリッジ後方のモニタースクリーン (左から 2番目の中央など) に黒い厚紙のようなものが貼ってあるのがわかります。光の映り込みを避けるためと思われます

※13: 原語では「あなたがクルーを決めると思ってましたよ」

※14: 吹き替えでは「演習を見てどうぞ」。クルーを選ぶ段階から判断してくれという意味

※15: 吹き替えでは「スポイルされているんです」。スポイルは「損なう、駄目にする」という意味であって、カタカナ語の誤用だと思われます (原語では replete。spill との勘違い?)

※16: ストラタジェーマ strategema

※17: Avidyne engines
脚本家の Melinda Snodgrass が、カルトSF映画「バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー」(1984) の「ヨーヨーダイン」にちなんで命名。元々はトマス・ピンチョンの小説「競売ナンバー49の叫び」より。吹き替えでは「エンジン」のみ

※18: 原語では「1,000手」。後の「28点」も「28

※19: 原語では、ラフォージ "I'd like to see your neural flecks tear him down a peg." ("tear 〜 down a peg" で「面の皮を剥ぐ」という慣用句) データ「何のために?」

惑星に近づくエンタープライズ。前に宇宙艦がある。
ピカード:「ライカー中佐。あれで名誉挽回だ。」
スクリーンに映る、コンステレーション級の U.S.S.ハサウェイ※20
ウォーフの通信が入る。『派遣チームの転送準備、完了しました。』
ライカー:「ホームシックにかかりそうです。」
ピカード:「頑張れよ、副長。艦長?」
コルラミ:「48時間後に始めますからね。」

暗いブリッジ※21を、ライトで照らすクルー。
ラフォージ:「非常用ライトぐらいあってもよさそうですが。」
操作すると、コンピューター画面や明かりが復旧していく。ボロボロな状態が明らかになった。
ウォーフ:「何だこれは。」
ライカー:「いやあいいじゃないか、ウォーフ。こりゃ最高だ。俺たちの船だぞ?」 布を取った。「君の席だ。」
すぐに椅子に近づいたウォーフ。「……しかし、ラフォージ大尉※22の方が私より上官ですし。…やはり私は…」
ライカー:「ウォーフ、君には戦略を受けもってもらうことに決めた。ジョーディと相談した結果だ。君が副官だ。」
ラフォージ:「頼むよ、俺はエンジンの整備で手一杯だからな?」
艦長席に座るライカー。剥き出しのコードをどける。
パネルを操作すると、呼び出し音が鳴った。「U.S.S.ハサウェイの諸君に告ぐ。こちら艦長だ。これから 2日間ろくに寝られなくなるが、諸君の技術と体力でもってこのポンコツを飛ばしてくれ。…各部進行状況を逐一報告すること。以上だ。」 ライカーは微笑んだ。

暗い部屋に入るラフォージたち。ワープコアらしき装置が見える。
パネルを操作すると、明るくなった。装置を取り出すラフォージ。

ハサウェイの円盤部のライトが灯り、ワープコアも青く光る。全体の窓が明るくなっていく。
ライカー:「さすがだな、ジョーディ。ワープはどうだ、使えそうか。」

パネルを開けるラフォージ。「うーん、ダメですね。ダイリチウムの破片※23が、申し訳程度にへばりついてるだけです。無傷の結晶があったとしても、動力になる反物質がありません。」
ライカー:『何か対策は。』
「お手上げです。」
ウェスリー:「一度帰りますか?」

ライカー:「…エンタープライズに戻りたいのか、クラッシャー少尉?」

ウェスリー:「…いいえ!」

ライカー:「ウェス、何事も臨機応変に対応しろ。すぐにあきらめるな!」

ダイリチウム結晶の破片を見るラフォージ。

エンタープライズのブリッジに入るポラスキー。
ピカード:「宇宙チャンネル。」
コルラミ:「皆さん、ルールは把握して下さいましたね。」
「武器の転換は終わったのか。」 裾を引っ張るピカード。
保安部員のバーク少尉※24。「終了しました。」
スクリーンに映るウォーフ。『シグナル受信。どうぞ。』
ライカー:『…かなりひどい状態です。』
コルラミ:「そちらの武器はコンピューターが勝手に切り替えますからね!」
『戦うどころか飛べもしないんですよ?』
「挑戦です! …ザクドン人は不公平でも愚痴はこぼしません。不利な状況下でどう行動できるかが、今回の評価点なんです。…そうでしょう? 相手よりいい武器をもっていれば普通は、誰が指揮したって勝つんです。」 ピカードを横目で見るコルラミ。
ピカード:「チャンネルオフ。データ、ブリッジを頼む。」
データ:「了解。」
コルラミ:「時にデータ少佐、あなたも挑戦したいとか。ドクター・ポラスキーから戦略ゲームで対戦なさりたいと聞きましたが。」
データとコルラミを見るポラスキー。
データ:「いや。私はそのような話は…」
ポラスキー:「ああつまり、とても自分からは恐れ多くて御願いできなかったんですが、彼が先生と対決したいと思ってるのは本当ですわ?」
コルラミ:「うーん、今度は機械ですか。はー、心が動きません。」
「…当然ですわ? 負けるとわかってて誰もやりたくありませんもの…」
「負けやしません! どうやら証明しないと、納得いただけないようですな。」
「データ、こんなチャンスを () がすつもり?」
データ:「ですが…」
小声で話すポラスキー。「お願い!」
データ:「…やりましょう。」
コルラミ:「じゃあガッカリさせないで下さいよ? フフーン…」 出ていった。
ポラスキー:「船の代表よ? これで負けたら評判ガタ落ちね。」
何も言わず、艦長席に座るデータ。

ハサウェイ。
ウォーフ:「エンタープライズのセンサーの自動制御が切れれば、センサーに敵艦が近づいたと誤って認識させることが可能です。自らの機械に、だまされるんです。」
ライカー:「ほんとにそんなことができるなら、攻撃の糸口になるな。」
女性士官のネーゲル少尉※25。「でも、ビューワーには出ませんね。」
ウォーフ:「…それも上手くやれば、コンピューターを使って敵艦の映像をメインビューワーに映し出すことは可能です。」
「うーん…」
ライカー:「じゃ誰かが直接外を見ない限り…」
「まんまと引っかかるわけですね?」

ダイリチウム結晶室から、一連の装置を取り外すラフォージ。
中に触れるウェスリー。「内張は綺麗です。あとは、集めたダイリチウムのクズでどうにかしなきゃなりませんね?」
ラフォージは装置を戻した。「そうさ、システムが良くっても反物質がなきゃあ話にならないからな。」
ウェスリー:「…僕エンタープライズに戻ります。」
「あと 32時間しかないぞ?」
「大事な用で。」
「これは大事じゃないのか?」

ネーゲルに命じるウォーフ。「ここを、バイパスでつないでくれ。上手くいけば、向こうの度肝を抜ける。」
ネーゲル:「でも、光ケーブル※26がありませんよ?」
ウォーフは天井から、何本もの束を引き抜いた。「周りを見ろ!」
ブリッジに入るウェスリー。「…艦長。…実験中の物を置いてきたんです。帰って止めたいんですが。」
ライカー:「重要なことか。」
「爆発性があります。プラズマ物理学の研究で。」
ため息をつくライカー。

報告するバーク。「ハサウェイより通信です。」
ピカード:「スクリーンに。」
ライカー:『クラッシャー少尉の再乗船許可を要請します。』
「どうした。」
『慌ててこちらに来て、実験中の危険物をエンタープライズに放置してきたそうです。』
「よろしいですか?」
話を聞いていたコルラミ。「監視つきで、余計な情報を持ち帰らんように。それなら結構でしょ。」
ピカード:「乗船を許可する。バーク、収容してくれ。」 裾を伸ばした。
バーク:「了解。」
コルラミ:「ライカー君も何を考えているのか。あんな子供を連れて行くとは。」 パッドを操作する。

並んだボタンが押されると、中が開いた。装置が入っている。
ウェスリー:「忘れてくるなんてバカですね? ついつい興奮しちゃったみたいです。」
バーク:「ああ。」
「繊細なんです、セッティングに 2ヶ月ですよ?」
周りを見ているバーク。「大変だな。」
ウェスリー:「ひっどい。壊れてます。」
「残念だな。…な、ウェス。まだ時間かかるのか。」
「これ爆発物なんです、ちゃんと廃棄処理しなくちゃ。…転送で素粒子化して捨てます。」
「それがいい、早くしろ。」
「じゃ転送室まで持っていきます。」
機関室を出る 2人。

ハサウェイ。
作業しているラフォージの脇に、ウェスリーの装置が転送された。
傾いた音で、それに気づくラフォージ。


※20: ミニチュアは TNG第9話 "The Battle" 「復讐のフェレンギ星人」に登場した、同級のスターゲイザーの再利用

※21: ハサウェイのブリッジは、エンタープライズ戦闘ブリッジの改装。パネル類は映画期エンタープライズ-A のデザインを使用しています。記念銘板によると、月のコペルニクス造船所 (Copernicus Ships Yards) にある、ヨーヨーダイン推進システムズ (Yoyodyne Propulsion Systems) で建設されたそうです。これも映画「バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー」より (脚注※17 参照)。船のモットーも、同映画から取られた "No matter where you go, there you are." 「自分だけはいつもそこにいるんだよ (DVD 字幕訳)」

※22: 吹き替えでは「尉」。第2シーズンではラフォージは大尉に昇進しています。直後のセリフも吹き替えでは「私より先輩」。この時点ではまだウォーフは中尉です

※23: 撮影では青いロウソクを使用

※24: Ensign Burke
(グレン・モーシャワー Glenn Morshower TNG第144話 "Starship Mine" 「謎の潜入者」のオートン (Orton)、VOY第28話 "Resistance" 「レジスタンス」の看守その1 (Guard #1)、ENT第61話 "North Star" 「ウエスタン」のマクレイディ保安官 (Sheriff MacReady)、映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」のエンタープライズ-B 操舵士官 (Enterprise-B Conn Officer) 役) 原語では直前のピカードが「バーク中尉 (もしくは大尉)」と呼びかけていますが、後のセリフ、実際の階級章、エンドクレジットではいずれも少尉です。声:菅原正志

※25: Ensign Nagel
(レスリー・ニール Leslie Neale) 名前・階級は訳出されていません。声:百々麻子

※26: opti-cable

エンタープライズ。
ポラスキーはデータに耳打ちした。「ぶっ潰せ。」
またクルーが集まっている。「今度こそ大丈夫よね…」
データ:「いま言われたんですが、『ぶっ潰せ』と。何を潰せば。」
トロイ:「彼女なりの言い方で、ミスター・コルラミを叩きのめしてやれってことなのよ?」
「暴力ですか?※27
2人の間に立つバーク。「用意。スタート!」
ゲームが始まった。
クルー:「あーそこそこ、頑張って!」
コルラミは今度は苦しんでいるようだ。
クルー:「もう一度、もう一度!」「見てみて!」「あーそこよそこ、早く!」
盤面が消えた。
ポラスキー:「そんなバカな。コンピューターが人間の頭脳に負けるなんて。」
笑うコルラミ。「シー!」
トロイ:「グランドマスター相手に、あそこまでよくやったわ。」
「久々に楽しませてもらいましたよ。あー、雪辱戦ならいつでも受けて立ちますぞ。」
データ:「感謝します。でも、それには及びません。」
「フーンフーン。」 テン・フォワードを出ていくコルラミ。
ポラスキー:「どうやったら負けるのよ。あなたは完璧なはずよ?」
データ:「明らかに、欠陥があります。」

ブリッジ。
空の副長席。
ピカード:「少尉、データはどこにいる。」
バーク:「一時的に任務を降りブリッジを離れると。」
コルラミ:「あなたのクルーは皆さん優秀ですな。さすがの指揮ぶりでらっしゃる。しかしながらですな、もう一度訓練なさった方がいいかと。」
ピカード:「なぜです。」
「私の予想するに、ライカー『艦長』はさほど期待できそうにないのですよ。」
「ミスター・コルラミ、少しお話があります。」

作戦室に入ったピカード。「ライカー副長のどこが不満でらっしゃるのかうかがいましょう。」
コルラミ:「艦長、私は何も…」
「ミスター・コルラミ、あなたは本艦に乗ってこられたときからライカー副長を侮辱することばかり言っておられます。ぜひそのわけをうかがいたい。」
「…この任務に当たりウィリアム・ライカー中佐の経歴を調べたのですが、能力不足に…気づいたんです。」
「その根拠は。」
「あー…今までの、成績に問題はありません。しかし、ご存知のように宇宙艦※28の艦長は選ばれし者しかなりえないはずです。艦長になる資質とは生来もっているものであって、あとから身につくものではない。」 水槽を見るコルラミ。
ピカードはその様子を不思議そうに見つめる。
コルラミ:「それであの男に探りを入れてみたところ、艦長たる厳格な存在には相反するような楽天性以外何も感じられなかったのです。」
ピカード:「彼の能力を外面で、判断されています。ライカー中佐の宇宙艦隊への貢献とその統率能力を疑うとは全く愚かなことです。彼は私が見た中でも、最高の士官と断言できます。」
「あなたの信念が正しいか否かは、じっくり見てみましょう。」
「今回はクルーが、ライカーの指揮通り動くかどうかのテストです。彼の…あの陽気さは、部下との信頼を引き出すための手段なんです。今回私は彼の指揮スタイルにあなたの統計論で戦うことにします。」
「うーん。」

自室のデータは、ドアチャイムに応えた。「お入り下さい。」
トロイ:「データ?」
「カウンセラー。どうかしましたか?」
「…それは私が聞きたいことよ?」
「…先ほどの戦略ゲームですが、私は人間よりいい結果を出せると予測していました。」
「でもね? 今の人類の進歩も、さまざまな失敗があったからこそなのよ? エゴで、判断を誤ることだって…」
「カウンセラー! …私にエゴはありません。」
「そうね? …それじゃあ、負けてガッカリして心が…」
「でもカウンセラー、私は心は…」
「データ? …負けるには二つの負け方があるわ? すっかり自信をなくすか、それともそこから学ぶかよ。」
「うん、それで困っているんです。私にミスはなかった。…全てのプログラムをチェックしましたが異常がないんです。マザーコンピューターで、再検査させています。」
「そんなの必要かしら。」
「そう信じます。欠陥はないと判明したんです。現在までで、残る可能性は検査ミスしかありません。」
「それでブリッジを離れたのね?」
「そうです。…ブリッジで誤った判断をするわけにはいきませんから。」
「…あなたの考えすぎよ? 異常なんかないわ?」
「うーん…しかしまだ、納得できません。」 操作を続けるデータ。
トロイは出ていった。

ウェスリーの装置をセットするラフォージ。「ゆっくり? こうか?」
ウェスリー:「そうですね。」
「よーし、よくやった。」
「ええ。」
「連結器※29を取ってくれ。」
ライカーが機関室に入る。「…それは。」
ウェスリー:「僕の卒業※30制作です。」
「ウェス。」
「プラズマ反応でエネルギーを生むんです。反物質の。」
「…これを取りに戻ったのか?」
うなずくウェスリー。
ライカー:「だましたな。」
ウェスリー:「違います。臨機応変にと。」
ラフォージ:「熱伝導の早さを計測しないと、まだ反応の調整ができません。」
ライカー:「…それができたら、使い物になるんだな。」
ウェスリーは微笑んだ。「ダイリチウムの量は大丈夫です。」 装置を引き出す。「この破片を通して反応を変換します。」
ラフォージ:「いかがですか?」
ライカー:「すごいなんてもんじゃない、素晴らしいよ。」 ラフォージの腕を叩いた。「楽しみだ、頼んだぞ!」

エンタープライズ。
まだ部屋にいるデータは、ドアチャイムに応える。「お入り下さい。」
ポラスキー:「いい加減にしてよ、もう十分でしょ?」
「…ドクター…」
「あなたいつまでここにウジウジ閉じこもってるつもりなの※31。」
「私はシステムのチェックを…」
「そんな言い訳したって私には通じないわ。あなたは負けたからいじけてるだけ、それだけのことよ。」
「いえ、違います。私が懸念しているのは、ブリッジで間違った判断を下すことなんです。」
「…元はと言えば私が無理にやらせたのが、悪かった。ごめんなさい。」
「なぜです? ゲームをして、私は負けました。このことで私の欠陥が判明したのです。それを探さねばなりません。」 データは作業に戻った。
無言で出ていくポラスキー。

再びライカーが機関室に入った。「演習開始まで一時間だ。」
ラフォージ:「ワープも使えますが、ただ御期待に添えるほどでは。」
「構わんよ、どの程度使える。」
「ワープ1 で飛べますが、時間は…」
ウェスリー:「たった 2秒間です。」
ライカー:「逃げることは無理だなあ。でも目くらましに使えば、有利に攻撃できる。」
ラフォージ:「でも、理論上はですよ?」
「理論通りにいかなかったら?」
「クラッチ式のモーターボート※32運転したことは?」
「ある。」
「エンストしたら?」
「急に失速するというのか。」
ウェスリー:「エンタープライズが突っ込んできて木っ端微塵です。」


※27: 原語では、トロイ「最短の方法で勝てってことなのよ?」 データ「それ以外にあるんですか?」。ちなみに「ぶっ潰せ」="Bust him up."

※28: 吹き替えでは「宇宙艦」

※29: 吹き替えでは「ペネトロン」。connector のはずですが…

※30: プラズマ物理学の最終試験 (評価) という意味

※31: 原語では「テントに入ったアキレスみたいに」とも言っています

※32: 原語では「グレンスメン水上ホッパー (Grenthemen water hopper)」

エンタープライズ。
作戦室のピカード。「つまりこういうことか。データ少佐はミスター・コルラミとのゲームに負け、自信を全くというほど失ってしまいその自信を回復できるのは私だけだというのか。」
トロイ:「そうです。」
ポラスキー:「私達も説得しましたが聞いてくれなかったんです。」
ピカード:「…2人とも、考えすぎだと思うが。データがそのような感情的反応を起こすとは考えられん。」
「でも事実なんです。その原因が人間的感情にせよ、機械的な反応にせよ、データはブリッジに出ないんです。そのうち出るとも思いません。…誰かが彼の問題を解決してあげないと。」
「…演習が始まるまで一時間もないって時に、アンドロイドを慰めに行くってわけか。」
「指揮官の責務です。」

自分の構造図を見ていたデータは、ドアチャイムに応えた。「お入り下さい。」
ピカード:「データ、さっさとブリッジに戻って任務に就け。」
「艦長。艦のためを考えて、副長には私以外の方を選んでいただいた方が。」
「データ、君が本艦の副長だ。」
「どこが悪いのか判明していないんです。判断を誤ることも。」
「誤るかもしれん、だからといって君の任務が変わったことにはならない。仮定条件から推論を引き出せるか?」
「できます。」
「では考えろ。…私はハサウェイとどう戦うべきか、その答えはブリッジで聞こう。」 ピカードは外へ向かう。「いいか、データ。完璧を期して、それでもミスをすることは誰にでもある。…それは欠陥ではない。当たり前のことだ。」
「…理解できると思います。」
「次にブリッジに来るときは、ためらいや疑いを捨ててこい。」 出ていくピカード。
データはコンピューター画面を消した。

観察ラウンジ。
データ:「ライカー中佐にはいくつかの戦術パターンがあります。アカデミー時代の戦闘シミュレーションでは、ソリアン※33艦のセンサーの死角になる範囲を割り出した後にそこに艦を隠しつつ攻撃したんです。次にポチョムキン※34艦の中尉時代に彼が取った戦術は、全てのパワーを遮断し惑星の磁極に留まるというものです。それで敵艦のセンサーが狂ったんです。」
トロイ:「そういうことを考え合わせた結果、今回はどういう行動に出ると考えられるの?」
「彼が常套的戦略を取る確率は 21%。つまり…奇襲戦法でくる確率がかなり高いのです。…カウンセラー? ライカー中佐は、こちらの読みも当然考えています。こちらの知っている戦法は使ってきません。しかし、あえてこちらの読みを外して普段の戦法に戻るかもしれません…」
「待って、まって。それは分析しすぎだと思うわ? …その人の性格は必ず出る。ライカー中佐とはどういう人?」
「…闘志がある。」
「そうね。」
「立場が弱いほど、より攻撃的になります。」
「そして決してあきらめない。」
「ではどんな条件を与えられたとしても、必ず…」
「そうよデータ、そういう人よ?」
「うーん。それは欠点にもなりうると?」
「…それは自分で判断してちょうだい?」 出ていくトロイ。

ブリッジ。
立ち上がるピカード。「ビューワーオン。さてと、用意はできたか。」
ライカー:『もちろん。覚悟して下さい。ライカー艦長は無敵です。』
ピカードは微笑んだ。
コルラミ:「それでは、始め!」
ピカード:「ビューワーオフ。コース、223。マーク、357。全速前進、クーマ作戦※35でいくぞ?」

コンピューターに映る、ハサウェイとエンタープライズの位置図。
ラフォージ:「クーマ作戦だ! 何でこんな子供だましの手できたんでしょう。」
ライカー:「からかってこっちがどう出るかを見るつもりなんだろう。ウォーフ。」
ウォーフ:「こちらはタルピアン作戦※36で、小手調べします。」
「よし、速力 4分の3。合図で全速だ、スクリーンを張れ。ウォーフ、びっくり箱を開けよう。」
「了解!」

ピカード:「コースセット、317。マーク、73。動きを読まれるなよ? 全方向に魚雷を発射次第、ワープ1 だ。」
スクリーンにハサウェイが見えている。
バーク:「艦長、ロミュランの戦艦が後方より接近中。」
ピカード:「何だと?」
「急に現れたんです。」
「方向転換、防御スクリーンを張れ。…武器システムを回復しろ。」 スクリーンに映るロミュラン・ウォーバード。「来たぞ、宇宙チャンネルオン!」
「できません、だまされたようです!」
攻撃される音が響く。大笑いするコルラミ。
ハサウェイはエンタープライズを、レーザービームで攻撃している。
ピカード:「ワープ3、退避だ。スタンバイ、武器とスクリーンを解除。演習用ビームに戻せ。」 制服の裾を引っ張る。
コルラミ:「いい作戦です、ヒ。」
「手強いな。」
データ:「船尾側デッキに 8個所、ダメージの表示が出ています。修復時間は 3.6日です。」
バーク:「でも、どうやったんです。」
ピカード:「多分ウォーフが、センサーの自動制御を切ってあの映像をビューワーに送ったんだ。センサーの制御をリセットしておけ。攻撃態勢。一発お見舞いしてやろう。」 裾を伸ばす。「ビーム砲用意、光子魚雷だ。」
「…バイバイ、ハサウェイ。」

ウォーフ:「エンタープライズに重度のダメージを与えました。」
ウェスリー:「逃げていきます。追いかけないんですか。」
ライカー:「向こうが追ってくるさ。ウェスリー、ジョーディ、ワープの準備だ。」
ラフォージ:「本当に動く、保証はないんですよ。」
「戦闘に保証などいらん。ただちにポジションにつけ。私の合図でワープだ。」

ピカード:「光子魚雷発射用意。」
バーク:「艦長、フェレンギ艦がワープ5 でこちらに接近中だとセンサーが。」
「センサーはリセットしたのか?」
データ:「確かに。」
「ウォーフ中尉、同じ手は通用せんぞ? 作戦を続行しろ…」
船が大きく揺れた。
ピカード:「防御スクリーン最大!」
データ:「武器回復します。」
「フェレンギにハサウェイを撃たせるな…」
「フェイザー砲、発射準備完了!」
「発射!」
エンタープライズを攻撃する、フェレンギ・マローダー。

ネーゲル:「映像じゃありません、ほんとにやられてます!」
ウォーフ:「援護しなければ。」
ライカー:「こっちには何の武器もないんだ。」

ピカード:「フェイザー砲はどうした。」
バーク:「駄目です、回線がショートして演習用のビームモードが解除できないんです。」
スクリーンに映るマローダー。
コルラミ:「早く退避しろ!」
ピカード:「それはできません。」
データ:「フェレンギ艦は攻撃を中止。スクリーンを降ろして、ハサウェイの人員収容を。」
バーク:「転送室が故障しています。」
「スクリーンの強度 5分の1 です。」
コルラミ:「このままではダメだ、早く脱出を…」
ピカード:「ハサウェイに 40名残っているんです。」
「1,000名の命を救うためなら致し方ない。状況を考えれば、犠牲を出すことも決断せねばならんのだ!」
「お断りします! …宇宙艦隊に最優先で報告し※37、フェレンギ艦に呼びかけろ。データは修復作業を。」
「宇宙艦隊の監督役として君に撤退を命令する!」
「私は本艦の艦長だ! …命令は却下する。」
「クッ!」
「フェレンギをビューワーに出せ。」
フェレンギ人が映る。
ピカード:「私はジャン・リュック・ピカード。宇宙艦隊 U.S.S.エンタープライズ※38の、艦長だ。…なぜ本艦を攻撃した。」
デイモン:『なぜお前らの船は同じ艦隊の古い型の船と、戦っているというのだ。それを今身を挺してかばうとは、一体どういうわけだ。…あの船がそれほど大切なのか。』
フェレンギ戦術士官※39:『我々の接近を察知していながら、逃げもせんのはどういう理由だ。』
『答え次第でお前らの運命が決まると思え。』
ピカード:「…気づいてはいたが、余計な攻撃をせず平和的に解決したかったから動かなかったのだ。」
デイモン:『お前らのエンタープライズはもはやただの屑鉄だ。背後にある船には、武器もなければ速く飛べるエンジンもない。乗ってるのは怯えたクルーだけだ。』
フェレンギ戦術士官:『あんな船を守って何になる。何か特別価値のあるものでも、乗っているのか。』
『俺はブラクター※40。フェレンギの駆逐艦、クリークタ※41の艦長だ。背後に隠した船は、我々フェレンギが頂くことにする。…おとなしく差し出せ。そうすればお前らのエンタープライズは、このまま見逃してやろう? …しばらく考える猶予を与える。』 通信は終わった。
バーク:「艦長、エンタープライズはフェレンギ艦のミサイル※42に捕捉されています。」
ピカード:「…データ。」
データ:「防御スクリーンはもう攻撃に耐えられません。」
コルラミ:「では二つの道しかあるまい。撤退か、あるいは死か。」


※33: Tholian
TOS第64話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」など。吹き替えでは「アカデミー時代は」となっており、訓練であることが明示されていません

※34: Potemkin
U.S.S.ポチョムキン、エクセルシオ級、NCC-18253。初言及。エカテリーナ二世時代のロシア軍人、グリゴリ・アレクサンドロビッチ・ポチョムキン (1739〜91) にちなんで。TOS でもコンスティテューション級の同名船が登場しています (NCC-1657、第53話 "The Ultimate Computer" 「恐怖のコンピューターM-5」)

※35: Kumeh maneuver

※36: Talupian maneuver
吹き替えでは「タルアン作戦」とも聞こえます

※37: 吹き替えでは「こちらの優位を伝える」

※38: 吹き替えでは「エンタープライズ

※39: Tactician
(デイヴィッド・L・ランダー David L. Lander ドラマ「ラバーン&シャーリー」(1976〜83) の Squiggy 役) 声:水野龍司

※40: Bractor
(アーミン・シマーマン Armin Shimerman DS9 レギュラー、フェレンギ人クワーク (Quark)、TNG第5話 "The Last Outpost" 「謎の宇宙生命体」のフェレンギ人レタック (Letek)、第11話 "Haven" 「夢の人」の結婚ギフトボックス (Wedding Gift Box) 役) 映像では確認しづらいですが、今回からフェレンギ人には襟に階級章がついているそうです。声:桑原たけし

※41: Kreechta
フェレンギ艦の名前が設定されるのは初めて

※42: 原語では武器の種別は言っていません

『航星日誌、補足。私自身の判断ミスにより、エンタープライズはフェレンギ艦の奇襲を受け傷ついている。私はあと数分間で、武器もないハサウェイ艦に乗る 40人の運命を決断せねばならないのだ。』
ブリッジ。
ピカード:「それでは、みんなの意見を聞こう。」
バーク:「艦長、今なら数発ですが光子魚雷を発射することができます。」
コルラミ:「私は先ほど申し上げた通り、撤退するよりほかにありません。」
「ライカー中佐から通信です。」
ピカード:「ビューワーに。…副長、フェレンギとの交信は聞いたな?」
ライカー:『はい。ミスターの言うとおり、エンタープライズを救って下さい。』
「それでは君らが無防備になる。」
『フェレンギに接近させて、我々がワープします。それがチャンスです。』
「…何だと?」
『2秒間だけならワープできるんですよ。』
コルラミ:「そんなバカな、ワープ機能は壊しておいたはずだ。」
ピカード:「彼は恐るべき男ですよ。チャンネルをオンにしたまま待っててくれ。少し、データと相談してみたいアイデアが浮かんだのでな。」

観察ラウンジのデータ。「問題は、フェレンギがハサウェイに価値があると信じて乗っ取ろうとしていること。ですから、ハサウェイへの興味を失わせればいいのです。」
コルラミ:「ワープが成功しても、2秒後には見つかってしまうんですぞ…」
ピカード:「考えがあります。副長、聞こえるか。」
ライカー:『全員ここで聞いています。みんな艦長の決断を待っています。』
「説明しろ。」
データ:「艦長の合図で、4発の光子魚雷をハサウェイに向けて発射します。魚雷発射後 1,000分の1秒で、ハサウェイがワープします。」

ラフォージ:「ちょっと待ってくれよ、データ。ワープが上手くいくかどうか保証も何もないんだ!」

データ:「ワープが作動しない場合は、結果はとても…不幸なことに。」
ウォーフ:『間違いなく、全員死にます。』

ピカード:『ライカー艦長、私にはこれを命令できない。』
ライカー:「やりましょう、命を捨てる覚悟はできてます。」

ピカード:「これが成功すれば、フェレンギ艦のモニターには君たちの船がまるで…爆発して粉々になったように映るはずだ。」

ウォーフ:「それではほんの数分間しか稼げません。センサーで居場所はすぐ見つかります。」
ライカー:「数分間でいいんだ。今度はフェレンギ人にびっくり箱を送ってやろう。」
ピカード:『こちらは了解した。作戦開始は、4分後だ。』

データ:「…ジョーディ、気をつけろ? ワープが 1,000分の1秒でも遅れた場合は、ハサウェイは助からない。」

ラフォージ:「データ、ほかのところはともかくそこのところだけは全員よーくわかってるよ。」
無言のライカーたち。

エンタープライズ。
ピカード:「準備はいいか。」
データ:「はい、艦長。」
ライカー:『了解。』
ピカード:「…幸運を祈ろう。ブラクターを。」
ブリッジのスクリーンに映ったブラクターは、ピカードに気づいた。『これ以上は待てんぞ、ピカード。』
ピカード:「決定した。答えはノーだ。…君らの言動は、理不尽で従うわけにはいかない。」
『愚か者めが!』
フェレンギ戦術士官:『断ってどうするつもりだ。』
ピカード:「ハサウェイに価値があるだと? 価値があるかどうか見せてやる。発射!」
操作するバーク。
エンタープライズは後方から光子魚雷を発射した。ハサウェイの目前で爆発する。
爆風が消えると、ハサウェイの姿もなかった。
フェレンギ戦術士官:『降伏するよりも自らの手で、同胞の命を絶つとは驚きだ。』
ブラクター:『惑星連邦にそのような冷徹さがあろうとは。』
ピカード:「別に文句を言うことはあるまい、もともと我々の船だ。」
ブラクター:『では我々は、エンタープライズを頂く。』
「やってみろ。」
フェレンギ戦術士官:『エンタープライズを目標に補足!』
笑みを浮かべるブラクター。
フェレンギ戦術士官:『艦長! 別の連邦の船が接近中です! …宇宙艦※43です。』
ブラクター:『防御フィールドを! まんまとだまされたか。撤退する!』
クリークタはワープで消えた。
バーク:「こちらのセンサーには連邦の宇宙艦※43などありませんが。」
ライカー:『もちろんないさ、これはクリンゴン作戦だ。』 スクリーンに映り、隣のウォーフを見る。
ピカード:「やったな、副長。見事なワープだ。」
『でも冷や汗ものでした。』
「転送室が直った頃だ。」
『やっと帰れますね。』
ピカードはコルラミを見た。
どもるコルラミ。「あ、いやいやその…しょうがない、認めましょう。その…ライカー中佐は…かなり優れた、あの能力をおもちでいらっしゃる、ヒ! …今までの評価は、勘違いで。あとで、艦隊本部に提出する書類の方はお任せを。」
ピカード:「それはどうも。」
「フン、フーン!」 コルラミはバークの肩を叩いた。
「修理を続行しながら出発の準備だ。」 ピカードは艦長席に座り、裾を伸ばす。「ここから最寄りの宇宙基地へ向かえ。」

『航星日誌、補足。転送室の修理は済み、クルーたちも全員無事だ。公式にも、宇宙艦隊初の軍事演習※44の成功が記録された。』
ハサウェイをトラクタービームで牽引するエンタープライズ。
ライカーとポラスキーはテン・フォワードに入った。
盛り上がっている声。「がんばってー! あー、さすがー!」「そこそこ!」「データ、頑張れ!」「右よ右、あーそこそこ!」
コルラミが苦戦している。点数は 2万点、3万点と増えていく。
冷静なデータ。コルラミは必死な形相だ。
ついにコルラミは自ら装置を外した。
データ:「ゲームをおやめになるんですか?」
コルラミ:「これは雪辱戦とは言えません! 私をいい笑いもんにしているだけです!」 出ていった。
ライカー:「データ、勝ったぞ!」
データ:「違います、負けなかっただけです。」
ウォーフ:「戦略ゲームでこんな高得点は初めてだ。」
ラフォージ:「何したんだよ。」
データ:「私はただ、仮定に基づいただけです。」
ライカー:「というと?」
「ミスター・コルラミは、勝ちを狙ってプレーするという仮定です。向こうは、私も勝ちを狙ってプレーしてくると思うでしょう。」
ウェスリー:「でも違った。」
「そう。私は同点を狙いました。引き分けです。向こうは勝とうと必死になりますが、私は相手の動きを見て同じように動いていただけですから、簡単でしたよ。理論的には、負けなければ勝ちもないわけですから。」
ポラスキー:「でも確かに勝ったのよ!」
「ものの見方ですよ、ドクター。厳密に言えば、勝ってはいません。」
声を上げる一同。「データ…」
データ:「ぶっ潰しました。」
大きな歓声が上がった。笑みを浮かべているようにも見えるデータ。

エンタープライズはワープに入った。


※43: 吹き替えでは「艦」

※44: 宇宙艦隊軍事演習 Starfleet battle simulation

・感想など
鉄板と言える「無限の大宇宙」「人間の条件」以外で、初めて取り上げる第2シーズンのエピソードです。TOS "The Ultimate Computer" 「恐怖のコンピューターM-5」で宇宙船を使った演習はありましたが、純粋な船同士の軍事シミュレーションが描かれるのは初となります。それどころか、宇宙艦隊の史上初めてという設定には改めて驚きました。ちゃんとボーグが言及されるのがいいですね。
レギュラーキャラ全員がきちんと描写されているのもお見事。後にもチラッと登場するザクドン (ザクドーン) 人、クワーク役シマーマンが再起用されたフェレンギ人もいい味を出しています。U.S.S.ハサウェイの「価値」に注目するところが、単なる攻撃的な悪役とは違うところですかね。


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USS Kyushuトップ | 「未踏の地」エピソードガイド