TNG エピソードガイド
第63話「亡霊戦艦エンタープライズ'C'」
Yesterday's Enterprise
イントロダクション
※1テン・フォワードにいるウォーフのところへ、ガイナン※2がグラスを持ってきた。「さあ、飲んでみて。」 窓の外では、ワープが解除されていくのがわかる。 ウォーフ:「……何です。」 「いいから飲んで。」 口にするウォーフ。目を開く。 ガイナン:「どう? 栄養満点よ? プルーンジュース※3。」 ウォーフ:「力が湧いてくる。」 「……しっかり栄養は摂らなきゃ。独りの生活は良くないわ? …いい人はいないの?」 「…私が誰かと付き合うとしたらそれは、クリンゴンの女だ。地球の女じゃかよわすぎる。」 「何言ってるの。中にはいるわ? あなたに似合う、豪傑も。」 大きく笑うウォーフ。「いるわけない。」 ガイナン:「探しもしないで。」 「探す気などない。」 「…意気地なし。」 「保安部長としての任務がある。今はそれで、手一杯なんだ。」 「…上手い言い訳ね。」 ウォーフは外を見た。外には、何かの空間現象が広がっている。 ライカーの通信。『ウォーフ大尉※4、ブリッジへ急行せよ。』 ウォーフ:「了解。」 出ていく。 ガイナンは立ち上がり、外を見た。「まさか。」 ブリッジ。 ピカード:「データ、分析の結果は。」 データ:「センサーの表示では、重量に変動※5が見られます。異常としか言えません。」 ライカー:「具体的にどう異常なんだ。」 「こんな変動は初めてです。」 立ち上がるピカード。「ワームホールか。」 データ:「何とも言えません。時空トンネルに似ていますが、外縁に当たる事象の地平線がないようで。」 ウェスリー:「操縦のサブシステムが、前方の現象に対応し切れません。」 「結果が出ました。この現象には、中心も外縁も、やはり存在しません。」 ライカー:「ではこれは単なる幻なのか?」 「その問いに結論を出すには、まだ判断材料が不十分です。エネルギー放射のパターンから言えば…」 ウォーフ:「艦長。…何かが起こってます。内部に変動が見られます。」 ピカード:「原因は。」 データ:「スキャンしてみます。」 現象の内部から、何かが出てきた。 宇宙艦のようだ。 その瞬間、エンタープライズのブリッジの様子が一変した。明かりが暗い。 ピカード:「ヤー※6大尉、センサーにはどう出ている? あれは敵機なのか。」 ウォーフがいた戦術コンソールに、ベルトをつけたターシャ・ヤーがいた。「妨害波が多く、読み取れません。」 ガイナンは窓から離れた。服が替わっている。 通信が流れる。『軍務連絡。1500時より、艦隊構造会議が開かれます。ドクター・ジョシュア・キム※7は、至急軍備オフィスへお越し下さい。なお、トーマス少尉※8、戦略情報センターへ急行して下さい。』 テン・フォワードにあふれるクルーは、制服の様子も違っている。 グラスを片づけたガイナンは、立ち止まった。「どういうことなの。おかしいわ。」 空間現象から出てきた船は、一直線に向かってくる。 ヤー:「妨害波が消えました。惑星連邦の艦隊機です。登録ナンバーを確認中。」 ライカー:「ずいぶん痛んでますね。」 「NCC-1701…C! ……U.S.S.…エンタープライズ※9。」 |
※1: このエピソードは、1990年度エミー賞で音響編集賞を受賞、さらに音楽作曲賞と音響ミキシング賞にダブルノミネートされました ※2: Guinan (ウーピー・ゴールドバーグ Whoopi Goldberg) TNG第61話 "Deja Q" 「DEJA Q」以来の登場。声:東美江 ※3: prune juice 初登場。原語では、ガイナン「地球の飲み物よ。プルーンジュース」 ウォーフ「戦士の飲み物だ」「いつも独りで飲んでいるわね」 ※4: 吹き替えでは「中尉」。第3シーズン以降、ウォーフの階級は大尉です ※5: 重量変動 gravimetric fluctuation ※6: ターシャ (ナターシャ)・ヤー Tasha (Natasha) Yar (デニス・クロスビー Denise Crosby) TNG第23話 "Skin of Evil" 「悲しみの星に消えたターシャ」以来の登場。声:沢海陽子 (継続) ※7: Dr. Joshua Kim 吹き替えでは「ドクター・ジョンソン」。また、原語では「オプスオフィスへ」と言っています ※8: Ensign Thomas ※9: U.S.S.エンタープライズ-C U.S.S. Enterprise-C アンバサダー級 (初登場)、NCC-1701-C。エクセルシオ級 (B) とギャラクシー級 (D) の中間を意図した元々のデザインは、Andrew Probert によります。Rick Sternbach の手を経て、Greg Jein がモデル化。爆竹や発煙筒で実際に焦がされています。第1シーズンから観察ラウンジの壁面には歴代エンタープライズの金色の模型が飾られていますが、このエピソードで初登場したエンタープライズ-C の (本当の) 形状とは異なります。後に TNG第85話 "Data's Day" 「ヒューマン・アンドロイド・データ」で登場した U.S.S.ジューコフなどのアンバサダー級は、ブリッジ部分やディフレクター盤などの形状が変更されています |
本編
エンタープライズ-C は船体にダメージを受けている。 ピカード:『軍事日誌※10、戦闘暦※11 43625.2。我々は謎の放射現象を調査中に、全く信じられないことだが過去の亡霊としか思いようのない存在に出くわしてしまった。C型エンタープライズ、我々の戦艦※12より一代前の旧型機だ。』 データ:「センサーで前方の船の構造を調べてみましたが、船体やエンジンの素材から判断して、やはり一代前に製造されたモデルであると思われます。」 ブリッジの横にもコンソールがある。 制服を着ている※13ウェスリー。「あのモデルは 20年以上も前に爆破されているはずだ。」 データ:「それは推定だよ。22年 3ヶ月と 4日前に、ナレンドラ3号星※14のクリンゴン基地から消息を絶ったため、そう言われてるだけだ。」 ライカー:「なぜここに。」 艦長席の左右には椅子がなく、トロイもいない。 スクリーンに映っているエンタープライズ-C。 ピカード:「22年も漂流していたのだろうか。それとも過去からやってきたのか。」 データ:「その可能性はありますねえ。…過去から来たものとすれば、例の放射現象は、時空の裂け目※15だと考えられます。」 「裂け目。」 「恐らく超連結体によって、カー・ループ※16が構成されたんでしょう。高エネルギーがぶつかり合い、相互作用を起こした時にだけ発生するものですが…非常に不安定な現象のため、次第に消滅します。」 ヤー:「艦長、前方の船体の内部をスキャンしました。ワープフィールドのナセルもかなり損傷しています。船体の骨組みも。…生命反応があります! まばらではありますが、多数の死者※17に混じって生存者がいるようです。」 ライカー:「こちらブリッジ。医療室の救急班、転送室へ急行せよ。」 クラッシャー:『了解。』 ピカード:「今の命令は取り消す。」 ライカー:「…お言葉ですが、どこから来たのかわからない船でも、助けを必要としていることは確かです。」 「あの船が本当に過去から来たものだとしたら下手に干渉すると、歴史の流れを変えてしまう。」 ヤー:「…C型機と、音声による救難連絡が取れました。」 「よし。」 女性の声が流れる。『こちらエンタープライズ※18、艦長のギャレットです。全艦隊機へ。我々は、ロミュラン艦の攻撃を受けました。至急救助を御願いします。ワープドライブは故障、生命維持装置も不調です。』 ライカー:「C型機がロミュランに攻撃された記録はありません。」 ヤー:「連絡が途切れました。自動救難信号に切り替わっています。」 ピカード:「宇宙チャンネルをオンにしろ。…こちらは宇宙艦隊機エンタープラ…艦長のピカード大佐だ。救急班の受け入れ準備をしたまえ。副長、君の言うとおり船の修理と負傷者の手当を総動員で同時に行おう。だがここが 22年後の世界であるということは隠しておくんだ。わかったな。」 ライカー:「了解。大尉。」 ウェスリー:「艦長、レーダー基地※19から連絡が入りました。クリンゴン艦がこちらに接近中です。」 ピカード:「戦闘警報※20発令。警戒態勢。」 「了解。」 エンタープライズ-C※21。 蒸気が噴き出し、炎が上がっている。死んだクルーがコンソールにもたれかかっている。 転送されてくるヤーたち。ライトを使う。 トリコーダーを使い、古い制服※22の士官を調べるクラッシャー。 艦長席に女性が座っていた。 ライカー:「ギャレット艦長※23?」 ギャレット:「ええ。」 「ウィリアム・ライカー中佐です。救急班を連れて救助に来ました。ドクター。」 クラッシャー:「…ブリッジのクルーは全員死亡。彼女は骨折と内臓の破裂を起こしてます。急いでエンタープライズへ送らないと。」 ギャレット:「エンタープライズ※18?」 ライカー:「詳しいことは後ほど。」 「いいえ、いま説明して下さい。」 「エンタープライズは我々に任せて、こちらの船で大至急手当を受けてもらいたいと言ったのです。」 「わかったわ。」 クラッシャー:「クラッシャーから転送室。医療室へ 2名収容。」 転送士官:『転送します。』 転送されるクラッシャーとギャレット。 ラフォージ:「…こりゃひどいですね、激戦だったんでしょう。」 ライカー:「生命維持装置が直りそうにないんなら、すぐに撤退するぞ。」 「いえ、大丈夫です。機関部員を呼びましょう。事故処理班、アルファ第3機関室へ集合せよ。」 ヤー:「副長。」 咳の声が聞こえる。梁がどかされた。 倒れていた男性。「ありがとう。」 ライカー:「…私はライカー中佐だ。」 「カスティーヨ中尉※24、パイロットです。」 報告するデータ。「副長からの、連絡です。」 ピカード:「ビューワーオン。副長、様子は。」 赤いパッドを受け取る。 ライカー:『生命維持装置は修理完了。メインパワーの連結機の修理に移りましたが、まだ時間がかかります。被害は非常に深刻です。』 「生存者は?」 『125名です。』 「君の意見は。」 『スクラップなどにせず、再生して何とか利用したいですねえ。古い船ですが。』 「同感だが、ここに長居しては危険だ。…9時間だけ待つ。それまでに修理が済んだら、第105基地※25へ送ろう。駄目なら…生存者を収容後爆破する。」 『了解しました。』 「経過報告を頼むぞ?」 通信は終わった。 ガイナンがブリッジに入った。中を見回し、階段を上ってピカードに近づく。 ピカード:「ガイナン。」 ガイナン:「…お話があります。何もかもが、狂ってますわ。取り返しのつかないことになります。」 |
※10: military log 通常の航星日誌 (captain's log) に対して使われています ※11: これも通常の宇宙暦 (stardate) ではなく、combat date。吹き替えでは「宇宙暦」のまま ※12: starship に対し battleship。吹き替えでは訳出されておらず、「我々より」 ※13: 実際に正式な少尉に昇進するのは、もう少し後の TNG第72話 "Menage a Troi" 「愛なき関係」 ※14: Narendra III 初言及。脚色の一人ロナルド・D・ムーアの友人であり、後に科学顧問・原案編集を務める Naren Shankar にちなんで ※15: temporal rift 液体窒素を使って表現されています ※16: Kerr loop 原語では「超ひも物質によって、カー・ループが…」と言っています ※17: 吹き替えでは「死傷者」。死傷者と言う場合は死亡者と怪我人 (つまり生存者) の両方含むのが普通なので、文脈としては変ですね ※18: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 ※19: 宇宙艦隊モニター基地 Starfleet Monitor Stations ※20: 通常の非常警報 (red alert) に対して battle alert ※21: 内装は Richard James 監修。コンピューターの画面デザインはマイケル・オクダにより、エンタープライズ-A を参考にして古いタイプにされています ※22: いわゆる ST2 型で、TNG 初登場。ただしシャツ (首もと) やベルトがないなど、相違点もあります ※23: レイチェル・ギャレット艦長 Captain Rachel Garrett (トリシア・オニール Tricia O'Neil TNG第148話 "Suspicions" 「新亜空間テクノロジー 超フェイズシールド」のキュラック (Kurak)、DS9第55話 "Defiant" 「奪われたディファイアント」のコリナス (Korinas) 役。ST ファン) ギャレットという名は、原案の一人 Trent Christopher Ganino の故郷、サンノゼにあるピザ店にちなんで。声:幸田奈穂子 ※24: リチャード・カスティーヨ中尉 Lieutenant Richard Castillo (クリストファー・マクドナルド Christopher McDonald 映画「テルマ&ルイーズ」(1991) などに出演。ST ファンで、ライカー役候補の一人) 吹き替えでは大尉とされていますが、階級章では中尉です。声:忍野タケル ※25: 第105宇宙基地 Starbase 105 |
作戦室。 ピカード:「どこがおかしいというのか言ってみたまえ。」 ガイナン:「船内も乗員も何もかもが…とにかく違ってるんです。」 背後には連邦とクリンゴンの勢力図がある。 「船内に異変があると?」 「艦長も、ユニフォームも、ブリッジの様子も。」 「ブリッジのどこが違う。」 「とにかくおかしいんです。」 「同じままだ、何も変わってない。」 「一見同じですが、絶対にどこかが違うんです!」 「…ほかには。」 「子供です。子供が一人もいません。」 「何だと。子供など乗船させてない。…戦争中なんだぞ?」 「その点も、違います。戦争など、してないはずです。この船は戦争のためのものではありません。平和のためです。※26」 「……どうもよくわからん。」 「全てが狂ってます。C型機をここに存在させてはいけません。過去に戻すべきです。」 ※27慌ただしい医療室。 クラッシャー:「電解質検査をして。」 横になっているギャレットに近づく。「トライコードラジン※28のレベルを。リラックスして?」 ピカードが来た。 通信が流れる。『ドクター・セラー※29、至急医療室へお越し下さい。ドクター・セラー、至急医療室へお越し下さい。』 ピカード:「…私が艦長のピカードです。」 ギャレット:「レイチェル・ギャレットです。私の船は?」 「ええ、生命維持装置を直して…修理を続けてます。」 「どこから救助に。このセクターには艦隊機は見当たらなかったのに。」 「…なぜこのセクターに来たのです?」 「救難信号を受信して。」 「救難信号。」 「聞かれませんでした? ナレンドラのクリンゴン基地です。※30…この船は…どこから。…こんな、立派な医療室は基地でも見たことがありませんわ。制服も違うし。ここは何という船ですか。」 クラッシャー:「……興奮してはいけません。」 「教えて下さい。この船の名は。」 ピカード:「……エンタープライズです、登録ナンバーは、1701…D。」 驚くギャレット。 ピカード:「あなた方は未来へ来たのですよ。」 ギャレット:「…未来へ。部下たちにそのことは。」 「言ってません。」 「伝えねばなりません。隠すわけには。」 「どうしてもというのなら私から話しましょう。」 「隠さなければならないわけでもあると?」 「過去の世界へ戻った時、未来を知っていることは許されないことです。」 「あの戦闘へ戻れと? かろうじてここまで逃げてきたんです。戻ればまず、壊滅です。」 「どうやって、時を越えたんです。」 「あの時、魚雷の…一斉射撃を受けた際に外に閃光が走って。気づいたらここにいました。」 「撃ち合いで高エネルギーがぶつかり合うと、時空に裂け目ができることはあるらしいのですが…歴史的にはあなた方とロミュランが、戦った記録はないんです。」 「救難信号を受けて、ナレンドラ3号星のクリンゴン基地へ援護に行ったことは確かです。そこでロミュラン・ウォーバード※31 4機を相手に必死で戦いましたが、撃墜される一歩手前でした。」 「その基地は、ロミュランに破壊されました。…あなた方が基地を救えなかったのは残念です。もし救えていたら、クリンゴンとの 20年間に及ぶ戦争は…恐らく起こっていなかったでしょう。」 エンタープライズ-C。 カスティーヨ:「やっぱりどうしても信じられないなあ。22年後だって?」 ヤー:「船首のスクリーンは 40%です。船尾はどうですか。」 「40%だ。」 「それじゃ駄目だわ。副長、ラフォージ中尉※32に出力が足りないと伝えて下さい。」 ライカー:「わかった。」 カスティーヨ:「…地球の家族に会いたい。帰れないかい?」 ヤー:「生きてらっしゃるとは限りませんよ?」 「そうか。確かに。もし生きていても、22年ぶりに会ったんじゃ顔もわからないね。」 「…メイン・フェイザーバンクはどうですか。」 「エミッターは壊れていない。船首は 60%、船尾は 52%。」 「そう。じゃあ次は魚雷の発射砲を。」 コンソールに座るヤー。 近づくカスティーヨ。「命が助かっただけ幸運さ。」 ヤー:「安心はできませんよ? 戦争中です。…我々連邦は、クリンゴンにかなり押されている状態です。」 「クリンゴンとは、和解しかけたんだが。」 「その後いろいろあったんです。ほんとにいろいろ。」 「…後で休憩時間の時に、ゆっくり聞かせて欲しい。」 「……光子バンク※33はゼロ。補助ジェネレーターも停止しています。」 画面を見るデータ。「どうやら時空の裂け目は、向こう側と対称になっているようですね。※34」 ピカード:「ではもし向こう側に、C型機が戻っていったらどうなる。」 「戻ったら? …恐らく、こちらへ来る直前とぴったり同じ瞬間になるでしょう。」 「ロミュランと交戦している最中か。」 「そうです。」 「撃墜を免れる可能性は?」 「…皆無です。」 「では彼らを送り返せば、殺すことになるのか。」 |
※26: 吹き替えでは「連邦が戦争していたのは、もう昔の話です」。クリンゴンとは敵対関係にはありましたが、戦争していたわけではありません。この別時間軸の戦争は、エンサイクロペディアでは「クリンゴン戦争 (Klingon War)」として掲載されています (劇中では言及なし) ※27: TNG の国内地上波・初期CS放送分では、ごく一部にカット部分が存在しています (2時間エピソードを前後編に分けた際の、本国でのカットとは別)。DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります ※28: トリコルドラジン tricordrazine TNG第48話 "Shades of Grey" 「悪夢の果てに」より。吹き替えでは「トライコルチゼン」 ※29: Dr. Selar TNG第32話 "The Schizoid Man" 「コンピュータになった男」にだけ登場した、女性ヴァルカン人。また、原語では「無重力区へ」と言っています ※30: 吹き替えでは「ナレンドラのクリンゴン基地です。行かなければ」と挿入されています。後の「あの戦闘へ戻れと?」というセリフと噛み合いません ※31: Romulan warbird TNG 以降でよく見るディーダリデックス級のウォーバードは、TNG第26話 "The Neutral Zone" 「突然の訪問者」で初登場しています (その前は 50年以上、連邦の記録に残るロミュランとの接触はなし)。22年前ですから、エンタープライズ-C が戦ったのがディーダリデックス級とは限りません。吹き替えでは「ロミュラン艦」 ※32: 別時間軸でもラフォージは少佐の階級章なのに、Lieutenant (中尉または大尉) と言っています ※33: 吹き替えでは「電子バンク」。光子魚雷の残りのこと ※34: 吹き替えでは「どうやら裂け目の向こう側には、時空の変動は起こっていないようですね」 |
廊下。 たくさんのクルーが歩いている中、連絡が随時放送されている。『バレット中尉※35…』 ヤー:「これは、連邦初のギャラクシー級軍艦※36です。デッキ数 42、6,000人以上の部隊※37を輸送可能です。」 カスティーヨ:「君はここに何年。」 「4年です。アカデミーを出てすぐここへ。とってもラッキーだったと思います。」 「僕もだよ。C型機も、最高さ。」 微笑むヤー。 2人は医療室に入る。 連絡が続く。『第2配給物※38は、シャトル格納庫へ。第2配給物は、シャトル格納庫へ。』 まだ寝たままのギャレット。「中尉。船の様子は。」 カスティーヨ:「船首のフェイザーバンクは何とか復旧しましたが、魚雷砲と、ワープエンジンはまだ修理中です。」 「兵器の修理を優先して。ピカード艦長は、協力を惜しまないとおっしゃって下さったわ。」 ヤー:「急ぎませんと、センサーによればクリンゴンの戦闘機が接近中です。」 「それをなぜ早く教えてくれなかったの…」 起き上がるギャレット。 カスティーヨ:「艦長、いけません。」 「そういうことはすぐに報告してちょうだい。この船の砲撃手と、協力体制を作らなくては。」 ヤー:「砲撃手は私です。」 近づくクラッシャー。「どこへ行くつもりですか?」 ギャレット:「ドクター、私には責任があるんです。」 「あと 24時間は安静にして下さい。」 「ドクターってものは、何かと大事を取らせたがるものよ。」 「艦長ってものは無理をしたがるものですわ?」 「ドクター、部下たちは私を今必要としてるのよ? この 24時間は 24年にも値するわ。」 出ていくギャレット。 クラッシャーはため息をついた。 ガイナンは観察ラウンジに入った。エンタープライズの図が書かれたパネルがある。 ピカード:「…証拠が欲しい。」 ガイナン:「証拠はありません。でも真実です。証明したいのですが、無理でしょう。」 「…彼らに戻れとはとても言えない。」 「いけません!」 テーブルにパッドを押しつけるピカード。「…戻った瞬間に彼らは死ぬことになる。君が直感的に感じるという理由だけで死にに帰れとは言えない!」 ガイナン:「もちろん。でも全ての現象がおかしいんです。私の体中の細胞が異変が起こってると訴えています。自分でもなぜかはわからないので説明できませんが、判断に確信をもっています。」 「おかしくなったのは、彼らがここへ来て歴史が変わったから…そう言うんだな。」 「私にはわかるんです。」 「具体的な証拠を示す方法はないのか。…125人の命が懸かってる。」 「この戦争では、400億人死んでます。その命が救えるんです! 送り返して歴史の流れを正すべきです!」 「彼らにロミュランを倒せるという保証はあるか。……君の意見にはまるで具体性がないし、無謀すぎてとても取り合えない!」 「…艦長とは随分長い付き合いです。私が人に意見を押しつけたことがこれまでにありましたか。いい加減な直感を頼りに、人を扇動するような真似は絶対にしません。この時間の流れは、断ち切らねばならないものです。私の言うとおりなさることです。どうか私を信じて、送還を決意なさって下さい。」 出ていくガイナン。 テン・フォワードで話すヤー。「…ディフレクターシールド※39はこの戦争中、急激に進歩しました。熱の発散率については、恐らく C型機の 2倍になっています。つまり長時間の砲撃戦にも、耐えられます。」 戻ってきたガイナンは、ヤーをまじまじと見つめる。 ヤー:「…何?」 ガイナン:「…ターシャ、オーダーは?」 「まだよ? ……どうかしたの?」 「別に。…何にするの。」 「時間がないから TKL※40 にするわ。そうだわ、カスティーヨ中尉よ。」 うなずくガイナン。やはりヤーを見てから離れる。 ヤー:「…初めてですわ。」 カスティーヨ:「何が?」 「……ガイナンがあんな目つきで私を見るなんて。」 「…TKL って何だい。」 「携帯食です。…必要な栄養素が入っているので、食べながらでもシステムの話に集中できますわ? …続けますか?」 「いや、アカデミーで一年以上かけて教わる量の知識を、この一時間で教わったよ。」 「今後役立ちますね。」 笑うカスティーヨ。「一日中ずっと一緒にいたんだ。堅い話はよそう。…普通に呼んでいい? ターシャ?」 ヤー:「ええ。」 「…僕はリチャード・カスティーヨ。もっと気軽にやろう。」 「そうね、カスティーヨ。」 「……いや。そうじゃなくて、君にはリチャードって呼んで欲しい。」 「……リチャード。」 連絡が入る。『こちらピカード、上級士官は至急作戦室へ集まってくれ。』 ヤー:「食べ損ねたわ?」 ヤーが出ていく時、またガイナンと目が合った。 ピカードが立っている。 クラッシャー:「艦長、ということは彼らを過去へ戻して戦わせろということですか?」 ピカード:「その通りだ。」 「…ガイナンが直感でそう感じたから?」 ライカー:「彼らが戦いに勝って基地を救えるとは思えません。」 ヤー:「ロミュラン側は 4機だと言っていました。…C型機一機では太刀打ちできません。」 ラフォージ:「最新兵器でも載せていくなら、別ですが。」 ピカード:「それなら許さない。そんな物を積んで帰せば歴史を歪めることになる。」 ライカー:「歴史を変えることが目的ではないのですか。」 「いいや、正しい方向に戻すだけだ。」 ラフォージ:「ガイナンだけがなぜ、時間の流れがおかしいことに気づいたんでしょう。」 データ:「彼女の種族には、時空を超えた知覚力があるんでしょう。※41」 ピカード:「ガイナンの能力には計り知れないものがあるからな。彼女の勘が正しいことは大いにありえる。あの船が過去から来たことは事実なんだ。それが現在に影響を与えていることは否定できない。…ガイナンの勘が正しいことを確かめる術はないが、私は彼女の真剣な説得ぶりから、C型機を帰す決意をした。…以上だ。」 ライカー:「艦長、意見を言わせて下さい。」 「聞かなくても君の意見はわかっている。これは私が決定を下した命令だ。」 「お言葉ではありますが、125名の命が無駄に散るのを、黙って見過ごせません。」 データ:「副長、無駄とは限りません。C型エンタープライズの乗員たちが、クリンゴンの基地を守るために命がけで戦い全滅してしまったとなれば、クリンゴンはその死を重んじて戦争を起こさなかったかもしれません。」 ピカード:「死んでも戦争を避けられるかもしれない。エンタープライズ-C が戦闘へ戻って任務に成功すれば※42その時から今日まで 22年間の歴史は様変わりし、現在の状況も全く違うものになっているはずだ。…クリンゴンとの戦争もないだろう。このことは既に決断した。ガイナンの勧告に従うぞ。以上だ。」 作戦室を出るクラッシャー。「歴史が変われば私達は一体どうなるのかしら?」 ラフォージ:「死んでしまっているかも。」 その話を聞いていたヤー。データと共にターボリフトに乗る。 データ:「機関室へ。…君の行き先も機関室かい。」 ヤー:「え…ああ、第6デッキ。ありがとう。」 「……顔の表情を分析させてもらうと、何か不快なことで悩んでるようだ。」 「いいえ、ただ…考え事してたの。その、いろいろとね。…あ…いま C型機のカスティーヨ中尉にレクチャーしてるんだけど、とってもいい人で仲良くなったのよ? 彼がこれからどうなるのか心配で。」 「予測することは不可能だ。上手くいったら、歴史は変わるが我々はそれを覚えてない。」 エンタープライズ-C。 カスティーヨ:「防御スクリーンは 72%。まずまずだ。」 ヤー:「そうね。」 ギャレット:「…その人の言葉を信じるの。」 ピカード:「…ガイナンとは、長い付き合いでね。彼女の特殊能力には信頼をおいている。直接話を聞いてみたらどうです?」 「…艦長? 私達の船が、あの猛攻から無事に切り抜けられる可能性があるとすればそれは…あなた方が一緒に戦って下さること。D型機なら、ロミュランなど敵ではないわ。」 「それはできない。」 「…やっぱりそうよね。あなた方だって、別の世界では生きられないわ。…ほんとのこと言えば、かなりの人数の乗員が死を覚悟の上で元の時間へ戻りたいと言ってるんです。…家族なしでは生きられないという者もいますし。ロミュランとの決着をつけねば収まらないという者もいます。…でも私が止めたんです。この世界では、クリンゴンとの戦争で一機でも多く船を欲しがってる。残って、その力になるべきだと。」 「それなら是非とも、戻って歴史を変えて欲しい。……戦況は一般に知られているよりも悲惨だ、過酷なまでに。…司令部は敗戦は免れないと覚悟している。…この半年以内に、恐らく降伏することになるだろう。」 「それも全て私達がここへ来てしまったからだと?」 「君たちが一緒に戦ってくれたところで戦況は変わらない。22年前に戻って、この戦争が始まる前に是非とも食い止めてもらいたい。」 「……カスティーヨ中尉。」 カスティーヨ:「はい艦長。」 「元の世界へ戻ります。」 「わかりました。」 ギャレットはピカードに言った。「ロミュランは手強いでしょうね。歴史の本に残る戦いになるわ。※43」 ピカード:「健闘を心から祈ってます。…ヤー大尉。」 ヤー:「もうしばらく残らせて下さい。」 「わかった。」 ギャレット:「転送室、ピカード艦長が D型機へ戻られます。」 転送士官:『了解。』 ヤーはカスティーヨに近づいた。「あなたにお別れが言いたかったの。」 カスティーヨ:「…君から教わった戦術の知識を生かして、がんばるよ。」 「…この船は、ロミュラン艦より機動性に優れてるはずよ? だから、敵から距離を取って……。大丈夫よね。」 「……地球に帰った時、群衆の中に…もし君をじっと見つめている中年の男がいたら、僕だと思って欲しい。そうだ、覚えていないか。」 「……お別れね。」 カスティーヨが握手しようとした時、船が揺れた。 ギャレット:「非常警報、防御スクリーン最大。」 コンソールについたヤー。「スクリーンオン。出力最大!」 カスティーヨ:「攻撃回避のために迂回します。」 ギャレット:「フェイザー砲用意。エンタープライズ-D、艦長は帰還されましたか?」 ライカー:「艦長は今ブリッジに戻られました。フェイザー砲発射。」 データ:「了解、発射!」 ピカード:「敵機は。」 ライカー:「右舷前方にクリンゴンのバード・オブ・プレイ※44 1機、接近中。」 クリンゴン艦を攻撃するエンタープライズ-D。 狙われる※45エンタープライズ-C。 ギャレット:「フェイザー砲発射、魚雷発射準備。」 ブリッジで爆発が起こり、ギャレットは吹き飛ばされた。 駆け寄るヤー。 何度も攻撃するエンタープライズ-D。バード・オブ・プレイは遮蔽に入った。 データ:「遮蔽装置を使いました。座標は不明です。」 ピカード:「ギャレット艦長、被害状況は。」 返答はない。 エンタープライズ-C に、ピカードの声が流れる。『ギャレット艦長。』 ヤー:「こちらヤー大尉です。」 ギャレットの額に、破片が突き刺さっていた。 ヤー:「艦長は亡くなりました。」 |
※35: Lieutenant Barrett TNG/DS9 ラクサナ/TOS チャペル役、メイジェル・バレットにちなんで ※36: 吹き替えでは「連邦初の第一銀河級戦闘機」。ギャラクシー級→銀河級は初期によくある間違いだとしても、この訳だと「初の」と「第一」が被っているような。また本文ではそのままにしていますが、このエピソードでは「戦闘機」「敵機」「3機」など、飛行機のような訳がされています ※37: 吹き替えでは「6,000以上の部隊」 ※38: 原語では「第2治療班」 ※39: 吹き替えでは「ディフレクター」のみ。なお当時、シールドは「防御スクリーン」と訳されています ※40: TKL TKL 食料 (TKL ration) ※41: 吹き替えでは「知覚力があるんです」と断言しています ※42: 吹き替えでは「いや、クリンゴンの基地を救わねば意味はなさない。C型機が基地を救えば…」と、ほぼ逆の意味になっています。前にデータが即座に分析したようにエンタープライズ-C が勝てる見込みはなく、だから悩んでいるわけです。同じ解釈ミスが後にも見受けられます ※43: 吹き替えでは「歴史に残る勝利になるわ」 ※44: 吹き替えでは「クリンゴン戦艦」 ※45: 翼を広げたまま攻撃しています |
エンタープライズ-D。 カスティーヨが来た。「ピカード艦長、私が C型機の指揮を執ります。」 ライカー:「カスティーヨ中尉は、生き残ったただ一人の上級士官ですが、戦術・砲撃面のクルーはおらず機関部員も不足しており現状ではとても…」 「乗員たちの士気はかつてないほどに高まっています。」 「しかし艦長不在で過酷な戦闘に戻ることは無理だろう。」 「艦長のようにはいかないでしょうが、私でも船を過去へ戻すことくらいはできます。艦長はベストを尽くすことを望まれていました。」 観察ラウンジに通信が入る。『データ少佐から艦長へ。』 ピカード:「どうした。」 『時空の裂け目が、これまでよりさらに不安定な状態になっています。先ほどの戦闘の影響かと思われますが。』 「反撃してくる様子はないか。」 『ありません。』 ヤー:「我々がこの座標に留まっていることは知られています。早く動かねば。」 カスティーヨ:「艦長、私の決意は絶対に変わりません。反対なさっても無駄です。」 ピカード:「…どれくらいで出発できる。」 「船の損傷はそれほどではありません。2、3時間で準備できるでしょう。」 「いいだろう※46、サポートしよう。」 転送室に入るカスティーヨ。「C型機に 1名転送してくれ。…今度こそ本当にお別れだ、ターシャ。」 ヤー:「…もっと時間があれば。」 「急がないと、別れられなくなってしまうよ…本当に。」 二人は口を近づけ合い、キスした。抱きつくヤー。 カスティーヨ:「さよなら。」 転送台に乗り、転送されていった。 ガイナンがいるテン・フォワード。ドアが開く音がした。「ターシャ、私に何か用?」 振り向く。 ヤー:「聞いておきたいことがあるの。歴史が変わったら私はどうなるの。」 「私にははっきりしたことはわからないわ。艦長に言ったように、感じるだけなの。」 「私を見ていると何かを感じる、そうでしょう? あなたの目を見ればわかるわ。長い付き合いですもの。」 「長い付き合いのはずがないわ。※47あなたの存在感が希薄だからよ。……恐らく、あなたはここにはいない人なの。」 「私が死ぬとでも?」 「…そうね。」 「……どうやって死ぬの。」 「さあ。ただ無駄な死だったことはわかるわ。意味のない死よ。※48」 ヤーは何も言わず、出ていった。 コンソールで日誌を見ていたピカードは、ドアチャイムに応えた。「入れ。…どうした大尉。」 ヤー:「…艦長、私を C型機へ転属して下さい。」 「……理由は何だ。」 「…砲撃手が必要です。」 「バカを言うな。」 「私はここには存在しません。」 「……座りたまえ。…何を言われた。」 「…歴史が変わったら私は…あの、あ…死んでしまってるそうです。」 「…打ち明けるべきだとガイナンが判断したんだな。」 「私が聞き出したんです。」 「そうか。……知っての通り C型機は失敗する※49可能性が非常に高い。そうなれば歴史は変わらず、今まで通り…君は、この船で生き続けていけるんだぞ?」 「私は彼らが成功することの重要性をわかっています。だから転属を御願いしているんです。※50」 「君は過去の時代の人間じゃない。」 「しかし、本来は死んでいるはずの命です。惜しくはありません。…死んだ艦長の代わりに戦いたいのです。」 「身代わりになる必要がどこにある。たとえ成功しても……エンタープライズ-C は破壊されるだろう。※51」 「しかし艦長、戦闘を心得た者が一人でもいれば、船がもちこたえる時間は延びるはずです。…数秒間、数分のことかもしれませんが、その時間が歴史を左右するかもしれません。…ガイナンの話では私は無意味な死を迎えるそうです。…私にはそれが耐えられません。……艦隊の制服に袖を通した時から死は覚悟してます。死ぬのならば、有意義なことに命を捧げたいんです。」 「ヤー大尉。……転属を許可する。」 立ち上がるヤー。「…感謝します。」 新たにつけた記章に触れる※52カスティーヨ。「フェイザーバンクは 70%まで回復している。あと一時間ある。90%まで目指そう。」 クルー:『了解。』 「パーカー※53、オプス席に。フレドリックス※54は、操縦だ。」 ヤー:「砲撃手は私が。…ターシャ・ヤー大尉、ただいま着任しました。」 いつの間にか来ていた。 「…ここのクルーじゃない。」 「いいえ? ピカード艦長に転属を許されました。」 「…帰った方がいい、ターシャ。裂け目を越えたら戦場だ。元へは戻れないんだぞ?」 「わかってるわ。これが私の使命よ。」 「…君は連れて行きたくない。」 「私が必要なはずよ。私より腕のいい砲撃手がいるなら別だけど。」 「……ありがとう。…では、持ち場についてくれ。」 「了解。」 艦長席に座るカスティーヨ。 |
※46: "Make it so." ※47: 吹き替えでは「長い付き合いでもわからないことはあるわ」 ※48: 吹き替えでは、ヤー「なぜわかるの」 ガイナン「さあ。ただ時空が元通りになれば、あなたはここにはいないわ?」となっています。これだと次のシーンでの「ガイナンの話では私は無意味な死を迎えるそうです」というセリフにつながりません ※49: 吹き替えでは「撃墜される」 ※50: 吹き替えでは「私は C型機を救うために移りたいのです。必ず、戦闘に勝ってみせます」 ※51: 吹き替えでは「たとえロミュランを倒せても……C型機も必ず道連れになるぞ」。以上 3つの訳は、「任務の成功」がロミュランに勝つことと解釈したものですが、実際は歴史を変えることそのものです (注釈※42 も参照)。つまり負けることは確定的であり、クリンゴンに犠牲を認めてもらえるかという、非常に微妙かつ難しい点が重要なわけですね (だからこそ一分、一秒が大事)。なおクリンゴンとの和平は映画 ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」でのキトマー協定からでは?…と私も不思議に思っていましたが、そもそも映画が公開されたのはこのエピソードの後です (第5シーズン半ば)。キトマー和平が第一歩だとしても、TNG 最終話 "All Good Things..." 「永遠への旅」や DS9 の展開でも見られたように、常に関係は流動的ということなんでしょうね ※52: カスティーヨは今までつけていなかったので、ギャレットのものということでしょうか。また、現在のコミュニケーターと同じように使用しています ※53: Parker 持ち場は吹き替えでは「操縦席に」 ※54: Fredericks 2人ともエキストラ。吹き替えでは「フレドリック」。これも持ち場が吹き替えでは「通信だ」。conn を com と勘違い? |
『軍事日誌、補足。ターシャ・ヤー大尉はエンタープライズ-C へ転属し、砲撃手としての任務を与えられた。その頃長距離スキャナーに、クリンゴン巡洋艦の接近が観測された。』 向きを変えるエンタープライズ-D。 ライカー:「クラッシャー少尉、敵機の形式は。」 ウェスリー:「ケーヴォート級の巡洋艦※55が 3機です。」 ピカード:「遮蔽もしないとは舐められたもんだ。」 ライカー:「我々は、アーチャー4号星※56で同じ船を撃破しましたよ。」 全艦にピカードの通信が流される。「全乗員に告ぐ。知っての通り、現在クリンゴン艦が接近中だ。C型機が時空の裂け目に突入するまでは彼らを守らなければならない。惑星連邦…エンタープライズ※18に、栄光あれ。全力で…戦おう。※57以上だ。」 バード・オブ・プレイは一斉に攻撃を始めた。 ピカード:「損傷は。」 データ:「今のところありません。」 「魚雷準備。クラッシャー少尉、コースをセットしろ。148003。」 ウェスリー:「了解。」 ライカー:「魚雷準備完了。」 ピカード:「分散パターン、シエラ。発射しろ。」 光子魚雷が発射され、分散した後クリンゴン艦に命中した。 データ:「一機に命中しました。船首のスクリーンをやや破壊※58。…本艦のスクリーンは、無事です。第2船体に軽度の損傷。」 スクリーンに映るクリンゴン巡洋戦艦。 ピカード:「コース 148。訂正、コース 170、マーク 014。」 ウェスリー:「艦長、一機が隊列から離れ、C型機の方へ向かっています。」 「C型機の 200キロ圏内から離れないように注意しろ。」 「コース 217、マーク 115。推力 3分の2 に上昇です。」 狙われるエンタープライズ-C。反撃するエンタープライズ-D。 ライカー:「事故処理班、第14デッキへ。」 ラフォージ:「機関室からブリッジへ。右舷のパワー連結機が故障。第3抑制フィールドジェネレーター※59も作動していません! 回路を切り替えます!」 ライカー:「反物質タンクをやられたら終わりです!」 ピカード:「頼んだぞ、ラフォージ。」 ウェスリー:「クリンゴンは側面から攻めて、C型機から引き離す気です。」 「少尉、コースはこのまま保て。フェイザー砲を連射するんだ。」 フェイザーを次々と撃つエンタープライズ-D。クリンゴン艦の一隻は、爆発した。 すぐ後から別の船が迫る。 データ:「一機を撃墜しました。」 ブリッジで爆発が起き、クルーが吹き飛ぶ。 ピカード:「被害報告。」 ライカー:「第2船体に死傷者多数。ナビゲーショナル・センサーアレイ、作動不能!」 ワープコア近くの様子を見るラフォージ。「反物質のタンクに異常が発生しています! 復旧できない場合には、爆発する前にリアクターを停止します!」 データ:「防御スクリーンが歪みました、これでは…」 ラフォージ:『こちらラフォージ、反物質のタンクは復旧の見込みが立ちません。リアクターを一時停止します!』 コアのそばで爆発が起こり、白い気体が噴き出してきた。 パネルを開けるラフォージ。「ブリッジ、エンジンコアから冷却剤が漏れています。どうしようもありません。2分でワープコアが作動停止に!」 そのパネルが爆発した。避難する機関部員。 ラフォージ:「急げ、ほら早く行くんだ!」 ピカード:「裂け目に到達するまで後どれくらいだ!」 データ:「52秒です。」 エンタープライズ-C の前に、時空の裂け目が迫る。 ピカード:「全出力を防御システムに集めろ。」 データ:「パワー連結機がフェイザーバンクで切断されたために、別回路を開きましたが…機能していないようです。」 また爆発が起こり、ライカーが倒れた。振り向くピカード。 ライカーの首元はえぐられ、目を開いたままだ。 通信が届く。『エンタープライズ聞こえるか。そちらへ乗り込む。直ちに降伏しろ。』※60 ピカード:「来るなら来い。」 素早く戦術コンソールへ飛び移る。 スクリーンにフェイザーで攻撃する様子が映る。 ブリッジに炎が広がってきた。 挟み撃ちを受けるエンタープライズ-D。 エンタープライズ-C は裂け目へ突入していく。 ピカードは言った。「大尉※4、報告せよ。」 ウォーフ:「センサーに船※61のような物体が一瞬だけ映ったのですが、消え去りました。」 データ:「先ほどの現象も、自然消滅しました。」 ピカード:「そうか、第1級探査機※62を準備しろ。探査機はここに残してモニターさせる。クラッシャー少尉、アーチャー4号星※56へコースを取れ。」 通信が入った。『艦長、こちらはガイナンです。全て正常ですか?』 ピカード:「ガイナン? …ああ何もないが? どうかしたか。」 窓のそばに立っているガイナン。「いいえ、何でもありません。お邪魔しました。」 ウェイトレスを呼ぶ。 ガイナンは、ラフォージ※63の前に座った。「で、どんな人だったの? …ヤー大尉って。」 |
※55: クヴォート級巡洋戦艦 K'Vort-class battle cruisers 初言及。映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」と同じモデルが使われているため、一般的には 23世紀からの小型のバード・オブ・プレイがブレル級、24世紀の大型がクヴォート級とされています。もっとも詳しく分析すると、到底 2タイプでは収まらないようですが… (参照) ※56: Archer IV 最後のシーンでは「アーチャー4号」と訳されています。アーチャー…? ※57: 「惑星連邦…」の部分から、原語では「歴史がエンタープライズの名を決して忘れないように」 ※58: 吹き替えでは「ほぼ破壊」 ※59: 吹き替えでは「第3ジェネレーター」のみ。抑制=反物質抑制のこと ※60: このクリンゴン人の声は、吹き替えではウォーフ役の銀河さんが担当しているのが面白いですね (原語では違います)。もっとも、このエピソードではほかにも通信だけの声を銀河さんがやっていますが… ※61: 吹き替えでは「戦艦」 ※62: クラス1 センサー探査機 class-1 sensor probe 第1級探査機。TNG第28話 "Where Silence Has Leace" 「闇の住人」より ※63: 正しい時間軸に戻ったのに、今までの別時間軸の制服を着ています (袖が黒) |
感想など
唯一の登場となるエンタープライズ-C との共演、そしてヤー大尉の復活という目玉ストーリーを同時にやってのけたエピソードです。簡素にして強烈な、時間軸変更シーンの驚きは今でも覚えています。これぞタイムトラベル、タイムパラドックスですね。さまざまな細かな設定には、いちいち納得させられます。ライカーが死ぬシーンはありますが、当初はデータやウェスリーのもあったそうです。 クロスビーとゴールドバーグの撮影スケジュールの都合により、脚本の執筆には 3日しかかけられませんでした。多人数が共同して練った最初の話で、その中には後に DS9 でも重要な役割を果たすアイラ・スティーブン・ベアも初めてクレジットされています (マイケル・ピラーも関わりましたが、4人までという制限のため掲載なし)。エンタープライズ-C を出す原案は 1年前からあり、それに「過去へ向かうヤー」が加わりました (元々は永遠の管理者によって過去へ行ったヴァルカン人が誤ってスラクを殺してしまい、歴史を正すためにサレクがスラクの代わりを務めるというもの)。 そしてこのエピソードは、"Redemption, Part I and II" 「クリンゴン帝国の危機(前)(後)」などへとつながっていきます。第3シーズンはほんとにレベルが高いですね。 |
第64話 "The Offspring" 「アンドロイドのめざめ」 |