操作するサトウ。「準備できました。」 
 パッドを読んでいたアーチャー。 
 タッカー:「ほんとに俺必要ですか? 忙しいんですけど。」 
 アーチャー:「いいから、いろ。大事なことだ。」 船長席に座り、咳をする。「録画開始。」 スクリーンに向かって話し出した。「…こんにちは。アイルランド、ケリー郡※8ケンメア※9、ウォーリー小学校※10 4年生の、マルヴィン先生※11のクラスの皆さん。宇宙船エンタープライズ※6船長の、アーチャーです。全クルーを代表して、君たちからの手紙に、感謝します。みんなの絵や手紙で大いに、楽しませてもらいました。面白い質問がたくさんあった。全部に答えられるといいんですが、そうすると…探検をする暇がなくなります。そこで、いくつかを選んで、答えることにします。ここでの生活が少しでも伝わると、いいと思います。」 パッドを見るアーチャー。「リアム・ブレナン※12君の質問。何を食べてますか。うん、ほとんどは…地球と同じ物です。船のシェフは優秀で、ピーナツバターサンドイッチから七面鳥まで? …何でも、料理してくれます。船には水耕栽培の温室があるので、果物や野菜を育ててます。それからほかに…タンパク質再配列機※13で、複製できる食べ物もあります。…次は? ジェフ・マイルズ※14君の質問。…デートはしてもいいんですか? これは…禁止じゃない。でも宇宙船には、あまりプライバシーがありません。クルーの部屋はほとんど一人部屋ではないし? 交際に…何というか、不便なんです。しかし、もし心から…好きな人ができた場合には、一緒に星を見たりする場所が、船にもたくさんあります。次は、クロエ・オシャナン※15さん。エイリアンと、どう話するんですか。この質問の答えは? 通信士官の、ホシ・サトウ少尉に任せます。」 
 サトウ:「クロエ? とてもいい質問ね。ユニバーサル翻訳機※16という装置を使うの。数百の言語がプログラムされた、異星人語の辞書のようなもので、新言語もすぐ覚えるけど…ダメな時もあるの。その時は、私が翻訳することになります。大変なのは、きっとわかってくれるわね? 一つ単語を間違えただけで、『手を取って』が、『命を取れ』になることもあります。これまでのところ、上手くいってます。」 
 「ありがとう、ホシ。次は、モリー・マクック※17さんから。うーん…流したトイレの水は、どこへ行くの? これは、機械関係の問題だな? 答えるのは、機関主任、チャールズ・タッカー少佐です。うん。トリップ?」 
 笑っていたタッカーだが、自分が指名されて驚く。「…ポーズ頼む。」 
 一時停止するサトウ。 
 タッカー:「トイレの質問ですかあ? …ワープリアクターとか、転送機にして下さいよ。」 
 アーチャー:「大勢が、疑問に思ってるんだ。」 
 記録を再開させるタッカー。「最初に知っといて欲しいのは、船ではほとんどの物をリサイクルします。排泄物も…含めて。排泄物を流すとまず…最初に、バイオ物質再配列機※18という機械で処理されることになります。それで細かい分子に……止めて。」 
 また停止するサトウ。 
 タッカー:「トイレ係のエンジニアだと思われますよ!」 
 アーチャー:「いい調子だ。」 
 「ああ…」 記録を戻すタッカー。「それで、排泄物は細かい分子に分解され、再配列されて、船で使える物に生まれ変わることになります。貨物のコンテナや、断熱材、ブーツ…何でもね?」 
 「…とてもわかりやすかったね? …ガブリエル・ウィッティー※19君の質問は、バイ菌は宇宙で生きられますか。」 
 フロックス:「ああ…これは私が答えましょう。」 立ち上がる。「皆さん、こんにちは。船医のドクター・フロックスです。デノビラ・トライアクサ※20という星系出身です。この重要な任務に参加できて、とても光栄です。…バイ菌ねえ。フフン、細菌は小さくとも有機体の中では最も生命力が強い。キッチンカウンターでも? 爪の間でもどこでも生きられます。この宇宙の、真空でも 2億以上の微生物が生息しているのが知られています。宇宙の塵の粒の中にも細菌が住んでいます。ポリコクシス・アーストリス※21です。フフン、休眠状態で数百万年も漂った後でも、ひどい風邪の原因になります。…フーン、ああ…あ、そういえば、以前に細菌の巨大な群生を見つけました。あれは、ある船の…」 
 さえぎるアーチャー。「ドクター、ありがとう? 素晴らしかった。あまり授業時間を奪っても申し訳ない。ところで、今調査中の彗星の写真を一緒に送ります。地球でもヴァルカンでも、これまでに発見された最大の彗星です。エンタープライズでの一番の楽しみはそこです、次々に新しい発見がある。…ありがとう。手紙を読んで、地球へ戻った気分になりました。船長アーチャー、以上。」 ため息をつく。「どうだった?」 
 微笑むサトウ。タッカーは目を押さえる。
  
 彗星上のリード。「氷は白いページのように全てを記録に残す。掘り進んでいけば、時代をそっくりさか上れる。」 
 メイウェザー:「大尉?」 
 「何だ?」 
 「どう思います?」 そこには、雪だるまがあった。 
 笑うリード。「プラズマトーチ※22を貸して?」 目と口を描いた。鼻にはトーチを突き刺す。また大きく笑う。 
 通信が入った。『アーチャーよりリード大尉?』 
 我に返るリード。「はい、船長。」 
 アーチャー:『調子はどうだ?』 
 「爆弾をセットするところで。」
  
 ブリッジのアーチャー。「観察されてるのは、念を押すまでもないな?」 
 リード:『はい。』 スクリーンには、しっかり雪だるまが映っている。 
 「全てスムーズに事を進めたい。印象よくな?」
  
 応えるリード。「はい。」 
 アーチャー:『それで? 彫刻家は誰だ?』 
 「…すぐ処分します。」
  
 通信を終えるアーチャー。「アーチャー、以上。」
  
 取りかかるリードたち。
  
 タッカーは尋ねた。「どうだった。」 
 サトウ:「遅くなってすみません。複雑な暗号で。」 
 「内容は。」 
 「ヴァルカン語です。後は、翻訳マトリックスにかけて下さい。」 
 「読まなかったのか?」 
 「…いけない気がして。」 
 「…お疲れ。」 
 タッカーはコンピューターにセットし、翻訳された文章を読み始めた。 
 ため息をつく。
  
 作戦室のアーチャー。「入れ。」 
 タッカーが入る。「例の…暗号を解読しました。」 
 アーチャー:「それで?」 
 「ちょっと、予想外のものでしたね。…手紙です。」 
 「どんな。」 
 「それが…私信です。」 
 「私信?」 
 「とてもプライベートな。」 
 「ああ…。」 
 「命令なら内容を言いますが、後悔すると思いますよ?」 
 「何で暗号化されてた。」 
 「俺も知りたいですよ! ヴァルカンじゃ、手紙も暗号化するんじゃないすか? あれなら別に、私信ってマークして、普通に送ってくれりゃ調べなかったのに。それを、暗号化するから、盗み読みしちまった。クッキーつまみ食いして見つかった気分ですよ。」 
 「気にするな。悪気はなかったんだ。」 
 「…無理ですよ。……彼女に言います。」 
 「事態が良くなるか?」 
 「でも言うべきですよ。でなきゃこれからまともに、目を見て話せなくなる。」 
 「…いい奴だな?」 
 作戦室を出るタッカーに言うアーチャー。「フェイズ銃持ってった方がいいかもな。」 
 タッカー:「本当ですね。」
  
 ブリッジ。 
 タッカーはトゥポルに話しかけた。「話がある。…プライベートで。」 
 一緒に作業をしていたクルーに命じるトゥポル。「外して下さい。」 
 タッカー:「今まで……勘違いで、洒落にならないことを……やったって経験は?」 
 トゥポル:「ない。」 
 「…それじゃあ…あ…こうじゃないかと予測して、それに対処するために、ある行動を取ったが…でも、予測してたことと違ってたことは…」 
 「何が言いたい?」 
 「…ヴァルカンからあんたへのメッセージを見つけた。」 
 「…プライベートなことです。」 
 「何で艦隊の通常チャンネルで来なかったんだ。」 
 「それでは時間がかかる。急だったもので。」 
 「だから暗号にしたのか? それがどんなに疑わしく見えるかわかるか。」 
 「…読んだんですか?」 
 「すっかり自己嫌悪に陥ってるよ。」 
 「ほかにも部屋に手紙を保管してある。それも読みます?」 
 「…謝りに来たんだけどね。」 
 通信が入る。『アーチャーよりトゥポル。』 
 トゥポル:「はい、船長。」 
 アーチャー:『作戦室へ来てくれ。』 
 行く前に尋ねるトゥポル。「ほかに誰か手紙を読んだ?」 
 タッカー:「誰も。」 
 「……人には話さないで下さい。」 
 「もちろん、約束する。」
  
 アーチャーは切り出した。「ヴァニク船長を、この船へ招こうと思う。我々の行動に興味があるなら、実際見た方が早いだろう。我々が銀河系を吹き飛ばしたりしないとわかれば、ほっといてくれるかもしれない。」 
 トゥポル:「好意として受け取るとは思います。」 
 「うん。親しくなるには、食事がいい。君から、シェフにメニューの…提案をしてくれないか。」 
 「わかりました。」 
 「食事に? ワインも、少々。」 
 「ヴァルカンはワインを飲みません。」 
 「だがわかるだろ? 奴を追っ払いたい。手伝ってくれ。」
  
 医療室。 
 診察するフロックス。「症状が出たのは?」 
 トゥポル:「2日前です。」 
 「うん、妙な態勢で寝たんでしょう。」 
 「ずっと眠っていません。」 
 「2日間も? 心配事ですか。…頭痛は、そのせいですね。ここで話すことは守秘義務で守られます。心配事があるなら話してくれませんか。」 
 「いえ。」 
 「この船に相談できる相手がいるかどうかわかりませんが、誰かに話せばずっと気が楽になると思いますよ?」 ハイポスプレーを打つフロックス。「ただの鎮痛剤です。今夜眠れるように後で薬を出しましょうか?」 
 「お願いします。」 出て行くトゥポル。
  
 雪だるまのそばで作業を続けるリード。 
 雪だるまには大きなとがった耳がつけられている。 
 メイウェザー:「耳がいいですね。」 
 リード:「そうだろ?」 
 「…やっぱり外はいいな。」 
 「気に入ったようだな。でもこの景色は、じき変わるからな。エンタープライズへ。」 
 アーチャー:『何だ。』 
 「爆薬セット。」
  
 命じるアーチャー。「待機だ。これからうるさい音を立てると、ヴァルカンに知らせてくれ。」 
 サトウ:「了解。」 
 「リード大尉。」 
 リード:『はい。』 
 「吹っ飛ばせ。」
  
 リードは応じた。「了解。」 
 2人は氷の陰に隠れた。起爆させる。 
 大きな爆発が起こった。
 
 
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※8: County Kerry
  
※9: Kenmare
  
※10: Worley Elementary School
  
※11: Ms. Malvin
  
※12: Liam Brennan
  
※13: protein re-sequencer
  
※14: Geoff Miles
  
※15: Chloe O'Shannon
  
※16: Universal Translator この訳が使用されたのは初めて
  
※17: Molly McCook
  
※18: bio-matter re-sequencer
  
※19: Gabrielle Witty
  
※20: Denobula Triaxa
  
※21: polycocyx astris
  
※22: plasma torch
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