ギャロスは続ける。「仮面に興味があるわけがわかったよ。…何者だ。」
アーチャー:「宇宙船、エンタープライズ※9船長、ジョナサン・アーチャーだ。地球という星から探検に来た。」
「地球? 知らないなあ。私のことがなぜわかった。」
タッカー:「リアクターの反応をキャッチしたんだ。」
アーチャー:「名乗ったんだ、今度はそっちが、何をしているか教えてくれ。」
ギャロス:「私も探検家でねえ。かつてそうだった。マルリア※10星系出身だ。2年前調査隊を率いてこのアカーリへ来た。残るつもりはなかったが、2、3ヶ月過ごすうち、ここの暮らしがすっかり気に入ってね。残ることに、したんだ。」
「シンプルな暮らしが好きなら、なぜ地下に反物質リアクターがあるんだ。」
「言っておくが、何もやましいことなどないぞ? リアクターで工作機を動かしているだけのことだ。食料と服はそれで作ってる。」
「この辺りで病人が増えているらしい。あなたが原因という者もいるが…どうなのかな。」
「あの薬剤師に会ったんだな?」
「知ってるのか。」
「数ヶ月前から証拠もなしに私を非難している。アカーリ人の間に死のウィルスが広がっているんだ。この星のウィルスで、私が持ち込んだんじゃない。不運にもここの人々はその病気を治す技術をもっていない。そこで新参者のせいにした、つまり…私だ。」
「ふーん。もし、構わなければ…そのリアクターを見せてもらいたいんだが?」
客がやってきた。
ギャロス:「また今度ということで。失礼。ようこそ。お探しの物がなければ、必ず見つけて差し上げましょう。」 ドアを開ける。「それでは。」
外で話すアーチャー。「工作機用にしては、出力の大きいリアクターだなあ。」
タッカー:「大陸半分の服と食料がまかなえますよ。」
隠れ、コミュニケーターを使うアーチャー。「アーチャーよりトゥポル。」
トゥポル:『何でしょう。』
「すぐ来られるか。」
本を読んでいるリアーン。「どうぞ?」
アーチャーが入った。「また来たよ。」
リアーン:「あら。そちらの方は?」
「トゥポルといって、彼女は…あの店の調査を、手伝ってくれてる。君と同じでトゥポルも科学者なんだよ。」
トゥポル:「見事な設備ですね。よろしいですか?」
リアーン:「何も触らなければね? …2人は同じ州の出?」
アーチャー:「同じじゃない。」
「…何も話してくれないと仲良くなりようがないわ?」
「隠し事があるわけじゃないんだ。」
「いいえ、あるわ。」
2人から離れているトゥポルは、密かにスキャナーを取りだした。
リアーン:「その火を小さくして?」
アーチャー:「例の病気のことを、聞かせてもらえないか。詳しく。」
「先にギャロスの店にいたわけを聞かせて?」
「うーん。地下室を調べようとしていたんだ。恐らく…あそこにある種の機械がある。あるべきでない物がね。」
「何の機械。」
トゥポルは紙を調べている。
アーチャー:「わからない。だが…疫病と間接的に関係があるかもしれない。だから、病気のことがわかれば調査の助けになるんだ。」
リアーン:「…よくはわからないの。人が大勢死んでいってるのにね? これをお湯に入れて? そっとね。患者が出始めたのは 1年半前。兄もその頃に亡くなったの。」
「気の毒に。」
「最初は空気感染の病気じゃないかと思った。でも一部地域に限られてるの。土や水を調べたわ? でも異常は見られなかった。」
液体のサンプルを採るトゥポル。
アーチャー:「ギャロスが関係してると、思ったわけは?」
リアーン:「初期の患者たちの住所。あの店の近くばかりなの。」 壁の地図を指さす。「彼が現れて 1ヶ月後のことよ?」
「それと、夜の配達っていうのは。」
「2、3日おきに、荷物が運び出されるの。あの店から郊外のいろんな場所にね? 朝その場所に行ってみると、荷物は消えてる。それ取って?」
「だから店を見張ってたのか。我々が引き取りに来たと思ったんだ。…それは?」
器に液体を注いでいたリアーン。「…お茶よ? 飲まない?」
トゥポル:「ジョン、ちょっとお話が。」
アーチャー:「頂こう。」
リアーンから離れたアーチャー。「手に入ったか。」
トゥポル:「ええ、船で分析を始めたいと思いますが。」
「わかった。君らは、先に戻っててくれ。」
「船長は?」
「ギャロスと、不審な荷物のことを、もっと詳しく聞いてみる。」
「…長く留まればそれだけ文化汚染のリスクが高まります。」
「アカーリ人にとって『文化汚染』より深刻な問題が起きているんだ。その解明が最優先だよ。」 ドアを開けるアーチャー。
リアーンを見てから、トゥポルは出て行く。「お茶をごゆっくり。」
医療室のコンピューターに表示された図。
フロックス:「驚きましたねえ。産業化前の社会なんですよねえ?」
トゥポル:「ええ。」 元の姿に戻っている。
「フーン、荒削りではありますが、その女性は思ったより進んだ検死技術を使ってる。フフン、素晴らしいですね。宇宙の隅々に散らばる数千の…知的生命体が、それぞれ科学的真実を発見している、フフン。彼女がヴァルカンか…地球の生まれなら…素晴らしい…医者になったでしょう。ああ…。」 顕微鏡を覗くフロックス。「ああ…これが犯人ですねえ。水が汚染されています。テトラサイアネイト 622※11。」
「聞いたことがありません。」
「フーン、化学合成物質です。潤滑油として使われます。通常は、厳格な安全基準の下でね? 劇物です。」
「するとこれが疫病の原因ですか?」
「地下水に染み込んだとしたら、間違いなく。」
「船長に報告します。」
夜のアカーリ。
アーチャーはリアーンと一緒にいた。
メモを取りながらつぶやくリアーン。「3つのサンプルからは何も出なかった…」
アーチャー:「何か言ったか?」
「…何でも? 書く時に、声に出すの。昔からの…癖なのよ。」
「フン、私にも、似た癖があるよ。イヌに話しかけるんだ。」
笑うリアーン。「…小さい頃母がトゥソロプ・コだけど、トゥーポロヤ・プロ・ダク…。」
アーチャー:「…何だって?」
「…デシー・ティーグ・ティラット・モケル? プロエル・ニルシャン・ティーグ? ティラート。プロエル・ニルシャン・ティ…」
アーチャーは突然、リアーンに口づけした。
見えないようにコミュニケーターを操作する。やっとで口を離した。
リアーン:「ティッシク・アプラ…」
アーチャーは、またキスを続ける。口を離しても、翻訳機の調整を行う。「大丈夫か。」
リアーン:「『大丈夫』? …ええ、まあ。」
「あ…人が、通ったんだ。でもその角を、曲がっていった。それで…怪しまれないように。」
微笑むリアーン。「わかったわ?」
ドアが開く音がした。
大きな箱が、いくつも運び出されている。
男※12は店のドアを閉めた。荷物を押し車に載せ、運んでいく。
後をつける 2人。
森の中で、男は荷物を降ろしている。
小型機械を取りだし、それに向かって話しかけた。その言葉は理解できない。返答がある。
アーチャーを見るリアーン。アーチャーは首を振る。
男は去っていった。
箱に近づくアーチャーは、リアーンに言った。「君は戻るんだ。」
リアーン:「箱の中を見るまで帰らない。」 先に近づく。「空けるのを手伝って。」
その時、上空から光が降り注いだ。
アーチャー:「隠れて!」
降りてくる船。トラクタービームが発射され、箱は上空へ上がっていった。
見つめるリアーン。
荷物を収容した船は、宇宙へと戻った。
リアーン:「今までこんなの見たことある?」
アーチャー:「実は…あるんだ。」
突然、2人に向けて武器が発射された。
フェイズ銃を取り出すアーチャー。「ここにいて!」
さっきの男が狙っている。近づいていくアーチャー。
リアーン:「ジョン!」 敵の武器はリアーンをかすめた。
男を引きずり落とすアーチャー。殴り合いになる。
アーチャーは気を失った男に馬乗りになり、顔の皮膚を引きはがした。うろこ状の顔が露わになる。だが男は再び目を開いた。
アーチャーは何とかフェイズ銃を手に取り、異星人を撃った。
男の正体を目にするリアーン。
アーチャー:「…大丈夫だ。死んではいない。」 異星人が持っていた機械を手にする。
リアーン:「それよりほかに言うことがあるんじゃないの?」
ため息をつくアーチャー。
骨董店へ入るリアーン。「その船でいろんな星へ行けるなら、どうしてこんな所へ来たの。」
アーチャー:「君に会いに。」
「私?」
「君個人じゃなく、君たちにね?」
「なぜ? あなたたちより遅れてるのに。」
「科学力を除けば、大して変わらないさ。」 アーチャーが道具を操作すると、エネルギーフィールドが消滅した。ドアを開ける。「行こう。」
フェイズ銃を持ち、洞窟を降りていく。
次のドアも同じ方法で開けられた。
そこには大きな機械があった。スキャナーで調べるアーチャー。
音が響いた。窓の向こうで動いている機械が見える。
見下ろすと、そこには巨大な地下施設があった。働いている者たちも見える。
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※9: 吹き替えでは「エンタープライズ号」
※10: Malurian TOS第37話 "The Changeling" 「超小型宇宙船ノーマッドの謎」で言及。40億人のマルリア人は、ノーマッドに一掃されました。吹き替えでは TOS 同様「アルリア」(こんな誤訳まで、当時の吹き替えにこだわる必要はないと思うんですが…)
※11: tetracyanate 622
※12: 異星人/アカーリ人その1 Alien/Akaali #1 (Charlie Brewer 映画第6作 ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」のスタント)
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