エンタープライズ エピソードガイド
第9話「狙われた星アカーリ」
Civilization
イントロダクション
司令室。 クルーが集まって話している。 アーチャーがやってきた。「おはよう。」 応える一同。「おはようございます。」 散らばる。 アーチャー:「何かあるか。」 トゥポル:「いくつかの現象を、観測しています。ジャラル・クラス※1の超新星の残骸。およそ 3光年、コースを離れた位置です。」 「…なるほどな? ほかには。」 「3つの中性子星からなる星団。滅多に見られません。」 タッカー:「ガッチガチに、凍った星が 3つか…。面白そうだな。」 アーチャー:「うん…。ほかには。」 「後は、ちょっと寄り道してもいいかなってのが、一つありますねえ?」 続いて表示されたのは、地球に似た惑星の図だった。 タッカー:「ミンシャラ・クラス※2の惑星なんですけどね? 4.5光年ほど先です。」 アーチャー:「生命体は?」 「ほんの 5億人ほど。」 「おお…」 笑うアーチャー。 「スキャン通りなら、でっかい文明社会が広がってるはずですよ?」 タッカーは、メイウェザーと一緒に笑い出した。 トゥポルに尋ねるアーチャー。「リストの一番上にあったんだろ?」 |
※1: J'ral-class ※2: Minshara class ヒューマノイドに適した惑星を示す、ヴァルカンの分類。第4話 "Strange New World" 「風が呼んだエイリアン」より |
本編
惑星へ近づくエンタープライズ。 アーチャー:「高度 500キロの軌道に乗ってくれ。」 リード:「船や衛星は見あたりません。」 メイウェザー:「呼びかけますか?」 サトウ:「誰に? 各大陸に数十の都市があるようです。」 アーチャー:「まだやめておこう。彼らがハイバンド周波数を使うのか、のろしか、わからんしな?」 トゥポル:「後者に近いでしょうね? EM 送信を全く検知できません。」 タッカー:「産業化前か。」 アーチャー:「拡大してみよう。」 街の様子がスクリーンに出る。「おい見ろ、沿岸部だ。」 サトウ:「拡大。」 そこには、街へ向かう船が映っていた。 タッカー:「古いクリッパー船みたいですね。」 アーチャー:「まるで時間をさかのぼったみたいだ。」 「早く上陸してみたいですねえ。」 トゥポル:「それには反対します。規則では、ワープドライブ開発以前の社会とは、ファースト・コンタクトをしないとなっています。」 「ヴァルカンの規則で、人間のじゃないぞ。」 「遵守するのが賢明です。我々と接触すれば、彼らの社会の進化に影響が出ます。」 アーチャー:「じゃあ、どうするのが適切なんだ。」 「軌道上からセンサーで十分データ収集できます。」 「ホシ、街を拡大してくれ。」 通りが見える。 アーチャー:「顔が見えるまでアップできるか?」 異星人の顔の様子が見えた。「止めてくれ!」 顔の形がわかる。 アーチャー:「似てるよなあ。…どうだ、トリップ。」 タッカー:「人間そっくりです。」 トゥポル:「しかし上陸すれば、怪しまれます。」 アーチャー:「なら変装すればいいじゃないか。地図を作り写真を撮るだけなら、探査機で事足りる。我々が来たのは…それ以上を、体験するためだ。自分の五感でね?」 異星人の姿を見るタッカー。 ブリッジ。 サトウはイヤーレシーバーに聞き入っていた。笑っている。 戻ってきたアーチャー。「大丈夫か?」 サトウ:「音響リレーで言語を拾ってますが、何十もありますね。ここだけで 10年ぐらい研究できそうです。」 「聞かせてくれ。」 多数の会話が同時に再生される。何を言っているかはさっぱりわからない。 止めるサトウ。「全部の翻訳マトリックスを作るには、時間がかかります。」 アーチャー:「上陸地点が決まれば、一つだけで済むだろ。」 「覚えておいた方がいい単語が一つ。『アカーリ※3』。彼らの種族名です。」 パッドの地図を見るアーチャー。「農場か。」 トゥポル:「都市から離れており、人口もわずか。万一目撃されても、文化汚染の危険は限られます。」 「それでいつも UFO はトウモロコシ畑に降りてたのか。それで? 最初に誰を送る?」 器具を置くフロックス。「これなら大丈夫です。アップで見られない…限りね? ウン? さて…見てみます?」 鏡に映ったのは、アカーリ人の姿になったサトウだった。「かゆいわ…」 顔の隆起に触ろうとする。 フロックス:「ああ…触っちゃダメですよう? かゆみはすぐ収まります。」 衣装も変えているサトウ。「私が適任なんでしょうか。」 アーチャー:「翻訳機が使えなかった場合、君以外どうにもできないだろ?」 フロックス:「左右の隆起が対称ではありませんねえ、右側をもう少し…」 「ああ、ドクター。完璧でなくてもいいんだ。」 「…ああ…わかりました。」 通信が入る。『トゥポルよりアーチャー。』 アーチャー:「何だ。」 トゥポル:『ブリッジへ来て下さい。』 ブリッジに入るアーチャー。「どうした。」 トゥポル:「東大陸のある都市からの、ニュートリノ放射を感知しています。」 「原因は?」 「反物質リアクターかと。」 タッカー:「彼ら家に水道もないんですよ?」 サトウ:「進歩したグループもいるんじゃないですか?」 アーチャー:「我々が、一番乗りじゃないかだ。現地人と異なる、生体反応は?」 スコープを使うトゥポル。「見られません。ただこの距離では判断できません。」 アーチャー:「うーん…。トリップ、トゥポル。医療室へ行くぞ? …補給係に言って、衣装をもう 3着だ。」 出発するシャトルポッド。 アカーリへ向かう。 着替えたタッカー。「履き心地の悪い靴ですねえ?」 笑うアーチャー。「これは?」 クルーに渡していくサトウ。「アカーリの身分証です。全員携帯する規則です。」 タッカー:「トゥポル?」 耳を示した。 トゥポルは気づき、尖った耳をかつらの長い髪で隠した。 うなずくタッカー。 シャトルは郊外に着陸した。 |
※3: Akaali |
夜の街に、人々が集まっている。 道を進むトゥポルとサトウ。 脇道に入り、トゥポルはスキャナーを使う。 通りを覗き込むサトウ。ふと人がいた。「トゥポル。」 そこにいた 2人は、顔に腫瘍ができていた。 歩き続けるトゥポルたち。 人気がない通りに来たアーチャー。「こっちだ。」 タッカーもスキャナーを使う。「そうですね。リアクターはこの地下 8メートルです。」 窓を覗き込むアーチャー。「骨董品店みたいだなあ。」 ドアには鍵がかかっている。 通りかかった住人に気づかれないようにする。 アーチャー:「朝まで待つしかないな。」 タッカー:「でも人通りが多くなりますよ? 暗いうちの方が、よくないですか?」 「そりゃあ、ドアの向こう側に行ければなあ?」 「すぐですよ?」 タッカーは機械を取りだした。鍵を開け始める。 「78光年を越えてやってきて、最初の仕事が不法侵入か。」 「日誌では省いといて下さいよ?」 2人を見ている者がいる。アーチャーは気づいていない。 別の方向から足音が聞こえてきた。 アーチャー:「トリップ!」 タッカー:「急いでやってますよ。」 ドアが開いた。中へ入る。 足音は聞こえなくなった。 店でスキャナーを使うアーチャー。連絡する。「アーチャーよりトゥポル。」 トゥポル:『どうぞ、船長。』 「場所を、ほぼ特定した。」 『了解。その座標へ向かいます。』 タッカー:「こっちです。」 2人は奥へ向かう。 店に、更に人物が入った。女性らしい。 スキャナーを使うタッカー。「放射は 1メートル先です。この向こうですねえ。」 アーチャーは手を伸ばした。だが、突然エネルギーフィールドに弾かれる。 遠くから見ていた女性は驚く。 タッカー:「磁気バリアです。」 アーチャー:「解除できるか。」 「やってみます。」 小型の弓を取り出す女性。アーチャーたちも物音に気づいた。 女性:「誰なの? そのドアに何をしたの?」 タッカー:「何も…本当だ。」 「ここで何をしてるの?」 アーチャー:「私たちなら、怪しい者じゃない。その…収集家です。骨董品の目利きに来た。」 「収集家なら店が開くまで待つはずだわ。骨董品の目利きなんかじゃない。ずっと見張ってた。夜の配達のことも、ちゃんと知ってるのよ。」 「配達?」 「みんな病気になってるわ。ここで起きてることのせいで死人まで出てるのよ。ドアから離れて。」 その時、音が響いて女性は倒れた。トゥポルが撃ったフェイズ銃だ。 アーチャー:「ああ…。撃つことはないだろう。」 トゥポル:「武装しています。」 「もうこれ以上人を撃たないことにしよう、いいな?」 「なるべくは。」 「リアクターの反応はそのドアの向こうから来ている。だが何らかのエネルギーフィールドで守られている。」 「戻りましょう。夜が明けます。」 タッカー:「彼女は。置いてけませんよ。」 アーチャー:「うーん。」 女性の身分証を取り出す。「ホシ。」 機械で解読するサトウ。「名前はリアーン※4。薬剤師です。」 アーチャー:「シャトルへ行っててくれ。」 リアーンは目を覚ました。 部屋にはアーチャーがいる。 リアーン:「何をしたの?」 アーチャー:「…何も? 君は、気を失った。」 「それで嘘は 2つ目ね? あまり上手くないわ。なぜうちへ運んだの? …ギャロス※5の命令? 奴の手下なの?」 「ギャロス?」 「奴のこと知らないの? 押し入った店の主人よ。」 「…誰に言われたんでもない。君を送り届けたかっただけだ。」 「…待って? 手下じゃないなら、あそこで何をしてたの?」 「…あの店で、怪しげなことが行われている。まだ詳しくはわからないが、調べてるところだ。…別の街から来た…調査官だ。」 「どの街? 上司は誰?」 「それ以上は言えないんだ、今は…まだ。」 「嘘を言うよりは黙ってた方がましよね?」 「…同僚が、私を待ってる。行かないと。店で、病気がどうとか言ってたね。明日、その話を詳しく聞かせてくれ。うちにいるか?」 うなずくリアーン。外へ向かうアーチャーに尋ねる。「名前を聞いてないわ?」 アーチャー:「…ジョン※6。」 「ジョン。その街は遠いの?」 何も答えず、アーチャーは出て行った。 エンタープライズ。 リード:「魚雷であの建物を倒壊させても…エネルギーフィールドは、ビクともしないでしょう。」 通信相手のアーチャー。『店の地下はどうなんだ。スキャンできるか。』 リード:「…妙ですねえ、センサーには何も引っかかりません。地下室も、岩盤もない。まるで建物が、宙に浮いているみたいです。」 シャトルポッド内のタッカー。「妨害フィールドか何かあるんでしょうね。」 アーチャー:「うん。センサーをずーっとあの店にロックしておけ。何か変わったことがあったら、すぐこっちに連絡してくれ。」 リード:『了解。』 通信を終えるアーチャー。「彼女…リアーンは、みんなが病気になってると言ってたなあ。」 サトウ:「それらしい人を見ました。顔に斑点のようなものが出ていて。」 タッカー:「船へ連れて行けば、ドクターが原因を特定できるかもしれませんよ?」 トゥポル:「それには反対です。エイリアンによる誘拐のせいで、地球ではエイリアンに対する恐怖が何百年も続いたはずです。…まず店の主と話をするべきでしょう。」 骨董品を直している男。 店にアーチャーとタッカーが入った。 主人のギャロス※7は言った。「ようこそいらっしゃいませ。うちにお探しの物がなくても、必ず見つけて差し上げますよ? どういった御用で。」 アーチャー:「ウィンドウの、品物に目が留まった。私の友人が、骨董の収集家なんだ。」 「特にどういった物をお探しで?」 タッカー:「…いやあ、これなんかいいねえ。」 「街中探してもうちほどの品揃えはありませんよ? こちらが、うちの店でも一番の名品でしてね。」 「何の仮面だ。」 「ドレイラン※8です。死後の世界の支配者ですよ。」 他の客が店を出て行ったようだ。アーチャーはスキャナーを使う。 「ああ。」 「この州の方ではないようですね。」 アーチャー:「ああ、あなたもそうだ。」 スキャナーを見せる。「DNA がこの星の生命体とは適合しない。」 ギャロスは何か機械を取りだした。構えるアーチャー。 調べるギャロス。「そっちもだな。」 |
※4: Riann (ダイアン・ディラシオ Diane DiLascio) 声:深見梨加、TNG ケイコなど ※5: Garos ※6: Jon ※7: Garos (ウェイド・アンドリュー・ウィリアムズ Wade Andrew Williams VOY第93話 "One" 「放射能星雲の孤独」のトレイジス・ロ・ターリク (Trajis Lo-Tarik) 役) 声:鈴置洋孝 ※8: Draylan |
ギャロスは続ける。「仮面に興味があるわけがわかったよ。…何者だ。」 アーチャー:「宇宙船、エンタープライズ※9船長、ジョナサン・アーチャーだ。地球という星から探検に来た。」 「地球? 知らないなあ。私のことがなぜわかった。」 タッカー:「リアクターの反応をキャッチしたんだ。」 アーチャー:「名乗ったんだ、今度はそっちが、何をしているか教えてくれ。」 ギャロス:「私も探検家でねえ。かつてそうだった。マルリア※10星系出身だ。2年前調査隊を率いてこのアカーリへ来た。残るつもりはなかったが、2、3ヶ月過ごすうち、ここの暮らしがすっかり気に入ってね。残ることに、したんだ。」 「シンプルな暮らしが好きなら、なぜ地下に反物質リアクターがあるんだ。」 「言っておくが、何もやましいことなどないぞ? リアクターで工作機を動かしているだけのことだ。食料と服はそれで作ってる。」 「この辺りで病人が増えているらしい。あなたが原因という者もいるが…どうなのかな。」 「あの薬剤師に会ったんだな?」 「知ってるのか。」 「数ヶ月前から証拠もなしに私を非難している。アカーリ人の間に死のウィルスが広がっているんだ。この星のウィルスで、私が持ち込んだんじゃない。不運にもここの人々はその病気を治す技術をもっていない。そこで新参者のせいにした、つまり…私だ。」 「ふーん。もし、構わなければ…そのリアクターを見せてもらいたいんだが?」 客がやってきた。 ギャロス:「また今度ということで。失礼。ようこそ。お探しの物がなければ、必ず見つけて差し上げましょう。」 ドアを開ける。「それでは。」 外で話すアーチャー。「工作機用にしては、出力の大きいリアクターだなあ。」 タッカー:「大陸半分の服と食料がまかなえますよ。」 隠れ、コミュニケーターを使うアーチャー。「アーチャーよりトゥポル。」 トゥポル:『何でしょう。』 「すぐ来られるか。」 本を読んでいるリアーン。「どうぞ?」 アーチャーが入った。「また来たよ。」 リアーン:「あら。そちらの方は?」 「トゥポルといって、彼女は…あの店の調査を、手伝ってくれてる。君と同じでトゥポルも科学者なんだよ。」 トゥポル:「見事な設備ですね。よろしいですか?」 リアーン:「何も触らなければね? …2人は同じ州の出?」 アーチャー:「同じじゃない。」 「…何も話してくれないと仲良くなりようがないわ?」 「隠し事があるわけじゃないんだ。」 「いいえ、あるわ。」 2人から離れているトゥポルは、密かにスキャナーを取りだした。 リアーン:「その火を小さくして?」 アーチャー:「例の病気のことを、聞かせてもらえないか。詳しく。」 「先にギャロスの店にいたわけを聞かせて?」 「うーん。地下室を調べようとしていたんだ。恐らく…あそこにある種の機械がある。あるべきでない物がね。」 「何の機械。」 トゥポルは紙を調べている。 アーチャー:「わからない。だが…疫病と間接的に関係があるかもしれない。だから、病気のことがわかれば調査の助けになるんだ。」 リアーン:「…よくはわからないの。人が大勢死んでいってるのにね? これをお湯に入れて? そっとね。患者が出始めたのは 1年半前。兄もその頃に亡くなったの。」 「気の毒に。」 「最初は空気感染の病気じゃないかと思った。でも一部地域に限られてるの。土や水を調べたわ? でも異常は見られなかった。」 液体のサンプルを採るトゥポル。 アーチャー:「ギャロスが関係してると、思ったわけは?」 リアーン:「初期の患者たちの住所。あの店の近くばかりなの。」 壁の地図を指さす。「彼が現れて 1ヶ月後のことよ?」 「それと、夜の配達っていうのは。」 「2、3日おきに、荷物が運び出されるの。あの店から郊外のいろんな場所にね? 朝その場所に行ってみると、荷物は消えてる。それ取って?」 「だから店を見張ってたのか。我々が引き取りに来たと思ったんだ。…それは?」 器に液体を注いでいたリアーン。「…お茶よ? 飲まない?」 トゥポル:「ジョン、ちょっとお話が。」 アーチャー:「頂こう。」 リアーンから離れたアーチャー。「手に入ったか。」 トゥポル:「ええ、船で分析を始めたいと思いますが。」 「わかった。君らは、先に戻っててくれ。」 「船長は?」 「ギャロスと、不審な荷物のことを、もっと詳しく聞いてみる。」 「…長く留まればそれだけ文化汚染のリスクが高まります。」 「アカーリ人にとって『文化汚染』より深刻な問題が起きているんだ。その解明が最優先だよ。」 ドアを開けるアーチャー。 リアーンを見てから、トゥポルは出て行く。「お茶をごゆっくり。」 医療室のコンピューターに表示された図。 フロックス:「驚きましたねえ。産業化前の社会なんですよねえ?」 トゥポル:「ええ。」 元の姿に戻っている。 「フーン、荒削りではありますが、その女性は思ったより進んだ検死技術を使ってる。フフン、素晴らしいですね。宇宙の隅々に散らばる数千の…知的生命体が、それぞれ科学的真実を発見している、フフン。彼女がヴァルカンか…地球の生まれなら…素晴らしい…医者になったでしょう。ああ…。」 顕微鏡を覗くフロックス。「ああ…これが犯人ですねえ。水が汚染されています。テトラサイアネイト 622※11。」 「聞いたことがありません。」 「フーン、化学合成物質です。潤滑油として使われます。通常は、厳格な安全基準の下でね? 劇物です。」 「するとこれが疫病の原因ですか?」 「地下水に染み込んだとしたら、間違いなく。」 「船長に報告します。」 夜のアカーリ。 アーチャーはリアーンと一緒にいた。 メモを取りながらつぶやくリアーン。「3つのサンプルからは何も出なかった…」 アーチャー:「何か言ったか?」 「…何でも? 書く時に、声に出すの。昔からの…癖なのよ。」 「フン、私にも、似た癖があるよ。イヌに話しかけるんだ。」 笑うリアーン。「…小さい頃母がトゥソロプ・コだけど、トゥーポロヤ・プロ・ダク…。」 アーチャー:「…何だって?」 「…デシー・ティーグ・ティラット・モケル? プロエル・ニルシャン・ティーグ? ティラート。プロエル・ニルシャン・ティ…」 アーチャーは突然、リアーンに口づけした。 見えないようにコミュニケーターを操作する。やっとで口を離した。 リアーン:「ティッシク・アプラ…」 アーチャーは、またキスを続ける。口を離しても、翻訳機の調整を行う。「大丈夫か。」 リアーン:「『大丈夫』? …ええ、まあ。」 「あ…人が、通ったんだ。でもその角を、曲がっていった。それで…怪しまれないように。」 微笑むリアーン。「わかったわ?」 ドアが開く音がした。 大きな箱が、いくつも運び出されている。 男※12は店のドアを閉めた。荷物を押し車に載せ、運んでいく。 後をつける 2人。 森の中で、男は荷物を降ろしている。 小型機械を取りだし、それに向かって話しかけた。その言葉は理解できない。返答がある。 アーチャーを見るリアーン。アーチャーは首を振る。 男は去っていった。 箱に近づくアーチャーは、リアーンに言った。「君は戻るんだ。」 リアーン:「箱の中を見るまで帰らない。」 先に近づく。「空けるのを手伝って。」 その時、上空から光が降り注いだ。 アーチャー:「隠れて!」 降りてくる船。トラクタービームが発射され、箱は上空へ上がっていった。 見つめるリアーン。 荷物を収容した船は、宇宙へと戻った。 リアーン:「今までこんなの見たことある?」 アーチャー:「実は…あるんだ。」 突然、2人に向けて武器が発射された。 フェイズ銃を取り出すアーチャー。「ここにいて!」 さっきの男が狙っている。近づいていくアーチャー。 リアーン:「ジョン!」 敵の武器はリアーンをかすめた。 男を引きずり落とすアーチャー。殴り合いになる。 アーチャーは気を失った男に馬乗りになり、顔の皮膚を引きはがした。うろこ状の顔が露わになる。だが男は再び目を開いた。 アーチャーは何とかフェイズ銃を手に取り、異星人を撃った。 男の正体を目にするリアーン。 アーチャー:「…大丈夫だ。死んではいない。」 異星人が持っていた機械を手にする。 リアーン:「それよりほかに言うことがあるんじゃないの?」 ため息をつくアーチャー。 骨董店へ入るリアーン。「その船でいろんな星へ行けるなら、どうしてこんな所へ来たの。」 アーチャー:「君に会いに。」 「私?」 「君個人じゃなく、君たちにね?」 「なぜ? あなたたちより遅れてるのに。」 「科学力を除けば、大して変わらないさ。」 アーチャーが道具を操作すると、エネルギーフィールドが消滅した。ドアを開ける。「行こう。」 フェイズ銃を持ち、洞窟を降りていく。 次のドアも同じ方法で開けられた。 そこには大きな機械があった。スキャナーで調べるアーチャー。 音が響いた。窓の向こうで動いている機械が見える。 見下ろすと、そこには巨大な地下施設があった。働いている者たちも見える。 |
※9: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 ※10: Malurian TOS第37話 "The Changeling" 「超小型宇宙船ノーマッドの謎」で言及。40億人のマルリア人は、ノーマッドに一掃されました。吹き替えでは TOS 同様「アルリア」(こんな誤訳まで、当時の吹き替えにこだわる必要はないと思うんですが…) ※11: tetracyanate 622 ※12: 異星人/アカーリ人その1 Alien/Akaali #1 (Charlie Brewer 映画第6作 ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」のスタント) |
エンタープライズ。 アーチャーの通信が流れる。『ヴェリディウム※13の、同位元素を掘り出しているようだ。』 トゥポル:「ヴェリディウムは普通爆薬として使われるものです。」 『そういうわけか。』 「テトラサイアネイトの痕跡はありましたか?」 骨董店のアーチャー。「ドリルの先端に使われている。施設は、閉鎖しなきゃならん。リアクターが全作業の動力源になっている。だがフェイズ銃を使えば、街の半分が吹き飛ぶ可能性がある。」 科学コンソールのタッカー。「船長! 俺がそっちに行って、何とかしましょうか。」 アーチャーは応える。「その時間はなさそうだ。……転送が一番確実だろう。何とかして例の妨害フィールドを解除してみる。2、3分くれ。」 トゥポル:『了解。』 異星人のコンピューターを調べるアーチャー。「マルリア語は、読めないだろうな。」 リアーン:「翻訳機、使えないの?」 「マルリア語は無理だ。」 「何しようとしてるの?」 「店周囲にエネルギーフィールドがあって、船からここの様子を調べられない。それを解除するスイッチがあるはずなんだ。」 「見て。」 「何だ。」 「テンガラ通りよ。これが店。」 地図が表示されている。「この線が『エネルギーフィールド』かもしれないわ。」 アーチャーはコンピューターのボタンを押そうとした。 リアーン:「待って! 何してるの?」 アーチャー:「青い線が妨害フィールドだとすると、恐らく青いボタンがスイッチだろう。」 「黄色の波線は?」 「それが?」 「こっちが妨害フィールドかもよ、そしたら黄色のボタンでしょ?」 「青は点灯してる。」 「それが怪しいのよ。」 「うん…言い争ってもしようがない。青か、黄色か。」 「青。」 「うん。」 アーチャーは押した。 途端に警報が鳴り響き、周りのドアが閉ざされてしまった。 今更黄色を何度も押しても、効果がない。 報告するメイウェザー。「船が接近してきます。」 トゥポル:「どこから?」 「惑星の向こう側の、静止軌道上にいたようです。」 リード:「武器プラットフォームを複数感知。完全武装です。」 サトウ:「地上から通信です。」 トゥポル:「船長から?」 「違うようです。」 「スクリーンへ。」 ギャロスが映し出される。『すぐにこの星を去れ。さもないと、お前たちの船を攻撃する。』 トゥポル:「アーチャー船長と話をしたい。」 『それは無理だな。もう死んだ。』 リード:「攻撃してきます。」 揺れるブリッジ。蒸気を止めるタッカー。 ギャロス:『我々の船は今のを 10発同時に発射することもできるんだ。もう一度言う、すぐ軌道を離れろ。』 通信は切れた。 スクリーンを見つめるトゥポル。 アーチャーはコンピューターを必死に操作している。 窓の向こうにギャロスの姿が見える。『どうしてここのことがわかった、船長。醜いテラライト人※14の商人がバラしたのか?』 アーチャー:「言っただろう? 軌道からリアクターを感知したんだ。」 『「探検家」だったな。』 「この星の人たちを助けたい。ここの作業のせいで、彼らの水源が汚染されているんだぞ。」 『この星には、5億人ものアカーリ人がいる。2、3千人どうってことはない。二度とここへ戻ってこないと約束するなら帰してしてやろう。お前とその女を小型船で迎えに来るよう、仲間に言っておいてやった。』 「彼女は関係ない。」 『あんたと一緒に行った方がいいんだ。さあ、コントロールパネルから離れてもらおうか。』 アーチャーはフェイズ銃をリアーンに渡した。「もしもドアから誰か入ってきたら、これを向けて、引き金を引くんだ。」 ギャロスに銃を向けるリアーン。 エンタープライズの背後から、マルリア船が近づく。 リード:「敵は武器を装填中。」 トゥポル:「軌道離脱の準備をして。」 タッカー:「取り消しだ。現在位置から動くな。」 トゥポル:「少佐、私が上官だということは御存じでしょ? 少尉?」 メイウェザーに命じる。 タッカーは呼び出した。 通信が入る。『機関室。』 タッカー:「ビリー※15、エンジン停止スタンバイ、合図を待て。」 ビリー:『了解。』 「一歩も動かないからな!」 トゥポル:「軌道を離れろではなく、離れる準備をしろと命じたんです。生死に関わらず、ここで船長を見捨てるつもりはありません。」 うなずくタッカー。 アーチャーはコンソールを操作する。 ドアが開いた。リアーンと共に出て行く。 サトウは言った。「妨害フィールド、ダウン。」 タッカー:「リアクターは。」 リード:「位置を確認。」 「座標を転送室へ。」 攻撃を受ける。 リード:「船体装甲、ダメージを受けました。」 トゥポル:「回避行動を取って、転送可能域を保持して。」 メイウェザー:「やってみます。」 「応戦して。」 魚雷を発射するエンタープライズ。どちらも命中する。 リード:「エネルギーシールドを使ってます。効き目ありません。」 サトウ:「船長です!」 トゥポル:「つないで。」 町中を歩くアーチャー。「上の様子は?」 船長席のトゥポル。「マルリア船の攻撃を受け、被害が出ています。」 アーチャーはリアーンといる。「リアクターは。」 トゥポル:『ロックオンしているところです。ご無事ですか? 死んだと言われてました。』 「私は平気だ。それより、リアクターだ。」 リアーン:「ジョン。」 人混みの中に、ギャロスの姿がある。 火花を吹くブリッジ。 メイウェザー:「側面スラスター、損傷。」 トゥポル:「タッカー少佐、まだですか。」 転送室で作業を行うタッカー。「船が揺れないと楽なんですけどね。」 トゥポル:『どのくらいかかる?』 「もう少しです!」 コンソールを操作するタッカー。 操縦するメイウェザー。「どうしても振り切れない。」 サトウ:「リアクターを取り返しても、転送で奪い返されるかもしれません。」 トゥポル:「…そんなに欲しければ彼らに返してやりましょう。」 歩くアーチャーたち。 気づいた男が、銃を取りだした。 とっさにしゃがむ 2人。 発射されたエネルギー武器に驚く人々。 ギャロスも近づく。逃げる民衆。 アーチャーは男を撃った。 ギャロスたち 2人が銃を使っている。 タッカーは伝えた。「ロックしました。」 操作するリード。 兵器室で魚雷が準備される。 報告するリード。「右舷、魚雷装填。」 トゥポル:「インパルスエンジン全開、スタンバイ。少佐、今です。」 コンソールを操作するタッカー。 地下室の反物質リアクターが転送されていく。 転送室に実体化する。 タッカーが続けて操作すると、また目の前から消えた。 宇宙空間に現れるリアクター。マルリア船のすぐ近くだ。 トゥポルは命じた。「撃て。」 魚雷はリアクターに命中し、大爆発を起こした。マルリア船を直撃し、動きを止める。 衝撃はエンタープライズにも伝わった。 リード:「敵のシールド、ダウン。」 トゥポル:「少尉、反転して。彼らの武器アレイを狙って。」 ギャロスたちとの応戦が続いている。 リアーンは一瞬顔を出し、確認した。「オイルランプよ。」 アーチャー:「…それをどうする。」 「下の容器に少なくとも 1リットルのオイルが入ってるの。あのオイルは 398度で発火するんだけど、熱を加えられる物持ってない?」 アーチャーは建物に隠れ、フェイズ銃を調整した。 ランプに向けて発射する。 爆発を起こし、下にいたギャロスたちは吹き飛ばされた。 武器を奪うアーチャーは、連絡する。「アーチャーだ。」 トゥポル:『リアクターは破壊しました。マルリア船も武装解除を。エンジンも破壊しますか?』 「いいや。帰ってもらうんだ。だがまず乗客を 3人引き取ってもらう。アーチャー、以上。悪いが店を畳んでいる暇はないな。」 銃を返すアーチャー。ギャロスが装置を操作すると、マルリア人たちは転送されていった。 その場を去るアーチャーとリアーン。 『航星日誌、2151年7月31日。地下の掘削施設は撤去した。アカーリ人たちは、あそこで何があったか全く気づいていない。一人を、除いては。』 リアーンの家。 アーチャー:「患者にこれを一息に飲ませて。」 たくさんの薬が用意されている。 リアーン:「一瓶だけ?」 「それですぐ治る。」 「…ギャロスが戻ってきたら?」 「我々の仲間が、時々見に来てくれるように、手配しておいた。」 「そしたらお茶をごちそうする。」 「そうだね? ……それと、今回の一連のことは、君だけの胸にとどめてくれ。」 「誰も信じないわよ。…この次はどこへ向かうの?」 「無人の星を、いくつも観察に行く。でもここほど、思い出に残るかな?」 キスをするアーチャー。 「また翻訳機が壊れた?」 「何だって? 何て言ったか、まるでわからない。」 アーチャーは口づけを続けた。 |
※13: veridium VOY第128話 "Riddles" 「魂を探した男」など ※14: Tellarite 鼻に特徴のある種族。TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」など ※15: Billy 機関部員。ENT第5話 "Unexpected" 「予期せぬ侵入者」でも言及。声:中村俊洋 |
感想
全く新しい種族としては初めての、惑星上任務が描かれます。トゥポルのセリフにもあったように、後の時代の「艦隊の誓い」にも関係してきますね。そして初めての恋愛エピソードでもありました。とは言っても割かれている時間は思ったより少ないため、これまでの話に比べると比較的テンポの良い進み方だと感じました。トゥポルが使った連携戦法は、VOY「ヴィディア人の協力」でトゥヴォックが指示したのを思い起こさせます。 ただ、フロックスという異星人の技術ではありますが、やすやすとメイクによる潜入が成功しちゃうのは少し行き過ぎな気もします。マルリア (アルリア) 人が TOS でも言及されていたとは…。 |
第8話 "Breaking the Ice" 「彗星は去り行くとも」 | 第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」 |