エンタープライズ エピソードガイド
第10話「復讐の連鎖」
Fortunate Son
イントロダクション
※1ワープ中の宇宙船。 ラグビーボール。若い男、マシュー・ライアン※2はそれを放り投げた。 広い部屋を横切るボール。反対側で受け取る男性、キーン※3。「エンドゾーンのコーナーに持ち込んだ。タッチダーウン!」 一緒に笑うライアン。「今のキャッチは無重力のおかげだ。地球じゃそうはいきませんよ。」 キーン:「お前だって地球じゃ 10メートルも投げられん。」 「だからここにいるんですよ。」 ボールを返すキーン。「それで第2貨物室の揺れの原因はわかったのか?」 ライアン:「木星ステーション※4で積み込んだ荷物が、バランスを崩してたんです。ショー※5と私とで、直しました。」 「今後も注意を。」 船が揺れ、警報が鳴る。 通信が入った。『ブリッジからキーン船長、攻撃を受けました。ノーシカン人※6です!』 通信装置に触れるキーン。「ワープを解除、プラズマ砲※7装填。」 小型船の攻撃が注がれる。 |
※1: このエピソードは、TNG ラフォージ役レヴァー・バートンの監督作品です。ENT では第6話 "Terra Nova" 「植民星テラ・ノヴァの謎」に続いて 2話目となります ※2: Matthew Ryan (ローレンス・モノソン Lawrence Monoson DS9第14話 "The Storyteller" 「混迷の惑星“ベイジョー”」のホヴァス (Hovath) 役) 名のマシューは後に言及されますが、訳出されていません。声:藤原啓治、DS9 初代ベシアなど ※3: キーン船長 Captain Keene (チャールズ・ルシア Charles Lucia TNG第129話 "Man of the People" 「生命リンクテレパシー」のヴェス・アルカー大使 (Ambassador Ves Alkar)、VOY第30話 "Alliances" 「平和協定」のメイバス (Mabus) 役) 声:秋元洋介 ※4: Jupiter Station 24世紀では、ルイス・ジマーマン博士が EMH を開発した場所。VOY第6話 "The Cloud" 「星雲生命体を救え」などで言及、第144話 "Life Line" 「ジマーマン博士の屈辱」で登場 (この時代と同一の形状とは限りません) ※5: Shaw ※6: Nausicaans TNG第141話 "Tapestry" 「運命の分かれ道」などに登場した種族。ENT第3話 "Fight or Flight" 「死のファースト・コンタクト」でも言及。なお船が登場したのは初めて ※7: plasma cannon |
本編
エンタープライズ。 眠っていたポートスは、音で目を覚ました。アーチャーも気づく。「あ…」 応答する。「アーチャーだ。」 クルー:『おやすみのところすみません、艦隊司令部より通信が入っています。フォレスト提督です。』 起きあがるアーチャー。「ああ……。いいぞ。」 シャツを着る。 クルー:『了解。』 フォレスト※8の映像が映し出された。 アーチャー:「提督。お元気そうで。」 フォレスト:『君もな。よくは見えんが。』 乱れている。 「もうすぐ、初の亜空間増幅機を設置する予定です。それまで御辛抱下さい。」 『まあとにかく、報告だけは続けてくれ。彗星※9のスキャンデータは、素晴らしかった。』 「しかし、朝の 4時からするような話ではないのでは?」 『ジョン、君にはすまんが、すぐに引き返して欲しい。』 「なぜです。」 『貨物輸送船から、自動救難信号を受信した。ECSフォーチュネイト※10だ。…近くの艦隊船が全速で向かっても、3週間かかる。…君なら 1日半で行けるだろう。』 「何が起きたんです。」 『まだわからん。呼びかけにも応えんのだ。君に、見てきて欲しい。必要であれば救助を。』 「わかりました。」 『頼んだぞ?』 通信を終えるフォレスト。 アーチャーは画面を消し、ポートスに言った。「…長い一日になりそうだ?」 図の前で説明するトゥポル。「地球の貨物船、フォーチュネイト。Yクラス※11で、最大ワープ速度は、ワープ 1 ポイント 8。総乗員数、23名。」 メイウェザー:「赤ん坊が生まれてることもあります。」 アーチャー:「…詳しいな。」 「僕も船で生まれたんです。Jクラス※12ですが、同じ貨物船で。最大ワープ速度が 1 ポイント 8 ですから、目的地まで時間はたっぷりある。」 笑うアーチャー。 メイウェザー:「それで僕も生まれました。」 トゥポル:「この船についてほかに知っている情報はないんですか? 娯楽以外のことについて。」 リード:「例えば、装備している武器とか。」 メイウェザー:「まあ、通常は低出力のプラズマ砲くらいですね。でも、ほとんどの貨物船が、アップグレードを望んでます。」 「なぜだ。」 「当然ですよ、20キロトンのダイリチウム※13を積んで、10光年を旅してるっていうのに、おもちゃに毛が生えたような武器しか装備してないんですよ? あんまりでしょ?」 ワープ解除するエンタープライズ。 スクリーンにフォーチュネイトが映し出されている。 リード:「船体損傷。ワープリアクターほか、ほとんどの主要システムがダウンしてます。」 アーチャー:「付近に船影は?」 トゥポル:「ありません。」 「回線オン。…フォーチュネイト。こちらは、宇宙船エンタープライズ※14船長アーチャーだ。……フォーチュネイト、応答せよ。」 サトウ:「全く反応がありません。」 トゥポル:「24名の生体反応を感知。」 アーチャー:「ドクターに出発ベイへ来るよう言ってくれ。」 メイウェザーと共に、ブリッジを出て行く。 シャトルポッドが向かう。 アーチャー:「気をつけろ? 船の残骸がある。」 メイウェザー:「わかりました。」 リード:「フォーチュネイト以外の物も、混ざっています。」 フロックス:「ご安心を。有機体の反応はありません。死人はいない。」 「メインハッチ損傷。このままじゃドッキングは難しい。」 メイウェザー:「左舷に補助ハッチがあるはずです。」 シャトルはフォーチュネイトの補助ハッチに近づき、向きを変えてドッキングした。 船内に入るアーチャー。 クルーが近づく。 アーチャー:「乗船許可を。」 ライアン:「どうぞ。私は、副長のライアンです。」 「エンタープライズの、アーチャー船長です。こんな形でお会いすることになって残念だ。何があったんです。」 「ノーシカン人に、襲撃されました。追っ払いはしましたが、こちらも無傷とはいかなかった。」 「ノーシカン人?」 メイウェザー:「盗賊です。何年もこの星系の貨物船を襲い続けてる。両親も襲われました。命は助かりましたが。」 ライアン:「貨物船員で?」 「今もです。Jクラスの、ホライゾン※15に。」 アーチャー:「修理班をスタンバイさせてある。何をすれば?」 ライアン:「いえ…我々で何とかなります。お気持ちだけで。」 リード:「助けが必要ないなら、なぜ救難信号を送ったんです?」 「…乗員の一人がまだ若いもんで、パニックになり、発信してしまったんです。通信システムがダウンして取り消すことができなかった。」 アーチャー:「船長はどこに。」 「襲撃の際怪我を負ったもので、今は私が指揮しています。貴重な時間を使わせてしまってすいませんでした。」 フロックス:「ライアンさん、私は医師です。怪我人がいるなら、何の治療もせずに戻ることはできません。」 メイウェザー:「貨物船の医療員よりは、経験豊富ですよ?」 アーチャー:「遥々やってきたんだ。何もせず帰るわけにはいかんよ。」 ライアンはうなずいた。 ベッドに寝ているキーン。 ライアン:「助かりますか。」 フロックス:「微妙なところです。神経経路が破壊されてしまっている。大脳皮質を再生してみますが、少々時間がかかる。」 ライアン:「どのくらい。」 「2日、または 3日。」 ため息をつくライアン。 アーチャー:「…どうせ、2、3日ここにいるなら、船の修理にも協力しよう。」 ライアン:「結構です。」 「…何でも自力でやってきたのはわかるが、我々が来たんだ。使ってくれ。防御プレートや武器を、アップグレードできるかもしれん。また襲われた時に、きっと役に立つ。修理を終えるのが早ければ早いほど、船荷を早く届けることができるしな?」 ライアンは納得した。 貨物室に入るショー※16。「また乗船許可を出したのか!」 ライアン:「機関部員 2、3人だけだ。」 「これ以上この船をうろつかれちゃたまらん。」 「必要な場所以外入れやしない。」 「奴が見つかったら。」 「しょうがないだろ。無理に追い出せん。」 部下に尋ねるライアン。「異常は。銃は下ろすな。」 そこでは、異星人※17が見張られていた。怪我をしている。 顔を近づけるライアン。「さっさと周波数を吐くんだ。」 |
※8: フォレスト提督 Admiral Forrest (ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong) ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」以来の登場、ENT 初の複数回ゲスト。声:金尾哲夫 ※9: ENT第8話 "Breaking the Ice" 「彗星は去り行くとも」より ※10: ECS Fortunate ECS は訳出されていません。後のトゥポルのセリフから、地球貨物船 (Earth Cargo Ship) の略と思われます。吹き替えでは、この箇所を含め「フォーチュネイト号」となっている箇所があります ※11: Y-Class ※12: J-Class ※13: dilithium 宇宙船のワープ推進システムで使われる結晶物質。TOS第20話 "The Alternative Factor" 「二つの宇宙」など。ENT 初言及 ※14: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 ※15: Horizon 初言及。吹き替えでは、この箇所を含め「ホライゾン号」となっている箇所があります ※16: Shaw (キーラン・マローニー Kieran Mulroney TNG第30話 "The Outrageous Okona" 「無法者オコーナ」のベンザン (Benzan) 役) 声:伊藤和晃 ※17: ノーシカン捕虜 Nausicaan Prisoner (D. Elliot Woods DS9第87話 "Sons of Mogh" 「モーグの息子たち」のクリンゴン士官、映画第9作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」の宇宙艦隊士官役) 声:北川勝博 |
エンタープライズ。 メイウェザー:「ずいぶん古いタイプだ。トリップの腕が鳴るな。このタイプの部品は残ってないだろうが、きっと機関部が作ってくれる。」 ライアン:「部品なら調達できる。」 「ほかのことで手一杯だろ? 手伝わせてくれ。」 「あれが転送装置か。」 「…エンタープライズが完成させたんだ。」 「読んだことがある。経験したことは?」 「まだだ。クルーはみんな怖がってる。でも、僕は早くやってみたい。」 「…ほんの一瞬で移動できるんだろ? 同時に二カ所に存在するような気分だろうな。」 「是非とも味わってみたい。」 「…ホライゾンにいたのか。」 「そこで生まれた。ドレイラックス※18と、ヴェガ・コロニー※19の間で。」 「船を降りる時、親は何て。」 「ホライゾンには、妹※20とその旦那もいるからね。でも父さんは、僕に残って欲しかったと思う。」 「何で艦隊に?」 「自分の人生について考えた時、貨物船の上で一生を送りたくないと思ったんだ。それに、ホライゾンの中には転送装置はないしな?」 2人はターボリフトに乗った。 部品を調べるタッカー。「バルブが撃たれてる。新しいのを作らなきゃならん。40分くれ。…よかったら部下に、船を案内させようか?」 ライアン:「…ありがとう。でも一通り回りました。」 「肝心な場所を見てない。艦隊唯一のワープ5 エンジンだ。」 「聞いたことがある。」 エンジンを見るライアン。 「これからの貨物船にも装備できれば、世界が広がるだろうな?」 メイウェザー:「ワープ3 を出せるだけでも、5年かかる仕事を半年に短縮できる。」 ライアン:「いやあ、俺たちには 1 ポイント 8 で十分だよ。速くなれば、旅を楽しむ余裕もなくなる。」 並べられた食事を取る。 メイウェザー:「デザートもあるからな? 自家製アイスクリームだ。」 ライアン:「いつもこんな食事を?」 「艦隊一のシェフがいる。船長は彼を口説くのに相当苦労したらしい。」 食事を始めるメイウェザー。「…よーし、ミートローフは選ばなくて正解だ。再配列が完成してない。」 「再配列? 本物と変わらない。」 「本物は本物だ。」 「最後にステーキを食べたのは、1年半前だ。今は野菜と、栄養パックしか食べてない。」 「栄養パック、覚えてるよ! よくこう呼んでた。」 2人は同時に言った。「ミステリーミール!」 笑う。 メイウェザー:「…父は料理が上手くてね。栄養パックをあっという間にごちそうにしてくれた。」 ライアン:「うちも誕生日には、母がケーキを焼いたが、誰も材料は聞こうとしなかった。」 「聞いたら最後、食えなくなる。」 「その通り。」 「両親もフォーチュネイトに?」 「…いや。…ノース・スター※21に乗ってた。」 「……君も一緒に?」 「俺は、生き残って…フォーチュネイトに移った。」 「……辛いな。」 「危険はつきものだ。」 「…船を降りたいと思ったことは?」 「艦隊に入るために?」 「食べ物はいい。」 「…そういうことか。飯で釣って艦隊へ誘う気だろ?」 「まさか。でも君はほとんどの船長より、乗船経験が長い。宇宙船があと 3隻造られる予定なんだ。経験豊富な人材は、常に探してる。」 「そうやってみんな艦隊に移ったら、貨物船には誰が乗る。」 「大丈夫さ、全員が移るわけじゃない。」 「君は?」 「……僕なりに悩んで出した結論だ。美味い物が食べたくて移ったわけじゃない。家はホライゾンだ。」 「じゃなぜ降りた。よく家族を捨てられたなあ。」 「…艦隊に入れたのは、生涯で最高の出来事だ。両親も寂しかったろうけど、僕の決断を尊重してくれた。」 「そうかなあ。無理をしてたんじゃないのか? 君のために。……タッカー少佐がバルブの修理を終える頃だ。ごちそうさん。」 残されるメイウェザー。 フォーチュネイト。 子供たちがいる。「早く。」 走っていくのを見るトゥポル。ショーに尋ねる。「なぜ内部システムのパワーが武器システムにつながれてるのです?」 ショー:「君も聞いてるだろ。襲撃に遭ったからだ。」 「だが終わった。戻しましょう。」 「ああ、そのままでいい。構わないでくれ。」 スキャナーを使うトゥポルは、壁のシャフト中に女の子がいることに気づいた。 男の子※22が一人戻ってくる。「絶対見つけてやるからな!」 女の子はトゥポルに、秘密にするように伝える。「シーッ。」 男の子はショーに尋ねている。「ネディーン※23見なかった?」 ショー:「いいや?」 トゥポルはシャフトのドアを閉めた。 次にトゥポルに近づく男の子。「ネディーン見なかった?」 トゥポル:「私はネディーンという名前の子供は知らないが。」 男の子は歩いていった。 またドアを開けるトゥポル。 ネディーン:「ありがとう。」 トゥポル:「事実を言ったまでよ?」 ネディーンは反対側に走っていった。 ショーがトゥポルを見ている。 連絡が入った。『トゥポルから船長。』 応えるアーチャー。「どうした。」 トゥポル:『修理は、ほぼ完了しました。』 「ご苦労。」 『船長に御報告したいことがあります。内密に。』 作戦室。 アーチャー:「タッカー少佐が作ったエンジンの部品は、どうだったかな?」 ライアン:「結合部分が数ミクロンずれてましたが、問題ないでしょう。」 「そうか。キーン船長の容態も、ずいぶん回復してきてるようじゃないか。」 「火傷の方はだいぶ良くなってきました。ドクターのおかげです。」 「うん。ほかにできることは?」 「…いえ。後は、自分たちで何とか。失礼します。」 出て行こうとするライアン。 「君に一つ聞きたいことがあるんだ。…船に乗っているのは地球人だけなのか?」 「ああ…ああ、乗員の子供の一人が、テネビアのスカンク※24を飼ってますが。そのことですか。」 トゥポル:「違います。」 アーチャー:「ノーシカン人の生体反応を感知したんだ。」 ライアン:「ああ…潜んでるってことですか?」 「とぼけるのはやめたまえ! 一体何を隠してるんだ。」 「あの…何のことを言ってるんです?」 トゥポル:「生体スキャンによると、そのノーシカン人は負傷しています。」 「…わかった。あなたたちには関係ないが、確かにノーシカン人はいる。奴は捕虜です。」 アーチャー:「君は、何の権利があって彼を捕虜にした。」 「…奴らはもう何ヶ月も俺たちの船を襲い続け、貨物を盗んだ上に船長を殺しかけました。奴らは何の権利があってそんなことを?」 「…会わせてくれ。」 「どうする気です、うん? ノーシカ※25に返すつもりですか。きっと勲章をもらえますよ。」 「君はどうするつもりだ。」 「あなたには関係ない。俺の船で何が起ころうが、艦隊に口を出す権利はありません。」 「その通りだ。だが一つだけ、この私にもできることがある。」 呼び出すアーチャー。「タッカーはいるか。」 タッカー:『どうぞ、船長。』 「フォーチュネイトに装備した部品を、直ちに一つ残らず回収しろ!」 『はい?』 「いいからかかれ!」 ライアン:「…できるわけがない。」 「どうかな?」 ドアを開けるライアン。「この中です。」 中に入るアーチャー。「どこだ。」 ライアン:「そこに縛ってある。」 奥へ進む一行。 トゥポルはスキャナーで調べる。「生体反応感知。ノーシカンじゃありません。」 姿を見せたのは、銃を持ったショーだった。 後ろにいたライアンも、武器を手にする。 アーチャー:「何をする気だ。」 リードはフェイズ銃を撃った。撃ち合いになる。 リード:「伏せろ!」 フロックス:「こういう状況ではあなたに頼るしかない。」 フェイズ銃を持つアーチャー。「ライアン! 馬鹿な真似はやめるんだ。行け!」 リードに指示する。 貨物に隠れながら、撃ち合いが続く。 ライアンは壁に向けて武器を撃った。穴が開き、空気が漏れ出す。 トゥポル:「船長、船体に亀裂が!」 外に出るショーとライアン。ライアンはドアに向けて発砲する。 ドアに近づくアーチャー。「ライアン!」 開けることができない。 突然、大きく揺れた。 リード:「今のは?」 フォーチュネイトから、最後尾の貨物モジュールが切り離された。 |
※18: Draylax ENT "Broken Bow, Part I" で言及された地名と同一でしょうが、綴りは Dralax となっています ※19: Vega Colony TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」で言及。ヴェガは七夕の織り姫 (織女星) としても知られる、こと座アルファ星のこと ※20: 原語では姉との区別はつきません ※21: North Star ※22: Boy (Daniel Asa Henson) 声:伊藤亜矢子 ※23: Nadine (Elyssa D. Vito) クレジットでは少女 (Girl)。声:小暮英麻 ※24: Tenebian skunk テネビア (Teneebia) は ENT "Broken Bow, Part I" で言及された惑星 ※25: Nausicaa |
エンタープライズのスクリーンにも映っている。 タッカー:「一体何をする気だ!」 サトウ:「4名の生体反応を感知。派遣チームです。」 「タッカーから船長。ご無事ですか?」 モジュール内のアーチャー。「心配ない。それよりフォーチュネイトを追え!」 応じるタッカー。「了解。通信。」 サトウ:「応答なし。」 メイウェザー:「武器を装填してます。」 タッカー:「防御プレートを起動。」 エンタープライズを攻撃し、移動を始めるフォーチュネイト。 トゥポルは外の状況を調べる。「フォーチュネイトが武器を発射しました。」 アーチャー:「トリップ、報告。」 タッカー:『俺たちにケンカを売る気ですよ! お待ち下さい。第3・第4魚雷準備、エンジンを狙え。』 メイウェザー:『了解。』 スクリーンに映ったフォーチュネイトから、シャトルポッドが外れた。 メイウェザー:「ポッドを投げ捨てました。ワープエンジンを起動してます。」 タッカー:「発射!」 魚雷を撃つが、当たる直前にフォーチュネイトはワープに入った。 タッカーの報告が入る。『エンタープライズから船長。』 アーチャー:「どうした。」 『こちらのダメージは大したことありませんが、フォーチュネイトに逃げられました。』 「全力で探せ。」 トリップ:「船長。減圧率から考慮し、できるだけ早くエンタープライズへ戻ることを勧めます。」 「…命令は取り消しだ。大至急シャトルをよこしてくれ。壁に、亀裂が入ってる。」 タッカー:『了解!』 空気の漏れは続く。 エンタープライズ。 図を見るリード。「ワープの痕跡を追おうにも、長距離センサーが破壊されて使えません。」 アーチャー:「修理にかかる時間は?」 トゥポル:「少なくとも 4時間はかかるそうです。」 メイウェザー:「彼らが誰を追ってるかはわかってる。…ノーシカン人です。ライアンは復讐をする気だ。」 「子供じみた考えですが、非論理的な行動の説明はつきます。」 「彼には論理的だ。ノーシカンは彼の船を襲った。彼の家族をね。フォーチュネイトを見つけるには、ノーシカン人を探すべきです。」 ワープ航行中のフォーチュネイト。 ライアン:「周波数を教えろ。」 捕虜のノーシカン。「お前には、交渉能力がないらしい。俺がそれをわからせてやる。」 ノーシカンを蹴るライアン。「周波数を吐けと言ってるんだ!」 ノーシカン:「…必ず俺の仲間が助けに来る。」 「望むところだ。」 ノーシカンを殴り続けるライアン。 手をさするライアン。「案外簡単に吐きやがった。」 ショー:「殺すところだぞ!」 「武器を再調整しろ。」 「あのノーシカン人は?」 「…閉じこめておけ。まだ使える。」 「もう目的は済んだ。奴を解放しよう。」 「……解放?」 「…脱出ポッドで。」 「うーん、そして助けに来た仲間に、シールドの周波数を変えろって言わせるのか。また元の木阿弥だ。」 「そんなこと俺だってわかってる。でも今までは、人質を取って殴りつけることはなかった。それでも解決できてただろ。」 「こっちも真剣に戦うってとこを見せなきゃ。奴らは襲撃をやめやしない。」 「ああ……。船長がこのことを知ったらどう思うだろうな。」 「今は俺がこの船の船長だ。どんなことをしてでもこの船を守らなければならない。そのためには、お前が必要だ。」 うなずくショー。 ライアン:「…俺たちは十分に犠牲を払った。今度はこっちが反撃に出る番なんだよ。」 エンタープライズ。 『航星日誌、補足。フォーチュネイトのものと見られる、ワープ痕跡を探知した。だが、長距離センサーが直るまで、断定はできない。』 機関室のタッカー。「どうだ?」 メイウェザー:「うーん、ああ…違います。次は、L-47※26 だ。」 機関部員:「了解。」 タッカー:「奴に何があったかは知らん。ノーシカン人をぶちのめしたいって気持ちもよくわかるが、艦隊を敵に回すとはな? 今や盗賊の心配をしてる場合じゃないぞ。」 メイウェザー:「僕が貨物船を追うなんて、思ってもみなかった。ホライゾンに乗ってた頃は、何が起きても自分たちで、解決してました。乗員が戦闘に巻き込まれても、大事にはしない。自力で解決できた。もし父の目の前に艦隊が現れて、あれこれ指図をし出したら…」 「時代は変わった、ライアンはそれがわかってない。」 「頭ではわかってる。納得できないだけだ。」 「やった、センサーが復旧した。」 考えるメイウェザー。 パッドを読んでいるアーチャー。「入れ。」 メイウェザーが作戦室に来た。「お時間いいですか。」 アーチャー:「ま、少しならな? ……どうした、トラヴィス。」 メイウェザー:「…率直に申し上げても。」 「もちろん?」 「今のやり方が正しいのか疑問なんです。」 「続けて?」 「命令に背く気はありません。」 「君は、貨物船に詳しい。意見を聞きたい。」 「…ライアンの言うとおり、私たちには関係ないのでは? …無理に干渉する必要はないと思います。」 「ノーシカン人を監禁してるのを、見逃せと言うのか。」 「貨物船員を見くびらないで下さい。父はどんなトラブルも解決できなかったことはありません。ノーシカン人の問題も。」 「しかし、この問題はどうなる。」 「というと?」 「…ライアンは、ノーシカンの船を見つけるだろう。船はダメージを受けてて、フォーチュネイトの方が有利かもしれん。ライアンはどうすると思う。」 「恐らく、ノーシカン船を吹き飛ばすでしょう。」 「うん…君はどう思うか知らんが、私はそれを見過ごせん。人間には、艦隊士官であれブーム世代であれ、守るべき行動の規範というものがある。復讐など許されん。地球で生まれようが、生まれまいが、それは同じはずだ。」 「…その通りです。私は、一番大切なことを忘れてました。」 「まだほかにも、疑問に思ってることはあるか?」 立ち上がるメイウェザー。「ありません。…ありがとうございます。」 出て行った。 フォーチュネイト。 ライアン:「ノーシカン船か。」 ショー:「何度も信号を確認した。」 「シールドの周波数は。」 「もう調整済みだ。」 「プラズマ砲を用意しろ。ワープ解除!」 笑うショー。「止まってるよ。100キロ先の小惑星の近くだ。」 ライアン:「映してくれ。」 スクリーンのノーシカン船は、小惑星に向かって移動を始めた。 ライアン:「気づかれた。奴らの針路を妨害しろ、フル推力だ。」 ショー:「接近中。あと 20キロ。攻撃してくるぞ。」 船が揺れる。「防御プレートを維持。」 「船を捕捉できるか。」 「圏外だ。」 「だったらもっと接近しろ。」 「10キロメートル。9。プラズマ砲、敵船を捕捉。」 「よーし、報復しろ!」 「ああ…惑星の後ろに逃げ込んだ! 補足不可能だ。」 ノーシカン船を追うフォーチュネイト。 裏側には数隻のノーシカン船が待機しており、小惑星内部には施設もあった。 ライアン:「盗んだ貨物をここに下ろしてるらしいな。」 ショー:「一旦脱出しよう。」 「このまま追え。」 「ライアン!」 「せっかく周波数を聞き出したんだ。先頭の船の武器システムをロックして発射しろ。」 操作するショー。 プラズマ砲はノーシカン船に命中した。 ライアン:「もう一度。」 ショー:「効果なし…。」 「ほんとに周波数を調整したのか!」 「奴が言ったとおりにな!」 待機していた船が起動し、攻撃を始めた。 衝撃が走るフォーチュネイト。 ライアン:「ワープで脱出!」 ショー:「ワープリアクター、オフライン!」 「インパルスエンジン全開、防御プレートを最強にしろ。」 「エンジン停止!」 攻撃を続けるノーシカン船。 ショー:「呼びかけてる。」 スクリーンにノーシカン船長※27が映し出される。『お前らの船に、仲間がいることを感知した。ここへは返しに来たんだろうな?』 ライアン:「奴は捕虜だ。」 『すぐにそうではなくなる。』 通信を切る船長。 大きな音が響いた。 ショー:「乗り込んでくる気だ。」 |
※26: 吹き替えでは「L-40-7」 ※27: Nausicaan Captain (ダニー・ゴールドリング Danny Goldring DS9第53話 "Civil Defense" 「暴徒制圧モード始動」のレガート Kell (Legate Kell)、第102話 "Nor the Battle to the Strong" 「戦う勇気」のバーク (Burke)、VOY第86・87話 "The Killing Game, Part I and II" 「史上最大の殺戮ゲーム(前)(後)のアルファ・ヒロージェン (Alpha Hirogen)、ENT第38話 "The Catwalk" 「嵐を告げる男達」のタクレット人船長 (Takret Captain) 役) 声:手塚秀彰 |
ワープ中のエンタープライズ。 サトウは通信を担当している。 トゥポル:「船長。長距離センサーが、武器の使用を感知。」 アーチャー:「武器の種類は。」 リード:「遠すぎて、確認できません。プラズマが放射されてるようなので、フォーチュネイトの可能性も。」 「すぐに向かえ。」 メイウェザー:「了解。」 アーチャーは船長席に座った。 フォーチュネイトにはノーシカン船一隻がドッキングし、周りでも飛行している。 ショー:「セクションD の廊下に侵入してきた。」 ライアン:「何人だ。」 「3人。」 「……みんなに武器を。」 「…仲間を迎えに来てるだけだ。返せばいいだろ。」 「この前だって勝てたんだ。今度だってやれる。」 「あの時は 1隻だ。3隻じゃない!」 「武器を配れ!」 武器を持ったライアンたちは、貨物室を走る。 入り口で待機し、皆武器を向ける。 足音が聞こえてきた。ノーシカンたちだ。 撃ち合いが始まる。 クルーが撃たれてしまった。 ショー:「…退却しよう!」 引き下がるライアンたち。 ドアが閉まる。 ノーシカンには開けることができない。ロックに向けて武器を撃つ。 エンタープライズ。 リード:「フォーチュネイトです。それと小型船 3隻。」 トゥポル:「ノーシカン船です。」 アーチャー:「防御プレート起動。ワープを解除。」 通常飛行に戻るエンタープライズ。 アーチャー:「距離は。」 サトウ:「20万キロメートル前方です。」 「映せ。」 フォーチュネイトおよびノーシカン船が映される。 トゥポル:「フォーチュネイト船内に、ノーシカン人 4人感知。武器を使用した形跡も見られます。」 アーチャー:「…ノーシカン船に呼びかけろ。」 サトウ:「どの、船にしますか?」 「全船同時にだ。」 ノーシカンたちはドアのロックを焼き切ろうとしている。 捕虜の近くにいるライアンたち。 撃たれたクルーは苦しんでいる。 ショー:「医療室に連れて行った方がいい。」 ライアン:「いや、大丈夫だ。」 ノーシカン捕虜:「だから来ると言ったろう。」 笑い出す。 「…黙らねえと、ぶっ放す!」 スクリーンに映ったノーシカン船長。『仲間を救助しようとしてるだけだ。』 アーチャー:「救助にしては発砲数が多くないか?」 『仲間を取り戻したいのだ。』 メイウェザー:「船を襲ったりしなきゃ、捕まることもなかったんだ。」 アーチャー:「…これは、君たちノーシカン人と、我々の関係を修復するいい機会だと思うが?」 ノーシカン船長:『我々はこのままの関係で、十分満足だ。』 「…君たちに提案がある。我々が仲間を救おう。だから君たちも、フォーチュネイトを解放してくれ。」 『こっちには 3隻も船がいるんだ。その提案には全くもって乗れんな。」 「君たちの船をスキャンした。リード大尉。」 リード:「船首、船尾にプラズマ砲。彼らのシールドでは、我々の魚雷には耐えられません。」 「君らの相手は、時代遅れの貨物船じゃない。NX級※28の宇宙船だ。よーく見たまえ。その目で現実を見れば、私の申し出を考え直すはずだ。それとも相手になるか?」 ノーシカン船長:『…本当に仲間を取り返してくれるというのならさっさとやってくれ。さもなければお前たちの、相手になるしかなくなる。』 通信は終わった。 ついにドアが破られた。 武器を向けるショーたち。 撃ってくるノーシカン。 貨物室に通信が流れる。 アーチャー:『エンタープライズからライアン。こちらアーチャーだ。右舷船首 1万メートルの位置にいる。聞こえてるのはわかってる。乗員の安全を考慮し、我々の申し出を受けてくれ。』 ライアン:「…ありがたいこった。艦隊様が助けて下さる。」 『ノーシカン人の船長と話をした。彼の部下を返せば、フォーチュネイトを解放すると言っている。』 「嘘に決まってる。奴らが本気で俺たちを解放すると思いますか!」 『この船に装備してある魚雷には、そうさせる威力がある。』 再び撃ち合いが続く。 ライアン:「…次はどうなるんです。また別の貨物船が襲われたら、その時はどうなるんですか!」 話し続けるアーチャー。「今なら、誰の命も犠牲にせずに争いをやめられる。」 ライアン:『奴らを止めるにはこうするしかないんです!』 リード:「ノーシカン船がこちらに武器をロック。」 アーチャー:「これ以上は待てん。うちのクルーの命も懸かってる。人質を解放しろ。」 武器を撃ちながら応えるライアン。「奴は捕虜だ。俺は俺のやり方で解決する!」 メイウェザーは尋ねた。「どうやってだ。殺す気か?」 笑うライアン。『またお前か。』 メイウェザー:「船長、よろしいですか。そいつを殺せば、全て解決すると思ってるのか?」 ライアンは尋ねた。「船長に貨物船乗り同士話し合えって言われたのか?」 メイウェザー:『いいから黙って聞け、僕は君のことなんかどうでもいい。僕の家族が心配なんだ。』 ライアンの声がブリッジに響く。『何の関係がある。』 立ち上がるメイウェザー。「次に別の貨物船がノーシカン船と遭遇したらどうなる? それがホライゾンで、乗員が、お前のヤケの代償を支払わされたら。」 ライアンは言う。「彼らのためにやってるんだ!」 続けるメイウェザー。「冗談じゃないぞ。こんなことをして、貨物船を守れると思うか?」 ライアン:『そう思うからやってんだろ!』 「自分を正当化するのもいい加減にしろ。君のしてることは、ただの復讐だ。目を覚ませ!」 リード:「ノーシカン船が発砲しました。」 揺れる船内。 アーチャー:「応戦しろ。右舷第3・第4魚雷発射。」 メイウェザー:「僕が嫌いなんだろ、貨物船を下りて艦隊に入ったから。君は、みんなが艦隊に入って、貨物船乗りがいなくなるのが心配なんだ。そうかもしれないし、違うかもしれない。ただ人質を解放しなければ、君が殺されるのは確かだ。君の乗員もな。」 ショーを見るライアン。 反撃するアーチャー。「左舷第1・第2魚雷、発射!」 メイウェザー:「そうなれば、また貨物船の乗員が 23人も減ってしまう! 確実にな。」 ライアンは、武器を置いた。捕虜に近づく。「武器を下ろせ! こいつを返す!」 押しやるライアン。 捕虜は仲間に向かってうなずいた。共に貨物室を出て行く。 ノーシカンたちは見えなくなった。 エンタープライズのブリッジに沈黙が流れる。 リード:「ノーシカン船が武器を解除。離れていきます。」 ため息をつくメイウェザー。 アーチャーはメイウェザーに向かってうなずいた。 メイウェザーは操舵席に戻る。 フォーチュネイト。 ベッドから降りるキーン。 医療室に入るアーチャー。「手を貸そう。」 笑うキーン。「それには及ばん。ドクターのおかげだ。ドリラクシアン・ウィスキー※29を隠してあるんだが…一杯どうかね。」 アーチャー:「勤務中だ。」 「そうか。これで君は、銀河の楽しみを一つ逸した。ライアンを平の乗員に格下げしたよ。この船に乗ってる限り、彼は油圧ポンプ係だ。」 「彼の扱いに困るようなら、地球へ送るが?」 「いや、我々で何とかする。それに、人手は必要だ。」 「なるほど?」 「…彼を信用してたから副長にまで任命した。汚名返上には時間がかかるな。」 「志はよかった。だが、周囲の助けを受けることも、覚えた方がいいな?」 「貨物船で育った者は…独特の、感覚をもってる。縄張りみたいなものを大切にするんだ。10光年以内に別の船がいると、敵意をもつ。」 「これからは、もっとたくさんの船を見ることになる。」 「…船の速度は、進化してるからな。私は 3世代に渡り、この船に乗っている。そろそろワープ3 ぐらい、取り入れるべきかもしれんな。」 「大賛成だ。ワープ3 なら目的地も近くなり、孤独な時間が減る。」 「孤独を苦だとは思わん。我々が…貨物船に乗るのは、己を鍛えるためだ。」 「もう十分じゃないか。」 「ハ、まあ…時代には、勝てんしな。今までのようには、いかなくなる。」 握手するアーチャー。「幸運を。」 キーン:「一杯だけでもやっていかないか。」 アーチャーは笑った。「…またにするよ。クルーが、帰りを待ってる。ありがとう。」 キーンはうなずいた。出て行くアーチャー。 フォーチュネイトを離れるシャトルポッド。エンタープライズへ帰る。 | ※28: NX-class 明らかに後の時代とは、クラス名の付け方が違うようですね ※29: Draylaxian (Dralaxian) whiskey ドレイラックスの特産でしょうね |
感想
貨物船フォーチュネイトと、TNG 以降ではおなじみのノーシカンが登場。宇宙艦隊が惑星連邦の組織として、文字通り「広く」認知されている 23世紀以降とは違い、貨物船もノーシカンも舐めきっているのが面白いですね。 ノーシカンは多少メイクが変わっているようですが、これまでのメイクだと顔がわかりにくいせいでしょうか? |
第9話 "Civilization" 「狙われた星アカーリ」 | 第11話 "Cold Front" 「時を見つめる男」 |