ランナバウト。
ベシア:「……なあ、質問してもいいかな。」
オブライエン:「どうぞ?」
「正直に答えてくれ?」
「…何です。」
「僕を……嫌ってるのか。」
「嫌ってる? …何を言うんですか?」
「…だって、このシャトルにもう 2時間も二人っきりで乗ってるのに、一言も口聞かないからさ。」
「そうでした、気づかなかった。」
「ああ、やっぱり。」
「…考え事をしていたものですから。」
「考え事?」
「そうです。」
「何について。」
「え?」
「何を考えてたんだ、聞きたいなあ。」
「ああ…そうですねえ、うん。…ステーションに戻ったら位相コイルジェネレーターのレベル1 チェックをやらなくちゃならないなって考えてたんですけどね? …そんなとこです。」
「なるほどね。」
「…どうぞ御安心を。」
「同行してもらったのは、何より君が頼りになるからだ。だからしゃべらなくたっていいさ、僕がおしゃべりすぎるんだよな。」
「そんなことは…」
「落ち着きがなくて…気を悪くしないでくれ?」
「いやあ、とんでもない。」
「……もう一つだけ。」
「何でしょうか?」
「僕には、敬語を使う必要はないんじゃないかなあ。」
「そう言われても、ドクターは上官ですから。」
「ジュリアンと呼べよ。」
「……命令ですか。」
「いやあ、命令なんかじゃないさ。単なる、僕の希望だよ。名前で呼んでもらいたいなあ。」
「…了解。」
ランナバウトはベイジョーへ近づく。
オブライエン:「…ベイジョー星の周回軌道に乗りました。すぐ、上陸できますよ…ジュリアン?」
集落※6の中心に転送される 2人。
人々は普通に生活している。
トリコーダーで調べるベシア。「空気中に病原体はなし。土壌も汚染されてはいない。地下水の水質も問題なしだ。」
ベイジョー人の男性が近づく。「ようこそ。私が村長の、ファレン・カグ※7です。」
ベシア:「ドクター・ベシアです。彼はオブライエン。」
ファレン:「村の一大事です、早速診ていただきたい。」 案内する。
家※8の中で、一人の老人が寝ていた。
ファレン:「容態に変化はないか。」
付き添っていた若者。「何も。」
ファレン:「…助けて下さい。」
ベシア:「病人は何人?」
「何人って?」
オブライエン:「村の一大事だと言いましたよね?」
「その通り。この方が死ねば、村は終わりだ。」
DS9。
部屋にいる男性ベイジョー人、ウーバン※9。「カーデシア人もなかなかやる。奴らのレプリケーターで作ったラリッシュ・パイ※10は実に美味い。」
ヴァリス:「食事しに来たわけじゃないわ?」
シスコ:「じゃあ話し合いを。正式な交渉が始まるのは今夜からですが、形式張らない場で意見を交わしておくのは有益かと思いましてね。条約を見たところでは『過去 90年間に渡って、パク・ナヴォット両派の境界線はグリアホンド※11川』となっています。」
ウーバン:「その通りだ。」
うなずき、座るヴァリス。
キラ:「まず、前提は整ったわ?」
シスコ:「ここからが問題となるわけですがカーデシアは占領中にその川で採掘作業をしました。その結果、グリアホンド川は元の位置より西へ 20キロ移ってしまった。」
ウーバン:「我々ナヴォットの領地へ食い込んできた。」
ヴァリス:「文句は言えないはずだわ? 条約にある通り、あの川が境界線よ。」
「条約には土地泥棒していいとは書いてないぞ? 君の父親が生きていれば、あの土地は返しているだろう。」
「父は、絶対に折れたりはしないわ! …それに今の代表者は私よ。みんなのために、あの土地は私が守ってみせる。」
クワークがやってきた。「お待たせ! 特製シンセエールを 2つに? ガムジアン・ワイン※12と、お子様にはトリクシアン・バブルジュース※13。はーいお嬢ちゃん?」
ヴァリス:「口の利き方に気をつけてちょうだい。」 ジュースをクワークの顔にかけ、出ていく。
「…飲まなくても御代は頂くよ。」
プロムナード 2階の角にいるジェイクとノーグ※14。ジェイクはグローブを持っている。
ノーグは下を歩いている異星人に、何かを投げた。「それ。」
頭に当たり、上を見上げる異星人。笑うノーグ。
ジェイク:「ノーグいつまでここにいる気だ。ホロスイートで野球しようよ。」
ノーグ:「…やだね。」
「どうしてだよ。」
「だって野球なんてつまんないだけだもん。」
「下手くそだからだよ。」
「あんなの何百年も前に廃れた大昔の遊びじゃないかあ。」
「僕のカーブが打てないから嫌なんだろ?」
オドーが近づく。「そこの二人? 全く。プロムナードで遊ぶなと前にも注意したはずだがな。」
ジェイク:「下には落ちないよ。」
ノーグ:「ここ、すごく眺めいいんだもん。」
オドー:「何をそう熱心に眺めていると言うんだね?」
ジェイク:「……別に?」
「『別に』何も見ていないんなら、ここに座っている必要はないな。では、二人とも起立!」
従うジェイクとノーグ。
オドー:「よろしい。」 歩いていく。
また座るノーグ。
ジェイク:「ねえ、もうホロスイートに行こうよ。僕らなら、バック・ボカイ※15にも負けないよ。歴史的なバッターだけどさ。グローブ貸してやるから。」
ノーグ:「…俺、あんな綺麗な子初めて見たよ。」
下をヴァリスたちが歩いていく。
ジェイク:「まあまあだね。」
ノーグ:「最高だよ! …ナンパしてこよう。」
舌打ちし、追いかけるジェイク。
ベイジョーの村。
うめいている老人。突然声を上げた。「ああ…ダルロック※16。」
ベシア:「起きないで。安静にしてた方がいい。」
若者を呼ぶ老人。「ホヴァス※17。」
ホヴァス:「ここにおります。」
「日暮れは?」
「あと、2時間はありますよ?」
「なぜ、もっと早く起こさなかった。着替えるから手を貸せ…」
ベシア:「申し訳ないが、ベッドから出すわけにはいかない。」
「…預言者が遣わしたのはそなたか。」
「何のことです?」
ベシアの手を握る老人。「ああいや、この者ではない。…そなたには、連れがいるな?」
ベシア:「…オブライエンですか?」
「ああ、ここへよこせ…」
「なぜ。」
「なぜなら、わしが待ってたのはお前ではないからだ。」
「…オブライエン。…ここへ来てやれ。」
「…そばへ……。そばへ寄れ。」 また手を握る老人。「ああ…やはりな。やはり預言者は我らを見捨てなかった…。もう下がってよいぞ、2人ともだ…。」
「ベッドにいるよう、見ててくれ?」
ホヴァス:「うん?」
外に出るオブライエン。「一体どういうことだ?」
ベシア:「見当もつかない。」
ファレン:「シラー※18の容態は。」
「悪いニュースだ。気の毒だが細胞崩壊によって、全身の器官がむしばまれてしまっている。老衰からくるものだよ。」
「治療の手だては。」
「痛みを和らげてやることしかできないね。残念ながら、後は時間の問題だ。」
「何とかしてくれ! ダルロックが来てしまう。」
オブライエン:「その、ダルロックってのは。」
「化け物だよ。北にある森に住んでいるんだ。毎年収穫の時期に現れる。」
ベシア:「それが今夜来ると言うんだな?」
「そうだ、5日続けてやって来る。今夜で 4日目だ。村を守れるのはシラーだけなんだ。」
「今のあの人にはベッドから起き上がる力もないぞ。」
「…それが事実なら、この村は今夜で全滅だ。」
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※6: このベイジョーの村は、第18ステージに建設されました
※7: Faren Kag (ジム・ジャンセン Jim Jansen DS9第104話 "Trials and Tribble-ations" 「伝説の時空へ」のラクスリー (Lucsly) 役。ゲーム "Armada" でも声の出演) 声:大川透、DS9 ガラックなど
※8: DS9第1話 "Emissary, Part I" 「聖なる神殿の謎(前編)」で、シスコとオパカが会った部屋の使い回し
※9: Woban (ジョーダン・ランド Jordan Lund TNG第101話 "Redemption, Part II" 「クリンゴン帝国の危機(後編)」のカルグ (Kulge)、ENT第51話 "Bounty" 「狙われた首」のスカラー (Skalaar) 役) 声:乃村健次
※10: larish pie 吹き替えでは「ラリッシュ」は訳出されていません
※11: Glyrhond
※12: Gamzian wine DS9第7話 "Q-Less" 「超生命体“Q”」より
※13: Trixian bubble juice 初登場
※14: Nog (エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) DS9第11話 "The Nagus" 「宇宙商人フェレンギ星人」以来の登場。声:山口勝平
※15: Buck Bokai TNG第12話 "The Big Goodbye" 「宇宙空間の名探偵」より。吹き替えでは「ベーブ・ルース」となっており、2話後とのつながりが台無しに…
※16: Dal'Rok
※17: Hovath (ローレンス・モノソン Lawrence Monoson ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」のマシュー・ライアン副長 (First Officer Matthew Ryan) 役) 声:吉沢徹
※18: Sirah (ケイ・E・クター Kay E. Kuter TNG第93話 "The Nth Degree" 「謎の頭脳改革」のサイセリア人 (Cytherian) 役。2003年11月に死去) 声:小関一、旧ST5 コードなど
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