ディープスペースナイン エピソードガイド
第4話「宇宙ステーション殺人事件」
A Man Alone
イントロダクション
独特なポーズで座り、目をつぶっているダックス。その前にはシャボン玉のような、大きな球体が浮かんでいる。 ベシアがホロスイートへ入ってきた。 目を閉じたままのダックス。「何か用、ジュリアン?」 ベシア:「なぜ僕だとわかったんです。」 「見分ける方法はたくさんあるのよ? 例えば足音のリズムとか。」 「素晴らしい能力だ。」 「ジュリアン。トリル人※1の認識について、話し合う必要があるわ?」 「それなら、食事しながらでも? コリス1号星※2の極上のシャンパンを、クワークが見つけてくれたんですよ。」 「ジュリアン…」 「これは、何です。」 「アルトニア星のブレインティーザー※3よ?」 「ブレインティーザー。」 「つまりパズル。」 「パズル。」 「うん。」 「…パズルは得意だ。どうやるんです?」 「神経セータ波に反応するの。球体を単一色にしたら、上がりよ?」 「それだけ?」 「そうよ? これをマスターするのに、私はそう…140年も練習したわ? 試してみる?」 「…ええ。」 「リラックスして?」 ベシアの後ろに立ち、手を頭に当てるダックス。「緊張を私の手に解放するの。」 「すごく、冷たい手だ。」 「それがトリル人の特徴。」 「でも心は暖かい。」 「意識を球体に集中して。雑念を払うの。集中心と透明な意識が必要よ?」 「わかりました、集中します。そのエキゾチックな香りは何です。」 「集中心と、透明な意識をもって?」 「よーし、準備できた。」 「じゃ、あなたに導入するわよ?」 目を固くつぶるベシア。「OK。」 ダックス:「コンピューター? セカンドプレーヤーにコントロールを移して。」 その途端、球体の色は乱れ、消滅した。 ダックス:「まだ雑念が居座ってるわよ?」 ベシア:「今夜、夕食でも一緒にどうです。」 シスコがやってきた。「出れるか。」 ダックスはベシアに言う。「悪いけど、またの機会にね? 練習してみたら?」 シスコ:「悪いね。」 2人は去った。 ため息をつくベシア。「…コンピューター。リセット。」 |
※1: 吹き替えでは「トリル族」 ※2: Korris I ※3: Altonian brain teaser |
本編
クワークの店。 オドー:「繁盛してるな、クワーク。合法的な商売もできるじゃないか。」 クワーク:「知らん顔ばかりだ。」 「フン。…新天地には大勢群がってくるな。」 「みんな一儲け企んでるのさ?」 「フン。お前は彼らの足元を見てボロ儲けってわけか。」 オブライエンの声が聞こえてきた。「二人で決めたことだ。」 2階にケイコ・オブライエン※4もいる。「そうじゃないわよ。私は反対したのに。」 オブライエン:「何?」 「あなたが勝手に決めたんじゃないのよ。」 クワーク:「噂じゃ※5、チーフ・オブライエンとミセス・ケイコは、揉めてるそうだぞ?」 笑う。 オドー:「人間はなぜ結婚したりするんだろうな。…馬鹿げてる。」 「…結婚したこと、ないのか?」 「実にくだらん。妥協あるのみだ。カロ・ネット※6の試合を見たいと思っても女が音楽を聴きたいと言えば、妥協して…聴かなきゃならん。地球のジャズが好きなのにクリンゴン・オペラがいいと言われれば、妥協して…クリンゴン・オペラを聴かなきゃならん。カロ・ネットを見て楽しいひとときをと思っていても、女の一言で、退屈な…クリンゴン・オペラを強制される苦痛の夜に終わってしまうんだ。フン!」 またケイコの声。「もう、いい加減にして!」 オブライエン:「ケイコ、座れ!」 「だって、あなたの言ってることは強引よ!」 オドー:「それにしても一体何を揉めてるんだ。」 クワーク:「彼女ここが嫌いなんだ。」 「フーン…みんなそうさ。」 シスコとダックスが 2階に見えた。 クワーク:「ハーッ!」 笑うオドー。「フン、お前には高嶺の花だ。」 クワーク:「そうとは限らん。チャンスはあるさ。」 「ヨドージ砂漠※7で湧き水を手に入れるようなもんだな?」 ダックスに見とれるクワーク。「ああ…」 オドー:「第一新任司令官が彼女に御執心さ。」 「とんでもない。俺は秘密を知ってる。昔、彼女が男の身体だった時、つまり今の身体になる前、2人は親友だったんだ。」 「だから何なんだ。」 「アー…。」 オドーは店にいる男に気づいた。「あの男いつからいるんだ。」 ギャンブルを楽しむベイジョー人。「…よーし、もう一回だ…」 クワーク:「確か夕べのスターシップで来たんだ。おお…」 まだダックスを見ている。 フェレンギ人のウェイターが尋ねる。「何にしましょう。」 ダックス:「スチーム・アズナ※8を。」 シスコ:「相変わらず好みは変わってないんだね。」 「美味しいって言ってるのに、あなた食べず嫌いなんだから。」 「ダックス、私が子供だった頃、父が作ってくれた食事の話をしたか。」 「…嫌になるほど。」 「夕食は毎晩必ず、家族全員で食べるのが父の主義だったんだ。父が新しい料理を作って、家族みんなに試食させるんだよ。」 「スチーム・アズナは長生きの秘訣なのよ?」 「アズナを食べるぐらいなら、長生きなどしたくないね? ソテーとか…ソース煮とか、いやあ、やっぱり早死にした方が、ずっとマシだ。」 笑う 2人。 シスコ:「ああ…でもスチーム・アズナは懐かしい。」 ダックス:「……クルゾンを思い出すのね。」 「彼は…君は、今も…恩師だ。もう一人の父だ。」 「…トリル人は姿を変えながら生きていく。私達があんまり姿を変えるので、ほかの種族との友情が続かなくなる時があるわ?」 「私達の場合は違う。ただ…まだ馴染まないだけだ。」 「だったら、馴染もうなんて決して無理をしないこと。流れに任せるの。時が解決してくれる。」 オブライエンの声が聞こえる。「ケイコ!」 ケイコは歩いていった。うなだれるオブライエン。 オブライエンはケイコの後を追う。 声を上げるダボ・ガール※9。「ダボー!」 ベイジョー人:「いただきー。」 オドーが男に近づいた。「貴様などこの基地へ来るな。」 ベイジョー人:「どこへ来ようと俺の勝手だ。俺には権利がある。」 「このプロムナードに出入りできる者を決めるのは私だ!」 「連邦の御偉方はそうは言ってないぞ?」 「私は資格がある!」 ベイジョー人につかみかかった。 騒ぎに気づき、降りていくシスコ。 組み合う 2人を止める。 オドー:「26時間※10以内に基地から出て行け!」 店を去った。 外を見ているケイコに近づくオブライエン。「なあ、そんなに気に入らないんなら転居願いを出すよ。」 ケイコ:「それじゃあ申し訳ないわ。もう昇進できないもの。」 「そうとは限らん。」 「…ここにいたら、私何の生き甲斐も見いだせないの。この基地には、植物学者など必要ないのよ。」 「ワームホールの向こうには、数知れない新しい植物が…きっと君を待っているよ。」 「探検するのは宇宙艦隊で、私に用はないわ?」 「そうなるとシャトルが必要になる。それに乗れるようにするから。」 「何か同情されてるみたい。有意義な仕事をしたいだけよ!」 「……このプロムナードに花や植物を植えたら、和らいだ雰囲気になるよ。ガンマ宇宙域から持ち帰った標本で、植物園を造ってもいい。」 ケイコは 1階を歩いているジェイクに気づいた。「あなた本当にこんなところで子供を育てたいの?」 通信が入る。『キラからオブライエン。』 オブライエン:「…どうぞ?」 キラ:『5階で停電事故が発生して、上のドッキング標識が使えなくなってしまったの。』 「…すぐ行きます。」 オブライエンはケイコを見て、歩いていく。もう一度振り返る。 ジェイクは話しかけた。「ハーイ!」 ジャムジャ・スティック※11を買ったノーグ※12。「何だい、地球人。」 ジェイク:「僕ジェイクっていうんだ。」 「そんなこと知ってるよ。」 「君の名は?」 「何だっていいだろ?」 「できれば友達になりたいと思ってさ。よかったら教えて?」 「……ノーグだ。ノーグだよ。」 オドーは説明する。「あいつはイブダン※13と言って…カーデシアの占領中、ブラックマーケットを牛耳って、大儲けした悪党なんです。貴重な医薬品の横流しなど、やりたい放題だった。奴を英雄と見るベイジョー人もいたが、高い闇値の薬を買えずに、幼い子を亡くした母親を私は知っています。…数年前、あいつは賄賂を要求したカーデシア士官を殺して、投獄されました。私が送ったんです。」 シスコ:「殺人で、もう出てきたのか。」 「臨時政府が釈放したんです。カーデシア人殺しは今では重い罪になりませんから。」 「とすると、見逃すよりないな。」 「プロムナードから追っ払ってやる。」 「悪事を働いてないのに、ここから無理矢理追い出すことはできんぞ。」 「見てて下さい。」 「ミスター・オドー。法律を私物化することはできんよ。」 「私物化? 法律は作り手によりいかようにも、変わるものです。ある時はカーデシア人、次は連邦。しかし正義は、変わりません。私が保安チーフである限り…」 「ルールを守れないなら、ほかの仕事をしてもらうぞ?」 驚くオドー。シスコはうなずいた。 司令官室を出ていくオドー。 カーテンに仕切られた薄暗い部屋。 夕暮れの中、鳥の声が聞こえる。 水かきをもった異星人女性に背中のマッサージを受けている、イブダン。 背中を舐める女性。笑うイブダン。 そこに黒ずくめの人物がやってきた。マッサージ師を押しのけ、ナイフを取り出す。 気づかぬイブダンの背中に、ナイフが振り下ろされた。 |
※4: Keiko O'Brien (Rosalind Chao) TNG第133話 "Rascals" 「少年指揮官ジャン・リュック・ピカード」以来の登場。声:吉田美保、TNG の深見梨加さんから変更 ※5: 「グレープバインの話じゃ」と訳されています。grapevine=ブドウのつるで「噂、口伝えの情報ルート」という意味 ※6: karo-net ※7: Yadozi Desert ※8: azna ※9: Dabo Girl (ダイアナ・シグノーニ Diana Cignoni) DS9第1話 "Emissary, Part I" 「聖なる神殿の謎(前編)」以来の登場。声優なし ※10: 吹き替えでは「24時間」。DS9 の一日は 26時間です ※11: jumja sticks または単にジャムジャ。まだ言及されておらず、脚本に「棒つきのドロドロ (glop-on-a-stick) とあるのみです ※12: Nog (エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) DS9 "Emissary, Part I" 以来の登場。声:岩永哲哉、前回は坂口賢一 ※13: Ibudan (スティーブン・ジェイムス・カーヴァー Stephen James Carver TNG第101話 "Redemption, Part II" 「クリンゴン帝国の危機(後編)」のヘクタ操舵士 (Hegh'ta Helmsman)、第152話 "Descent, Part I" 「ボーグ変質の謎(前編)」のテイヤー (Tayar) 役) 声:大川透、DS9 ガラックなど |
プロムナード。 笑うノーグ。ジェイクもいる。 ノーグが小さな箱を開けると、中に小さな虫がたくさん入っていた。 ジェイク:「何だい、それ。」 ノーグ:「ガラニ星の、ノミ※14だ。…行こう!」 歩いていく 2人。 ベシアがダックスに話しかける。「あのライバルは強敵だ。」 ダックス:「一体何の話?」 「シスコ中佐とのディナーはどうでした?」 「ジュリアン、トリル人はロマンスに興味がないのよ? 実にくだらない感情だわ?」 「くだらない?」 「若者の弱点ね? たとえどんな相手が…興味をもってきたとしても、私達は常にそういう誘惑を超越したレベルに到達するよう、努力してる…」 「今、『努力してる』と言いましたね。つまり成功しない場合もあるわけだ。」 「ジュリアン。」 通信が入る。『シスコからドクター・ベシアへ。』 ベシア:「どうぞ。」 『4番ホロスイートのバーへ来てくれ。』 「…すぐ行きます。いいシャンパンがあるんです。」 微笑むダックス。 ベシア:「後で。」 隠れているジェイク。 ノーグはレプリマットの客の後ろにいる。「うーん、美味しそうじゃない。」「ああ、食べてごらん?」 ノーグはそのベイジョー人たちから離れていく。気づかない男性※15と女性※16。 ジェイクのところに戻るノーグ。 突然立ち上がるベイジョー人。「ああ…かゆい!」 体中をかき始める。 大笑いするジェイクとノーグ。 2人の皮膚は変色し始めた。いろんな色が現れ、互いに見て驚く。「助けてー!」「誰か助けてくれ!」「身体が光ってる!」「医者を呼んでくれ!」 笑い続けるジェイクたちは、後ろに保安士官が近づいていることに気づかない。 ベイジョー人たちのかゆみは急に収まった。肌の色も元に戻る。決まりが悪そうに笑った。「何なんだ。」 咳払いして座る。 ジェイクとノーグは、保安士官に捕まった。連れて行かれる。 通りかかったケイコ。 イブダンの死体がある。ホロスイートのプログラムは終了している。 オドー:「ドアが開けられたのは 2回だけ。1回目はイブダンがマッサージルームに来た時、すなわち…17時16分過ぎで、ほかには誰も入っていません。彼はロリエント・マッサージプログラム 101-A※17 を受けました。2回目にドアが開いたのはそれから 13分後ですが、既に死亡していたので出たのは彼ではない。とすると犯人が出たんでしょう。」 キラ:「その間に転送されてきた人はいないの?」 「いません。」 「じゃ犯人はどうやって入ったの?」 シスコ:「イブダンと同じ時間に入ったのかもしれない。」 ベシア:「死因は明らかです。ナイフは左右の胸骨の間を突き抜けて、心臓の中心をえぐっています。犯人はベイジョー人の体内構造に詳しいですね。」 「ドクター、何者かがここにいたという証拠を、探し出してくれないか。」 「毛髪に皮膚、それに細胞と DNA の断片も調べます。」 「昨日から、出発した船は。」 キラ:「うーん、2隻です。連邦の調査船とヴァルカンの科学船が。」 「ドックの全船に通告。指示があるまで出発は延期させろ。」 出ていくシスコ。 オドーは死体に近づき、キラを見た。 料理を用意するケイコ。「本当にしょうがない子供たちだわ? プロムナードなんかでウロウロしてたら、いいことないわよ。」 オブライエン:「あそこしか行くところがないんだ。部屋に閉じこめてはおけないよ。」 「ここはパトロール船じゃないのよ、マイルズ? 宇宙ステーションでは、エンタープライズの時のような自由は望めないの。子供たちにとっては、危険が一杯の世界だわ? まず学校のないのが最悪ね?」 箸を使って食事するオブライエン。 司令官室に入るキラ。「全船に出発延期を指示しました。」 シスコ:「少佐。輸送援助センターの、ミスター・ゼーラ※18を知っているか。」 オドーとイブダンが争った時に店にいた、ベイジョー人がいる。 「ええ。」 「彼の話は聞き捨てならんぞ。話してみろ。」 ゼーラ:「殺されたイブダンですが、実は…事件の直前に彼と話しました。」 キラ:「一体どこで?」 「クワークの、店の中です。保安チーフと争った後…イブダンは、こう言いました。あいつに殺されるかもしれないって。」 キラはシスコに言う。「…オドー保安チーフは、基地で一番名誉を重んじる人物です。」 ゼーラ:「しかし……その 1時間後に彼は殺されました。」 パイロンに係留している船。 ベイジョー人※19が部屋に入る。「コンピューター、ライト。ここが、イブダンの部屋でした。どうぞ御自由に。」 オドー:「2人用の部屋を?」 「そういう御希望でしたが、チェックインされたのは独りでした。多分、大きい部屋が欲しかったんでしょう。ほかに何かお手伝いすることは。」 「この客船の乗客リストを。」 「わかりました、すぐにコピーを用意します。」 出ていくベイジョー人。 オドーは操作を始める。「コンピューター、過去 78時間にこの端末から入力した数は。」 コンピューター:『個人カレンダーファイルに 7つです。』 「見せてくれ。」 項目※20が表示される。 次の時間を指示するオドー。「宇宙暦 46384 を。」 「DS9 に到着」という欄がある。 更に次の時間の項目には、オドーの名があった。 自室にいるシスコ。「あなたの心配はよくわかります、ミセス・ケイコ。プロムナードの、イタズラの報告を受けた時…」 ジェイク:「悪気はなかったんだ。」 「お前は口を挟むな。…問題はフェレンギの少年ノーグだ。彼とはもう二度と付き合わせない。」 「子供は彼しかいないんだよ?」 ケイコ:「そんなことはないでしょう? 8歳から 16歳までの子供は、ほかに 12人もいるわ? でも、子供たちには、何のカリキュラムも用意されていないんです。あなた、また学校に行きたいと思うでしょ?」 「…いいや。だってさ、クラスで独りで勉強するの、すぐに飽きちゃうんだもん。」 「私、教師の資格をもってるんです。よろしければ、クラスを開きたいのですが。」 シスコ:「司令官、そして父親として賛成ですね。で、必要なものは?」 「ええ、まず場所に…」 「用意します。」 「…コンピューターも?」 「提供しましょう。」 喜ぶケイコ。 シスコ:「しかし問題は山積みしてますよ。ベイジョーやフェレンギに、子供を学校に通わせろとは強制できない。もし来たとしても、それぞれ違った哲学や文化をもってる。」 ケイコ:「…簡単にはいかないと思いますけど、親の気持ちに変わりはないはずですわ? 学校開設にはきっと皆さん賛成してくれます。ありがとう、司令官。」 出て行った。 「いいか、もう二度とノーグとは付き合うんじゃないぞ。」 ジェイク:「わかってる! 同じこと言わないでよ!」 ジェイクを追うシスコ。 診療室のコンピューターに DNA 構造が表示されている。 ベシア:「これは DNA 分析に、分子スペクトルグラフ、粒子物質トレースです。ダックス大尉に確認してもらいましたが、結論は一つです。」 ダックス:「あの部屋にほかの DNA 痕跡はないわ?」 キラ:「…じゃ彼のほかに入った者はいないってこと?」 ベシア:「死体が発見されてからは、我々が入りましたよ。それを除くと一つだけ。イブダンの、DNA しかない。」 「待ってちょうだい。イブダンは独りでホロスイートに入り…鍵をかけた。その後誰も入ってないのにそこで殺されたなんてあり得ないわ?」 オドー:「ありうる。犯人が DNA 痕跡のない流動体生物だとしたら。例えば、この私だ。」 |
※14: 正確には「ガラニア・ボーライト (Garanian bolites)」。ノミ (fleas) とは言っていませんが、bolites が何を意味するのかは不明 ※15: ベイジョー人男性 Bajoran Man (パトリック・クーポ Patrick Cupo) ※16: ベイジョー人女性 Bajoran Woman (キャサリン・グラフ Kathryn Graf) ※17: ロリエント・マッサージホロプログラム #101A Lauriento massage holoprogram #101A ※18: Zayra (エドワード・ローレンス・アルバート Edward Laurance Albert ドラマ「美女と野獣」に出演) ジェリ・テイラーのアシスタント、Zayra Cabot より。TNG第128話 "Realm of Fear" 「プラズマ放電の謎」でもゼイラ4号星 (Zayra IV) が同じ由来で使われています。声:金尾哲夫、ENT フォレストなど ※19: ベイジョー人士官 Bajoran Officer (スコット・トロスト Scott Trost TNG第33話 "Unnatural Selection" 「D.N.A.」の転送部少尉 (Transporter Ensign)、第131話 "Schisms" 「謎の第3次亜空間」の シプリー大尉 (Lt. Shipley) 役) ※20: 美術部門のお遊びで、「オルデラン宇宙港」や "Della Santina" という項目が含まれています。オルデラン (Alderaan) は映画「スター・ウォーズ」の地名、後者はユニット・プロダクション・マネージャーの Bob della Santina より |
司令室。 ターボリフトで来たキラとオドー。 オドー:「巧妙な罠だ。イブダンの記録には犯行時間に私と会うと記してあります。もちろん私は彼と会ってなどいませんが…犯行現場に DNA 痕跡が残されてない以上、犯人は私以外にはいないことになる。」 キラ:「何かアリバイはないの?」 「…私は 18時間※21ごとに再生するため、原型に戻らなくてはなりません。犯行時間には丁度、自分の部屋で…流動体の姿に、戻っていたんです。」 「…犯人はあなたの再生サイクルを知っていて合わせたのかしら。」 「実に巧妙に、仕組まれた罠です。」 「あなたに恨みを抱いてる者は?」 「…500人はすぐに思い浮かびます。しかしこの基地周辺では見かけない。……少佐、もう一度ドクター・ベシアにイブダンの部屋を調べるよう、言って下さい。必ず、彼のほかに誰かいたはずです。」 「すぐに調べさせるわ?」 「…お願いします。」 出ていくオドーを見るキラ。 ダボ・ガールが声を上げる。「ダボー!」 働いているロム※22。「息子を連邦の学校に行かせろと言うのか。」 ケイコ:「連邦じゃありません。そういう区別を超えた、もっと広いカリキュラムを組みます。」 「ちょっと待った、お姉ちゃん。あんたにフェレンギの教育などわかるもんか。」 「あなたたちは体験を大事にして、ビジネスや経済の広い分野で、実習教育を行っていらっしゃるんでしょう?」 笑うロム。「生き馬の目を抜くような激しい競争の中に放り込んで、そこで生き残った者が…卒業する。それを俺の息子に教えられるのか?」 ケイコ:「あなたが教えたことは、私には教えられませんわ?」 「ああ、そういうことだよ。俺はもう全て教えたよ。ガキどもに未来へ挑戦する準備をさせることが大切なんだ。」 「その通りです! ほかの文化を学んだあなたの息子さんは、実社会でうんと有利な立場に立てますわ? ほかの種族の経済を知れば、ビジネスの上でも政治の上でも、役に立つでしょう?」 「そういうことを教えてくれるのか?」 「知識は大きな力になります。」 「…いや! うちの子は、あんたの言うことなど聞かん。」 「どうして!」 「あんた女だろ?」 「だから?」 「人間の女などから学ぶことなど何一つない。」 「2、3週間試したらどうです? それでダメなら、元々でしょう?」 「ダメに決まってる。」 「お願い。考えてみて?」 「わかったわかった、もうそうする。なあ、俺は今忙しいんだ。さあ皆さん賭けて下さい? 素敵な美人が御相手ですよ?」 クワークの店を出て行くケイコ。 カウンター席でゼーラが話している。「ベイジョー人じゃないあいつは信用できん。」 別のベイジョー人※23。「下等動物だ。」 他にも集まっている。 笑うゼーラ。「もう一つ気に食わんことがある。オドーが、カーデシア占領下でも保安チーフをやってたことだ。」 ベイジョー人:「ああ、イブダンを捕らえたのも奴だ。」 「のさばらせておくことはないぞ。」 「そうだ。キラ少佐に抗議しよう。」 クワークが近づく。「オドーは俺が一番よく知ってる。よく聞きな? 確かに奴は傲慢で短気で最低の野郎だ。しかしカーデシアにおべっか使ったり人を殺したりしねえよ。」 ゼーラ:「お前があいつをかばうとは驚いたなあ。敵じゃないのか?」 「場合によっちゃ敵が味方に変わるんだよ。」 笑うゼーラ。離れるクワーク。 話し続けるベイジョー人。「全く、フェレンギ人にはあきれたもんだ。」 フードを被った年取ったベイジョー人※24が、彼らの話を聞いていた。「でも奴らが一番正直に生きてる…」 ベイジョー船。 器具を使うベシア。収集した細かい物をケースに入れていく。 いろんな場所を調べる。 司令室のシスコ。「確かに、気持ちはわかる。これは殺人事件だ。」 ゼーラ:「彼が犯人かどうかを言ってるんじゃない。連邦軍の管轄になったのになぜまだ…」 キラ:「ゼーラ。その辺で引き上げることね。」 ゼーラは無言で引き下がった。他のベイジョー人たちと共に、ターボリフトで去る。 キラ:「…これは罠よ。」 シスコ:「証拠があるのか?」 「…彼は無実です。」 「殺人事件を調査中でミスター・オドーは重要な容疑者なんだぞ? 抗議がきてもおかしくない。」 ダックス:「もし無実としても、彼らはオドーの解任を要求する気です。」 キラ:「…で、解任するんですか?」 シスコ:「ほかに方法はない。」 「…彼は進んで捜査に協力してるんですよ? 証拠隠滅を図るチャンスがいくらでもあったのにです。」 「君の気持ちはわかるが、決定は覆せん。私が通告する。」 シスコは向かった。 ため息をつくキラ。 診療室のベシア。「物質再生機の近くで、誘導体※25のかけらが見つかったんだ。ディッシュを。」 皿に入れる。「彼はこれを、処分しようとしていた。」 オドー:「何からこぼれたんだろう。」 「恐らく、生物標本コンテナからだ。僕もいつも使うから。」 「イブダンは生物標本など使って何をしてたんだ。」 「…それはわからないけど、分析したら複雑な有機組織のかけらが見つかったんだ。」 細かい状態がコンピューターに表示される。 「ということはつまり…」 「自分の部屋で、何らかの医学実験をしていたものと思わざるをえない。」 「ドクターでも科学者でもないのにか。」 「…電子泳動分析※26の結果を見よう。」 コンピューターを操作するベシア。「何だって? 複合タンパク質が、DNA 破片になってきた。」 「どういうことだ。」 「と、いうことは…分子成長を促すために、バイオ再生電界※27を作ろう。DNA の動きを再生することができれば、彼の企みがわかるかもしれない。」 通信が入る。『シスコからオドーへ。』 オドー:「はい。」 シスコ:『私のオフィスへ来てくれ。』 「わかりました。」 顕微鏡から取りだした容器を、水槽に入れるベシア。泡を出し始める。 司令官室に入るオドー。「何でしょう。」 シスコ:「そこへ。」 座るオドー。 シスコ:「暫定的だが君を解任する。理由はわかってるな。」 オドー:「…捜査の責任者は誰ですか?」 「キラ少佐とダックス大尉の両名だ。」 立ち上がるオドー。「それだけですか?」 シスコ:「言っておくが、個人的には君の無実を信じている。」 「…本当に? …なぜわかります。知り合ったばかりで、私がそんなことをしないとは断言できないはずですよ? 心の底ではきっと私をうたぐってる。どこかで、犯人ではないかと思ってる。」 「キラ少佐とダックス大尉に捜査を任せるのは、それが君の無実を証明するのにベストだと思うからだ。」 「捜査は私が自分でやります。」 出ていくオドー。 ため息をつくシスコ。 |
※21: 後に第14話 "The Storyteller" 「混迷の惑星“ベイジョー”」で 16時間に変更されます ※22: Rom (マックス・グローデンチック Max Grodenchik) DS9 "Emissary, Part I" 以来の登場。「ロム」としてクレジットされるのは初めてですが、訳出されていません。声:田原アルノ、前回は大川透さんが兼任。以降の登場では第5シーズンまで山崎たくみさんが演じますが、第6シーズンから再び田原さんになります ※23: ベイジョー人男性その1 Bajoran man #1 (ピーター・ヴォグト Peter Vogt TNG第68話 "Tin Man" 「孤独な放浪者」のロミュラン人司令官 (Romulan Commander)、VOY第72話 "Nemesis" 「ヴォリ防衛隊第4分隊」の司令官 (Commandant) 役) 声はイブダン役の大川透さんが兼任 ※24: 老人 Old Man (ラモネイ・S Lamonay S.) (トム・クラニス Tom Klunis) 声:大川透 ※25: seofurance ※26: electrophoretic analysis ※27: bioregeneative field |
プロムナード。 歩いているオドーを、ベイジョー人たちが見ている。通りかかるモーン。 保安室のドアを開けると、中は荒らされていた。壁に落書きもされている。 クワークが来ていた。「やった奴を捜そうか?」 オドー:「私じゃなく、艦隊司令部に言え。もう保安チーフじゃない。」 「本当か、こんないいニュースを聞くのは久々だ。」 「つかの間の楽しみをせいぜい味わっとけ。」 「そうしよう、うーんと楽しんでやるさ。札付きの悪党どもをみーんなここに集めてやるぜえ?」 「ふざけるな! 二度と…」 「何だ。」 「フン。私がいないと拍子抜けしてヘマをやるぞ?」 「心配ないさ。あんたのおかげで世渡りが上手くなった。」 「そうか。じゃ今のうちに礼を言っとけ。」 「ありがとうよ。」 笑うクワーク。 「クワーク。お前の店で流動体生物を雇う気はないか。」 「……ああ……ああ、からかいやがって…。」 「本気にしたか。」 「ああ、一瞬なあ…。」 「フン、フフン…。」 「なあ、クラン・トボル刑務所※28でイブダンのことを調べてみたんだ。あそこで、敵を作ったかどうか。いねえってよ。カーデシアにぶち込まれた反体制派の連中とつるんでたそうだ。」 落ちていたパッドを渡し、出ていくクワーク。 水槽の中には大きな塊が浮かんでいる。 ベシア:「急速に成長しました。変形エネルギーをもっと増やさないと。」 シスコ:「一体何が成長してるんだ。」 ダックス:「これは人間の DNA パターンじゃないの?」 ベシア:「どうもそうらしい。しかし遺伝子のドリフトに不可解な点があるんです。」 シスコ:「イブダンは何を企んでた。」 「手がかりはもう少し待たないと得られません。大きい容器に移してくれ。」 看護婦:「了解。」 シスコはダックスに言った。「食事にするか。」 ベシア:「はい。」 ダックス:「いいえ、少佐に報告してきます。お二人でどうぞ?」 診療室を出ていく。 シスコに微笑むベシア。 クワークの店のベシア。「彼女は、いくつの生涯を送ってきたんでしょうねえ。」 シスコ:「想像つかん。恐らく…リストができるんじゃないかなあ。少なくとも私の知っている限りでは、今のダックス大尉で 6人目になるよ。」 「すごく変わりました?」 「というと?」 「この前の、えっと…クルゾン・ダックスから、話によると…段階的に進歩するそうですよ。」 「私にはわからんな。彼とは昔、よく悪さをして遊んだもんだ。私はまだ君と同じぐらいの年頃で、ルジン星※29の屋根登り競争をよく見に行った。クルゾンはレースが好きで、その時…彼の友達で、2メートルを超す双子のエイリアンが出ていた。」 微笑んでいたシスコ。「昔話をするなんて私も年を取った。」 「中佐は、彼女が好きなんですね。」 「……ダックスは、ただの友人だ。興味があるんなら、私に遠慮はいらんぞ?」 「もし、僕が中佐のようにダックス大尉と親しい仲だったら、彼女の虜になってしまいますね。」 「君は知らんからだ。ジュロ※30の試合で、私は何度もダックスにのされてるんだよ。」 笑うベシア。「それももう、遠い昔話ですね?」 シスコは気づいた。オドーが店のカウンター席に座ると、周りのベイジョー人の客がみな去っていく。モーンまでも。 顔を見合わせるシスコとベシア。 宇宙艦隊士官たちに指示するケイコ。「ああ、このモジュールを囲むように並べてちょうだい? ええ、そうよ? …ありがとう。あーら。」※31 オブライエン:「ほーら、ママだ。」 モリー※32:「何してたのー?」 オブライエンに抱かれている。 ケイコ:「明日から始まる学校の準備よ?」 「私も来ていい?」 「来て欲しいわあ? 生徒 1人は確保できたのに。…でも、あなたはまだ早いの。」 オブライエン:「どうだい?」 「何とか間に合いそう。生徒はわからないけど。子供を通わせると約束してくれた親は、シスコ中佐だけよ? …これ何?」 リボンのついた箱を渡すオブライエン。「来る途中で買ってきたんだ。」 ケイコ:「モリー、開けるの手伝ってちょうだい?」 笑うオブライエン。 ケイコ:「さあ。何でしょうねえ。」 モリーと一緒にプレゼントを開けると、中にはベルが入っていた。 ケイコ:「素敵だわあ?」 笑う。「ありがとう。」 オブライエンとキスするケイコ。ベルを鳴らすモリー。 オブライエン:「明日、プロムナードで君がこれを鳴らすのを見たいんだ…。」 声が聞こえてきた。「人殺しー!」 ケイコ:「早く行って。」 プロムナードを歩くオドーに、ゼーラたちベイジョー人が怒号を飛ばす。「人殺しー!」「早く出てけー!」 オドーが保安室に入っても、その前に集まってくる。「出てこい、ほら!」「人殺しー!」 様子を見ているオブライエン。 収まらない群衆。「出てこいよ!」「おい!」 モーンも混じっている。 オブライエン:「オブライエンから司令部。保安チームを至急プロムナードへ。」 応じるキラ。「了解。」 呼ばれた保安部員たち。「イエッサー!」 シスコも司令官室を出る。 オブライエン:『オブライエンからシスコ中佐。』 シスコ:「私だ、どうした。」 『オドーのオフィスの前に、ゼーラたちが群がっています。応援願います。』 ベシアも診療室から見ている。 さらに集まるベイジョー人。 中に戻ったベシアは、水槽で形成されていく生命体を見つめる。 |
※28: Kran-Tobal Prison 初言及 ※29: Rujian ※30: Juro 吹き替えでは TNG の頃からの悪癖が抜けておらず、「グレイシー柔術」と訳されています ※31: この学校 (教室、schoolroom) には、TOS に登場したホルタなどの生命体の図が表示されています ※32: モリー・オブライエン Molly O'Brien (ハナ・ハタエ Hana Hatae) TNG "Rascals" 以来の登場。声:棚田恵美子 |
保安部員が人々をかき分け、保安室の前に立っている他の部員と合流した。 ゼーラが叫ぶ。「人殺し! …人殺しは出て行け!」 シスコたちが到着する。 シスコ:「オドーは中に?」 オブライエン:「そうです、数分前に中に入りました。全員バーからついてきて。」 「武装した警備員を配備しろ。」 「イエッサー。」 キラ:「これ以上増えると危険になります。ターボリフトを止めて、野次馬が集まれないようにしましょう。」 シスコ:「頼む。」 ベイジョー人が物を投げた。ドアのガラスにあたり、一面にヒビが入る。 群衆の一番後ろに、あのフードの老人がいた。 診療室のダックス。「ジュリアン? これを見て。」 ベシア:「染色体が変化した。」 「明らかにヒューマノイドよ?」 「ヒューマノイドだって? ……間違いない。そうか、これでわかったぞ! 染色体を分析しよう。きっと遺伝子配列が減少してる。」 巨大に成長した塊。 ゼーラは叫ぶ。「人殺しめー! 人殺し! 人殺し!」 声を合わせるベイジョー人たち。 後ろのオブライエンたちは、各自密かにフェイザーを配っていく。 保安部員と近づくシスコ。「道を開けろ!」 保安室の前に立って手を挙げ、静かにさせる。「何を騒いでるんだ。冷静になれ。」 ベイジョー人:「流動体のエイリアンを出せ!」 シスコ:「はっきり言っておく。オドーには指一本触れさせない。」 ゼーラ:「…聞いたか? …エイリアン野郎はロープで吊せないそうだ。」 笑う群衆。 「いいか! 市民生活の妨げになる。くだらんことはやめて自分の部屋へ戻るんだ。」 物を投げるベイジョー人。保安部員に当たった。騒ぎが広がる。 近づこうとするキラにも襲いかかってくる。難なく相手を倒すキラ。 オブライエンも暴れ始めたベイジョー人に対処する。 フェイザーの音。シスコは天井に向けて発砲する。 一同は静かになった。中から出てくるオドー。 ベイジョー人:「正義のために戦うぞ!」 シスコ:「何だと。正義? 本当か。正義の名を借りて、怒りや恐怖のはけ口を求めているんだ。そうだろう! よく考えてみろ、一時間もすれば自分の行為を恥じるに違いない。自分と違うからといって彼を生け贄にするな!」 ゼーラ:「そいつは犯罪者だ! 動かぬ証拠がある。」 「ならばそれを法廷で証明しろ。ここでは正義は行われない。」 ベシア:「司令官! シスコ中佐、新しい証拠を発見しました。殺されたのはイブダンではありません。」 ダックスと一緒だ。 オドー:「何?!」 「来て下さい。」 診療室へ向かう一同。 オブライエン:「さあ、早く帰れ!」 キラ:「ともかく、一旦解散して!」 散り散りになるベイジョー人たち。 診療室に戻るベシア。「クローンです。間違いなくイブダンは、自分のクローンを作る実験をしていました。」 水槽の中には、人型になった塊がある。 オドー:「私を殺人犯にするために、自分でクローンを殺したのか。」 シスコ:「被害者がクローンだとなぜわかる。」 ダックス:「クローンの DNA は、本人と全く同じです。しかし、製造過程で遺伝子配列が少なくなってしまいます。それが、決定的証拠です。」 ベシア:「だまされませんよ? 被害者の遺伝子配列はこいつと同じですから、クローンに違いありません。」 オドー:「こいつはどうなるんだ。」 「あと 2日で生命を得て、ベイジョー社会の立派な一員になりますよ。」 「本人を見習ったら犯罪者になるぞ?」 シスコ:「本人はどこだ。」 「…私には心当たりがありますよ。」 ベイジョー船。 部屋に入る老人。「コンピューター、ライト。」 フードを脱ぐ。 すると、部屋に置いてあった椅子が変形していく。オドーになった。 老人:「誰だ、どこから入った。」 オドー:「しらばっくれるな。」 「不法侵入だ。警備員を呼ぶぞ。」 「呼ぶがいい。お前に是非尋ねたいことがある。ラモネイ・S※33 という名前が昨日この船の、乗客名簿になぜ加えられたのかを教えてもらいたいもんだな?」 「私だよ。昨日この船で来たんだ。それがどうかしたかね。」 「お前はこの船で来たんじゃない。」 「…何?」 「ほんとはどの船で来たんだ。ラモネイ・S。この 3週間に到着したどの船にもお前が乗っていたという記録はない。」 「それは違う。調べ直すんだな。」 「お前がこの船で来たのは何年も前だ。お前はかつて 3年間、刑務所暮らしを強いられ、あるベイジョー人と知り合った。それは三層クローンの実験をしたために、危険分子と見なされカーデシア当局に投獄された人物だ。」 逃げようとする老人を取り押さえるオドー。 顔のメイクをはがすと、それはイブダンだった。 オドー:「自分のクローンを殺すのも殺人だ!」 『司令官日誌、宇宙暦 46421.5。イブダンはクローンが、新しい生命を得てから数時間後に、ベイジョー当局に引き渡された。暴徒は解散して事なきを得たが、誰一人オドーに謝罪した者はいなかった。こうして基地の生活は元に戻った。』 ケイコの学校。 立って待っているケイコ。「コンピューター、何時になった?」 コンピューター:『0907時です。』 ジェイクとシスコがやってくる。 ケイコ:「…思うようにいきませんわね?」 シスコ:「まあ焦らずに、時間をかけて…」 そこへノーグを連れたロムが入る。「座れ!」 ジェイクの隣りに座るノーグ。 ロム:「地球人の隣はいかん。こいつとは一切口を利くな?」 離されるノーグ。「あ…。」 ロムはシスコに気づいた。「あ…まあ、2、3週間様子を見る。」 出ていく。 シスコはジェイクの肩を叩き、外へ向かった。入れ違いにベイジョー人の子供たちが入ってくる。 ケイコ:「どうぞこっちへ? 好きな席でいいのよ? 次からは遅れないようにね? 私が先生のケイコ・オブライエンです。では、コンピューターのスイッチを入れて、ベイジョーにアクセスしましょう。今日は、ベイジョーという星の歴史の勉強ですよ?」 シスコは、笑顔でその様子を見ていた。 |
※33: Lamonay S. |
感想
本国では 4話目に放送されましたが、制作順および日本放送順では 3話目、つまりパイロット版のすぐ後の話になります。内容的にも「スペース・テロリスト ターナ・ロス」より 3話目っぽい要素が多いように感じますね。シスコとダックスの関係が掘り下げられ、出会ってすぐイタズラをするジェイクとノーグ、そして初登場のケイコが学校を開きました。ちなみにシマーマンは今回から「本当の」鼻のメイクをつけていて、パイロット版 (と宣伝用の集合写真) ではロム役のグローデンチック用のものを借りたそうです。 内容的にはクローン落ち…と、あまり感心できるものではありませんね。まだ始まったばかりなのにベイジョー人が暴動が起こしたり、DS9 ならではの広いセットを使った連続型撮影は興味深いのですが。あとストーリーには関係ありませんが、DVD版の吹き替えは明らかにシスコの声だけが小さいですね。 |
第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」 | 第5話 "Babel" 「恐怖のウイルス」 |