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ディープスペースナイン エピソードガイド
第1話「聖なる神殿の謎」(前)
Emissary, Part I

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・イントロダクション
※1※2※3※4宇宙暦 43997、エンタープライズ艦長、ジャン・リュック・ピカードは、連邦の敵ボーグ※5に拉致され、改造手術を受けた。ボーグに操られたピカードは、ウルフ359※6 で宇宙艦隊に対し攻撃を仕掛けた。
『抵抗は無駄だ。』 ボーグに同化されたピカード、すなわちロキュータス※7がスクリーンに映っている。『直ちに武器を捨て、我々をセクター001 へ誘導しろ。命令に従わぬ場合は、お前の船を破壊する。』
ロキュータスを睨みつける、副長のベンジャミン・シスコ※8少佐。
ヴァルカン人の艦長※9が命じた。「非常警報。光子魚雷装填、フェイザー砲用意。」
シスコ:「アルファポジションへ移動しろ!」
宇宙艦サラトガ※10は、フェイザーを発射しながらボーグ・キューブへ向かっていく。
近くにいたメルボルン※11はボーグの攻撃を受け、円盤部が大破した。
引き続きサラトガへ向けて撃ってくる。
女性のオプス士官※12。「捕捉されました。」
シスコ:「防御シールド強化。」
僚船のベレロフォン※13とヤマグチ※14が向きを変え、ボーグ艦に応戦する。

ロキュータスは無表情でスクリーンを見ている。
3隻の宇宙艦が見える。

報告するオプス士官。「防御シールド、パワー低下! 64%…42%!」
艦長:「波動を調整して回復させろ!」
ボリアン※15の戦術士官※16。「波動調整、効果ありません!」
オプス士官:「シールド消失しました!」
シスコ:「全力反転!」
ボーグ・キューブは別のビームを発射し、ピンポイントで攻撃した。
艦長:「全員配置に…」 爆発が起こり、艦長の声は叫びにかき消された。
コンソールが立て続けに爆発し、シスコも吹き飛ばされる。
起きあがるシスコ。「被害報告!」 火が上がっている。近くで倒れていた部下の脈を取る。「被害報告!」
コンピューターの声が流れる。『警告、ワープコア破損。あと 5分で爆発します。』
ボリアンも起きあがった。「第1デッキから、第4デッキまで被弾しました!」
艦長も死んだことを確認したシスコ。「居住区の人間を脱出用の船に誘導しろ!」
ボリアン:「了解!」

廊下も混乱している。
シスコ:「荷物をあきらめろ。すぐ緊急避難エリアへ行け!」
コンピューター:『警告、ワープコア破損。あと 4分で爆発します。』
シスコは女性に近づく。「ドラン※17。」
ボリアン:「彼女は、私が連れて行きます。」
「ジェニファーを見なかったか。」
ドランは泣くだけだ。

先を急ぐシスコ。破壊されたドアから、部屋に入る。
シスコ:「ジェニファー…。ジェイク!」 窓の外では、宇宙艦ボーンステル※18が爆発した。
コンピューター:『警告、ワープコア破損。あと 3分で爆発します。』
周りの物をどけ、息子のジェイク※19を救い出した。気を失っている。
シスコ:「待ってろよ、ジェイク。ママを助けてくる。」 女性※20の顔が見えた。「ジェニファー!」
ジェニファーに覆い被さる物をどけようとするシスコ。「いいか、ジェイク。ママを助け出したら、すぐここを出るぞ。」
ボリアンの声が聞こえる。「シスコ少佐※21!」
シスコ:「手を貸せ!」
部屋に入ったボリアンは、トリコーダーでジェニファーを調べる。
シスコ:「ジェニファー…しっかりしろ!」
ボリアン:「…少佐…」
「手を貸せ、助け出すんだ!」
「息がありません。もう手遅れです、避難して下さい!」 ボリアンはジェイクを抱え上げた。
コンピューター:『警告、ワープコア破損。あと 2分で爆発します。』
ボリアン:「少尉、この子を頼む。」
少尉:「はい。」
泣き崩れるシスコ。ピクリとも動かないジェニファー。
ボリアン:「少佐、行きましょう!」
連れ出されるシスコ。「駄目だ、妻をおいて行けるものか! 離せ、はなせー!」 部屋を出た直後、梁が落ちてきた。

パネルの操作を続ける士官。
人々が次々に中に入ってくる。シスコもだ。
抱き合うシスコ。「ジェイク。大丈夫だったか。」 ジェイクはシスコの手を握る。
男性士官:「発進準備完了!」
女性士官:「発進!」
脱出ポッド※22はサラトガの後部から打ち出された。
別のポッドも同時だ。
窓からサラトガを見つめるシスコ。
船は爆発し、粉々になった。

3年後、宇宙暦 46379.1。
釣りをしていたジェイク。※23
シスコがやってくる。「ジェイク、ここにいたのか。釣れたか?」
成長したジェイク・シスコ※24。「釣れたけど帰してやった。ねえ泳ぎに行く?」
シスコ:「いや、もう到着の時間だ。そんな顔するな。これから行くベイジョー※25は綺麗な星だぞ?」
「でも僕らが住むのは星じゃなくてオンボロの宇宙ステーションでしょう?」
「ベイジョー星の軌道にあるステーションだ。星に住むのと変わらないさ。」
「子供いるかなあ。」
「いるさあ、お前ぐらいの子もたくさんいる。」
通信が入る。『シスコ中佐。』
シスコ:「はい、艦長※26。」
艦長:『ディープ・スペース・ナインに接近中。ドッキングは 7分後だ。』
「了解。」 立ち上がるシスコ。「行こう。…ステーションの中でも、また釣りはできるさ。コンピューター、プログラム終了。」
アーチが現れ、周りのホログラム映像は消えた。
廊下へ出る二人。
ジェイクは窓を見る。「あれがそう?」
そのステーションを見つめ、二人は歩いていった。
惑星ベイジョーの軌道にある、DS9※27 だ。


※1: このエピソードは、DS9 パイロット版 (シリーズ・プレミア) の前編です。アメリカ本国では基本的に 2時間エピソードとして放送されたため、前後編に分けられた際に一部カットがあります。このエピソードガイドでは色を変えた個所で、放送や LD版には含まれていませんが DVD には吹き替えつきで収録されています (参考:パイロット版カットシーン)。なおこのガイドでは、各シーンの区切りは前後編の間以外、2時間版にならっています

※2: 「選ばれし者 (エミサリー)」という邦題で、日本語に訳された小説版が発売されています [Amazon.co.jp / スカイソフト / 楽天ブックス]。原語版:Amazon.com / Amazon.co.jp

※3: このエピソードは 1993年度のエミー賞で特殊映像効果賞を受賞。また美術監督賞にノミネートされています

※4: この部分は字幕が流れます。原語ではセリフはありませんが、吹き替えではシスコ役の玄田さんがセリフを読み上げています

※5: Borg
初登場は TNG第42話 "Q Who" 「無限の大宇宙」

※6: ウォルフ359 Wolf 359
太陽から 7.8光年の位置にある恒星。TNG第75話 "The Best of Both Worlds, Part II" 「浮遊機械都市ボーグ(後編)」では戦闘が終わった後のシーンが登場し、戦闘自体はこのエピソードで初めて描かれました。ウルフ359はしし座にあり、4番目に地球に近い恒星です。字幕の文章にありますが、訳出されていません (後のシスコのセリフも同様)

※7: Locutus
(パトリック・スチュワート Patrick Stewart) TNG第74・75話 "The Best of Both Worlds, Part I and II" 「浮遊機械都市ボーグ(前)(後)」より

※8: Benjamin Sisko
(エイヴリー・ブルックス Avery Brooks ドラマ「私立探偵スペンサー」(1985〜88)、映画「ビッグ・ヒット」(1998)、「アメリカン・ヒストリーX」(1998) などに出演) 声:玄田哲章

※9: Vulcan Captain
(ジョン・ノア・ハーツラー John Noah Hertzler (後には J・G・ハーツラー、Garman Hertzler とも) DS9第73・74話 "The Way of the Warrior, Part I and II" 「クリンゴンの暴挙(前)(後)」などのクリンゴン人マートク (Martok)、第164話 "Chimera" 「仮面の下の孤独」のラーズ (Laas)、VOY第135話 "Tsunkatse" 「囚われのファイター」のヒロージェン・ハンター (Hirogen Hunter)、ENT第45話 "Judgment" 「反逆の法廷」のコロス (Kolos)、第80話 "Borderland" 「ボーダーランド」のクリンゴン人艦長 (Klingon Captain) 役。ゲーム "Klingon"、"Armada"、"Armada II"、"Elite Force II" でも声の出演) 声はデュカット役の幹本さんが兼任

※10: U.S.S.サラトガ U.S.S. Saratoga
ミランダ級、NCC-31911。少なくとも 2隻目のサラトガ (1隻目は 映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」に登場、NCC-1937。同じミランダ級ですが、上部のロールバーがなくなっています)

※11: U.S.S.メルボルン U.S.S. Melbourne
エクセルシオ級、NCC-62043。TNG第15話 "11001001" 「盗まれたエンタープライズ」など。TNG "The Best of Both Worlds, Part II" ではネビュラ級の模型が使われましたが、このエピソードでエクセルシオ級と「決定」されました

※12: Ops Officer
(リリー・マリヤ Lily Mariye) 声:棚田恵美子、DS9 モリーなど

※13: U.S.S.ベレロフォン U.S.S. Bellerephon
ネビュラ級、NCC-62048。映画「禁断の惑星」(1956) に登場する船にちなんで。綴りは本来は "Bellerophon" が正しいようですが… (DS9第166話 "Inter Arma Enim Silent Leges" 「闇からの指令」に登場するイントレピッド級のベレロフォンは、Bellerophon です)

※14: U.S.S.ヤマグチ U.S.S. Yamaguchi
アンバサダー級、NCC-26510。セリフやエンサイクロペディアでの言及はありませんが、ヤマグチと書かれた撮影用模型があることは確認されており、公式サイトにも掲載されています。エクスカリバーやズーコフと同じ、「2代目」アンバサダー級

※15: Bolians
惑星ボリアス9号星出身のヒューマノイド文明。TNG第25話 "Conspiracy" 「恐るべき陰謀」など

※16: Tactical Officer
(スティーヴン・デイヴィス Stephen Davies DS9第76話 "Hippocratic Oath" 「苦悩するジェム・ハダー」の Arak'Taral、VOY第60話 "Darkling" 「ドクターの内なる闇」のナカーン (Nakahn) 役) 声:大川透、DS9 ガラックなど

※17: Doran
(リンダ・ファーガソン Lynnda Ferguson) 声優なし

※18: U.S.S.ボーンステル U.S.S. Bonestell
オーベルト級、NCC-31600

※19: 幼いジェイク Young Jake
(トーマス・ホブソン Thomas Hobson) 声優なし

※20: ジェニファー・シスコ Jennifer Sisko
(フェリシア・M・ベル Felicia M. Bell) 初登場。声:土井美加

※21: 「佐」と誤訳。階級章でわかりますが、この時点ではまだ少佐です

※22: escape pod
James Martin デザイン、Greg Jein 製作。このシーンで右上に見える船の残骸は、TNG "The Best of Both Worlds, Part II" で使用された (本使用前の) ネビュラ級=メルボルンであるという説があります。なおエンサイクロペディアでは U.S.S.ゲイジ (U.S.S. Gage、アポロ級、NCC-11672) という船も参加していることになっていますが、セリフで言及されているだけで、さらにそれも脚本にあるだけです (当初はキュウシュウもシスコのセリフに)

※23: ニューホールの北、ゴールデンオークス農場 (ディズニー農場) で撮影

※24: Jake Sisko
(シロック・ロフトン Cirroc Lofton 映画「ベートーベン」(1992) などに出演) 声:浪川大輔

※25: Bajor
ベイジョー人 (Bajorans) 初登場は TNG第103話 "Ensign Ro" 「流浪のベイジョー星人」

※26: 船の名前は不明。声は僧侶役の塚田さんが兼任

※27: Deep Space Nine
ステーションのモデルは Herman Zimmerman と Rick Sternbach により、DS9美術部門でデザイン。貢献したアーティストは、Ricardo Delgado、Joseph Hodges、Nathan Crowley、Jim Martin、Rob Legato、Gary Hutzel、Mike Okuda、そして製作総指揮のリック・バーマン。ミニチュアは Tony Meininger 製作

・本編
※28『ステーション日誌。ディープ・スペース・ナイン、ベンジャミン・シスコ中佐。宇宙暦 46388.2。…カーデシア※29占領軍の撤退後、ベイジョー臨時政府は、惑星連邦に駐屯軍の派遣を要請した。これを受け以後、ディープ・スペース・ナインに駐留する。第一部隊は 2日前に、エンタープライズで到着しており、メンバーの中にはオブライエン・テクニカルチーフ※30もいる。』
エンタープライズは DS9 にドッキングしている。
荒れ果てたステーション内※31
エアロックから出てくるチーフ・マイルズ・オブライエン※32。「カーデシア軍は撤退前にこの店で一暴れしていったそうです。抵抗したベイジョー人が 4人殺されたとか。」
シスコ:「なぜ誰も片づけないんだ。」
「みんなシステムの修理に忙しくて、こっちまで手が回らないんです。めぼしい機材は全部カーデシア人に取られて、ステーションは空っぽですよ。キラ少佐からも話があると思いますが、キラ少佐というのはあなたの補佐官に任命されたベイジョーの…」
「わかってる。…店を壊された経営者たちはどうしてる。」
「立て直そうとする者もいますがほとんどは経営をあきらめてステーションを出て行く気です。」
店の中で片づけているフェレンギ人※33たち。店主らしき男がこちらを見ている。
寺院から、ベイジョー人の僧侶※34が出てきた。「ようこそ、中佐。どうぞ中へ。預言者※35がお待ちです。」
シスコ:「…今は忙しくてな。」
「ではまた。」
歩いていくシスコを見つめるベイジョー人。

シスコたちは部屋へ入った。
オブライエン:「うちの妻のケイコ※36はここへ来て部屋を見るなり、熊本※37へ帰ると言い出しましてねえ。息子さんもあちこちうろつかない方がいいかと。安全面で問題がありますから。」
ジェイク:「パパ、ここでどうやって寝るの? 床にクッションが置いてあるだけだよ?」
「ああ、エンタープライズからベッドを運ぶから大丈夫。…それと中佐、ピカード艦長がお会いしたいとおっしゃってました。」
シスコ:「艦長が。…医療チームと科学チームはまだ着かないのか。」
「明日着く予定です。」
「ジェイク。戻るまで部屋で待ってろ。」
ジェイク:「ねえ、これフードレプリケーター?」 ライトが明滅している。
オブライエン:「今は故障中で使えない。でも非常食がたっぷりあるから、後で届けるよ。」
「パパー!」
ジェイクを呼ぶシスコ。「最近の非常食は捨てたもんじゃない。しばらくの間我慢しろ。」
ジェイク:「…OK。」
「『OK』?」 笑うシスコ。オブライエンと共に出ていく。
首を振るジェイク。

司令室でも作業が進んでいる。
ターボリフトでやってくるオブライエン。「全く妙な造りで設計した奴の気が知れませんよ。どこに何があるかわからなくて、修理に手間取ってます。あそこが、司令官のオフィスです。」
シスコ:「じゃあここにいたらカーデシア建築を、毎日拝まなきゃいけないわけか…」
「ええ、今はキラ少佐が使ってます。」
「私の気のせいかな。何かやけに暑くないか。」
「温度調整機の故障で、32度から下がらないんです。修理中ですが。」
女性の声が聞こえてきた。「私は臨時政府の決定には反対です。」
通信で話している相手。『何を言うんだ。』
女性:「ベイジョーは独立してやっていくべきです…」
シスコ:「…キラ少佐に挨拶してくるか。」
オブライエン:「中佐、ベイジョーの女性と仕事をしたことはありますか?」
「いや、なぜ。」
「深い意味はありません。」
女性:「…これじゃ何の意味もないでしょう。」
通信相手:『そんなことはないだろう。』
「こんなやり方では何もかも水の泡です!」

司令官室で怒っている、キラ・ネリス少佐※38。「…わからないんですか!」
相手のベイジョー人官僚※39。『君はどうかしてる!』
キラ:「そう思うなら、今後私には意見を求めないで下さい!」 デスクを叩き、通信を切った。「何?!」
微笑むシスコ。「ベンジャミン・シスコだ。」
キラ:「…部屋を明け渡せって?」
「いや、確かにそれもあるが。その前に顔を見て、挨拶をしようと思ってね。」
作り笑いするキラ。「…ご丁寧に。」
シスコ:「何か問題でもあったのか?」
「聞かない方がいいと思いますよ?」
「どうして。」
「私は本当のことをズケズケ言いますから。人が聞きたくないことまでね?」
「ぜひ聞きたいなあ。」
「…私は連邦の駐屯軍をおくことは反対です。」
「ベイジョーの臨時政府の要請だ。」
「私は政府の連中とはことごとく意見が対立するの。だからこんなステーションに送り込まれたんだわ。…私達はねえ、ベイジョーの独立のために、子供の頃から銃を持って戦ってきた。そしてやっとカーデシアを撃退したと思ったら、政府の連中は…今度は連邦の部隊を引っ張り込もうってのよ?」
「連邦は援助したいだけだ…」
「援助ね、援助のため! …カーデシアも、60年前同じことを言ったわ。」
「少佐。私はこの任務を受けた時、補佐官にベイジョー人をつけてくれと頼んだ。ここはベイジョーだ。ベイジョー人の意見を、尊重したい。どうかな、これからお互い協力し合って上手くやっていこう…」
警報が鳴り、キラはコンピューターを操作する。
呼び出された相手。『はい、少佐。』
キラ:「オドー※40、エリア A-14※41 で何かあった?」
オドーと呼ばれた男は、ベイジョー人ではないようだ。『保安センサーが故障でわかりません。現地に向かいます。』 映像が消える。
キラ:「最近犯罪が多発してて、失礼して見てきます。」
シスコも出ていく。

人々の様子をうかがっている、フェレンギ人の子供。「おい、急げ! 急げ!」 盗みをはたらいている異星人に言う。「行くぞ!」
壊れた壁から出てくる 2人。片づけを行っている人々とぶつかりそうになる。
オドー:「よーし、2人ともそこを動くな!」 前からやってきた。
引き返そうとする 2人は、人々とぶつかった。
だが反対側からはキラが来た。「やめなさい!」
異星人は持っていた武器を振り回し始めた。放り投げられた武器は、オドーの顔へ向かっていく。
その瞬間、オドーは頭部を液体状に変化させた。通り抜けた武器は、後ろの柱に突き刺さる。すぐにオドーの顔は戻った。
異星人は仕方なく走って逃げようとするが、オドーに飛びかかられた。
柱に押しつけられる異星人。
シスコは柱をフェイザーで撃った。「そこまでだ!」
オドー:「お前は何者だ。」
キラ:「オドー? 連邦から来た指揮官よ?」
近づくオドー。「このプロムナードでは武器は使用禁止だ。もちろんフェイザーガンもな?」
フェレンギ人の店主がやってきた。「ノーグ※42。何をしてる。」
無言のノーグ。
オドー:「この小僧はこそ泥をはたらいた。」
店主:「中佐。俺はクワーク※43だ。前はこのプロムナードでカジノをやってた。この子は、俺の甥っ子なんだ。」 ノーグを威嚇するクワーク。「見ての通りまだ子供だ。ちょっとした出来心でやったことだと思う。俺たちは明日ここを出ていく。この子は俺からきつーく叱っておくから、今回は大目に見て引き取らせちゃくれないか。」
シスコ:「いや、そうはいかない。連行しろ。」
ノーグを連れて行くオドー。クワークは歩いていった。
キラ:「あんなこと言ってるけど、盗みを命じたのはクワークに決まってるわ?」
シスコ:「少佐。フェレンギ人と付き合うには、上手く取引しないとね。あの子を釈放する代わりに、クワークにある仕事をやらせるつもりだ。…重要な仕事をね。」
通信が入る。『オブライエンからシスコ中佐。』
シスコ:「何だ。」
オブライエン:『エンタープライズより通信が入りました。ピカード艦長が、お待ちだそうです。』
「…了解した。すぐに戻る。」


※28: 本来の 2時間版では、オープニングの最後でワームホールが登場しません。この段階ではシスコによって発見されていないため当然とも思える処置ですが、前後編にはどちらも入っています。なお DVD版でも確かにワームホールはありませんが、ナレーション入りの音源を共通して使ったためか、ワームホールが開く音だけが入ってしまっています

※29: Cardassian
初登場は TNG第86話 "The Wounded" 「不実なる平和」

※30: 原語では "Chief of Operations"

※31: このプロムナードのセットはパラマウントの第17スタジオに建てられ、以前はテレビシリーズ「ボナンザ カートライト兄弟」の Pondesora 農場の内装がありました。Pondesora の外装はTNGやVOYのほとんどの惑星セットが作られた、第16スタジオに建設

※32: Chief Miles O'Brien
(コルム・ミーニー Colm Meaney 映画「ダイ・ハード2」(1990)、「沈黙の戦艦」(1992)、「コン・エアー」(1997) などに出演) 元エンタープライズ-D 転送部長で TNG サブレギュラー。初登場は TNG パイロット版 "Encounter at Farpoint" 「未知への飛翔」 (このエピソードでは名前も与えられておらず、戦闘ブリッジの操舵士官でした。DS9 開始後にゲスト出演した最終話 "All Good Things..." 「永遠への旅」で、まぎれもなくオブライエンだったことが設定) 声:辻親八 (TNG から継続)

※33: Ferengi
初登場は TNG第5話 "The Last Outpost" 「謎の宇宙生命体」

※34: 僧侶その1 Monk #1
(ドナルド・ホットン Donald Hotton) 声:塚田正昭

※35: Prophets

※36: ケイコ・オブライエン Keiko O'Brien
初登場は TNG第85話 "Data's Day" 「ヒューマン・アンドロイド・データ」。旧姓イシカワ (Ishikawa)。後に登場

※37: 吹き替えでは「地球」。綴りは Kumomoto になっています

※38: Major Kira Nerys
(ナナ・ヴィジター Nana Visitor ドラマ「ダーク・エンジェル」(2001) などに出演) 「少佐」は宇宙艦隊の Lieutenant Commander ではないため、ベイジョーは呼称が違うことがわかります。ベイジョー人であるため、キラが姓、ネリスが名。パイロット版のみ髪が長めになっています。声:小宮和枝、TNG ケーラー、ST6 ウフーラ、TAS ムレスなど

※39: Bajoran Bureaucrat
(ジーン・アーマー Gene Armor) 声はボリアン役の大川さんが兼任

※40: Odo
(レネ・オーバージョノー Rene Auberjonois ENT第20話 "Oasis" 「閉ざされたオアシス」の Ezral、映画 ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」のウェスト大佐 (Colonel West、劇場公開版ではカット) 役。映画「M★A★S★H マッシュ」(1970)、「キングコング」(1976)、「パトリオット」(2000) などに出演) 声:加藤精三、TNG トモロク

※41: 「814」と誤訳

※42: Nog
(エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg VOY第18話 "Initiations" 「ケイゾン戦士誕生」のカー (Kar) 役) 初登場。声:坂口賢一

※43: Quark
(アーミン・シマーマン Armin Shimerman TNG第5話 "The Last Outpost" 「謎の宇宙生命体」のフェレンギ人レタック (Letak)、第11話 "Haven" 「夢の人」の結婚ギフトボックス (wedding gift box)、第47話 "Peak Performance" 「限りなき戦い」のフェレンギ人ブラクター (Bractor) 役。映画「第一容疑者」(1994)、ドラマ「美女と野獣」(1987〜90)、「バフィー〜恋する十字架」(1997〜2000) などに出演) 声:稲葉実

エンタープライズ。
観察ラウンジの窓から、惑星ベイジョーが見える。ドアチャイムが鳴った。
ピカード※44:「入れ。」
シスコが入る。
ピカード:「シスコ中佐、待っていたよ。…ジャン・リュック・ピカードだ。」 握手する。
シスコ:「お久しぶりです、艦長。」
「…前に会ったか。」
「はい、艦長。3年前、ボーグとの戦いの時私はサラトガに乗っていました。」
一瞬ショックを受けた表情を浮かべたピカード。「…カーデシア占領軍が、ベイジョーに対して…何をしてきたかは知っているな。」
シスコ:「はい。奴らはベイジョーの星の資源を吸い取るだけ吸い取り、もう残っていないと見るや撤退を決めたのです。」
「こんな状態の星では、残されたベイジョーは生きていく術もない。我々が救援物資を送ってもとても足りはしない。…だが…ベイジョーはいい種族だ。彼らが…連邦に加入してくれれば援助ももっとできるのだが。」
「加入するでしょうか。」
「簡単にはいかない。彼らも内部分裂している。今まではカーデシアという共通の敵がいたから上手くまとまっていたのだが。」
「では時期尚早ですね。」
「…内政干渉にならん範囲で、彼らの連邦加入の準備を整えるのも君の任務だ。……中佐。この任務の話があった時、君が…一度は断ったことは聞いたよ。だが…3年もずっと、ユートピア・プラニシアの造船所※45で平和に暮らせばそろそろ変化が欲しい頃だろう。」
「息子のジェイクのことがありますから。ここは子供には良くありません。」
「残念だが宇宙艦隊の士官には自分の任務地を選り好みする権利は与えられていない。」
「十分わかっています。ですから地球に戻り非戦闘員として働ける道を探しています。」
「…宇宙艦隊司令部に君の交代要員を要請すべきかな?」
「その方がよろしいかと。」
「…考えておく。だがそれまでは…」
立ち上がるシスコ。「言うまでもなくそれまでは、全力を挙げて任務の遂行に努めるつもりです、艦長!」
ピカード:「…下がっていい。」
出ていくシスコ。

プロムナードの作業は進んでいる。
保安室にいるシスコは、制服を変えている。「別に難しい条件じゃない。出発を取りやめろ。」
クワーク:「取りやめろだ? 荷造りだって全部済んでるのに。」
「ほどけばいい。」
「一体どういう風の吹き回しだ? 何で俺をおいときたい。」
オドー:「私もそこがわからん。こいつはギャンブラーで泥棒ですよ?」
「泥棒じゃない。」
「いいや、お前は泥棒だ。」
「だったら証拠を見せてみろ、何もつかんでないくせにふざけるな!」
シスコ:「まあ聞け。私の部下や、ここに住むベイジョーの人たちにとってこのプロムナードは交流の場であり、憩いの場だ。もし君たちが皆店を閉めたら、ここはゴーストタウンと化してしまう。だから誰か街の復興に立ち上がってくれる人物が必要なんだ。街を見捨てずに、先頭に立ってみんなを引っ張っていく力のある者が欲しい。君ならできる。」
笑うクワーク。「この俺が…。」
オドー:「悪くはないな。お前には政治家みたいなところがある。向いてるよ。」
「…俺に連邦の管理下に入って商売をやれって言うのか? とんでもないね、お断りだ。」
シスコ:「ここはベイジョーのステーションだ。我々は援助してるだけ。君が法を守ってる限りは、口出しはしない。」
「中佐、俺はな、潮時ってもんを心得てる。今のベイジョーの臨時政府は危なっかしくてとてもじゃないが長居する気にはなれないね。今の政府が倒れたら、俺みたいな者は真っ先に…処刑される。」
「危険な賭けだ。…だが君はギャンブラーなんだろ、クワーク?」
オドー:「ついでに泥棒だ。」
「なあ、クワーク。このままいけば、君の甥っ子はベイジョーの刑務所で一生を過ごすことになる。…私にも息子が一人いる。だからできれば子供に辛い思いはさせたくない。家族のもとから引き離されて、冷たい監獄で暮らすなどとはな。よく考えろ。君次第だ。」 出ていくシスコ。
「最初は私も、いけ好かない男だと思ったよ。」
クワークの表情が消えていた。

キラは制服の上着を脱ぎ、プロムナードで片づけをしている。
通りかかるシスコ。「少佐。」
キラ:「みんな修理に忙しくて、片づける人がいないから。宇宙艦隊の士官は手を汚すのは嫌いでしょ?」
シスコは近くにあったガラクタを手に取り、投げやった。手を見せる。
キラ:「避難キャンプではね、何でも手の空いた者がやるのよ。階級は関係ないわ?」
キラが持っていた物を手に取るシスコ。「さっきクワークとちょっと話をしてきた。奴は政府が倒れると踏んでるらしい。」
キラ:「クワークの読みはよく当たるの。今の政府は、もって一週間ってとこね。」
「その後ベイジョーはどうなる。」
「…内戦ね。」
「…内戦を避ける道は。」
「あるとしたら、オパカだけね。」
「オパカ?」
「宗教的指導者よ。カイ・オパカというの。…信仰心だけが、ベイジョー人全体を一つにできるの。オパカが統一を唱えれば皆聞くわ? だからどのセクトも彼女を手に入れようと狙ってる。それで身を隠してて、滅多に現れないの。」
あのベイジョー人僧侶がやってきた。「中佐。預言者がお呼びです。」
ついていくシスコ。キラも 2人を見る。

惑星ベイジョー。高台に建物がある。
荒れた建物内を歩くシスコ※46。人工の池がある。
ベイジョー人の女性がやってきた。「よく来てくれました。ひどい有様で驚かれたでしょう?」
シスコ:「カーデシアの仕業?」
「あなたが来て下さるのを待っていました。」 シスコの耳をつかむベイジョー人。「パー※47を探求したことはありますか?」
「…パー?」
「パーとは自分自身の内面、精神の世界です。預言者は…人々を…パーへと導きます。」
シスコに反応がある。
ベイジョー人:「息を吸って。」
シスコ:「カイ・オパカ※48。それより話…」
オパカ:「息を吸って!」
「あ…。」
「……皮肉ねえ。ここでの任務を望んでいない人が、選ばれし者※49とは。…一緒にいらっしゃい。」
オパカは池の近くで小さな装置を使った。すると水面が消滅し、階段が姿を現す。
降りていく 2人。また水面の映像が現れる。

洞窟を歩くオパカ。「確かにベイジョーは大きな危機にあります。けれど何よりも憂うべきは、精神の荒廃です。」
シスコ:「だとしても、私では何の力にもなれない…」
「中佐! ……自分を否定しては答えは見つかりません。」
「何のことです。」
「答えは自分の中にあるのです。…こちらへ。」
オパカは箱を開けた。中には光り輝く物体が浮いている。
シスコ:「これは。」
オパカ:「預言者の涙。」 歩いていった。
物体を見つめるシスコ。
すると物体は音と同時に光り輝き、シスコを包んだ。

叫ぶシスコ。「一体どうなってるんだ!」
そこは、海辺だった。シスコは制服も着ていない。「オパカ?」
いくつかグラスを持っていた。シスコは砂浜の暑さに気づき、近くのシートへ走り込む。
勢いで、寝ていた女性に砂がかかってしまった。「ちょっと!」
シスコ:「失礼、足が熱くて…。ジェニファー※50?」
水着を着たジェニファー。「そうだけど?」
シスコ:「ほんとに?」
「あなた誰? 見覚えないわ? 夕べジョージ※51のパーティにいた人?」
「ジョージ? ジェニファー。…そんなバカな。こんなことはありえない。」
「あなた大丈夫?」
「覚えてるぞ。ここは君と初めて会ったギルゴ・ビーチ※52だ。」
「前に会ったことある?」
「あの時も、レモネードを持ってた。砂が焼けるように熱くて…ここで思わず、止まって…ああ…」
怪訝な顔をするジェニファー。
「すごい奇跡だ、信じられないよ!」 笑うシスコ。
ジェニファーは首を振る。
シスコ:「そうか、君は知らないんだね? ああ…。」 真面目な顔になる。「ジェニファー。…飲まないか。」 レモネードを差し出す。
戸惑うジェニファー。「…でも見ず知らずの人にいきなり飲み物を渡されても。私もらえないわ?」
歩いていくジェニファー。シスコもレモネードを置き、後を追う。
ジェニファーを見つめるシスコ。
ジェニファー:「本当は何なの? 私達どこかで会った?」
シスコ:「…いや。」
「…じゃ何で名前知ってるの?」
「ああ、それは…ジョージに聞いたんだ。パーティで。」
「あなたの名前は? 何て言うの?」 他にも海水浴を楽しむ人々がいる。
「ああ、ベンジャミン・シスコ。艦隊アカデミーを卒業したばかりで、配属が決まるのを待ってるところ。」
「ああ、下級士官※53ね?」
「そう。」
笑うジェニファー。「ママがいつも言ってるわ? 下級士官には気をつけろって。」
シスコ:「君のママだって、僕を見れば一目で気に入るさ。」 二人は笑った。
「ずいぶん自信家なのね?」
「断言するよ、君は僕と結婚する。」
「……いつもそのセリフで女の子を口説いてるの?」
「いや、初めてだよ。これが最初で最後。」
「……本気?」
「そうだ、今夜食事に来ないか。君のために腕を振るうよ。親父がシェフなんだ。直伝のシチューを御馳走する。」 しゃがむシスコ。
「…そう言われても。」
「いいから『イエス』って言ってくれよ!」
「後で後悔しないかしら。」
笑うシスコ。
音がした。空中に、あの物体が浮かんでいる。また光に包まれた。
シスコ:「ジェニファー!」

現実に戻ったシスコは、こめかみを押さえる。
箱を閉じるオパカ。「これと同じような…発光体※54が、この 1万年の間に全部で 9体宇宙に出現しました。8体は、カーデシアの手にあります。彼らより先にテンプル※55を探し出して下さい。」
シスコ:「テンプルとは何です。」
「伝説として語られている聖なる神殿のことです。それを探す手がかりは、この発光体にあるのです。カーデシア人も躍起になってこの謎を解こうとしています。彼らにテンプルを見つけられたら…おしまいです。」
「でも私にどうやって、テンプルを探し出せと。」
オパカは発光体の箱を差し出した。「道しるべです。」
シスコ:「カイ・オパカ。でも…」
「テンプルの謎を解かねばベイジョーの統一は不可能です。…見つけ出して下さい。ベイジョーのためでも、連邦のためでもなく、自分のパーのために。あなたがここへ来たのは、運命があなたを導いたからです。」


※44: ジャン・リュック・ピカード艦長 Captain Jean-Luc Picard
(パトリック・スチュワート Patrick Stewart) エンタープライズ-D 艦長。声:麦人

※45: Utopia Planitia Fleet Yards
エンタープライズDが建造された、火星軌道上の施設。TNG第54話 "Booby Trap" 「メンサー星人の罠」など

※46: クレジットでは詠唱する僧侶 Chanting Monk (スティーブン・ロウ Stephen Rowe) というキャラクターがおり、脚本ではこの辺で登場することになっています。最終的にカットされたのでしょうか?

※47: pagh
吹き替えでは「パール」、DVD 字幕では「パーハ」

※48: Kai Opaka
(カミール・サヴィオラ Camille Saviola) 初登場。声:竹口安芸子、ST5 ウフーラなど

※49: Emissary
原題。吹き替えでは「あなたはここでの任務を望んでいなかった」。パイロット版で選ばれし者という言葉が使われるのは、この一回だけです

※50: 原語では愛称の「ジェン (Jen)」

※51: George

※52: Gilgo Beach
「ギルゴ」は訳出されていません。ロサンゼルスのレオカリロ・ビーチで撮影

※53: 吹き替えでは「士官候補生」。卒業しているわけですから…

※54: Orb

※55: 天空の神殿 Celestial Temple

DS9。
横になっていたジェイク。手には野球※56ボールを握っている。「うーん? 何?」
シスコ:「…顔を見てた。ママに似てるなあと思って。」
眠るジェイク。
キラの通信が入る。『シスコ中佐。』
シスコ:「…どうした。」
『お休みのところすみませんが、プロムナードまで来ていただけますでしょうか。』
「わかった。」

ターボリフトから出てくるシスコ。
プロムナードはにぎわっている。人々が店へと入っていく。
異星人のモーン※57が歓談している。
楽器を鳴らす異星人。
フェレンギ人のロム※58が声を上げる。「さあ賭けて、運試しだ。一攫千金も夢じゃないからねえ。」
派手な姿の女性異星人※59が声を上げる。「ダボー!」
様々な異星人が店にいる。微笑み、うなずくシスコ。
カウンター内にはクワークがいた。「やあ中佐、何を飲む?」
シスコ:「ベイジョーのシンセエール※60を。」
「ああ、やめときな。ベイジョー人ってのは、信仰も厚いいい連中だ。でも、奴らの作る酒は最低だ。…信心深い奴らの作った酒は飲めたもんじゃない。子供を牢屋にぶち込むような、連邦の士官の酒もな。」
離れるクワーク。

『ステーション日誌、宇宙暦 46390.1。エンタープライズは小型艇※61 3隻をディープ・スペース・ナインに残し、次の任務地であるラポリス星系※62へと向け出発する。一方、医療チームと科学チームのメンバーが到着。その中には私の古い友人も含まれている。』
DS9 にドッキングする、U.S.S.コクレイン※63
エアロックを出るキラ。「お二人に、ステーションの中を御案内しますか?」
シスコ:「じゃあ、ドクター・ベシアを案内してくれ。ダックス大尉には、すぐ仕事にかかってもらう。」
ドクター・ジュリアン・ベシア※64は呼び止めた。「ダックス大尉! あの…よかったら、今夜一緒に食事でも。あ…それか一杯飲むだけでも。」
応えるジャッジア・ダックス大尉※65。「ええ、喜んで。」
歩くシスコ。「君にはちょっと若すぎるんじゃないか?」
ダックス:「彼は 27、私は 28。」
「本当は 328歳なんだろ? 君が地球人じゃないことは話したのか。」
「ええ、トリル人※66なのって言ったら、彼素敵だって言ったわ? 結合体の種族は初めて見るって。」
「でももし、君の昔の姿を見たら素敵だなんて絶対言わなかったろうな。」
「…そうでしょうね?」
「うん。」 口笛を吹くシスコ。「それにしても大変身だな。」
「身体は変わっても中身はおんなじままよ? ほとんどね?」

荒れた部屋を歩くキラ。「ステーション内で窃盗が横行してるの。…ここも荒らされたみたいね?」
ベシア:「ああ…まさに理想的な環境だ。これこそ、真の辺境医療だ。」
「辺境医療?」
「実は、僕は志願してここに来たんですよ。」
「あらそう?」
「楽な仕事や研究には興味はない。僕はこういうところで働きたかった。銀河の果ての辺境の地。冒険と夢とロマンに満ちあふれ、英雄が生まれる場所。…未知の世界が僕を待ってる。この、未開の星が…夢をかき立てる。」
「その『未開』の星が、私の故郷よ。」
「あ、あの…僕は…その…」
「カーデシアのおかげで負傷者が山ほど出てるわ? 治療してくれればみんなあなたに心から感謝すると思うわよ? 何せ素朴で単純な、連中だから。」
笑顔を作り、出ていくキラ。ため息をつくベシア。

科学ラボにいるシスコ。「ベイジョーの僧侶たちは、1万年に渡りこの発光体の研究を続けてきた。データバンクとインターフェイスをつないで、その資料を引き出してくれ。」
ダックス:「きっと手がかりになるわ?」
「大急ぎでやってくれ?」 箱の中では発光体が光り輝いている。「残りの 8体はカーデシアの手にある。奴らもあらゆる手を尽くして、謎を解こうとしているはずだ。先を越されるな?」
「ベンジャミン? あなたの元気そうな顔を見て安心したわ? 心配してたのよ?」
「また会えて嬉しいよ。おやじさん?」
笑う 2人。シスコは部屋を出て行く。
命じるダックス。「コンピューター、発光体に関する全ての資料を検索してちょうだい。ベイジョーの領域内における未解明の天文現象も含めて拾い出して?」
コンピューター※67:『対象期間は。』
「…1万年。」
『データ検索開始。所要時間は、およそ 2時間です。』
ダックスは発光体を見つめた。手を近づけたところで、突然光に包まれる。

ダックスはベッドの上にいた。何人もの医者が周りにいる。
不安な顔を浮かべるダックス。「クルゾン※68。」
同じく寝ている、年老いたトリル人が微笑んだ。その腹から、一個の生物が取り出される。
切り離されたところで、クルゾンは目を閉じた。
共生生物がダックスの身体に入れられる。
ダックスは、微笑んだ。
上を見ると、発光体が浮かんでいた。光。

箱の中の発光体。
現実に戻るダックスは驚いた。穏やかな表情を浮かべる。

エンタープライズ。
前方のターボリフトから降りたオブライエンは、以前の制服を着ている。すぐ右の作戦室の前で立ち止まるが、そのまま何もせずにブリッジを見渡す。
副長席に座っていた当直の女性大尉※69が気づき、立ち上がって尋ねた。「艦長でしたら作戦室にいます。お呼びしましょうか?」
一瞬作戦室を振り返るオブライエン。「いやあ、いいんだ。ありがとう。」 立ち去る。

転送室に入るオブライエン。転送士官のマギー・ハッブル※70に命令した。「司令室へ転送してくれ。」
ハッブル:「了解。」
そこへピカードが入ってきた。「オブライエン。ブリッジまで来たそうじゃないか。」
オブライエン:「そうです。でも…お邪魔してはと思いまして。」 台の上から降り、ピカードに近づく。
合図するピカード。「少尉。」 マギーはうなずき、部屋を出ていく。
ピカード:「君のお気に入りの転送室だな。」
笑うオブライエン。「…ええ、第3転送室。」
ピカード:「実は昨日、私もここへ来るなり…君の名前を呼んでいた。……いろいろ変わるな。」
「…同じ、転送室じゃないですか。」
微笑み、うなずくピカード。
オブライエン:「…退艦許可を願います。」
ピカード:「よし、認めよう。」 自らがコンソールにつく。
オブライエンは最後の言葉を口にした。「それでは。」
ピカードの操作によって、オブライエンが転送されていく。消えた後も、しばらく見つづけるピカード。

パイロンから離れたエンタープライズは、DS9 を後にした。



※56: baseball 2042年直後にプロ野球は消滅。TNG第49話 "Evolution" 「進化の刻印」など

※57: Morn
(マーク・アラン・シェパード Mark Allen Shepherd) エキストラ

※58: Rom
(マックス・グローデンチック Max Grodenchik TNG第67話 "Captain's Holiday" 「大いなるホリディ」のソヴァク (Sovak)、第121話 "The Perfect Mate" 「究極のパートナー」のパー・レノア (Par Lenor) 役。映画第9作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」にもトリル人少尉役で出演していましたが、カットされました。映画「アポロ13」(1995) のNASA航空力学職員役) このエピソードでのクレジットはフェレンギ人ピットボス (Ferengi Pit Boss)。声はボリアン役の大川さんが兼任

※59: ダボ・ガール Dabo Girl
(ダイアナ・シグノーニ Diana Cignoni) 初登場。声優なし

※60: synthale

※61: ランナバウト runabout
第5シーズンまでは「シャトル」と訳されていることが多いです。なお、この時の 3隻とは後に登場するリオグランデ、ヨウスコウ、そして第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」で登場するガンジスのこと。全て大河の名前が付けられます

※62: Lapolis system

※63: U.S.S. Cochrane
オーベルト級、NCC-59318。初ワープ飛行を行った地球人、ゼフラム・コクレイン (Zefram Cochrane) 博士にちなんで。TOS第31話 "Metamorphosis" 「華麗なる変身」など

※64: Dr. Julian Bashir
(シディグ・エル・ファディル Siddig El Fadil (第4シーズンよりアレキサンダー・シディグに改名) 映画「サミー&ロージィ/それぞれの不倫」(1987)、「バーティカル・リミット」(2000)、「サラマンダー」(2002) などに出演) 階級は中尉。声:藤原啓治

※65: Lieutenant Jadzia Dax
(テリー・ファレル Terry Farrell 映画「バック・トゥ・スクール」(1986)、「ヘルレイザー3」(1992)、テレビ映画「たったひとつの愛」(2000) などに出演) 最後に決まったキャストだったため、苦労したそうです。声:佐藤しのぶ

※66: Trill
TNG第97話 "The Host" 「愛の化身オダン」より。メイクは変更されています。吹き替えでは「トリル

※67: コンピューター音声 Computer Voice
(ジュディ・デュランド Judi Durand 映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」の宇宙ドック管制官 (Space dock controller) 役。ゲーム "Voyager: Elite Force"、"Armada II" でも声の出演) 連邦のコンピューターが引き続きメイジェル・バレット (Majel Barrett) が担当しているのに対して、DS9 (カーデシア) のコンピューターはデュランドになっています

※68: クルゾン・ダックス Curzon Dax
(フランク・オーウェン・スミス Frank Owen Smith) DS9第105話 "Let He Who Is Without Sin..." 「享楽の星・ライサ」では、クルゾンはライサでアランディスとのジャマハロンで死んだことになっています。そのためライサでは一種の発作を起こし、その後病院に搬送されて本当の死亡ということにされています。声優なし

※69: Lieutenant
(メイガン・バトラー Megan Butler)

※70: マギー・ハッブル少尉 Ensign Maggie Hubbell
(エイプリル・グレイス April Grace) TNG第121話 "The Perfect Mate" 「究極のパートナー」以来の登場。クレジットでは転送部長 Transporter Chief だけですが、TNG と俳優や仕事が同じであることから同一人物としてよいと思われます。名のマギーは訳出されていません。声はキラ役の小宮さんが兼任

スクリーンにガロア級戦艦が映っている。
オブライエン:「カーデシアのガル・デュカットから通信が入ってます。」
キラ:「デュカット? ここの占領軍の指揮官だった男よ。」
「挨拶したいと、乗船許可を求めています。エンタープライズが去るのを待っていたようですね。」
シスコ:「オブライエン。喜んで許可するとデュカットに伝えてくれ。」
近づいてきたカーデシア艦をにらむシスコ。

カーデシア人のガル・デュカット※71がやってきた。「ご機嫌いかがかな?」
パッドを読んでいたシスコは立ち上がった。「よくいらした。」
デュカット:「突然お邪魔して失礼。だが、ここは 2週間前まで私のオフィスだったんだ。」
また座るシスコ。
デュカット:「どうもそこが、自分の席のような気がしてしまう。…正直言って今でもこのオフィスが、懐かしいよ。できれば、明け渡したくなかった。」
シスコ:「ホームシックになったらいつでもお立ち寄り下さい。」
「ありがたい申し出だ。…誤解のないように言っておくが、我々は是非君たちの力になりたいと思っているのだよ。連邦の艦隊を遠く離れ、満足な防衛設備もないこの基地で、孤立無援ではさぞ心細いだろう。万が一君たちに何かあった場合には、我々カーデシア軍が駆けつける。」
「なるべく面倒はかけないようにしたい。」
「…ところで、シスコ中佐はカイ・オパカを見てどう思ったかね? …会いに行ったんだろ? 聞いているぞ? 発光体を預かってきたことも聞いている。あれがまだ一体残っていたとはね。どうだろう、この際お互いの情報を交換して…知識を深め合わないか。」
立つシスコ。「…発光体のことなど何も知らない!」
デュカット:「我々は、君たちのすぐ近くにいるから気が変わったらいつでも言ってくれたまえ。…ああ、それはそうとせっかく来たのだから少しプロムナードで…部下を遊ばせてやりたいのだが、まずいかな?」
シスコは首を振った。
デュカット:「では。」 司令官室を出ていく。
シスコはため息をついた。

作業を続けるダックス。やってきたシスコに尋ねる。「デノリアス・ベルト※72って場所知ってる?」
シスコ:「強力なプラズマフィールドの一種だろ。好きこのんで近づく者は、まずいない。」
「22世紀にデノリアス・ベルトで遭難した船に、カイ・タルノ※73というベイジョー人が乗っていたの。彼はそこで幻を見た。」
「当ててみようか。その預言者は聖なる神殿を見たんだろ。」
「ちょっと違うわ? 突然天空がパックリと口を開けて、船を飲み込んだというのよ。」
「それは何かの比喩か、それとも謎かけか?」
「まだほかにあるの。デノリアス・ベルトでは発光体が 5つも見つかってるのよ? …それにこのエリアでは頻繁にニュートリノ変動が観測されているの。ここ数年間で 23回も。かなり大きな変動よ? 変動が観測された場所は、一個所に集中してるわ?」 コンピューターの星図に、集中的に場所が表示される。「聖なる神殿かしら?」
「調べてみる価値はあるが、カーデシアがそばで目を光らせているからな。…気づかれずに行く方法はあるか。」

クワークの店は、カーデシア人たちでにぎわっている。
たくさん儲けているようだ。負けたモーンは、店を出て行った。
オブライエンと一緒に来たキラは、カップでカウンターを叩いた。「皆さん、静粛に聞いて下さい! 只今をもってカジノを閉店とします。」 騒ぐカーデシア人。
クワーク:「どういうことだ! 勝手な真似はさせんぞ。」
オブライエン:「何か文句があるんなら、シスコ中佐に直接言うんだな。」
「ああ、言ってやるとも。黙ってられるか。…皆さん、騒がせてすまないねえ。どうもちょっとした行き違いがあったらしい。なーに、すぐに話をつけてくるさ。おい、勝った金を入れる袋をやってくれ。」 フェレンギ人から受け取る。
カーデシア人は、その中に金を詰めていく。
様子を見ているキラ。

カーデシア艦。
笑うカーデシア人士官※74たち。「俺たちが勝ちすぎたから不安になったかなあ。」
「あのままいきゃ連邦を破産させてやれたのに。」
パネルを開け、その中に袋を入れた。歩いていく。
置かれた袋は、液体状になって変化を始めた。
狭い隙間を通って廊下側に移動していく。
人型になりながら、オドーは固体化した。
様子をうかがい、コンピューターに近づく。

DS9。
シスコとダックスはエアロックを通り、ランナバウトに乗り込む。ドアを閉めるダックス。
シスコ:「こちら、リオグランデ※75。発進準備開始。」
キラ:『了解、中佐。』
発着パッドの上部が開き、リオグランデを載せた台が持ち上がる。


※71: Dukat
(マーク・アレイモ Marc Alaimo TNG第7話 "Lonely Among Us" 「姿なき宇宙人」の Badar N'D'D、第26話 "The Neutral Zone" 「突然の訪問者」のテボック司令官 (Commander Tebok)、第86話 "The Wounded" 「不実なる平和」のガル・マセット (Gul Macet)、第126話 "Time's Arrow, Part I" 「タイム・スリップ・エイリアン(前編)」のフレデリック・ラ・ルー (Frederick La Rouque) 役) 初登場。当初は違う俳優の予定だったそうです。声:幹本雄之

※72: Denorios Belt

※73: Kai Taluno
吹き替えでは「カイ・タルノというベイジョーの預言者が…」となっています

※74: Cardassian Officer
(パーカー・ウィットマン Parker Whitman) 声はボリアン役の大川さんが兼任、(ウィリアム・パウエル・ブレア William Powell-Blair)

※75: U.S.S.リオグランデ U.S.S. Rio Grande
ドナウ (ダニューブ) 級ランナバウト、NCC-72452。Herman Zimmerman 全指揮の下、Rick Sternbach と Jim Martin デザイン、内部のコックピットは Joseph Hodges デザイン。ミニチュアは Tony Meininger 製作。後にTNG第151話 "Timescape" で名称不明のランナバウトが使われ、その際に後部セクションが登場。吹き替えでは「リオグランデ

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