エンタープライズ エピソードガイド
第51話「狙われた首」
Bounty
イントロダクション
※1軌道上のエンタープライズのそばには、異星人船※2がいる。 『航星日誌、2153年3月21日。無人惑星の探査を開始して 3日後、タッカー少佐と私は突然の来客で船に呼び戻された。』 帰還するシャトルポッド。 ターボリフトのアーチャー。「高さに足がすくんで滑ったんだろう。」 タッカー:「滑ったんじゃありません。足をかけた途端に崩れたんです。」 2人とも薄手の制服だ。 「あの岩は私も踏んだ。」 「だから崩れたんだ。少しダイエットした方がいいですよ?」 ブリッジに入るアーチャー。「報告!」 スクリーンに小型船が映っている。 リード:「30分前に突然現れ、パイロットがメッセージを送ってきました。すぐ船長と話したいそうです。」 アーチャー:「用件は。」 「まだ、何も。データベースで調べたところ、船籍はわかりました。…テラライト※3です。」 「聞いたことがある。…回線をオンに。」 テラライト人が映し出される。 アーチャー:「エンタープライズ※4のアーチャーだ。用件を聞こう。」 テラライト人:『先にここへ何しに来たのか答えろ。』 「…あんたの、名前は。」 『船長のスカラー※5だ。テラライトの鉱山を仕切ってる。※6』 「惑星の調査で来た。地表に 3チーム派遣してる。少し骨休めもするつもりだ。」 スカラー:『骨休めとは?』 「休暇だ。しばらく休みがなかったからねえ。」 『…そういうことなら、赤道一帯を訪ねることをお勧めする。北部の山頂から見る景色は、格別だ。』 「行ったことが?」 『何度もある。休暇というよりも短期間の隠遁に。ああ、そうそう。レン・ガム※7にある温泉に入らずして、帰っちゃいかんぞう? うん?』 「どこなんだ。」 『北極の島々にある。…ライコス海岸線※8の南端から 227km進むと、火砕岩でできた岩場に出る。その後、溶岩のトンネルを通り…』 笑うタッカー。「ガイドが必要ですね。」 スカラー:『…俺でよければ案内しよう。』 アーチャー:「迷惑じゃないのか。」 『とんでもない。そっちの船の、ドッキングポートで会おう。骨休みのプラン作りは、任せてくれ。』 通信を終えるスカラー。 標準制服に戻ったアーチャー。「トゥポルは、物わかりのいい種族じゃないと言っていたが…確かに一方的ではあるな?」 笑うタッカー。 アーチャー:「仲間うちじゃ、気のいい男なんだろうが?」 タッカー:「…俺の昔のガールフレンドがピッタリだ。」 ドアを開けると、スカラーがいた。いきなり銃をタッカーに向けて撃つ。 飛びかかるアーチャーだが、殴り倒された。 そして撃たれる。 ドアを閉めるスカラー。 |
※1: このエピソードは、VOY トレス役のロクサン・ドースン監督です。ENT では第39話 "Dawn" 「熱き夜明け」に続き、5話目となります。参考 ※2: VOY第125話 "Alice" 「アリスの誘惑」に登場した、アリスの改造かもしれません ※3: Tellarite TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」など。ENT では第9話 "Civilization" 「狙われた星アカーリ」、第28話 "Carbon Creek" 「スプートニクの飛んだ夜に」、第30話 "Dead Stop" 「謎の自律浮遊基地」、第33話 "The Seventh" 「封印された記憶」で言及されています。船が登場するのは初めて ※4: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 ※5: Skalaar (ジョーダン・ランド Jordan Lund TNG第101話 "Redemption, Part II" 「クリンゴン帝国の危機(後編)」のカルグ (Kulge)、DS9第14話 "The Storyteller" 「混迷の惑星“ベイジョー”」のウーバン (Woban) 役) テラライト人が TNG 以降で登場するのは初めて。メーキャップには 3時間半かかったそうです。なお TOS のテラライト人は基本的に 3本指でしたが、今回は地球人と同じような手になっています。声:長克巳 ※6: 原語では「テラライト鉱山組合 (Tellarite Mining Consortium) のスカラー船長だ」。「仕切っている」は言い過ぎかも… ※7: Ren-gham ※8: Rykos shoreline |
本編
コンソールで警告音が鳴っている。 サトウ:「Eデッキで武器の使用を感知。右舷エアロックです。」 船長席のリード。「保安チームを派遣。ブリッジから船長。」 船が揺れた。 メイウェザー:「テラライト船が、強引に船から離れようとしています。」 リード:「緊急クランプ作動。」 だがテラライト船は離れてしまった。エンタープライズのナセルを攻撃する。 メイウェザー:「…ワープします。」 リード:「追いかけろ。」 「…右舷ナセルにダメージ。追跡できません。」 「副司令官たちを呼び戻せ。」 惑星から帰還する、もう一隻のシャトルポッド。 除菌室にタッカーの通信が流れる。『船長を探知できません。何か細工してるんでしょう。』 トゥポル:「…ワープエンジンが使えるのは?」 酷暑地用の服だ。 ブリッジのタッカー。「一時間後です。」 痛みに肩を回す。 トゥポル:『ブリッジに向かいます。』 「了解。」 船長席へ向かうタッカー。 同じく除菌室にいるフロックス。「しばらくここを出られそうにありません。お互い厄介な細菌を連れ込んでしまったようです。」 トゥポル:「感染するんですか。」 「まだ検査中ですが、念のため汚染除去室へ。」 服を脱ぎ始める 2人。 テラライト船。 光を発する線の奥で、アーチャーが目を覚ました。 前を見ると、スカラーが操縦している。 アーチャー:「目的は? …お前に聞いてるんだ。」 光に触れると、フォースフィールドが張られていた。 スカラー:「そのエミッターには近づかない方がいい。最新のテクノロジーだ。俺が先月装備した。」 「この船でエンタープライズと競り合えるとは思えん。」 「それについちゃもう手を打ってある。二度とあんたの船に、会うことはない。」 「…どこへ連れて行く気だ。」 答えないスカラー。 アーチャー:「部下は必ず私を見つけるぞ。…今戻せば、今回のことは忘れてやろう。」 銃を向けるスカラー。「目的地まで黙って行くか、意識を失って行くか。あんたどっちがいい。」 座るアーチャー。 スキャナーを使うフロックス。「フーン、思った以上に強い菌のようです。…シータ放射線※9は通用しません。」 トゥポル:「照射量を増やしたらどうです?」 下着姿だ。 「細胞に致命的なダメージを被ります。」 「何かほかに打つ手は?」 「除菌ジェル『E』なら駆除できるかもしれません。」 ライトを止め、ジェルを取り出すフロックス。「ですが、効果がわかるまでに数時間かかります。」 「そんなにここにはいられません。」 「仕方がない、フーン。この菌は感染性のものです。」 フロックスは中に戻る。「人間は、私達よりもろいですからねえ。…タッカー少佐は有能です、ここから指示を出せばいい。」 2人の間にカーテンを張るフロックス。服の下には十字の模様があった。「…幸い、ほかの調査チームは感染していませんでした。」 体中に除菌ジェルを塗り始めるトゥポル。 フロックス:「私達は恐らく、第2峡谷を調査中に感染したんでしょう。」 笑う。「あそこに生息していた動物が、感染源だと思います。途中で見つけた、あの有袋動物が怪しい。」 トゥポル:「放っておけと言ったでしょ。」 「彼らの唾液には血を止める作用がある。サンプルを採らずにはいられませんでした。……背中を御願いします。」 カーテンを開けるトゥポル。フロックスの背中は、脊椎の形が浮き出ている。 トゥポル:「…カーテンなんてあったんですね。」 フロックス:「人前で服を脱ぐのに抵抗を覚える者もいます。」 「あなたは医者でしょ。」 「デノビュラの男というのは、女性よりずっと…慎み深い。だから…困ることが多々あります。」 トゥポルは、フロックスの背中をなで回す。 フロックス:「宇宙艦隊の身体検査など二度と受けたくありませんよ。」 表情を変えていたトゥポルは、我に返る。「…私も御願いします。」 後ろを向き、シャツをまくるトゥポル。 フロックスは見ないようにしてジェルを塗る。 報告するリード。「…ワープサインを、感知しました。」 タッカー:「位置はわかるか。」 「方位 071、マーク 32。微弱ですが、テラライト船と一致します。」 「コースセット、ワープ最大。」 ワープに入るエンタープライズ。 テラライト船に通信が流れる。『この回線は保護されている。』 スカラー:「ゴロス艦長※10と連絡を取りたい。大事な話があると、伝えてくれ。」 『わかった、今つなぐ。待ってろ。』 『ゴロスだ、用件を言え。』 スカラー:「逃亡者を捕まえた。」 『そこにいるのか。』 「…ここから 5メートル先にな。あんたのために生け捕りにした。約束通り、クロノスへ連れて行く。」 『いや。合流位置の座標を送る。2日後にそこで会おう。』 「報酬は全額そろえてあるだろうな。」 『提示金額に変わりはない!』 「あんたとの仕事は楽しいよ。」 通信を終えるスカラー。「いつもながら。」 アーチャー:「いくら手に入る。…クロノスは、クリンゴンの母星だ。…私の脱獄に関係があるようだな。……私の容疑を知ってるのか?※11」 「いいや? 知るつもりもない。」 |
※9: theta radiation 映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」でも言及 ※10: Captain Goroth (Michael Garvey) 声:宝亀克寿、TNG イヴェック、ENT クリタサン船長など ※11: ENT第45話 "Judgment" 「反逆の法廷」より |
ワープを解除するエンタープライズ。 リード:「ワープサイン捕捉維持。Gタイプの恒星※12軌道上です。」 タッカー:「戦術警報。」 エンタープライズの前には、小型の装置が浮いていた。 リード:「何らかのビーコンのようです。テラライト船と同一のワープサインを発しています。」 タッカー:「おとりだ! センサーには。」 首を振るリード。 タッカー:「また振り出しか。」 リード:「装置からの干渉波がひどい。スキャンが効きません。」 「吹っ飛ばせ。」 「はい、喜んで。」 フェイズ砲でビーコンを破壊する。 皿に食べ物を入れるスカラー。 アーチャー:「クリンゴンからいくら受け取るか知らんが、艦隊が…その倍を払う。」 スカラー:「犯罪者と取引する気はない。」 「犯罪者じゃない。」 「クリンゴンの法では犯罪者だ。」 「私は、避難民が乗った船を助けただけだ。」 「はあ、そりゃまた御立派なこった。だがもう二度としない方がいい。」 笑い、食べ始めるスカラー。 「奴らのもとへ行けば殺される。…終身刑を言い渡された。ルラ・ペンテでな? 聞いたことは。」 「ルラ・ペンテはよく知ってる。」 「判事は二度も終身刑を言い渡すほど、甘くはない。…次は間違いなく死刑だ。」 皿を置くスカラー。「…俺には関係ない。」 アーチャー:「無実の男を、刑場に送る気か?」 「何十人もの逃亡犯を捕まえたが、みんな口をそろえて自分は無実だと言っていた!」 「相手がクリンゴンなら、それは事実だ。…私を解放してくれ。」 「ゴロスはあんたがここにいることを知ってる。あんたを逃がせば、俺たち 2人ともただじゃ済まない。…クリンゴンの怖さはよく知ってるんだ。」 「……苦労が多いだろうな? 連中のために働くってのも。」 「俺は自分のために働いてるまでだ。」 「…私にはそう見えんが?」 「…奴らが俺にいくら払うか知れば納得する。…あんたは悪い奴じゃない。…だが運が悪かったと…あきらめてくれ。」 手を組み、目をつぶっているトゥポル。うっすら汗をかいている。 スキャナーが近づけられる。「…瞑想したいんです。邪魔しないで。」 フロックス:「微熱があります。ドーパミンのレベルも上がっている。大脳辺縁系が冒されているようだ。」 「こんな状況ではとても瞑想などできません。」 「しばらく我慢して下さい。」 立ち上がるトゥポル。「船長が拉致されたのよ? 安否もわからない。…ブリッジに行かないと。」 外へ向かう。 フロックス:「副司令官!」 ドアをロックした。「どこへ?」 「…開けて。」 「菌が広がります。」 「…自分の部屋にいるわ。換気装置を密閉しておけば、感染は…最小限に防げるはずです。」 「お部屋は『C』デッキです。着くまでに船の半分が汚染される。」 「ドアを開けなさい。……これは、上官の命令です。」 「従うことはできません。」 「艦隊の裁判にかけるわよ。」 「それはありえない…」 「開けなさい! ……謝るわ。自分の感情を制御できなくなってる。」 「…数時間以内にはジェルの効力がわかる。それまで、軽い鎮静剤を…打ちましょう。」 話すスカラー。「クリンゴンは 9,000ダーセク※13払うと言ってる。テズラ※14を取り戻しても余るほどだ。」 通信相手のテラライト人※15。『夢を見るのもいい加減にしろ。』 スカラー:「もう逃亡した人間を拘束してあるんだ。…報酬は約束されている。」 テラライト人:『前にも同じことを言っていた。』 「2日後には、俺の言うことが本当だとわかる。」 『本当に金が手に入ったとしても、俺の気持ちが変わることはない。』 「一生プラズマインジェクターを磨いて過ごすつもりか。…俺はお前にチャンスを…」 通信を切られるスカラー。「ああ…。」 アーチャー:「……テズラ?」 「言っとくが人じゃない。…貨物船だ。…これより遥かに高性能のな。」 「私を売った金で買い戻すのか。」 「命が惜しきゃ黙ってろ。あんたが死んでようと報酬は、変わらない。…船が近づいてる。ぬか喜びはやめとけよ? あんたの宇宙船じゃない。」 テラライト船の後方から、別の異星人船が近づく。 通信が入った。異星人が映る。『獲物をこっちへ渡せ。』 スカラー:「今度も一歩出遅れたようだな、カゴ※16。」 カゴ:『ワープを解除し、囚人を渡せ。』 「従うと思うか。」 『攻撃してもいいのか?』 「ゴロスから俺の居場所を聞いたんだな?」 『2ヶ月もグズグズしてるからだ。ゴロスはお前じゃそいつを捕獲できないと判断し、俺に連絡をよこした。お前は役立たずだ。』 「俺が役立たずなら、アーチャーはお前の船に乗ってるはずだ。」 『その人間を、渡せ。』 「断れば、シャトルを撃ち落とすか? アーチャーも煙になっちゃあ、捕まえられまい。」 通信を終えるスカラー。アーチャーに言う。「何かにつかまってろ。」 揺れた。 応戦するテラライト船。 火花が散る。 アーチャー:「手伝おう、出してくれ。」 スカラー:「そこまでバカじゃない。」 「…攻撃をしながら修理するのは無理だ! …私に船の操縦をさせろ!」 銃を見せるスカラー。「バカな真似をすれば撃つぞ。」 フォースフィールド・エミッターを解除した。 席につくアーチャー。 スカラー:「これがワープフィールド・レギュレーター。インパルススロットル。」 アーチャー:「航行センサーは。」 「ああ、これだ。」 星図を見るアーチャー。「Lクラスの惑星がある。ワープを解除。」 スカラー:「何?!」 「心配ない。惑星の大気圏に入れば簡単には追ってこられんよ。」 ワープを抜けるテラライト船。 惑星の大気圏へ向かう。 スカラー:「こんなところで戦えるような船じゃない。…船尾砲消失。」 アーチャー:「船首砲はどうだ。」 「まだ生きてる。」 構造図を指すアーチャー。「これは?」 スカラー:「亜空間ビーコンだ。偽のワープサインを発信できる。あんたの宇宙船にも送っておいた。」 「発射準備をしろ。」 「何の役に立つ。」 窓の外には濃い大気しか見えない。 アーチャー:「奴はセンサーで飛んでる。ビーコンを発射して狙いを逸らすんだ。」 スカラー:「…いいぞ。」 「発射!」 2機の亜空間ビーコンを発射するテラライト船。 カゴの船は、ビーコンの方へ向かっていった。 後ろから追いかけるテラライト船。攻撃する。 アーチャー:「エンジンに命中。奴は緊急着陸するしかない。」 スカラー:「こっちもダメージを受けた。リアクターに亀裂※17、ワープドライブ停止。ゴロスの船と合流できない。」 「…残念だな。」 「リアクターは生命維持装置ともつながってる。」 「じゃ早く直せよ。」 「外側からしか修理できない。」 「…地上に降りよう。」 「地上にはカゴもいるんだぞ。」 「1,000キロも離れれば平気だ。」 ワープ航行中のエンタープライズ。 寝ていたフロックスは、首もとを触られている。「何です。」 トゥポル:「ほかにも治療法があるわ。」 「ジェルが効くかもしれない。」 「効かないかもしれないでしょう?」 身体を起こすフロックス。「…私にはお構いなく。どうも。少し、鎮静剤を。」 近づくトゥポル。「…そんな物が欲しいんじゃないの。」 フロックス:「副司令官、あなたらしくない。」 「トゥポルって呼んで?」 「ああ…。」 「私そんなに魅力ない?」 「ありますけど、それとこれとは別だ。」 「デノビュラ人の性行為には詳しいの。…あなたも嫌いじゃないでしょ?※18」 「私達は仕事仲間です。規則違反はしたくない。」 「艦隊が決めた規則よ。…人間どものモラルに縛られる必要はないわ。」 「一体どうしたんですか、やめて下さい。」 上に手を伸ばすトゥポル。「自分が何を拒否してるかまるでわかってないようね。」 調べるフロックス。「エンドルフィンとホルモンの数値が異常に高くなっています。」 トゥポル:「私は病気じゃないわ。」 「正常な数値とは言えない。」 「この時期のヴァルカン人には正常なの。」 「…心当たりが?」 「…これは他人に言うようなことじゃない。」 「…今回はポリシーを改めてはいかがです? 他言はしないと約束します。」 「……ポン・ファー※19がきたの。生殖の周期。」 「そういう時期なのですか?」 首を振るトゥポル。「予定外よ。」 フロックス:「感染によって早まったんでしょう。」 「原因が何にせよ…性行為をしないと、命を落とすことになる。」 |
※12: 「惑星」と誤訳 ※13: darseks TNG第173話 "Firstborn" 「クリンゴン戦士への道」より ※14: Tezra ※15: 名前は Gaavrin (Ed O'Ross) ですが、言及されていません。声:天田益男 ※16: Kago (ロバート・オライリー Robert O'Reilly TNG第45話 "Manhunt" 「魅せられて」のスカーフェイス (Scarface)、第81話 "Reunion" 「勇者の名の下に」などのクリンゴン人ガウロン (Gowron)、DS9第165話 "Badda-Bing, Badda-Bang" 「アドリブ作戦で行こう!」の集計人 (Countman) 役。ゲーム "A Klingon Challenge"、"Klingon"、"Elite Force II" でも声の出演) クレジットでは Kago-Darr ですが、セリフではカゴのみ。カメオ出演。声:中博史、VOY ドクターなど ※17: "leak" がこう訳されていますが、通常亀裂 (breach) は即爆発を意味するので、「漏れ」が適当かも ※18: 原語では「あなたたちのつながりには、限度がないことを知ってるわ」。デノビュラ人が多夫多妻制なことを意味しています ※19: Pon farr TOS第34話 "Amok Time" 「バルカン星人の秘密」など |
地上のテラライト船。 外で作業をしているアーチャー。「さっきの…テズラは、そんなに大事なのか。」 スカラー:「当然だろ。カゴは、金を手に入れても…どうせオリオンの商売女※20にばらまくだけだろ。だが、俺はもっと有効に使う。」 「今あんたがやってる商売に…貨物船は、必要ないだろ。」 「一生逃亡犯を追っかけてると思うか。金が手に入れば、今度こそテズラを取り戻せるんだ。また船長に戻れる。」 「私の操舵手も、以前貨物船に乗っていた。」 機具を使うアーチャー。 「テズラはそこらの貨物船とは違う。クラス最初の船で、それまでのどの船よりも速い。※21…100万トンの船体を抱えてワープ4 ポイント 5 で飛べる。あんたの宇宙船だってかなわない。俺がエンジンを換えたんだ。」 「その船を奪われたいきさつは?」 「弟と船で、ファイヤーソルト※22を運んでた時のことだ。…近道をすれば休みが取れると思い、端っこなら構わんだろうとクリンゴンの領域を通っちまった。何があろうとクリンゴンの領域に踏み込むもんじゃないということをすぐに学んだよ。生きて出られただけラッキーだが、代償は大きかった。」 「…テズラか。」 「貨物もだ。…弟は今も腹を立ててる。俺はテズラを取り戻すまであきらめないぞ。何をしてる!」 アーチャーを引き離すスカラー。銃を向ける。 アーチャー:「本気でエンジンなんか直したりするか! …私はまだ死にたくない。」 手を下ろすスカラー。「何と言おうが、あんたをゴロスに渡す。」 アーチャーを連れて行く。 身体を起こすトゥポル。息づかいが荒い。 パッドを使って作業しているフロックス。「ご気分は?」 トゥポル:「うーん……欲しいの。」 「…食事ならすぐに来ます。」 「食事の話なんかしてない…。」 「…血清も、もうすぐできます。きっと症状を緩和してくれるでしょう。」 「……もっと簡単な治療法があるわ。」 「私は医者らしい治療を試みたい。」 「……治療できるのに…それをしないのは倫理に反しない…?」 「あなたの生殖サイクルは人工的に誘発されたものだ。応えても助けになりません。」 「試す価値はある。」 「副司令官。」 「…怖がらないで。大丈夫だから。」 フロックスの道具が落ちてしまった。「ああ、血清に触らないで! もう少し鎮静剤を…」 トゥポル:「ハイポスプレーは嫌!」 呼び出しが入る。 フロックス:「ああ…誰か出なければ。ああ…船長の情報かもしれません。」 何とか離れ、通信機に触れる。「フロックスです。」 タッカー:『腹が減ったろ? 夕食を持ってきた。』 「……グッドタイミングです、少佐。」 トゥポルに言う。「ここにいて下さい。」 外へ向かった。 窓を開けるタッカー。「2人とも気分は?」 フロックス:「…上々です。」 下の受け口から、容器を取り出す。「アーチャー船長の居場所は?」 「ワープサインを感知した。今度は本物だといいが。それで、よかったかな?」 「ええ、どうも。」 トゥポルが出てきた。「食べ物?」 タッカー:「ええ。…シェフに言って、特別に…」 トゥポルは手づかみで食べ出した。 タッカー:「……大丈夫か。」 フロックス:「…微熱が、あるだけで心配いりません。」 タッカーを見つめているトゥポルを、奥に戻した。 リードの通信が入る。『ブリッジからタッカー少佐。』 タッカー:「どうした。」 『座標に接近中です。』 「すぐ行く。…何かあったら呼んでくれ?」 惑星軌道上のエンタープライズ。 ブリッジに戻るタッカー。「報告。」 リード:「超高層大気中に、ワープサインが 2つ。ビーコンを感知しました。※23地表には船が 1隻。エンジンにダメージを受けてます。テラライトじゃない。」 「人数は。」 「一人。」 「…回線をオンに。」 カゴが映し出される。「何だ。」 タッカー:「邪魔してすまん、テラライト船を探してるんだが…何か、心当たりは?」 『クリンゴンにいくらもらった。』 「クリンゴン?」 リードと顔を見合わせるタッカー。「あんた、何か勘違いしてるようだが、船長を探してるんだ。」 『船長か。そいつの首には賞金が懸かってる。今頃クリンゴンの領域へ向かってる頃だ。ああ…。』 カゴは通信を切った。 「…トラヴィス。クリンゴンの領域は。」 メイウェザー:「…6光年もありません。」 「報酬目当てに船長を拉致したなら…引き渡す前に捕まえないと。コースセット。ワープに戻れ。」 「了解。」 多数の船が行き交う、宇宙ステーション※24に近づくテラライト船。 スカラーは弟のテラライト人を船に入れた。 弟:「ここで何をしてる。」 スカラー:「力を借りたい。」 「…なぜ連れてきた!」 「好きでこんなところに来たと思うか。…反物質インジェクターが欲しい。」 「…そんな物買える金など持ってないだろ。」 「こいつが誰かわかるか。ルラ・ペンテから逃げ出しおおせたたった一人の囚人だ。こいつのためならクリンゴンは大金を出す。だろ? …答えろよ!」 無視するアーチャー。 弟:「インジェクターを渡したら、もうここへは来ないと約束するか?」 スカラー:「…来るに決まってるだろう。お前は俺の副長だ。」 「そりゃ昔の話だ! 今はここで働いてる。」 「プラズマインジェクターを磨いてか。子供に恥ずかしくないのかよ。」 「囚人を追っかけてるよりマシだ。」 「好きこのんで奴みたいなクズを船に乗せてると思うか。」 「…行くぞ? 仕事がある。」 「頼む、もう俺に背中を向けるな。…今度こそテズラを取り戻せる。」 「…見たら取り戻す気などなくなるさ。」 「どうして。」 「…クリンゴンにバラバラにされた。…パワーリレーからコンジットまでな?」 「エンジンは。」 「残ってない。……インジェクターはくれてやる。受け取ったら、すぐにここから消えてくれ。」 出ていく弟。 スカラーはドアを閉めた。 アーチャー:「どうするつもりだ。」 スカラー:「インジェクターを受け取って装備する。」 「それで? ……私をクリンゴンに渡すんだろ? そして…私はあの気味悪い剣で腹を裂かれる。…あんたは 9,000ダーセクを手に入れるが……もうテズラは取り戻せない。」 「何が言いたい。」 「クリンゴンは、あんたの命の船を奪い…弟とあんたの仲を引き裂いた。その見返りが、たった 9,000ダーセク。…私にはとてもフェアな取引とは思えん。」 「ほかにどんな選択がある。言ったろう、あんたを逃がせば殺される。」 「そうは限らん。…ゴロスの船に乗ったことはあるか。」 「2度。なぜだ。」 作業をしているフロックス。 トゥポルはヴァルカン語を唱えている。壁に身体をもたれかかせていた。 フロックス:「いま何と?」 トゥポル:「…ここから出して!」 「それはできません。」 「暑い! 耐えられない…。」 床に身体を倒すトゥポル。 「温度を下げると血清が凍ってしまうんです。」 「血清なんかいらない! ドアを開けて!」 「あと数分もすればずっと気分が良くなります。」 「開けて!」 「ちょっと失礼?」 ハイポスプレーを打とうとするが、トゥポルは威嚇して近寄らせない。 フロックス:「生体化学の不均衡が悪化してます。いま治療しなければ大脳の辺縁系へ取り返しのつかないダメージを負う! 死にますよ!」 トゥポル:「そばに来ないで。」 「一度だけ。すぐ済みます。」 それでも近づかせないトゥポル。 フロックス:「…わかりました。」 開けた。「行って下さい。42864 でドアが開く。…患者の意思に反して治療を進めることはできません。42864 です。」 警戒しながら外へ向かうトゥポル。フロックスも続く。 入力しているトゥポルへ近づいたが、突き飛ばされた。 壁に身体をぶつけ、倒れるフロックス。 ロックは解除されない。トゥポルが何度押しても同じだ。 意識を失ったままのフロックス。 トゥポルは、パネルの枠に手をかけた。力任せに壊す。 ドアを無理矢理開ける。 フロックスは目を覚ますが、トゥポルは廊下を走り去った。 身体を起こすフロックス。「フロックスからブリッジ。」 タッカー:『タッカーだ。』 「『D』デッキを、隔離して下さい。」 |
※20: Orion slave girl TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」など ※21: 吹き替えでは「同じ型の中じゃ、いやどの船よりも速い」。"first of her class" と言っています ※22: fire salt ※23: 「ビーコンも感知しました」と訳されていますが、2つのサインこそビーコンのものです ※24: DS9第172話 "Tacking into the Wind" 「嵐に立つ者たち」で登場した、カーデシア修理施設の使い回し |
環境服を着たリード。「まだこのセクションにいる。凶暴になってるらしい。注意を怠るな。」 保安部員:「了解。」 独りで進むリード。 後ろにトゥポルがいた。「マルコム。」 戻ってくるリード。 トゥポル:「……私を助けて。」 リード:「心配したんですよ、副司令官。医療室へ戻りましょう。」 身体をすり寄せるトゥポル。「嫌よ、戻りたくない。治療してくれないもの。…最後はいつ?」 リード:「何がです。」 「生殖行為よ。…視線を感じてたわ。……ブリッジで。」 「除菌室で話しましょう。」 「…私の部屋の方が、ずっといい。」 トゥポルを振り払うリード。「医療室へ戻れとのドクター命令です。」 フェイズ銃に手をかける。 トゥポルはリードを突き飛ばした。その隙に逃げていく。 追うリード。 廊下を逃げるトゥポルだが、前に保安部員が立ちふさがった。 リードを含め、全ての方向を囲まれる。 リード:「こちらへ、副司令官。」 ヴァルカン語で叫びながら近づいてくるトゥポルを、リードは撃った。 近づき、ため息をつくリード。 巨大な船とドッキングするテラライト船。 アーチャーは手錠をつけられている。 スカラーはドアを開けた。「ようこそ。」 いきなりクリンゴン人に突き飛ばされた。 アーチャーを調べるクリンゴン人。うなずいた。 クリンゴン人※25:「帝国は決して敵を許しはしない。タカー!」 スカラー:「待てよ、報酬は。」 ケースを投げ渡すクリンゴン人。「6,000ダーセク入ってる。」 スカラー:「9,000 の約束だ。」 「そうか。」 アーチャー:「…血に染まった金だ、好きに使え!」 連れて行かれる。 呆然とするスカラー。 クリンゴン船はテラライト船を残し、ワープで去った。 サトウは反応に気づいた。「呼びかけています。…テラライト船です。」 タッカー:「何? …つなげ。」 クリンゴン船のアーチャー。 手錠から音がした。 口でスイッチを押し、取り外すアーチャー。手錠の中に隠されていた装置を取りだし、監獄のドアに取り付ける。 ロックが解除された。警報が鳴る。 クリンゴン人が走ってきた。手錠で殴るアーチャー。 取っ組み合いになり、首を絞められる。だが手錠で殴り倒した。 クリンゴン人が落とした銃を手にする。 報告するリード。「探知。方位 226、マーク 71。」 タッカー:「コースセット。戦術警報。」 廊下を歩くアーチャー。追っ手を撃ち倒していく。 ハッチが見えた。コンソールを操作するが、受け付けられない。 クリンゴン人が撃ってきた。隠れ、交互に撃ち合う。 ゴロス:「どこへ逃げられると思ってる。50光年以内に星は一つもない。」 アーチャーはハッチを撃ち、開けた。 中へ飛び込み、ハッチを閉める。 ワープ中のクリンゴン船から打ち出される脱出ポッド※26。すぐに通常速度になる。 ゴロス:「遠くへは行かん、ワープを解除。」 クリンゴン人:「武器の用意は。」 「いらん。生け捕りにする。」 エンタープライズ。 メイウェザー:「いました! 80万キロ先です。」 タッカー:「クリンゴンは。」 リード:「接近中です。」 ポッドに近づくクリンゴン船。トラクタービームを発射した。 エンタープライズはクリンゴン船を攻撃する。解除されるビーム。 リード:「武器を装填。」 揺れる船。 タッカー:「撃ち返せ。…グラップラーを。」 メイウェザー:「これじゃ無理です。」 「マルコム!」 リード:「敵の兵器ポートは、厚いシールドで覆われています。」 互いに攻撃する 2隻。 操縦するメイウェザー。 攻撃しながら、脱出ポッドへ向けてグラップラーを撃ち込んだ。 メイウェザー:「やった!」 タッカー:「回収。」 離れていくエンタープライズ。ポッドは引き込まれていく。 リード:「…敵兵器ダウン。」 タッカー:「ポッドは。」 メイウェザー:「…第2出発ベイに回収。」 「直ちに脱出。」 除菌室で眠っているトゥポル。 ライトが消え、服を着たフロックスが入る。ハイポスプレーを打った。 目を覚ましたトゥポルに話すフロックス。「もう大丈夫。細菌は駆除されましたよ? 生殖サイクルも終わりました。」 起きあがるトゥポル。「何か不適当なことを?」 フロックス:「…ずいぶん手を焼かされました。」 「……したの?」 「デノビュラの男はそういう話を好みません。」 「…ほかのクルーには、言わないでもらえますか?」 「患者の秘密は、厳守します。」 アーチャーはブリッジに入った。 タッカー:「ご無事で。」 アーチャー:「ああ。…クリンゴンの状態は。」 「左舷ナセルにダメージ。クロノスに戻りました。」 「…トゥポルは。」 「ああ…ドクターと除菌室にいます。」 「…何が。」 リード:「…いろいろ、ありまして。」 サトウ:「呼びかけています。」 スカラー:『無事に戻れたようだな。』 アーチャー:「クリンゴンはあんたを疑ってそうか?」 『その兆候はない。』 「フン。…報酬は何に使う気だ。」 『決めてない。中古の貨物船でも買うか。』 「私も探そう。」 『気をつけろよ、船長? クリンゴンは報酬を倍にするだろう。』 「…あんたはもう釣られないだろ?」 『約束はできん。』 通信を終えるスクラー。 アーチャーは、笑った。 |
※25: クリンゴン人戦士 Klingon Warrior (Louis Ortiz) 声:佐々木誠二 ※26: ENT第14話 "Sleeping Dogs" 「名誉に生きる者」で、トゥポルがクリンゴン船には脱出ポッドはないと言っています。もっとも DS9第167話 "Penumbra" 「彷徨う心」でも使われていましたが… |
感想
クリンゴンは脱獄を許していなかった、というお話。以前のストーリーからの引き継ぎ、俳優による監督、名作が多いシーズン・フィナーレの一話前…と要素は揃っているのですが、平凡な話に終わっています。通好みのテラライト人が登場したのはよかったんですけどねぇ…。結局「いい人」で終わっているのは、アンドリア人同様、後に連邦の一員となっていることにつなげているのかも。初めて脚本に名を連ねている Hans Tobeason は、「シークエスト」などで脚本や製作を担当しました。 サブストーリーはお決まりのポン・ファー、想像通りの展開でした。男性も女性も 7年サイクルなんでしょうか…。 |
第50話 "First Flight" 「運命の飛行」 | 第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」 |