エンタープライズ エピソードガイド
第30話「謎の自律浮遊基地」
Dead Stop
イントロダクション
※1※2エンタープライズのそばを飛行する点検ポッド。 『航星日誌、補足。ロミュランの機雷原に突っ込んだ事件から、既に 4日。不眠不休で修理にあたっているが、なかなか思うように進まない。』 ポッドは、大きく被害を受けた左舷に近づく。 見上げるアーチャー。「バラバラにならなかったのが不思議だ。」 タッカー:「爆発がちょっとずれてたらどうなってたか。完全にふさぐまで、左舷※3船首の装甲は不能です。」 「…見通しは。」 「トリタニウム※4合金が手に入るとして……3、4ヶ月。…こんな傷があっちゃせいぜい出しても…ワープ2 か、少し越えるくらい。」 「…木星ステーションまでは…遠すぎて修理に行けないわけだ。※5……通信アレイの具合は?」 「亜空間アンテナが壊れてるので、短距離通信しか使えません。」 「…これまで数々の救難信号に応えてきた。そろそろ、こっちが助けてもらう番だ。」 「本気ですか。」 「……アーチャーよりサトウ少尉。」 サトウ:『どうぞ。』 「信号を発信してくれ。一般の救難信号だ。内容は…簡単な修理の要請のみで、詳細はいい。」 『了解しました。』 「以上。」 |
※1: このエピソードは、VOY トレス役のロクサン・ドースン監督作品です。ENT では第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」以来、3話目となります ※2: また、2003年度エミー賞の特殊映像効果賞にノミネートされました ※3: 「右舷」と誤訳。明らかに左舷なわけですが… ※4: tritanium ENT第3話 "Fight or Flight" 「死のファースト・コンタクト」など ※5: 原語では「つまり木星ステーションまで 10年の距離にいるわけだ」 |
本編
リードは叫んだ。「おい殺す気か! ああ…」 フロックス:「グッと押して、大尉。あと 2秒。…はい OK。」 リードの脚を診ている。 「ああ…医者のくせに患者にこんな苦痛を与えていいんですか。」 「それが回復につながるなら痛みも我慢して頂きます。…前向きな姿勢は治療の回復には欠かせません。不平を漏らすほど、復帰が遅れるってことをお忘れなく。」 「…それで、いつ任務に戻れるんです。」 「1、2週間は無理でしょうなあ。」 「そんなに!」 「大尉の態度次第です。あと何匹かレグラスのアカムシ※6治療を受けて頂ければ早くなる…」 「…あんな不気味なもの二度と御免だ。一匹抱えたままなのに。」 「心配しなくても、そのうち自分で出てきますよ?」 ため息をつくリード。 作戦室に、高い音が響いた。※7ポートスがアーチャーに近づく。 アーチャー:「聞いただろ?」 また鳴る。「参ったなあ。トリップが直したはずなのに。」 呼び出しに応えるアーチャー。「どうぞ。」 トゥポル:『船長、救難信号に応答がありました。』 ブリッジへ向かうアーチャー。また鳴った音に、ポートスが反応する。 報告するトゥポル。「テラライトの貨物船です。」 アーチャー:「つないでくれ。…こちら、宇宙船エンタープライズのアーチャー船長。応答ありがとう。」 テラライト人:『どうしました。』 かなり音声が乱れている。 「…船の修理でお力をお借りしたいんです。どこかで、合流できれば…詳しい事情を。」 『そんな余裕はありませんので。シグナルが…』 途中で切れた。 サトウ:「遠すぎて、キャッチできません。」 アーチャー:「もう一度、お願いします。」 テラライト人:『…の位置を送信。修理基地…』 また途切れた。 「……『修理基地』と聞こえなかったか。」 トゥポル:「座標データを受信しました。」 「テラライト人というのは。」 「非常に愛想がいいとは言えませんが、悪賢い種でもありません。…ワープ2 で 3日半あれば、現地に到着できます。」 「……行ってみよう。」 メイウェザー:「了解。」 宇宙空間に浮かぶ施設へ近づくエンタープライズ。 スクリーンにも映っている。 アーチャー:「こちら、エンタープライズ※8のアーチャー船長。修理がはかどらないのです。助けて頂けると聞いて、やってきました。」 応答はない。首を振るサトウ。 アーチャー:「こちらとしてはどんな形の援助でも助かります。応答願います。」 サトウ:「……駄目です。」 「生命反応は。」 トゥポル:「…全く感知できません。」 サトウ:「見捨てられた基地じゃ。」 タッカー:「降りてみたらどうですか? 必要な材料を調達できるかも。」 アーチャー:「エンタープライズとはドッキングの形態が違うようだなあ。うーん。基地内の状況は。」 トゥポル:「…液体ヘリウムを感知しました。…気温は、マイナス270度です。」 あきらめるタッカー。 その時警告音が鳴り、ブリッジを明るい光が満たした。 トゥポル:「我々をスキャンしたようです。」 メイウェザー:「船長。」 基地の片側が開き、拡大していく。 円筒状の構造だ。 タッカー:「エンタープライズに合うように、変えているのかなあ。」 トゥポル:「大気も液体ヘリウムから、常温の酸素と窒素に変わりました。」 サトウ:「依然、応答ありません。」 前に見える基地。 「歓迎されているのは、間違いないでしょう。」 アーチャー:「歓迎の意をはっきり表して欲しいねえ。」 タッカー:「…行くっきゃないでしょ。」 「うん。ドッキングだ。」 中に入るエンタープライズ。基地からエアロックが伸びてくる。 廊下を歩くアーチャー、タッカー、トゥポル。エアロックを通じ、基地に入った。 白い構造が続いている。中に入ると、進む方向を示すように通路のライトが明滅し始めた。 部屋に通される。 3人が中に入ると、ドアも自動的に閉まった。 中央の機械の上に、エンタープライズの映像が浮かんでいる。 タッカー:「船の損傷個所が特定されている。それも全ての。…驚いたなあ。あの傷は一年前にできたものですよ。点検ポッドをぶつけたの覚えてるでしょ。※9」 アーチャー:「ペンキを塗っておけと言ったはずだが?」 「やろうと思ってたとこです。」 並んでいるモニターには、クルーの写真も映っている。 アーチャー:「我々の言語だ。」 スキャナーを使うトゥポル。 アーチャー:「スキャンされたのは船体だけじゃない。」 人の様子が表示されている。「これはマルコムだろ。左脚を怪我してる。」 トゥポル:「…リード大尉の脚を修理する技術も揃っているかもしれませんね?」 大きなパネルが出てきた。コンピューターの音声※10が流れる。『船の分析が終了しました。代わりに提供可能な資源・装置等を選択して下さい。』 アーチャー:「…君は誰だ。」 『その質問は認知できません。』 「直接話せる者はいないのか。」 『その質問は認知できません。』 タッカー:「中に人は隠れてないでしょう。」 トゥポル:「…全自動化されているのでは?」 アーチャー:「…我々のシステム全て修理できるのか?」 コンピューター:『代わりに提供可能な資源・装置等を選択して下さい。』 表示を読み上げるアーチャー。「ワープコイル 3本か、デューテリアム噴射機 5台。それにワーププラズマ 200リットルか。」 タッカー:「装置そのものを渡すのは賛成できません。」 「プラズマなら。」 「…代わりが利きます。」 「うん。条件に同意したとして、修理にかかる日数は。」 コンピューター:『修理時間は、地球時間で 34.2時間です。』 タッカー:「木星ステーションで修理したら、3月はかかります。」 トゥポル:「フェアな取引でしょう。」 コンピューター:『代わりに提供可能な資源・装置等を選択して下さい。』 アーチャーは画面上の、ワーププラズマを選択した。 コンピューター:『修理完了後に、今選択した品を納めれば、船は即座に解放されます。なお修理作業中のエリアからは、全員速やかに退避願います。』 アーチャー:「すごいな。」 モニターを見るトゥポル。「…修理プランですね。」 アーチャー:「クルー全員に知らせるよう、ホシに伝えてくれ。」 大きな音が響いた。 基地から何本ものアームが、エンタープライズに伸びていく。 通信が入る。『エンタープライズよりアーチャー船長。』 アーチャー:「何だ。」 『今突然、船体にアームのようなものが伸びてきましたが。』 「いいんだ、トラヴィス。待機を。」 別のドアが開いた。 コンピューター:『誰でもレクリエーション施設を利用することができます。お楽しみ下さい。』 向かう 3人。 |
※6: Regulan blood worms ENT第25話 "Two Days and Two Nights" 「楽園での出来事」など ※7: ENT "Fight or Flight" より ※8: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 ※9: ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」より ※10: クレジットされていませんが、監督でもあるロクサン・ドースン (Roxann Dawson) が演じています。吹き替えでは野沢由香里さん (FC ボーグ・クイーンなど) |
指示された部屋に入る。外の窓にエンタープライズが見えている。 タッカー:「フン。これが『レクリエーション施設』だっていうなら、プラズマ返して欲しいな。」 部屋にはテーブルと椅子が並んでいるだけだ。 そのテーブルが音を発し始めた。 調べたトゥポル。「物質エネルギー変換機。」 タッカー:「…転送装置かも。…にしちゃ小さすぎるか。」 「一種の分子合成装置のようなものでしょう。…プロテイン再配列装置に似ていますが、ずっと進化したものです。冷水。」 テーブルの中央にコップが実体化した。氷まで入っている。 口にするトゥポル。「ターカリアン※11船で似たような装置を見たことがあります。…それも、無生物なら大抵レプリケートできました。」 タッカー:「機関室に一台あったら、いつでも欲しい部品が手に入る。…ほかに、何かできるかなあ。…ナマズのフライ※12、一皿。」 言われたとおりの料理が現れた。ナイフとフォークも載っている。 笑うタッカー。匂ってみる。「匂いは本物だ。」 フォークを使って食べる。 アーチャー:「味は?」 「…いけますよ。」 「130光年内にナマズは存在しないはず。」 トゥポル:「ナマズの遺伝子もレシピも、エンタープライズのコンピューターにあります。我々のデータベースをスキャンしたんでしょう。」 「うーん。一言断って欲しかった。ああ…ほかにどんなデータをスキャンされたかわからんな。」 タッカー:「一口いかがです。」 「いや、私はシェフの料理に満足してる。…ブリッジに戻る。」 出ていくアーチャー。 食べ続けるタッカー。「うん。」 修理が進む船体。 アームの先に一瞬にして廊下の壁が実体化し、はめ込まれていく。ライトが復旧した。 大きな装置からビームが照射されている。リードの脚に向けてだ。 リード:「ほんとにこれで治るんですか?」 フロックス:「その質問は 3度目ですよ?」 「返事がないから聞いてるんです。」 「ご安心を。大尉の細胞は急速に再生されています。…つまり、細胞分裂の促進に伝達酵素を使っている。」 適当に応えるリード。「すごい。」 フロックス:「操作は実に簡単、うーん。船長は、装置を購入すべきですねえ。」 ビームが出終わり、装置は医療室から消えた。 スキャナーで調べるフロックス。「完治してますねえ、傷跡もない。…立ってみて? …痛みは?」 立ったリード。「ない…。」 窓の外のアームを見ているアーチャー。作戦室のドアチャイムが鳴った。 アーチャー:「入れ。」 トゥポル:「現在 Cデッキの修理が進んでいます。…第1出発ベイの修理開始は、22時の予定です。」 「うん。…床のきしみまで消えたよ。…デッキプレートの下にはグレムリンがいると思ってたのに。…架空の生き物さ。イギリスのパイロットは原因不明の故障をそいつのせいにした。」 「一度調べてみましょう。」 「…その必要はない。…トリップは修理に満足してるようか。」 「宇宙艦隊の出来より優れているということです。」 「よかった。ほかには。」 「…意見を言ってよろしいですか?」 「もちろん。」 「お悩みのようですね。」 「…まだまだ修行が足りないな? 気持ちを読まれるとは。…これだけの修理の代償がたった 200リットルのプラズマとは安すぎると思わないか。」 「…富の獲得に価値をおく種族ばかりではありません。純粋に、ほかの種を助けることに意義を感じているのでしょう。」 「それならそれで、せめてメッセージぐらいあっても。『立ち寄ってくれてありがとう』とか。」 「匿名性を好む種かもしれません。」 「うん。何だか怪しいと思わないか。…直感ってものを、君はあまり信じないだろうが。私は信じる方でね。…嫌な予感がする。」 基地のレクリエーション室で話しているサトウ。「ほんとなんだってば!」 笑うメイウェザー。 他の席も、全てクルーで埋まっている。「食べてみろよ。」「ああ、こりゃ美味そうだ。」 リード:「正直言って、ドクターが少し気の毒なほどでした。横で見守るだけで、何もすることができなかったんですからねえ。」 タッカー:「気持ちはわかるな。だってトランステイターアセンブリが、全てたった 15分で入れ替わったんだぜ? うちのクルーにやらせたら、一週間だ。…あんなテクノロジーがあれば、自動修理機能つきの船が造れちまう。機関主任もいらないだろうな。」 笑うリード。 タッカー:「戦術士官もだ。」 リード:「戦術士官抜きの宇宙船? 何が言いたいんです。」 「こんなことができるコンピューターは、必然的に大きくなる。艦隊で最新式のコンピューターは、3階分の高さがある。」 「ええ、その通りです。」 「どこにあるんだ?」 「…どこかでしょ?」 「数時間前にこの基地内をスキャンしてみた。」 パッドを見せるタッカー。「ここがドッキングバース。今いるのがここ。こっちが診断室だ。」 「…じゃあ残るはこの区画しかないでしょうねえ。でも、ここの半分の広さしかない。」 「ここのコンピューターは、一ナノセカンドごとに膨大な計算能力をもってるというのに、その大きさは…驚くほど小さい。」 「フン。」 「是非この目で見てみたい。」 「質問してみればいい。」 「したさ。…『その質問は認知できません』と。」 「フン。フーン…じゃ、話は終わりだ。」 「あきらめるなって。この冷却ダクトは、この基地の心臓部につながっている。」 構造図を指さすタッカー。「通路に進入孔を見かけた。」 「…でも基地内をコソコソ嗅ぎ回るというのは、まずいでしょう。」 「『立ち入り禁止』の立て札はどこにもなかった。…俺たちは探検家だ。」 「ああ…」 「冒険心を忘れたか?」 「ロミュランの機雷原に捨ててきました。」 「ああ…。」 だが、リードはタッカーのパッドを読み始めた。 通路天井のパネルを外すタッカー。「もうちょっとだ。あ…取れた。」 肩車しているリード。「船長にバレたらプラズマコンジットの清掃一月は、固いでしょうね。」 中に入るタッカー。「そら。」 ダクトの中にはプロペラが回っている。 タッカーに引き上げられ、リードも入った。 着替えているメイウェザー。呼び出しに応える。「メイウェザーだ。」 アーチャー:『トラヴィス、アーチャーだ。第1出発ベイまで来てくれないか。』 「…あそこは立ち入り禁止では。」 『いいんだ。ちょっと手伝って欲しい。』 「了解。」 ダクトを這って進むタッカーとリード。 リード:「ほんとにこっちでいいんですか?」 警報が鳴り始めた。先の通路が閉じられる。 慌てて戻ろうとした時、2人の身体は消えた。 張った姿のまま、エンタープライズのブリッジに転送される。 覗き込むトゥポル。 身体が汚れたタッカー。「こんばんは、副司令官。」 発着ベイに入るメイウェザー。「船長? …どこですか? 船長?」 端のパネルは故障したままで、漏電している。 見つめるメイウェザー。 作戦室のアーチャー。「愚かさを自覚してるんだろうな! 船外に投げ出されても仕方ない行為だ。…クルーの手本となる行動を取るべき上級士官がこんな馬鹿をやらかすとは。」 タッカー:「私の思いつきです。」 「大尉は子供じゃない、行動ぐらい決められる。」 リードに近づくアーチャー。「エンタープライズの規律は相当手ぬるいと指摘されたが? 今回のことでよーくわかった。…追って通知があるまで部屋で謹慎だ、以上。」 タッカー:「了解。」 リード:「了解。」 アーチャー:「待て。……ところで? 何か面白いものは見つけたか。」 タッカー:「…面白いものの定義によりますが。」 通信が入る。『トゥポルよりアーチャー船長。』 アーチャー:「どうした。」 『第1出発ベイから緊急の呼び出しです。』 倒れているメイウェザー。身体のあちこちに大きな傷が見える。 調べるフロックス。 駆け寄るアーチャー。「何があった。」 フロックス:「少尉は、死んでます。」 |
※11: Tarkalean DS9第148話 "Time's Orphan" 「時の迷い子」で登場。その他ターカリアン・ティー (Tarkalean tea、DS9第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」など)、ターカリアン・コンドル (Tarkalean condor、DS9第102話 "Nor the Battle to the Strong" 「戦う勇気」)、ターカリアン・タカ (Tarkalean hawk、DS9第110話 "The Begotten" 「幼き命」)、ターカリアン・インフルエンザ (Tarkalean flu、VOY第153話 "Body and Soul" 「セブンになったドクター」) が言及 ※12: タッカーの好物であることは、ENT第5話 "Unexpected" 「予期せぬ侵入者」、第12話 "Silent Enemy" 「言葉なき遭遇」で言及 |
担架で運ばれるメイウェザーの遺体。 フロックス:「火傷の跡はアイソリティックショックのせいと思われますが、検死解剖をしてみるまで確かなことは言えません。…後ほどお知らせします。」 出ていく。 パネルを調べているタッカー。「EPS グリッドに触れようとした時、オーバーロードしたんでしょう。」 アーチャー:「…なぜ任務時間外にこんなところに侵入して、パワーシステムをいじったんだ!」 「わかりません。メンテナンス作業の時はいつも私と一緒でした。」 「立ち入り禁止だということは全員に知らせただろうな!」 トゥポル:「はい。」 「少尉には届いていなかったようだ。…任務が空けた時間は。」 「18時です。」 タッカー:「30分後に私とマルコムが姿を見てます。ホシと夕食中でした。」 「ホシを呼べ、何か聞いているかもしれん。通信記録も調べろ、ほかのクルーに話した可能性もある。」 リード:「少尉の部屋も調べた方がいいでしょう。」 「うん。修理中の全セクションに、保安班を派遣してくれ。※13」 「了解。」 発着ベイを出るアーチャー。取りかかる 3人。 基地の診断室に入るアーチャー。「……クルーが一人死んだ。何があったんだ。」 コンソールが出てくる。『その質問は認知できません。』 アーチャー:「…第1出発ベイで、操舵手が…殺されたんだ。…あそこが立ち入り禁止になっている間にやられたらしい。」 『修理作業中のエリアからは、全員速やかに退避願います。』 「それはわかっている。あそこで何があった。何か記録が、残っているはずだ。」 『修理作業中のエリアからは、全員速やかに退避願います。』 「…話せる者はいないのか? 誰か、データベースにアクセスできる者がいるだろう。事情を聞かせて欲しいんだ!」 『その質問は認知できません。』 コンソールに近づくアーチャー。『誰がこの基地を造った、どんな種だ。」 コンピューター:『その質問は認知できません。』 画面に殴りかかるアーチャー。「答えろ!」 コンピューター:『この施設に損害を与えた場合、船も損害を受けることになります。』 「クソ!」 医療室のフロックス。「コンピューター、記録スタート。」 イメージチェンバーから出てくるメイウェザーの遺体。「対象者氏名、トラヴィス・メイウェザー少尉、ヒトの男性。体重 72キログラム、地球年齢…26歳※14。死ぬには若すぎる青年だ。…細胞の腐敗具合から察して、死亡推定時刻は 23時30分。考えられる死亡原因は、アイソリティックショックが誘発した心室細動。血管等の脈管係が、放電コンジットとして機能。筋肉組織は、電導経路に沿って広範に渡る壊死が見られる。…皮下火傷は、身体の表面積のおよそ…12%に及ぶ。また右手指骨と中手骨に、熱による骨折の兆候が複数見られる。ああ、コンピューター、ポーズ。おや? こんな時間に、お別れですか?」 中に入るサトウ。「少尉に、会わせて。」 フロックス:「…見ない方がよろしいかと。」 「遺体なら平気よ、エイリアン船で 15体も見たことある。※15」 「仲間の場合は別です。」 だが、カーテンを開けるフロックス。 サトウ:「最初はまた、少尉の悪ふざけだって、そう思ったわ。数週間前、トラヴィスに除菌室に呼び出されたの。…見せたいものがあるって、ゼラチン状の生命体らしきものだった。知覚を有する可能性があるので、コミュニケーション方法を探って欲しいと、船長の依頼を伝えに来たって。」 フロックス:「ふーん、そうでしたか。」 「でも生き物じゃなかった。ただのイチゴゼリー。」 笑うが、すぐに涙声に戻るサトウ。「彼に仕返しを誓ったのに。…ごめんなさい。」 「…痛みを感ずる間もなかったのが救いだ。アイソリティックショックは神経が損なわれる。…一瞬でね。」 フロックスは断面図を見る。「妙だな。」 「何が?」 「…死滅してる。全て。ちょっと失礼。」 ノーマッド※16の模型が置いてある部屋。 アーチャーが入る。先に来ていたリード。 アーチャー:「何かわかったか。」 リード:「いえ。…夕べ少尉が通信システムを使った形跡はありません。…ヘイズ乗組員※17があそこに向かう少尉を見かけましたが、話はしてません。非常に急いでたとか。」 「それは?」 「手紙です、妹さんへの。…モニターがそのままになってました。…気になる記述は特にありません。……船長との朝食会が、キャンセルになったとありました。」 「…あれは…うん、先週のことだ。私の都合で、延期したんだ。……ご両親の所在はつかんだか。」 首を振るリード。「副司令官が調査中ですが、時間がかかるでしょう。貨物船を追跡するのは大変です。」 呼び出しに応えるアーチャー。「アーチャーだ。」 フロックス:『こちらドクター、至急医療室までお越し願います。』 メイウェザーを調べるフロックス。サトウもモニターを見ている。 アーチャーが入る。「…何かわかったのか。」 フロックス:「ええ、大変な事実が。この遺体はメイウェザー少尉ではありません。」 「…何。」 「よくできたレプリカです。こんなに細部にわたって完璧にコピーされたものを見たのは初めてだ。外見から細胞に至るまでそっくりです。実に見事だ。」 「本物のメイウェザー少尉と、どう違う。」 「先月、テシック・プライム※18を訪問したフィッシャー乗組員※19の身に起きたことを覚えてますか?」 「ああ…彼は、ライジェル熱※20にかかった。」 「あの時クルー全員に予防接種を行いました。ちょっと、袖をまくってて下さい?」 腕輪状の機具をつけるフロックス。血管の状態が表示される。「ワクチンには遺伝子操作済みの微生物が含まれ、大半が今も血液中にいる。微生物は通常、数週間は生き続けます。」 今度はメイウェザーだったはずの遺体につける。「でもこの遺体には生き残っていないんです。全くね?」 アーチャーの血液では動いている微生物が、静止している。 「アイソリティックショックで死滅したとか。」 「これはそうしたエネルギーで増殖するタイプですから、むしろ増えるはず。…何者かが少尉を誘拐し…代わりに、本物そっくりのコピーを置いていったのは、間違いないでしょうね。」 「コピー可能なのは船の材料だけじゃないようだなあ。」 「皮肉なことです。あの基地では、生きた人間をコピーし死体だって造れるのに、単細胞生物の能力を、甘く見てしまった。」 ブリッジに戻るアーチャーに話すトゥポル。「ご両親の所在がわかりました。」 アーチャー:「まだ知らせるな。少尉は生きてるかもしれない。」 リードに尋ねる。「君とトリップは基地内部に侵入した。コンピューターの心臓部のどこまで接近した?」 リード:「20メートル付近のセンサーまで。」 「センサーを突破できるか。」 「…可能でしょう。」 トゥポル:「修理は 19分後に完了します。そろそろプラズマの準備を御願いします。」 アーチャー:「ブリッジより機関室。」 タッカー:『タッカーです。』 「トリップ、プラズマは用意できたか。」 機関室のタッカー。「缶で揃ってます。」 アーチャー:『すぐには渡すな。」 アームがエンタープライズから離れた。 缶を積んだコンテナを押し、基地の診断室に入るタッカー。「200リットルのワーププラズマだ、約束のな。」 コンピューター:『品物を速やかに転送装置の台座に載せて下さい。』 台が出てくる。 「待ってくれ、まだダメだ。これを渡す前にちょいと、話がしたい。実は、修理に関して不満な個所があってね。…聞いてるかい?」 『品物を速やかに転送装置の台座に載せて下さい。』 「新しい船体外壁のボルト連結機が…宇宙艦隊仕様と違ってた。それに修理してもらった亜空間増幅機も、広帯域の全周波数に歪みを感知したんだ。」 『品物を速やかに転送装置の台座に載せて下さい。』 「問題が片づくまで、これは渡せない。」 ダクトに入るアーチャー。続いてリードと協力し、トゥポルを引き上げる。 怒るタッカー。「一体、どう保証してくれるつもりなんだ! ワープした途端デュラニアムピンが吹っ飛んだら、どうしてくれるんだよ。」 コンピューター:『その質問は認知できません。』 「おい! …地球では、こう言うんだ。『お客様は常に正しい。』 その辺のところをはっきりさせてもらおう。…苦情は誰がどうやって処理してる。」 リードを先頭にダクトを進む。「あそこです。あと 5メートル。」 スキャナーを使うアーチャーとトゥポル。リードだけが先へ進む。 振り向くリードに、うなずき返すアーチャー。 リードが更に近づくと前回と同じように警報が鳴り、通路が閉まった。転送されるリード。 アーチャーはスキャナーで、エネルギーの流れを確認する。 ブリッジに実体化するリードを見るサトウ。 トゥポルも確認し、2人は壁に向けて同時にフェイズ銃を発射した。 しばらく照射すると、爆発する。 診断室のモニターが引っ込み、警報が鳴る。 タッカー:「どうやら…緊急事態のようだから、失礼するよ。」 走って逃げた。 「ワーププラズマ」と書かれた容器は、そのまま残される。 コンソールを操作するトゥポル。閉じられた通路は開かない。 トゥポルは回路に触れた後、フェイズ銃でシャッターを撃った。 開いた通路を通っていくアーチャー。 別の暗い通路に入る 2人。ドアを調べるトゥポル。 大きな部屋に出た。そこにはたくさんの異星人が、寝かされていた。何段にも重なっている。 みな全く動かない。 |
※13: 吹き替えでは「修理中の全セクションの保安部員に、詳細を知らせてくれ」 ※14: 2126年生まれ。初めて生年が判明したレギュラーです ※15: ENT "Fight or Flight" より ※16: Nomad TOS第37話 "The Changeling" 「超小型宇宙船ノーマッドの謎」より。そのエピソードでエンタープライズに現れた探査機の姿ではなく、打ち上げられた当時の形 (TOS では図でのみ登場) ※17: Crewman Hayes 階級は訳出されていません。"she" と言われているので女性 ※18: Tessik Prime ※19: Crewman Fisher 階級は訳出されていません。"he" と言われているので男性 ※20: Rigelian fever TOS第76話 "Requiem for Methuselah" 「6200歳の恋」より |
コンピューターの音声が流れる。『データコアに侵入者を感知しました。ただちに退去しなければ船への攻撃を開始します。』 トゥポル:「人間の生命反応を一人感知。」 アーチャー:「みんな生きてるのか。」 「…身体の器官は機能しているようですが、神経に深刻なダメージを受けています。」 クリンゴン人らしき人物もいる。 コンピューター:『データコアに侵入者を感知しました。ただちに退去しなければ船への攻撃を開始します。』 「シナプス経路の型が変更されて、コンピューターコアに統合されています。」 『データコアに侵入者を感知しました。ただちに退去しなければ船への攻撃を開始します。』 「船長。」 メイウェザーが吊り下がっていた。 コンピューター:『データコアに侵入者を探知しました。ただちに退去しなければ船への攻撃を開始します。』 上り、メイウェザーにつながれているチューブを外していくアーチャー。 アームが再び近づき、エンタープライズをつかんだ。 リード:「3本のアームに、船体をつかまれました。」 タッカー:「装甲モードは。」 「…効果ありません。」 「攻撃準備。」 「…オフラインで駄目です。」 明滅するライト。 サトウ:「エンタープライズの中央ポートに侵入されました。コマンド機能を無効にする気です。」 タッカー:「メインコンピューターをロックしろ。」 「…駄目です、アクセスコードにスクランブルが。」 うめくメイウェザー。 アーチャー:「もう大丈夫だ、今助けてやる。」 壁を調べていたトゥポル。「ここです。」 アーチャーと共にメイウェザーを抱え、フェイズ銃を撃つ。 穴が空いた。 通り抜け、通路を急ぐ。 エアロックのドアを開けると、フロックスたちが待っていた。メイウェザーを引き渡す。 通信機に触れるアーチャー。「アーチャーよりブリッジ。」 フロックス:「使えません。」 走るアーチャーとトゥポル。 戻ってきたアーチャーに尋ねるタッカー。「少尉は。」 アーチャー:「医療室だ。状況は。」 「良くなってます。スラスターは回復しました。」 「インパルスエンジンは。」 操舵席のつまみを少し上げてみるタッカー。「オフラインです。」 リード:「メインパワーが弱まってる。」 サトウ:「生命維持装置もです。」 アーチャー:「マルコム。そろそろ約束の物を支払ってやろう。」 手元の機械を操作するリード。 基地に置かれたままのワーププラズマ。そばの機械が反応する。 そして爆発した。 通路中を炎が満たしていく。 報告するリード。「かなりのダメージを与えました。パワーレベルが落ちています。でも、コンジットの点火には失敗したようです。」 アーチャー:「3,000度を超えなきゃ無理さ。マルコム、辛抱強く待て。」 「わかりました。」 しばらくすると、揺れが伝わった。 リード:「基地内で、二度目の爆発を感知しました。」 爆発していく基地。 明かりが復旧した。 トゥポル:「コマンド機能が復活しました。」 アーチャー:「エンジンは。」 タッカー:「どちらも万全です。」 リード:「アームが一本船体から離れません。」 爆発する基地が、スクリーンにも映っている。 ブリッジにも被害が及ぶ。 トゥポル:「このままでは基地もろとも爆発します。」 アーチャー:「…エンジン全開!」 タッカー:「駄目です、インパルスを始動させれば、ソーサー部の半分が引きちぎられる。」 「魚雷は発射できないか。」 リード:「この射程距離では、お勧めできません。」 「我々に迷ってる余裕はないんだ!」 操作するリード。発射された魚雷はアームに命中した。 だが、まだスクリーンにはアームが映っている。 アーチャー:「もう一発だ、大尉。」 今度はアームが二つに分かれた。 アーチャーは命じた。「…出発だ!」 脱出するエンタープライズ。残っていたアームも離れた。 連鎖爆発を起こす修理基地。 医療室に入るアーチャー。「一度死んだとは思えないな。気分は?」 メイウェザー:「…だいぶいいです。すみません。……ドクターから、一部始終を聞きました。でも何がどうなったのか。」 「今も調査中で、解明を続けているんだ。」 フロックス:「では、私が少し説明しましょう。」 部品をメイウェザーに渡す。「これは一種のインターフェイス。神経信号をバイナリーコードに変換するための物です。修理基地はその処理能力を高めるために生命体の脳を利用していたんです。」 メイウェザー:「なぜそんなことを。」 トゥポル:「生命体の大脳皮質というのは、最も高性能のコンピューターですから。」 「…ほかの人は、どうなったんです。」 フロックス:「トゥポルのスキャンではほとんどの生命体が何年もつながれっぱなしで…脳へのダメージはもう元には戻りません。幸い君は、回復不能な損傷を受ける前に救われた。」 アーチャー:「いつ頃、復帰できるんだ。」 「しばらくは様子を見ないといけません、あと 24時間は。」 「……金曜の朝、8時に私の食堂だ。遅れるな?」 メイウェザー:「楽しみにしてます。」 修理基地の残骸。 だがアームが起動し、自ら修理を始めた。 |
感想
最後まで誰が造ったか明らかにならなかった、完全自動の修理基地が登場。最後の爆発シーンがちょっと短いかなと思ったら、そういうオチだったんですね。なかなか面白かったと思います。あっさり「死んだ」メイウェザーには、彼の活躍ぶりを考えると思わず苦笑。 基本的に一話完結であるスタートレックでは、たとえ DS9 でも前の話に直結する場合はそう多くはないのですが、今回はロミュラン遮蔽機雷による被害を続けて描いています。今までだと何ごともなかったように修理されてるんでしょうけどね。そのほかにもレプリケーターの下りなど、以前のシリーズを含めて過去への言及・描写が多く、楽しめました。 |
第29話 "Minefield" 「許されざる越境」 | 第31話 "A Night in Sickbay" 「小さな生命の灯」 |