リードは叫んだ。「おい殺す気か! ああ…」 
 フロックス:「グッと押して、大尉。あと 2秒。…はい OK。」 リードの脚を診ている。 
 「ああ…医者のくせに患者にこんな苦痛を与えていいんですか。」 
 「それが回復につながるなら痛みも我慢して頂きます。…前向きな姿勢は治療の回復には欠かせません。不平を漏らすほど、復帰が遅れるってことをお忘れなく。」 
 「…それで、いつ任務に戻れるんです。」 
 「1、2週間は無理でしょうなあ。」 
 「そんなに!」 
 「大尉の態度次第です。あと何匹かレグラスのアカムシ※6治療を受けて頂ければ早くなる…」 
 「…あんな不気味なもの二度と御免だ。一匹抱えたままなのに。」 
 「心配しなくても、そのうち自分で出てきますよ?」 
 ため息をつくリード。
  
 作戦室に、高い音が響いた。※7ポートスがアーチャーに近づく。 
 アーチャー:「聞いただろ?」 また鳴る。「参ったなあ。トリップが直したはずなのに。」 
 呼び出しに応えるアーチャー。「どうぞ。」 
 トゥポル:『船長、救難信号に応答がありました。』 
 ブリッジへ向かうアーチャー。また鳴った音に、ポートスが反応する。
  
 報告するトゥポル。「テラライトの貨物船です。」 
 アーチャー:「つないでくれ。…こちら、宇宙船エンタープライズのアーチャー船長。応答ありがとう。」 
 テラライト人:『どうしました。』 かなり音声が乱れている。 
 「…船の修理でお力をお借りしたいんです。どこかで、合流できれば…詳しい事情を。」 
 『そんな余裕はありませんので。シグナルが…』 途中で切れた。 
 サトウ:「遠すぎて、キャッチできません。」 
 アーチャー:「もう一度、お願いします。」 
 テラライト人:『…の位置を送信。修理基地…』 また途切れた。 
 「……『修理基地』と聞こえなかったか。」 
 トゥポル:「座標データを受信しました。」 
 「テラライト人というのは。」 
 「非常に愛想がいいとは言えませんが、悪賢い種でもありません。…ワープ2 で 3日半あれば、現地に到着できます。」 
 「……行ってみよう。」 
 メイウェザー:「了解。」
  
 宇宙空間に浮かぶ施設へ近づくエンタープライズ。 
 スクリーンにも映っている。 
 アーチャー:「こちら、エンタープライズ※8のアーチャー船長。修理がはかどらないのです。助けて頂けると聞いて、やってきました。」 
 応答はない。首を振るサトウ。 
 アーチャー:「こちらとしてはどんな形の援助でも助かります。応答願います。」 
 サトウ:「……駄目です。」 
 「生命反応は。」 
 トゥポル:「…全く感知できません。」 
 サトウ:「見捨てられた基地じゃ。」 
 タッカー:「降りてみたらどうですか? 必要な材料を調達できるかも。」 
 アーチャー:「エンタープライズとはドッキングの形態が違うようだなあ。うーん。基地内の状況は。」 
 トゥポル:「…液体ヘリウムを感知しました。…気温は、マイナス270度です。」 
 あきらめるタッカー。 
 その時警告音が鳴り、ブリッジを明るい光が満たした。 
 トゥポル:「我々をスキャンしたようです。」 
 メイウェザー:「船長。」 
 基地の片側が開き、拡大していく。 
 円筒状の構造だ。 
 タッカー:「エンタープライズに合うように、変えているのかなあ。」 
 トゥポル:「大気も液体ヘリウムから、常温の酸素と窒素に変わりました。」 
 サトウ:「依然、応答ありません。」 前に見える基地。 
 「歓迎されているのは、間違いないでしょう。」 
 アーチャー:「歓迎の意をはっきり表して欲しいねえ。」 
 タッカー:「…行くっきゃないでしょ。」 
 「うん。ドッキングだ。」
  
 中に入るエンタープライズ。基地からエアロックが伸びてくる。 
 廊下を歩くアーチャー、タッカー、トゥポル。エアロックを通じ、基地に入った。 
 白い構造が続いている。中に入ると、進む方向を示すように通路のライトが明滅し始めた。 
 部屋に通される。 
 3人が中に入ると、ドアも自動的に閉まった。 
 中央の機械の上に、エンタープライズの映像が浮かんでいる。 
 タッカー:「船の損傷個所が特定されている。それも全ての。…驚いたなあ。あの傷は一年前にできたものですよ。点検ポッドをぶつけたの覚えてるでしょ。※9」 
 アーチャー:「ペンキを塗っておけと言ったはずだが?」 
 「やろうと思ってたとこです。」 
 並んでいるモニターには、クルーの写真も映っている。 
 アーチャー:「我々の言語だ。」 
 スキャナーを使うトゥポル。 
 アーチャー:「スキャンされたのは船体だけじゃない。」 人の様子が表示されている。「これはマルコムだろ。左脚を怪我してる。」 
 トゥポル:「…リード大尉の脚を修理する技術も揃っているかもしれませんね?」 
 大きなパネルが出てきた。コンピューターの音声※10が流れる。『船の分析が終了しました。代わりに提供可能な資源・装置等を選択して下さい。』 
 アーチャー:「…君は誰だ。」 
 『その質問は認知できません。』 
 「直接話せる者はいないのか。」 
 『その質問は認知できません。』 
 タッカー:「中に人は隠れてないでしょう。」 
 トゥポル:「…全自動化されているのでは?」 
 アーチャー:「…我々のシステム全て修理できるのか?」 
 コンピューター:『代わりに提供可能な資源・装置等を選択して下さい。』 
 表示を読み上げるアーチャー。「ワープコイル 3本か、デューテリアム噴射機 5台。それにワーププラズマ 200リットルか。」 
 タッカー:「装置そのものを渡すのは賛成できません。」 
 「プラズマなら。」 
 「…代わりが利きます。」 
 「うん。条件に同意したとして、修理にかかる日数は。」 
 コンピューター:『修理時間は、地球時間で 34.2時間です。』 
 タッカー:「木星ステーションで修理したら、3月はかかります。」 
 トゥポル:「フェアな取引でしょう。」 
 コンピューター:『代わりに提供可能な資源・装置等を選択して下さい。』 
 アーチャーは画面上の、ワーププラズマを選択した。 
 コンピューター:『修理完了後に、今選択した品を納めれば、船は即座に解放されます。なお修理作業中のエリアからは、全員速やかに退避願います。』 
 アーチャー:「すごいな。」 
 モニターを見るトゥポル。「…修理プランですね。」 
 アーチャー:「クルー全員に知らせるよう、ホシに伝えてくれ。」 
 大きな音が響いた。 
 基地から何本ものアームが、エンタープライズに伸びていく。 
 通信が入る。『エンタープライズよりアーチャー船長。』 
 アーチャー:「何だ。」 
 『今突然、船体にアームのようなものが伸びてきましたが。』 
 「いいんだ、トラヴィス。待機を。」 
 別のドアが開いた。 
 コンピューター:『誰でもレクリエーション施設を利用することができます。お楽しみ下さい。』 
 向かう 3人。
 
 
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※6: Regulan blood worms ENT第25話 "Two Days and Two Nights" 「楽園での出来事」など
  
※7: ENT "Fight or Flight" より
  
※8: 吹き替えでは「エンタープライズ号」
  
※9: ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」より
  
※10: クレジットされていませんが、監督でもあるロクサン・ドースン (Roxann Dawson) が演じています。吹き替えでは野沢由香里さん (FC ボーグ・クイーンなど)
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