兵器室。
コンピューターの図面の前で説明するリード。「諸君、これを見たまえ。フェイズ変調エネルギー兵器、フェイズ砲だ。この兵器のパワーは、最大出力で 500ギガジュール。この船には 3門搭載できるが、今は 1門。プロトタイプしかない。」 部下たちの前で話す。
タッカー:「今からそれを完成させ、更に後 2門造る。船長はスペースドックの仕事だと考え、ステーションへ引き返すことを決断した。」
「船長の決断に逆らうことはできないが、我々は自力でできると信じている。」
「仕事は倍に増えるが、木星ステーションへ到着してから、向こうのエンジニアが働く横で、ワックスがけしてるよりはましだ。」 笑うクルー。
タッカー:「質問は?」
部下の機関部員、エディ※10。「攻撃は、あるんでしょうか。」
タッカー:「…俺たちは未知の体験がしたくてこのエンタープライズに乗り込んだはずだ。このたびは安全でもなければ、楽でもない。だが危険を冒しに来たわけでもない。船長やほかのクルーたちの安全は、ここにいる我々にかかってるんだ。」
リード:「フェイズ砲を完成できれば…危険を回避する確率はずっと増える。」
「…突っ立ってる暇はないぞ?」
みな作業に入る。
通信相手の女性。『タコが好きだと言ってたことがあったわ? 特に足の小さな吸盤が。でも冗談だったと思う。弟の冗談っていつもわかりにくいの。あの子と話せる?』
サトウ:「内緒で用意して、驚かせたいんです。」
姉のマデリン・リード※11。『ああ、ディナーをね? そうだ、思い出した。確か…10年以上前だけど、1週間断食したことがあったわ?』
サトウ:「断食?!」
『水とリンゴジュースを少し飲んでただけ。』
「どうして?」 ブリッジに入ってきた者に注意するサトウ。
『サバイバルトレーニングか…コンテストだったと思う。』
「食事を再開した時、何を最初に食べたか覚えてません?」
『動けないぐらい衰弱してたから、最初の 2日間はプロテインを摂っただけ。』
「大尉は子供の頃から、一度も…『ピザを食べに行こうよ』とか、そういうことを言ったことってないんですか?」
微笑むマデリン。『私の知る限りは。マルコムってよくわからない子なのよ。』
「私もそう思います。」
次は宇宙艦隊の男性が話している。『サンフランシスコでの訓練時代、あいつがよく通ってたレストランがあったなあ。…何かの専門店だった。魚だ。』
サトウ:「食べたのは? ああ…カレイとか、メカジキとか。」
マーク・ラトレーユ※12は答えた。『いや。』
サトウ:「マヒマヒ? ホタテ貝?」
『俺は、スズキを食べた。』
「それで、大尉は。」
『全く覚えてない。』
「お願い、思い出して?」
『モーリーン※13だ。』
「それ魚?」
『いやあ、ウェイトレスだ。奴は彼女目当てにあの店に通ってたんだよ。魚じゃない。』 笑うラトレーユ。
「どうも。」 回線を切り、目を押さえるサトウ。
ブリッジに戻るメイウェザー。「極秘任務は順調?」
サトウ:「大尉のお姉さんも、親友も、アーチーおじさん※14も 2人のおばさんも、大尉の食習慣について覚えてることと言ったら、時々…食べる。」
笑うメイウェザー。
トゥポル:「少尉。大尉について知りたいことがあるなら、本人に聞くことです。」
話をやめるメイウェザー。サトウはブリッジを出て行く。
食堂。
サトウ:「ここいいですか?」
独りで食べていたリード。「もちろん、どうぞ?」 パッドを読みながらだ。
サトウ:「ああ…これが今日初めての食事なんです。」
「ああ…私もだ。…朝からずっと兵器室にこもってた。」
「ラヴィオリ、いけます?」
「ああ、美味い。」
「パスタほど、美味しい物はないわ?」
「うーん。」
「……料理が好きなんですけど、今は機会がなくて。調理室は入れないし…。でも今度、何か…作りましょうか。」 咳をするサトウ。
気づいたリード。「ああ、すまない。」
サトウ:「エンチラーダはどうです?」
「エンチラーダ?」
「お嫌いでしたら違う物を…。何が好きですか?」
「あ、ああ…気持ちは嬉しいが、その必要はないよ。」
「…だけど時々シェフが作る料理に、飽きたりしません?」
「いや? 満足してる。」
「それは私もそうです。ただ…食堂での食事は、なーんとなく味気ないし、部屋の方が落ち着くわ?」
「……そりゃあ、非常に光栄なんだが、そういう行動はやはり…不適当かと。」
「なぜです?」
「つまり、その…我々は仕事仲間で、私的な付き合いは…ふさわしくない。…任務が先決だ。」
「食事くらい。あ…あ!」 吹き出すのを抑えるサトウ。「違うんです、そういう意味じゃなくて。私は純粋に、食事を…ごちそうしたかっただけなんです。」 立ち上がる。
「ああ、すまない。変な誤解をしてしまった…」
「いえ、私の言い方が悪かったんです。」
「いや…」
「あ…あ、もう行きます。」
「いいよ…食事してってくれ…」
「いいんです、大尉こそお仕事を続けて下さい。どうぞ。」 出て行くサトウ。
ワープ航行を続けるエンタープライズの後方から、異星人船が接近する。
トゥポル:「船長。後方に船体を感知しました。距離 8,000キロです。」
アーチャー:「例の無口なお友達か。」
「距離 7,000キロ。…6,000キロ。」
「防御プレート、用意。」
衝撃が走る。
食事をやめ、外を見るリード。ワープが解除された。
リードは通信機に触れる。「ブリッジ。兵器室、報告。」 応答がない。食堂のクルーに指示する。「急いで持ち場に戻れ。」
戦略コンソールにつくトゥポル。「ワープエンジン停止。メインパワーダウン。」
真っ暗になった。
相手の船から、小型船がエンタープライズに向かってきた。
アーチャー:「魚雷は。」
全ての明かりが消えた。
トゥポル:「戦略システムダウン。」
アーチャー:「時間を節約しよう。使えるものは言ってくれ。」 ライトを手にする。
「第2出発ベイのドアが開いています。」
「閉めろ!」
「できません。」
向かうアーチャー。
シャトル出発ベイに、異星人シャトルが侵入してきた。
作業をしていたクルーが、物音に気づく。
何者かが廊下を歩いていた。そちらへ向かう 2人。
上から音がした。倒れるクルー。ライトが転がる。
フェイズ銃を持ち、廊下を進むアーチャーたち。
床にライトが落ちていた。
更に進むと、先ほどの異星人がいた。クルー一人ずつに、光を発する手を当てている。
アーチャー:「2人から離れろ!」
言葉は聞こえているようだが、全く動こうとしない異星人。
アーチャーはフェイズ銃を撃つ。しかし効果がない。異星人の頭部には、ヘルメット状のフォースフィールドが見える。
アーチャーは銃の設定を変えて再び発砲する。やはり同じだ。
異星人たちは急ぐこともなく、そのまま歩いていった。
保安部員に命じるアーチャー。「追え! アーチャーから医療室。」
フロックス:『フロックスです。』
「Eデッキのセクション7 に来てくれ。緊急事態だ。」
『了解。』
倒れた 2人は気を失っている。
通信が入った。『保安部から船長。』
アーチャー:「どうした。」
『逃げられました、シャトルを発進させてます。』
船へ帰るシャトル。
更に異星人船は攻撃を加える。
アーチャー:「ブリッジ、報告!」
トゥポル:『異星人船はワープで消えました。先の被弾で、左舷ナセル損傷。プラズマが漏れています。』
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※10: Eddie (Robert Mammana) クレジットでは「機関部員 (Engineer)」。声:隈本吉成
※11: Madeline Reed (Paula Malcomson) 名前は言及されていません。声:小金沢篤子
※12: Mark Latrelle (John Rosenfeld VOY第167話 "Friendship One" 「終焉の星」の技術者その1 役) エンタープライズのクルーとは違うワッペンをつけています。名前は言及されていません。声:中博史、VOY ドクターなど
※13: Maureen
※14: Uncle Archie
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