アーチャーは尋ねた。「どこだ。」 
 トゥポル:「30メートル以内です。」 
 メイウェザーに話すアーチャー。「…トゥポルを見たら逃げようとするだろう。」 
 3人は、異星人たちの顔を確認していく。 
 どの顔もメノスではない。 
 ギャンブルを楽しむ人々。 
 トゥポルは鏡の中に、メノスの顔を見た。 
 振り返ると、向こうから近づいてくる。 
 しかし間にいた異星人に阻まれ、見失った。 
 テーブルの下に隠れるメノス。 
 トゥポルはアーチャーの姿を見つけ、駆け寄った。「見られました。」 
 アーチャー:「どっちへ。」 
 「不明です。」 
 アーチャーはテーブルの上に立ち、口笛を吹いた。 
 それを聞くメイウェザー。 
 するとアーチャーの近くを、武器がかすめた。 
 銃を撃っているのはメノスだ。 
 騒ぐ客たち。 
 メノスはトゥポルも狙ってくる。 
 アーチャーは巨大な異星人※9にぶつかった。理解できない言語で怒鳴ってくる。 
 アーチャー:「確かにな!」 
 メイウェザーがメノスに飛びかかった。「動くな。」 フェイズ銃を突きつける。 
 近寄ったアーチャーは、メノスに手錠型の拘束具をつけた。 
 メノス※10:「ここは、管轄外だろ。」 
 トゥポル:「来なさい。」
  
 パーナイア・プライム軌道上のエンタープライズ。 
 水球の映像が流れている。 
 ドアチャイムに応えるタッカー。「入れ。入ってくれたまえ。よく来たな。」 
 リード:「水球ですか。」 
 「面白いぞ? 君らも見てみるといい。」 映像を切るタッカー。「さあ、かけて? シェフにスペシャルランチを作らせた。」 
 フロックス:「うん。」 
 「ソーセージとマッシュポテト。それにドクターには、デノビュラのソーセージ※11だ。」 
 リード:「食事室を勝手に使ったりして、船長が怒るんじゃないですか?」 
 「船長代理が使うんだ。どこに文句がある?」 給仕に運ばれる料理。「ご苦労、ご苦労。…食べて?」 
 フロックス:「それじゃ。…そうだ、今朝船内でリンパ管ウィルス※12を検知したんです。デューテリアムキャニスターにでも、潜んでいたんでしょう。全クルーに予防接種をすべきです。」 
 「何でバイオ・スキャナーにかからなかった。」 
 「頼りになりますが、完璧じゃない、フン。予防接種には副作用がありますが?」 
 「どんな副作用だ。」 
 「うーん、頭痛に吐き気、下痢ですねえ。1日、2日で収まります。もらえますか、許可は?」 
 「…クルーの下痢に責任を負うってのは、どうもなあ。…船長が戻るまで待たないか。」 
 「ウィルスが蔓延しますよ? 今日返事が必要です。」 
 タッカーは口へ運ぼうとしたフォークを下ろした。「じゃあ後で連絡するよ。」 
 フロックス:「あまり後は困りますよ?」 
 フォークを使おうとした時、今度はリードが言った。「許可ついでにもう一つ。船長に魚雷発射管を調整すると約束したんですが、機関室のコンピューターを流用しなければなりません。」 
 タッカー:「じゃワープコアをパワーダウンすることになる。」 
 「一日だけです。どこへ行くわけでもなし。」 
 「戦闘状態でもないぞ。今エンジンを止めるのは気が進まないねえ。」 
 「機関主任の意見ですか? 船長代理の。」 
 「…後で連絡する。」 タッカーは今度こそ食べようとしたが、通信が入った。「タッカーだ。」 
 サトウ:『ヴァルカン船ニラン※13から通信が入りました。高速ワープで接近中で…アーチャー船長と話したいそうです。』 
 「船長は…気分が優れないと言ってくれ。また、後で連絡するってな。」 
 『了解。』 
 通信を切るタッカー。「ヴァルカンにはトゥポルと一緒だってこと言うなって言われてんだ。…かなり強く念を押してた。」 
 フロックス:「4日間、気分が優れないで通すのは難しそうだ?」 
 フォークを下ろすタッカー。また通信。 
 サトウ:『フォレスト提督から、船長へ伝言があるそうで。タヴェック船長はどうしても話したいとおっしゃってますが。』 
 タッカー:「…後で連絡する!」 食べる気がなくなり、フォークを落とした。
  
 異星人の男※14は立ち上がった。「…令状は有効だが、連れて行くことはできんぞ。少なくとも後 4時間はな。着陸デッキを熱処理し始めたとこだ。」 
 トゥポル:「シャトルに乗せたいだけなんです。」 
 「デッキ中に、ザイラソリック酸※15が 5ミリの厚さでまかれてるんだよ、それでも行くかね? その可愛いアンヨが、大事だったらなあ。」 
 アーチャー:「出発できるまで彼を拘束しておける場所はないか。」 
 「よーく見ろ、ここが刑務所に見えるか。」 パッドを返す異星人。
  
 アーチャーはメノスの拘束具を、テーブルの脚にくくりつけた。「仲間がいないとも限らないぞ。」 
 アーチャー:「保安省の見解は、非常に明解でした。…仲間はいません。」 
 メノス:「いたこともあるぞ。」
  
 森を逃げるメノス。その後を別の男が走っている。そしてトゥポルが続く。
  
 アーチャーたちを見るメノス。「人間だな。…そっちもそうだ。奴ら、私を元に戻したがった。…連れ帰り…額を平らにして、また耳を尖らせ、連中が私に教え込んだスパイとしての暮らしを、何とか忘れさせようとした。私が犯罪者になったと思いこんで、放っておけば取り返しがつかないと、勝手に決めつけた。ヴァルカンでの 3年の矯正治療。だが私は拒否した。」 笑う。「そして私は逃げた。…私は盗みも、密輸もしていない、一度もね。…密輸人と仕事はした。長いこと彼らの、かなり近くで働いた。その訓練を受けたからね。私がこの 20年間、どうやって家族を養ってきたと思う。ワープ噴射装置の、ケーシングの運搬だよ。人気の…仕事じゃないが、誰かがやらないとね。…アンドリアで、医者にかかったら溶血細胞数が 3,000以上だと言われた。ケーシングを運んでる年寄りはあまり見ないだろ…。ああ、ポケットの物を取ってくれるか。」 
 近づくメイウェザー。 
 トゥポル:「よしなさい。武器かもしれないわ。」 
 メノス:「ホログラムだ、家族のね。噛みつきゃしない。」 
 アーチャーを見るトゥポル。トゥポルはメイウェザーに合図した。 
 メイウェザーは、メノスの装置を取りだした。スイッチを入れると、女性と 2人の娘のホログラムが現れた。 
 止めるメイウェザー。 
 メノス:「ケーシングのせいで直に家族との別れが来る。ヴァルカンの刑務所で死にたくはない。」 
 トゥポル:「情報では、あなたは高純度の生物毒素を買い、値段の折り合いがつけば誰にでも売っているそうですが?」 
 「保安省の情報が全部正しいなら、私は流動体生物で、こんな手錠はさっさとすり抜け、今頃羽根を生やして飛んでってるよ。」 
 アーチャー:「ヴァルカン政府より逃亡者を信じると思うか。」 
 「彼女が信じるヴァルカン政府は 30年前、109人の工作員をアガロンへ送った。ただその 109人を全員連れ戻したいだけなんだよ。是非も問わず、生死も問わずね。」 
 「君が無実なら、弁護するチャンスが与えられると思うね。」 
 「だが有罪だ。命令を受けたのに帰らなかったからな。…生物毒素の売買は無実でも、逃亡のかどで有罪なんだ。だが投獄されたり撃たれたりするようなことは、してない。」 
 「ヴァルカンへ引き渡すだけだ。誰も撃ったりはしない。」 
 「…彼女はどうだ。」 
 メノスを見るトゥポル。
  
 逃げるメノスと男。追うトゥポル。 
 老ヴァルカン人に押さえつけられる、トゥポル。
  
 トゥポルはナイフを取りだした。「嘘をついてる!」 
 アーチャー:「トゥポル!」 
 メノスにつけられていたベルトを切り、取り出すトゥポル。 
 アーチャー:「何をしてる。…トゥポル!」 
 トゥポル:「彼は嘘をついています。」 靴をベルトで巻き、保護している。 
 「どこへ行くつもりだ。トゥポル!」 
 「本当なら、船はケーシングで一杯のはずです!」 外へ向かうトゥポル。 
 「デッキは酸で覆われてるんだぞ!」 
 トゥポルが歩くたびに、酸で布が解ける。 
 走るトゥポル。
  
 森を走るトゥポル。 
 苦痛の表情を浮かべるトゥポル。
  
 トゥポルは船へ入った。 
 その中には、たくさんの貨物が置いてあった。 
 棒を取り箱を開けると、中は小さな空容器であふれている。 
 次の貨物も同じだ。
  
 メノスに続く男が倒れた。叫ぶメノス。「ジョセーン※16!」 
 本を持ったヴァルカン人。抵抗するトゥポル。
  
 トゥポルは次々と貨物を開けていくが、入っているのは全て同じだ。 
 棒を突き刺して確かめてみても、あるのは容器だけ。 
 座り込むトゥポル。
 
 
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※9: Huge Alien (ヴィンセント・ハモンド Vincent Hammond) 声優なし
  
※10: Menos (ブルース・デーヴィソン Bruce Davison VOY第48話 "Remember" 「偽善者の楽園」のジャレス (Jareth) 役) 声:牛山茂、TNG ローア、旧ST5スールー、STG ソランなど
  
※11: Denobulan sausage
  
※12: lymphatic virus
  
※13: Nyran
  
※14: ドック主任 Dockmaster (David Richards) 声はタヴェック役の長克巳さんが兼任
  
※15: xylathoric acid
  
※16: ジョセン Jossen (Richard Wharton) 声優なし
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