エンタープライズ エピソードガイド
第34話「危険なコンタクト」
The Communicator
イントロダクション
惑星から帰還するシャトルポッド。軌道上のエンタープライズへ向かう。 階段を上がるサトウ。「体力のなさを実感したわ?」 その顔は、異星人のものになっている。 アーチャー:「…坂だらけだとわかってたら、探検には別の街を選んだ。」 同じく制服を着ていない。 リード:「ああ…見る価値はありました。建物だけでも。」 サトウ:「あの寺院にずっといたかった。」 笑うアーチャー。 アーチャーは顔のメイクを取っている。 リード:「船長の許可を頂ければ、艦隊へ報告書を書こうと思っています。ワープ以前の文化を訪ねたのは初めてですから、いい機会だと。」 サトウ:「軍事的に、面白い惑星ってわけじゃないでしょ?」 「…それがですねえ…」 サトウと笑うアーチャー。「熱心すぎるってのもな?」 窓の向こう側にいるフロックス。「おかえりなさい。」 アーチャー:「病気は、もちこんでなかったか。」 「寄生虫も胞子もウィルスもゼロ。有意義な探検だったようですな?」 「かなりね。」 「お疲れ様。」 除菌室を出るアーチャー。「でも、探検は面白いが、戻るとホッとする。」 持っていたスキャナーなどの装置を、台に置いていく。 リード:「政治集会で演説してた男、名前は何だったっけ。『カルトレイ総裁』?」 サトウ:「カルタレイ※1。」 「…本になりそうな人物だ。第二次世界大戦前の、チャーチル※2の演説を思い出しました。」 服を探し始めるリード。 アーチャー:「どうしたんだ。…マルコム。」 「通信機が…」 「どうした。」 「……ありません。」 ため息をつくリード。 |
※1: カルタレイ総裁 Chancellor Kultarey ※2: 原語では「ウィンストン・チャーチル (Winston Churchill)」。ウィンストン・レオナード・スペンサー・チャーチル、1874〜1965年。1940〜1945年の英国首相 |
本編
除菌室を探すリード。ゴミ箱も漁る。 シャトルポッドの中を見ているサトウ。 アーチャーはポッドの周りだ。 発着ベイへ戻るリード。「除菌室にはありません。ありました?」 アーチャー:「いや、ない。」 「出発ベイのクルーは。シャトル内の点検中に拾ったかも。」 「とっくに聞いた。」 「ああ…」 出てくるサトウ。「船内はくまなく探しました。」 アーチャー:「最後に使ったのはいつだ。」 リード:「…街に入ったと、副司令官に連絡した時です。」 「その後は。ポケットから取りだした覚えはあるのか。」 「…いえ。」 「確かだな?」 「…確かです。…落としたか…スられたかの、どちらかです。」 「歩き回ったからどこに落ちてるか。」 サトウ:「捜索範囲は限定できます。逆搬送波でパワー信号を増幅できますから、上手くいけば特定可能です。」 地図が表示されている。 サトウ:「出てきました。2キロ四方に限定しました。」 アーチャー:「…もう少し絞り込めるか。」 「やってみます。」 タッカー:「戦争がどうとか、言ってなかったですか?」 「プロパガンダは、街のあちこちで見かけたんだが、開戦の気配はなかった。」 トゥポル:「通信機の回収は極めて重要です。ワープ以前の文化を汚染する危険は防がないと。」 サトウ:「3ブロックまでシグナルを絞り込むことが出来ました。これが精一杯です。」 拡大される。 リード:「この L字型の建物。これは噴水か? そばに銅像が建ってた。酒場は通りの真向かいで、ここ。ここに座った時に、ポケットから落ちたのかもしれません。」 アーチャー:「そこから始めよう。」 トゥポルに命じる。「ブリッジを頼むぞ? ドクターに、もう一度特殊メイクを頼むと伝えてくれ。」 タッカー:「一人でも多くの目があった方がいい。」 「気持ちはありがたいが、トリップ。2人の方が動きやすい。」 「鼻が利きますよ?」 「今度な。」 ターボリフトのドアは閉まった。 がっかりするタッカー。 シャトルポッドは、再び発進した。 アーチャー:「あと 2分で監視塔の視界内に入るぞ。」 リード:「船体、装甲モードオン※3。」 「歩く元気は残ってるか?」 「そんなこと言ってられません。……船長…今回は全て、私の責任です。相応の懲罰を受ける覚悟はできています。」 「じゃ 30年の禁固刑でどうだ? それとも鞭打ち刑か?」 「あの…」 「事故だったんだ、マルコム。誰にでも起こりうる。」 コンピューターに反応がある。 リード:「軍用機が 3機、右舷 72キロ付近に接近。もう少し、降下しましょう。そうすれば、監視を避けられます。」 森の中へ降りながら、ライトをつけるシャトル。 異星人の酒場。 入ってきたアーチャーとリードに注目する者もいる。 壁際の席に座り、素早く床を探すリード。首を振る。 アーチャー:「確かにこの席か。」 リード:「そうです。」 「スキャンしてみろ。」 様子をうかがいながら、スキャナーを取り出すリード。 酒場の主人※4が近づく。咳払いしてリードに知らせるアーチャー。 主人:「おかえんなさい。ご注文は?」 アーチャー:「ちょっと待ってくれ。」 「いいとも? お友達は? 若いレディさ。」 「よく覚えてるな。」 「…美人は忘れない、ハハ。」 「ハハ、彼女に伝えておこう。」 「…仕事かい?」 「いや、私用で来てる。」 「今日仕入れたばかりの珍しいアラカス・ビール※5がありますぜ?」 「…それにしよう。」 主人が戻り、再びスキャンするリード。 主人はテーブルの男たちに、無言で合図している。 リード:「あった。」 アーチャー:「どこに。」 「…通路の奥。室内です。」 そちらを見るアーチャー。「…前に入ったか。」 リード:「いいえ。」 立ち上がる 2人。ゆっくりと通路へ向かう。 その様子を見ている主人や男たち。 通路へ入り、探す 2人。リードが使うスキャナーに反応が出た。「中に 2人います。」 アーチャー:「出てくるまで待とう。」 また酒場へ戻る。 だがテーブルの軍人たちが立ち上がった。 様子を察したアーチャーは、すぐにテーブルを男たちの方に倒した。 殴りかかるリード。だが逆に倒された。 一人の首を絞めるアーチャーだが、後ろから銃を突きつけられる。 リードも通路へ連れて行かれる。 部屋にいた 2人の軍人。 アーチャーたちが連れてこられる。 軍人の一人の大尉※6は、コミュニケーターを見せた。「お前たちのだな。…何の装置だ。」 アーチャー:「知らない。」 部下に合図する大尉。2人は壁に押しつけられ、身体を調べられる。 持っていたフェイズ銃やスキャナーを取られた。 フェイズ銃を手にする大尉。「…どういう武器なんだ。」 答えないアーチャー。 大尉:「……ゴーシス将軍※7は。」 兵士※8:「東の監視所に。」 「レベル4 の声明を出して、不審者を 2人見つけたと知らせろ。敵のスパイだ。…2人を施設に連行してしっかり見張らせろ。……当分は、同盟側の仲間に会うことはできないからな。」 連れて行かれる。大尉は再びフェイズ銃を手に取った。 |
※3: 第16話 "Shuttlepod One" 「引き裂かれたクルー」では搭載されていませんでした。その後、機能がつけられたようです ※4: 異星人バーの主人 Alien Barkeep (デニス・コックラム Dennis Cockrum TNG第140話 "Face of the Enemy" 「ロミュラン帝国亡命作戦」のコーヴァレン輸送船船長 (Corvallen Freighter Captain)、VOY第141話 "Live Fast and Prosper" 「宇宙詐欺師ダーラ」のオレク (Orek) 役) 声はテメック役の岩田さんが兼任 ※5: Allakas malt ※6: 名前は Pell 大尉 (Lt. Pell) (ティム・ケレハー Tim Kelleher TNG最終話 "All Good Things..." 「永遠への旅」のゲインズ大尉 (Lieutenant Gaines)、VOY第122話 "Survival Instinct" 「ボーグの絆を求めて」のプシャン (P'chan)=フォー・オブ・ナイン (Four of Nine) 役) ですが、言及されていません。公式サイトのあらすじ中では、なぜか階級が少佐 (Major) になっています。声:田中正彦、叛乱 ソジェフなど ※7: General Gosis ※8: Soldier (Jason Waters) 声:阪口周平? |
エンタープライズ。 タッカー:「何かあったんだ。連絡しよう。」 サトウ:「周囲に人がいたら、呼び出し音が目立ちます。」 トゥポル:「危険は覚悟の上です。」 操作するサトウ。 トゥポル:「…トゥポルより、アーチャー船長。」 サトウ:「……回線オンです。」 「…船長、応答願います。……回線を閉じて。」 タッカー:「位置を確認したか?」 表示させるサトウ。「この地区内のどこかです。」 タッカー:「酒場から 30キロ以上離れてる。シャトルの位置は?」 「…動いてません。」 「徒歩で行ける距離じゃない。こんなに短時間じゃ。」 「電車か車を使ったのかも。」 「計画変更なら連絡がある。」 トゥポル:「…生命反応を分離して。2人の正確な位置が知りたい。」 サトウ:「この辺りにはほぼ 10万の人が住んでいます。」 タッカー:「低い軌道を飛べば 2人の居所がわかるかも。」 トゥポル:「これ以上近づけば感知されます。このまま続けて。」 夜の施設。 看守が歩いている。牢の中にアーチャーがいた。 足をさするリード。 アーチャー:「まだ痛むか。」 リード:「ドクターから薬をもらわずに。…看守は薬※9を持ってきてくれるでしょうか。…いやあ、丁重に頼めば。」 「あきらめろ。」 「…私の通信機を探しに来て、船長のも取られてしまった。その上フェイズ銃と、スキャナーまで。」 「シャトルが見つからないといいが。」 「…彼らが本気で同盟側のスパイだと思いこんでるなら…真実を伝えるという手もあります。」 「…我々の話を信じないだろう。」 「そりゃあわかりません。」 「…別世界から来たというのか? …驚く顔が目に浮かぶよ。」 笑うリード。 大尉たちがやってきた。鍵が開けられる。 アーチャー:「なるべく黙ってよう。」 リード:「わかりました。」 中に入る大尉。「ついてこい。」 牢を出る 2人。 フェイズ銃を手にする軍人。 アーチャーとリードが連れてこられる。椅子に座らされた。 ゴーシス※10:「…どっちが船長だ? …この送信機を調べていたら実に不思議なことが起きた。音が鳴ったので開けてみたら、トゥポルと名乗る女の声が聞こえてきて、船長の無事をひどく心配していた。女が呼びかけた相手は。」 アーチャー:「……私が船長だ。」 「軍の士官をスパイとして引き抜くとは、同盟側も相当焦っているらしい。」 「…我々は軍とは無関係だ。」 「…お遊びのボートの船長だというのか。」 アーチャーは大尉を見た。 大尉:「…フン。」 ゴーシス:「…トランシーバーだろ、周波数はいくつだ。通信距離は。」 アーチャー:「知らない。」 「…こっちは計算機のようだな? 答えろ、使い方は。」 目をそらすリード。ゴーシスに合図された大尉は、アーチャーを殴った。 ゴーシス:「上官が返事を待っている。士官なら私の気持ちがわかるだろう。暴力は不本意だが、協力してもらわないと困るんだ。」 アーチャー:「…悪いが…力にはなれん。」 「……今朝の集会は面白かったか。それが目的なんだろ。お前たちが、カルタレイ総裁と同じ日にこの街に現れるとは妙だと思わないか? …総裁の警備体制を偵察しに来たのか。それとも暗殺のためか。…お前らが大昔からこの土地を狙っているのはわかってる。総裁は格好の標的だ。」 「…我々は旅行者だ。スパイじゃない。」 「トゥポルという女は一体どこに、隠れている。」 無言のアーチャーを、また大尉が殴る。倒れるアーチャー。 立ち上がったリードも軍人たちに倒された。 また座らされる。 ゴーシスはアーチャーの顔に気づき、額のメイクを取った。驚くゴーシス。 大尉もリードのを取る。 ゴーシス:「整形してたのか。」 大尉:「…将軍。…血液が…赤い!」 「…テメック※11に知らせろ。身体の中まで徹底的に調べろ。」 連行される 2人。 施設の上空写真を示すサトウ。「2人はここ。この敷地内にいます。」 メイウェザー:「監視塔に、銃の据えつけ台。ホテルじゃない。」 タッカー:「シャトルポッド2 で行って、ここに降りたらどうだろう。2人は 30メートル以内にいる。密かに奪回して軌道に戻るんだ。」 トゥポル:「少佐が捕まったら、シャトルを残すことになってしまいます。確実に社会の進展に影響を及ぼすでしょう。」 「船が見えなかったらどうだ。いつかのスリバン船を使うんだ。螺旋艦からクラングを助けた時のさ。※12暇な時ずっと調べていたんだ。遮蔽の原理はもう少しでわかる。遮蔽装置を稼働できれば、相手の防御をすり抜けて 2人を奪回できる。敵に知られずに。」 「すぐ始めて。」 「手伝ってくれ。」 メイウェザー:「了解。」 トゥポル:「…少尉は施設内から出される通信を傍受して。船長とリード大尉の状況が、つかめるかもしれない。」 サトウ:「了解。」 スリバン細胞船を調べているタッカー。「なぜなんだ。パワーコンバーターはオン。電気は確実にリレーを流れてるのに。…なぜ船体が消えない。」 メイウェザー:「このパネルが、遮蔽装置じゃないとか。」 「いや、装置の機能は全て特定した。間違いない。…もう一度、パワーアップシーケンスを。」 「『遮蔽』ってボタンがあれば、こんなに苦労せずに済む。」 「…ちょっと待て、トラヴィス。」 タッカーは道具を取りだし、パネルに触れた。 だが電流が流れ、タッカーは吹き飛ばされた。 メイウェザー:「大丈夫ですか。」 タッカー:「ああ…ちょっと吹っ飛ばされただけさ。」 見ると、近くに置いてあった道具箱が、途中まで遮蔽された。 メイウェザーは気づいた。「それだけじゃ、ないみたいですよ。」 右腕を上げるタッカー。肩から先が見えなくなっていた。 |
※9: 原語ではエプソム塩 (瀉利塩、Epsom salt) ※10: Gosis (フランシス・ガイナン Francis Guinan VOY第8話 "Ex Post Facto" 「殺された者の記憶」のクレイ長官 (Minister Kray)、"Live Fast and Prosper" の Zar 役) 声:小島敏彦、TOS 現マッコイ、DS9 2代目ブラントなど ※11: Temec ※12: ENT第2話 "Broken Bow, Part II" 「夢への旅立ち(後編)」より |
調べるフロックス。「フーン、痛みはありますかあ?」 タッカー:「ヒリヒリする。」 「フーン、それじゃあ…指を動かして?」 「これでいい?」 何も見えない。 「どんな感じ?」 「問題ない。スキャナーの結果は。」 「データ不足だ。量子物理学は私の専門外ですが…恐らく放射線を過剰に浴びたせいでしょう。細胞船を遮蔽するために使った、粒子放射能です。」 「ずっと消えたままなのか。」 「…それは何とも言えませんが、そのうち腕が自分で姿を現すかもしれませんよう?」 「『そのうち』?」 「一時間後に、回復状況を確かめましょう。」 「それまで何してる。これじゃあ、仕事もできない。」 フロックスは離れる。ため息をつくタッカー。 フロックスは手袋を持ってきた。見えない手で取るタッカー。手袋が宙に浮いたように見える。 フロックス:「制服も、変えた方がいいでしょうな?」 タッカー:「どうも。」 地上の施設。 部下と集まっているゴーシス。「試してみよう。」 フェイズ銃で、荷物を狙った。爆発する。 驚く大尉。「…一種の干渉エネルギーパルスかと。実在するとは驚きました。」 ゴーシス:「同盟側が、理論を形にすることに成功したんだ。」 「…私が。…別の設定があるようです。」 大尉が撃つと、さっきの何倍も大きく爆発した。 ゴーシス:「…同盟側は、この銃で武装しているかもしれん。……24時間態勢で※13銃を監視させるんだ。信頼できる部下に。」 出ていく大尉たち。 やってきたドクター・テメック※14に話すゴーシス。「何かわかったか?」 テメック:「ご確認を。」 レントゲン写真を見るゴーシス。「こんな身体があるのか!」 テメック:「事実は一つ。…あの 2人は…間違いなく宇宙人です。」 写真を前に話すゴーシス。「お前たちの身体は手術で変えたものではないとドクターが判断した。切開の跡や傷の形跡が見つからなかったそうだ。身体の構造が全く違う。腎臓器官が複数あって、胸椎の数も違う。…この臓器に至っては、説明不能だそうだ。お前たちの血液が赤いのは、ヘモグロビンが毒性成分の鉄を含むせいだ。ドクターは 4度も検査して、確かめた。お前たちがどこから来たか仮説を立てた。まるで信じられなかったよ。これを見るまではな。」 別の写真を見せる。「今朝早く我々の偵察機がこの映像を捉えた。パイロットによるとこの物体は、猛スピードで飛んでたらしい。説明してもらおう。」 シャトルポッドのシルエットが映っている。 テメック:「…この星系内の惑星に生命体は存在しない。どこから来たんだ。」 「…科学者によるとこの大きさの船がほかの星系からやってくることはあり得ないそうだ。とすれば大型船が近くまで来ているに違いないとのことだ。この星の、軌道を回ってるのか。」 アーチャーをつかむゴーシス。「どんな指令を受けてる! 同盟側と連絡を取ったのか!」 何も言わないアーチャーの腹を殴るゴーシス。「答えろ!」 苦しむアーチャー。「あ…。…我々の、情報機関は…あんたを過小評価したようだ、将軍。」 笑い出す。「宇宙人だって? …あ…あんたは思った以上に妄想的だなあ。これは宇宙船じゃない。軌道には乗らない。精密な実験用航空機さ。あんたらの領土をずっと偵察していた。」 ゴーシス:「どうやって監視をかわした?」 「…機体が…複合合金なら、監視システムを百パーセント、かわすことができる。」 テメック:「身体の異常はどう説明する。」 リード:「…我々は、遺伝子強化されてる。」 ゴーシス:「どのようにだ。」 「…免疫システムは、生物化学兵器に耐えうるようになっていて、内臓器官は細胞の再生が 30%増加するよう改良されている。だから、傷の治りも早い。」 大尉:「完全無欠な兵士か。」 ゴーシス:「何人存在する。」 アーチャー:「…我々は試作品で、2人だけだ。」 「武器類も試作品だというのか?」 「全てね。」 「…連れて行け。」 部屋を出される 2人。 ゴーシス:「信じるか。」 テメック:「…もっともらしい説明でした。」 大尉:「…同盟側には奴らのような強化兵が大勢いるかと。」 ゴーシス:「奴らの話を裏づける必要がある。」 テメック:「私はありとあらゆる検査を行いました。もし、臓器を取り出すことができれば…もっと詳細な研究が可能です。」 「…2人の処刑を任せる。奴らには私が知らせよう。」 エンタープライズ。 サトウ:「副司令官。また、通信です。…ゴーシス将軍から総裁へ送られてます。敵のスパイを 2人捕まえた。……処刑する。」 細胞船の中にいるタッカー。「回折リレーを再接続して、もう一度やってみよう。」 手袋の下を一瞬確認する。 メイウェザー:「戻りました?」 「まだ消えてる。」 「でも、腕が透明だと何かと便利ですよ。…ポーカーする時役に立つ。」 笑うタッカー。「超一流の、マジシャンにもなれるな。」 メイウェザー:「映画館でも役に立つ、デートの時に。…ポップコーンを盗んでもわからない。」 うなずくタッカー。「…さあ、やってみよう。」 タッカーだけ外に出る。「いいぞ。」 遮蔽されるが、船の一部だけだ。 メイウェザー:「消えましたか?」 タッカー:「とはいえない。止めてくれ。」 全て現れる。「遮蔽発生装置はめいっぱい稼働してるのに、まだパワー不足だ。…ワープリレーからパワーをもらおう。それで上手くいくかも。」 トゥポルがシャトル発着ベイへやってきた。「いつ出発できます?」 タッカー:「今パワーマトリックスの型を変更中で、もうすぐ…」 「時間がない。…2時間以内に、2人の処刑が執行されます。」 「……どうしてもと言うなら途中で稼働させます。でも、見えても見えなくても、シャトルよりこっちの方が頑丈かと。」 「やってみるしかない。…出発の準備を。」 牢屋のアーチャー。「腹を壊した? そんな話にだまされるもんか。」 リード:「地球じゃ使い古された手ですが、彼らは初めて耳にするかも。」 「たとえこの施設から出られても、シャトルには行けない。…この顔ではな。…『遺伝子強化』か。よく思いついたな。」 「どうも。創作は苦手なので拝借しました。」 「スリバン人になった気分だ。」 「……エンタープライズはどうするでしょう。…この後。」 「……あのトゥポルなら…わずかな文化汚染も、許さないだろう。時間はかかっても、彼女ならきっと…全てを回収する。…我々の…遺体も。」 「あ…皮肉ですね? 我々を殺そうとする種の、未来のために…命を捧げるとは。」 「大きな惑星だ。そういう連中ばかりじゃないさ。」 「怖くはありません。」 「……彼らに真実を話したらどうだろう。」 「船長自身がおっしゃった。絶対信じてもらえないと。」 「シャトルポッドを見せたらどうだ。将軍をエンタープライズに招いたら? …見学ツアーをするのさ。締めは船長室でのディナーだ、ハハ。絞首刑にしようとしたことを、お互い笑い飛ばす展開になるかもしれんぞ? …トゥポルから、文化汚染については何度も講義を受けたが、こういう場合どうすればいいか、何も…教えてくれなかったな。」 近づくリード。「…我々の正体を明かしたら…彼らのためになるかもしれませんよ? ヴァルカン人も地球の力となった。」 アーチャー:「事情が違う。連中はまだ核分裂さえ知らない。ヴァルカンは、準備が整うまで待ってくれた。人類に宇宙探検の能力がつくまでな? ……これでいいんだよ、マルコム。……レポートを書く機会がなくなって、すまんな。」 「あきらめるのは早い。あの扉をこじ開けて、救助隊が助けに来てくれるかもしれませんよ? 今にもね。」 2人は無言になった。 |
※13: 原語では「常に」としか言っていません。この惑星の一日が 24時間であるかは不明 ※14: Dr. Temec (Brian Reddy) 声:岩田安生、DS9 パトリックなど |
エンタープライズから、スリバン細胞船が出発した。すぐに遮蔽する。 トゥポル:「あと 2分で、監視塔の視界内に突入します。」 タッカー:「船体は見えないはず。」 牢の鍵を開ける音。 大尉:「立て!」 アーチャーとリードは、後ろ手に縛られる。 牢屋を出された。 細胞船で警告音が鳴る。 メイウェザー:「何の揺れです?」 タッカー:「遮蔽発生機からパワーが流れてる。」 大気圏内の細胞船は、遮蔽が解けてしまった。 タッカー:「ワープリレーはオフラインだよな。」 メイウェザー:「第1次と予備は。」 「…武器ノードが作動してる。2次システムの全パワーを遮蔽に回したんじゃ…」 「そうです。」 「…発進時に再起動するプログラムか。」 トゥポル:「軍用機が 3機、左舷に接近中。行く手を妨害しています。」 落下台が用意されている。 連れてこられるアーチャーたち。ゴーシスがいる。 台の上には、ひもがつけられている。 細胞船に向けて発砲する、異星人軍用機。 タッカー:「トラヴィス、もっと安定させろ!」 メイウェザー:「攻撃をやめてくれたら、簡単にできますよ。」 トゥポル:「少佐!」 タッカー:「お待ちを。」 必死に逃げる細胞船は、再び遮蔽に入った。 ゴーシスに向き直るアーチャー。「彼は戦術士官だ。同盟軍の配備や兵器について、何でも欲しい情報を知っている。武器のことも。」 リード:「船長。」 「…彼を殺す必要はない。」 無言で指示するゴーシス。2人は絞首台へ上げられ、首にロープをつけられる。 すると、辺りに音が響いてきた。風が巻き起こる。 空中に手とフェイズ銃だけが見える。処刑台にいる異星人が撃たれた。 隠れる軍人たち。「下がれ!」「急襲だ!」 見えない細胞船から下りるタッカーとトゥポル。実弾銃で応戦する異星人。 アーチャーとリードは解放され、みな近くに隠れた。 タッカー:「急いで。」 先に細胞船が見える。 リード:「船長、銃と通信機を、取り返さないと。」 アーチャー:「待っててくれよ。」 トゥポルに合図する。 次々と撃たれていく異星人。 アーチャーは飛び込んだ。 アーチャーは部屋に入り、見張りを倒す。 置いてあった全ての装置とレントゲン写真を持ち出した。 戻ってくるアーチャー。 既に皆、細胞船に乗り込んでいる。 トゥポルの援護を受けながら、アーチャーも中に入った。「行こう!」 閉まるハッチ。驚きの表情で見つめるゴーシス。 音が小さくなっていく。 報告するメイウェザー。「シャトルポッドは元の位置にあるので、2分で着きます。」 アーチャーは服の中を探している。 タッカー:「何か?」 リード:「船長? これをお探しで?」 コミュニケーターを渡した。 ため息をつくアーチャー。 ワープ航行中のエンタープライズ。 ドアチャイムに応えるアーチャー。「入れ。」 トゥポルはパッドを渡す。「前方をスキャンしました。3光年以内に青色巨星の星団※15があります。」 アーチャー:「惑星は?」 「有人惑星はゼロです。」 「…骨休めしていくか。コース変更の指示を。」 「了解。…ほかに何か。」 「……君は危険を冒し、助けに来てくれた。遮蔽は失敗の可能性もあった。」 「予想内の危険です。」 「……感謝している。……装置を全て回収できたのが何よりだ。通信機、フェイズ銃、シャトルポッド。一つでも残したら、彼らに大きなダメージを与えていた。」 「…少なからずダメージを与えました。」 「…同盟側に対する認識を、変えてしまった。」 「彼らは同盟側が遺伝子強化兵を造り出す能力があると思いこんでいます。当然粒子兵器も。」 「スリバン船のおかげで助かった。彼らは同盟国が、透明な船を開発したと思っているだろうな?」 「…物は残さなくても、相手の文化を汚染できるんです。」 パッドを返すアーチャー。 トゥポルはドアを開け、立ち止まった。「彼らを守るために、船長は自らを…犠牲に。…そのことは予想外でした。」 作戦室を出ていく。 窓の外を見つめるアーチャー。 タッカーの手を診るフロックス。「フーン、経過は良好です。」 タッカー:「ほんと、じゃこれは。」 笑うフロックス。「問題ない。」 タッカー:「俺には大問題だ。」 「焦らなーい、フン。ノンビリですよ?」 「……どうも!」 医療室のドアスイッチを押すタッカー。だがその右手は、中央だけポッカリと小さな穴が空いていた。 タッカーはフロックスに向き直った。首を振り、出ていく。 青色巨星星団へ向かうエンタープライズ。 |
※15: 吹き替えでは「巨大な青い星団」。"blue-giant" の cluster です |
感想
コミュニケーターをなくすという大失態エピソード。「艦隊の誓い」タイプの話になることは予想できますが、ストーリー展開そのものも予想がつく内容でした。意地でも転送機を使わないことや、翻訳機でもあるはずのコミュニケーターを取られても会話できることは、どうでもよく思えてきます。 これでスリバン船が絡まなかったら、それこそ大失態でしたね。絡んでもあまり変わらないという気もしますが…。 |
第33話 "The Seventh" 「封印された記憶」 | 第35話 "Singularity" 「三重星系の誘惑」 |