エンタープライズ。 
 タッカー:「何かあったんだ。連絡しよう。」 
 サトウ:「周囲に人がいたら、呼び出し音が目立ちます。」 
 トゥポル:「危険は覚悟の上です。」 
 操作するサトウ。 
 トゥポル:「…トゥポルより、アーチャー船長。」 
 サトウ:「……回線オンです。」 
 「…船長、応答願います。……回線を閉じて。」 
 タッカー:「位置を確認したか?」 
 表示させるサトウ。「この地区内のどこかです。」 
 タッカー:「酒場から 30キロ以上離れてる。シャトルの位置は?」 
 「…動いてません。」 
 「徒歩で行ける距離じゃない。こんなに短時間じゃ。」 
 「電車か車を使ったのかも。」 
 「計画変更なら連絡がある。」 
 トゥポル:「…生命反応を分離して。2人の正確な位置が知りたい。」 
 サトウ:「この辺りにはほぼ 10万の人が住んでいます。」 
 タッカー:「低い軌道を飛べば 2人の居所がわかるかも。」 
 トゥポル:「これ以上近づけば感知されます。このまま続けて。」
  
 夜の施設。 
 看守が歩いている。牢の中にアーチャーがいた。 
 足をさするリード。 
 アーチャー:「まだ痛むか。」 
 リード:「ドクターから薬をもらわずに。…看守は薬※9を持ってきてくれるでしょうか。…いやあ、丁重に頼めば。」 
 「あきらめろ。」 
 「…私の通信機を探しに来て、船長のも取られてしまった。その上フェイズ銃と、スキャナーまで。」 
 「シャトルが見つからないといいが。」 
 「…彼らが本気で同盟側のスパイだと思いこんでるなら…真実を伝えるという手もあります。」 
 「…我々の話を信じないだろう。」 
 「そりゃあわかりません。」 
 「…別世界から来たというのか? …驚く顔が目に浮かぶよ。」 
 笑うリード。 
 大尉たちがやってきた。鍵が開けられる。 
 アーチャー:「なるべく黙ってよう。」 
 リード:「わかりました。」 
 中に入る大尉。「ついてこい。」 
 牢を出る 2人。
  
 フェイズ銃を手にする軍人。 
 アーチャーとリードが連れてこられる。椅子に座らされた。 
 ゴーシス※10:「…どっちが船長だ? …この送信機を調べていたら実に不思議なことが起きた。音が鳴ったので開けてみたら、トゥポルと名乗る女の声が聞こえてきて、船長の無事をひどく心配していた。女が呼びかけた相手は。」 
 アーチャー:「……私が船長だ。」 
 「軍の士官をスパイとして引き抜くとは、同盟側も相当焦っているらしい。」 
 「…我々は軍とは無関係だ。」 
 「…お遊びのボートの船長だというのか。」 
 アーチャーは大尉を見た。 
 大尉:「…フン。」 
 ゴーシス:「…トランシーバーだろ、周波数はいくつだ。通信距離は。」 
 アーチャー:「知らない。」 
 「…こっちは計算機のようだな? 答えろ、使い方は。」 
 目をそらすリード。ゴーシスに合図された大尉は、アーチャーを殴った。 
 ゴーシス:「上官が返事を待っている。士官なら私の気持ちがわかるだろう。暴力は不本意だが、協力してもらわないと困るんだ。」 
 アーチャー:「…悪いが…力にはなれん。」 
 「……今朝の集会は面白かったか。それが目的なんだろ。お前たちが、カルタレイ総裁と同じ日にこの街に現れるとは妙だと思わないか? …総裁の警備体制を偵察しに来たのか。それとも暗殺のためか。…お前らが大昔からこの土地を狙っているのはわかってる。総裁は格好の標的だ。」 
 「…我々は旅行者だ。スパイじゃない。」 
 「トゥポルという女は一体どこに、隠れている。」 
 無言のアーチャーを、また大尉が殴る。倒れるアーチャー。 
 立ち上がったリードも軍人たちに倒された。 
 また座らされる。 
 ゴーシスはアーチャーの顔に気づき、額のメイクを取った。驚くゴーシス。 
 大尉もリードのを取る。 
 ゴーシス:「整形してたのか。」 
 大尉:「…将軍。…血液が…赤い!」 
 「…テメック※11に知らせろ。身体の中まで徹底的に調べろ。」 
 連行される 2人。
  
 施設の上空写真を示すサトウ。「2人はここ。この敷地内にいます。」 
 メイウェザー:「監視塔に、銃の据えつけ台。ホテルじゃない。」 
 タッカー:「シャトルポッド2 で行って、ここに降りたらどうだろう。2人は 30メートル以内にいる。密かに奪回して軌道に戻るんだ。」 
 トゥポル:「少佐が捕まったら、シャトルを残すことになってしまいます。確実に社会の進展に影響を及ぼすでしょう。」 
 「船が見えなかったらどうだ。いつかのスリバン船を使うんだ。螺旋艦からクラングを助けた時のさ。※12暇な時ずっと調べていたんだ。遮蔽の原理はもう少しでわかる。遮蔽装置を稼働できれば、相手の防御をすり抜けて 2人を奪回できる。敵に知られずに。」 
 「すぐ始めて。」 
 「手伝ってくれ。」 
 メイウェザー:「了解。」 
 トゥポル:「…少尉は施設内から出される通信を傍受して。船長とリード大尉の状況が、つかめるかもしれない。」 
 サトウ:「了解。」
  
 スリバン細胞船を調べているタッカー。「なぜなんだ。パワーコンバーターはオン。電気は確実にリレーを流れてるのに。…なぜ船体が消えない。」 
 メイウェザー:「このパネルが、遮蔽装置じゃないとか。」 
 「いや、装置の機能は全て特定した。間違いない。…もう一度、パワーアップシーケンスを。」 
 「『遮蔽』ってボタンがあれば、こんなに苦労せずに済む。」 
 「…ちょっと待て、トラヴィス。」 
 タッカーは道具を取りだし、パネルに触れた。 
 だが電流が流れ、タッカーは吹き飛ばされた。 
 メイウェザー:「大丈夫ですか。」 
 タッカー:「ああ…ちょっと吹っ飛ばされただけさ。」 
 見ると、近くに置いてあった道具箱が、途中まで遮蔽された。 
 メイウェザーは気づいた。「それだけじゃ、ないみたいですよ。」 
 右腕を上げるタッカー。肩から先が見えなくなっていた。
 
 
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※9: 原語ではエプソム塩 (瀉利塩、Epsom salt)
  
※10: Gosis (フランシス・ガイナン Francis Guinan VOY第8話 "Ex Post Facto" 「殺された者の記憶」のクレイ長官 (Minister Kray)、"Live Fast and Prosper" の Zar 役) 声:小島敏彦、TOS 現マッコイ、DS9 2代目ブラントなど
  
※11: Temec
  
※12: ENT第2話 "Broken Bow, Part II" 「夢への旅立ち(後編)」より
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