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エンタープライズ エピソードガイド
第2話「夢への旅立ち」(後)
Broken Bow, Part II

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・本編
連行されるアーチャーとサトウ。サトウだけフォースフィールドの中へ入れられた。
トゥポルとタッカーも捕まっている。
アーチャーを見るトゥポル。アーチャーは何も言わず、別の場所へ連れて行かれる。

誰もいない場所へアーチャーを置き去りにすると、スリバンたちは去っていった。
女性の声が響いた。「クラングをお探しとか。なぜ?」
アーチャー:「何者だ。」
姿を見せる女性。「私はサリン※1。クラングを誘拐した連中のことが知りたいの。」
アーチャー:「こっちが聞こうと思っていたのに。犯人は君の仲間にそっくりだった。」
サリン:「彼をどこに連れて行く気?」
「君は仲間と似てないな。」
「似てた方がよかった?」 サリンは地球人と変わらないように見える。
「私はクラングを返してもらいたいだけだ。」
「どこに連れていくの?」
「クロノス。同胞のもとに帰す。そんなに近づいたら痛い目に遭うぞ?」
「危害を加えるつもりならやめておくことね?」 アーチャーの顔に手を伸ばすサリン。
「何をする。」
「なぜクラングを母星に帰すの?」
「こんな状況じゃなかったら大いに喜ぶところなんだが…」
サリンはいきなりアーチャーにキスした。
口を離すと、サリンの姿はスリバンのものになった。
アーチャー:「いやあ…これは、驚いたな。」
フードを脱ぐサリン。「私には信用度を測る能力があるの。そのためには接近しないと。」
アーチャー:「スリバン人か?」
「私もカバル※2の一員だったけど、今は違う。進化の代償は高すぎた。」
「進化?」
「一部のスリバン人が進歩に熱心なあまり、愚かな計画を立てたの。」
「じゃあ私を信じてくれたんだな? それで…」
「クラングは同胞へ伝言を運んでた。」
「なぜそれを。」
「私が渡した。」
「どんな伝言だ。」
「スリバンはクリンゴン人同士の内戦を誘発するために、帝国内での攻撃を企んでいたのよ。その証拠を、最高評議会に渡すはずだった。証拠がなければ帝国は大混乱に陥る。」
「スリバンはそれで何を得る。」
「カバルは自分じゃ決断しない。時間冷戦※3を戦う、兵士たちなのよ。」
「時間? どういうことだ。」
「彼らは未来から指令を受けるの。」
「何?」
「一緒にクラングを探したいけど、船がないわ? 同船させて欲しい。」
いきなり攻撃してきた。スリバンだ。
サリンも武器を取る。

トゥポルたちが拘束されているそばでも、スリバン同士の撃ち合いが始まった。
サリンは敵を倒し、コンピューターを操作する。
フォースフィールドが解除された。
武器を渡すサリン。「船はどこ?」
アーチャー:「屋上だ、ドッキングポート3。」
「こっちよ!」
上を伝っているスリバンを撃つサリン。

逃げるサリン。
コンピューターでドアを開けた。中に入るアーチャーたち。
最後に入ろうとしたサリンだが、スリバンに撃たれてしまった。倒れる。
反撃するアーチャー。「トリップ!」 サリンに近づく。
サリン:「クラングを探して…」 息絶えた。
アーチャーたちはドアの中に入った。
急速に上昇するエレベーター。

屋上が到着した。
サトウ:「シャトルポッドは?」
タッカー:「向こうだ!」
トゥポル:「違う、こっちよ!」
アーチャーはトゥポルが指した方を選んだ。「急げ!」
コミュニケーターを使うアーチャー。「リード大尉、こちらアーチャー。どうぞ。」
音声は乱れている。
アーチャー:「今屋上だ。君たちもできるだけ早くここまで上がってこい。」

リードたちは既にシャトルにいた。アーチャーの声はほとんど聞こえない。
リード:「連絡を待ってました。我々はシャトルです。」
メイウェザー:「現在地を。嵐がひどくなってきた。」
「今どこですか? 吹雪がますます…」

リードの声は完全にノイズとなった。
シャトルを見つけられないサトウ。「ないわ?」
リード:「やっぱり、あっちだ!」
敵が銃を撃ってきた。
物陰に隠れる 4人。
トゥポルはシャトルの位置を確認する。
撃ち合いが続く。

シャトル内のリード。「吹雪で稲妻なんて初めて見た。」
メイウェザー:「嵐で強い障害が起きています。生体反応を分離できません。位置の特定は無理です。」
「ではヴァルカンを探せ?」
外殻を叩く音がする。トゥポルだ。
メイウェザー:「いました!」

近くに停泊していた船が飛び立った。
強い風が巻き起こる。
シャトルに入ろうとしていたトゥポルは、船が点火したエンジンの勢いで吹き飛ばされた。
雪の上を滑る。武器も落としてしまった。
アーチャー:「ホシを船に頼む! 走れ!」
スリバンと交戦する中、タッカーとサトウはシャトルまでたどり着いた。
アーチャーは武器を拾い、2丁を使う。トゥポルに近づいた。「行け!」
トゥポル:「船長こそ私に任せて船に戻って下さい!」
「行くんだ!」
乗り込むトゥポル。寒さに身体をさする。
反撃しながら走るアーチャー。だが脚を撃たれてしまった。
シャトルから出てきたタッカーとリードが助ける。
何とかシャトルに入ることができた。
メイウェザー:「右舷スラスター、ダウン。」
トゥポル:「無視して離陸!」
痛みに耐えるアーチャー。
シャトルは飛び立った。
スリバンは集まった。「指示を待つんだ。」

命じるトゥポル。「回線オン。副司令官よりエンタープライズ。」
クルー:『どうぞ。』
うめくアーチャー。
トゥポル:「4分でそちらに到着。ドクターを待機させて下さい。」
クルー:『了解しました。怪我人は誰ですか。』
「船長です。私がエンタープライズの指揮を執ります。」
タッカーはトゥポルを見た。

空を飛ぶ宇宙船の模型。海岸で少年アーチャーが操作している。「ダメだよ!」
ヘンリー:「お前ならできる。飛ばすんだ、まっすぐしっかりと。」
2人の近くを通って旋回した模型は、砂浜に落ちてしまった。拾いに行く少年アーチャー。
ヘンリー:「風を恐れちゃだめだ。信じることだよ。」
少年アーチャーが振り向くと、トゥポルが立っていた。

目を閉じたままのアーチャー。


※1: Sarin
(メリンダ・クラーク Melinda Clarke) 声:五十嵐麗、VOY トレスなど

※2: Cabal
「秘密結社、徒党」などの意味

※3: temporal cold war

窓の向こう側にいるフロックス。『すぐに終わりますよ?』
トゥポルと共に下着姿になったタッカー。「やらなきゃだめかな。」
フロックス:『残念ながら君たち 2人だけ、プロトシステアン胞子※4に汚染されていた。区画『B』で適切な除菌ジェル※5を塗るよう用意した。』
トゥポル:「軌道を外れる準備をするよう、伝言を。」 ジェルの容器を取る。
タッカー:「船長は?」
フロックス:『治療中です。』
「治りますか?」
『いずれね!』 さっさと窓を閉めるフロックス。
2人は隣の区画に入った。青い光の中、ジェルを体中に塗り始める。
タッカー:「俺の勘違いかな? 君はこの船の監視役だろ? 宇宙艦隊の一員だとは知らなかったな。」
トゥポル:「ヴァルカンでの地位は少佐より上です。」
「比較できない。これは地球の船だ。指揮を執るなんておかしい。」
「これが済んだらすぐソヴァル大使に連絡します。大使が少佐の上官と話せば、私を支持してくれるでしょうね。」
トゥポルの背中にジェルを塗るタッカー。「君はしてやったりの気分だろう。船長が医療室で意識不明の間に任務を終了できる。顔色をうかがう必要もない。」
トゥポル:「大事な荷物は盗まれた。ライジェルでは大勢のスリバン人が殺され、船長も重傷を負いました。」 タッカーに耳を塗られ、避ける。「この任務自体もう終了しているようなものです。背を向けて。」
背中を見せるタッカー。「そりゃあわかる。人間はまたドジを踏んだとしよう。だが船長の脚に穴を開けた連中が、クラングを誘拐した奴らとつながりがあるのは確かだ。」
トゥポル:「何が言いたいの?」
「…アーチャー船長は任務をやり遂げるべきだ。一旦始めたことは、最後までやり遂げる人だからねえ。船長の父親がそうだった。」
「ヘンリー・アーチャーの業績を邪魔した責任はヴァルカンにあるという船長の思いこみを信じているのね?」
「彼は自分が作ったエンジンが飛ぶのを見たかっただけだ。失敗の機会さえ与えられなかった。そして 30年後、君はあの時のヴァルカン人たちと全く同じ態度を取ろうとしている。」 出て行くタッカー。ライトが戻る。
トゥポルも続いた。

アーチャーはベッドの上で目を覚ました。ふと見ると、怪我をしたところに奇妙なヒトデ状の生き物がついている。
それを無理矢理引きはがすフロックス。痛むアーチャー。
フロックス:「いいですねえ、なかなかいい。筋肉繊維が綺麗にくっついているよ。」
アーチャー:「一体、何時間…」
「6時間足らずかな? 浸透性ウナギ※6が傷を焼くまでは、寝ててもらうのが一番ですからねえ。」
「どうも。」
水の中にウナギを入れるフロックス。
医療室へトゥポルと一緒にタッカーが入る。「気分はどうです?」
アーチャー:「どうかな。この 6時間によるよ。」
トゥポル:「上級士官として船長に代わって私が指揮を執りました。」
「航行中だなあ。…時間を無駄にしなかったわけか。」 ベッドを降りるアーチャー。
「指揮を再開できますか?」
フロックス:「明日ウナギ療法を受けるならいいですよ?」
アーチャー:「地球までどれぐらいだ。」
タッカー:「地球?」
トゥポル:「船長が撃たれた直後にライジェルを飛び立ったスリバン船を、追跡中です。」
アーチャー:「…そうか。プラズマ崩壊率は、わかったのか?」
「タッカー少佐と共に、センサーを修正しました。…スリバン船のワープ痕跡も検知できます。」
「…『馬鹿げた任務』じゃ、なかったのかな?」
「その思いは変わりません。スリバン人は人間よりずっと進んだ技術をもった敵対人種です。ですが船長代理として大佐の願いを叶える義務を負いました。」
「君は自分の思い通りに、どうにでもできたはずなのに。」
「そろそろブリッジに戻ります。」
「…行ってよし。」 医療室を出て行くトゥポル。
タッカー:「センサーを修正するというのは、彼女の思いつきなんです。」

「エンタープライズ航星日誌※7、2151年4月16日。」
アーチャーの部屋。
「…スリバン船を 10時間追跡中、これも…科学士官のおかげだ。トゥポルがセンサーの調整方法を思いついた。…コンピューター、ポーズ。命を救ったせいか、彼女は協力的だ。真心は必ず伝わる、でもヴァルカン人らしくない。日誌再開。ああ…クラングがまだ生きているという確証はないが、もしも…スリバン人の女の話が正しいなら、彼を捜し出さなければならない。コンピューター、ポーズ。恩を返してくれたヴァルカンがいたか?」 ポートスが見ている。「いや。私も知らん。…日誌再開。時間冷戦のことを副司令官トゥポルに聞くべきどうか、決めかねている。今度は彼女を信用するなと言うが。」 ワープを抜けたことに気づいた。「コンピューター、ポーズ。」 連絡を入れる。「アーチャーよりトゥポル。状況は。」
トゥポル:『ブリッジに出られる元気がおありなら、お願いします。』

スクリーンに惑星が映っている。
ターボリフトを降りたアーチャー。
トゥポル:「…ガスの巨星です。」
アーチャー:「あの大きさだと、クラス6 か 7 だろう。」
「クラス7 です。…スリバン船は数時間前にインパルスエンジンに戻り、コースを変更して大気圏外の放射帯を通ったようです。」
「見失ったな。」
「はい。」
「…もっと接近してくれ。」
操縦するメイウェザー。惑星が大きくなる。
アーチャー:「うーん…どうだ。」
リード:「放射帯がワープ痕跡を散らしてしまったので、断片しか感知できません。」
「何か方法はないか。」
操作するトゥポル。断片が表示される。「大尉、断片をスペクトル分析にかけて下さい。」
それぞれの断片に情報が表示された。
リード:「歪みが多すぎて、崩壊率が一致しません。」
スクリーンを見つめたトゥポル。「各断片の軌跡を計算してみて。」
リード:「船長?」
アーチャー:「聞こえただろ? センサーアレイ再調整、ナローバンド、中距離に。」
クルー:「了解。」
トゥポル:「それから熱圏の分子密度を測って。」
軌跡は何本もの線を描き、惑星の中へ向かっていた。
アーチャー:「君の勘は当たってた。断片は、一隻のスリバン船のものじゃないな。」
トゥポル:「14隻ですね。全て 6時間以内のものです。我々は捜し物を見つけたようです。」
「うん。ターゲットスキャナーの調子は?」
リード:「準備 OK です。」
「……武器を、オンラインにしろ。船体を装甲モードに※8。60度方向に設定。攻撃準備。」


※4: protocystian spore

※5: decon gel
後の時代では、転送収容時に自動的にバイオフィルターが作動します

※6: osmotic eel

※7: 一般的に "Captain's Log" とされる後のシリーズと違い、"Enterprise Starlog" と呼ばれています。ということは日本語では、この場合に限り直訳の「恒星日誌」でも誤りではないということに。また、宇宙暦は使われていませんね

※8: 原語では「極性化しろ」。後にリードが「極性が変わりました」と言っているのも、この設定の再調整を行ったという意味です。明らかに後の時代のシールドが実用化されていないとわかるセリフですね

スリバンに話す未来の人物。『サリンは何か渡したのか。』
スリバン:「わかりません。」
『では何がわかってる。』
「我々を追ってきました。」
『目的はお前か、クラングか?』
「はっきりしませんが、螺旋艦※9を突き止められる前に奴らを潰します。」
『人間と関わるのは早すぎだ。ヴァルカンともな。予定外だ。伝言をクロノスに届けさせてはならん。人間の手にあるなら、奴らを阻止しろ。』
うなずくスリバン。

ガス巨星の大気圏に入ったエンタープライズ。
サトウ:「センサー分解力が、約12キロ低下しました。」
アーチャー:「トラヴィス。」
メイウェザー:「お任せ下さい!」
トゥポル:「シクロヘキサンの層を抜ければ、状況は良くなるはずです。」
別の層に入った。揺れが大きくなる。
アーチャー:「ますますひどくなってきたようだな。」
スコープを覗くトゥポル。「液体リンですね。シクロヘキサンの層の下にリンがあるとは予想外です。」
サトウ:「地球に帰ったらシートベルトの設置を。」
アーチャー:「ホシ、ちょっとした天気の崩れさ。」
液体リンの層を抜けた。
サトウ:「センサー戻りました。」
アーチャー:「水平飛行。長距離スキャンに。」
トゥポル:「船を 2隻感知しました。方位 1-1-9、マーク 7。」
「見せてくれ。」
遠くにスリバン船が映った。
リード:「インパルスとワープエンジンです。」
アーチャー:「武器の種類は。」
「遠すぎます!」
メイウェザー:「船長、3-4-2、マーク 1-2 に怪しい物を感知しました。巨大な物体です。」
縦長の構造物が映し出される。
アーチャー:「全センサーオン。正体を突き止めろ。」
取りかかるクルー。
アーチャー:「拡大しろ。」
その周りに、小型のスリバン船が多数飛行している。
アーチャー:「生体反応は。」
サトウ:「3千以上ありますが、クリンゴン人は分離できません。」
突然激しく揺れるブリッジ。
リード:「粒子ビームですねえ。」
タッカーの声が入る。『ブリッジ! 機関室は大混乱、何事ですか!』

蒸気が噴き出す機関室を歩くタッカー。
アーチャーの返答。『悪人どもが悪さをしてるのさ。』

提案するトゥポル。「リンの層に戻った方がいいと思います。」
アーチャー:「撤退だ。」
ビームで攻撃してくるスリバン船。エンタープライズは上空へ消えた。
敵は引き返す。
トゥポル:「船長。」
アーチャー:「わかったか?」
「この螺旋体は、無数の船が集まってできているようです。」 コンピューターに構造図が表示されている。「それぞれの船は磁気シールの結合システムで固定されています。」
図を指さすサトウ。「ほら、ここです。…これはスリバン人の生体反応じゃありません。」
トゥポル:「クリンゴンとも断言できない。」
アーチャー:「クラングだとしても、救出は難しいだろうな。」
リード:「では転送装置を使いましょう。」
「クラングを裏返しにする危険は冒せない。グラップラー※10は液体大気でも使えるか?」
「…と思います。」
「では準備を。頼むぞ、メイウェザー少尉。」
うなずくメイウェザー。
再び下層に戻るエンタープライズ。球形のスリバン・セルシップ※11を攻撃する。
反撃される。
リード:「腹部装甲ダウン。」
アーチャー:「位置を維持。」
「接近します。7,000メートル。6,000メートル。」
トゥポル:「このままじゃ危険です。」
アーチャー:「もう少し耐えるんだ。」
リード:「1,000メートル! 前方装甲オフライン!」
近づいてくるスリバン船。
アーチャー:「大尉※12、今だ!」
エンタープライズの下部から出た発射機から、グラップラーが打ち出された。
セルシップに命中する。すぐにスリバンが脱出した。
船を連れたまま、上に引き返すエンタープライズ。
喜ぶリード。「捕獲に成功しました!」
アーチャーはうなずいた。

尋ねるタッカー。「別の質問を。」
メイウェザー:「それでは、これは?」 コンピューターを示す。まだ船の揺れは続いている。
「ピッチコントロール。」
「いいえ、そりゃあこっちで、これは誘導システムです。」 画面に表示されたセルシップのパネル。
「ああ、ピッチコントロールに誘導システム。わかった。」
「ドッキング接続機の、設置方法は。」
アーチャー:「慣性クランプを外す。ここと、ここと、ここ。そして同軸ポートを初期化。」
「そうです。では補助スロットルは。」
タッカー:「うーん…これは違うなあ。」
「…船長、僕だったら楽に操縦できます。是非僕に行かせて下さい。」
アーチャー:「少尉、君はエンタープライズを頼む。」
タッカー:「これ、これだ! 補助スロットル!」

うなずくメイウェザー。外部の兵器の音が大きくなる。
トゥポル:「船長、さっきの攻撃でこちらの情報が明らかになれば、船の位置を察知されてしまいます。」
アーチャー:「少しペースを上げてくれ、トラヴィス。」
タッカー:「いくら複雑と言っても、上下と前後の動きだけ。何とかなります。」

巨大なスリバン艦が、上の液体層に向けて武器を発射している。
アーチャー:「すぐに戻って来るさ。クロノスへのコースを、設定しといてくれ。」 コミュニケーターを準備する。
揺れはますます激しくなる。
トゥポル:「2日あればヴァルカン船を呼べます。人間だけでやるのは不合理です。」
アーチャー:「我々だけでやる意味を、まだ理解していないようだな。」
「独立心を示したいなら、いずれ機会があるでしょう。」
「明日まで待てない。」
「2人とも殺されます。」
「心配しているのか? 君も人間を心配してくれるようになったか。」
「何かあればヴァルカン最高司令部に責任を問われるのは私です。」
作戦室のチャイムが鳴った。
アーチャー:「どうぞ。」
リードが入る。
アーチャー:「できたか。」
「はい。」 持ってきたケースの一つを開ける。「これで 100メートル内の磁気ロックの極性を逆にできます。スイッチをオンにしたら、5秒しかありません。それから、もう一つ。」
中には携帯型の武器が入っていた。
アーチャー:「おお、新兵器か。」
渡すリード。「フェイズ銃※13です。設定は麻痺と殺傷の 2種類。間違えないよう、気をつけて下さい。」
揺れに身体を支えるアーチャー。「時間だ。」 2つのケースが閉じられる。
アーチャーはトゥポルに言った。「船を頼む。」

シャトル格納庫から、スリバン船が発射された。下へ向かう。
アーチャーと共に乗っているタッカーが操縦している。
パネルの一部が赤く光り、音を発している。
アーチャー:「何だ?」
タッカー:「計器類は無視しろということです。」
「そりゃ心強い。」

エンタープライズへの爆弾による攻撃は続く。
リード:「耐えてくれえ?」
メイウェザー:「危ないところでした。」
「船を移動させれば、時間稼ぎができますよ?」
トゥポル:「でも、そうすれば船長が戻ってこられなくなります。」

セルシップのタッカー。「着いたようです。」
アーチャー:「ドッキング接続機を、オンラインにしろ。」
何とか操作するタッカー。
アーチャー:「同軸ポートは?」
タッカー:「…オープン。」
「行こう。」
液体層を抜ける。
タッカー:「どこだ? ここにあるはず。」
アーチャー:「右舷 90度傾斜。」
螺旋艦が見えた。
タッカー:「よーし、いいぞう。」
アーチャー:「あそこで上部を支えてる。その真下に移動だ。時計の針と反対に前進。」 携帯スキャナー※14を開く。
螺旋艦に近づいていくスリバン船。
アーチャー:「もう少し。もうちょっと。」
だが、螺旋艦の壁にぶつかった。
顔を見合わせる 2人。
ドッキングポートが見えてきた。
アーチャー:「そこだ。」
ドッキングする。

セルシップの扉が開く。
フェイズ銃を持ち、通路を歩いていくアーチャーとタッカー。
誰の姿もない。
スキャナーを使うアーチャーは、スリバンを倒した。「麻痺は効くようだ。」

耳につけた小型機械で音を聞いていたサトウ。「何かにつかまって!」
連続攻撃を受けるエンタープライズ。警報が鳴る。
リード:「移動させましょう! 肝心のエンタープライズが破壊されてしまったら、元も子もありません。」
トゥポル:「少尉の耳が頼りです。5キロ移動させて。」
メイウェザー:「方向は。」
「どこでもいい。」

部屋に入ると、クラングが椅子に固定されていた。
タッカー:「楽に連れ出せそうですね。大丈夫、今外してやるからな。」
解放されたクラングは叫び、いきなりタッカーを突き飛ばした。
銃を突きつけるアーチャー。「我々に君を助ける義務はないんだぞ?」
静かになるクラング。タッカーは立ち上がる。
アーチャー:「大丈夫か? …わかってくれたらしい。手を貸してやれ。」
渋々近づくタッカー。クラングの手を取り、共に出て行く。

通路を歩きながら叫ぶクラング。「Ou'taw boh!」
アーチャー:「静かに!」
「Borat! Borat! Muh tok!」
スリバンが撃ってきた。
クラング:「Dajvo tagh! Borat!」
リード:「黙らせて下さいよ。」
アーチャー:「磁気装置を。」
近づくスリバン。
クラングは素早くスリバンを締め上げ、殴り倒した。
タッカー:「助かった。」
撃ってきたスリバンを麻痺させるアーチャー。「先に行け。私もすぐ行く。」
向かう 2人。
アーチャーは磁気装置を設置し、隠れた。
すぐに装置は起動し、明るい光を発する。
アーチャーが立っていた床も、二つに分かれていく。
外を見ると、多数のスリバン船が分離していく。空気を逃さないよう自動的にフォースフィールドが張られた。
スリバンと交戦しながら進むアーチャー。
大小様々な、無数のセルシップが離れる。

クラングとスリバン船に乗ったタッカー。「船長!」 落ち着かないクラング。
アーチャーの通信。『上手くいったぞ。』
タッカー:「今どこです。」

歩き続けるアーチャー。「まだ中央コアだ。クラングをエンタープライズに頼むぞ。」

タッカーは尋ねた。「でも船長は。」
アーチャー:『クラングを降ろしたら、戻ってきてくれ。』
「生体反応を分離しやすいよう、スリバン人から離れていて下さいよ?」

先へ進むアーチャー。「ああ、努力しよう。」

操縦するタッカー。
螺旋艦を離れるセルシップ。他の放り出された船は、互いにぶつかって爆発する。


※9: Helix

※10: grappler
grapple=組うち、組打ち。後の時代におけるトラクタービームの代わりですね

※11: Suliban cell ship
セル=細胞で、螺旋艦の構造をなしていることから。エピソード中では言及されていません

※12: 原語では「ミスター・リード」。なぜか「少尉」と誤訳。分割版では大尉に修正されています

※13: phase-pistol
後のフェイザーと思われます。ただしレーザーが使われていた時期もあります (TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」)

※14: 脚本から、トリコーダーではないようです

タッカーに向かって叫ぶクラング。
タッカー:「こっちだってあんたの臭いはたまらない、あまり近づくな!」
クラング:「MajOa!」
「どういうことだ! エンタープライズが消えてる。」

報告するリード。「再び爆弾が接近中。」
トゥポル:「5キロ移動させて、少尉。」
メイウェザー:「この速度じゃ、船長は絶対迷子になる。」
サトウ:「待って、何か聞こえます。」
トゥポル:「増幅して。」
ノイズがブリッジに流される。聞き入るクルー。
サトウ:「タッカー少佐です。」
リード:「雑音にしか聞こえない。」
音に集中するサトウ。「中音域の、狭い周波数だけです。…スラスター排ガスを点火するところだと言っています。」
スコープを使うトゥポル。「座標、方位 1-5-8、マーク 1-3。」
メイウェザー:「設定。」
「前進、時速 50キロ。」
操作するメイウェザー。
トゥポルはサトウに言った。「Shaya tonat.」
微笑むサトウ。「どういたしまして。」
メイウェザー:「2キロ先、真っ正面。」
トゥポル:「ドッキング作業開始。」
サトウ:「生体反応が 2つしかありません。クリンゴン人と、人間 1人。」

スキャナーを使って進むアーチャーは、奇妙な反応があることに気づいた。
そのドアへ向かって行くと、自動的に開いた。
狭い区画内に入るとドアは閉まり、青い光が明滅する。
それが終わると、反対側のドアが開いた。広い部屋に出る。
アーチャーは自分の動きが奇妙なことを知った。まるで残像が見えるようだ。音も反響する。

強い口調で言うタッカー。「今すぐに船を戻すんだ。」
トゥポル:「我々の任務はクリンゴン人を母星に戻すこと。救出作業すれば任務の遂行が危うくなります。」
「私は船長に戻れとはっきり命令された。」
「副司令官として船長の指令を解釈するのは私です。」
「それじゃ君の解釈とやらを聞かせてくれよ。」 2人の話を聞いているサトウたち。
「アーチャー船長が後で戻れと言ったのは、そう言わないと少佐が行かないと思ったからでしょう。」
「それはどういう意味だ。」
「少佐は船長の救出という馬鹿げた行為でクラングを危険にさらしていたかもしれません。」
「信じられないね!」
「状況を論理的に判断しなければなりません。」
「船長が屋上で君を助けに戻った時、何かを分析した記憶はないぞ!」
立ち上がるトゥポル。「あれは、状況が全く違います。」
タッカー:「そうかな?」

アーチャーがさっき入ってきたドアが開いた。誰もいない。
ドアは勝手に閉まった。
スリバンの声だけが部屋に響く。「時間の無駄だ。クラングは何も知らない。この部屋で銃を発射するのは賢明とは言えないぞ?」
アーチャー:「この部屋は何なんだ? 何が起きている。」
「好奇心が強いな、ジョン? ジョンと呼ばせてくれ。」
「名前を知っていたことに感動すべきかな?」
「君のことは何でもお見通しだ。本人以上にね。」
「そっちが断然有利のようだな。だったらせめて姿を現してくれてもいいんじゃないかあ? 顔ぐらい拝ませてくれよ。」

報告するリード。「船体の極性が変わりました。」
トゥポル:「インパルスエンジン待機。タッカー少佐、現状は。」

作業中のタッカー。「自動シーケンサーはオンラインですが、リング形状は 2ミクロンずれています。」
トゥポル:『修正を。』
「軽く言ってくれる。」

トゥポルは言った。「敵の防備が復旧したら、船長は永遠に戻ってこられません。」

スリバンの声が続く。「サリンの情報の中身をつかんでいたら、君はクラングを探しにここまでこなかった。つまり君を殺すこともない。あきらめるなら出してやろう。どうだ?」
ドアが開いたが、同時に別の場所に一瞬スリバンの姿が見えた。
アーチャー:「この部屋の動きは、実に面白い。クリンゴン同士を戦わせて得た報酬なのか? それとも時間冷戦の、戦利品かな?」
突然、スリバンがアーチャーに体当たりしてきた。
アーチャーが落としたフェイズ銃を拾うスリバン。起きあがるアーチャー。
スリバン:「逃げられたのに馬鹿な奴だ。」
アーチャー:「そうかい? だったら案外君は、私のことを知らないな。」
「とんでもない。私は君が死ぬ日だって知っている。だがどうやらその日が早まりそうだ。」
スリバンはフェイズ銃を発射した。ゆっくりとビームがアーチャーに当たるが、何も起こらない。
すると実際のビームが再び発射された。アーチャーはギリギリのところで、それをかわす。
驚くスリバン。ビームは壁に当たり、衝撃波を発生させた。
吹き飛ばされ、銃を落とすスリバン。
隠れるアーチャー。「どうしたんだ? こっちは遺伝子トリックは何も使ってないぞ?」
スリバン:「君らがトリックと呼ぶものを、我々は進化と呼ぶ! 人間の遺伝子は、サルと大して変わりないということを知っていたかね。スリバン人は人間のような忍耐力を、元々持ち合わせていないものでね。」 フェイズ銃を拾う。
「進化のスピードを上げるために、悪魔と手を結んだのか。」 アーチャーは持っていた物を壁に放り投げた。
そちらに向けて銃を撃つスリバン。また衝撃波が発生する。
衝撃波が迫ってくる。アーチャーはドアの向こうに飛び込んだ。
ドアが閉まる直前、スリバンも入る。
光が明滅する中、殴り合う 2人。

下層へ向かい、セルシップの攻撃を受けるエンタープライズ。
螺旋艦へ近づく。
リード:「右舷方向 4隻接近中!」
トゥポル:「ドッキングの可能性は?」
メイウェザー:「難しい状況です。」
トゥポルは伝えた。「タッカー少佐、プラン『B』に変更します。」

取っ組み合うアーチャーとスリバン。光は収まり、反対側のドアが開いた。
スリバンはアーチャーを押さえ、笑った。
手首を 180度ひねり、フェイズ銃を手にする。
だがアーチャーはスリバンを殴り、逃げていく。

命じるトゥポル。「今よ!」

走っているアーチャーの姿は、転送で非実体化した。スリバンの撃ったビームが通過していく。

アーチャーは転送室に実体化した。一瞬何が起こったかわからない。
タッカー:「成功しました。」
タッカーを見るアーチャー。
タッカー:「すいません、これしかなかったもんで。」
アーチャーは見上げた。「ああ…」 身体を確かめる。
エンタープライズは上昇していく。
ガス巨星を離れ、ワープに入った。

クロノス。
クリンゴン人たちが集まり、騒いでいる。「Pung ghap HoS! Ram Meqmey! Vubpu' jon nuchpa!」
大きな音が響いた。
中央の老クリンゴン人※15。「Malja'gor.」
扉が開けられると、クラング、アーチャー、サトウ、トゥポルが立っていた。
静かになる一同。
4人は中に入る。
前に進み出たクラング。「Wo'migh Oagh! O'apla!」
アーチャーに説明するサトウ。「帝国の名を汚した責任を取って、死ぬ覚悟があると言っているようです。」
老クリンゴンはクラングに近づいた。ナイフを取り出す。
驚くサトウ。
クラングの手を切る老クリンゴン。「Poq!」
控えていたクリンゴン人※16が血液を採取する。
微笑む老クリンゴン。
血液がコンピューターにかけられる。
モニターで赤血球の中が拡大されていく。
そこには、電子的な情報が隠されている。大きな歓声が上がった。
老クリンゴンはアーチャーに近づいた。「ChugDah hegh... volcha vay.」 立ち去る。
アーチャー:「お礼の言葉だと思おう。」
サトウ:「クリンゴンのお礼の言葉はないでしょう、多分。」
「何と言ったんだ。」
「言えません?」

クロノス軌道上のエンタープライズ。
アーチャーはポートスを抱いていた。「どうぞ?」 作戦室に入ってきたトゥポルとタッカーに話す。「フォレスト提督から返事を受け取ったところだ。スリバン人のことを、ヴァルカン最高司令部に…得意げに聞かせたそうだよ。人間が情報を与える側になるのは、滅多にないことだ。…みんなに知らせる前に、2人に艦隊からの指令を知らせたい。」
タッカー:「指令?」
「ヴァルカンは君を迎えに、輸送船を送ってくる。」
トゥポル:「エンタープライズで地球に戻るんだと思っていました。」
「…船は地球には戻らない。フォレスト提督は、航行続行を望んでおられるんだ。」
タッカー:「やりましたね!」
「うん。ドクター・フロックスは、多分引き続き我々についてきてくれるだろう。彼は人間のホルモンシステムに興味があるからねえ。」
「作業を交代制にします。」
「いくつか修理箇所は出てくるだろう。攻撃されるのはこれが最後だと願いたいね?」
「全くです。」 出て行くタッカー。トゥポルも続こうとする。
呼び止めるアーチャー。「トゥポル、ちょっと話がある。…私の知るヴァルカン人は…これまでずーっと、あらゆる手段で、人間の自立を妨害してきた。」
トゥポル:「わかります。」
「いやあ、わかっていない。…航行を続けるにあたり、捨てていきたいものがいくつかあるんだ。例えば…偏見や、恨みを抱くこと。…君がいなければ任務は成功しなかった。」
「反論はしません。」
笑うアーチャー。「実感したよ。ヴァルカン科学士官の優秀さというのをね。だが君をクルーに誘うと、自立の準備ができていないように誤解される。」
トゥポル:「プライドをもつべきでしょうね?」
「そうすべきだな?」
「…上官と連絡を取り、今度は自らエンタープライズのクルーを願い出たいと思います。船長の許可を。」
「…許可を与える。」

ブリッジに戻る 2人。
アーチャー:「ホームシックにかかってる者はいないだろうなあ? 艦隊から、宇宙探査を続行する許可が出たぞ。」
クルーは互いに微笑んだ。
アーチャー:「ここから数光年先の惑星に生命体が存在するとわかっている。」
リード:「これですね? 窒素硫化物の大気を感知しました。」
サトウ:「どんな異星人かしら。」
アーチャー:「それを突き止めるのが任務だ。軌道脱出準備。コース設定。」
メイウェザー:「ああ…コース上にイオンストームを感知しました。待機しますか?」
「…風を恐れるな、少尉。ワープ4 で前進だ。」

空を高く舞う模型。
操縦する少年アーチャーはヘンリーと共に、夕日に向かって飛ぶ船を見つめていた。


※15: クリンゴン総裁 Klingon Chancellor
(Peter Henry Schroeder) セリフでは総裁ということはわかりません。声優なし

※16: クリンゴン評議会メンバー Klingon Council Member
(Matt Williamson VOY第162・163話 "Workforce, Part I and II" 「人間改造惑星クアラ(前)(後)」の警備員その2、第171話 "Endgame, Part I" 「道は星雲の彼方へ(前編)」のクリンゴン役) 声優なし

・感想
本国放送開始から 1年あまりで日本でも始まるという、これまでにない恵まれたシリーズがスタートしました。エンタープライズという有名な船を題名にしつつも、あえてスタートレックとは名乗らないという面白い試みがなされています。でも内容的には多少の矛盾はあるものの、これまでのシリーズの後日談ならぬ前日談を丁寧に描いているという印象です。やっぱり ST なんですよね。
過去のシリーズ (未来の設定) とはある程度切り離されているため、いろんな描写が新鮮であり、逆に TOS を彷彿とさせるシーンも多くて面白いですね。CG と違和感なく融合した特殊効果は VOY より更に進んでおり、さすがです。そういう側面からも新たなファンも獲得して欲しいと思うのが当然ですが、ただこのパイロット版に限って言えば、内容を詰め込みすぎで多少初心者の方には苦しいように感じます。もう少しわかりやすくしてもよかったのではないでしょうか。
始まりというだけでなく、他シリーズのパイロット同様後に引っ張る要素として、「時空冷戦」を取り入れています。時間ネタもやりすぎると破綻しますが嫌いなネタではないので、うまく料理してくれることを期待します。


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