スリバンに話す未来の人物。『サリンは何か渡したのか。』
スリバン:「わかりません。」
『では何がわかってる。』
「我々を追ってきました。」
『目的はお前か、クラングか?』
「はっきりしませんが、螺旋艦※9を突き止められる前に奴らを潰します。」
『人間と関わるのは早すぎだ。ヴァルカンともな。予定外だ。伝言をクロノスに届けさせてはならん。人間の手にあるなら、奴らを阻止しろ。』
うなずくスリバン。
ガス巨星の大気圏に入ったエンタープライズ。
サトウ:「センサー分解力が、約12キロ低下しました。」
アーチャー:「トラヴィス。」
メイウェザー:「お任せ下さい!」
トゥポル:「シクロヘキサンの層を抜ければ、状況は良くなるはずです。」
別の層に入った。揺れが大きくなる。
アーチャー:「ますますひどくなってきたようだな。」
スコープを覗くトゥポル。「液体リンですね。シクロヘキサンの層の下にリンがあるとは予想外です。」
サトウ:「地球に帰ったらシートベルトの設置を。」
アーチャー:「ホシ、ちょっとした天気の崩れさ。」
液体リンの層を抜けた。
サトウ:「センサー戻りました。」
アーチャー:「水平飛行。長距離スキャンに。」
トゥポル:「船を 2隻感知しました。方位 1-1-9、マーク 7。」
「見せてくれ。」
遠くにスリバン船が映った。
リード:「インパルスとワープエンジンです。」
アーチャー:「武器の種類は。」
「遠すぎます!」
メイウェザー:「船長、3-4-2、マーク 1-2 に怪しい物を感知しました。巨大な物体です。」
縦長の構造物が映し出される。
アーチャー:「全センサーオン。正体を突き止めろ。」
取りかかるクルー。
アーチャー:「拡大しろ。」
その周りに、小型のスリバン船が多数飛行している。
アーチャー:「生体反応は。」
サトウ:「3千以上ありますが、クリンゴン人は分離できません。」
突然激しく揺れるブリッジ。
リード:「粒子ビームですねえ。」
タッカーの声が入る。『ブリッジ! 機関室は大混乱、何事ですか!』
蒸気が噴き出す機関室を歩くタッカー。
アーチャーの返答。『悪人どもが悪さをしてるのさ。』
提案するトゥポル。「リンの層に戻った方がいいと思います。」
アーチャー:「撤退だ。」
ビームで攻撃してくるスリバン船。エンタープライズは上空へ消えた。
敵は引き返す。
トゥポル:「船長。」
アーチャー:「わかったか?」
「この螺旋体は、無数の船が集まってできているようです。」 コンピューターに構造図が表示されている。「それぞれの船は磁気シールの結合システムで固定されています。」
図を指さすサトウ。「ほら、ここです。…これはスリバン人の生体反応じゃありません。」
トゥポル:「クリンゴンとも断言できない。」
アーチャー:「クラングだとしても、救出は難しいだろうな。」
リード:「では転送装置を使いましょう。」
「クラングを裏返しにする危険は冒せない。グラップラー※10は液体大気でも使えるか?」
「…と思います。」
「では準備を。頼むぞ、メイウェザー少尉。」
うなずくメイウェザー。
再び下層に戻るエンタープライズ。球形のスリバン・セルシップ※11を攻撃する。
反撃される。
リード:「腹部装甲ダウン。」
アーチャー:「位置を維持。」
「接近します。7,000メートル。6,000メートル。」
トゥポル:「このままじゃ危険です。」
アーチャー:「もう少し耐えるんだ。」
リード:「1,000メートル! 前方装甲オフライン!」
近づいてくるスリバン船。
アーチャー:「大尉※12、今だ!」
エンタープライズの下部から出た発射機から、グラップラーが打ち出された。
セルシップに命中する。すぐにスリバンが脱出した。
船を連れたまま、上に引き返すエンタープライズ。
喜ぶリード。「捕獲に成功しました!」
アーチャーはうなずいた。
尋ねるタッカー。「別の質問を。」
メイウェザー:「それでは、これは?」 コンピューターを示す。まだ船の揺れは続いている。
「ピッチコントロール。」
「いいえ、そりゃあこっちで、これは誘導システムです。」 画面に表示されたセルシップのパネル。
「ああ、ピッチコントロールに誘導システム。わかった。」
「ドッキング接続機の、設置方法は。」
アーチャー:「慣性クランプを外す。ここと、ここと、ここ。そして同軸ポートを初期化。」
「そうです。では補助スロットルは。」
タッカー:「うーん…これは違うなあ。」
「…船長、僕だったら楽に操縦できます。是非僕に行かせて下さい。」
アーチャー:「少尉、君はエンタープライズを頼む。」
タッカー:「これ、これだ! 補助スロットル!」
うなずくメイウェザー。外部の兵器の音が大きくなる。
トゥポル:「船長、さっきの攻撃でこちらの情報が明らかになれば、船の位置を察知されてしまいます。」
アーチャー:「少しペースを上げてくれ、トラヴィス。」
タッカー:「いくら複雑と言っても、上下と前後の動きだけ。何とかなります。」
巨大なスリバン艦が、上の液体層に向けて武器を発射している。
アーチャー:「すぐに戻って来るさ。クロノスへのコースを、設定しといてくれ。」 コミュニケーターを準備する。
揺れはますます激しくなる。
トゥポル:「2日あればヴァルカン船を呼べます。人間だけでやるのは不合理です。」
アーチャー:「我々だけでやる意味を、まだ理解していないようだな。」
「独立心を示したいなら、いずれ機会があるでしょう。」
「明日まで待てない。」
「2人とも殺されます。」
「心配しているのか? 君も人間を心配してくれるようになったか。」
「何かあればヴァルカン最高司令部に責任を問われるのは私です。」
作戦室のチャイムが鳴った。
アーチャー:「どうぞ。」
リードが入る。
アーチャー:「できたか。」
「はい。」 持ってきたケースの一つを開ける。「これで 100メートル内の磁気ロックの極性を逆にできます。スイッチをオンにしたら、5秒しかありません。それから、もう一つ。」
中には携帯型の武器が入っていた。
アーチャー:「おお、新兵器か。」
渡すリード。「フェイズ銃※13です。設定は麻痺と殺傷の 2種類。間違えないよう、気をつけて下さい。」
揺れに身体を支えるアーチャー。「時間だ。」 2つのケースが閉じられる。
アーチャーはトゥポルに言った。「船を頼む。」
シャトル格納庫から、スリバン船が発射された。下へ向かう。
アーチャーと共に乗っているタッカーが操縦している。
パネルの一部が赤く光り、音を発している。
アーチャー:「何だ?」
タッカー:「計器類は無視しろということです。」
「そりゃ心強い。」
エンタープライズへの爆弾による攻撃は続く。
リード:「耐えてくれえ?」
メイウェザー:「危ないところでした。」
「船を移動させれば、時間稼ぎができますよ?」
トゥポル:「でも、そうすれば船長が戻ってこられなくなります。」
セルシップのタッカー。「着いたようです。」
アーチャー:「ドッキング接続機を、オンラインにしろ。」
何とか操作するタッカー。
アーチャー:「同軸ポートは?」
タッカー:「…オープン。」
「行こう。」
液体層を抜ける。
タッカー:「どこだ? ここにあるはず。」
アーチャー:「右舷 90度傾斜。」
螺旋艦が見えた。
タッカー:「よーし、いいぞう。」
アーチャー:「あそこで上部を支えてる。その真下に移動だ。時計の針と反対に前進。」 携帯スキャナー※14を開く。
螺旋艦に近づいていくスリバン船。
アーチャー:「もう少し。もうちょっと。」
だが、螺旋艦の壁にぶつかった。
顔を見合わせる 2人。
ドッキングポートが見えてきた。
アーチャー:「そこだ。」
ドッキングする。
セルシップの扉が開く。
フェイズ銃を持ち、通路を歩いていくアーチャーとタッカー。
誰の姿もない。
スキャナーを使うアーチャーは、スリバンを倒した。「麻痺は効くようだ。」
耳につけた小型機械で音を聞いていたサトウ。「何かにつかまって!」
連続攻撃を受けるエンタープライズ。警報が鳴る。
リード:「移動させましょう! 肝心のエンタープライズが破壊されてしまったら、元も子もありません。」
トゥポル:「少尉の耳が頼りです。5キロ移動させて。」
メイウェザー:「方向は。」
「どこでもいい。」
部屋に入ると、クラングが椅子に固定されていた。
タッカー:「楽に連れ出せそうですね。大丈夫、今外してやるからな。」
解放されたクラングは叫び、いきなりタッカーを突き飛ばした。
銃を突きつけるアーチャー。「我々に君を助ける義務はないんだぞ?」
静かになるクラング。タッカーは立ち上がる。
アーチャー:「大丈夫か? …わかってくれたらしい。手を貸してやれ。」
渋々近づくタッカー。クラングの手を取り、共に出て行く。
通路を歩きながら叫ぶクラング。「Ou'taw boh!」
アーチャー:「静かに!」
「Borat! Borat! Muh tok!」
スリバンが撃ってきた。
クラング:「Dajvo tagh! Borat!」
リード:「黙らせて下さいよ。」
アーチャー:「磁気装置を。」
近づくスリバン。
クラングは素早くスリバンを締め上げ、殴り倒した。
タッカー:「助かった。」
撃ってきたスリバンを麻痺させるアーチャー。「先に行け。私もすぐ行く。」
向かう 2人。
アーチャーは磁気装置を設置し、隠れた。
すぐに装置は起動し、明るい光を発する。
アーチャーが立っていた床も、二つに分かれていく。
外を見ると、多数のスリバン船が分離していく。空気を逃さないよう自動的にフォースフィールドが張られた。
スリバンと交戦しながら進むアーチャー。
大小様々な、無数のセルシップが離れる。
クラングとスリバン船に乗ったタッカー。「船長!」 落ち着かないクラング。
アーチャーの通信。『上手くいったぞ。』
タッカー:「今どこです。」
歩き続けるアーチャー。「まだ中央コアだ。クラングをエンタープライズに頼むぞ。」
タッカーは尋ねた。「でも船長は。」
アーチャー:『クラングを降ろしたら、戻ってきてくれ。』
「生体反応を分離しやすいよう、スリバン人から離れていて下さいよ?」
先へ進むアーチャー。「ああ、努力しよう。」
操縦するタッカー。
螺旋艦を離れるセルシップ。他の放り出された船は、互いにぶつかって爆発する。
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※9: Helix
※10: grappler grapple=組うち、組打ち。後の時代におけるトラクタービームの代わりですね
※11: Suliban cell ship セル=細胞で、螺旋艦の構造をなしていることから。エピソード中では言及されていません
※12: 原語では「ミスター・リード」。なぜか「少尉」と誤訳。分割版では大尉に修正されています
※13: phase-pistol 後のフェイザーと思われます。ただしレーザーが使われていた時期もあります (TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」)
※14: 脚本から、トリコーダーではないようです
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