ヴォイジャー エピソードガイド
第70話「ケスとの別れ」
The Gift
イントロダクション
ボーグの武器システムを取り付けたままの姿のヴォイジャー。第2貨物室には、空になった多数のボーグ・アルコーヴ※1が並んでいる。その一つの中で、セブン・オブ・ナインが寝ていた。 扉が開き、ジェインウェイ、ドクター、トゥヴォックの 3人が入ってきた。新しい「ファミリー」の様子をドクターに尋ねるジェインウェイ。今は安定していますが、先のことは何とも言えませんとどクターは答える。呼吸器系統、神経機能、免疫反応などの人間の生理機能が強まってきた。しかしそれがボーグの部分を圧迫し、生物的なものと機械的なものが闘っており、どちらが勝つかはわからない。ジェインウェイはとにかく本人に聞いてみることにし、ハイポスプレーで起こさせた。ボーグの目を通して 3人を観るセブン・オブ・ナイン。ジェインウェイ艦長、一体…と話しかける。アルコーヴから離れ、他の声が聞こえない、静かだ、とつぶやくセブン・オブ・ナイン。脊柱に埋められていたニューロトランシーバーの機能を無効にし、集合体とのリンクを切ったことをジェインウェイが教える。この身体をボーグに戻せというセブン・オブ・ナイン。それはできないというジェインウェイに、この身体をボーグに戻すように再び言うセブン・オブ・ナイン。ジェインウェイは、ボーグの領域に戻ったらクルーを危険にさらすことになる、そんなことはできないという。このままヴォイジャーにいてもらい、その代わり集合体からの解放は保証し、早く人間に戻れるように…というジェインウェイに、亜空間送信機を支給した上で、最も近い惑星に降ろすように求めるセブン・オブ・ナイン。ボーグの迎えを待つのだ。既に手後れで、人間の細胞が再生しており、ドクターのケアを受けないと死ぬことを伝えるジェインウェイ。お前たちの助けは必要ない、我々はボーグだ、我々…と言おうとした時、セブン・オブ・ナインは頭を抑え、苦しみ始めた。ドクターが調べる。インプラントへの拒絶反応が出ており、取り外さなければならない。人間の免疫反応の方を抑えろというセブン・オブ・ナインに、無理だ、再生が進み過ぎているという。セブン・オブ・ナインはやめろと叫んでドクターを突き飛ばし、我々はボーグだ、と繰り返す。彼女の体を抑えるトゥヴォック。ドクターはハイポスプレーを打った。 |
※1: ボーグくぼみ Borg alcove ボーグが再生・休息を行う、壁面の部屋状の部分 |
本編
※2セブン・オブ・ナインの診察を行うドクター。防護プレートは 300万のコネクターで頭蓋骨に固定されている、一つ一つ切ってる時間はない、頭蓋骨の外部ごと外そうというドクター。すぐ近くにいるトゥヴォックとぶつかった。手術室から出ていってくれないかと怒るドクターに、ボーグは保安上危険だという。鎮静剤をたっぷり打ったから、どこにも逃げられやしないというドクター。トゥヴォックは、ゆっくりと一歩だけ後ろに下がった。どうも、というドクター。ドクターは脳神経に 20ミリグラムのアネトレジン※3を打つようケスに指示した。ケスがハイポスプレーを取りに行こうと体を向けた瞬間、台の上からハイポスプレーが飛んで来て、ケスの手の中に収まった。驚くドクター。どうしたのかしら、ハイポスプレーを見たら勝手に飛んで来たというケス。超能力訓練を続けていたのかと尋ねるトゥヴォックに、ずっとやめてた、でも最近おかしい、気が高ぶって眠れないという。ケスを調べたドクターは、それもそのはずだ、セロトニンが正常値を 62%上回っている、脳内のテレパシー中枢が刺激過剰だと説明する。数日前に生命体8472 と遭遇した時のように。また彼らが呼びかけているのかと尋ねるトゥヴォック。いいえ、この間とは違う、彼らの存在は感じないとケスはいう。ドクターがしゃべろうとした時、トゥヴォックは恐らく何らかの後遺症だろうと言った。悪くない診断だ、保安部長にしては、というドクター。後でマイクロシナプシス分析をかけることにし、まずはボーグだという。ケスと 2人でセブン・オブ・ナインに向かう。 作戦室でコンソールの画面を読んでいるジェインウェイ。チャコティがやってきた。報告します、ボーグの武器システム解除に 2チームであたっていますが、24時間体制でもはかどりませんという。ワープドライブも、トレスがプラズマリレーのクリーニングにてこずっており、反物質反応の不調が片付くまでは通常エンジンしか使えない。レベル3 以上の機関部員を全員貸して欲しいと要請してますがというチャコティに、認めます、ブリッジの方はと尋ねるジェインウェイ。長距離センサーがトランスワープシグナルを探知しました、ボーグ艦が 3日ほど前に通ったようですがというチャコティ。まだボーグ領内ということだ。エンジンの半分をボーグ・インプラントに覆われていては修理もままならなくてというチャコティに、セブン・オブ・ナインに手伝ってもらいましょうとジェインウェイは言った。できればありがたいんですが、とても協力しそうにないでしょうというチャコティ。わからない、説得してみなきゃとジェインウェイはいい、さっきまで見ていたコンソールの画面をチャコティに見せた。地球人の少女が映っている。アニカ・ハンセン※4。あのボーグですかというチャコティ。連邦のデータベースを掘り返してみた、ディープスペース4※5 に記録が一つ見つかっただけで、変わった両親をもっていたようねというジェインウェイ。調査隊だと名乗っていたが艦隊や連邦とはつながりはなく、最後に名前が記録されているのは、オメガ・セクター※6のへんぴな基地だ。それから小さな船に乗ってデルタ宇宙域へ勝手に飛び立ち、消息を絶った。我々の知る限り、最初に同化された地球人※7のようですねというチャコティ。彼女の話によれば 20年近く前だ。ボーグに育てられてほかの世界を知らない、人間に戻すおつもりのようですが無理かもしれないというチャコティに、じゃあどうすればいいの、オオカミの群れに戻す? と尋ねるジェインウェイ。そこへドクターから通信が入った。問題がありまして、というドクターに、すぐ行くわとジェインウェイは伝えた。 ドクターはセブン・オブ・ナインの顔の右側を覆っていた、機械部分を取り外した。タマネギをむくようだという。ケスに保管室に持って行くよう指示する。トゥヴォックには、まだ機能するかもしれない、保安上心配なら軽くフォースフィールドでも張っておくといいだろうというドクター。悪くない配慮だ、医者にしては、といい隣の部屋に行くトゥヴォック。ジェインウェイが入り、どうしたのと尋ねる。ドクターは、ある決断を迫られている、難しい決断だという。人間の免疫システムが復讐を始め、ボディアーマー、ボーグ細胞※8、生合成分泌器官※9に対して拒否反応が出ている。このままでは危険です、ボーグ・テクノロジーを全て取り外すしかありませんというドクター。セブン・オブ・ナインは嫌がるでしょうねとジェインウェイは言う。そこが問題です、もし患者が治療を拒めば、命を脅かすような状況でも、要求を飲むのが医師としての倫理ですというドクター。彼女は普通の患者ではなく、ボーグに育てられて、ボーグの心をもってる、でも今は仲間よ、ボーグ・テクノロジーの下は人間なの、とジェインウェイは言う。本人は受けいれてないが、受け入れるまでは、誰かが決断をしなきゃ、手術を進めてと命じた。了解するドクター。ジェインウェイは医療室を出て行った。 再びセブン・オブ・ナインのボーグ部分の切除に取りかかるドクター。ケスを呼ぶ。トゥヴォックと共に戻るケス。食道に埋め込まれているマイクロチューブ網の切除から始めたいというドクター。だが急にセブン・オブ・ナインが全身を震わせ始めた。フェイザーを構え、どうしたと聞くトゥヴォック。わからないというドクター。モニターを確認し、神経性ショックのようだ、発生源を特定できないといい、ケスにニューロシークエンサー※10を使って運動皮質を静めるように指示する。だがケスは動こうとせず、じっとセブン・オブ・ナインを見つめている。何をしている、死ぬぞというドクター。ケスは待って、見えると言った。何がというドクターに、原因は神経丘※11だと思うという。ケスは意識を集中し、セブン・オブ・ナインを見つめ続けた。そして、彼女の脳の深くを見ていく。その中の神経に異質な機械状のものが取りついている。見えたわ、ボーグのインプラントよ、滑車神経※12を圧迫してるというケス。神経を傷付けずに切除する方法はわかるかと尋ねるドクター。ケスは私がやってみるといった。脳神経に取りついているインプラントが色を変え、そして消えた。安定するセブン・オブ・ナイン。ドクターはトリコーダーで調べ、インプラントが消えていることを確認する。神経システムが安定して来た。よくやったケス、型破りだが効果はあったというドクター。 |
※2: このエピソードでも、ケス役のジェニファー・リーンはゲスト扱いです ※3: anetrizine 単に「麻酔」と吹き替えされています ※4: Annika Hansen 前話 "Scorpion, Part II" 「生命体8472(後)」の最後で、チャコティが叫んだ名前 ※5: Deep Space 4 最低 9つ存在する、惑星連邦に所属する深宇宙基地の一つ。DS4 は TNG第146話 "The Chase" 「命のメッセージ」で言及 ※6: Omega Sector ※7: 「人間」と訳されていますが、ここでは地球人とすべきでしょうね ※8: ボーグ細胞小器官 Borg organelle ※9: biosynthetic gland ※10: neuro sequencer ※11: colliculi ※12: trochlear nerve |
「目は心の窓」といいますが、この義眼にはそれ以上の機能がありますと説明するドクター。台の上にむき出しの眼球と、それにつながるケーブルがある。ボーグのアイピースと入れ替えるために作りました、視神経にはボーグ回路を残さざるを得ませんでしたが、結果として視力は鋭くなるでしょうという。どうです、光彩の色が完璧なまでにリアルでしょうと自慢するドクター。ありがとうドクター、細かく気を配ってくれたのねというジェインウェイ。いつ話せると聞かれ、ドクターは危険な状態は脱しましたし、切除手術は明日ですから、お望みなら今という。お願いというジェインウェイ。ドクターと入れ替わりにやってきたケスに、気分を尋ねるジェインウェイ。とっても調子がいいです、こんなに気分がいいのは生まれて初めてというケス。テレパシー能力も高まっていてというと、トゥヴォックは確かに素晴らしかった、しかし超能力を制御できていない、突発的に出現しているという。コントロールはできるわというケス。それでも慎重に対応した方がいい、私が手伝おうというトゥヴォック。何をするのと聞くジェインウェイに、新しい能力を高めるための瞑想を指導してみたいと思いますという。ジェインウェイにどうすると聞かれ、ケスは微笑み、喜んでと言った。今すぐ始めようというトゥヴォック。2人は医療室を出て行った。 バイオベッドに近づくジェインウェイとドクター。よろしいですかと聞くドクターにうなずくジェインウェイ。セブン・オブ・ナインの皮膚の色は、既にほとんどが地球人の肌の色に戻っている。ハイポスプレーが打たれ、目を開けるセブン・オブ・ナイン。驚かないで、ここは医療室だ、心配ないとドクターが声をかける。体を起こすセブン・オブ・ナイン。この体に何をしたのだと強い口調で言う。君はボーグ・テクノロジーに対する拒否反応で死にかけていた、そうするしかなかったと説明するドクター。セブン・オブ・ナインが肩に貼られている帯に気づいた。それは皮膚蘇生帯といって、再生プロセスを助けるというドクター。受け入れられないというセブン・オブ・ナイン。ジェインウェイに気づき、ベッドを降りる。一体なぜ殺さなかったのだというセブン・オブ・ナインに、殺せなかったのという。この体は集合体の外では生きられないというセブン・オブ・ナイン。ドクターが口を挟み、そうでもないよ、ボーグ・インプラントを外した後に、人間のシステムが成長できるという。既に始まってる、例えばその…と、まだ得意げに話そうとするドクターを、ジェインウェイは睨んだ。口を閉じ、その場を離れるドクター。 「助けたいの、そのためにあなたを理解したいのよ」というジェインウェイに、「表面的な同情で我々の気を引こうとするな」というセブン・オブ・ナイン。 「苦しいのはわかるわ。怖いんでしょう? 仲間と離れて、独りで。」 「お前は個人だ。お前は小さい。ボーグであることがどういうものか、理解できまい。」 「そうね。でも想像はできる。あなたは巨大な意識の一部だった、何十億という心が一つになって、同じ目的と思考をもって、ためらいや疑いはなかった。一体感が安心と強さを与えてくれた。そしてそれを失った。」 「今やこの体は小さい。一つだ。一つの声、一つの意識。」 顔を歪めるセブン・オブ・ナイン。「この沈黙は受け入れられない、仲間が必要だ。」 "I can't give you back to the Borg. But you're not alone. You're part of a human community, now... a human collective. We may be individuals, but we live and work together. You can have some of the unity you require... right here on Voyager."「不十分だ。」 「これしかないの。そして我々はあなたを必要としている。ボーグ・テクノロジーを埋め込まれてワープドライブが作動しないの、切除を手伝って。お願い。必要なの、あなたの知識が。嫌とは言わせないわよ。」 止まっているワープコア。OK、プラズマ吸引マニフォルドからは、ボーグのゴミを取っ払えたはずよというトレス。反物質反応を初期設定する。操作するキム。ワープコアが動き始めた。物質・反物質反応、22コクレイン※13から上昇中。だが鈍い音と共に、動作は停止してしまった。何よと怒るトレス。マニフォルドの 11と 13がブロックされているというキムに、まるで草取りね、やってもやっても切りがないという。ジェインウェイとセブン・オブ・ナインがやってきた。保安部員も一緒だ。自発性再生シークエンサー※14が残っているせいだというセブン・オブ・ナイン。ジェインウェイは 2人に彼女を覚えてるかを尋ねた。忘れっこないでしょと微笑むキム。ジェインウェイはこれ以上修理が遅れると困るため、協力してもらうことにしたという。2〜3時間で医療室に戻らないといけないわ、効率よく作業なさいと命じる。じゃあプラズマ中継器から、ジェフリーチューブの13…、といいパッドを渡そうとするトレスに、セブン・オブ・ナインはジェフリーチューブ 13アルファ・セクション12、この艦の技術仕様は全て暗記したという。ボーグ・スタイルに変える前はどんなだったかも覚えてると聞かれ、セブン・オブ・ナインは「ああ」と言った。何も言わず 2人を見るキム。さ、自己紹介はそこまで、始めなさい、1時間おきに報告してと言い残し、機関室を出ていくジェインウェイ。了解するトレス。 テーブルに置かれたランプが灯っている。「ランプの炎で秩序を保ち、穏やかにコントロールされている」というトゥヴォック。前にはケスが座っている。 「我々のトレーニング台にはふさわしいだろう。」 「何をするの?」 「原子未満のレベルで炎を操作できるように君を導こうと思う、炎に集中して。炎の内側を見てごらん、光を通り越して、エネルギーと物質のパターンを見るんだ。」 炎に意識を集中させるケス。そして、炎の中の量子が飛んでいる様子が見えた。「炎の中身が見える。」 「よし。では意識の力で、炎を強めてごらん。」 炎の中が活発になり始めた。ランプの炎も大きく燃え上がる。「さっきより熱く、明るくなった」というケス。 「では頭で念じて、炎を小さくして。」 指示通りに、炎は再び小さくなった。「素晴らしい。以前はここまでコントロールできなかっただろう」というトゥヴォック。 「なんだか、何もかもわかる感じ。まる…」 「どうした?」 「何か起きてる。見えるわ。量子のもっと奥まで。」 「ケス、量子より小さな単位はない。」 「だけど私には見える。」ケスには幻想的な情景が見えていた。「新しい世界だわ。綺麗。」 「これくらいにしておいた方がいいだろう。」 「ちょっと待って。コントロールしてみる。」 すると、ランプの炎ではなく、燭台の形自体が揺らぎ始めた。 「心配しないで」というケス。収まる揺らぎ。 どうなってるのこれ、一つ外すとすぐ別のがまた出てくるというトレス。自発性再生シークエンサー、抵抗を抑えるための機能だというセブン・オブ・ナイン。すごいね、パターン複製はどうやって考えただしたのと尋ねるキムに、考えたのではない、このテクノロジーは第3散開星団※15で生命体259※16から同化したと説明する。で、どうするのと聞くトレス。セブン・オブ・ナインはシークエンサーのコンジットを結合部から外すように指示する。ここはやっとくから、2人でジェフリーチューブをお願いというトレス。 ここから始めようといい、作業に取り掛かるキム。このシステムは生命体259 から取ったって言ったけど、どんな連中と尋ねる。無反応のセブン・オブ・ナイン。キムはボーグっていろんな人に会えるんでしょと聞く。キムを一瞥しただけで、やはり答えないセブン。アホなこと聞いたかなというキム。だがまた、第3散開星団ってどんなところ、と質問した。お前には理解できまいというセブン・オブ・ナインに、教えてよというキム。第3散開星団は 220億のオムニコーディアル生命体※17と交差する超物質エネルギー面だと説明するセブン・オブ・ナイン。キムは、へえ、面白いねと言い、セブン・オブ・ナインに背を向けた。作業を続ける彼女は、コンジットの奥にある何かに気づいた。機械の眼を使って拡大する。そこには「通信ノード 宇宙艦隊ID 59S47B」※18と書かれていた。セブン・オブ・ナインはキム少尉手伝ってくれと言った。そして振り向いた瞬間、殴り倒した。アクセスを始める。 ジェインウェイに、誰かが亜空間送信機にアクセスを試みていますと報告するパリス。 ボーグがジェフリーチューブのドアの周りにフォースフィールドを張りました、中に入れませんと伝えるトレス。 セキュリティプロトコルが突破されましたというチャコティに、通信を止めてと命じるジェインウェイ。手遅れですというチャコティ。 君のテレパシーは、もはやヴァルカンの訓練の及ばない域まで進化したようだ、そこで次に…とケスに話しているトゥヴォック。ケスはふいに立ち上がった。何だと尋ねるトゥヴォック。トラブルだわという。セブン・オブ・ナインの顔。ボーグが仲間に連絡しようとしてるというケス。トゥヴォックは第1保安チームに連絡を取り、機関室に侵入者だといって部屋を出ていこうとする。だがケスは、待って、私が止めてみると言った。 操作を続けるセブン・オブ・ナイン。物音に気づいた。背後の壁が歪んでいる。その歪みは広がり、セブン・オブ・ナインが扱っているコンソールから電流が彼女を直撃した。吹き飛ばされる。 トゥヴォックはブリッジに状況を尋ねた。 彼女が送信を始めようとした直前に、ジェフリーチューブで爆発があったみたいというジェインウェイ。原因はわからない。 トゥヴォックは私からご説明しますと伝えた。 |
※13: cochrane 亜空間の歪みを表す単位。ワープドライブの発明者、ゼフラム・コクレイン博士 (Dr. Zefram Cochrane) より (TOS "Metamorphosis" 「華麗なる変身」などに登場) ※14: autonomous regeneration sequencer ※15: Galactic Cluster 3 ※16: Species 259 これにより、ボーグは番号で種族を分類していることが、よりはっきりしました ※17: omnicordial life-form ※18: 画面ではもちろん英語だけですが、こういう場面には本来、日本語字幕を付けるんでしょうね。少なくとも FBS のヴォイジャーでは入ったことがありませんが、LD や CS では適切な字幕が出ることがあります |
通路。その表情を見たところ、悪い知らせをもってきたようねというジェインウェイに、私には表情などありませんというトゥヴォック。しかしお察しの通り、2つの面において思わしくない状況です、亜空間帯域幅に、ヴォイジャーからのシグナルが部分的に探知されましたという。恐らくボーグ艦に探知される量だ。もう一つの面はと聞くジェインウェイに、ケスのテレパシーについて心配なことがあるというトゥヴォック。センサー記録によると、ケスがジェフリーチューブの構造を不安定にしたようだ。その影響でデッキ全体の構造が弱まっており、ケスはテレパシー能力を高めたがっているが、それは危険だと思いますとトゥヴォックは話す。ケスにとっても、船にとっても。"I've got an Ocampan who wants to be something more and a Borg who's afraind of becoming something less. Here's to Vulcan stability."とジェインウェイは言った。拘留室に入る 2人。 ジェインウェイはトゥヴォックに入口で待つように指示し、独房に入っているセブン・オブ・ナインに近づいた。 「これがお前たちの言う自由か」というセブン・オブ・ナイン。 「しばらく入っててもらうわ。我々に危害を加えないとわかるまでね。治療が必要な場合はドクターを送ります。協力してもらえると思ったのに。」 「決してお前たちを裏切ったわけではない。力になるつもりだった。」 「じゃなぜ?」 「集合体に接触するチャンスを見つけたので、利用しただけだ。この体を人間に変えようという試みは失敗する。 You can alter our physiology... but you cannot change our nature. We will betray you. We are Borg."「集合体を離れたボーグに会ったことがあるの。個人になることに初めは戸惑ったようだけど、最後には受け入れたわ。あなたにもできる。ただ子供の頃に同化されたから、変異に時間がかかるだろうけど。きっとできるわ。」 しばらくの間の後、セブン・オブ・ナインは聞いた。「受け入れたとしたら、完全に人間になるのか。」 「そう願ってる。」 「一人の人間として、独立する。」 「それが個人ということよ。」 「その時に我々が集合体に戻ることを希望した場合、認めるのか。」 「そんなこと望まないと思う。」 「どうせ認めまい。今と同じように我々を否定するに違いない。 You have imprisoned us in the name of humanity... yet you will not grant us your most cherished human right. To choose our own fate. You are hypocritical... manipulative. We do not want to be what you are.我々を集合体へ戻せ!」 "You lost the capacity to make a rational choice the moment you were assimilated. They took that from you. And until I'm convinced you've gotten it back... I'm making the choice for you. You're staying here."セブン・オブ・ナインはジェインウェイから離れた。 ニーリックスは食道で、2つのグラスを用意した。「タラクシアン・シャンパン※19だよ、すっごーく美味いぞ。」 テーブルで待っているケスの前に置き、自分も反対側に座る。 「どこで手に入れたの?」 「隠しといたんだ。特別な時のためにね。この前飲んだのはいつだったか覚えてる?」 「3年前、私がヴォイジャーに来た時。」 「乾杯の言葉は覚えてる?」 「ええ、『冒険に乾杯』。」 「冒険に乾杯。」 2人はシャンパンを口にした。 「オカンパを出た時、オカンパ人は進化を止めたって言ってたろ。チャンスさえあれば、もっとすごい力をもてるんだって。その通りだったね。」 「こんなことになるとは思わなかったけど。」 「俺は何にもできなくて、ほんと悪かったね。」 「ううん。あなたのおかげでここまできたの。……愛してる。これからもずっと。ただその……。あ…。」 「料理だろ。俺の料理が嫌いなんだ。」 ケスは微笑んだ。「そういうんじゃないわ。」 「なあ、君の中で何が起きているんだ? 教えてくれよ。」 「わからない。だから余計にワクワクするのよ。今まで見えなかった世界が見えるようになったの。物質や、エネルギーや、さらには意識の境目がない世界。それはほんの手始めでね、今は体の中の境目が全部なくなる感じ。」 「それは…す、すっごーく、なかなか面白いね。」 「何かに視線を向けるだけで、見えてくるの。原子と原子の隙間が、ほかの物で満たされていくのよ。」 すると、ケスが見ていたテーブルの中心が歪み始めた。渦ができている。 ニーリックスも気づいた。「あの…ケス?」 「見えるわ…見える。」 次第に大きくなる渦。立ち上がり、「おいケス、やめろ!」とニーリックスは言う。「嫌よ!」 ニーリックスは吹き飛ばされた。「ニーリックス!」と叫び、駆け寄ろうとするケス。だが膝から床に座り込んだ。 ブリッジのキムが奇妙なエネルギー反応を探知したことを報告する。第2デッキ、食堂。ニーリックスを通信で呼ぶジェインウェイ。返答はない。食堂の隔壁が分解している。第2デッキの構造維持フィールドを強化するように命じるチャコティ。トゥヴォックに指示し、共にブリッジを出るジェインウェイ。 食堂に入ったジェインウェイたちが見たのは、姿が変わろうとしているケスだった。体中が揺らいでいる。ニーリックスも含め、何も言わずにその様子を見つめる 3人。ケスは微笑んでいるようだ。その揺らぎは収まり、ケスはうなだれた。 |
※19: Talaxian champagne |
考えうる限りの神経分析を行いました、後はもう脳の解剖くらいなもんです、超能力が高まっている原因はわかりませんというドクター。止める方法も。艦内センサーに何か出てないかねと聞かれ、トゥヴォックはケスの体の細胞は 17.4秒の間流動状態にあったという。原子内レベルで分解しかけていた。そして何かの原因で、原子が再び結合して元に戻ったのねというジェインウェイ。でも次はわかりませんというドクター。症状は悪化しています、抑える方法を発見しないと、ケスの原子が排気ダクトから流されてしまうなんてことになりかねませんという。全艦の構造維持フィールドを強化して、今度あんなことが起きた時、船体が心配だわとトゥヴォックにいうジェインウェイ。トゥヴォックは医療室を出ていく。視野を広げて対処しましょう、事態は医学の範疇を超えてると話すジェインウェイ。素粒子物理学だ。量子構造データベースも調べてみます、何かインスピレーションが沸くかもしれないというドクター。よろしくといいパッドを返すジェインウェイ。 ベッドの上に座っているケスに近づくドクター。「ケス。別の分析方法を見つけるまで、部屋に戻っていて構わないよ。」 「ここでドクターの仕事をみていたいの。」 「だが無理をしない方がいい。いつまたテレパシーが出るかもしれないんだ。休んでいなさい。」 「少しだけいさせて。ドクターとはこの 2、3日あまり話せなかったから。」 「わかった。少しだけなら。」 監房のセブン・オブ・ナイン。突然大声をあげ、フォースフィールドに手を当てた。当然破れない。だがそれを何度も繰り返す。保安部員のアイアラ少尉※20がブリッジに連絡をとり、拘留室に来てくださいと伝えた。 ジェインウェイが拘留室に入る。セブン・オブ・ナインは「独り、独り…」とつぶやいている。 「私の名称はセブン・オブ・ナイン。仲間はいない。名称はもはや意味をなさない。私は…独りだ。」 「ええ、そうよ。」 「しかし…私は独りでは機能できないのだ。」 「独りじゃないわ。助けてあげる。」 「助けるつもりなら、なぜ閉じ込める。仲間の元へ返せ。」 「あなたの仲間は私たち、人間よ。」 「人間だった覚えなど、ない。人間がどういうものかも知らない。」 嘆くセブン・オブ・ナイン。 ジェインウェイは置いてあったパッドを手に取った。そして独房のスイッチを操作する。「何をしている」と聞くセブン・オブ・ナインに、「そっちへ行くわ」といった。 「殺してやる。」 「そんなことしないわ。」 フォースフィールドが解除された。すぐにアイアラが近寄るが、ジェインウェイは手で制した。フェイザーを構えたままのアイアラ。ジェインウェイは独房の中へ入った。パッドを操作し、それを見せる。 「この子を覚えてる? 名前はアニカ・ハンセン。生まれたのは宇宙暦 25479※21、ティンダラ・コロニー※22よ。わからないことがたくさんあるの。兄弟はいたの? 友達は? 学校はどこだった? 好きな色は何?」 しばらくその写真を見つめていたセブン・オブ・ナイン。だが「関係ない!」といい、パッドを弾き飛ばした。「この体をボーグに戻せ。」 「それはできないわ。」 頭を抑えるセブン・オブ・ナイン。「静か過ぎる。声が一つだ…。」 "One voice... can be stronger than a thousand voices.あなたの心は独立したの。アイデンティティーを持ったのよ。」 「お前が無理矢理押し付けたアイデンティティーだ。私ではない。」 「いいえ、あなたよ。私は奪われたものを返してあげたいだけ。存在を取り戻すのよ。子供の頃に失った人生を、これからは自分のものにできるのよ。」 「そんなものは欲しくない!」 「それがあなたなの。拒まないで。」 「黙れ!」 セブン・オブ・ナインはジェインウェイを殴った。だがジェインウェイはよろめいた彼女を背中から抱きかかえ、椅子に座らせた。 |
※20: Ayala エキストラ扱いの士官。VOY第18話 "Initiations" 「ケイゾン戦士誕生」など。初期のエピソードでは中尉 (大尉) と呼ばれていましたが、このエピソードでは少尉になっています (訳出はなし)。声:鈴木正和 ※21: 西暦にすると 2348年。今は 2374年なので、彼女は 26歳ということになります ※22: Tendara Colony |
「艦長日誌、補足。ワープドライブは依然復旧せず、ボーグに探知されたかどうかもわからない。ケスの超能力はその後も船体に損傷を与え続け、その結果ヴォイジャーの防御力は弱まっている。」 自室のケス。ドアチャイムが鳴った。 「どうぞ、艦長。」 「話があるんですって? ああ、トゥヴォックのランプね。」 台の上のランプ。「6年前にヴァルカン・マスターから買ったの。よく覚えてるわ。艦隊のバッジを見て値段を倍※23にしたのよ。」 「それは当然のことでしょう。」 笑うジェインウェイ。ケスの隣に座る。話し始めるケス。 「自分の状況について、よく考えてみたんですが、私決めました。ヴォイジャーを離れます。」 「そんな…」 「自分の身に起きている重大な変化を突き詰めたいんです。でもここにいたらみんなを危険な目に遭わせることになるから…」 「原因はもうすぐわかるわ。ドクターが新しいアプローチを始めてるの。」 「みんな私のこと、病気か何かだと思ってるみたいですけれど、そうじゃないんです。私変身しているの。なぜなのかはわからないけれど、だけど体中がそういってるんです。今以上のものに変わるんだって。」 「もし、そうじゃなかったら? あまりにすごいことが起きたせいで舞い上がってるけど実は、勘違いだったら? ほんとに思ってるの? 心から…ヴォイジャーを降りたいって。しかも永久に? そんなことさせられない。」 「決めたんです。これが運命よ。どうしても引き止めます?」 「いいえ。…でも説得する。考え直してくれって頼むわ、絶対に。どんなに時間をかけても。」 2人の目には涙がうかんでいる。ケスはいう。「無駄です。私を見て。今まで通りのケスです。判断力もある。別にエイリアンに洗脳されたわけじゃない。ただ、今重大なことが起きていて、それを見届けたいんです。」 「あなたはここで育った。ヴォイジャーがあなたの家。あなたは大切な家族なの。別れたくないわ。」 ケスを抱き寄せるジェインウェイ。 「後はドクターに話すだけ。悲しむでしょうね」というケス。その体が、再び流動化している。「始まったわ。」 ジェインウェイはブリッジに通信を行う。チャコティにシャトルを用意し、トゥヴォックを第6デッキへよこすように指示する。何ごとですと尋ねるチャコティに、ケスが出ていくのと言った。うなずくトゥヴォック。パリスはキムと顔を見合わせた。 ケスと共に通路を歩くジェインウェイ。大丈夫と聞くジェインウェイに、止められませんというケス。横の隔壁が爆発を起こした。ジェインウェイは格納庫に直接転送するように伝える。 だがキムはケスの体の分子が不安定になっており、転送ビームを妨害しているという。ロックできませんというチャコティ。 了解し、歩いていくしかなさそうねというジェインウェイ。ケスの肩を抱き、一緒に走り始める。次々と背後の壁が爆発していく。 波打つヴォイジャーの船体。船体が危険な状態です、分子結合が崩壊してきましたというパリス。 トゥヴォックがケスたちの前のターボリフトから出てきた。トゥヴォックと呼ぶケス。体がまた流動化している。一旦はそれは収まったが、これ以上進めないというケス。トゥヴォックはケスの顔に手を置き、精神融合を試みよう、抑えられるかもしれないという。「わが精神を君に送り、君の精神を我に送る。」 苦しむトゥヴォック。コントロールを取り戻し、ほんの一瞬でいい、ほんの一瞬抑えろという。苦痛の声と共にトゥヴォックはケスから離れた。急いで下さいとジェインウェイにいう。うなずき、ケスを連れて行くジェインウェイ。 第3、第4、第5デッキで船体破損。緊急密閉フィールドというチャコティ。ジェインウェイからケスがシャトルに乗ったことが伝えられる。発射シークエンス開始。 9型シャトルが飛び立った。シャトル距離 10万キロメートル、推力 4分の1。ブリッジに戻るジェインウェイとトゥヴォック。交信できるか聞かれ、はい、間もなくというキム。きたわ、ついにきました、というケスの声が届く。ケスの分子構造が完全に崩壊しましたとキムが報告する。 シャトルの中でケスは言った。「お別れの贈り物よ。」 次第に形を失い、光となっていくケス。それはシャトルを包み込み、さらに大きな光となった。※24 揺れる機関室から伝えるトレス。ワープコアが復活した。物質・反物質反応、100%、110%、120%。 ヴォイジャーはワープに入った。揺れ続けるブリッジ。どうなってんだこの速度、嘘だろというパリス。キムが船体が崩壊しますという。 ワープ飛行を続けるヴォイジャー。急に揺れが止まった。収まりました、何がなんだかわからないけれどというパリス。スクリーンを出すと、星雲が映っている。ここはどこ、と尋ねるジェインウェイ。パリスは言った。「先ほどの位置から、9,500光年の距離です。」 ケスがボーグ領の外へ運んでくれたんだわ、10年分の距離よ、というジェインウェイ。 第2貨物室。もはやボーグの姿ではなくなり、銀色の服を着たセブン・オブ・ナインが立っている。ジェインウェイとドクターがやってきた。ボーグのハードを 82%外しました、残りのバイオインプラントは安定、短期間でここまでできれば上々でしょうというドクター。セブン・オブ・ナインは受け入れようと言った。ファッションは得意分野ではないんだ、しかし我ながら機能性と美しさのバランスは取れていると思うよとドクターはいう。勝手ながら頭皮を刺激させてもらった、できれば自分にも施したいところだが※25という。歩いて行くドクター。ジェインウェイは「あなたの体が回復機能を取り戻すまで、1日何時間かはボーグ・アルコーヴで過ごすことになる」という。 「わかった。」 「2、3週間様子を見ましょう。二度と我々を脅かさないとわかったら、艦内を自由に歩き回ることも許してあげるわ。」 「もうあんなことはしない。」 「そう。何かあったら、私に言って。」 出ていくジェインウェイ。セブン・オブ・ナインは言った。「赤だ。」 「え?」 「お前の言っていたあの少女、好きな色は赤だった。」 自室で、ヴァルカンのランプをつけているトゥヴォック。それを窓際に置き、外を見つめた。 |
※23: また論議を呼びそうな発言を……。今回は相手がヴァルカン人だけになおさらです。連邦内では経済が存在しないとはいえ、個人商レベルのものは機能している…ということなんでしょうか? ※24: またシャトルを失ってしまいました ※25: ドクターもパラメータを変更すれば、簡単に? 髪を生やせるとは思うのですが、ドクターなりの冗談だったのでしょうか。実際、VOY第63話 "Before and After" 「9歳のケス」では、可能性の未来の中でドクターは髪を生やしていました |
感想
セブン・オブ・ナインのレギュラー加入と入れ替わるように、ケスが離脱します。降板の理由はいろいろあるのでしょうが、殺してしまう形にしなかったのが救いだと思いました (丁度本国では "Fury" も放送されましたね)。これまでのヴォイジャーをきちんと見て来た方ほど、感動できる話に仕上がっていると感じました。逆に言えば見ていないと味気ないものでしょうね。 ケスが完全に中心と思っていたらセブン・オブ・ナインの苦悩も描いており、こちらもケス同様、ジェインウェイとの対話が見物です。 |
第69話 "Scorpion, Part II" 「生命体8472(後編)」 | 第71話 "Day of Honor" 「名誉の日」 |