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ヴォイジャー エピソードガイド
第79話「宇宙を飛んだダ・ヴィンチ」
Concerning Flight

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・イントロダクション
工房。外から野次が聞こえてくる。怒ったレオナルド・ダ・ヴィンチ※1が、翼の一部を床に叩き付けた。「いいさらしもんだ! 実験は大失敗。野蛮人めー!」 後から、ダ・ヴィンチと同じように体を濡らしたジェインウェイがやってくる。
群集の声が響く。「レオナルド、あんたこそ野蛮人だ!」 「飛べない鳥さ。」 窓から外に向かって叫ぶダ・ヴィンチ。「お前らに何がわかるというんだ!」
「じゃあ飛んでみな!」 馬鹿にするように歌い出す群集。ダ・ヴィンチは近くにあった壷を取り、外へ投げようとする。「先生、だめ!」 ジェインウェイは壷を受け取った。
「馬鹿者どもが! フィレンツェ人は野蛮だ。」
ジェインウェイは壷を置き、布を取ってダ・ヴィンチを追いかける。愚痴り続けるダ・ヴィンチ。
「あの翼は、わしがきちんと計算した上で作り上げた、空飛ぶ機械なのだ! 鳥のように空を羽ばたくことができる。だがなぜ落ちた。」
「羽根の長さが短かったのでは?」
「アルノ川に落ちていなかったら、わしらの命はなかっただろう。」
「橋で実験して本当に良かった。」
「命拾いはしたが、町中のさらし者だ。全く。この空飛ぶ実験が成功していれば、わしは輝かしい栄光に包まれ、フィレンツェ中に名を挙げていただろう。それが大勢の野次馬の前で醜態をさらした。」
ダ・ヴィンチは設計図を破った。ショックを受けるジェインウェイ。
ダ・ヴィンチはジェインウェイに尋ねる。「おしまいだ! もういい。キャスリン、フランスに行ったことは?」
「昔一度。」
「フランス国王はわしの崇拝者でな。民衆もこのわしをまるで神のように称えてくれている。それに比べてこのフィレンツェは一体どうなっておるんだ。野蛮人どもが人の失敗を騒ぎ立ておって。キャスリン、出発だ。」
「あきらめるの?」
「ん?」
「またね。サンケン王の礼拝の祭壇画。ミラノのスフォルツァ記念騎馬像。アンギアリの戦いの壁画。どれも未完成。論文は一冊も出版されてない。全部やりかけ。空飛ぶ翼も投げ出そうっていうの? なぜなの。」
答えられないダ・ヴィンチ。「実は、いい店がパリの郊外にあるんだよ、キャスリン。料理が美味くてワインも最高…」
その時、ホロデッキが揺れた。「地震だ!」 驚くダ・ヴィンチ。ジェインウェイは通信バッジを押した。「どうしたの?」
チャコティの声。『攻撃されました。』
「戻ります。」
工房を出ていくジェインウェイ。揺れは続く。ダ・ヴィンチはつぶやいた。「地震か…。これで終わりだ、フィレンツェの街も。」

※1: Leonardo da Vinci (ジョン・リス・デイヴィス John Rhys-Davies 映画「レイダース/失われたアーク」のサラ、「スライダーズ」シリーズのマキシミリオン・アルトゥロ教授役) VOY第68話 "Scorpion, Part I" 「生命体8472(前編)」以来の登場。声:藤本譲、DS9 コロス、映画ST6・STG スコットなど

・本編
何隻もの小型船が、ヴォイジャーを攻撃している。ブリッジに戻るジェインウェイ。「チャコティ、敵は何者?」 「応答がないのでわかりません。」 「被害は?」 トゥヴォック:「ゼロです。」 キム:「シールド周辺にかすかな動揺が見られます。」 「調整します。」
小型船は、ヴォイジャーの船体に向けて広範囲のビームを発射した。機関部で作業しているトレスの目の前で、ワープコアのそばの機械が消えた。連絡を入れるトレス。「トレスよりブリッジ。」 『どうぞ。』 「ワープ診断アセンブリーを盗られました。」 『どういうこと?』 「消えたんです。」
貨物室の荷物などが次々と消えていく。モバイル・ホロエミッターもだ。 キム:「デッキ4 から 12まで、物質が消えています。」 ジェインウェイ:「食い止めて。」 パリス:「こちらのコースを読まれています。」
敵船からビームが再び照射される。今度は医療室のバイオベッドが消えた。 チャコティ:「これは一種の転送ビームでしょう。」 ジェインウェイ:「攻撃を。」 トゥヴォック:「艦長、攻撃は無理です。コントロールが利きません。」 「なぜ。」 キム:「メインコンピューターのプロセッサー※2が消えました。武装も、ナビゲーションも、推進システムもです。」 チャコティ:「バックアップシステム作動。」 ジェインウェイ:「フェイザー最大出力。照準装置を手動で攻撃。」
フェイザーが数発発射され、1隻に命中して爆発させた。 キム:「敵は撤退しました。」 チャコティ:「全デッキへ。損害を報告せよ。」 「ふぅ、まるで海賊だな」とパリスは言った。
会議室。トゥヴォックが説明する。「敵はエネルギーの高い転送ビームで、船の中の価値ある装備を探り出し、転送したんです。」 パッドを受け取り、失った物を確認するチャコティ。「やってくれたな。トリコーダー 5台、フェイザーライフル 3丁、光子魚雷 2本、反物質噴射装置 2機、非常用食料 1月分。」 パリス:「大したことない。」 モニターの中のドクターが言う。『皆さん、肝心な物をお忘れだ。モバイルエミッターなしじゃ、私は医療室に缶詰めです!』 ジェインウェイ:「ドクター、最善は尽くすけど、メインコンピューターを維持することが最優先よ。ベラナ、これ以上装備を奪われないよう防御して。ハリー、何としても敵を追いかけて。」 キム:「了解。」 「解散。」
天体測定ラボに入るキム。「セブン。やあ。」 作業を続けるセブン。「今お前と付き合っている暇はない。」 「敵の位置を調べるように、艦長に頼まれたんだ。超長距離センサーを発射したから、必ず…」 「ディープスペース・イメージシステムで、センサーを延長できると?」 「ああ、まあね。」 「私は既にその作業を 2時間続けている。」 「そうか、見てみよう。」 キムの顔の目の前で、セブンは言う。「私では、頼りないというのか。」 キムはセブンから少しずつ離れながら言う。「いや、いいか。これは仕事だ。あの、君の仕事は尊重するよ。僕も手伝いたい。それだけさ。一緒にやろう。」 「ある種の信号が、センサーを妨害しているようだ。17から 59の、未変換のデータをすぐに切り離したい。」 動こうとしないキム。セブンは「早く。モタモタするな」という。取りかかるキム。 「OK。僕は穏やかで、すぐカッカしたりしない性格だからいいけど……、そうじゃない奴もいる。これからもう少しものの言い方を…気をつけた方がいい。」 何も言わないセブン。「誰にでも」とキムは付け加えた。
「艦長日誌、宇宙暦 51386.4。ヴォイジャーのパワーが半減したため、奪われた装備を追跡するのに、10日間費やす。」
惑星軌道上のヴォイジャー。 キム:「この惑星の 2つの大陸からシグナルが。」 チャコティ:「コンピュータープロセッサーは見つかったか。」 「北の大陸からです。都市があるようです。様々なシグナルが混信して、位置の特定は無理です。」 トゥヴォック:「艦長、惑星の軌道上に 27の宇宙船を識別しました。交易がとても盛んなようです。密かに上陸班を送り込んだとしても、まず怪しまれることはないでしょう。」 ジェインウェイ:「都合がいいわ。トゥヴォックと私は、コンピュータープロセッサーを追跡。トムとニーリックスは南の大陸を探って。せめて非常用食料だけでも取り返しましょう。副長は留守を。」 ターボリフトに乗る 4人。
惑星上の都市。様々な異星人たちが大勢いる。民間人の服を着たジェインウェイとトゥヴォック。
"It never fail to impress me.... No matter how vast the differences may be between cultures... people always have something that somebody else wants. And trade is born."

「すごい活気ね。どんなに星と星が離れていようと、人々は欲しいものを求めてやってくる。そして商売が成り立つ。」
「そのためには、盗みも辞さない。」 「反応は?」 トリコーダーで調べるトゥヴォック。「この都市の建物内にある物質と、使用されている技術は、様々な惑星のものであると思われます。」 「盗品ってわけね。」 「無数のシグナルが飛び交って、位置を特定できません。探知するのは……お待ちを。宇宙艦隊のサインを捉えました。」 「コンピュータープロセッサーの?」 「違います。シグナルの強度が弱すぎる。現在こちらに…接近中。」 声が響く。「キャスリン! こりゃ驚いた。通せ! 頼むからここを通してくれ。ああ、済まんな。」 異星人とぶつかりながら、階段を降りてくる男。レオナルド・ダ・ヴィンチだ。ジェインウェイに近づくなり、頬にキスをする。「キャスリン! よく来たな。ようこそ、アメリカ大陸へ!」 ダ・ヴィンチには、モバイルエミッターが付いている。トゥヴォックと顔を見合わせるジェインウェイ。

※2: main computer processor

ジェインウェイに尋ねるダ・ヴィンチ。「どうだキャスリン、新大陸の感想は。」 「どうやってここへ?」 「わしにもさっぱりわからんのだ。フランスへの旅支度を整えておったのだが、気がついたらここにいた。そういえば…工房を出る時スペインの船乗りに声をかけられて、意識を失った。きっとジェノヴァ港のガレオン船に乗せられて、小麦袋さながらに広い大西洋を運ばれたのだ。妙な形だな。」 ダ・ヴィンチは突然トゥヴォックの顔に触れ、耳をまじまじと見始めた。慌てて説明するジェインウェイ。「あ、旅仲間の、トゥヴォックよ。」
"Ah, what the old philosophers say is true: 'Monstrous and wonderful are the peoples of undiscovered lands.'

「ほう、昔の哲学者はよくいったものだ。未知の国には奇怪で優れた人々が住んでいるとな。
だが教えてくれキャスリン、お主こそどうやってここに来た?」 「あぁ、それは苦労したの。ポルトガル船ではトルコの海賊に襲われて、ハリケーンでは死にかけた。いつか詳しく…」 「あー、失礼。探していた商人だ。」 異星人が機械を持っている。 「次の発明に必要な装置を持っているはず。パトロンは注文がうるさくてな」というダ・ヴィンチ。 「パトロン?」 「この国の王子だ。お待たせを。」 商人のところへ行き、機械を品定めするダ・ヴィンチ。トゥヴォックはいう。「ダ・ヴィンチは限られた容量のホロプログラムなので、ここを地球と思っている。」 「それも 16世紀だと思っているわ。」 「なぜ彼がここに。」 「攻撃された時、私は近世をシミュレーションしてた。コンピュータープロセッサーが盗まれた時、ダ・ヴィンチのプログラムがメモリーの中で作動中だったの。」 「そしてドクターのモバイルエミッターにダウンロードされた。でも、誰が。」 「彼のパトロンよ。王子様。」 ダ・ヴィンチは交渉を終え、機械を手に入れた。「素晴らしいだろう。」 手に取るトゥヴォック。「プラズマインジェクター・コンジット。宇宙艦隊のだ。」 すぐに受け取るダ・ヴィンチ。「ま、何でもいい。これがあれば同時に 3方向に水銀を流せる。ぜひ新しい工房を見てくれ。王子は最高のパトロンだ。さあ。」 歩いて行くダ・ヴィンチ。ジェインウェイも後をついていくことにした。「行きましょう。」
工房の中へ入る 3人。 「キャスリン、素晴らしい作業場だろう。ここに比べたらフィレンツェの工房など、お粗末なものだ。」 「全部王子様が揃えてくれたの?」 「完璧な人物だ。適度に知的関心があり、わしの才能を恐れ、敬ってくれている。一番肝心なことは、王子の財力が無尽蔵ということだなぁ。」 「それで、代わりに何をするの?」 「アイデアを提供する。」 ジェインウェイは飛行機の模型を手に取った。「空飛ぶ翼も蘇った。不死鳥のごとくにな。ここには軽くて丈夫な素材が豊富に揃っておるのじゃ。今度こそ実験を成功させてみせるぞ。」 ジェインウェイはテーブルの上にフェイザーがあるのに気づき、手に取ろうとした。慌てて取り上げるダ・ヴィンチ。「おおぉ、危ない! ああ。彼らは、雷エネルギーの利用法を発見したんだ。ものすごい力が出る。これは、鉛の弾が飛び出すんじゃあない。いいかね。何と稲妻が出る。」 ダ・ヴィンチは狙いを定め、部屋に置いてあった飾りを一つ消滅させた。ジェインウェイは「ぜひパトロンにお目にかかりたいわ」という 「今夜にも会えるさ。だが用心しろ。王子はボルジアより冷酷な男だ。」
「副長日誌、宇宙暦 51392.7。艦長からの報告はまだない。トムとニーリックスが南の大陸から気になる客を連れて帰ってきた。」
会議室。テーブルの上にはフェイザーライフルとトリコーダー。1人の異星人※3が座っている。 「これを誰から買った。」 その異星人は宇宙艦隊の制服を着ている。「俺を尋問する気か。ワープコイルとトレードできるんだろ。」 パリスは「話は副長とつけてくれ。商売するかは、彼次第」という。 「時間の無駄のようだ。」 チャコティ:「そうだな。お帰りはあちらだ。」 「何?」 「さようなら。迷子にならないようお送りしろ。」 「では…」 立ち上がるニーリックスとパリス。 異星人は折れた。「待てまて、わかったよ。タウから買った。北大陸、7つの国の王だ。」 「武器と技術を売るのか?」と尋ねるチャコティ。 「ああ。」 「通りすがりの船から奪ったものだ。」 「ああ。トランスロケイター※4装置を使ってな。これも盗品だ。それで奴は大金持ち。」 「取り戻したい物がある。どこに行けば会える?」 「さあ、知らんね。質問はもういいだろ。商売の話に入ろう。俺が欲しいのは…。」 「服は差し上げよう。これでおあいこだ。」 異星人はフェイザーとトリコーダーを持った。「時間の無駄だったよ。」 「そうかな。この服似合うよ。」 部屋を出ていく異星人の、後を追うパリス。
「魚雷、プラズマ手榴弾、粒子ライフル。お望みなら儀式用の槍もありますよ。」 護衛に守られた異星人、タウ※5が、別の異星人※6と話している。 「興味はないね。」 「つまり、どんな武器であろうとお望みなら何でも揃います。なければ手に入れる。」 「しかし値段があまりにも高すぎる。」 「確かに安くはないが、あなたの星系のほかのコロニーに売ってもいいのですよ。暴力的な人たちだとか。できれば私もそんな奴らには売りたくはないが、おわかり頂けたかな。」
ジェインウェイに話すトゥヴォック。「間違いありません。我々の装備は、街にはないでしょう。」 「そうなるとちょっと厄介だわ。ダ・ヴィンチの新しいパトロンは、大した商売上手ね。」 遠くでタウが話をしている。 「奴と取引するしか、手はありません。」 「キャスリン!」 ダ・ヴィンチが呼びかけている。「お主に共を紹介しよう。」 「先生を捕まえててくれる?」とトゥヴォックに頼むジェインウェイ。 「でも、艦長。」 「適当におしゃべりをして。」 「ヴァルカン人は無駄話をしない。」 「適当によ。」 ため息をつくトゥヴォック。ジェインウェイに背中を押され、ダ・ヴィンチに近づいていく。 「どうも、気が利きますね。」 「キャスリン、待ってくれ!」 「レオナルド先生、どこにいらしたんです?」 「悪いが、わしはキャスリンに…」 「お話があります。」 「何だね。」 「あなたのことで。先生は…面白い方だ。」 「そりゃあ、ありがとう。トゥヴォック、お主もなかなかのものだぞ。生まれ故郷はどこだね。」 「……スカンジナヴィアです。」 「ふーん。それでは、スカンジナヴィア人として、この新世界の感想を聞かせてくれんか。」 「ここは、魅力的です。先生も楽しんでおられる。」 「めいいっぱいな。ふーう、イタリアは記憶の遥か彼方。この街には優れた機械が揃い、田舎には優れた人々が住んでおる。あー、実に素晴らしい。」 「ところで、何をして過ごしているんです?」 「仕事だ。発明と、芸術。ああそれから、殿下が砦へお出かけの時は、お供をする。お主と話ができて良かった。ヴァルカンを思い出すよ。」 「ヴァルカン?」 「シチリア付近の島に行ったことは?」 「ない。」 「そりゃ残念。」
タウに近づき、腰を下ろすジェインウェイ。「…では後ほど。」 話を終えたタウに挨拶する。「こんばんは。」 「こんばんは。楽しんでますか?」 「いえまだ。」 「そう。お力になれるかな。」 「欲しいものを安く売ってくれるのならね。」 「お望みのものは売って差し上げられるが、安い商品は扱っていないんです。」 「ここから 65光年離れたコロニーの王に頼まれたの。コンピューターが古くなったので、最新のが欲しい。」 「コロニー全体のシステムを調整できるコンピューターとなると、難しい注文だが、お気に召すものがありそうですよ。」 タウはジェインウェイを招き、近くの壁面のボタンを押した。「やあコンピューター、調子はどうだ?」 聞きなれたコンピューターの声。『全システムは通常のパラメーターで機能しています。』 「言葉を話すのね。素敵」というジェインウェイ。タウは命じる。「コンピューター、では機能の特徴を教えてくれ。」 『4,700万のデータチャンネルに、同時にアクセス可能。画像変換は、1ナノセカンドにつき、575兆の処理能力があります。』 「どうです?」 『操作上の限界温度は、10度から、1,790度ケルビンです。』 「お譲りしてもいいが、値段はそれ相当のものですよ。1,000カンナニだ。もっと安いタイプもありますが、いかがしましょう。」

※3: (Don Pugsley)

※4: translocator VOY第66話 "Displaced" 「消えてゆくクルー達」でもニリア人が使用。「転送」と吹き替え

※5: Tau
(John Vargas 映画 ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」の Jedda 役) 声:金尾哲夫

※6: (Doug Spearman)

ダ・ヴィンチの工房。ジェインウェイが地図を広げている。「要塞か倉庫のような建物を探しましょう。タウはきっとそこに盗んだものを隠しているはずだわ。」 トゥヴォックも地図を見ている。「施設は山ほどあります。全て、半径 10キロ以内だ。それにしても、ダ・ヴィンチの観察力は素晴らしい。こんな地図はヴォイジャーの地形コンピューターでも描けません。」 「彼はルネッサンス※7の巨匠よ。歴史を通じて物事を解釈して、再現し、空想を巡らせるの。ヴァザーリは天使といい、フロイトは母性コンプレックスと分析。我々の先輩のカーク船長は、ダ・ヴィンチ本人に会ったと言い張った。」 ダ・ヴィンチがやってきた。「ボンジョルノ、諸君。」 「おはよう先生、よく眠れた?」 「ちょっと眠り過ぎた。ああ悪かったなキャスリン、もう日が高い。しかし目覚めてすぐ、トゥヴォックの姿がわしに大いなる霊感を与えてくれたようじゃ。」 ダ・ヴィンチが持っている絵は、耳をモチーフとしたようなものだった。それを見たトゥヴォックはいう。「どこが。」 「キャスリン、わしの羽根ペンを知らんか。確かここに…。」 トゥヴォックは素早く、ダ・ヴィンチのホロエミッターを押した。言葉と動きを止めるダ・ヴィンチ。 「艦長、ヴォイジャーに戻りましょう。私のトリコーダーとダ・ヴィンチの地図があれば、船のセンサーでコンピュータープロセッサーの正確な位置を割り出せます。」 ジェインウェイは考えてから言った。「両方から攻めましょう。あなたは船に戻って。私は彼と捜索を続けるわ。タウと親しいから領地も詳しい。」 「そうでしょうか。ダ・ヴィンチを尊敬するのはいいが、ホロデッキの外で使うようにはプログラムされてない。」 「彼は天才レオナルド・ダ・ヴィンチよ。ホログラムであろうとなかろうと、地球の歴史にとって間違いなく宝なの。」 「ダ・ヴィンチの振る舞いは全てプログラムされたものです。その才能は本物と同じではありません。」 「せっかくの機会だもの。私が試してみるわ。」 トゥヴォックはポケットからコミュニケーターを取り出した。「トゥヴォックからヴォイジャー。1名転送。」 転送されるトゥヴォック。ジェインウェイはホロエミッターを操作した。途端にしゃべり出すダ・ヴィンチ。「…あったのに……。トゥヴォックは?」 「船に戻ったわ」と言ってしまうジェインウェイ。 「船だと? ポルトガル船はまだ港にいるのかね。」 「ええ、港じゃないけど……近くにいるの。」 「ほう…。海賊はポルトガル人か。」
ヴォイジャー医療室。「その後、進展は?」 ドクターに尋ねられたセブン・オブ・ナインは言う。「進展?」 「船内はどうなっている。」 「状況は変わらない。艦長とトゥヴォックはプロセッサーを探し続けている。」 「どんな、様子だ?」 「クルーの士気についていってるのなら、任務に集中している。」 「ふむ。夕べ食堂で騒ぎがあったと聞いたが。」 「些細な誤解だ。」 「ほう!」 目を輝かせるドクター。何も言わないセブン。ドクターは診断結果を伝える。 「ふむ、健康状態は完璧、インプラントも安定しているが、オプチカルインターフェイスが調整不良だ。週 1度のメンテナンスを忘れんようにな。ところで…食堂で何があったんだ。」 インターフェイスを調整しながら尋ねるドクター。 「トレス中尉と天体測定データを調べていて、意見の相違をみた。」 「それでついお互い、カッとした。」 「中尉が感情的になった。私の意見に反論せず、敵意をむき出しにした。」 「何て言われた。」 「的外れのことだ。正しいのは私の方で、彼女ではない。」 「ああ、詳しく話せ。具体的に知りたいんだ。」 「そんな話は、時間の無駄だなあ。」 「エミッターを盗られて、ここから出られず、船内の出来事を把握できない私の身にもなってくれ。」 ため息をつくセブン。「トレスは私をロボットと言った。それからクリンゴン語で私を冒涜した。意味を翻訳するか?」 「ぜひ頼む。詳しく。」 だが通信が入った。『トゥヴォックからセブン。天体測定ラボに来てくれ。』 残念そうなドクター。「行きたまえ。」 「すぐに向かう」と応えるセブン。 「気が向いたから来てくれ。私は、ここにいる。」 医療室を出るセブン。「独りぼっちでな」とドクターは言った。
ラボに入るセブン。トリコーダーを操作しているトゥヴォック。「ダ・ヴィンチの地図とトリコーダーデータを、イメージシステムに入力した。」 「消えたプロセッサーのサーチパターンを作る。」 「ダ・ヴィンチは細部まで正確に表現してはいるが、デカルト座標以前なので使うには修正が必要だ。」 「了解。ヴァルカン人がホログラムを、生きた人物のように語るとは、理解に苦しむ。何というか、非論理的だ。」 無言のトゥヴォック。 セブンは操作を続ける。「グリッドを配置する。高度、20キロ。」 画面上にいくつかのマークが現れた。「これらのいずれかに、必ずプロセッサーがあるはずだ。解像度を最大にして、地域をスキャンしてみよう」というトゥヴォック。 拡大される。「ここだ。コンピュータープロセッサーはこの建物内にある。 「建物はディスパージョンフィールド※8に囲まれている。転送は不可能だな。」 「艦長が中に侵入し、プロセッサーを発見できれば、力を借りられる。」 「艦長がプロセッサーのパワーをオンにしてくれた、ロックオンできる強い信号を作り出せる。」 「私もそう言おうと思った。」 「艦長に知らせよう。」 ラボを出ていくトゥヴォック。
ダ・ヴィンチの工房。ジェインウェイが通信している。「倉庫までは案外近そうよ。王子はそこにいるらしいわ。ダ・ヴィンチが案内してくれる。」 『了解。』 「合図があるまで待機して。プロセッサーが見つかったら、すぐヴォイジャーに転送する準備をお願い。」 『はい。了解しました。』 通信を終えるジェインウェイ。だが声が聞こえる。「艦長さんとはな。私のホログラムとは、古い知り会いか?」 いつのまにか銃を向けたタウが来ていた。指を鳴らし、手で合図するタウ。ジェインウェイはコムバッジを渡した。

※7: Renaissance

※8: 散乱フィールド dispersion field

毅然とした態度でタウに話すジェインウェイ。「私の部下たちが、転送装置からの防御法を見つけたから、素直に奪った物を返した方が身のためよ。」 「どうかな。ご自分の立場をお忘れのようだ。クルーを呼んでもらおうか。艦長を取り戻すのは、高くつくことになるでしょうな。その価値があなたにあるなら…」 静かに後ろから近づいたダ・ヴィンチは、タウを道具で殴った。気を失うタウ。 「心配ないわ。急ぎましょう。」 ジェインウェイはタウの銃を奪う。 「わしは行かん。」 「手を貸して。」 「ちょっとやり過ぎた。さっきはわしも必死だった。だが王子が意識を取り戻した時、ここにいないとな。運がよければ許してもらえるさ。」 「だめ。先生には時間がないのよ。」 「わしはこの新世界で生きる!」 「ここは鳥かご同然よ。先生は彼の言いなり。」
"When are we not in prison? When are our lives free from the influence of those who have more power than us?

「どこも似たようなもんだ。ん? 自分より権力のある者の影響を受けずに、生きられるものか!
この世界が鳥かごなら、ここは黄金のかごに等しい。チャンスに溢れた、驚異の世界なのだ。王子は横暴だが、うまく付き合えば心配はいらん。」 「一生ここにはいられないわ。先生の故郷はヨーロッパよ。」 「ヨーロッパなど最低だよ。
Here I am free to do what I wish... free from judgment... free to fail. Without a sense of shame... without... without the taunts of the ignorant."

ここなら、何でも自由にできるのだ。評価も気にならんし、失敗も怖くない。そして、恥をかくこともないし、無知だと笑われることもないのだ。」
「先生は認めたくないかもしれないけど、みんな先生の帰りを待ってる。フィレンツェやミラノ、アヴィニヨンでは、先生の才能と心が必要なのよ。私も先生が必要よ。一緒に来て。」 「わしは行かんよ。そうとも、フィレンツェ、ミラノ、アヴィニヨンのためなんかに。だがキャスリン、お前のためなら行こう。」 ダ・ヴィンチはジェインウェイの肩をつかんだ。工房を出る 2人。
ブリッジ。コンピューターに反応があり、報告するキム。「艦長のシグナルが消滅しました。」 チャコティ:「ホロエミッターをスキャンしろ。」 「街から 4,7キロ離れています。」 パリス:「ダ・ヴィンチが移動中だ。艦長と一緒かなあ。」 チャコティ:「コミュニケーターが故障したか。」 「敵に見つかったか。」 キム:「ダ・ヴィンチを呼び戻しますか。」 トゥヴォック:「彼が艦長と一緒なら、プロセッサー探しを手伝っていることが推測されます。」 チャコティ:「モバイルエミッターをロックオンして、待機しろ。」 キム:「了解。」
ジェインウェイたちは倉庫に到着した。「入口は?」と尋ねるジェインウェイ。「思い出せん。」 「なぜ!」 「ああ、この砦には何度も来ておるが、建物はどれも似たり寄ったり。」 タウと同じ種族の護衛がいる。見つからぬよう、建物の影へ入る。
「キャスリン! 見事な造りだ! まるで巨大な生き物の血管のような建築法だ。自然の構造物を…。」 「解説は結構。今すぐ中に入らなきゃ。」 「それが弟子の、師に対する口振りなのかね?」 「先生、王子は必ず追いかけてくるわ。逃げるには中に入るしかない。」 「逃げる? 中に入ってもどうせ捕まる。」 「いいえ。中には素晴らしい発明品があるの。それはコンピューターといって、それを使って信号を送るのよ。ポルトガル船にね。助けを呼べる。 「コンピューター? それはどのような物だね。」 「一言じゃ言えないわ。でも長い距離、信号を送ることができるの。とにかくそれを見つけ出せば絶対助かる。でも問題は、中に入る方法よ。」 ダ・ヴィンチは言った。「影と、光。光と影だ!」 階段を下へ降りていく。
「王子はほかの盗賊同様、何よりも死を恐れておる。だから砦には、入口が一つ。太陽の光が届かない、暗い方角。」 「明るい方が攻撃されやすいものね。」 「その通り。」 そこには扉があった。ジェインウェイがボタンを操作し、中へ入る。
キムが伝える。「モバイルエミッターがロック不能。」 トゥヴォック:「2人は中に侵入しました。」 「副長、敵の姿です。武装集団が倉庫に集結しています。」 「転送装置で何とかしよう。全員消すんだ。」
「ケセウスだってこんな迷路は抜けられまい」というダ・ヴィンチ。「コンパスなしじゃね。」 「針が動いておるぞ。」 「あっちよ。」 静かにするように合図するジェインウェイ。2人の後を護衛が追うが、逆方向に行った。。
「見事なコレクションだ」と感心するダ・ヴィンチ。「全部王子が盗んだのよ。フェイザーガンにワーププラズマ・インジェクター。それに転送装置。」 「それもコンピューターか。」 「ええ。」 トリコーダーを装置上に置き、話しかけるジェインウェイ。「コンピューター、私の声がわかる?」 『もちろんです。』 「もう安心。」 「驚いた! 中に機械じかけの女が。」 一生懸命中を見ようとするダ・ヴィンチ。 「そんなとこね。レベル4 誘導連続作業開始して。」 『それはお勧めできません。』 「警告無効、ジェインウェイ、パイ-1-1-0※9。」 『強制実行確認。作業開始します。』 満足するジェインウェイ。「終わり。」 「後は?」 「ポルトガル人を待つだけ。」
チャコティに言うトゥヴォック。「副長、亜空間周波数域で波動を感知しました。」 「それがプロセッサーだ。ロックオンし、転送ビームのパワーを上げろ。うまくいけば、艦長と一緒に転送できるぞ。」
高音を発するコンピュータープロセッサー。ダ・ヴィンチは後ずさりし始める。ジェインウェイは手を伸ばす。「そばに寄って。遠くへ行くの。」 「何が起こるんだ。」 「大丈夫。」 ダ・ヴィンチはジェインウェイの手を握り、近づいた。だが護衛がエネルギー銃を発砲してきた。隠れるジェインウェイ。コンピュータープロセッサーが転送されていく。敵の銃がダ・ヴィンチの胸を撃つが、映像なので通過する。驚くダ・ヴィンチ。近づいてきた護衛を、ジェインウェイは後ろから殴り、気を失わせた。 「建物は包囲されてるわ。逃げ道は一つ。」 胸を押さえたまま、茫然とするダ・ヴィンチ。ジェインウェイは急かせる。「早くこっちに。」 「キャスリン、何が起きた。撃たれたのに生きている。こんなことはありえん。」 ジェインウェイは転送機の部品を手に取り、ダ・ヴィンチに見せる。「これは外国の発明品なの。転送移動装置と呼ばれているものよ。一瞬のうちに、この建物から私達を数キロ離れた場所に移動させるの。」 「どうやって!」 「こっちに。」 ゆっくりとジェインウェイに近づくダ・ヴィンチ。トリコーダーがセットされる。「説明してくれんかな。」 「先生、いつも言ってるじゃない。弟子は師を超えようとするものだって。ここでは弟子の方が理解していることもあるの。そういうこと。」 音が鳴った。銃を手に取るジェインウェイ。「理解できん」というダ・ヴィンチ。そのまま 2人は転送された。
ヴォイジャーのブリッジ。「プロセッサーが戻りました」とチャコティにいうトゥヴォック。「艦長は。」 「まだ惑星です。」 キム:「副長。戦闘機が 13機、ヴォイジャーに接近中。」 チャコティ:「トム、軌道の位置を上げろ。ブリッジからトレス。コンピュータープロセッサーを作動させろ。艦長はまだ惑星だ。」 トレス:『了解。』

※9: 保安アクセスコード "Janeway pi-1-1-0"

山肌を歩くジェインウェイとダ・ヴィンチ。「信じられん! 信じないぞ。こんなことが、どうして信じられよう。これは魔法か幻想か?」 「違うわ。新大陸は驚異の世界でしょう。」 「驚異? だがこれは魔法。科学ではなく、魔術だ。わしは魔術など信じないぞ。」 「後で説明するから急いで。」 「いや! まず理解せねば。キャスリン、空間で物質が消え、わしの体内を光が通過した。わしらは精霊か。教えてくれ。死んだのか。」 「じゃあ聞くけど、私達が人間じゃないとしたら? もし別の生き物だったら。そう、スズメのような小鳥だとしたら、先生は何をしてるかしら。」 ジェインウェイはさえずっているスズメを例に使った。 「巣を作る。ニレの木の枝にな。虫をたくさん捕って、巣に蓄える。春になったら仲間とさえずるだろう。」 「フィレンツェの政治なんて無関係。彫刻や数学も必要ない。」 「もちろんだ。」 「なぜかしら。」 「スズメだからさ。」 「そう、スズメだから関係ない。最高の先生が教えても?」 「たとえアリストテレスがスズメの巣のそばに来て、講釈したとしても、スズメは人間界を理解できんだろうな。」 「それと同じよ。人間界にも理論を超えた現実があるってこと。あなたの理解を超えたこともあるの。」 「受け入れられん。わしはスズメじゃない。」 「いたぞ! あそこだ。」 敵の声が聞こえる。「急いで。」 「キャスリン! こっちへ。山頂だ。後はわしに任せろ。」 ジェインウェイの手を取り、山を登り始めるダ・ヴィンチ。
機関室のトレス。「報告します。全て回復。ナビゲーションも、推進システムに、転送装置も。」 応答するブリッジのチャコティ。「了解した。」 キム:「艦長とダ・ヴィンチは、建物から出ています。低い軌道で、モバイルエミッターにロックオンできる。」 「転送ビームを広く設定して、2人を収容する準備にかかれ。どれぐらい近づけばいい。」 「地表から最低 500キロ内。」 トゥヴォック:「敵が邪魔してくるでしょう。」 チャコティ:「適当にあしらってやれ。」 うなずくパリス。「任せて。」
山の向こうには、街並みが見えている。疲れているダ・ヴィンチ。「ちょ、ちょっと待ってくれ。さあお嬢さん、逃げ道はどこだ。」 空を見上げるジェインウェイ。「ヴォイジャーはどこ? チャコティはどこ?」 「手を貸してくれ。」 2人は更に山を登る。
報告するパリス。「1,000キロまで接近しました。950。900。」 トゥヴォック:「敵は武装強化しています。」 チャコティ:「非常態勢!」
攻撃機の船団が攻撃してくる。 トゥヴォック:「シールド、維持。」 パリス:「850キロ。」 チャテコィ:「回避作戦!」
話を続けるダ・ヴィンチ。「ヘドラルカが、山の頂きからヨーロッパ全土を見下ろした時、彼は新しい時代を目撃していたのだ! ルネッサンスを目の当たりにした。世界の再生をな。いいかキャスリン、我々もこの山で生まれ変わろうではないか。我々は、鳥になるのだ!」 2人の先には、ダ・ヴィンチが作った飛行機があった。山並みを見下ろすジェインウェイ。「大変なことになりそう。」 「急げ。時間がない。」
キム:「副長、2人は断崖にいるようです。軌道が高くてロックオンできません。」
飛行機を調べるジェインウェイ。「改良したのね。」 「お前の忠告を聞いて、翼を長くしたのだ。」 「角度も変えたの?」 「ああそうだ。今回はアルノ川はないからね。下は岩だらけだから、落ちたらとても助からんだろう。」 「翼もしっかり固定されてる。アルミ合金みたいに軽そうだわ。」 「キャスリン、成功させるぞ。」 銃の攻撃。タウたちだ。「実験開始。」 2人は飛行機に体をつなぐ。
キム:「地表で攻撃を感知! 艦長の近くだ。時間がありません。」 パリス:「700キロ。」 チャコティ:「耐えてくれ、艦長。もう少しだ。」
ジェインウェイたちは言った。「出発!」 「行くぞ、それ!」 追いかけるタウたち。滑り降りる飛行機。そして、空へ飛び立った。喜ぶダ・ヴィンチ。「キャスリン、飛んでるぞ!」 「鳥みたい。」 「やったぞー!」 飛行機は滑空していく。タウは茫然とそれを見つめる。
トゥヴォック:「艦長に固定しました。2人は…空中です。稚拙な飛行装置で空を飛んでいます。」 パリス:「500キロ!」 キム:「ロック、オン。転送ビーム、発射!」 チャコティ:「エネルギー、オン。」
空を飛んでいた飛行機は、そのまま転送ビームに包まれた。どうすることもできないタウ。
キム:「やった! カーゴベイに装置ごと転送。」 チャコティ:「惑星軌道を離脱!」
「艦長日誌、宇宙暦 51408.3。アルファ宇宙域へ向かうコースに戻る。コンピュータープロセッサーと、ドクターのモバイルエミッターも無事戻る。近いうちに先生に会いに行こう。」
ホロデッキ、ダ・ヴィンチの工房。 ダ・ヴィンチは旅支度をしている。ジェインウェイがやって来た。「先生、どこにお出かけ?」 「フランスだ。フィレンツェなど、こちらからおさらばじゃ。フランス国王に今回の冒険について手紙を出したら、城の塔から一緒に飛んでみたいという申し出があった。」 「本気で飛ぶつもり?」 「もちろんじゃ。実験は成功したではないか。」 「でも素材が…。向こうには軽い金属なんてないわ。」 「何、ほかで代用するさ。空中を自由に飛ぶ機械。稲妻が飛び出す装置。機械じかけの女性が、中に住む箱。確かにこの目で見たのだ。全て再現するのがわしの使命。いやいや、それ以上の物を作る。」 「空を飛んで頭が刺激されちゃったのね。」 「心もな。幼い頃の出来事だった。ベッドのかたわらに鳥が留まった。そしてわしをいざなうように翼を広げたのだ。だがお前が、大事なことを教えてくれた。物事をあきらめないこと。」 「励まそうとしたの。」 「いいや、いいんだ。
All my life, I have wanted to fly. Perhaps my failure to do so has caused my heart to remain in flight... leaping from one thing to another... never satisfied, never complete."

空を飛ぶのが長年の夢だった。もしあきらめていたら、飛びたいという思いだけが心に残り、ほかのことに手を出しても、何一つ満足にやり遂げられなかった。」
「でも、先生は飛んだ。」 「それを完成させるのが、わしの使命だ。」 「応援してます。国王陛下によろしく。」 荷物を持って出ていくダ・ヴィンチは、振り返ってジェインウェイに言った。「キャスリン、馬車まで送ってくれるかね。」 微笑むジェインウェイ。「喜んでお供します。」 ダ・ヴィンチと共に工房を出ていくジェインウェイ。ダ・ヴィンチの机の上の絵には、かごに入った鳥が描かれていた。


・感想
自分がホログラムであることを認識していないダ・ヴィンチと、ジェインウェイたちとのやり取りが笑わせてくれます。彼は自分についているホロエミッターを何だと思っているのか、聞いてみたいところです。


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