ジェインウェイに尋ねるダ・ヴィンチ。「どうだキャスリン、新大陸の感想は。」
「どうやってここへ?」
「わしにもさっぱりわからんのだ。フランスへの旅支度を整えておったのだが、気がついたらここにいた。そういえば…工房を出る時スペインの船乗りに声をかけられて、意識を失った。きっとジェノヴァ港のガレオン船に乗せられて、小麦袋さながらに広い大西洋を運ばれたのだ。妙な形だな。」
ダ・ヴィンチは突然トゥヴォックの顔に触れ、耳をまじまじと見始めた。慌てて説明するジェインウェイ。「あ、旅仲間の、トゥヴォックよ。」
"Ah, what the old philosophers say is true: 'Monstrous and wonderful are the peoples of undiscovered lands.'
「ほう、昔の哲学者はよくいったものだ。未知の国には奇怪で優れた人々が住んでいるとな。 だが教えてくれキャスリン、お主こそどうやってここに来た?」
「あぁ、それは苦労したの。ポルトガル船ではトルコの海賊に襲われて、ハリケーンでは死にかけた。いつか詳しく…」
「あー、失礼。探していた商人だ。」
異星人が機械を持っている。
「次の発明に必要な装置を持っているはず。パトロンは注文がうるさくてな」というダ・ヴィンチ。
「パトロン?」
「この国の王子だ。お待たせを。」
商人のところへ行き、機械を品定めするダ・ヴィンチ。トゥヴォックはいう。「ダ・ヴィンチは限られた容量のホロプログラムなので、ここを地球と思っている。」
「それも 16世紀だと思っているわ。」
「なぜ彼がここに。」
「攻撃された時、私は近世をシミュレーションしてた。コンピュータープロセッサーが盗まれた時、ダ・ヴィンチのプログラムがメモリーの中で作動中だったの。」
「そしてドクターのモバイルエミッターにダウンロードされた。でも、誰が。」
「彼のパトロンよ。王子様。」
ダ・ヴィンチは交渉を終え、機械を手に入れた。「素晴らしいだろう。」
手に取るトゥヴォック。「プラズマインジェクター・コンジット。宇宙艦隊のだ。」
すぐに受け取るダ・ヴィンチ。「ま、何でもいい。これがあれば同時に 3方向に水銀を流せる。ぜひ新しい工房を見てくれ。王子は最高のパトロンだ。さあ。」
歩いて行くダ・ヴィンチ。ジェインウェイも後をついていくことにした。「行きましょう。」
工房の中へ入る 3人。
「キャスリン、素晴らしい作業場だろう。ここに比べたらフィレンツェの工房など、お粗末なものだ。」
「全部王子様が揃えてくれたの?」
「完璧な人物だ。適度に知的関心があり、わしの才能を恐れ、敬ってくれている。一番肝心なことは、王子の財力が無尽蔵ということだなぁ。」
「それで、代わりに何をするの?」
「アイデアを提供する。」 ジェインウェイは飛行機の模型を手に取った。「空飛ぶ翼も蘇った。不死鳥のごとくにな。ここには軽くて丈夫な素材が豊富に揃っておるのじゃ。今度こそ実験を成功させてみせるぞ。」 ジェインウェイはテーブルの上にフェイザーがあるのに気づき、手に取ろうとした。慌てて取り上げるダ・ヴィンチ。「おおぉ、危ない! ああ。彼らは、雷エネルギーの利用法を発見したんだ。ものすごい力が出る。これは、鉛の弾が飛び出すんじゃあない。いいかね。何と稲妻が出る。」 ダ・ヴィンチは狙いを定め、部屋に置いてあった飾りを一つ消滅させた。ジェインウェイは「ぜひパトロンにお目にかかりたいわ」という
「今夜にも会えるさ。だが用心しろ。王子はボルジアより冷酷な男だ。」
「副長日誌、宇宙暦 51392.7。艦長からの報告はまだない。トムとニーリックスが南の大陸から気になる客を連れて帰ってきた。」
会議室。テーブルの上にはフェイザーライフルとトリコーダー。1人の異星人※3が座っている。
「これを誰から買った。」
その異星人は宇宙艦隊の制服を着ている。「俺を尋問する気か。ワープコイルとトレードできるんだろ。」
パリスは「話は副長とつけてくれ。商売するかは、彼次第」という。
「時間の無駄のようだ。」
チャコティ:「そうだな。お帰りはあちらだ。」
「何?」
「さようなら。迷子にならないようお送りしろ。」
「では…」 立ち上がるニーリックスとパリス。
異星人は折れた。「待てまて、わかったよ。タウから買った。北大陸、7つの国の王だ。」
「武器と技術を売るのか?」と尋ねるチャコティ。
「ああ。」
「通りすがりの船から奪ったものだ。」
「ああ。トランスロケイター※4装置を使ってな。これも盗品だ。それで奴は大金持ち。」
「取り戻したい物がある。どこに行けば会える?」
「さあ、知らんね。質問はもういいだろ。商売の話に入ろう。俺が欲しいのは…。」
「服は差し上げよう。これでおあいこだ。」
異星人はフェイザーとトリコーダーを持った。「時間の無駄だったよ。」
「そうかな。この服似合うよ。」 部屋を出ていく異星人の、後を追うパリス。
「魚雷、プラズマ手榴弾、粒子ライフル。お望みなら儀式用の槍もありますよ。」 護衛に守られた異星人、タウ※5が、別の異星人※6と話している。
「興味はないね。」
「つまり、どんな武器であろうとお望みなら何でも揃います。なければ手に入れる。」
「しかし値段があまりにも高すぎる。」
「確かに安くはないが、あなたの星系のほかのコロニーに売ってもいいのですよ。暴力的な人たちだとか。できれば私もそんな奴らには売りたくはないが、おわかり頂けたかな。」
ジェインウェイに話すトゥヴォック。「間違いありません。我々の装備は、街にはないでしょう。」
「そうなるとちょっと厄介だわ。ダ・ヴィンチの新しいパトロンは、大した商売上手ね。」 遠くでタウが話をしている。
「奴と取引するしか、手はありません。」
「キャスリン!」 ダ・ヴィンチが呼びかけている。「お主に共を紹介しよう。」
「先生を捕まえててくれる?」とトゥヴォックに頼むジェインウェイ。
「でも、艦長。」
「適当におしゃべりをして。」
「ヴァルカン人は無駄話をしない。」
「適当によ。」 ため息をつくトゥヴォック。ジェインウェイに背中を押され、ダ・ヴィンチに近づいていく。
「どうも、気が利きますね。」
「キャスリン、待ってくれ!」
「レオナルド先生、どこにいらしたんです?」
「悪いが、わしはキャスリンに…」
「お話があります。」
「何だね。」
「あなたのことで。先生は…面白い方だ。」
「そりゃあ、ありがとう。トゥヴォック、お主もなかなかのものだぞ。生まれ故郷はどこだね。」
「……スカンジナヴィアです。」
「ふーん。それでは、スカンジナヴィア人として、この新世界の感想を聞かせてくれんか。」
「ここは、魅力的です。先生も楽しんでおられる。」
「めいいっぱいな。ふーう、イタリアは記憶の遥か彼方。この街には優れた機械が揃い、田舎には優れた人々が住んでおる。あー、実に素晴らしい。」
「ところで、何をして過ごしているんです?」
「仕事だ。発明と、芸術。ああそれから、殿下が砦へお出かけの時は、お供をする。お主と話ができて良かった。ヴァルカンを思い出すよ。」
「ヴァルカン?」
「シチリア付近の島に行ったことは?」
「ない。」
「そりゃ残念。」
タウに近づき、腰を下ろすジェインウェイ。「…では後ほど。」 話を終えたタウに挨拶する。「こんばんは。」
「こんばんは。楽しんでますか?」
「いえまだ。」
「そう。お力になれるかな。」
「欲しいものを安く売ってくれるのならね。」
「お望みのものは売って差し上げられるが、安い商品は扱っていないんです。」
「ここから 65光年離れたコロニーの王に頼まれたの。コンピューターが古くなったので、最新のが欲しい。」
「コロニー全体のシステムを調整できるコンピューターとなると、難しい注文だが、お気に召すものがありそうですよ。」
タウはジェインウェイを招き、近くの壁面のボタンを押した。「やあコンピューター、調子はどうだ?」
聞きなれたコンピューターの声。『全システムは通常のパラメーターで機能しています。』
「言葉を話すのね。素敵」というジェインウェイ。タウは命じる。「コンピューター、では機能の特徴を教えてくれ。」
『4,700万のデータチャンネルに、同時にアクセス可能。画像変換は、1ナノセカンドにつき、575兆の処理能力があります。』
「どうです?」
『操作上の限界温度は、10度から、1,790度ケルビンです。』
「お譲りしてもいいが、値段はそれ相当のものですよ。1,000カンナニだ。もっと安いタイプもありますが、いかがしましょう。」
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※3: (Don Pugsley)
※4: translocator VOY第66話 "Displaced" 「消えてゆくクルー達」でもニリア人が使用。「転送」と吹き替え
※5: Tau (John Vargas 映画 ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」の Jedda 役) 声:金尾哲夫
※6: (Doug Spearman)
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