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エンタープライズ エピソードガイド
第24話「幻影の戦士」
Desert Crossing

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・イントロダクション
『船長私的記録、2152年2月12日。短い寄り道の後、コースをライサに戻す。クルー全員、上陸を心待ちにしている。』
アーチャーの部屋。
ポートスが見ている前で、アーチャーは水球のマークがついたバッグに物を入れていく。「…スラヤ湾※1という海辺が面白そうだ。断崖絶壁に別荘が建ち、読書には…もってこいの場所だ。本に飽きたらダイビングも…」 呼び出し音が鳴った。「コンピューター、ポーズ。アーチャーだ。」
トゥポル:『救難信号を受信しました。左舷よりおよそ、2光年離れた船から来ています。』
「どこの船だろう。」
『わかりません。コースを変更しますか?』
「…頼む。すぐそっちに行く。」 ため息をつくアーチャー。「浜辺の散歩はしばらくお預けだ。」
出ていくアーチャー。ポートスは座った。


※1: Suraya Bay

・本編
通常飛行中のエンタープライズ。
廊下を歩く異星人、ゾブラル※2。「プラズマ残留物。」
アーチャー:「インジェクターが汚染されていました。」
「日頃のメンテナンスを怠ったツケですかなあ。」
「宇宙を漂流したいというなら構いませんが?」
笑うゾブラル。「つまらん故障で迷惑をかけて申し訳ない。タッカー少佐によろしくお伝え下さい。」
アーチャー:「少佐は喜んでましたよ? 異星人船のエンジンに触れるいいチャンスだと。…それから、右舷に小さな亀裂も見つけました。今修理させてます。」
「優秀なクルーだ。」
「恐れ入ります。」
「全ての救難信号に応えているんですか。」
「できる限り。」
「ああ…実に頼りがいのある方々だ。」

船の修理が行われている。
ゾブラル:「明日は是非我が家へお越し下さい。タッカー少佐も御一緒に。ご馳走させていただきたい。それぐらいのことしかできませんが。」
アーチャー:「大変嬉しいが、クルーをライサへ連れて行く約束なんです。」
「1日ぐらい延びてもいいでしょう。」
「これ以上待たせたら…ストを起こされてしまいますよ。」
「ゲスカーナ※3・マッチがあるんです。楽しい体験ができますよ?」
「ゲスカーナ?」
「ええ、競技に参加したら、もっと…楽しんでいただけるでしょう。…言っておきますが、私は短気な方なんです。」
「…座標をお知らせ下さい。」
笑うゾブラル。
アーチャー:「少佐を説得しましょう。」
ゾブラル:「涼しい服装で!」

シャトル格納庫から、ゾブラルの船が発進した。

機関室のタッカー。「私は遠慮させていただきます。」
アーチャー:「辞退できるような招待じゃない。」
「仕事が山積みなんですよ。インパルスマニフォルドの浄化も必要だし、Cデッキの重力プレートも未調整。」
「トリップ。」
「砂漠でしょう? 酷暑、熱風…。私は砂漠が苦手なんです。」
「オーストラリアで 2週間過ごしたろう? あれは最高だった。」
「奥地のサバイバル訓練ですか? 再処理した汗を飲み、ヘビ肉を食わされた。どこが最高なんですか。」
笑うアーチャー。「今回は訓練じゃない。ゾブラルはお客を楽しませることには、長けてるんじゃないかなあ。赤いカーペットで歓迎してくれるそうだ。インパルスマニフォルドを浄化するより楽しいぞ? …ま、好きにしろ。代わりにマルコムを誘ってみる。だが実に残念だよ。是非君と一緒に行きたかったのに?」
タッカー:「ヘビ肉は勘弁して下さいよ?」 何とかうなずいた。

惑星に到着したエンタープライズ。
地表の集落へ、シャトルポッドが降下する。
軽装のタッカー。「外は地獄より暑そうだ。41度です。」
アーチャー:「…カラッとしてる。」
「ああ…。」
外に出るアーチャー。

すぐにゾブラルが近づく。「ハッハー! ようこそ!」
アーチャー:「お招きどうも。タッカー少佐も一緒です。」
「ああ、覚えとるとも。船を修理してもらったんだ。最高のエンジニアだ。」 仲間に紹介するゾブラル。
タッカー:「インジェクターが詰まっただけです。」
「ああ、謙虚なお人だ。腹が減ってるだろう。ご馳走を準備した。」
動物を連れて行く住人。

食事中のゾブラル。「地球も砂漠が多いのかねえ。」
アーチャー:「いいえ、少しだけ。こんな巨大なのはありません。」
タッカー:「上から見ると、この星は砂漠だらけですねえ。」
ゾブラル:「ああ、そう見えるが。わずかだが小さな湖水や海もある。地球はどうだ。」
タッカー:「3分の2 が海です。」
「素晴らしい。どんどん飲んで。」
「どうも。…何という酒でしたっけ。」
「ヤラサット※4。北部丘陵地帯に生えているサボテンから作られています。ロースト・テレカク※5はいかがかな。」
アーチャー:「美味しいです。砂漠でサバイバル訓練をしたときは…食事はそれはひどいものでした。」
タッカー:「あの地獄の訓練で、体重が 3キロは落ちましたよ。」
笑うゾブラル。
タッカー:「あまりの暑さに、食欲も失せた。」
アーチャー:「今回は大丈夫なようだな?」
「フフン…環境に慣れてきたんです。」
ゾブラル:「ああ…新しい文化に適応するのは大変でしょうな。」
アーチャー:「難しいときもありますが、それが目的ですから。」
「故郷に帰ろうと思ったことは。」
「一度だけ。我々より強大な兵力をもつ敵対種に攻撃されたんです。その時武器を改良するためにコースを地球にセットした。…しかし自分たちで修理して、事なきを得ました。※6
タッカー:「以来攻撃してこない。」
ゾブラル:「波乱に富んだ旅を続けておられる。」
アーチャー:「感動を味わえますから?」
「ここでも、十分味わっていただきたい。」 乾杯するゾブラル。また料理が運ばれてきた。「あー、是非これを御賞味あれ。」
タッカー:「うまそうだな、何です?」
「血のスープです。我々でも滅多に口にできない代物だが、今日は特別に用意させました。」
「何の肉かなあ…この塊。」
「ああ…それはオスのシンボルなんですよ。刻んで、味付けしてある。」 笑い、口にするゾブラル。
動きを止めていたアーチャーやタッカーも続く。すぐに酒を飲むタッカー。
周りを見るアーチャー。「綺麗なタペストリーだ。」
ゾブラル:「どうも。どれがお好みですか?」
「ああ…そうだなあ。あれなんかいい。」
「お持ち帰りを!」
「いや、それはいけません。」
「ほんの贈り物ですよ。」
「ありがたいが、タペストリーを掛けるような壁がありません。」
「ああ、それでは…小さな物を。ああ…これだったら気に入っていただけるかな? スリバンが作った。数年前に会ったんですよ。…なかなか面白い連中でした。」
受け取るアーチャー。「…どうも。」
外で音が響いた。
ゾブラル:「ああ、ゲスカーナ・マッチが始まります。お二人にも是非、ご参加いただきたい。」
タッカー:「今すぐ? テレカクを、頂いたばかりで…。」
「それなら万全だ、ゲスカーナは相当な体力がいりますからなあ。…さあ!」
ため息をつくタッカー。

空中をボールが舞う。
上半身裸の男が倒れながら、棒の先で受け取った。色が変わる。
サングラスをしたアーチャーたちが観戦している。
ボールを奪い合う異星人たち。
ゾブラルが受け取り、丸いゴールに向けて投げはなった。
中心に見事入り、消滅する。喜ぶゾブラル。
歓声を上げるアーチャーたち。
ゾブラルが近づく。「ああ…準備はよろしいか。」
タッカー:「ええ、任せて下さいよ。」
アーチャー:「…トロフィーを取れるかどうか、自信ない。」
ゾブラル:「お二人にピッタリの勇壮な競技だ。」
2人と交代する。
アーチャー:「どうも。」
上着を脱ぎ、中に入っていく。

報告するサトウ。「呼びかけです。」
トゥポル:「船長?」
「いえ、砂漠にある遠方の街からですねえ。」
「つないで。…こちらエンタープライズ。」
ゾブラルと同じ種族の者が映し出された。『数時間前、シグニアイ地区※7にそちらから小型船が上陸するのを確認しました。どのような理由です?』
トゥポル:「船長と機関主任が招待されています。」
『誰にです。』
「ゾブラルという男です。あなたは?」
『総裁のトレリット※8だ。その男と接触することになったいきさつは?』
「故障した船を修理したのが縁です。お礼が 2人がもてなしを受けています。」
トレリット:『もてなしですとう? 船長と機関主任には、二度と会えなくなるかもしれませんよ?』


※2: Zobral
(クランシー・ブラウン Clancy Brown 1959年生まれ、「バッド・ボーイズ」(1983) でデビュー。「バカルー・バンザイの 8次元ギャラクシー」(1984)、「ハイランダー/悪魔の戦士」(1986)、「影なき男」(1987)、「ショーシャンクの空に」(1994) などに出演。「ER 緊急救命室」第4シーズンのエリス・ウェスト役) 種族名不明。声:菅生隆之、7代目スポック (現在の補完部分、新録を担当)

※3: Geskana

※4: yalasat

※5: teracaq

※6: ENT第12話 "Silent Enemy" 「言葉なき遭遇」より

※7: Cygniai Expanse
「シグニアイ」がゾブラルたちの国名 (種族名) を示すのかは不明

※8: Trelit
(チャールズ・デニス Charles Dennis TNG第73話 "Transfigurations" 「輝きの中へ…」のスナッド (Sunad) 役) 総裁=Chancellor。声:村松康雄、DS9 ゲモールなど

ゲスカーナを楽しむタッカー。ジャンプし、ひっくり返って倒れた。
プレーする人々。「こっちだ!」
アーチャーが起こす。「大丈夫か。」
タッカー:「まだまだ!」

ボールを受け取ったアーチャーは、ぶつかってくる敵をかわしていく。
敵チームの声。「止めろ!」
受け取るタッカー。
アーチャーは敵を倒す。パスを受け取りゴールを狙うが、入らなかった。
敵のゾブラル。「惜しかったなあ!」
タッカー:「2センチ右なら入ってた。」
アーチャー:「次は完璧なパスを送るさ。」
「ええ。」
アーチャーのコミュニケーターが鳴っている。
タッカーと話すゾブラル。「いやあ、よかったぞう。」
応えるアーチャー。「アーチャー。」
トゥポル:『船長、お話があります。』
「待ってくれ。今、取り込み中なんだ。」
『緊急です。お一人ですか?』
「ちょっと待て。科学士官からです、緊急の用らしい。いいですか。」
ゾブラル:「ごゆっくり! …休憩だ。」 仲間のところへ戻る。

ブリッジに流れるアーチャーの声。『どうしたんだ。』
トゥポル:「今、そちらから 200キロ離れた地点にある、政府総裁の方から警告を受けました。船長たちの身が危険だというのです。」

尋ねるアーチャー。「何が危険なんだ。」
トゥポル:『ゾブラルたちはテロリストの疑いが出てきました。これまで市民を標的にしたテロを、数多く実行してるということです。』
「私にはとても信じられない話だ。」

トゥポルは勧める。「真偽はともかく、彼らの正体がはっきりするまでは、船に戻った方がよろしいかと。」

ゾブラルたちを見たアーチャー。「了解した。」

通信を終えるトゥポル。

近づくゾブラル。「問題は片づきましたか。」
アーチャー:「船長というのはのんびり遊んでいる暇もない。申し訳ないが、すぐ戻らねばなりません。」
「ああ…それは残念だ。」
タッカー:「どうしたんです。」
アーチャー:「エンジントラブルらしい。…すぐ戻ってこいと、トゥポルからだ。」
「試合の途中なのに…。」
「この前、インパルスマニフォルドの浄化が必要だと言ってたな? その通りだった。」
タッカーは察した。「…それでは…楽しいゲームでした。」
ゾブラル:「お二人がいなくてもほかのクルーが対処してくれるでしょう。」
アーチャー:「だといいんだが。」 服を拾う。
「この前も言ったが、私は短気なんだ。」
「時間があれば戻ってきますよ。」
「トロサン人※9を信じるな! エンタープライズとトレリット総裁の間で通信が交わされたことは、報告を受けている。科学士官が何を吹き込まれたかは知らんが、全てでたらめだ! …後でゆっくり話すつもりだったんだが、お二人を招待した本当の理由というのを是非聞いて欲しい。船長、あなたは…公明正大で完全無欠な方だと…話を聞けば必ずや私たちの力になってくれるはず。」

ゾブラルは受け取った布を見せる。「この衣装は、イロット※10と言います。イロットは、『距離を置く』という意味です。街に住んでいるとき、人前では必ずこれを着るよう強いられました。」
アーチャー:「…差別は終わったのでは?」
「…ついに身分制度が廃止されたとき、これで平等になるとみんな大いに期待しました。派手に祝いましたよ? 街中でイロットを燃やしてね? ようやく自分たちの権利が認められると喜んだ。…だが、トロサン人※11は協定に署名しながら…約束を守らなかった。彼らは今も政府や土地、資源全てを独占している。我々は法に訴えて 10年間も抗議を続けた結果、やっとわかったんだよ。彼らに気づかせるには、これしかない。そのために我々は、砂漠中にこうしたキャンプを造った。こちらの声が届くまで、トロサン人への攻撃はやめない! テロリスト呼ばわりされているが、何世紀にも渡って我々を弾圧し続けてきたのは奴らの方だ。」
「それで? 何のために私を呼んだ。…歴史の講義を聞かせるためじゃないだろう。」
「…トロサン軍は、我々の 10倍の兵力を保有している。君らの協力がなければ、我が軍はおしまいだ。」
「…私たちが、力になれるとは思えません。」
笑うゾブラル。「聞いたとおり謙虚だな! …船をスキャン済みだ。なかなか立派な武器をおもちのようだ。だが私が一番欲しいのはですな、その知恵だ。今現在戦略は、八方ふさがりだが、我々が力を合わせれば、必ず突破口が見つかる! お願いします、是非我が軍をお導き下さい。それが我々の望みです。」 頭を下げる。
音が響いてきた。
タッカー:「何事です。」
ゾブラル:「トロサンの巡洋艦だ。砲撃はいつも日没後に始まるんだが、今日は早まったようだ。」 タペストリーを取ると、武器が隠されていた。
アーチャー:「何を聞いたか知らんが、私を誤解している。」
「スリバン人は?」
「彼らが何だ。」
「あなたは収容所から、大勢のスリバン人捕虜を解放した。」
タッカー:「誰からそれを。」
「輸送船の船長からです。探検家は偉大な戦士だったと話してくれた。敵軍を全滅させて救ってくれたと。ジョナサン・アーチャー船長だよ。」
報告するゾブラルの部下※12。「パルス砲が、2隻の巡洋艦にやられました。」
ゾブラル:「ああ…船を用意しろ。数時間ももたんかもしれん。議論の続きは後だ。地下に隠れて。」
タッカー:「エンタープライズに戻った方が安全ですよ。」
「いや、あのシャトルは目立ちすぎて危険だ。たちまち狙われる。…お願いです、ホストとしてお二人を死なせるわけにはいかない。」
仕方なく地下に入るアーチャーたち。

状況をつかむリード。「キャンプ周辺が攻撃されています。」
トゥポル:「…船長を呼んで。」
アーチャー:『アーチャーだ。』 音声が乱れている。
「船長。ご無事ですか?」
『…ああ…避難した…攻撃がやむまで…』 切れてしまった。
サトウ:「これが精一杯です。全区域で妨害シグナルが受信されてます。」
メイウェザー:「このまま放ってはおけません。転送装置は?」
リード:「生体反応を特定できない。私がシャトルで、連れ戻します。」
トゥポル:「攻撃の真っ最中に? …すぐトレリット総裁を探すように。」

呼びかけるアーチャー。「アーチャーよりエンタープライズ。」 返ってくるのは雑音だけだ。「エンタープライズ、応答せよ。…ああ…。」 あきらめた。「ああ…疲れたな?」
タッカー:「ああ…あのミッドフィルダー、3度も体当たりしてきやがった。ああ…。あ! 体中の肋が悲鳴を上げてますよ。」
「船に戻ったらドクターに診てもらえ。」
攻撃による振動が伝わってくる。
タッカー:「それで? 『偉大な戦士』は何か脱出方法を思いつきましたか?」
ため息をつくアーチャー。
タッカー:「…彼らを救おうなんて考えてませんよね?」
アーチャー:「ん…スリバン人たちのことを考えていたんだよ。ああ…彼らを助けなかったら、こんな事態は起きなかった。」
「ええ。トゥポルは怒ってるだろうな。」 揺れは続く。「ああ…機関主任の助言を一つ。」
「何だ?」
「…逃げましょう。我々はだまされてここに誘い出された。挙げ句の果てに共に戦ってくれ? 監獄から無実の人々を脱出させるのとはわけが違う。」
「一つ問題がある。ゾブラルだ。恐らく彼は賛成してくれないだろう。」
さらに揺れ、天井の一部が崩れてきた。咳をする 2人。
アーチャー:「行こう!」 外へ向かう。

地上の建物は完全に崩れ、炎を上げていた。
身をかがめる 2人。
タッカー:「…こうなったら、一か八か砂漠に逃げるしかない。」
アーチャー:「砂漠嫌いじゃなかったのか?」
「仕方ない!」

シャトルポッドに駆け込む 2人。
必要な物資を持ち出す。
双方の砲撃は、夜の惑星上で交わされている。
キャンプに命中し、悲鳴が聞こえた。
シャトルを抜け出すアーチャーとタッカー。


※9: トロサン Torothan
明らかにゾブラルたちと見た目は同じなので、同じ惑星の上での別国家 (部族) のようですね。こういう時こそ「トロサ (ン) 」と訳した方がわかりやすかったかも?

※10: yrott

※11: この箇所の原語は "Torothan Clan"。「トロサン族」「トロサンの一味」といった意味

※12: 異星人男性 Alien Man
(Brandon Karrer) 声:阪口周平

ブリッジのトゥポル。「キャンプを攻撃することを隠していましたね?」
トレリット:『あなた方はすぐ立ち去ると約束したのに、どういうことです。』
「船長はゾブラルの話を聞いていたのです。」
『なるほど? 2人はどこです。』
「わかりません。…攻撃を終わらせていただければ、捜索隊を送ります。」
『敵地に更なる仲間を送る間、我々に待機しろと言うのか?』
「我々はテロリストに協力などしていません。」
『ハ…そうでした。お二人はもてなしを受けに砂漠に行ったんでしたな?』
「2人を探し出し、直ちに出ていくと約束します。」
『それはこの前の約束だ。こちらで 2人を探し出した後、しかるべく対処します。まだ殺されていないと仮定してのことですが?」
「総裁、我々…」
『別のシャトルを送ってきたら、躊躇することなく敵船と判断して攻撃します。』 通信は切れた。
リード:「地上との交信手段を失いました。軌道分散フィールドかと思われます。100キロ以下は、全く感知できません。」

夜が明けた砂漠を歩き続ける 2人。

暑さに参っているタッカー。「……砂漠に人間 2人。エンタープライズが見つけてくれる頃かな? …ここにいるぞー!」
アーチャー:「……もっと大声出さなきゃ…。」
「……本当にこっちの方角でいいんですか…?」
「キャンプの東だった。…東に向かってる。」
「…後どれくらい?」
「30キロ。」
「…30キロ!? ゾブラルの仲間がいたらどうするんです。」
「廃屋のようだった。」
「……砂ばかりで…建物なんか思い出せない。」
「サバイバル訓練を思い出せ。…目を凝らして、辺りをじっと見回すんだ。」
「ほかにも言ってたっけ。…日中は歩かずに休めって。…休みましょう。日没までジッと。」
「涼しくなるのは…7、8時間後だ。まずは小屋に避難だ。」
「20分だけ休ませてくれ…」
「トリップ。」
「…10分……。」
座り込むタッカー。「チェリー風味のアイスに…アイスに乾杯なんて初めてだな。」
口にする 2人。
タッカー:「聞こえたでしょ。」
アーチャー:「何が。」
「…船の音です。」
「……空耳だよ。」
「…いえ。ほら……あっちです。」 音が聞こえてきた。「…シャトルポッドかな。」
「いや。…もっとでかいものだ。」

上空を一直線に、巡洋艦が過ぎていった。
その下の砂の中から、2人が顔を出した。
砂まみれだ。
アーチャー:「大丈夫か。」
タッカー:「ええ…。」

案を話すリード。「大陸は分散フィールドで覆われていますが、この 3つの衛星を無力化すれば、砂漠の東側はスキャン可能です。」
トゥポル:「それではトロサン人を刺激します。なるべく、彼らの防御に引っかからない方法を探した方がいいでしょう。」
サトウ:「ヴァルカンはなぜ…数ある上陸可能地点の中で、モンタナのボーズマン※13を選んだんですか?」
「人類初のワープドライブ開発地点上陸は論理的だと判断しました。」
「でも他国を驚かす可能性もあった。…異星人がある特定の国と接触したら、ほかの国々を刺激する可能性も。」
「何が言いたいんです。」
「今回我々は、新たな問題に陥ってしまったのでは? 食事に招待されただけで、知らない間に一方に味方したと非難されています。」
「…新世界との接触は、常に予期せぬ危険をはらんでいます。…ヴァルカン最高司令部には、惑星上の争いに関して、明確な規則があります。アーチャー船長も、そろそろ独自の…規則を作るべきですね?」

砂漠を歩き続けるアーチャーたち。
タッカー:「ああ…」 倒れてしまった。
近づくアーチャー。「トリップ。立て、ほら! 歩くんだ。さあ。」
タッカー:「…勤務の交代は 6時間後ですよ…」
「おい、もうすぐだぞ。」
「…どこに…どこに行くんです。」
「…とってもいい所さ。日陰もあるぞ。」
「毛布もありますか?」
「…何?」
「凍えそうだ…。」 体勢を崩すタッカー。
「暑さにやられたな。さあ、ほら。ほら。飲んで。ゆっくり、ゆっくりだ。」 自分の飲料は飲み干してしまったタッカー。アーチャーは自分の袋を差し出す。「飲め! 飲むんだ。」
「結構です。人のを飲むわけにはいきません。」
「飲め、命令だ。」
「…歩かなきゃ。」
「飲まないというなら殴ってでも、無理矢理飲ませるぞ。」 口にさせるアーチャー。「ゆっくり。」
「…どうも。」
タッカーを抱えるアーチャー。再び歩き出す。

エンタープライズ。
リード:「地上から船が接近してきました。ゾブラルです。」
サトウ:「呼びかけです。」
ゾブラル:『今すぐ入り口を開けてくれ!』
トゥポル:「船長も一緒ですか? タッカー少佐は?」
『いや、独りだ。そちらで説明したい。』
「2人はどこです。」
『30秒以内にそちらのドッキングベイに入ることができなければ、敵に感知されて…私の船は攻撃される!』
「許可します。」

シャトルベイのゾブラル。「人数は?」
リード:「89人でした。89人のスリバン人で、数千ではありません。」
「ああ…軍隊をやっつけたと聞いた。」
「数十人の看守だけで、軍隊とは言えない規模です。正直言って、大した戦いではありません。」
トゥポル:「ジョナサン・アーチャーは優秀な宇宙船船長ですが、おっしゃるような無敵の戦士ではありません。」
ゾブラル:「うーん…では彼の伝説的砂漠作戦は。」
リード:「実際、この船では私が戦術士官です。ですが私は砂漠の戦闘を遂行した経験はありません。あなたは的はずれな相手に、助けを求めています。」
「うーん…では全て無駄骨か。」
トゥポル:「2人はどうなるんです?」
「我々より優れたセンサーをおもちのようだから、じき見つかる。」
「船のセンサーは妨害されています。…それにシャトルを上陸させれば、トロサン人に攻撃される。」
リード:「彼らに知られずにどうやってここへ?」
ゾブラル:「敵の軌道感知グリッドにわずかな途切れがある。46分ごとに発生するんだが開いているのは…ほんの 1分弱だ。」
「それに関するデータを頂きたい。」
笑うゾブラル。「データだけじゃ無理だ。操作が非常に難しい。習得に何年もかかる。」
リード:「私は飲み込みが早い。」
「大気圏にたどり着く前に、撃ち落とされるのが関の山だ。」
トゥポル:「あなたが操縦すればチャンスは広がる。」
「そんな時間はない! 仲間が私を待ってる!」
リード:「少しぐらい待たせてもいいでしょう! 船長たちを引き留めたのはあなたなんですよ?」
「2人のことは私の責任じゃあない!」 降りていこうとするゾブラル。
トゥポル:「それは違います。トロサン人は我々があなたの仲間だと。アーチャー船長とタッカー少佐が捕らえられれば、彼らはきっと 2人をあなたの仲間として扱う。…船長たちもあなた方と同じように迫害の犠牲者となってしまう。仲間と同様に 2人についてもあなたは責任を感じるべきです。」

砂漠を歩くアーチャーたち。
指さすアーチャー。
小屋が見えた。
タッカー:「ああ…。」

中に入った。
タッカーを降ろすアーチャー。「ゆっくり。」
タッカー:「…楽しい我が家だ……。」
アーチャーは近くの器に気づいた。中に水が入っているようだ。
タッカー:「ああ…私の分も残しといて下さい。」
臭うアーチャー。「とても飲めたもんじゃない。」 タッカーの隣に座り込んだ。
タッカー:「……そうですよ。休むのが一番です……。」


※13: Bozeman
映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」ではモンタナ州ということは触れられていましたが、詳しい地名が言及されたのは初めてだと思われます。TNG第118話 "Cause and Effect" 「恐怖の宇宙時間連続体」で登場したソユーズ級 U.S.S.ボーズマンは、同エピソードの脚本ブラノン・ブラガの生まれ故郷にちなんで命名されました (映画でもボーグ戦に参加)。ブラガは現在、リック・バーマンと共に ENT 製作総指揮です。また訳出されていませんが、ファースト・コンタクト時点では「アメリカ合衆国」だったことがわかります

タッカーは尋ねた。「何してるんです。どうやって…火を起こしたんです。」
アーチャー:「…フェイズ銃を使ったのさ。美味しいとは言えんが、ちゃんと沸騰させたから安全だ。」 袋に水を入れた。
「結構です…。喉は渇いてない。」
「…グダグダ言わずに飲め!」
タッカーは吐きだしてしまった。「…血のスープより不味い。」
アーチャー:「飲まなきゃダメだ。」
「…必要なのは……睡眠です。」
「…熱があるんだぞ。息も荒い。明らかに…熱射病だ。今眠ったら昏睡状態に陥るぞ。」
「昏睡…気持ちよさそうだ…。」
「エンタープライズに戻ったら、いくらでも眠らせてやる。だが今は、しっかり目を開けて…水分を取れ。注射があれば打ってやるんだが、今はそうもいかないからな? さあ、起きろ! 飲め。」 もう一度与えるアーチャー。「そうだ。よーし。」
咳き込むタッカー。
アーチャー:「よーし…。…起きろ!」
タッカー:「…ああ…何…。」
「ワープリアクターだ。…詳しく説明しろ。」
「…は?」
「8つの主な部品は?」
「…冗談はよして下さい…。」
「…答えろ。…命令だ。」
「……えーと…ドラムスティックに…もも肉。…手羽先。…何か食べ物はないんですか…」
「あ…我慢しろ。…だが船に戻ったら、シェフに…頼んでやる。豪華なディナーだ。何が食べたい。何でもいいぞ。」
「ヘビは嫌だ…」
「ああ…シェフもヘビ料理は得意じゃない。…何がいい。」
「……骨付き肉。」
「わかった、ほかには?」
「…マッシュポテト。…マッシュルームの、グレイビーソースつき。そうだ、あのメニューがいい。水曜の夕食…」
「よーくわかった。付け合わせ、何にする。…おい、野菜は?」
「ブロッコリー。」
「ああ。……デザートは。」
「…ペカンパイ。」
「ああ…。」

夜の惑星を降下するシャトル。
ゾブラル:「東の盆地の方へ飛んでくれ。」
トゥポル:「我々のセンサーで探せます。」
「いや、そこは磁気性の地層が堆積していて、生体反応が出ない。」
リード:「高度をもっと上げれば、もっと速度も上げられます。」
「だが、こっちが感知される危険がある。」

水を飲ませたアーチャー。「……ゲームをしよう。地名のしりとり。」
タッカー:「しりとり?」
「例えば、アマゾン・リバーは R で終わるから、次は『R』で始まる地名。例えばロードアイランド。」
「あ、ロ…ロードアイランドに行くんですか。」
「いいや、しりとりゲームだよ。それじゃあ、次は君の番だ。『D』で始まる地名。」
「ああ…『D』ね。ああ……ドレイラックス※14。」
「『X』? 『X』ねえ…」
「ありますよ…」
「いいんだ、言わないでくれえ? わかってるから。…ザナドゥー。」
笑うタッカー。「…現実の場所じゃなきゃダメです。」
アーチャー:「構わないさあ!」
「いけません。」
「ドレイラックスだって、私たちの世界じゃない。」
大きく咳き込むタッカー。
アーチャー:「トリップ、落ち着け。いいか落ち着け。落ち着くんだ…。」
突如、爆音が響いた。
タッカー:「…いいでしょう、船長がそう言うなら、ザナドゥーは認めます。」
外の様子をうかがうアーチャー。
遠くから光が近づいてくる。
アーチャー:「頭を伏せろ!」
タッカー:「何?」
「伏せろ!」
弾は到着し、音と光が走った。続けて何発も。
壁が崩れてくる。
アーチャー:「…外に出よう。さあ!」
抱きかかえられるタッカー。「ああ…!」

シャトルのリード。「地表付近で発砲を感知。90キロ、真南です。」
ゾブラル:「トロサンの追撃砲※15だ。」
トゥポル:「居住地を狙っているようです。」
「あの周辺にキャンプはない。」
「…コースをセットして攻撃準備。…2人のいる所を狙っているに違いありません。」

再び発射された武器は弓なりに飛び、小屋に命中した。燃え上がる。
既に外に出ていたアーチャーたちだが、爆風で倒れた。
アーチャー:「行こう! 急げ!」

報告するリード。「ロックしました。」
トゥポル:「発射。」
追撃砲を攻撃するポッド。
ゾブラルは笑っている。
トゥポル:「2人を発見。位置は、方位 1-1-5、マーク 3 です。」

2人のもとに、音が聞こえてきた。
タッカー:「独りで逃げて下さい。」
アーチャー:「いいや、君から指図を受けないぞ。」
周りが明るくなった。上空にフェイズ銃を向けるアーチャー。
それはシャトルポッドだった。

ドアを開け、中に迎え入れる。
ゾブラルがアーチャーに手を伸ばした。
タッカーに水を飲ませるトゥポル。
アーチャーはドアを閉め、リードに合図した。操縦するリード。
ゾブラルから受け取った水を、アーチャーも口にする。

エンタープライズ。
ゾブラル:「9分以内に発進可能になります。※16これでお別れだ。タッカー少佐の回復をお祈りしています。」
アーチャー:「…少佐を砂漠に誘い出すことは二度と無理でしょうね。でも…ご心配なく。…ゾブラル。私があなたが考えるような戦士だったとしても…我々の目的は戦いじゃない。」
「…うーん。船長。お元気で。」
うなずくアーチャー。

シャトルベイを出たトゥポル。「……船長の判断は間違っていません。異星人の戦争に荷担するか否かは、政府の判断に任せるべきで、船長の仕事じゃない。」
アーチャー:「わかってる。しかし、彼らの戦いに共感を覚えるとは皮肉なものだ。」

惑星を離れたエンタープライズ。※17


※14: Draylax
ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」などで言及

※15: または臼砲。「トロサン国境だ」と誤訳。border ではなく mortar です

※16: 前にゾブラルが言っていた、トロサン軌道感知グリッドに発生する 46分ごとの途切れのこと。「9分後にシャトルが到着します」と誤訳。自分の船で来ているのに…

※17: このエピソードには、現実の空母エンタープライズ船員 3人がエキストラ出演しているそうです。「セーラー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた Robert Pickering、Timothy Whittington、Sara Elizabeth Pizzo ですが、特にアップになるわけではないので判別不能でした (公式サイトの記事 [翻訳])

・感想
南カリフォルニアの砂漠でロケ撮影されたらしいのですが…。ロケに精一杯で他のことに頭が回らなかったのでしょうか? と思うほど小さな出来に仕上がっています。クライマックスらしいクライマックスがないのもひどいですね。
あ、フロックスも登場しませんでしたね。


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