ディープスペースナイン エピソードガイド
第16話「夢幻の刻」
If Wishes Were Horses
イントロダクション
クワークの店。 クワーク:「たまには手抜きしろよう。」 モーンが女性と話している。 オドー:「手抜き?」 「もう 3日も一隻の船も入らないで、店には閑古鳥が鳴いてるってのに怖い顔しちゃって。まるでベネリアム・タカ※1が獲物を探してるみたいだぜ? 少しはノンビリしなって。どうだい、ホロスイートでちょっと楽しんでいかねえか?」 「ありがたいがお前なんかにおごってもらいたくないね。」 「誰がおごってやるなんて言ったよ。ちゃーんと料金を払ってもらうぜ? ただ誘ってみただけだ。」 「遊んでる暇なんかないね。」 「ああ、ファンタジーはお嫌いか?」 「時間の無駄だよ。絶対手に入らないようなものを欲しがったり、行けないような場所を夢みたりするより、もっと現実の人生を見るべきだと思うね?」 「こんなのはどうだ? あんたと同じ種族の女を創ってやるからさ、二人でほら楽しく…仲良くやれば。」 酒の入ったグラスを振るクワーク。 「…どうしようもないな。」 笑うクワーク。「商売商売。」 女性が声をかける。「ハーイ。」 ジェイク:「やあ。」 どこかへ向かった。 オドー:「おいクワーク、まさかジェイクにホロスイートを使わせてるのか?」 クワーク:「大丈夫、心配ない…」 「何が心配ないんだ。」 「ジェイクが持ってた物見たろ。野球のグローブとバットだよ。毎日放課後になると、遊びに来てる。司令官が野球のプログラムを買ってやったのさ。あんた知ってるか? トリス・スピーカー※2とか、テッド・ウィリアムズ※3とか、バック・ボカイ※4とか。」 「いや、知らんね。」 「ああ。俺も昔は全然知らなかったんだが、あれは結構…人間に受けるんだよな? 商売人は金になりそうなことは…鼻でわかるんだ。嗅いでみな。」 「フン。」 「ま、そう言わずに。」 「私には嗅覚はないんだ。」 「商売人はな、鼻が良くなきゃ。金儲けのチャンスをつかめないんだよう!」 「金儲けねえ。」 「…家族向けの娯楽。これからはそれだよ。ヒット間違いなしだ。…子供向けには遊園地だの、ゲームだののプログラムを作る。そして入り口には、土産物店を出して…しこたま買わせるのさ。」 「それじゃ今のセクシー路線のプログラムは全部やめて、ファミリーものに切り替えるわけか。」 「いやあ、違うよ。もっと拡張するんだ。」 「ああ…」 「いま、隣のスペースをリースしてくれるように交渉してる最中なんだ。」 「やっぱりどうしようもない奴だ。」 出ていくオドー。 「利益第一。」 テーブルで話しているダックス。「それはいくら何でも大袈裟だわ?」 ベシア:「いや、いつも君のこと考えてるんだ。だからほかの…」 クワーク:「はいどうぞ、ラクタジーノ 2つね。」 「…ほかのことは目に入らないぐらいなんだ。」 ダックス:「…あら十分目に入ってるように見えたけど? スタディウス艦長※5の歓迎式典に、出席してたあの可愛い中尉※6さんは?」 「彼女なんか、君に比べたら何でもないよ。」 「それじゃ先週来てたベタゾイドの外交官※7はどうなの?」 「…あ、彼女も…君に比べたら、大したことないよ。」 「ジュリアン? あなたほんとにいいお友達よ。」 「ああ…あーあ。」 「あなたと一緒にいるととっても楽しいし。」 「やめてよ。…心臓にグサッときてるとこなんだから。」 立ち上がるダックス。「ソニックシャワーをハイ・ピッチにして浴びたら? きっと気分が良くなるわよ。」 ベシア:「…良くなるもんか。…やってみたことあるんだ。」 司令室に来るダックス。「遅れてごめんなさい、ジュリアンと食事してたの。」 シスコ:「付き合う気はあるのかい?」 「子供よ。何かあったんですか?」 キラ:「異常なエネルギー数値が観測されたのよ。」 「…プラズマフィールドでトロン※8の放出が増大。」 シスコ:「最近交通量が増えたせいで引き起こされた現象かもしれないと思ったんだが。」 「考えられるわ。船はデノリアス・ベルトは避けて通ります。ワープおよび通常エンジンからの影響がどのようなものかもわかっていません。…問題はそれが、トラブルの種になるかどうかですね?」 キラ:「それをあなたに聞きたかったの。」 ケイコ・オブライエン※9が見守る中、話しているオブライエン。「『明日女王が自分の名前を当てられるはずはない。そう思った男は、喜びのあまり女王の家来が見張っているとも知らずに名前を口走ってしまいました。』」 パッドを読みながら、ベッドに寝ているモリー※10のお腹をつついている。 モリー:「ルンペルスチルツキン。」 「『ルンペルスチルツキン』。そうだねえ? 『さて次の日? 男が城に来て言いました。「さーて女王様。わしの名前は何だ。」 そこで女王様は言いました。「ああ…あなたの名前はジャックかしら?」 「違う、はずれだー。」 「そ、それじゃあなたの名前はハリー?」 「違ーう」、彼は言いました。』」 笑うモリー。 オブライエン:「『そこで女王は? 「それじゃもしかしたらあなたの名前は…」』」 モリー:「ルンペルスチルツキン!」 「『「ルンペルスチルツキン!」 自分の名前を当てられてしまい、怒りに我を忘れた男は、国中に響き渡るほど強く足を踏みならしました。そして二つに割れて消えてしまいました。そして王様と女王と王女は、ずっと幸せに暮らしました。』 じゃあおやすみ、モリー。」 額にキスするオブライエン。「よーく寝るんだよ?」 「全然眠くなーい。」 ケイコ:「あらあらあら、駄々こねないの。」 同じくキスをした。「おやすみなさい、モリー?」 ライトが消される。二人は出ていった。 オブライエン:「君にも、寝る前にお話を読んであげようか?」 ケイコ:「うーん、恋愛小説でも読んで?」 「うーん、喜んで。」 ドアが開き、モリーが出てきた。「ママー!」 ケイコ:「…どうしたの、モリー?」 「部屋に来たんだよ。」 「誰が?」 「ルンペルスチルツキン。」 オブライエン:「…いいかい、モリー。あれはただのお話さ。ルンペルスチルツキンは本当にはいない。いい子だ、パパが一緒に行くからもう寝るんだよ? 子供を盗む悪い妖精の話なんか、読まなきゃよかったな。」 寝室に入るオブライエン。目を開いた。 ベッドの上に、小柄な男が座っていた。「そんなに驚かんでくれ。お役に立とうと思ってやってきたんじゃ。ご用はないかな?」 |
※1: Baneriam hawk 吹き替えでは「ベネリアム」は訳出されていません ※2: Tris Speaker 1907〜1928年に活躍。吹き替えでは「ベーブ・ルース」 ※3: Ted Williams 1939〜1960年にボストン・レッドソックスで活躍した外野手。三冠王に 2度なり、1966年に野球殿堂入り。吹き替えでは「ミッキー・マントル」 ※4: Buck Bokai DS9第14話 "The Storyteller" 「混迷の惑星“ベイジョー”」より ※5: Captain Stadius ※6: 吹き替えでは「少尉」 ※7: 吹き替えでは「大使」。当然 DS9第17話 "The Forsaken" 「機械じかけの命」のラクサナ・トロイ大使のことではありません ※8: thoron ※9: Keiko O'Brien (ロザリンド・チャオ Rosalind Chao) DS9第4話 "A Man Alone" 「宇宙ステーション殺人事件」以来の登場。声:吉田美保 ※10: Molly (ハナ・ハタエ Hana Hatae) DS9 "A Man Alone" 以来の登場。声:棚田恵美子 |
本編
オブライエンはモリーを抱いて寝室を出た。「モリーを頼む。」 ケイコ:「どうしたの?」 男も出てきた。 ケイコ:「マイルズあの人。」 オブライエン:「いいから、行きなさい。」 男:「奥さんと娘さんがいないんなら、こんなところにいても面白くないわい。」 「…オブライエンより保安部※11。」 保安士官:『はい。』 「侵入者発見、ただちに私の部屋へ保安チームを。」 『すぐに向かわせます。』 部屋の物を漁る男。「麦わらはどこじゃ。わしゃ麦わらから金をつむぐんじゃぞ?」 オブライエン:「あんた誰だ。」 「知っとるんじゃないのか。わしの話を読んでやっていたろ。」 「確かに見かけはそっくりだが、まさかほんとに…」 「ああ言わんで欲しいね。名前を呼ばれるのは嫌いなんじゃ。」 「…ルンペルスチルツキン※12!」 ルンペルスチルツキン:「あ…。そう言えば二つに割れて消えるとでも思ったか。フー、そうはいかんよ。あの時にもう懲りたからのう。二度とあんな取引はしないわい。」 保安部員たちが入り、フェイザーを向けた。 ルンペルスチルツキン:「ああ、おまわりさんたちじゃの。よいか? そちらが丁重に出るのなら礼儀は尽くす。だがわしに手をかければ後悔するぞ? それになあ、わしはすばしっこいぞ?」 指示するオブライエン。つかまえようとする保安部員だが、ルンペルスチルツキンは消え去った。 後ろに現れる。「あんたの望みが黄金でないのなら何が欲しい。願いを言うがいい、わしの値段も言おう。」 オブライエン:「オブライエンより司令官。」 自室のシスコ。「こちらシスコ。」 オブライエン:『至急こちらへ来ていただけませんか。』 「わかった、すぐ行く。」 ジェイクが帰ってきた。「パパ、話があるんだ。」 シスコ:「悪いが今は時間がない…」 咳払いが聞こえた。野球チームのユニフォームを着た男が立っている。「お父さんですか?」 ジェイク:「ホ、ホロスイートから僕についてきたんだ。」 ベッドで、制服のまま寝ているベシア。パッドを落とす。 その身体に手をはわせる者がいる。眠ったまま微笑むベシア。 手は顔や頭をさすってくる。 目を開いたベシア。「あ、ジャッジア!」 ダックス:「こんばんは、ジュリアン…」 顔を近づける。 「ここで何をしてるんだい。」 「あなたを見てたの…」 「ああ…」 「早く起きないかなって…」 「もう起きたよ…。あ、ああ…」 「どうかしたの?」 「いやあ僕も、いま君に同じこと聞こうと思って。きっと、ほら…」 キスしてくるダックス。 ベシア:「いま流行ってる、ラロジアン・ウィルス※13にやられたんじゃないかな。」 トリコーダーを使う。「気分はどうだい?」 ダックス:「最高よ。」 口づけをやめようとしない。 「ああ、ああ…。…熱はないみたいだね…ああじゃきっと僕がおかしいんだ。どうしたんだろう。ああ、ああそうだ昼に食べたレプリケーターの、アンティパスト※14に食あたりしたんだ。ああ、それともああ…幻覚を見てるのか?」 「何で抵抗しようとするの?」 「何で抵抗しようとするって? そうだ、何で抵抗すんだ?」 鼻をすりあわせられるベシア。「ああ…そうだよね、そんな必要ないんだよね。俺ってバカだよな。」 身体を倒す。 キラの通信が入る。『司令室スタッフは全員ただちに司令室へ集合。』 ベシア:「わかったよ。そういうことか。だろうと思ったよ。」 ブーツを履く。「黒幕はオブライエンかい?」 ダックス:「それは、一体どういう意味?」 「これで『司令室へ』行くと、みんなが僕を迎えてドッと笑うって寸法だろ違うかい?」 「…あなたをからかったりしないわ?」 「どうだかね。」 司令室へ来たベシアとダックス。いつも通りなので驚くベシア。 シスコ:「ああ、待ってたんだ。実はおかしな状況が発生してね。ジャッジア・ダックス大尉に、ドクター・ジュリアン・ベシアだ。こちらはミスター・バック・ボカイ※15。200年前に亡くなっているはずの、ロンドン・キングス※16の野球選手だ。」 ボカイ:「そんな顔しないで。僕もわからないんですよ。」 「それから、中世のドイツ民話に出てくるルンペルスチルツキン。」 ルンペルスチルツキン:「…何てこった、みんなわしの名前を知っとるわ。」 オブライエンを小突く。 「本の中から、現実に飛び出してきたんだ。」 ベシア:「はじめまして。ああ…よろしく。」 「これは、プラズマフィールドで増大しているトロンの放出のせいか。」 ダックス:「…トロンって、何のこと?」 またターボリフトで来たのは、ダックスだった。「その質問なら私にしてちょうだい。」 顔を見合わせる二人のダックス。先に来ていた方は、ベシアの後ろに隠れる。 |
※11: 吹き替えでは「司令室」 ※12: ルンペルシュティルツヒェン、ルンペルシュティルツキン Rumpelstilskin (マイケル・ジョン・アンダーソン Michael John Anderson スタートレックのファン) ルンペルスチルツキンの話は、グリム童話にもなっています (参考)。当初は小妖精 (レプレコン、leprechaun) になる予定でした。声:永井一郎 ※13: Larosian virus ※14: antipasto は前菜という意味 ※15: Buck Bokai (ケオン・ヤング Keone Young ENT第36話 "Vanishing Point" 「転送空間の恐怖」のホシの父親 (Hoshi's Father) 役) 原語ではここだけ「ハーモン・ボカイ (Harmon Bokai)」と本名を言っています。着ているキングスの背番号は 49。ボカイの設定は元々シスコの部屋のデスクに飾られている野球カードが元となっており、その際はモデル製作者であり野球ファンの Greg Jein の写真が使用されました。名前 (映画「バカルー・バンザイの 8次元ギャラクシー」のファンであるため) や裏書きの経歴設定も Jein によります。その後 (Jein に偶然に似ている) ヤングが実際にボカイを演じることになり、カードの写真もヤングのものに変更されました (ただし裏面は Jein のまま)。このカードの図案は、旧版のエンサイクロペディアに掲載されており、ハーモン・バック・ジン・ボカイ (Harmon Buck Gin Bokai) という名前、生年月日が 1998年10月31日であること、2023〜24年に西武ライオンズに在籍していたことなどが書かれています。声:大川透、DS9 ガラックなど ※16: London Kings TNG第12話 "The Big Goodbye" 「宇宙空間の名探偵」より。注釈※18 参照 |
司令室。 ボカイ:「ノックの練習をしたんですよ。最近ジェイクは動きが良くなってきてねえ。ベースランニングもやろうと思ってたんですけど、ジェイクも私も腹が減ってきたもんですから。」 ベシアに調べられる。 キラ:「ホログラムなのにお腹が空くの?」 「…ホログラム。」 ベシア:「ホログラムなんかじゃない。3人とも全員、生きてる人間ですよ。」 偽ダックスに付きまとわれる。 「一体どういうことなんですか。」 シスコ:「……あなたは、本当のボカイ選手じゃないんです。」 「ボカイじゃないなら誰なんですか。」 「あなたはジェイクの野球の相手に私が創り出したホログラム、つまり映像なんです。」 「でも自分の出た…試合は全部覚えてる。開幕試合もねえ。42年のワールドシリーズのホームラン。エディ・ニューソン※17のグラブの下を抜けたゴロ。ディマジオの連続記録を破った日のこと※18。」 偽ダックスの手をどけるベシア。 シスコ:「それは私がそうインプットしたからだ。全データを、プログラムに入れたからね。」 ルンペルスチルツキン:「何のことだか全然わからんぞ。」 オブライエン:「でも御老人は本から出てきたんですよ?」 シスコ:「いやホロスイートや本からと言うより、想像から出てきたんだろうな。」 ルンペルスチルツキン:「想像から出てきた?」 偽ダックス:「それじゃあ私はあなたの想像から出てきたのね、ジュリアン。」 キスする。 ベシア:「いやあ、そうと決まったわけじゃ。」 微笑む本物のダックス。 ベシア:「やっぱり、そうかもね。それにしても、何でこんなことが起こるんですか。」 ダックス:「亜空間断裂の影響か、それとも何らかの次元変動があったか。…プラズマフィールドをスキャンした時には偏差が小さすぎてセンサーが見逃したのかもしれないわ?」 偽ダックス:「ジュリアン、お部屋に戻りましょう…」 ベシア:「よしてくれ。こんなことをしてる暇はないんだ。」 突然、偽ダックスは消えた。 通信が入る。『オドーより司令官。』 シスコ:「こちらシスコ。」 『おっしゃりたいことはありませんか。』 「おい、遠回しな言い方をするな。どうしたんだ。」 プロムナードに、雪が降っている。 オドー:「環境制御システムが壊れたんですか、プロムナードは吹雪ですよ?」 シスコ:『吹雪だと?』 「ええもう床に 5、6センチは積もってますよ。」 『よし、保安チームを総動員しろ。警戒警報を出す。』 オドー:『一体どうしたんです。』 シスコ:「想像力が豊かってのも考えもんだな。原因を突き止めたら、すぐに連絡するよ。通信終了。」 キラ:「警戒警報が、想像力に効くでしょうか。」 「ほかに方法があるか?」 ダックス:「待って、手がかりをつかめたみたいよ? …プラズマフィールドのウェーブパターンを見てみて?」 オブライエン:「ウェーブは全てある一点に集中しています。」 「中心に近づくほど素粒子密度は高くなっていくのに、中心に到達すると全てが消えてしまうの。」 図が表示される。 「その通りです、中心からは素粒子が読み取れません。」 キラ:「それはどういうこと?」 「中心の穴に落ち込むと、全て消えてしまう。」 ベシア:「君の予想通り亜空間断裂が起こってるらしいね。」 シスコ:「分析を続けてくれ。チーフ、クラス4 の探査船※19を。」 オブライエン:「了解。」 コンソールの上に寝そべっているルンペルスチルツキン。「わしにも手伝えることはあるかのう?」 ボタンに触れようとした、ルンペルスチルツキンの手を叩くオブライエン。 また通信。『オドーより司令室。』 司令官室に入ったシスコ。「どうした。」 オドー:『雪は消えたんですが、今度はその…グンジー・コクマルガラス※20が放し飼いになってるんです。』 ダチョウのような大きな鳥がいる。 シスコ:『市民に混乱のないようにしてくれ。いま調査中だ。』 オドー:「わかりました。」 何とか連れて行こうとする。「さあおいで、あっちだ。さあさあ。」 盛り上がるダボ・テーブル。 店に入るオドー。ダボの客は次々と金を注ぎ込んでいる。 オドー:「皆さんお静かに、大事な話があります!」 ウェイターのカップで音を鳴らす。歩いているモーン。「皆さん静粛に! これから私の話を聞いてもらいたい※21、是非お静かに願います。皆さんお気づきの通り異常が発生しております。原因は想像力だと思われますので、どうぞ想像を働かせるのをやめて下さい。」 あきれる客たち。 クワーク:「自分に想像力がないからって人の楽しみまで、奪わないでもらいたいもんだぜ?」 肌も露わな女性たちと共に、2階から降りてくる。「きっとあれだろ、惑星連邦の実験が失敗してよう、変な風に転んじまってありがたいことにステーションの全体がホロスイートに、なったってわけだ。」 オドー:「現在の状況については今司令室で調査中だ。」 「ああ。だけどよ、調査はゆっくりでいいぜえ? 俺はこれからこちらの 2人のレディに…タルタラスの景色※22を見せるつもりなんだ。」 笑う女性。 「驚いたよ、お前が腑抜けになるとはなあ?」 「ああ! お前みたいな男にはわからないんだよ。俺は何たってほら……芸術が好きだからさ。」 ダボ・ガールの声。「ダボー!」 また大喜びする客。 オドー:「信じられん、今日は負ける客が一人もいないじゃないか。」 クワーク:「何。」 「このままじゃ店は倒産だぞ?」 「…おい、そりゃどういうこった。」 女性から離れるクワーク。「おい通してくれ。」 積まれたラチナムを見る。 客に言って回るクワーク。「負けろ。負けろ。負けてくれ。負けてくれ。」 また勝たれた。「まさか、そんな!」 オドー:「多勢に無勢だな、クワーク。ちょっと失礼、通して下さい。」 出ていく。 耳を触る女性を追い払うクワーク。 科学ラボ。 コンソールを扱うベシア。 ダックス:「…思った通りだわ? ワームホールが近くにあるから断裂が増幅されているのよ。」 ベシア:「陽子の数値はうなぎ上りだよ。」 「…ダックスよりオブライエン、もう探査体の準備はできた?」 オブライエン:『一時間で亜空間スキャナーをプログラムしますよ。』 「連絡待ってるわ、お願いね。」 ベシア:「ウェーブの強度分析が出たよ。」 「コンピューター、このウェーブのパターンに合うものを全データファイルから検索して?」 コンピューター:『検索します。』 ベシア:「ああ…ジャッジア。言い訳するわけじゃないけど、でも僕は君に対して絶対…」 ダックス:「ジュリアン? 謝ることなんかないのよ? …人間は誰でもいろいろと想像する生き物だもの。普通はそれを他人には見せずに済むのよね。あなたの想像は、あなたのプライバシーよ。」 「そう言ってくれると助かるよ。」 「気持ちはわかるわ、私も男だったもの。昔ね?」 「…それじゃ水に流してくれるね。」 「もちろんよ。」 「よかった。コンピューターは、検索に手間取ってるねえ。」 「それにしても彼女ベタベタだったわねえ?」 「ああ…」 「私にああなって欲しいと思ってるの? 媚びて欲しい。」 偽ダックスがやってきた。「私は媚びてなんかいないわ? そうでしょ?」 ベシア:「ああ、そうだね…あ、ああ媚びてるのとは違うよ。」 「あなたみたいに不感症じゃないだけよ?」 立ち上がるダックス。「…不感症ですって?」 間に入るベシア。「いやあその僕は、そんなこと思ってないよ。」 偽ダックス:「…そうやってお高くとまってるから、ジュリアンのよさがわからないのよ。」 すり寄ってくる。 仕方なく笑うベシア。「なかなかユーモアがあるだろ、こういうとこは君に似てるよねえ。」 ダックス:「私にはそうは思えないわ。」 偽ダックス:「気取るのはやめて自分の欲望を素直に認めたらどうなのよ。」 「欲望ねえ…」 「だからあなたは不感症だって言うの。」 コンピューター:『適合パターンがありました。』 ベシア:「ああよかった、助かった。」 コンソールの図を見るダックス。「似たような亜空間断裂※23がハノリ星系※24で 23世紀中頃に観測されてるわ。」 ベシア:「ハノリ星系か、聞いたことがないけど。」 「知らないのが当たり前よ。だって断裂が大きくなって消滅した星系だもの。」 |
※17: Eddie Newson 吹き替えでは名の「エディ」は訳出されていません ※18: この設定は TNG "The Big Goodbye" より。「2026年にロンドン・キングスのショートに破られた」ことは触れられましたが、名前はつけられていませんでした。このジョー・ディマジオ (吹き替えでは「ディアミンゴ」) の連続試合安打記録は 1941年の 56試合で、イチローでさえ 23試合です ※19: 4級探査機 class-4 probe ※20: Gunji jackdaw 実際にはエミュー ※21: 原語では「紳士淑女、それから両性具有の種族の皆さん」 ※22: Tartaran landscapes ※23: subspace rupture ※24: Hanoli system |
DS9 から、探査機が打ち出された。亜空間断裂へ向かう。 『ステーション日誌、宇宙暦 46853.2。亜空間断裂の調査のため探査機発進。ディープ・スペース・ナインの市民の半分が、自分の想像が現実になるという体験をしている。』 キラ:『探査機の計器類、全て異常なし。』 オブライエン:「センサーを亜空間に対応させます。調整に、3分かかります。」 コンピューターを見るダックス。「いつウェーブパターンが変化してもおかしくないわ。ほら。」 オブライエン:「探査機がトロンフィールドに進入。調整完了まで 2分半。」 突然前にルンペルスチルツキンが現れた。「いやあ昔が懐かしいじゃろう。」 オブライエン:「あっちへ行ってろ。」 「手伝いたいんじゃ。」 今度は前に出たルンペルスチルツキンに言うオブライエン。「それなら邪魔するな!」 ルンペルスチルツキン:「…昔わしを邪険にした農夫がおってな。でもわしは奴の畑を、イナゴから助けてやった。」 「調整完了まで 2分。トロンの放出は安定してます。」 「しかしお前さんもよくわからんお人じゃのう。なぜそう避けるんじゃ。」 また目の前に移動するルンペルスチルツキン。「わしが怖いか。」 「とんだ言いがかりだ! 童話の人物なんぞ、ちっとも怖くない。調整完了まで 90秒。」 「童話の人物じゃと?」 「俺の想像から出てきただけだろ。」 「じゃがお前さんの想像力がわしを本の中から引っ張り出したんじゃ。そう思うとどことなく恐ろしく感じるんじゃないのか。」 「…司令官、そろそろデータが入ってきます。」 シスコ:『ああ、入り始めた。待っててくれ。』 ルンペルスチルツキン:「あのお嬢ちゃんは、お前さんには初めての子じゃろ。」 怒りに立ち上がるオブライエン。ルンペルスチルツキンの姿はない。 オブライエン:「…調整完了まで 30秒。」 ダックス:「トロン放出パターンが乱れたわ。探査機の船体温度が急低下。」 オブライエン:『あと 10秒。』 「探査機が偏差の中に突入したわ。おかしいわねえ。」 シスコ:「どうしたんだ。」 「センサーには何の数値も出ないわ? …もしかしたら、宇宙空間が折りたたまれているのかも。」 「探査機の、オプティカルスキャナーが作動するのを待とう。」 映像が出た。 ベシア:「全ての物質が、中心に向かって吸い込まれていく。」 ダックス:「…偏差はどんどん大きくなってるわ。」 プロムナードを歩くシスコの前に、ボカイがいた。「ゴロを捕る練習やりません?」 シスコ:「何度も言ってるけど、ここは 24世紀の宇宙ステーションなんだ。野球場があるのはホログラムの中だけで、実物はないし君は本物じゃない。」 ボールをシスコに渡すボカイ。「でも納得できないなあ。だって手をつねれば痛いし、こうしてあなたと話してるのに。」 シスコ:「確かに今はね。でも一分後はわからんよ。この異常現象が収まれば君は…」 「消えちゃうんですか?」 「そう願いたいね。」 「ほう、消えて欲しいんですか。でも今はここにいるんだしね。とりあえず何すりゃいいんです。スイッチヒッターをこなせる強力な三塁手に御用はありませんか?」 「君が打てるのは左だけなんだろ。」 「左だけ? ちょっと、ベンジャミン! ちょっと待った。聞き捨てならないなあ。僕はメジャー入りして最初の 3年間、左右 20本ずつホームランを打ってるんだ。」 「でもその後は 10本も打ってないぞ。」 「そりゃ監督が打順を 2番にしたからですよ。」 「もっと君と話したいのは山々だが。」 後ろでイリディア人が話している。 「全く。あの最後の試合※25のこと覚えてるでしょう。あれで僕の選手生命は終わったんだ。…あれさえなけりゃ後 5年はプレーできたはずなのになあ。」 「だけど君は最高だよ。過去の名選手の中じゃピカイチだ、フフン。それじゃ、仕事があるから。」 到着したターボリフトに乗るシスコ。 「ベンジャミン。会えて嬉しかった。どうもありがとう。ワールドシリーズに勝った時、客が 300人しかいなくてね?」 「301人だよ、私のプログラムじゃ。」 「応援は聞こえたよ。嬉しかったなあ。…それだけは、言っておきたかったんだ。消えてからじゃ言えませんからね。」 うなずき、ボールを返すシスコ。「司令室へ。」 レプリマットにルンペルスチルツキンが現れた。「しかし一体どうなっとるんじゃろうな。」 続いてボカイ。 そして偽ダックス。「なぜ私を創っておきながら拒むのかしら。」 ルンペルスチルツキン:「わしを呼び出しておきながらなぜ怖がるのかのう。早く蹴りをつけたいもんじゃ。」 ボカイ:「待って下さい、シスコはちょっと違いますよ。感じるんですよね、愛情があるんですよ。自分が生まれる、200年も前に死んだ野球選手だというのに。」 「後どれくらいこんなことをせにゃならんのじゃ。」 「そりゃ、蹴りがつくまでですよ。試合は、終わってみるまでわかりません。」 「…ああ…!」 |
※25: 吹き替えでは「没収試合」 |
『ステーション日誌、補足。亜空間の偏差は膨張しつつあるが、それを阻止する方法はまだ見つからない。しかし、予備措置としてステーションへの船の受け入れを一時中止した。』 司令官室。 オブライエン:「ハノリ星系の時はヴァルカンの調査団が断裂の座標でパルスウェーブ魚雷※26を爆発させました。」 ダックス:「そして、その 5分後に断裂が急激に膨張してるんです。」 「その後調査団は、ハノリ星系全体と共に消滅。」 キラ:「肝心の断裂はどうなったの? 今はないんでしょ?」 ダックス:「膨張点に達して内側に破裂してしまったんです。そしてこの宇宙からは消えてしまいました。」 シスコ:「そのヴァルカンの調査団では、今ここで起こってるような想像が本当になる現象はなかったのか。」 オブライエン:「ありません。偏差の近くに 12時間しかいなかったせいかも。」 ベシア:「それにヴァルカン人は、想像力には欠けますからね。」 シスコ:「断裂ができたそもそもの理由についての報告はなかったのか。」 ダックス:「ええ、結局わからなかったんです。でもワームホールもなく、宇宙船の交通量も多くなかったことだけは記録に残っています。」 オブライエン:「しかし、どこかに共通点はあるはずです。それがわかれば阻止する方法もわかるでしょうが…正直に私の意見を申し上げますと、やはりパルスウェーブ魚雷が一番有効かと思います。」 キラ:「ちょっと待ってよ。その時はそれで失敗したんじゃないの、なぜ…」 「今の魚雷は当時のとは違います。この 200年でフラックス密度の、コントロール方法は飛躍的に向上しているんです。今回は、内部の反応を抑えることは可能だと思います。」 「でも失敗したらベイジョー星系は消えてしまうのよ?」 シスコ:「少佐、断裂は膨張を始めている。放っておけばどっちにしろ、ベイジョー星系は消えてしまうよ。」 ダックス:「断裂が小さいうちの方がチャンスはあるわ?」 「…魚雷が準備できるまでに、どれぐらいかかる。」 オブライエン:「22時までには準備できるでしょう。」 「万が一の場合に備えて、一応備えだけはしておこう。シールドに、補助パワーを確保しておけ。少佐、君は目標塔のメンバーを退避させてくれ。オドーと協力して。では解散。」 司令室に戻ったキラ。「キラよりオドーへ。」 オドー:『はい、ご用ですか。』 「目標塔から全員を退避させるの。保安クルーを動員してちょうだい。」 プロムナードを走り回る、グンジー・コクマルガラスたち。 オドー:「すいません、鳥を捕まえたらすぐに行きます。おい通してくれ、どいてくれないか。邪魔しないで、みんなどいてくれ!」 ターボリフトを降りたキラ。ふと廊下を見ると、炎が迫ってきた。 驚き、ターボリフトに押し戻されるキラ。「キラより司令室。第1目標塔が消失、緊急事態発生!」 叫び声が聞こえる。炎に包まれた者が走ってきた。 そのままキラへ向かってくる。身体を丸めるキラ。 だが、その人物は消えた。 シスコ:『シスコよりキラ。報告せよ。キラ、聞こえるか。』 顔を上げるキラ。炎の跡も全く見られない。 シスコ:『キラ少佐、報告せよ。』 キラ:「……すみません司令官。…誤報でした。通信終了。」 トリコーダーを使うキラ。ため息をつく。「第1目標塔の人員に緊急連絡。全員外部リングエアロック※27に集合。退避の準備をせよ。」 ベイジョー人と共に、2羽のコクマルガラスを追い立てるオドー。「皆さんどいて下さい、どいてどいて! 出てこないで、見せ物じゃない!」 店を出て追いかけるクワーク。「オドー!」 オドー:「さあどいてどいて…」 「オドー! オドー! オドー! オドー、オドー。ああよかった、実は女の子が 2人消えちまったんだ、探してくれよ。」 「いま忙しいんだよ。」 指示するオドー。「手荒にするな!」 「俺の耳に甘い言葉をささやいていたと思ったらいきなり消えちまってさあ。」 「いいからそういう下らないことはだな…」 前を見ると、グンジー・コクマルガラスも消えていた。オドーの方を見るベイジョー人たち。 それと入れ替わるように、女性たちが歩いてきた。 クワーク:「2人とも、どこに行ってたんだ探したんだぞう? …黙って消えるなんてひどいじゃねえか。…それで、オドーは結局何を想像で作り出したんだ?」 オドー:「私が?」 「当ててやるよ、何も出してないんだろ。」※28 「いい加減にしてくれ、全く冗談じゃないぞ。預言者の生まれ変わりだの、中世の小人たちだの、グンジー・コクマルガラスだの、吹雪だの、売春婦だの。」 「ダー! これだから困るよ。想像力のない男ってのは楽しくないよなあ? さあおいで、3人で想像力をフルに働かせて遊ぼうじゃないの…。」 笑うクワーク。 首を振り、ため息をつくオドー。 オドーは保安室に戻った。「なーにが想像力だ、ハッハ。コンピューター、第1目標塔をレベル1 で検索※29してくれ。」 コンピューター:『了解、検索完了まで 3分ほどお待ち下さい。』 廊下の様子をモニターするオドー。 すると、クワークが映った。音声をつなぐオドー。 クワーク:『おーいこっから出せー! 早く俺をここから出しやがれ。ネーガスに亜空間通信をつなげ、俺が直接話す。今すぐやれ!』 フォースフィールドに触れてしまう。『こんなところで後一分でも我慢できるもんかい。』 オドー:「どうやってそこへ入ったんだ。」 『どうやってここへ入ったって? お前が入れたんだろうがよ。』 「うーん、フン。確かに私が入れたらしいな?」 笑うオドー。 『そうだろう?』 そのクワークは消えた。 「ハハ、私にも想像力はあったわけだ。ハ、フン。」 パッドを操作するジェイク。 だがグローブをはめた。歓声が聞こえてくる。 ボカイ:「行くぞ、ジェイク。」 ボールを受け取るジェイク。 ボカイ:「待ってたのに来ないから。」 ジェイク:「まだ宿題が終わらないんだよ。」 「でも野球の方が楽しいぞ?」 「そういうわけにはいかないよ、宿題もしないでホロスイートに行ったらお父さんに殺されちゃう。」 「殺される。」 「そうさ。」 「…本当に殺されるのかい?」 「八つ裂きにされちゃうよ。」 「そうとわかってても、野球しに行きたいんだろ?」 「…でも我慢しなきゃ。」 「でも本当は野球をやりたくてウズウズしてるんだろ。」 ジェイクの後ろにシスコが突然現れた。「宿題は?」 ジェイク:「あ、あ…やり方がよくわかんなくてさ。…コンピューターがそのドジって、指示のページを消去しちゃったんだ。」 「そんな言い訳が通用すると思うのか。」 「…通用しないよね。」 消えるシスコ。 ジェイク:「…宿題やっちゃおうっと。」 ボカイと共に、野球場の歓声も消えた。ため息をつくジェイク。 司令室。 ダックス:「こっちに来て、ベンジャミン!」 司令官室を出るシスコ。「どうしたんだダックス。」 ダックス:「この一時間だけで断裂が 27%も膨張してるわ? 膨張率もどんどん上がってきてる。」 「ステーションを移動させれば、時間稼ぎになるか。」 首を振るダックス。「もし断裂が内破すれば、ステーションもろとも飲み込まれてしまうわね。」 シスコ:「魚雷はまだ準備できないか。」 オブライエン:「いま、パルスウェーブ発信装置を魚雷に組み込んでいます。あと、6、7分です。」 ダックス:「断裂がこれだけ大きければ、肉眼で見えるわ。」 シスコ:「よーし、スクリーンオン。…拡大しろ。」 大きくなった亜空間断裂が映る。 スクリーンを見つめるボカイ。シスコを見る。 オブライエンを見るルンペルスチルツキン。 ベシアのそばで微笑む偽ダックスだが、笑みは消えた。 |
※26: pulse wave torpedo ※27: 吹き替えでは「外部」は訳出されていません ※28: 吹き替えではクワークの「それで、オドーは…」から、次のように訳されています。クワーク「さすがだね、オドー。今度は一体どんな魔法を使ったんだい?」 オドー「私が?」「あんたがやったことなんだろう?」。また、次の「中世の小人」は原語では「ずっと前に死んだ恋人」 ※29: レベル1 人員走査 level-1 personnel sweep |
断裂を見つめるシスコ。 キラが戻ってきた。「目標塔からの退避が完了しました。全員居住区に避難しています。」 偽ダックス:「心配そうね?」 ベシア:「当たり前だ。これが上手くいかなければ、僕たちも君たちも全てが消えてしまう。」 「…私を抱いて。お願い。」 抱き合うベシア。 オブライエン:「魚雷準備完了。」 シスコ:「シールドの状態は。」 ダックス:「回せるパワーは全てシールドへ。現在のシールド強度は通常の 158%です。」 「耐えられればいいが。非常警報。発射!」 操作するオブライエン。 魚雷が亜空間断裂の中心部へ撃ち込まれる。 オブライエン:「計器類は正常に作動中。魚雷は予定弾道に乗りました。」 ダックス:「断裂個所まで 30秒。」 「インパルス保持機※30停止しました。攻撃パルスウェーブ始動。」 「魚雷外殻温度急低下。」 「パルスウェーブ発射準備。加圧レベル 1,400 でなお上昇中。」 「あと 20秒です。」 「加圧レベル 2,900。3,000。」 「攻撃目標を最終確認。」 「加圧 3,500。加圧を停止。」 「あと 10秒です。」 シスコ:「爆発準備。」 オブライエン:「了解!」 ダックス:「あと 5秒です。」 シスコ:「今だ!」 爆発する魚雷。一面が明るく輝き、再び断裂だけが見える。 オブライエン:「断裂からのウェーブ密度低下。トロンフィールドの面積は縮小。素粒子エネルギー上昇。…一体どうしたんだ。」 ダックス:「ウェーブの放出が乱れているわ。爆発がずれたようです。」 シスコ:「チーフ!」 オブライエン:「ちくしょう、発熱反応パターンが出ています。これがパルスウェーブを相殺したのかも。スタンバイ!」 キラ:「ペリメーターセンサーに亜空間振動が出ています。」 揺れ出すステーション。「一体どういうことなの。」 ダックス:「陽子の数値が 3倍に。」 オブライエン:「魚雷に残っているパルスウェーブは既に 14%に低下。断裂内部のフラックス密度は針を振り切りました。」 突然、断裂が明るく輝いた。 大きな震動が襲う。 落ちたラチナムを拾おうとするクワーク。そばに女性がいる。 テーブル類が倒れてくる。 火花が飛ぶ保安室。 オドー:「オドーより司令室! …司令室! 司令室!」 立ち上がるキラ。「通信機能はダウン。別回線でつないでみます。生命維持システムは正常。」 シスコ:「シールドはどうだ。」 オブライエン:「第4地区のジェネレーターが 1機ダウン。」 オドー:『オドーより司令室。』 キラ:「よーし、直ったわ。」 シスコ:「オドー、負傷者の数を確認しろ。ただちに第4地区から、全員を退避させるんだ。」 オドー:『わかりました。』 「断裂は今どうなってる。」 ダックス:「センサーが動かないんです。」 オブライエン:「少々お待ち下さい。」 偽ダックスは、頭から血を流している。「…手の感覚がないわ。」 ベシア:「静かに、じっとして。キャビネットから、緊急医療キットを取ってくれないか。」 うなずくボカイ。 偽ダックス:「ごめんなさい。」 ベシア:「シー…。」 ボカイ:「はい、どうぞ…」 偽ダックス:「あなたの足手まといになって。」 ベシア:「何を言うんだ。そんなことはないよ。」 治療する。 「もう目を開けていられないわ。」 「寝たら駄目だよ、さあがんばって目を開けて。ひどい脳震盪を起こしてるんだ。」 「…もう駄目。」 「ダックス、ダックス!」 オブライエン:「センサーが動きました。」 キラ:「断裂の膨張は続いています。前より 340倍も大きくなっています。」 シスコ:「内部崩壊する気配はあるか。」 ダックス:「断裂からのウェーブ放出は乱れたままです。どういうことか訳がわからないわ。陽子の数値は下がってきたのに。…でもまた上昇し始めました。」 オブライエン:「魚雷からのパルスは完全に中和されてしまいました。…断裂が膨張を再開するのは時間の問題です。」 シスコ:「後どれぐらいだ。」 「数分です。」 「何か提案は。」 ダックスは首を振った。 ため息をつくオブライエン。 ルンペルスチルツキン:「にっちもさっちもいかなくなったか。わしに考えがあるぞ。助けてやろうか。」 オブライエン:「お前が?」 「忘れたか、わしには人間にない力が備わっておる。その力でお前さん方を助けてやってもいい。無論礼はもらう。」 そこへ、モリーを抱いたケイコが現れた。 ルンペルスチルツキン:「お嬢ちゃんをもらいたいな?」 ケイコ:「マイルズ。」 キラ:「またペリメーターセンサーに亜空間振動が出ているわ。」 揺れ始める。 オブライエン:「お前にあの断裂をふさげるっていうのか?」 ルンペルスチルツキン:「わしは麦わらから金をつむぐ妖精じゃ。…それぐらいわけもないわ。」 ルンペルスチルツキンの胸ぐらをつかむオブライエン。「それならさっさとやれよ!」 ルンペルスチルツキン:「お嬢ちゃんをくれるのか?」 「…冗談じゃない。おとぎ話から出てきたお前なんかに誰が。」 「だがお嬢ちゃんをくれれば、みんなの命が助かるんじゃ。」 話を聞いていたシスコ。「よせ。そんな必要はない。ダックス。我々が断裂に初めて気がついたのはいつだった。」 ダックス:「その時はあなたも司令室にいたはずよ、ベンジャミン。」 「私の記憶が正しければ、君はそれまで偏差があることには全く気づいていなかったようだな。」 「ええ、偏差が小さすぎてスキャナーに引っかからなかったんだと思ったの。」 「そして君は、亜空間断裂だろうと想像した。そうしたらその通り、断裂が現れた。」 「確かにそう想像したわ。」 「そして君はハノリ星系での事件をもちだした。それを聞いて我々はみんなそうだと思い込んでしまったんだ。オブライエン、シールドを下げろ。」 オブライエン:「下げる?」 「元々断裂なんかどこにもなかったんだ。このステーションにも危険はない。…非常警報を止め、シールドを下げろ。」 「…わかりました。」 「疑うな、オブライエン。大丈夫だと、心から信じるんだ。」 「わかりました!」 「まだセンサーには衝撃波が読み取れるか、少佐。」 キラ:「はい、かなりの数値で衝撃波が…」 「衝撃波は全て想像なんだ。」 すると、収まった。 キラ:「揺れがやんだわ。」 消えるボカイとルンペルスチルツキン。 シスコ:「ダックス大尉、陽子の数値は。」 ダックス:「ノーマルです。」 断裂は一瞬にして消え去った。 キラ:「消えたわ!」 偽ダックスの額に手を載せるベシア。「大丈夫、良くなるよ。」 偽ダックス:「もちろん良くなるわ。あなたは銀河系一のドクターだもの。」 消える偽ダックス。表情を暗くするベシア。 キラ:「どういうことだか訳がわからないわ。…大体あの 3人はなぜ現れたわけ?」 ダックス:「それはやはり、プラズマフィールドでのトロンの増大と関係があるのよ。数値はまだ通常に戻ってないわ。」 シスコ:「分析を続けてくれ、ダックス。だが今度は推測はするなよ。事実、だけだ。」 「ええ、ベンジャミン。」 「少佐、あと 26時間※31は警戒態勢を取ろう。全てが正常に戻るまではな。チーフ、うちに送っていきなさい。これは命令だ。」 オブライエン:「わかりました。」 ケイコたちと出ていく。 司令官室に入るシスコ。ソファーに座り、ため息をつく。 ボカイが現れた。「人間の想像力ってのは、いやはや我々も手こずったよベンジャミン。」 シスコ:「君たちはただの想像の、産物じゃなかったんだな。」 「我々の任務は銀河系を探索することだ。こないだ君たちの船を見つけて後をつけてきたのさ。※32面白かったよ、習性を観察させてもらえて。」 「最初からこうして話してくれればいいのに。」 「いきなり正面からいっても歓迎されないことだってあるからね。」 「それもそうだな。」 「だからこういう方法をとる。相互理解のためにね?」 「だからって、ステーション中を危険にさらすのは感心しないな。」 「ああ、あれは我々じゃない。君の仕業だ。…君の想像が創り出した危険だよ。我々は見物していただけだ。…それにしても大した想像力だなあ、こんなにすごいのは初めてだよ。しかも人によってものすごく、幅がある。最初は想像力は嫌なものなのかって思ったよ。だってオドーは時間の無駄だって、そう言ってたしな。」 「そうは、思わないがね。」 「ああ、そうだろうね。君はそういう人だ。会ったこともない野球選手にあれだけ愛情をもてるんだから。君の想像力は実にユニークなものだと思うよ。自覚してるかどうかは知らないけどね。」 「…そうかもしれんな。」 「それじゃ、失礼。」 「おい、君の種族のことも教えてくれよ。」 「ああ喜んで。今度野球でもやろう。」 ボールを投げ渡すボカイ。後ろを向き、消えていった。 シスコは、司令官室を出た。 |
※30: impulse sustainer 吹き替えでは「通常パルス」 ※31: 吹き替えでは、また「24時間」 ※32: 原語では「あそこの宇宙の穴を通る船をつけてきた」と言っていることから、ガンマ宇宙域から来たことがわかります |
感想
いわゆる超生命体エピソードの一つ。想像が現実になるというのは、TOS "Shore Leave" 「おかしなおかしな遊園惑星」、TNG "Where No One Has Gone Before" 「宇宙の果てから来た男」などでもありました。人間の観察というのも王道ですね。おとぎ話のキャラクター、過去 (といっても現代からすると未来) の野球選手、性格の異なったレギュラーという 3人の組み合わせが面白いです。 ちょっと不思議な原題は、"If wishes were horses, beggars might ride." 「願っただけで馬が手に入るなら、乞食が馬に乗る」、つまり「望むだけなら何でもできる」ということわざより。グンジー・コクマルガラスのエミュー、人が出たり消えたりする特撮、さらに風邪を引いていたモリー役と、撮影には苦労した点が多かったそうです。 |
第15話 "Progress" 「第五の月“ジェラドー”」 | 第17話 "The Forsaken" 「機械じかけの命」 |