ランナバウト。
※16オブライエン:「コンピューター。…オブライエンの個人日誌を開け。最後の部分を再生。」
『でも、これだけは言える。目の前にいるこの女は、私のケイコではなかった。』
「…その通りだ。ケイコじゃない。…日誌を再開。…その夜はよく眠れなかった。」
オブライエン:『…私はケイコが寝るのを待って調査を再開した。しかし調べると言っても、何を調べればいいのか。私は必死に何か異常はないか、いろいろ仮説を立てて探した。』
コンソールの前に座っているオブライエン。
コンピューター:『スキャン終了。未知の微生物は探知されませんでした。』
オブライエン:「生物体に対して影響力をもつ、化学物質の痕跡は?」
『そのような化学物質の痕跡は全く探知されません。』
「じゃあ未知の化学物質は。」
『探知されません。』
「内部 EMセンサーグリッドにアクセスせよ。」
『完了。』
「低周波通信の痕跡をスキャンしてみてくれ。」
『スキャン終了。低周波通信の痕跡はありません。』
「ニューロウェーブ・パターンに異常は?」
『ありません。』
「テレパス活動の痕跡はないか?」
『ありません。』
「…コンピューター。宇宙暦 47550 から 47571 までに、ステーションに到着した船を全てディスプレイせよ。」 一覧※17を見るオブライエン。「ガンマ宇宙域からは。」
『お尋ねの期間にはガンマ宇宙域からの船は一隻も来ていません。』
「ああ…。」 レプリケーターの前に行くオブライエン。「コーヒー、ジャマイカン・ブレンドの濃くて甘いやつを。…少し飲みすぎだぞ、オブライエン。でも仕方ありませんよ。」 コンソールの前に戻る。「…よし、コンピューター。ステーション日誌を日付順に再生してくれ。宇宙暦 47550 以降のものから頼む。」
『どの士官の記録したものか特定して下さい。』
「…司令部全員のだ。」
『音声、それとも文書で。』
「音声で。」
シスコ:『ステーション日誌、宇宙暦 47552.9。ガプタ提督※18が、直々にカーデシアの状況を視察に訪れた。非武装化された地域のいくつかで…』
ソファーで聞き続けるオブライエン。
ダックス:『現在までに存在が報告されていない生命体を発見。分類上は、原生動物門に属する…』
シスコ:『行方不明になったのは、ベイジョー7 の 3番目の月の付近らしい。捜索のため、2機の…』
キラ:『政府のお偉方なんて結局何もわかってないのよ。到着する船を全て検査しろだなんて…』
デカーティス:『17時の時点では、何の問題もなく正常に機能しているようだ。ええ…私の見るところでは…』
シスコ:『今のところ、カーデシアは協定を破るつもりはないようだ。』
コンピューター:『アクセスが拒否されました。』
飛び起きるオブライエン。「拒否? …どこへのアクセスがだ。」
コンピューター:『宇宙暦 47569.4 以降の日誌へのアクセスは限定されています。』
「俺が戻った日だ。アクセスの限定範囲は?」
『レベル1 のセキュリティクリアランスの保有者にです。』
「俺はレベル1 だぞ?」
『セキュリティ・コードナンバーの入力を。』
打ち込むオブライエン。
コンピューター:『アクセスは拒否されました。』
オブライエンは司令室にターボリフトでやってきた。
コンピューターを操作する。
周りをうかがいながら、コンピューター区画に独りで入った。中を開け、作業に取りかかる。
デカーティスが近づく。「手伝いましょうか、チーフ?」
オブライエン:「いや、これで上部目標塔は午前中には動くと思うんだ。」
「そうですか、さすがですね。」 デカーティスは離れた。
オブライエン:『コンピューターのサブルーチンには、いくつも罠が仕掛けてあった。もし私がファイルに侵入したらすぐわかるようにだ。だが、そんな罠をかいくぐることぐらい、私には何でもなかった。』
廊下で人が去ったのを確認し、オブライエンは自室に戻った。
オブライエン:『隠された日誌を読んでも疑問は解けなかったが、恐れていたことが起きてしまっていた。…彼らはパラダ人のセキュリティに関する私の報告書を読み、徹底した分析を行い、その上私の個人日誌にまで侵入していた。妻へのラブレターを読んで楽しんだだろうか。パラダ星系からの極秘通信にはシスコが何度かエントリーしていた。しかし、通信の内容を示唆するデータはなかった。私がセキュリティを乗り越えて侵入してくるのを見越してのことだろう。侮れない敵だ。』
コンソールの操作を続けるオブライエン。
エアロックから人々が降りてくる。
オドー:「チーフ。」
待っていたオブライエン。「問題が起きてね。話があるんだ。」
オドー:「うーん、帰ってきた途端にか。」
廊下で話すオブライエン。「ジェイクを除いて、ほかのみんなは…別人らしい。…誰を信用していいのか途方に暮れてるんだ。」
オドー:「彼らはあなたをマークしてます?」
「多分ね。質問をして回ったり、コンピューターをいじったりもしたからねえ。きっと目をつけられてるだろう。…艦隊に連絡しようにも何て言うんだ? 妻の様子がおかしいとか、司令官が自分に相談しないで仕事をするとか。」
「そうしたら艦隊の方から、司令官に問い合わせが入るでしょうね。」
「そうなったらまずいだろ。」
「パラダ人が着くのは?」
「38時間後※19だ。」
「ははあ…この問題が解決するまでは来られちゃ困りますね。」
「同感だ。」
「…じゃ仕事に戻って下さい。敵の注意を引かないようにしないと。私も調べてみます。もしチーフのうたぐってるとおりだったら、宇宙艦隊とベイジョー当局に同時に通報しましょう。」
「…頼りは君だけだ。」
「必ず真相を暴きます。」
家に帰るオブライエン。
オブライエン:『私はホッと一安心した。ついに味方ができたのだ。後は、待つしかなかった。…だが私はこの待つというのができない性分なのだ。そこで次に起こるだろうことに備えて準備を始めた。打つ手は、まだいくつかあった。』
ケースから取り出した装置を扱うオブライエン。
にぎわうクワークの店。
2階に独りで座っているオブライエン。
クワーク:「まあ、あんたに勝ち目はないね。」
オブライエン:「勝ち目? 一体何のことだ。」
「おお! 言わなくてもわかるでしょ。顔色が悪いね、ちゃんと寝てます?」
クワークの胸ぐらをつかむオブライエン。「一体何が言いたいんだ、クワーク!」
クワーク:「ラケットボールですよ! 来週ドクターと再試合でしょ、まだ勝負はついてないんスよ? 全く、短気で困るよなあ?」 前に座る。
「話題を変えよう。」
「いいっスよ? 話題を変えましょう? そうだなあ、パラダ人はどうなってます? 確か明日来るんですよね。」
「パラダ人の何が知りたいんだ。」
「新しいお客をつかもうと思ったら、前もって情報を集めとかないとね。※20」
「ああ、金儲けの秘訣第何条だ?」
笑うクワーク。「ああ、かなり後の方だねえ。194条かな。」
オブライエン:「そうか。パラダ人のことが知りたいなら、よそで聞け。」
通信が入る。『オドーよりオブライエン。』
オブライエン:「どうした。」
オドー:『至急私のオフィスへ。』
「よーし、すぐ行く。」 向かうオブライエン。
クワーク:「ヘ!」
入ってきたオブライエンに話すオドー。「チーフの言うとおりです。」
オブライエン:「何か、わかったか。」
「座って? パラダ人の、過激派のこと知ってます?」
「あ…政治情勢については詳しくないけど、12年間政府軍と対立してるって聞いたよ? それが?」
「今回の事件の背後にいるのは誰だと思います?」
「オドー。司令官の日誌にはパラダ星系から極秘通信が入った記録があった。あれは過激派からの通信か?」
「実のところそうなんです。」
「じゃあパラダ政府と交わしたセキュリティ協定に、違反してるじゃないか。それなら和平交渉は中止にするべきだ。」
「それは、大人げないと思いますがね。」
「何が大人げないんだ。安全が保障できない以上……。君も一味か。」
「何を言うんですか、私はただ…」
「いや、君も奴らの一味なんだ。」
シスコたちが保安室にやってきた。
フェイザーを持ったシスコ。「話し合う必要がありそうだな。」
オブライエン:「何者なんだ!」
キラ:「危害を加える気はないわ?」
ベシア:「さあ、少し落ち着いて下さい…」 ハイポスプレーを近づける。
オブライエンは、袖に隠し持っていた装置を使った。
爆発的に光が発生する。悲鳴を上げるキラ。
キラの銃を奪ったオブライエンは外に出て、保安部員たちを撃った。
近くのドアに入る。
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※16: この部分は最終脚本では、オブライエンが "The Minstrel Boy" (TNG第86話 "The Wounded" 「不実なる平和」) を歌うシーンがありました。メコンに対して通信で歌ったりもするのですが、リオグランデとメコンを取り違えるミスがあり、カットされました
※17: 20隻ほどが、宇宙暦、船名、以前にいた場所 (?)、艦長のリストとして表示されます。U.S.S. Galice (ガリス)、U.S.S. Hispaniola (ヒスパニオラ)、U.S.S. Oregon (オレゴン)、U.S.G.S. Powell (パウエル)、W.E.B. DuBois (W・E・B・デュボイス) などが載っているようです (画像)
※18: Admiral Gupta 「ガプタ将軍」と誤訳
※19: 「38時」と誤訳。DS9 は 26時間で 1日です (冒頭で 52時間とあるのは、DS9 時間で 2日間)
※20: No.194 "It's always good business to know about your customers before they walk in your door."
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