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ディープスペースナイン エピソードガイド
第91話「つくられた記憶」
Hard Time

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・イントロダクション
天井からのみ光の射す、閉じ込められた部屋。一人の老人が地面に模様を描いている。服はぼろぼろだ。突然、全受刑者の汚染除去を行うという放送が入った。部屋にエネルギーフィールドが現れ、通過していく。地面に描いた模様は消え、老人は苦痛の声を上げた。それが収まるとまた、円を描き始める。ふいに部屋の入り口に光が走った。身構える老人。扉が開き、女性※1と護衛が入ってくる。マイルズ・オブライエンだな、アグラッサ※2司法当局はお前の件を再審議したという女性。申し立てたいことはあるかと聞く。首を振るオブライエン。女性は刑期は終了した、お前は自由だと言った。スパイ行為に対しては15サイクル以上の刑が科せられるが、お前は20サイクルを超えた、出る時が来たという。でも今更そんな、どこへ行けばいいというオブライエン。自分で考えろといい、護衛に外に出すように言う女性。オブライエンは護衛の持っていた棒のエネルギーを食らい、叫び声を上げる。そして外に投げ出された。
オブライエンはベッドの上で叫んでいた。頭に付けられていた器具が外される。そこにはキラと、先ほどの女性がいた。終わりましたという女性。オブライエンはベッドから起き上がり、キラを見て少佐と呼びかける。そうよというキラ。そんな馬鹿な、20年も経ってるのに年をとってないというオブライエン。女性は実はまだ数時間しか経っていないことを話す。どういうことかわからないオブライエン。キラが横に座り、説明する。急に言われて信じられないだろうが、服役はしていないという。オブライエンが体験したのは作られた現実で、脳に働きかけるプログラムによって作り出されたイメージだったのだ。受刑者の人格に合わせて服役したという記憶を与えるという女性。実際に収容するより効率的だし、効果があるという。つまり体験したこと、記憶していることは全部イメージで、現実じゃないというキラ。いや僕には現実だ、全て現実ですとオブライエンはいった。

※1: K'Par Rinn (マーゴット・ローズ Margot Rose TNG第125話 "The Inner Light" 「超時空惑星カターン」のエリーン (Eline) 役) K'Par は肩書きで、名前共にセリフ中には登場しません

※2: Argratha


・本編
ケイコ※3に事情を話すシスコ。オブライエンはアグラッサの技術に興味を抱き、質問したところスパイ容疑で逮捕されてしまったらしい。そんなつもりはなかったと思うと弁護するケイコ。だがアグラッサから報告がきた時は、刑の執行は終わっていたというシスコ。植え付けられた記憶を取り除けないか聞くケイコ。不可能といっているが、ベシアに期待しようというシスコ。ケイコはオブライエンにいつ会えるか尋ねる。シスコはベシアから許可が出ればすぐにと言った。
ワームホールからシャトルが出てくる。よく夢を見ました、シャトルに乗ってワームホールを抜けてステーションに帰るというオブライエン。目を覚ますと消えてしまうような気がするというと、キラは投獄されたのが夢でこっちが現実という。窓から見えるDS9をみて、何てきれいなんだというオブライエン。シャトルは着艦する。
エアロックでベシアが出迎える。ほんとに君かいというオブライエン。キラは後はお願いねといって歩いていった。二度と会えないと思ったというオブライエンに、僕も心配していたというベシア。ケイコはと聞くオブライエンに、ベシアは少し待ってもらっているという。まず状態を検査したかったから、ステーションのみんなもよろしくと言っていた、来たがっていたが遠慮してもらったという。疲れているだろうし、しばらくはのんびりした方がいいというベシア。医師として命令だという。ベシアは20年も牢獄で暮らすなんて、想像もできないという。辛かったよというオブライエン。その間誰も話し相手はいなかったのかと聞く。オブライエンはそうだと言った。
牢獄に放り込まれるオブライエン。一人の男が近づき、オブライエンの口に水を入れてくれる。目を開けるオブライエン。睡眠時間に入るという放送が入る。従わないものは生活習慣矯正プログラムにかけられるという。これを食べて、気分が良くなる、チーラッシュ※4フルーツだという男。ありがとうというオブライエンに、お礼を言うのはこっちだ、もう6サイクルも独りだったからという。6年もかいというオブライエン。正気でいられたのが不思議なくらいさ、でも何とかやっていけるもんさ、当ててみようかといい反乱罪と聞く男。首を振りスパイ罪だと答えるオブライエン。長いことになりそうだなといい、男はイーチャー※5と名乗った。オブライエンもマイルズ・オブライエンだと名前を教える。よろしくマイルズ、地獄へようこそというイーチャー。
オブライエンは、ずっと独りだったとベシアにいった。

※3: ケイコ・オブライエン Keiko O'Brien DS9第89話 "Accession" 「選ばれし者の苦悩」以来の登場

※4: chee'lash

※5: Ee'Char (クレイグ・ワッソン Craig Wasson)


正直できることはあまりないと、ケイコに話すベシア。アグラッサ人※6は記憶インプラントを埋め込んだ上、非常にリアルな時間を凝縮した服役体験のシミュレーションを行っていた。オブライエンにとってはこの20年は現実であり、架空であっても恐怖や苦痛、憎しみを抱いたのは事実だった。服役した記憶を消すには、オブライエンの全ての記憶を消さなくてはならないが、そんなことはできない。よくわかったというケイコ。だけどオブライエンは今までに何度も辛い目に会ってきたと話すベシア。セトリック3※7の戦いや、パラダ人に捕らえられて捕虜になったり※8、カーデシアで裁判にかけられたこともある※9。それでも生き延びてきた、きっと立ち直るというベシア。ただ時間が必要なだけだと言った。
医療室のベッドに座っているオブライエン。レプリケーターに近寄り、チーラッシュフルーツを一切れ出してくれという。しかしレプリケーターのパターンになく、特徴を聞いてくるコンピューター。オブライエンはどう説明していいかわからない。命令を取り消す。ベシアが声をかける。その隣はイーチャーがいた。いや、もう一度見るとそれはケイコだった。オブライエンに抱き付く。顔を見つめるオブライエンにどうかしたのと聞くケイコ。妊娠してるのかと聞く。そうよと答えるケイコ。オブライエンは20年前、そういえばという。ケイコはオブライエンを抱きしめ、大丈夫よ、きっと何もかもうまくいくわと言った。
オブライエンは自分のおかずをきれいに半分に分けている。ごちそうさま、お絵描きしてもいいと尋ねるモリー※10。いいわよ、お皿をレプリケーターに下げてねというケイコ。モリーはいわれた通りにお皿を入れて、スイッチを押した。オブライエンに一緒にお絵描きしたいと聞く。食べ終わったらなというオブライエン。いきなり家族ができるの変な気持ちでしょうというケイコ。いやただ、ずっと独りだったからとオブライエンは言う。テルノーリ※11先生のカウンセリングはきっと効果がある、ベシアがしばらく通うことになるといっていたというケイコ。週に3回通うんだ、楽しみだよと答え、オブライエンはナフキンの上に食事を置き始めた。何しているのと聞くケイコ。オブライエンは手を止め、刑務所にいた間の習慣なんだと答える。死のうが生きようが看守は知ったことじゃないという感じで、時には食事が何日も何週間も出なかったという。だから食事が出た時は少しだけ食べ、残りを取っておくというオブライエン。ひどいというケイコに、慣れれば平気さというオブライエン。
イーチャーは食事を布に包んでいる。それを近くの穴に入れ、石でふたをした。食事の配給はしばらくないという放送が流れる。食事を隠し持っている受刑者は罰せられるという。これでよしといい、笑うイーチャー。オブライエンは無精ひげが伸び、疲れ切っている。こんなところに6年も独りでよくやってきたなというオブライエン。何とかなるもんだ、運動したり、自分に話しかけたりというイーチャー。地面にイッシーカ※12を描いたりもするという。幾何学的な図形で、これを描いていると体の疲れも取れるし、少しは気も晴れるとイーチャーは説明する。オブライエンは試してみることにする。難しいぞというイーチャーに、練習する時間はたっぷりあるというオブライエン。地面に座り、大きな円を描く。言われた通りにするオブライエン。その円をじっと見つめ、心を落ち着かせ自分の全存在が円の中にいると想像するというイーチャー。円を自分の一部にする、何も考えずに手を伸ばして円の中に何か描いてみるという。描き始めるオブライエン。そこから何か形になるまで、自由に描いていく。ふと笑い出すイーチャー。何を笑うんだというオブライエンに、死体を見つけたタカ※13みたいな顔だからさといい真似をするイーチャー。一緒に笑うオブライエン。しかしよく笑えるなという。6年もこんなところに閉じ込められて、笑いでもしなきゃどうにかなってしまうとイーチャーは言う。笑う方がいいだろうという。再び放送が入り、全受刑者は睡眠時間だという。起きて活動している受刑者は罰せられる、照明は20秒後に暗くなると続く。横になる2人。イーチャーは夜中に笑いたくなったら笑ってくれ、私は起きないからという。睡眠時間になり、部屋が暗くなった。
ケイコは横に寝ていたはずのオブライエンがいないことに気づく。オブライエンはベッドの下で寝ていた。優しく毛布をかけるケイコ。

※6: アルグラシー Argrathi 地名が Argratha で、種族が Argrathi

※7: Setrik III TNG第86話 "The Wounded" 「不実なる平和」より

※8: DS9第34話 "Whispers" 「オブライエンの孤立」のパラダ人 (Paradas) による事件。「セトリック3の戦いでパラダン人 (これも間違い) に捕らえられ…」と誤訳されています

※9: DS9第45話 "Tribunal" 「疑惑の法廷」より

※10: モリー・オブライエン Molly O'Brien DS9第89話 "Accession" 「選ばれし者の苦悩」以来の登場

※11: Telnorri

※12: eseekas

※13: 正確にはリータ・タカ (reeta-hawk)


ウォーフとオブライエンがダーツをしている。オブライエンの番だが、詳しいルールを忘れてしまっていた。もちろんウォーフも知らない。やり直そうというウォーフだが、オブライエンは無理して付き合ってくれなくてもいい、そんなにやりたい気分じゃないしという。ホロスイートで川下りをしようかというウォーフに、ありがとう、でもというオブライエン。その時プロムナードの人々の中に、イーチャーがいることに気づいた。こちらを見ている。ウォーフにちょっと待っててといい、後を追うオブライエン。どうかしたのかというウォーフ。オブライエンは知った顔が見えたような気がしてといい、歩いていった。
オブライエンが使っていた道具が並んでいる。インターフェーズコイルスパナ※14、ODNリカプラー※15と言っていくオブライエン。大正解というジェイク※16。次の道具の名前が出てこないのでジェイクが言おうとするが、言わないでくれ、大丈夫だと止めるオブライエン。しばらく考えた後、量子フラックスレギュレーター、マーク3という。ジェイクはその通りという。片づけようとすると、もう1回復習しようというオブライエン。大丈夫だよ、全部わかったじゃないというジェイク。オブライエンは部下の前で恥をかきたくないという。一つくらい間違えたって誰も何とも思わない、少し錆付いててもチーフなんだからというジェイク。ならチーフとして命令する、もう1回復習させてくれというオブライエン。
オブライエンは仕事を行っている。終わったぞというと、ムニズ※17が早いですねという。磁気導波管を調節し直した、ユニット交換はもったいないというオブライエン。完璧だ、修理はこれで終わりだからみんなをランチに行かせてもいいですかと聞くムニズ。いいとも、あと2個所ほど見てからいくというオブライエン。ムニズは頼りにしてます、チーフがいないと士気が上がりませんという。せいぜいがんばるよというオブライエン。だがため息をついた。ベシアがここにいたのかといい、階段を降りてきた。テルノーリがいうには10日もカウンセリングに来ないとかという。週に3回受診する約束だというベシア。オブライエンはカウンセリングで毎回テルノーリにいわれることといえば、刑務所の生活はどうだったか、暴行を受けたか、トイレがなくて不便に感じなかったか、そればかりだという。問題があるのはあいつの方だという。そんなに気に入らないなら、カウンセラーを変えればいいというベシア。もううんざりだ、アグラッサのことは忘れて早く元に戻りたいんだというオブライエン。戻れるのかというベシアに、オブライエンは戻れるさ、当たり前じゃないかと怒鳴った。カウンセリングは必要ない、しばらくのんびりしろ何て余計なお節介だという。話し相手が欲しいだろうと思ってというベシア。この20年間恋しくなかったものがあるとすれば、それはお前の知ったかぶりの態度だよというオブライエン。わかったらお節介はやめてくれ、怪我をしたくないなら二度と俺には近づくなという。階段を上っていった。
ターボリフトに乗り、プロムナードへいくように命じるオブライエン。
イーチャーはイッシーカを描きながら、ケイコのことを話してくれという。目がすごくきれいなんだろうという。もう何百回も話したじゃないか、話し尽くしたというオブライエン。イーチャーはでも聞きたい、私にも妻がいれば話してやれたんだけどなという。それにいらいらしだした時、ケイコのことを話すと君は落ち着くみたいだからという。そうか、そのお絵描きが気に触っていらいらするんだというオブライエン。イッシーカを蹴飛ばす。どうしたんだ落ち着けというイーチャー。オブライエンはお前の指図は聞きたくない、マイルズって言うのもよせという。もういやだ、閉じ込められているのもお前のお絵描きもうんざりだという。お前の顔も見たくないというオブライエン。冷静になるんだというイーチャーに、冷静になんかなりたくないと叫ぶオブライエン。何でこんな目に遭うんだ、いい加減にしてくれという。壁の外でも騒ぎ声がしている。出してくれ、何も悪いことはしてないぞというオブライエン。マイルズと呼びかけるイーチャー。だがそれを無視し、早く出してくれと扉を叩くオブライエン。第4エリアの受刑者に告ぐという放送が入る。直ちに騒ぐのを止めなさい、やめなければ厳罰を与えるという。イーチャーはオブライエンの口をふさぎ、静かにしろと叫んだ。
クワークの店にやってくるオブライエン。クワークはブラックホールをストレートで一つですね、と客相手に忙しい。シンセールを注文するオブライエン。ちょっとお待ちをというクワーク。オブライエンは俺のシンセールをという。クワークは次々と酒を注いでいる。クワークと呼びかけるオブライエン。クワークが今忙しいんですからというと、オブライエンはクワークの手をひねりあげた。さっさと俺にシンセールを持ってこい、でなきゃお前の体の骨を一本残らずへし折ってやるという。大変な目に遭ったのは知っているがというクワークだが、オブライエンはさらに強く手を締める。クワークはシンセール一つ、すぐにご用意しますと言い慌てて注いだ。オブライエンの様子を見て、カウンターの客は静かになった。
シンセールを持ち、席に座るオブライエン。マイルズと呼ぶ声がする。いつのまにかイーチャーが前に座っていた。ここで何をしてると聞く。いつだって君のそばにいるというイーチャー。オブライエンはお前なんか想像の産物なんだという。確かにその通りだ、だが君にとっては私は実体だろというイーチャー。行ってくれというオブライエンに、それはできない、君は私を必要としていると話す。必要なわけないだろうというオブライエン。いや必要としている、以前よりもっとねというイーチャー。オブライエンは何も答えず、シンセールを飲む。オドーとクワークが、一人でいるオブライエンを見ていた。

※14: interphasic coil spanner

※15: ODN recoupler

※16: ジェイク・シスコ Jake Sisko DS9第84話 "Paradise Lost" 「地球戒厳令(後)」以来の登場

※17: Enrique Muniz (F.J. Rio) DS9第80話 "Starship Down" 「ディファイアントの危機」以来の登場。オブライエンの部下であるエンジニア


オブライエンの部屋。鏡を見ると隣にイーチャーがいた。何しているんだいと聞く。仕事へ行くんだと答えるオブライエン。無理をするな、友人として君が心配なんだというイーチャー。大丈夫、家族もいるし仕事もあるというオブライエン。こんなに満ち足りた気持ちを味わえるのは、20年ぶりだという。本当にそうかなというイーチャー。シスコからオブライエンに通信が入り、オフィスに来てくれという。すぐ行きますと応えるオブライエン。なぜ付きまとうのか知らないが、もう関係ないとイーチャーに言うオブライエン。
パッドを読むシスコ。入ってきたオブライエンに座るように言う。昨日ベシアと大喧嘩をしたらしいなという。何でもありませんというオブライエンに対し、ベシアはそう言ってなかったというシスコ。オブライエンはちょっとした食い違いです、僕たちはいつもああなんですという。オドーが言うにはクワークとも一悶着起こしたそうだなというシスコ。あの野郎とつぶやくオブライエン。確かにいらいらして迷惑をかけたかもしれないが、これからは気を付けますというオブライエン。カウンセリングにも行ってないそうだなというシスコに、忙しいものですからと答えるオブライエン。定期的に受ける約束になっていたはずだというシスコ。オブライエンはわかりました、早速明日行きますという。だがシスコは今日、これからすぐに行ってくれという。仕事がありますというオブライエン。シスコは仕事なら待たせておけ、直ちに任務を解くと告げた。テルノーリのオフィスに行き、いいと判断するまで毎日受けるようにと言った。大袈裟なことをする必要はないと思いますというオブライエン。アグラッサでの体験が君を蝕んでいる、望んでも一晩でその傷が癒えるはずがないというシスコ。オブライエンはチーフでなく個人としてお願いしますといい、もう一度だけチャンスをという。与えたいとは思うが、司令官でも医療士官の下した最終判断には逆らえないというシスコ。任務には不適格だ、君にはすぐに療養休暇に入ってもらうという。しかしもし定期的にカウンセリングに行かなかったり、担当カウンセラーの協力を拒んだりしたら、治療室へ拘束するよう命令を出すと言った。わかりましたというオブライエン。シスコは以上だと言った。
司令官室から出てきたオブライエンに、ダックスが話し掛ける。後からレプリマットに行くんだけど、もし良かったらというダックス。だがオブライエンは後にしてくださいといい、ターボリフトに乗った。コミュニケーターを投げ捨てるオブライエン。
医療室にオブライエンが飛び込んでくる。一体何をしゃべったんだと怒るオブライエン。話を聞いたのかというベシア。任務から外されたというオブライエンに、それが君のためだというベシア。どうして俺のためだとわかるんだ、刑務所で何があったかも知りもしないでというオブライエン。ベシアはそれはそうだ、僕には知りようもないという。だが君が苦しんでいるのはわかる、救いたいんだという。誰が救ってくれって言ったというオブライエン。言われなくてもわかる、僕は医師だし、君の友人だというベシア。言う通りにするんだという声。ベシアの後ろにイーチャーがいる。ドクターも私と同じように心配している、私に対して犯した過ちを二度と犯すなという。わからないのか、お前なんか友達じゃないというオブライエン。もう違うんだ、お前の知っていたオブライエンはアグラッサで死んだんだという。いや生きてるさ、ただ少し助けが必要なだけだというベシア。オブライエンは近づくな、手助けも友情もまっぴらだという。そして部屋を出て行った。
一体どこへ行くんだというイーチャー。俺に構うなといっただろうというオブライエン。こんなことをしてちゃだめだ、ドクターに話せばきっと助けてくれるというイーチャー。お前みたいにかというオブライエンに、そうだ、私たちは味方だという。どうかな、味方してどうなったとオブライエンは言う。イーチャーをおいてターボリフトに乗り込み、居住区へ向かうオブライエン。
ターボリフトから出ると既にイーチャーがいた。いずれは誰かに私のことを打ち明けないといけないという。一生私から逃げつづける気かと常にオブライエンの前に現れる。お前は死んだ、いいから消えてくれというオブライエン。消せばいい、追い出してみろよというイーチャー。私が離れられないのは、君が私をどこかで呼び出しているからだと言った。振り返るオブライエン。だがそこには誰もいなかった。
オブライエンは部屋に帰ってきた。1時間も前からベシアが探していたことを話すケイコ。いろいろ考えていたんだというオブライエン。事情は聞いたわ、残念ね、あなたには仕事は生きがいだものと慰めるケイコ。ジュリアンにそういってくれというオブライエン。モリーが描いた絵を見てという。後で見てあげるというオブライエン。すぐに任務に戻れるわというケイコ。モリーはそんなこといわないで見てよという。その話は後にしろとケイコに言うオブライエン。お願い見てといいつづけるモリーに、ついにオブライエンは後にしろといっているだろう、わからないのかと立ち上がった。何する気とモリーを抱くケイコ。泣き出すモリー。ついかっとしてというオブライエン。すまなかったといい、外に出て行く。モリーを落ち着かせるケイコ。
貨物室。オブライエンは積んである貨物をめちゃめちゃに崩している。そして、オブライエンの目に留まったのは武器ロッカーだった。ロックを外し、フェイザーを取り出す。目盛りを最大値に上げるオブライエン。それを首元につきつけた。


ベシアが来た。チーフと声をかける。出ていってくれというオブライエン。本気で死にたいのかいというベシアに、そんな訳ないだろという。刑務所でどんな目に遭ったかは知らないが、死ぬことはないじゃないかというベシア。オブライエンはそのことが理由じゃない、辛くて死ぬのではなく、ケイコとモリー、そしてステーションのみんなを守るためだという。守るって何からと聞くベシアに、僕からだ、僕はもう昔の僕じゃない、危険な人物さというオブライエン。さっきモリーを殴りかけた、父親の気を引きたかっただけなのに、手をあげそうになったんだと涙を浮かべる。でも殴らなかった、君は優しい男だというベシア。自分が許せないのはわかるが、死んで詫びることはないという。イーチャーみたいなことを言うねというオブライエン。イーチャーって誰だと聞くベシア。現実の存在じゃないと答えるオブライエン。ベシアの後ろにイーチャーがいる。ただの記憶に過ぎないんだというオブライエン。アグラッサでの記憶だね、囚人仲間か、看守かと聞くベシア。オブライエンは同じ部屋だったんだという。独房だったんじゃないのか、20年間話し相手もいなかったってというベシア。オブライエンはうなずき、最後は独りだった、1週間か2週間はという。でもそれまでは、イーチャーがいたんだと言った。うなずくイーチャー。ベシアは彼はどうなったのと聞く。
描いていたイッシーカを消すオブライエン。急にどうしたんだとイーチャーが聞く。気が散ってだめだというオブライエンに、もっと集中してやってみろよというイーチャー。どんなに集中しても、腹が減りすぎてだめだというオブライエン。私もだというイーチャー。君が隠しておいたなら別だがというイーチャーに、1週間前になくなったというオブライエン。もっと蓄えておけば良かった、準備が甘すぎたという。こんなに長く食事が来ないのは初めてだというイーチャー。オブライエンは俺たちを忘れたのかな、それとも飢え死にさせる気なのかという。なら死ぬだけだというイーチャー。睡眠時間になるという放送が流れる。横になるイーチャー。何してるんだというオブライエンに、眠るんだというイーチャー。こんな時に眠ろうという気になるなというオブライエン。イーチャーは食べ物の夢でも見るさと笑う。どうかしてるというオブライエン。イーチャーはただ腹が減ってるだけだといった。睡眠時間に入り、照明が暗くなる。
オブライエンが寝ていると、イーチャーが起き上がった。目を開けるオブライエン。イーチャーは穴から何か取り出している。オブライエンはゆっくりと立ち上がり、後ろからイーチャーに殴り掛かった。倒れるイーチャー。胸ぐらをつかみ、友達みたいな顔をしやがって、実はずっとだましてたんだなというオブライエン。一体どうしたんだ、落ち着けとイーチャーも殴り返す。今まで親切にしてやったのに恩知らずと叫びオブライエンを蹴る。オブライエンはけち野郎といい砂を目に浴びせ、取っ組み合いになった。転げまわった後、イーチャーは静かになりオブライエンはイーチャーが取り出した包みを開けた。そこには2人分の食べ物が、きちんと分けられて入っていた。何だ2人分あるじゃないかと笑うオブライエン。イーチャーに起きろよという。だが返事はない。オブライエンは死んでいることに気づいた。愕然とし、食べ物を手から落とす。
殺したのかと聞くベシア。でも最悪だったのは、次の日からまた食事が出たことだというオブライエン。何て馬鹿なことを、一切れのパンのために恩人を殺したんだという。殺そうと思ってやったわけじゃないだろうというベシア。オブライエンは本気だった、死んでしまえと思ったという。ずっと言い訳してた、イーチャーはどうせ現実じゃないと。だがそれは嘘だ、もし現実で君が同じことをしたら、君を殺しただろうとベシアに言う。イーチャーは親友だったのに、その彼を殺すなんてと涙を流す。子供の頃学校で習ったろう、人間性は進化している、もはや人間が憎しみや怒りに負けることはなくなったというオブライエン。だがいざ自分が怒りや憎しみに流されない、進化した人類だと証明するはずだった状況に投げ込まれると、全然だめだったという。人の親切に血をもって報い、けだものと全く変わらないとオブライエンは言う。それは違う、けだものだったらイーチャーのために後悔しないし、涙も流さないというベシア。でも君は恥じてる、そのあまり自分の命を絶とうとまでしたという。アガラッサ人は罰として君の理性を踏みにじろうとし、確かに一瞬理性をなくしてしまったかもしれない、しかしその一瞬のために一生を犠牲にしていいはずがないという。罪悪感に負けて引き金を引いたら、アガラッサ人の勝ちになる、君の精神が屈したことになるというベシア。そんな卑劣な手に負けるなといった。そしてベシアはオブライエンからフェイザーを取った。イーチャーがオブライエンにこれでお別れだという。奥へ歩いて行くイーチャー。その姿はかき消えていった。見送るオブライエン。
ベシアはオブライエンに薬の説明をしている。毎日2回、30ミリグラムずつだ、うまくいくようならだんだん量を少なくしようという。ほんとに聞くのかというオブライエン。あくまでも補助だ、でも幻影を見たり鬱になるのは避けられるというベシア。記憶や感情を消すことはできない。罪悪感もかというオブライエンに、それは時間がかかるさというベシア。後はカウンセリングかというオブライエン。テルノーリのところに行けと説教する気だろうという。僕のカウンセリングがいいかいというベシアに、オブライエンはテルノーリでいいと言った。立ち止まり、ベシアにどうもありがとう、何もかもという。友達じゃないかといい歩いていくベシア。部屋に入るオブライエン。おかえりとモリーが抱き付く。ただいま、帰ってきたよと抱きしめるオブライエン。ケイコも笑顔で見つめていた。


・感想
記憶を植え付けられたというのが最終的に違ったという風になると思っていましたが、結局本当のことでした。TNGの "The Inner Light" 「超時空惑星カターン」でもピカードが架空の体験をしましたが、これはその逆とも言える辛い記憶で、暗い様子で話が続きます。深い内容でしたが素晴らしいと思います。


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