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ヴォイジャー エピソードガイド
第84話「超獣生命体VS狩猟星人」
Prey

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・イントロダクション
1隻のバイオシップを、ヒロージェン艦が追っている。部下※1のヒロージェンが船内でリーダー※2に話す。「獲物の動きが不安定になっている。とどめを刺しましょう。」 「だめだ。一定の距離を保て。奴は既に、怪我をしている。放っておけ。」 「回復力は並じゃない。殺すなら今です。」 「奴が怪我を負った時の行動を探れば、壊滅させる鍵になる。距離を、保つのだ。」 船が揺れた。「直撃です。船体は安定しています。」 「武器も威力を失っている。」 「小惑星帯に向かっています。針路は 168.9。」
2隻の船は小惑星帯に入った。報告するヒロージェン部下。「見失いそうです。」 「奴に逃げる気はない。覚悟を決めてここへ来たんだ。」 部下は操作盤へ近づいた。「追跡。船は小惑星上で待機。奴はいません。」 「狩りを始める。」 ヒロージェンのリーダーは壁に並んでいる巨大な銃の中から、一つを選んで手に取った。部下は白い液体をヘルメットに塗る。
マスクをしたヒロージェンたちは、洞窟の中を銃を構えて進んでいる。銃の手元を確認する部下。「探知センサーを撹乱しています。」 リーダーは赤い液をヘルメットにつけている。「見上げたものだ。まだ我々に、勝つ気でいるとは。」 「調整しなおします。」 「いや。センサーは解除しろ。」 「何のためにです。」 「獲物をこの目で見つけ出したいのだ。ついて来い。」 奥へ進む 2人。
「奴をおびき出す。現れたら胸骨を狙って撃て。」 先へ進むリーダー。声がした。銃のライトに照らされたのは、生命体8472※3。ヒロージェンに襲いかかろうとするが、エネルギー銃をまともに食らう。ヒロージェンの部下も到着し、胸骨を狙って銃を連射する。ついに生命体8472 は倒れた。ヒロージェンは言った。「狩りは、終わった。」

※1: ヒロージェン・ハンター
(クリント・カーマイケル Clint Carmichael TNG第141話 "Tapestry" 「運命の分かれ道」のノーシカンその1 (Nausicaan #1) 役。ゲーム "Elite Force II" でも声の出演)

※2: アルファ・ヒロージェン Alpha-Hirogen
(トニー・トッド Tony Todd ウォーフの弟、カーン (Kurn) 役。TNG第65話 "Sins of the Father" 「クリンゴン戦士として」、TNG第100・101話 "Redemption, Part I and Part II" 「クリンゴン帝国の危機(前)(後)」、DS9第87話 "Sons of Mogh" 「モーグの息子たち」に登場。その他 DS9第75話 "The Visitor" 「父と子」のジェイク・シスコ (老) 役)

※3: Species 8472
VOY第68・69話 "Scorpion, Part I and II" 「生命体8472(前)(後)」より

・本編
医療室。無表情なセブンが、パッドを読み上げている。 「『傷口を治療するので、動かないで下さい。』『ありがとう。』『すみません、痛かったですか? これからは気を付けます。』『ご協力感謝します、患者さん。』『ではごきげんよう。』 もうごめんだ。」 「だめだめ続けて。いい感じだ」というドクター。 「このような会話は、私の任務に必要ない。」 「だったら後で君の仕事に適した言葉に置き換えればいい。今はこのまま練習を続けたまえ。」 「その必要はない。」 「私はこれを 3年前に作った。ヴォイジャーでの社交術を身につけるためだ。これを毎日 4、5回繰り返せば、自然と口から出てくるようになる。続けよう。レッスン2。仕事仲間編。ケスに手伝ってもらった。君はドクターの役を。」 ため息をつくが、パッドを読むセブン。「ハイポスプレーを取ってくれ。」 「はいドクター。」 取る真似をするドクター。 「ありがとう。機具を見る。」 「そこは読まなくていいんだ。会話だけ。」 「残念だがこれは違うハイポスプレーだ。」 「あら。」 「正しいものと代えてくれ。」 「すぐに。」 「ありがとう。ところで今日はすごく綺麗だ。」 「まあドクターも素敵よ。」 「レッスンは以上にしよう。」 セブンは医療室を出ていこうとする。 「言いにくいのはわかる。私は苦痛でさえあった。だが必ずある能力が身につく。」 開いたドアが、再び閉まった。「どんな?」 「他人を喜ばせる能力だよ。周囲の人間を心地よくできる。君は昔の私にそっくりだ。私も人間関係には、頭を悩ませた。だから知恵を貸したい。ま、嫌だというなら、構わん。健康管理だけに徹するとしよう。」 「データを見せてもらおう。」 パッドを渡すドクター。「ああ、いいとも。特にレッスン17 を見ておきたまえ。『初心者のためのブリッジ・ジョーク。』」 医療室を出ていくセブンは言った。
"Have a pleasant day."

「ではごきげんよう。」

トゥヴォックに尋ねるジェインウェイ。 「分析結果は?」 「モノタニアム製。二環式ワープサイン※4。明らかにヒロージェンの船体です。」 チャコティ:「針路を妨害。」 パリス:「回避しますか?」 ジェインウェイ:「いいえ。新しい種族と知り合う機会だわ。ワープ全開。」 チャコティ:「非常警報。」 キム:「目視領域、突入。」 ジェインウェイ:「スクリーン、オン。呼びかけて。」 トゥヴォック:「応答なし。」 パリス:「なおも接近。5万キロメートル。4万5千。4万。」 ジェインウェイ:「コースは維持よ、ミスター・パリス。」 トゥヴォック:「奇妙だ。武器を装備していない。」 パリス:「スピードを緩めました。」 チャコティ:「生命反応は。」 トゥヴォック:「1名のみ。非常に不安定です。」 パリス:「船体停止。エンジンが動いていません。」 チャコティ:「罠かもしれない。」 ジェインウェイ:「ハリー、長距離スキャンをお願い。ほかにヒロージェン船の痕跡は?」 キム:「ありません。」 「転送可能域まで進めて。」 セブン:「乗船する気なのか。」 「そうよ。」 「あの船は、脅威になりうる。破壊すべきだ。」
"Seven, what you call a threat, I call an opportunity... to gain knowledge about this species. And in this case, maybe even show some compassion.

「あなたには脅威でも、私にはチャンスなの。もっと彼らと知り合うためのね。今回は一種の同情さえ抱いてる。
どうやら操縦士は怪我をしているようだわ。」 「我々の経験から言えば、ヒロージェンは同情に報いるような種族ではない。」 「私の経験から言えば、このチャンスを逃す手はないわ。副長。」 チャコティ:「トゥヴォック、パリス、一緒に来い。」 3人はターボリフトに乗った。
ヒロージェン船の内部では、あちこちで煙が上がり、火花が飛んでいる。フェイザーとライトを持ったチャコティたちが転送される。「一暴れあったようだな」というパリス。チャコティは命じる。「生命反応を追え。」 3人はトリコーダーを使い、それぞれに調査を始める。壁に並んだ武器。天井から吊り下げられた頭蓋骨などの骨。
シリンダー状の容器の中に濁った液体があり、中で泡が出ている。それを調べるチャコティ。トゥヴォックがやってきた。「副長。」「骨と筋肉らしい。少なくとも 9種類の種族のものだ。全て何らかの酵素で分解されている。」 「恐らく、それが獲物を殺す方法なのでしょう。」 「もしくは、食事のな。」 ため息をつくチャコティ。
捜索していたパリスは、床にヒロージェンの防護具が落ちているのに気づいた。「ヘルメットの落とし物らしい。」 それを拾い上げる。何気なく前の部分を見ると、それにはまだヒロージェンの頭がついていた。驚いて床に落とすパリス。「副長。」 チャコティとトゥヴォックがやってくる。 「武器を使った痕跡はありません。素手で引き裂かれたようです。」 チャコティは言う。「生命反応を探知。こっちだ。」
ドアを開けて中に入る 3人。そこには座って苦しんでいるヒロージェンがいた。トリコーダーで調べるチャコティ。「ひどい内出血だ。医療室へ転送しよう。」
会議室。チャコティが報告する。「ヒロージェン船のコンピューターから航行記録をダウンロードしました。この領域の星図を。」 モニターに、領域をくまなく、そして乱雑に進むコースが表示された。トゥヴォック:「これは過去 5年に渡るヒロージェン船の航路図です。」 ジェインウェイ:「随分あちこち回ってるようね。」 「昨年一年で 90以上の星系を訪れています。」 チャイコティ:「日誌を分析した限り、彼らは一種の狩猟民族のようです。船内には何種類もの異星人の死骸が飾ってありました、戦利品のように。それらの獲物を食料としていた証拠も残ってます。彼らの儀式や芸術、宗教なども、全て狩猟に基づいて発展しています。彼らは常に、獲物を追って生活しているので、行動範囲が広くなるんでしょう。」 「母星の存在は見当たりません。一隻、もしくは小規模の艦隊で行動し、時折結集しては大規模な攻撃を行うのでしょう。」 「オオカミのように。」 ジェインウェイ:「医療室のオオカミの様子は?」 トゥヴォック:「意識不明です。フォースフィールドで、拘束を。」 「セブンの勝ちね。やっぱり脅威だった。でもクルーを危険にさらした分だけ、彼らの情報もたくさん得られたわ。」 セブン:「その通りだ艦長、成果はあった。今回は。」 ジェインウェイはチャコティに言った。「まだ一つ疑問は残ってる。誰がやったのかしら。」
ヴォイジャーの船体。その外殻を歩いている者がいる。生命体8472 だ。

※4: dicyclic warp signature

ジェインウェイに説明するドクター。「内蔵の治療をするため武装具を取り外そうとしていたら、突然意識を取り戻したんです。ご覧の通り、ここが気に入らないらしい。」 ヘルメットを外したヒロージェンがバイオベッドに座っている。フェイザーを持った保安部員も待機している。 「鎮静剤は?」 「既に免疫システムが中和してしまったようです。もっと強い鎮静剤を合成するには時間がかかる。とてももちません。かなり重傷です。」 ヒロージェンに話しかけるジェインウェイ。「仲間は死んだわ。船も修復不可能なダメージを負っているの。私たちはあなたを治療したいだけ。一体何が起きたの。誰がそんな目に。」 答えないヒロージェン。 「あなたたちとは、あまりいい出会い方をしなかったけど、だからといって敵対する必要はないはずよ。」 「獲物だ」とヒロージェンは言った。 「狩りの?」 「そうだ。手強い奴だった。2日前に捕獲したが、我々の拘束を逃れ攻撃してきたのだ。出してくれ。狩りを続けねばならん。」 「船がなくては無理よ。ましてその身体じゃ、治療しなければ死ぬわ。協力して。」 ヒロージェンは、ゆっくりとうなずいた。 「ドクター」とジェインウェイにいわれ、ドクターはベッドに近づく。 「それでは、フォースフィールドの中に入り、胴体の中間部を診察させてもらおう。私はホログラムだ。殴ったり刺したりしても効果はない。無駄なことはするなよ。」 フォースフィールドの中に入るドクター。「横になって。」 従わないヒロージェン。「じゃ立ったままで。」 診察を始める。
ブリッジに戻るジェインウェイに伝えるチャコティ。「6隻のヒロージェン船を探知しました。全方位からこちらに向かってます。」 トゥヴォック:「恐らく、医療室にいる男が、救難信号を送ったのでしょう。」 ジェインウェイ:「到着は?」 チャコティ:「あと 0.5光年、約4時間後です。」 「トム、接近パターンを分析。できるだけ回避して。」 パリス:「了解。」 「ドクターにあのハンターを治療する時間をあげたいの。信用を得られたら返してくれるかもしれない。窮地を脱するには信用を得るのが一番よ。」 チャコティ:「それはどうですかね。彼らは他種族と友好的に付き合うことはしないようです。我々は単なる獲物かもしれない。」 「だったら説得するか、追いつめられた獲物らしく牙を見せるかだわ。」 船が軽く揺れ、音が聞こえた。トゥヴォック:「第11デッキ、セクション3 で船体に亀裂。ダメージわずか。プラズマコンジットのオーバーロードです。」 チャコティ:「構造維持フィールドのパワーを強化。」 また揺れた。 「ジェフリーチューブ84 の隔壁が崩壊。」 「オーバーロードは?」 キム:「ありません。プラズマネットワーク安定。パワーサージ、およびシステム異常なし。」 ジェインウェイ:「ハリー、トゥヴォック、原因を調べてきてちょうだい。」 ターボリフトに入る 2人。
ジェフリーチューブを並んで進むトゥヴォックとキム。扉を開けると、穴が空いた壁から宇宙空間が見え、フォースフィールドが張られている。「オーバーロードじゃないなあ」というキム。 「そのようだ。」 キムは何かに気づいた。「少佐。」 近づき、その付着物を調べるトゥヴォック。「高密度の DNA と、流動体の合成物だ。こちらトゥヴォック。」 通信を入れる。 ジェインウェイ:『ブリッジよ。』 「艦内に侵入者がいる模様。血液と思われるサンプルの分析結果が、ある生命体のものと一致しました。生命体8472 です。」 「侵入者警報。保安部員は 10から 12デッキを封鎖するように。」 すぐに保安コンソールを確認するチャコティ。「内部センサーは何も探知していません。」 「以前遭遇した時も、スキャナーでは探知できなかった。頼りは自分の目ね。」 フェイザーを手にするジェインウェイ。「どうやってシールド突破を」というパリス。 「その心配は後回しよ。ブリッジをお願い。11デッキにいるわ。」 向かうジェインウェイ。
慌ただしい機関室。フェイザーを持っているセブン。トレスに言う。「周辺にレベル10 のフォースフィールドを張った。」 「次は全てのハッチとジェフリーチューブ、それにコンジットの周りに補助フィールドを張ってちょうだい。」 歩いていくセブン。部下に命じるトレス。「コンソールを全部、コマンドコードでしかアクセスできないようにして。ワープコアをロックするわ。少尉、ディリチウムのマトリックスを組み直して。新しい周波数に設定。3.69…」 トレスは物音に気づいた。異様な声。ワープコアを見上げると、生命体8472 がいた。叫びながら飛び降りてくる。


トレスが倒れている。セブンが首の脈を取る。保安部員たちと共にジェインウェイがやってきた。「報告。」 セブン:「4名が負傷、2名は重傷だ。」 トレスの様子を見るジェインウェイ。保安部員に命じる。「医療室へ。」 説明するセブン。「生命体8472 が、反物質噴射孔を通って侵入した。フェイザー銃は効果がない。ジェフリーチューブ17アルファを通って逃げていった。」 ジェフリーチューブを確認するジェインウェイ。通信バッジに触れる。「トゥヴォック。」 トゥヴォック:『はい艦長。』 「侵入者は機関室を出たわ。全エリア封鎖して。」 『了解。』 ジェインウェイは機関部員に命じた。「ワープコアを確保。」 「了解。」 「セブン。」 機関室を出る 2人。
慎重に廊下を進むジェインウェイ。「ヒロージェンも、手強い相手を獲物に選んだものね。」 「生命体8472 が?」 「そうよ。ボーグが 8472 と闘った時、実際に彼らと接触はした?」 「何度となく。」 「何か役に立つようなことを思い出せない?」 「奴らはボーグ艦に乗り込むたび、まずパワーマトリックスの中心部を停止させた。」 「今回は機関室に来ても、パワーシステムには触れなかった。」 「奴らの戦略にかなっている。生命体8472 は高等生物だ。恐らく最も有効な手段に、気づいたのだ。」 「医療室に行くわよ。」 ターボリフトに乗る。
気を失ったままのトレスの診察を行うドクター。「大丈夫。すぐに良くなります。」 ジェインウェイはヒロージェンに尋ねる。「本当に、獲物は 1匹だった?」 「なぜだ。」 チャコティ:「半年前、奴らが乗った数千の艦隊に攻撃されたんだ。やっとのことでかわした。」 ジェインウェイ:「また侵略しに来たのかもしれない。だとしたら大変なことになる。あなたは何隻の船を見たの?」 ヒロージェン:「1隻だ。損傷してた。それを 50光年引き回し、完全に殺したはずだったが、この獲物はほかとは違う。しぶとい奴だ。フォースフィールドを弱めろ。俺が狩りを終わらせる。」 セブン:「お前の試みは失敗するだろう。生命体8472 はあらゆるテクノロジーに対抗しうる。奴らの敵は、ナノプローブだけだ。」 「ナノプローブだと?」 チャコティ:「細胞レベルで敵を攻撃できる、微細な武器だ。以前もそれで撃退した。」 セブン:「ナノプローブを発射できるよう、フェイザー銃を改造しよう。」 ジェインウェイ:「麻痺状態で生け捕りにしたいの。殺さないように調整できる?」 「…可能だが余計な時間がかかる。できるだけ早く仕留めるべきだ。」 ヒロージェン:「同感だ。」 ジェインウェイ:「なぜ戻ったか知りたいの。」 セブン:「クルーを無駄な危険にさらすことになる。」 「どうかしら。」 「艦長。」 「命令は以上よ、セブン。あと 4時間でお仲間の船が 6隻着くわ。あなたを助けたと伝えて。あなたたちに敵対する気はさらさらないことも。」 ヒロージェン:「狩りを再開させろ。そうすれば要求に応じる。」 チャコティ:「ここで追いかけっこをすれば、船に甚大な被害が出る。」 「俺はこの獲物を半年も研究したのだ。すぐに捕まえる。ここから出さなければ、仲間にお前らを襲わせる。」 船が揺れた。通信が入る。『トゥヴォックより艦長。』 ジェインウェイ:「どうぞ。」 「セクション94 に待機中ですが、生命体が環境制御システムにアクセスし、生命維持力を失いつつあります。」 大きな音がし、トゥヴォックの身体が浮きあがっていく。「人工重力も、弱まってきました。」 『直ちに退避。第10デッキに集結。』 『了解。』 ヒロージェン:「バリケードを作っているのだ。同じことをされた。」 ジェインウェイ:「狩りがしたいなら、させてあげる。監視を一任するわ、副長。命令に背けば、射殺よ。」 医療室を出ていくジェインウェイ。チャコティはフォースフィールドを解除した。ヒロージェンはチャコティに近づき、言った。「武器を返せ。」
廊下の扉の前。チャコティとパリスが環境スーツを着て、確認をしている。「温度調整。」 「OK。」 「大気再循環機。」 「OK。」 チャコティはヒロージェンに尋ねる。「その武装具は急激な気圧の変動を調整できるのか?」 「いかなる劣悪な環境にも耐えうる。かつてシリコンでできた生命体を追い、中性子マントルを通り抜けたこともある。」 それを聞いたパリスは言った。「俺はネズミを追ってジェフリーチューブを通り抜けたぞ。」 何も言わないヒロージェン。チャコティ:「チャコティからトゥヴォック。準備完了。」 トゥヴォック:「こちらもです。」 トゥヴォックの後ろにはセブンがいる。 『11デッキへ向かってくれ。通信回線は開いておくように。』 「了解。ナノプローブ銃、装填。」 セブン:「レベル5 に合わせれば、麻痺させられる。」 歩いていく 2人。
ヒロージェンはマスクを付け、パリスたちはヘルメットをかぶる。チャコティ:「ハッチを減圧。磁気ブーツ、セット。」 ブーツが床に吸い付く。扉を開け、ジェフリーチューブへ入っていく。
暗い廊下を進むトゥヴォックとセブン。
チャコティ、パリス、ヒロージェンも別の道を進む。ヒロージェンが前に出た。「後ろに下がれ」というチャコティ。 「奴がいる。」 立ちふさがるチャコティ。「下がれと言ってるんだ。お前の狩りじゃない。俺の狩りだ。」 「あの獲物に関しては、俺の方がよく知ってる。」 「だがこの場所には慣れていない。俺はこの船を知り尽くしている。」 「奴は先頭にいる生き物を狙う傾向がある。お前は殺されるだろう。」 「そんなことはわからん。いいから下がれ!」 しばらくの間の後、ヒロージェンは後ろへ下がった。パリスと目があう。「ああ、いいとも。後ろで結構。」 パリスが最後尾となり、進んでいく。
トゥヴォックの後ろを歩いていたセブン。何かに気づき、フェイザーを発射した。トゥヴォックも見る。だがそれは、浮遊しているパッドだった。また進み始めるトゥヴォック。「何をしてる。生命体8472 が侵入してきてから、君は明らかに動揺している。」 「ボーグに真の抵抗を試みたのは奴らだけだ。多くのドローンを殺し、世界を破壊した。私が動揺するのは当然だ。」
立ち止まるチャコティたち。廊下に液体が浮遊している。パリス:「あれは?」 ヒロージェン:「奴の血だ。怪我を負ってるらしい。」 チャコティ:「この廊下は 20メートル先で突き当たる。」 パリス:「あるのはディフレクターコントロールだけだ。逃げ道はない。」 ヒロージェン:「奴は逃げたりしない。待ってるのだ。俺たちの後ろに回り、攻撃してくる気だ。」 チャコティ:「チャコティからトゥヴォック。」 トゥヴォック:『トゥヴォックです。』 「セクション59 で奴を追いつめた。」 「向かいます。」
チャコティたちが見たものは、空中に浮いている生命体8472 だった。うめくような声を出している。 チャコティ:「怪我をしてる。」 「あっという間に回復する。すぐに攻撃を仕掛けてくるだろう。殺すべきだ、今すぐ。」 銃を装填し、前に出て構えるヒロージェン。 「その必要はない。武器を下ろせ。下ろせと言ってるんだ!」 だがヒロージェンは銃でチャコティの腹を殴り、さらにパリスを撃った。そして生命体8472 に武器を連続して発射する。すぐにヒロージェンは撃たれた。到着したトゥヴォックにだ。倒れるヒロージェン。


トゥヴォックは食堂に入り、ニーリックスに話しかけた。「ニーリックス、調理用のへらをフェイザー銃に持ち替えてくれないか?」 「あ?」 「侵入者が 2人いる上、6隻のヒロージェン船が向かってくる。保安部員が足りないのだ。」 「わかりました。私の任務は?」 「第10デッキ、セクション12 の保安チームに加わり、その後の指示を受けてくれ。20分毎に必ず報告を…」 その瞬間、トゥヴォックは生命体8472 のイメージを見た、二度続けて。「少佐? 大丈夫ですか?」 「命令は以上だ。」 食堂を出ていくトゥヴォック。
ターボリフトから降りるジェインウェイを、チャコティとドクターが出迎える。ジェインウェイ:「報告。」 チャコティ:「ヒロージェンは医療室で拘束しています。」 「生命体8472 は?」 「保安包囲網を張りました。セクション全体を拘束室にしたようなものです。」 「念のためにベラナが生命体をロックできる方法を探ってるわ。船外に転送できるように。それで、怪我はどんな具合?」 ドクター:「正確には言いかねます。周辺に生物電気フィールドのようなものを張っていて、スキャンできないため、見た目で診断するしかない。意識はありますが、動きません。表皮には無数の怪我の跡が。刺し傷あり、火傷あり。まるで手負いの獣のようです。」 「ヒロージェンが何ヵ月も追いまわしたらしいわ。手当てできない?」 「それほどあの生物には精通していません。診断すらできないのです。なす術はありません。」 パリスとセブンが調査しているところへ来た。パリス:「俺たちに追いつめられる前、奴はこのパネルからディフレクターコントロールにアクセスしたようです。」 セブン:「送信プロトコルを分析した。特異点を開けようと試みたらしいが、失敗している。」 ジェインウェイ:「うちへ帰ろうと?」 パリス:「ええ、そのようです。」
ジェインウェイたちは生命体8472 に近づく。トゥヴォックが先にいる。「生命体がテレパシーを使って呼びかけています。」 「何て?」 トゥヴォックは、バイオシップの船団が量子特異点から出るイメージ、そしてヴォイジャーやボーグ・キューブを攻撃するイメージを見る。「ボーグとの戦いで船にダメージを受けたため、仲間は流動体スペースに退却したが、彼だけが…取り残された。」 ヒロージェン艦に追われるバイオシップのイメージ。 「それからデルタ宇宙域をさまよっていたようです。独り、ヒロージェンの狩猟船に追われながら。もはや闘う気力などないらしい。ただ仲間のもとに戻りたがっているだけです。死にかけています。」 ジェインウェイは生命体8472 に語りかける。「何も怖がることはないわ。故郷へ帰れるように協力します。わかったかしら?」 「そのようです。」 「特異点を開けるには時間がかかるわ。その身体ではとてももたない。でもあなたが協力してくれたら…」 生命体8472 は手をこちらへ伸ばすような動きを見せたが、そのまま倒れ込んだ。トゥヴォックが言う。「意識を失いました。もはや、テレパシーも通じません。」
ジェインウェイたちは医療室に入った。ヒロージェンが尋ねる。「獲物はどこだ。」 「11デッキの廊下で横たわっている。死にそうよ、あなたのせいで。」 「連れていけ。」 「だめよ。」 「連れていけと言ってるんだ!」 「3時間であなたの仲間が着くわ。それまでに、生命体8472 をこの船から脱出させます。」 「何だと?」 「彼を仲間のもとへ戻すの。」 「おとなしく獲物を渡せば、お前らに手出しをさせはしない。」 「これは狩りじゃなく虐殺よ。今すぐやめてもらうわ。」 「いいか我々は、あの獲物をあきらめる気はない。すぐに渡さなければ、お前のクルーに身代わりになってもらうぞ!」 「トゥヴォック。」 ジェインウェイとトゥヴォックは医療室を出ていく。
トゥヴォックに命じるジェインウェイ。「セブンを作戦室へ呼んで。」 「彼女にあの生命体を送り返させるおつもりですか。」 「それができるのは彼女だけよ。」 「彼女の気持ちを考えると、承知するとは思えません。」 「そうかしら。」
作戦室へ入るセブン。「私に何か用か。」 「生命体8472 の処置を決めたの。流動体スペースへ帰すことにしたわ。だからあなたに量子特異点を開けて欲しいの。」 「とても賢明な選択だとは思えん。」
"I realize it may be difficult for you to help save this creature's life... but part of becoming human is learning to have compassion for those who are suffering... even when they're you bitter enemies."

「あなたがこの生命体を憎む気持ちはよくわかる。でもあなたの人間の部分は、傷ついた者への同情を知ってるはずだわ。それが許しがたい敵だとしても。」
「わからない。」 「私がまだ中尉だった頃、カーデシア人※5と戦闘の最中だったわ。連邦の植民地を守っていた私たち上陸班は孤立してしまい、3日3晩カーデシア人の一派とフェイザー銃を交えることになったの。拮抗してたわ。ある夜、戦闘の合間に、誰かの低い…うめき声を聞いたの。近くの茂みの中から。味方は一人も欠けてなかったから、すぐに負傷したカーデシア人だとわかった。私たちは、何週間もその星で殺し合っていた。容赦なく。でも私たちの指揮官は、哀れな負傷者のうめき声を聞いていることができず、私ともう一人に…命じたの。そのカーデシア人を私たちのキャンプへ運ぶようにって。正気を疑った。私たちの命より、敵の命を優先するのかって。でも従い、カーデシア人を助けた。その 3日後私たちは大勝利を収め、全員艦隊司令官から勲章を授かったわ。でも振り返ってみて、一番誇りに思うのは、あの敵の命を救った行為よ。」 「なぜだ。」
"A single act of compassion can put you in touch with your own humanity."

「哀れみという行為は、あなたの人間性を呼び起こすことができる。」
「自分の決断を正当化しているだけだ。」 「違うわ。これはあなたが成長するいい機会だって言ってるの。気が進まないのはわかる。でも私は艦長として、友として言うわ。決して後悔はしない。」 「断る。戦略として適当とは思えない。我々はあと 2時間でヒロージェンの船に包囲される。あの生命体を引き渡さなければ、破壊されるだろう。同情を学んでも、死んでしまえば役に立たない。」
"It is wrong to sacrifice another being to save our own lives."
「自分たちの命を守るために、ほかの者を犠牲にすればいいってものじゃないのよ。」

"I have observed that you have been willing to sacrife your own life to save the lives of your crew."
「あなたはいつも、クルーを救うために犠牲にしようとしている。」

"Yes, but that's difficult. That was my choice. This creature does not have a choice."
「それは私の艦長としての決断なの。あの生命体に関してもそうよ。」
「奴はこの船に侵入し、自分が生きるために我々を危険にさらしたのだ。仲間のもとに戻す必要などない。」 「これは命令よ。直ちにディフレクターコントロールへ行き、特異点を確立するように。」 「従うことはできない。私はヴォイジャーに残ることに同意した。あなたのクルーの一員として働くことにもな。だが自らの手で、自分自身やこの船を破滅に追い込むような真似をする気はないぞ。」 「よくわかったわ。あなた抜きでやります。」 「できるわけがない。」 「そう結論を急ぐものじゃないわ。話は終わりよ。貨物室へ行き、この件が片付くまで一歩も外に出ないこと。いいわね。」 セブンは作戦室を出ていった。首を振るジェインウェイ。

※5: 「カーデシアン」と吹き替え。その前の「中尉」も、もちろん原語では lieutenant としか言ってないため大尉と訳しても良いのですが、どちらでも構わないでしょうね

ヒロージェン艦に囲まれ、攻撃を受けるヴォイジャー。 キム:「シールド、84%。」 ジェインウェイ:「反撃開始。」 パリス:「さらに 3隻が、左舷および右舷方向から接近。逃げ道は絶たれました。」 トゥヴォック:「敵艦はほとんどダメージを受けていません。現在、分子構造の弱点を分析中。」
医療室のヒロージェンは、自分を見張っている保安部員たちとにらみ合っている。
キム:「シールド、79%。」 トゥヴォック:「呼びかけてきました。」 ジェインウェイ:「ないよりはましね。回線をつないで。」 船のヒロージェンが映し出される。『我々の獲物を盗み、仲間を奪った。すぐに引き渡せ。』 「攻撃をやめれば、仲間は渡すわ。獲物に関しては、我々が保護しています。」 『我々のものだ。』 「誰のものでもないわ。船を引き上げて。そうすれば血を流さないで済むわ。」 通信が切れ、大きく船が揺れた。トゥヴォック:「敵全艦から一斉砲火。」 チャコティ:「奴らの弱点は見つかったか。」 「まだです。」
ドクターが調べている中、生命体8472 が意識を取り戻し、立ち上がった。通信を行うドクター。「こちらドクター。生命体8472 が回復したようです。宇宙生物には詳しくないが、興奮しているのは確かです。」 チャコティ:「ヒロージェンの攻撃のせいです。」 ジェインウェイ:「沈静させられる?」 ドクター:『恐らく。しかしナノプローブが必要です。』 「わかったわ。ブリッジからセブン。」 貨物室にいるセブン。「何だ。」 『大至急、11デッキにナノプローブ銃を持っていってちょうだい。』 「了解。」
取り囲まれるヴォイジャー。チャコティ:「ベラナ、そっちはどうだ。」 機関室のトレス。「転送準備 OK。いつでも生命体を外に放り出せるわ。でもまだ特異点を設定できるディフレクタープロトロルが見つからない。」 『見つかるのは?』 「あと 1時間、2時間かも。」 パリス:「あと数分はヒロージェン船の攻撃をかわせますが、それ以降は…」 攻撃を食らい、コンソールから煙が上がる。 キム:「EPS 集合体直撃、メインパワーダウン!」 トゥヴォック:「全デッキのフォースフィールド停止!」 チャコティ:「補助パワーに切り替えろ。」 キム:「完了。フォースフィールド復活。しかし、長くはもちません。」 ジェインウェイ:「ドクター、そっちの様子は?」 廊下のドクター。「大丈夫です。異常ありません。」 チャコティ:「ブリッジから医療室。保安部員、応答せよ。」 その頃医療室では、倒れた士官からヒロージェンがフェイザーライフルを奪っていた。医療室を出るヒロージェン。 チャコティ:「保安部員、第5デッキへ急行せよ。ヒロージェンが逃げたかもしれん。」 爆発が立て続けに起こる。パリス:「左舷エンジンに直撃。右舷エンジンもやられました。」 ジェインウェイ:「止める気だわ。トゥヴォック、ワープの動力をフェイザーバンクに移して。敵艦にお返しできるかもしれない。」
フェイザーを持ったセブンがドクターのところへやってきた。「ナノプローブは。」 「装填してある。」 「少し様子を見よう。」 だが通路を見張っていた保安部員が撃たれて倒れていく。ヒロージェンだ。セブンと対峙する。「獲物を渡せ。」 「武器を下ろせ。さもなければ破壊する。」 「そうは思えん。こいつを殺して欲しいはずだ。ずっとお前の顔を見ていた、医療室でな。俺が何度となく見た顔だ。いいから下がれ!」 船が揺れ、全員よろめく。その時、生命体8472 はフォースフィールドを突き破った。ヒロージェンに襲いかかる。倒れるヒロージェン。セブンはしゃがむと、壁のパネルを外し、コンピューターを操作し始めた。ヒロージェンに乗りかかる生命体8472。「何をしてる」というドクター。セブンは作業を続ける。
キム:「誰かが第5デッキで、転送システムにアクセスしてます。」 ジェインウェイ:「締め出して。」 「できません。オーバーライドされました。ボーグの暗号コードです。」
作業を終えたセブン。コンピューターから音が発せられる。ヒロージェンと生命体8472 は転送されていった。
ジェインウェイ:「キム少尉、報告。」 キム:「生命体およびヒロージェンが、敵艦に転送されました。」 トゥヴォック:「全艦、高速ワープでヴォイジャーから離れていきます。」 ジェインウェイ:「トム、追跡できる?」 パリス:「残念ながら、ワープエンジンは動きません。」 「元のコースに戻って。全速力で。」 チャコティ:「セブンが?」 「セブンだわ」とジェインウェイは言った。
「艦長日誌、宇宙暦 51652.3。あれから 12時間、センサーはいかなるヒロージェン船も探知していない。彼らはこの領域をいいようにかき乱していった。しかしヴォイジャーの狩りはまだ終わっていない。そんな気がする。」
第2貨物室。セブンはアルコーヴで再生している。ドアが開き、中へ入るジェインウェイ。しばらくセブンを見た後、コンピューターを操作してセブンを起こした。「艦長。」 「ここへ来てちょうだい。」 セブンはアルコーヴから離れ、ジェインウェイの前に来た。本題に入るジェインウェイ。 「セブン、あなたは私の命令を無視し、結果として知覚力のある生物を死に至らしめた。」 「だがヒロージェンの攻撃をかわすこともできた。我々が死んでいたかもしれない。」 「結果がどうあれ、決断を下すのはあなたじゃない。」 「あの異星人はフォースフィールドを破った。やむをえまい。」 「あなたの意見を聞きに来たのではなく、今回のあなたへの処分を言いに来たの。あなたがヴォイジャーに来た時、私はあなたにほかのクルーと同等の自由を与えたわ。ファミリーの一員になって欲しかったから。あなたの強烈な個性も、喜んで受け入れた。ほかのクルーと対立したり、規則を破ったりしてもね。でも今回はそうはいかないわ。従って今後は、この艦内にあるいかなる主要システムへのアクセスも禁じます。私の許可を得ない限りはね。もし命令を無視すれば、拘束室に放り込む。天体測定ラボの作業だけは協力してちょうだい。嫌なら、ずっとこの貨物室にいることになる。命令は以上よ。」 「……了解。」 歩いていくジェインウェイ。セブンは言った。 「混乱する。」 「何が?」 「あなたは私を個人にしようとした。私に集合体の一部として考えることをやめさせ、独立心と人間性を開拓させた。しかしいざ個人の意見を主張すると罰せられる。」 「個人の行動にも限度がある。特に命令構造で成り立っている宇宙艦にはね。」 ジェインウェイに近づくセブン。
"I believe that you are punishing me because I do not think the way that you do... because I am not becoming more like you. You claim to respect my individuality... when in fact you are frightened by it."

「私があなたと同じ考え方をしないから罰するのだろう? あなたのようになろうとしないから。あなたは私の個性を批判するが、それは恐れているからではないのか。」
「そう思ってなさい。」 ジェインウェイは貨物室を出ていった。


・感想
「新たな敵」ヒロージェンと、「最強の敵」生命体8472 の闘いに巻き込まれたヴォイジャー。プロローグだけだと単純に「ボーグより強い生命体8472、それより強いヒロージェン」という力のインフレ状態になるのかと思いましたが、そう単純なものではなかったですね。一安心。たった一匹 (一人) で、あそこまでヴォイジャーを混乱させられる生命体8472 は、やはり最強でしょう。ヴォイジャー自体に文字通り「乗っちゃう」とは……。
セブンとジェインウェイの対立はお決まりですが、さらに続きそうです。


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