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TNG エピソードガイド
第75話「浮遊機械都市ボーグ」(後)
The Best of Both Worlds, Part II

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・イントロダクション
※1※2※3スクリーンに映っているボーグになったピカード、すなわちロキュータス。
ラフォージ:「…ディフレクターにエネルギーを集結中。発射まで後、6秒です。」
ウォーフ:「……発射!」
ディフレクターから青い光線が発射された。
それはボーグ艦の縁に沿って注がれる。
ウォーフ:「ボーグの船体はビクともしません。」
シェルビー:「そんなバカな。」
コンピューター※4:『警告。ワープリアクター・コアの冷却機能に損傷。』
ラフォージ:「長くはもちこたえませんよ。」
『警告。ワープリアクター・コアの耐熱限度を突破。』
ライカー:「…一時中止だ。」
ラフォージ:「ワープエンジン、活動停止。」
「…我々にはもう打つ手はないのか。」
ロキュータス:『人類の知識と経験は、既に吸収した。ピカードは、今や我々の一員だ。お前たちがどんな手を使おうともはや我々には通用しない。抵抗は一切、あきらめろ。…副長。』


※1: このエピソードは、第4シーズン・プレミアです。西暦は 2367年、宇宙暦は 44000台になります

※2: 1991年度エミー賞で音響編集賞と音響ミキシング賞をダブル受賞、また特殊映像効果賞と美術監督賞にダブルノミネートされました

※3: 吹き替えではあらすじの前に「副長日誌、現在我々は大変な危機を迎えている」というライカーのセリフがあります。原語では他の後編同様、「前回の新スタートレックは」

※4: 声はトロイ役の高島さんが兼任 (前編ではクラッシャー役の一城さん)

・本編
『航星日誌、副長記入。宇宙暦 44001.4。ボーグが再び地球に向けて航行を開始。ワープエンジンの損傷で、我々は追うこともできない。』
観察ラウンジ。
ライカー:「高出力ビームの発射によって、ディフレクターは燃え尽きました。加えて防御スクリーンとエンジンにも、ダメージを受けています。」
ラフォージ:「復旧には、8時間から 12時間を要します。」
モニターに映っていたハンソン。『では、間に合いそうもないな。』
ライカー:「戦闘には参加します。遅れても必ず参ります。」
『…とにかく総力戦となるのは間違いない。…連邦はウルフ359 に 40隻からなる艦隊を配備した。だがそれだけではない。クリンゴンも戦艦を送ってきている。いざとなればロミュランにも応援を頼むかもしれん。』
シェルビー:「ですがボーグはピカード艦長の協力を得て、万全の態勢で来るでしょう。」
『…もう随分昔だが、アカデミー毎年恒例のダニュラ2号星※5での 40キロマラソン※6で並みいる先輩を抑えて一年坊主がトップになったことがある。…今でも目に浮かぶよ、新入生の優勝はアカデミー始まって以来のことだった。わしはその若者に心底惚れ込みじっくり育ててみたくなったんだ。…それでわかったのだが、わしはあのジャン・リュック・ピカードほど決断力と勇気にあふれた男をほかには知らん。ボーグのような存在に協力するなど、到底考えられん。私はそう信じている。』
「失礼いたしました。」
『ピカードは…戦死したものと思え。』
クラッシャー:「…つまり、救出はもうあきらめろとおっしゃるんですか。」
『24時間以内に我が艦隊は、もてる力の全てを尽くしてボーグの船を叩く。…生死を分ける戦いだ。…ピカードについては、惜しい男を亡くした。よき士官であり、よき友だった。…ライカー中佐、よってここに君を艦長に任命する。エンタープライズは君の船だ。しっかりやってくれ。…こんな形になったのは残念だが。』
ライカー:「私もです。では御無事で。」
『うん。互いにな。』 ハンソンの通信は終わった。

ワープ航行中のボーグ艦。
ロキュータスは仰向けに寝ている。ボーグが機械を頭に当てた。
目を開くロキュータス。

手を挙げたロキュータスの右腕に、機械が装着される。動き始める「腕」。

頭部に向かって細い管が伸びる。肌から生気が完全になくなった。

ロキュータスの目からは、涙が流れている。

ターボリフトに入るライカー「艦長」。「フェイザーを、発射後ランダムセットに自動調整できるチップを開発してはどうかというのがウェスリーの案だ。機関室。」
ウォーフ:「実現すれば有利です。」
「それにボーグのフォースフィールドを中和する方法も考えねば。我々の力を見せつける必要がある。今や敵はボーグだけじゃない。連中は艦長の中から、知識を盗み出すだろう。一体どうやったら我々の手口を知り尽くしている相手に勝てる。」
「知識はあっても奴らには精神力がない。戦いも最後は気力です。」
「クリンゴンだな。」

ワープコアのそばにいるシェルビー。「加速装置コイルは、正常に機能。」
ラフォージ:「よーし、いいぞ。船首スクリーン、58%。船尾は…センサー異常かも。」
「チェック、センサーは異常なし。…待って。船尾は完全に機能停止よ、全く! 補助動力がまた切れたわ!」
「丁度いいところへ。」 ライカーたちに話すラフォージ。「船尾スクリーンは機能停止、補助動力も不安定。手伝ってくれ、ウォーフ。」
ライカー:「どれぐらいで発進できる。」
「2、3時間で。詳しくは、シェルビー少佐に。」
近づくシェルビー。「メインディフレクターは復旧しました。いま、シェルブルン※7とバークレイ※8が最終テストをやっています。」
ライカー:「ワープエンジンの方は。」
「復旧は順調に進んでいますが、時間を要します。ですがスクリーンの動力さえ復活できれば、ジョーディの言うとおり 2、3時間で航行可能なはずです。」
「よし。」
「……ほかにも何か。」
「君は、敵の船でよくやってくれた。」
「失敗しました。」
「ピカード艦長のことはやむをえない。」
「…でも、あの…」
「少佐、我々は気が合うとは言えないが、上官には口うるさい参謀の存在が必要だ。」
「副長に任命して下さるんですか?」
微笑むライカー。「全く。君は野心家だな、シェルビー。」
シェルビー:「今までの私達の関係からすればおこがましいと思われるかもしれませんが、あなたには私が必要です。ボーグに関係する知識では、誰にも引けをとりません。」
「だがまだまだ未熟だ。」
「…確かに。」
「実はピカード艦長に、君には手を焼くとこぼしたことがある。そしたら赴任してきたばかりのお前を思い出すと言われたよ。」
シェルビーは微笑んだ。「そうですか。」
通信が入る。『データから艦長、艦隊からメッセージです。』
ライカー:「内容は。」
データ:『ウルフ359 において、ボーグと交戦状態に入ったとのことです。』
向かうライカー。

報告するデータ。「ハンソン提督と、つながっています。」
ライカー:「スクリーンへ。」
乱れた映像が届く。
ライカー:「ライカーです。」
ハンソン:『戦果は思うようには上がっていない。撤退して再編成を考えている。ランデブー地点は…』
通信が切れた。首を振るデータ。


※5: Danula II
この部分は訳出されていません

※6: 宇宙艦隊アカデミー・マラソン Starfleet Academy marathon

※7: Sherbourne

※8: レジナルド・バークレイのこと。TNG第69話 "Hollow Pursuits" 「倒錯のホログラム・デッキ」より

ワープ中のエンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 44002.3。修復が完了し、現在ウルフ359 へ向けてワープスピードで航行中。戦場からの通信が途絶えたのは、ボーグの妨害によるものと思われる。』
ライカー:「ミスター・ウォーフ※9、君のこの船に対する大いなる貢献は称賛に値する。しかし保安部をまとめられるのは君だけだ。データ少佐、君に元々野心がないことはわかっている※10。だが君も副長候補だったことは、知っておいて欲しい。」
データ:「光栄です。」
「今は試練の時だ。クルーを現行のポストから…外すことは、得策とは言えない。そうなれば、必然的にボーグのエキスパートであるシェルビー少佐が現時点では副長にふさわしいとだろういう結論に達した。」 シェルビーと握手するライカー。「先ほどの交信から見て、ボーグは攻撃を優勢に進めていると思われる。次なる対抗策は?」
シェルビー:「懸案になっている、重力子ビーム※11はどうでしょう。」
ラフォージ:「さんざん検討しましたが、重力の場のひずみが相当強くなければ無理です。」
データ:「ドクターと私はある仮説を立ててみました。」
クラッシャー:「…過去の経験をもってすれば、破壊能力をもつロボット※12をボーグ船に送り込むことは可能でしょう。」
シェルビー:「ロボット。」
データ:「そうです。目には見えない超小型の。」
ライカー:「破壊にはどれぐらいかかる。」
クラッシャー:「それが、早くても 2、3週間。」
トロイ:「きっとその間に、惑星連邦は滅亡してしまってるわ。」
ウォーフ:「フェイザーの改造しかありません。」
ラフォージ:「光子魚雷と併用すれば、強力な武器になります。」
ライカー:「…こういう時ピカード艦長なら、気の利いたセリフの一つもおっしゃるだろう。正直言って、今ここにいてくれればと思う。…艦長を失ったのは誰にとっても大きな痛手だ。私は任務を果たす。だが、艦長の代わりになれるとは思っていない。…結果はどうあれ…艦長の信頼に応えるべく、来たる決戦では全力を尽くそう。…以上だ。」
観察ラウンジを出て行くクルー。

作戦室に入るライカー。辺りを見回す。「…力を下さい。」
空の椅子。
ドアチャイムに応えた。「入れ。」
ガイナン:「…今よろしいですか…」
「悪いんだがガイナン、今は…」
「ピカード艦長とはよく話したものなんです。お互いに落ち込んだ時に。」 ため息をつき、ピカードの椅子に座るガイナン。「だからこれからはあなたに聞いていただきたくて。」
「…どんなことだ。」
「…みんなバーラウンジへ来ても暗い顔をして、明日をもしれぬ命だと言っています。…みんなあなたのことを信頼していますが、守ってもらえるとは思っていません。」
「誰にだって無理だ。」
「…でも誰だろうともし明日死ぬとなったら、助かる方法を探そうとするでしょう。…ここで頼りにできるのは、あなたしかいません。」
「もちろん助けたい。」
「だったら運命を受け入れて下さい。……ピカード艦長を、忘れるんです。」
「君は知らないのか。私は艦長を殺そうとしたんだ。」
「あなたが殺そうとしたのはボーグであって、艦長じゃない。」 ガイナンは立ち上がる。「…艦長はまだここにいるんです。この部屋に。死んだならあきらめもつく。でも死んでない。ボーグは我々から彼を奪ったんです。…私達の間柄を知ってました?」
「いや。」
「そう。私達はお互いに本当に信頼できて、親友という言葉さえ超えていたんです。でも私はあきらめる。あなたも忘れて下さい。艦長は一人いればいいはずです。」
「簡単にはいかない。この船には大佐の面影が染みついてる。」
「全てをボーグに奪われた以上、しがみついていても無駄です。彼のことは潔く忘れて、中途半端はいけないわ。生き残るために…あれは、あなたの椅子です。…艦長。」 出ていくガイナン。
ライカーは、椅子に深く座った。
ウェスリーの連絡。『間もなくウルフ星系です。』
ライカー:「すぐ行く。」 立ち上がり、制服の裾を伸ばす。

ブリッジに戻るライカー。「通常スピードに、戦場へ向かえ、クラッシャー少尉。警戒警報。」
ウォーフ:「…センサーが複数の船※13を捉えています。」
「艦隊か。」
データ:「亜空間フィールド、反応なし。パワー指数はゼロです。」
「生命反応は。」
「皆無です。」
ウォーフ:「モニターできます。」
ライカー:「スクリーンへ。」
そこには、いくつもの船の残骸※14が漂っていた。
立ち上がり、裾を伸ばすライカー。
シェルビーも立ち上がり、スクリーン※15を見る。「トルストイ※16に、キュウシュウ※17。…メルボルン※18まで。」
視線を落としたライカー。
残骸※19の中を進むエンタープライズ。


※9: 吹き替えでは「ウォーフ尉」。第3シーズン以降、ウォーフの階級は大尉です

※10: 吹き替えでは「データ少佐、君はパイロットでいてくれ。最高のパイロットだ」。そもそもデータはパイロット (操舵) ではなく、オプス兼第二副長です

※11: 正確には「重重力子ビーム (heavy graviton beam)」

※12: ネナイト nanites
TNG第49話 "Evolution" 「進化の刻印」より

※13: 吹き替えでは「戦艦」

※14: スクリーンの中央上部から左に漂っていくのは U.S.S.チェコフ (U.S.S. Chekov)。スプリングフィールド級、NCC-57302 (53702 は誤り)。初代エンタープライズのナビゲーター、パヴェル・チェコフにちなんで。スプリングフィールド級は上部のポッドなどが特徴

スクリーンの右上から見えてくるのは U.S.S.アワニー (U.S.S. Ahwahnee)。シャイアン級、NCC-73260 (71620?)。シャイアン級は 4本のナセルが特徴

最後にスクリーンの右下に映るのは U.S.S.ブラン (U.S.S. Buran)。次の特撮シーンで、エンタープライズの下に見えるのも同様 (CM 明けの映像も含む)。チャレンジャー級、NCC-57580。「吹雪」という意味をもつ、ロシアの宇宙船にちなんで。チャレンジャー級は 2本のナセルが上下に位置しているのが特徴

なおスクリーンに最初に大きく映るのは、コンスティテューション級 (改装) の円盤部のようです (注釈※19 も参照)

※15: このライカーたちとスクリーンが同時に映るシーンで、上の方に船体の半分が見えるのは U.S.S.プリンストン (U.S.S. Princeton)。次の特撮シーンで、エンタープライズの右上に見えてくるのも同様 (CM 明けの映像も含む)。ナイアガラ級、NCC-59804 (58904 は誤り)。ナイアガラ級はナセルが 3本なのが特徴

※16: U.S.S.トルストイ U.S.S. Tolstoy
ライジェル級、NCC-62095。「戦争と平和」を著したロシア人作家、レフ・トルストイにちなんで。この船は登場していないようです。当初はチェコフと言及されるはずでしたが変更され、映像との食い違いが生じています。吹き替えでは「トルストイ

※17: U.S.S.キュウシュウ U.S.S. Kyushu
ニューオーリンズ級、NCC-65491。種子島宇宙センターのある九州にちなんで。最初の残骸シーンにおいてスクリーンの中央右側に映る船で、ライカーたちとスクリーンが同時に映るシーンでも中央から左に漂っています (CM 明けの映像でも左の中ほどに)。ニューオーリンズ級は小型ポッドが 3本ついているのが特徴。吹き替えでは「キュウシュウ

※18: 前編でライカーが艦長を打診されていた宇宙艦。後に DS9第1話 "Emissary, Part I" 「聖なる神殿の謎(前編)」の戦闘シーンでエクセルシオ級と確定しますが、この時点ではネビュラ級でした。最初の残骸シーンにおいて大きく映る円盤部に隠れており、左下に消えていく船。次の特撮シーンにおいて、左上で光を発しているのも同様です。ただし後に正式に登場する際とは形状が異なっており、初期 (プロト) ネビュラ級とも呼ばれています。初期ネビュラ級は 2本の小型ナセルが最後部に追加されているのが特徴

※19: この特撮シーンで暗転する直前に映るのは、コンスティテューション級 (改装) の機関部のようです。映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」で使われた、爆発する初代エンタープライズの使い回しともされています。この大きな残骸は、CM 明けの映像ではなぜか消えています

まだ火を発している残骸※20もある。
ウォーフ:「艦長。センサーが強い渦状電流を捉えています。方位 200、マーク 211。」
ライカー:「データ、分析は。」
データ:「ボーグ船の通っていった跡かもしれません。」
「少尉、コースを修正してその電流を追え。シェルビー副長※21、ボーグ船を見つけ次第円盤部を分離するプランを実行しろ。」
シェルビー:「艦長。そのプランは、ピカード艦長からボーグに伝わっているものと思われます。」
「それは承知の上だ。逆に利用するんだ。」
「…クラッシャー、カティーノ※22、グリーソン※23、すぐ戦闘ブリッジへ。」
「データ少佐、ウォーフ大尉※9。特殊任務を命じる。」

ボーグ艦はワープをやめた。
艦内を歩くボーグ。ほとんどが機械に覆われたロキュータスは、エンタープライズの映像を見る。
戦闘ブリッジ※24が映った。
ライカー:『ロキュータスに告ぐ。こちら U.S.S.エンタープライズ艦長、ウィリアム・ライカーだ。』
ロキュータス:「何の用だ。」

ライカー:「無益な争いは避けたい。」
ロキュータス:『命が惜しければ無条件で降伏しろ。』
「こちらは条件を話し合う準備を整えている。」
『話し合いのための準備を整えるなど信じられないな。我々を罠に掛けようと企む方が、よほどお前らしい。』 立ち去ろうとするロキュータス。
「待てロキュータス。」 立ち上がり、制服の裾を伸ばすライカー。「艦長の記憶を受け継いだのなら、知っているはずだ。私は艦長に嘘をつかない。艦長なら私を全面的に信用してくれる。」
『…ピカードはお前を信じていた。』
「なら信じてくれ。条件を話し合おうじゃないか。」
『話し合いなど無意味だ。無条件で降伏しろ。ただちにあらゆる武装を解除し、我々をセクター001 へ向けて先導しろ。そこで人類の文化とテクノロジーを譲り渡し…』
通信を切るよう合図したライカー。「グリーソン。ボーグの現在位置はつかめたか。」
グリーソン:「30メートルまで接近しました。」
「オブライエン、状況は。」

転送室のオブライエン。「また電磁波の周波数を変えて、こちらからの転送ビームをシャットアウトしてきました。」
ライカー:『やっぱりそうか。よーしデータ、ウォーフ。打ち合わせ通りに。』
データ:「了解、艦長。」
腕につけた装置を作動させるデータとウォーフ。

戦闘ブリッジのクルー。「宇宙チャンネルオン。」
ライカー:「そちらへ投降する前に準備をしたいんだが。」
ロキュータス:『準備の必要は全くない。ピカード同様お前たちを従属させるのはわけもないことだ。…時間を稼いでみたところでお前たち人類の運命は変わらない。我々は地球を征服する。阻止しようなどとは思わないことだ。命が惜しければな。』
「忠告はありがたく受け取っておくが黙って見ているわけにはいかない。」
クルー:「チャンネルオフ。」
「亜空間通信をリセットしろ※25。スクランブルコード、ライカー1。」
グリーソン:「スクランブルコード、ライカー1 了解。」
「シェルビー、状況は。」

艦長席のシェルビー。「分離準備完了。」
ライカー:『進めてくれ※26。』
「円盤部を分離せよ。」

二つに分かれるエンタープライズ※27
機関室のラフォージ。「ドッキングラッチ解除。円盤部、分離完了です。」

戦闘ブリッジのウェスリー。「円盤部の速度は秒速 100メートルで、なお上昇中。」
ライカー:「全システム、攻撃開始。」

シェルビー:「発射。」

双方の船体に攻撃される様子を、ロキュータスは見ている。

ボーグ艦はトラクタービームを発射し、第二船体を狙う。
シールドが反応する。
ウェスリー:「トラクタービームで捕獲するつもりです。」
ライカー:「回避行動を取れ。パターン、ライカー・アルファ。」
「ライカー・アルファ、実行します。」
逃げる推進部。
ウェスリー:「…円盤部をまるっきり無視しています。」
ライカー:「艦長ならそうするだろう。少尉。回避パターン、ライカー・ベータ。」
「ライカー・ベータ、了解。」
「第2段階だ、シェルビー副長。」

シェルビー:「わかりました。反物質スプレッド※28発射。」
円盤部から一斉に打ち出され、辺りが輝く。

ロキュータスは円盤部に注目する。

連絡するデータ。「シャトル発射、全準備完了。エンタープライズからの離脱は今から、3秒後です。」
発進し、シャトル格納庫を出た。外に第二船体が見える。
シャトルが揺れだした。

まだ円盤部を見ているロキュータス。反物質スプレッドは花火のように打ち出され続けている。
ボーグ艦はトラクタービームを次々に発射する。

ウェスリー:「トラクタービームが反物質スプレッドへそれました。」
グリーソン:「エンジンのイオン化反応で、シャトルに気づくかもしれません。」
ライカー:「データ、エンジンを切れ。慣性飛行に切り替えろ。」

反物質スプレッドの中を進んでいくシャトル。
ウォーフ:「ボーグの電磁場の中に、突入しました。」
ライカー:『了解。』
後部に向かうデータ。「シャトルの脱出用転送装置※29で、ボーグ船への転送は十分可能だと思われます。」

ライカー:「実行しろ。」

天井の装置を操作するデータ。ウォーフと共に転送される。

ボーグ艦内に実体化する 2人。すぐにフェイザーを構える。
進んでいくと、ボーグが何人も立っていた。間にロキュータスがいる。
別の方から向かってくるボーグを、フェイザーで倒す。前方にいたボーグも気づいた。
ロキュータス以外を撃つ。向かうウォーフ。
ロキュータスは腕を振り上げ、ウォーフと組み合う。
後ろから来たボーグも素早く倒すデータ。
ウォーフ:「データ!」
データは近づき、ロキュータスの首に注射した。
意識を失うロキュータス。
データとウォーフは、腕の装置※30を同時に作動させた。ロキュータスと共に転送される。

シャトルへ帰ってきた。
ウォーフ:「任務完了、成功です。」
データ:「反動推進エンジンオン。」
ボーグ艦のフィールドを抜けるシャトル。

ウェスリー:「電磁場を脱出しました。」
ライカー:「オブライエン、ただちに転送しろ。」

オブライエン:「了解。」
ボーグ艦からのビームで、シャトルは爆発した。
転送される 3人。
オブライエン:「無事収容しました。」

微笑むライカー。


※20: 最後に左上に見えるのは U.S.S.ファイアブランド (U.S.S. Firebrand)。フリーダム級、NCC-68723。フリーダム級はナセルが一本だけなのが特徴

また、書籍「アート・オブ・スタートレック」(日本語版では P.124) では、U.S.S.リベレイター (U.S.S. Liberator、NCC-67016。クラス不明) 搭載のシャトルが残骸シーンにあるとされています。映像内で実際にあるのかは不明

以上の注釈※14〜20 の船は Ed Miarecki や Greg Jein らがデザイン・製作。様々なプラモデルなどのパーツを組み合わせたり (いわゆるキットバッシュ)、通常の撮影用とは異なる研究用モデルが使われています。ファンの努力により調査され、Ex Astris Scientia では詳しく紹介されています。もっとも一回しか登場していない船がほとんどで、デザイン的にも奇異なクラスが多く、認知度や人気は極めて低いものと言えます

※21: 吹き替えでは全て「少佐」のまま。ライカーが大佐になっているのと同様、シェルビーは中佐の階級章です

※22: Cartaino

※23: グリーソン少尉 Ensign Gleason
(トッド・メリル Todd Merrill) 初登場。声:三木慎一郎

※24: Battle Bridge
使用されるのは TNG第21話 "The Arsenal of Freedom" 「生き返った死の宇宙商人」以来。大きく改装されています

※25: 吹き替えでは「亜空間通信に切り替えろ

※26: "Make it so."

※27: シリーズ内で分離するのは最後。このモデルは最近主に使われているタイプでは分離できないため、以前の大型のものが使われています

※28: antimatter spread

※29: shuttle escape transporter

※30: エンサイクロペディアでは「緊急転送アームバンド (emergency transporter armbands)」

エンタープライズの二つの船体とボーグ艦は、何もせず静止している。
シェルビー:「艦長、通常エンジンのエネルギーが低下。円盤部は動けません※31。」

グリーソン:「ボーグ船から発せられる亜空間フィールドの揺らぎから見て、向こうはパワーを回復したようです。」
ライカー:「待機しろ。ジョーディ。」
ラフォージ:『了解。』
ウェスリー:「あれじゃ円盤部が狙われます。」
ライカー:「…敵の注意を引け。」
「艦長! ボーグ船が旋回しています。」
ボーグ艦は向きを変え、一気に飛び去った。
ウェスリー:「再び地球に向かったようです。」
ライカー:「円盤部とランデブー開始。終わり次第追跡する。」

医療室のベッドに寝かされているロキュータス。
クラッシャー:「広範囲の細胞内に超小型回路ファイバー※32が注入されてるわ。DNA を書き換えられてるの。」
ライカー:「回復のメドは。」
「すぐにはどう見たって無理よ。まず細胞構造から調べなきゃ。」
「…モタモタしている暇はない。ボーグは接続した瞬間に、全てを読み取ったんだ。その逆もまたありうる。上手くすれば、ボーグのあらゆる知識を引き出せるかもしれない。弱点がつかめるかも。」
ハイポスプレーを打つクラッシャー。「ジャン・リュック。ビヴァリーよ、目を開けて。」
目を開くロキュータス。「ビヴァリー。ドクター・クラッシャー。」
クラッシャー:「…そうよ。まだ動かないで。」
「エンタープライズ内の医療室か?」
ライカー:「その通り。」
身体を起こすロキュータス。「無謀な作戦だ。指揮官失格だぞ、ウィリアム。クルー全員を危険にさらしてたった一人の男を助け出すとは。ピカードなら決して認めないだろう。我々とて同じことだ。一人ぐらい捕虜になったところで、船を戻しはしない。」
腕を上げる。フェイザーを構えるウォーフ。
ロキュータス:「…騒ぎ立てる必要はない。危害は一切加えない。…よく聞け。私はボーグの、代弁者としてこの船に留まる。同胞はその間脇道にそれることなくセクター001 に向かい、人類にボーグへの無条件降伏を強制する。」

ブリッジでコンピューターを操作するデータ。「マルチモードの反射分類※33から、ボーグ船とロキュータスの間で絶えず亜空間シグナルが交わされているのがキャッチできます。」
クラッシャー:「それで操ってるのね。」
「…でも、それだけではないようなんです。…このシグナルは転送ビームと同様、亜空間領域で相互作用しています。…思ったのですが、あの周波数はボーグの集合意識の基盤ではないでしょうか。」
ライカー:「ブロックできるのか。」
「恐らくは。…でも御承知のように、ボーグは仲間が負傷すると必ず主要思考回路を除去します。もちろん、集合意識から切り離すために。」
「ボーグは負傷するとすぐさま自滅する。」
「そうなんです。」
クラッシャー:「ボーグと切り離すのは艦長にとって危険かも。」
ライカー:「…艦長を呼び覚ますんだ。何か方法はないかな。」
「ボーグとの交信がなくなって、単に外科手術だけの問題だったらもちろん可能よ。でもこの移植組織が機能している限り、マシンから人間を切り離すことはできないわ。」
データ:「…私だったら、マシンともアクセスできるかもしれません。」

モニターを見ているロキュータス。
ウォーフに腕を向ける。「ウォーフ、クリンゴン星人。戦闘的種族。お前たちも服従しろ。」
ウォーフ:「我がクリンゴン帝国が屈服などするものか。」
「…なぜ抵抗するのだ。我々の目的はあくまで改善だ。あらゆる種族の。」
「クリンゴンは今のままで十分に素晴らしい。」
「愚かな考えだ。やがては我々と同化する。あらゆる種族が皆、ボーグとなる。…アンドロイド、データ。旧時代の人工有機体。お前は廃棄処分になる運命だ。」
素早くロキュータスに、ハイポスプレーを打つクラッシャー。
ライカー:「研究室に運べ。」
通信が入る。『シェルビーから艦長。』
ライカー:「どうした。」

シェルビー:「ボーグが、セクター001 に入ります。」

クラッシャーと顔を見合わせるライカー。

土星に近づくボーグ艦。


※31: 吹き替えでは「円盤部を回収できません

※32: microcircuit fibers

※33: multimodal reflection sorting

エンタープライズ。
シェルビー:「ボーグが減速しました。第92木星基地※34から、レーダーにキャッチしたとの情報が入っています。」
ライカー:「星の防衛力は。」
「詳細まではわかりませんが、どう見てもボーグの敵ではないでしょう。」
「今のスピードだとボーグが地球に着くのは。」
ウェスリー:「27分後です。」
「我々が追いつくのは。」
「…42分後です。」
「ライカーからデータ。どんな感じだ。」

ラボ※35のデータ。「ピカード艦長の神経系への基本的な、自動制御接続を終えたところです。転送パターンバッファ※36による、ボーグのシグナル処理の方も準備完了です。」
ライカー:『頼んだぞ※26、できるだけ急いでくれ。』
データの髪は一部外され、内部の機械が見えている。「大至急行います。交信終了。」
そこにケーブルを接続するクラッシャー。
中央の台に載ったロキュータスが降ろされた。衣服は取られているが、依然としていくつもの機械が見える。
データ:「神経結合は、3段階に分けて行います。ドクター、艦長の生命反応から目を離さない下さい。私の方のポジトロニックマトリックス活動は、オブライエンがモニターします。カウンセラー、艦長の心理状態が不安定なら、すぐ私に知らせて下さい。」
オブライエン:「問題があったら、どこで打ち切りますか。」
「…わからない。私も初めてなんだ。…ではまず、結合第1段階。」
クラッシャー:「生命反応は安定しているわ。」
オブライエン:「ポジトロニック活動も正常です。」
データ:「第1神経結合を完了。…ボーグの集合意識へのアクセス経路は、まだ見いだせない。」
首を振るトロイ。眠ったままのロキュータス。

火星から小型宇宙船※37がボーグ艦へ向かう。
即、全てが破壊された。進み続けるボーグ艦。

エンタープライズ。
ウォーフ:「情報確認。ボーグが火星防衛圏※38を突破しました。」
ウェスリー:「エンタープライズはテラ星系に入ります。」
ライカー:「通常スピードに。ボーグに追いつくのは。」
「23分14秒後です。」

土星のそばを通るエンタープライズ。
データ:「結合第2段階、完了した。やはり確かなアクセス経路は見いだせない。…引き続き、最終段階へ。」
突然、ロキュータスが首を動かし始めた。データも反応する。
クラッシャー:「…脳の視床下部の活動に、著しい上昇が見られるわ。心拍数も急速に上がってきてる。」
オブライエン:「少佐のポジトロニックマトリックス活動も激化してきています。」
データ:「神経結合完了。集合意識へ、ついにアクセスを果たした。…プロセス実行。…プロセス実行。」
トロイ:「データ!」
「待って下さい。プロセス実行。…プロセス実行。」 データの頭部のランプが急速に明滅する。「見事だ※39。ボーグの集合意識はコマンドごとに別れており、必要に応じて遂行される。防御、通信システム、ナビゲーション。各ボーグの体内には、基本となるコマンドが埋め込まれており…」
突然ロキュータスがデータの方を向いた。
腕を上げる。驚くトロイ。
ロキュータスはそばの機械に腕を向けた。近づく保安部員も殴り飛ばされる。
ロキュータスの腕を取るデータ。そのままへし折った。
動きを止める腕。
クラッシャー:「データ、艦長の神経活動に高まりが見られるわ。特に、前頭葉とその周辺に集中してる。」
オブライエン:「ボーグが、切り離そうとしているのかもしれません。」
落ち着きなく動くロキュータス。
調べたデータ。「それはない。シグナルは今も変わらず送られてきている。何が神経を高ぶらせているのかは、不明だが。」
トロイ:「いえ、わかってるわ。目覚めたのよ、艦長が!」
ピカードは、データの腕に触れた。
トロイ:「トロイからブリッジ。データが、艦長とのコンタクトに成功しました。」

ライカー:「話はできるか、データ。」

データ:「私が果たせたのは、ボーグの集合意識へのアクセスまでです。コンタクトは、ピカード艦長が自発的に図ったものなんです。」

ウォーフ:「艦長、ボーグが突然停止しました。」
シェルビー:「我々に気づいたようね。」
ライカー:「ボーグ船までは。」
ウェスリー:「あと 2分4秒です。」
立ち上がり、制服の裾を伸ばすライカー。「感じたんだ。我々が艦長に接触したのを。データ、あと 2分で情報を引き出せそうか。」

データ:「それがなぜかボーグには、艦長を集合意識から切り離そうとする動きがありません。」
クラッシャー:「そこがボーグのアキレス腱よ。その相互依存こそ。」

ライカー:「なぜだ、ドクター。」

クラッシャー:「艦長は今ボーグと一心同体です。彼を切り離すのはボーグにしてみれば、手や足を切り離すとの同じことなんです。」

シェルビー:「つまりは、単一心理です。」
ライカー:「一人崖から飛べば全員が並ぶ。データ、そうなるとこちらからボーグにコマンドを与えるのは可能か。」

データ:「恐らく可能でしょう。しかしボーグ全員に全く同じ行動を取らせるには、基本コマンドの伝達経路を逆転させる…」

ライカー:「何としてもやってみるんだ。」
データ:『了解。どんなコマンドを伝えましょうか?』
「単刀直入にいこう。『攻撃システムを解除しろ』と。」
ウォーフ:「…ボーグ船を捉えました。」
シェルビー:「スクリーンに。」
地球が映る。
ライカー:「拡大しろ。」
軌道上にボーグ艦がいた。
ウォーフ:「センサーがボーグの戦闘態勢を伝えています。」
ライカー:「非常警報! 光子魚雷装填、フェイザー準備。」
「了解。」
「敵の攻撃システムは。」
「…全システムフルパワーです。」
「データ。」

データ:「いまコマンド経路を逆転させていますが、防御システムはバリアでガードされています。」

ボーグ艦はトラクタービームを発射した。
揺れるエンタープライズ。
ウォーフ:「トラクタービームで捉える気です。」
ライカー:「スクリーンをランダムセットに。データまだか!」

データ:「依然として、防御システムのコマンド構造にアクセスできません。」

シェルビー:「パワーシステムに変えて、エネルギーを落とすように命じるのよ。」
データ:『了解。では、パワーコマンド・システムに切り替えます。』

機関室のラフォージ。「スクリーン消失。捕獲されました。引き寄せられます。」

ライカー:「全兵器で応戦しろ。」
フェイザーや光子魚雷を発射するエンタープライズ。
効果は見られない。フェイザーの調整をランダムで変えても無駄だ。

データ:「やはり駄目です。パワーコマンド・システムにもアクセスできません。主要なコマンドは全てがガードされています。」

シェルビー:「やられます。」
ライカー:「クラッシャー少尉、ボーグに体当たりするコースを取れ。…聞こえないのか命令だ!」
ウェスリー:「…了解。」
「ラフォージ少佐、ワープパワースタンバイだ。」
ラフォージ:『了解。』

ピカードが口を開いた。「眠りたい。」
クラッシャー:「…意識が戻りつつあるわ。」
「眠りたい。」
トロイ:「これはロキュータスじゃない、ピカード艦長よ?」
「眠りたい。データ。」
クラッシャー:「疲れてるんだわ。」
データ:「そのようです。…でも、真意は恐らく違う。…艦長が言おうとしているのは、何かもっと別なことです。…作戦の指示かもしれない。」

ボーグ艦は別のビームで機関部を狙う。
ウォーフ:「船を切断する気です。」
ライカー:「いよいよだ。…発進…」
データ:『データから、ブリッジ。待って下さい。』
「待機だ、全員待機!」

データ:「いまボーグの休息コマンド経路へのアクセスを試みているところです。優先順位の低さからいって、可能かもしれません。」

依然として船体が切られ続けている。
コンピューター:『警告、船体外壁破損。』
ウォーフ:「艦長、ここはひとまず撤退命令を。」
ライカー:「それは無意味だ。データ、進行状況は。」
データ:『待って下さい。』
「これ以上待てない!」
コンピューター:『警告。船体外壁破損。第23、24、25デッキ。減圧警報。』
突然、ボーグのビームが 2つとも止まった。
ライカー:「……データ、これはどういうことだ。」

データ:「思っていたとおり、休息コマンドへのアクセスに成功したんです。先ほどボーグには、休息を取るように命じました。つまりは…全員眠らせたのです。」

ライカー:「…眠らせた。」
データ:『そうです。』
微笑むシェルビー。
ライカー:「ボーグ船のエンジン出力は。」
ウォーフ:「…最小限です。」
「それじゃ電磁場は。」
「…消えています。」
「副長、偵察班を率いてボーグの状況を確認しろ。大至急だ。」
シェルビー:「承知しました。…ミスター・ウォーフ※9。」

ボーグ艦に転送されるシェルビーたち。他の保安部員も一緒だ。
ボーグに近づいたシェルビー。「シェルビーからエンタープライズ。本当です。全員が、休息モード。完全に眠っています。」

廊下を歩いているライカー。「その状態はどれくらいまでもつんだ。」

シェルビー:「チェックします。」
調べるウォーフ。「…副長、激しく数値が変動しています。」
シェルビー:「シェルビーからエンタープライズ。トリコーダーによれば、体内エネルギーがフィードバックを始めています。恐らく急な活動の停止が、自滅コマンドにつながったのでしょう。速攻解除しましょうか。」

部屋に入るライカー。「待機しろ。」
クラッシャー:「ボーグが自滅すれば、艦長に危険が及ぶかもしれないわ。」
データ:「それにボーグの生態と船の研究においても、重大な損失です。」
ライカー:「…そうは思わんな、データ。ピカード艦長から離れろ。偵察班、帰還せよ。クラッシャー少尉、彼らを待って安全区域へ移動しろ。」
ウェスリー:『了解。』

転送される偵察班。

動き始めるエンタープライズ。ボーグ艦の外壁は爆発を始める。
よろめくピカード。
エンタープライズの後方で、ボーグ艦は粉々になった。
クラッシャー:「……生命反応は安定。…それに書き換えられた DNA も全て正常に戻ったわ?」
トロイ:「…気分はいかが?」
折られた機械の腕を見るピカード。「夢を見てるようだ※40。ただ、少しだけ…頭痛がする。」
クラッシャー:「ご心配はいりません。移植組織はすぐに取り除けますから。」
ライカー:「…全て、覚えてますか。」
ピカード:「……何もかもな。中でも特に、私の有能な元副長がしでかした…無謀な作戦はよく覚えてる。」
ライカーは微笑んだ。

地球へ戻るエンタープライズ。遠くには月が見える。
ライカー:「すぐに地球のマッキンリー・ステーション※41でオーバーホールに入れとのことです。」
制服を着たピカードは肌の色も戻っているが、まだ顔の右側に治療の跡が残る。「どれぐらいかかりそうだ。」
ライカー:「5、6週間は。」
ドアチャイムが鳴り、ピカードとライカーは同時に応えた。「入れ。」「入れ。」
作戦室に入るシェルビー。「退艦許可をいただけますか。」
ライカーはピカードの許可を得るように合図する。
ピカード:「…ご苦労だった。今後とも活躍に期待する。」
シェルビー:「艦隊の再編成があるでしょう※42。…これを機に、ご自分の船をもたれてはいかがです。」
ライカー:「…心配してくれるのはありがたいんだが、わかってほしい。中佐も、艦長も。私のキャリアは、私自身が決めることだ。その気持ちだけ、いただいておくよ。」
「また御一緒できるのを、楽しみにしております。」
微笑むライカー。
シェルビー:「それでは。」 出ていく。
ライカー:「ではマッキンリーに向け、出発します。」
ピカード:「そうだな※26、副長。」
ライカーも部屋を後にする。
ため息をつくピカードは、カップを手にした。だが動きを止め、テーブルに置く。
窓から、外の地球を見つめた。


※34: 第92木星前哨基地 Jupiter Outpost 92
初期の脚本では流出した際に備え、一部ごとに数字が異なっていました

※35: 映画で使われたエンタープライズのブリッジを改装したもの。TNG第64話 "The Offspring" 「アンドロイドのめざめ」でも使用

※36: 吹き替えでは「転送パターン計算機

※37: 脚本では「無人ポッド」と表記されています。モデルは映画「レッド・オクトーバーを追え!」で使われたソ連のタイフーン級潜水艦に、ナセルとしてロサンゼルス級潜水艦をつけたもの

※38: Mars Defense Perimeter

※39: "Fascinating."

※40: 原語では「ほぼ人間だ」

※41: Earth Station McKinley
初言及

※42: 原語では「艦隊は一年以内に元に戻るでしょう」と言っています

・感想など
期待通り、特撮シーン満載の後編。エンタープライズを主軸に描かれているため艦隊戦は終わった後でしたが、その後のピカード救出作戦はテンポがよく、観ている方も全く計画を知らないので引き込まれます。クライマックスの "Sleep." も上手いですね。最後の意味深なピカードについては、実質的な完結編である次のエピソード "Family" 「戦士の休息」に引き継がれます。
後編の製作直前まで (当然前編の時点では全く) 脚本ができていなかったというのは驚きです。ファンの間で沸騰した議論のように、シェルビーがレギュラーになるという案もありました。後にウルフ359 の戦いは DS9 パイロット版で、39隻・11,000人という犠牲数は "The Drumhead" 「疑惑」で、更にロキュータスとボーグ・クイーンの関係については映画「ファースト・コンタクト」で描かれます。スチュワートは肌を露出したりして撮影が苦痛だったそうですが、演技すること自体は面白かったと語っています。


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