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TOS エピソードガイド
第58話「小惑星衝突コース接近中」
The Paradise Syndrome

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・イントロダクション
※1山と森、そして湖が広がっている※2
転送されてくるカーク、スポック、マッコイ。
マッコイ:「この素晴らしい松を見ろ。」
カーク:「湖も。」
「どこからかハチミツの匂いが漂ってくるぞ?」
「いやあ、ハチミツではなくオレンジの花の匂いだ。信じられん。地球だ。まさに銀河の遥か彼方※3にある地球そのものと言ってもいい。…こんなにも似た惑星が存在するだろうか。」
スポック:「可能性はわずかです。確率としては天文学的な数字になるでしょうが、この素晴らしい惑星なら地球と全くおんなじように開発できるでしょうね※4。」
3人は立ち止まった。トリコーダーを使うスポック。
マッコイ:「おい、何だありゃ一体。」
その先には、人工的な建造物が建っていた。階段のついた台座もある。
カーク:「分析したまえ。」
スポック:「我々には未知の金属ですね。探知機では、解明できない※5合金です。年数についても正確な反応をうることはできません。」
近づくスポック。高さは少なくとも 5メートル以上に及ぶ。
スポック:「この刻まれた模様は非常に面白い※6ですね、明らかに何かの文字です。」
カーク:「何らかの推測はできるかね。」
「いえ、できません。しかしこの種の物体を造るには、我々かあるいはそれ以上に進歩した技術を要することは明らかで非常に高度な文明をもってるもんの産物であると思われます。」
マッコイ:「生物学的にも文化的にもまさに謎の惑星だね、クレーター一つ見当たらんし。」
カーク:「付近に、生命形態が集まっているところはあるかね。」
スポック:「…方位 117、マーク 4 です。」
「調査に費やせる時間はどのくらいあるんだ。」
「この惑星との衝突コースを進んでる小惑星を、コースから外すためには 30分以内に出発しなければなりません。必要な地点に到達するのが一秒でも遅れたらそれだけ問題が複雑になり、解決不可能になるでしょう。」
「一応、30分あるわけだな?」
「…そうです。」
「…では調査に行こう、この天国にどんな生命が住んでいるのか是非見たい。」

湖のそばで暮らしている人々。木でできた粗末な家だ。
円錐形のテントも並び、焚き火やカヌーもある。その様子を対岸から見ているカークたち。
マッコイ:「こりゃ驚いたな、彼らはアメリカ・インディアンそっくりだ。」
スポック:「アメリカ・インディアンですよ、ナヴァホ、モヒカン、デルウェアーの混血だと思われますね。…最も進歩した、平和を愛する種族です。」
カーク:「アトランチスの発見に似ている。あの謎の大陸の※7。…スポック、この惑星上に更に進歩した文明が存在する可能性はあるだろうか。例の記念碑※8を建てたり惑星※9との衝突を防ぐ方法を講じる能力のある。」
「可能性はほとんどありません。探知機によると存在する生命は一つのタイプだけです。」
マッコイ:「彼らと接触をもって、知らせたらどうだ。」
カーク:「何を知らせる。例の惑星に衝突したら粉々だって言うのか?」
スポック:「彼らは宇宙飛行についてさえも何の知識ももっていません。我々の出現はいたずらに混乱を与えるだけでしょう。」
「我々には仕事がある。エンタープライズに戻ろう。」

立ち止まるカーク。
マッコイ:「どうかしたのか。」
カーク:「え? いやあ、別に。ただ、あまりにも平和で。複雑な問題の決断を迫られる、緊急事態もないみたいだよ。まさに、夢だよ。」
「牧歌的自然環境に対する、人類の典型的な反応だなそれは。20世紀の昔にいわゆる、『タヒチ病※10』と呼ばれた症状だ。ことにパトロール船の指揮官のような重要な任務に就いている人種に多い。」
「ほう、タヒチ病か。ここに住むのはインディアンだけだ。となると、例の記念碑は誰が造ったんだろう。」
独りで向かうカーク。
スポック:「ドクター。」
マッコイ:「何だ。」
「興味ある調査は、衝突コースを接近中の小惑星を処理してからにしていただきたいですね。」
記念碑に近づき、文字に触れたカーク。コミュニケーターを取り出す。「カークからエンタープライズ。」
スコット:『はい。』
すると突然、カークは姿勢を崩した。下へ落ちていく。
記念碑のそばの床は、元通りになった。
起き上がるカーク。そばにはコンピューターがあり、起き上がる時に触れてしまう。
電撃※11がカークの身体を貫いた。そのまま突っ伏すカーク。


※1: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 小惑星回避作戦」の表題作になります

※2: ロサンゼルス近くにある、フランクリン貯水池でロケ撮影 (「メイベリー110番」などでも使用)。予算が削減された第3シーズンにおいては、TOS第78話 "All Our Yesterdays" 「タイムマシンの危機」の一部を除いて、唯一のロケとなりました。惑星の呼称は言及されておらず、エンサイクロペディアでは便宜的に「ミラマネの惑星 (Miramanee's planet)」としています。脚本ではアメリンド (Amerind、アメリカ・インディアンの意味) と呼ばれているそうです

※3: 原語では「銀河系を半分越えたところ」

※4: 原語では「確率としては天文学的な数字です。この惑星の相対的な大きさ、年齢、成分を考えると、多少でも地球に似た進化をする可能性は極わずかです」

※5: 「探知機では」の個所から、原語では「探知できない」

※6: fascinating

※7: 原語では「アトランチスの発見に似ている。それともシャングリ・ラか」

※8: Obelisk

※9: 小惑星を「惑星」と略して訳している個所があります

※10: Tahiti Syndrome

※11: DVD での原音では、直撃する時にエンタープライズのドアの音を加工して使っています

・本編
地下。
カークは意識を失ったままだ。
スポック:『航星日誌、宇宙暦 4842.6※12。副長スポック記入。記念碑の前から、船長が突然姿を消した。あらゆる手を尽くして捜索したが、その行方は不明のままだ。』

記念碑のそばにいるスポック。※13「エンタープライズ。」
スコット:『はい、こちらスコットです。』
「転送準備をしてくれ、軌道を離れる。」
マッコイ:「何だと?! まさか本気で言ってるんじゃないだろうな。」
「ドクター。月と同じ大きさの小惑星がここに向かってるんです。いま出発すれば、そのコースを少し変えてやることで衝突は避けられます。しかしこれ以上接近するとコースの変更が難しくなり、エンタープライズの力をもってしても…」
「そんなのは後回しだ、衝突までまだ 2ヶ月もある。」
「小惑星のコースを変更することができれば、その衝突自体避けられるのです。」
「カークのことはどうする。」
「小惑星のコースを変更してから、またこちらへ戻って捜索しましょう。」
「そんなには待てん、カークが重傷を負っていたらどうする。」
「…ドクター、これがこの惑星だとします。」 そばの石を渡すスポック。「これは接近中の小惑星。…もし我々の対処が遅れれば、小惑星のコースを変更することは物理的に不可能になるんです。その場合、この星の人たちは死ぬことになります。」 2つの石をぶつけた。「つまり、船長もです。」
「しかし、少しぐらい待てないのか。」
「こうして説明してる時間も惜しいくらいですよ。小惑星はどんどん接近してます。このように衝突を避けるためには、最早一刻の猶予も許されないのです。」
マッコイは石を地面に置いた。
スポック:「転送してくれ。」
記念碑のそばで非実体化する 2人。


意識を取り戻したカーク。『ここはどこだろう。私はどこにいるんだ。』 フェイザーを拾った。
だが床に捨てる。今度はコミュニケーター。『これは何だ。どこかで見覚えがあるもんだ。見たことがある。しかし、思い出せない。』 また捨てた。『私はどうやってここへ来た。私は誰だ。思い出せない。』
壁際に移動すると音が鳴り、上へ続く階段がライトで照らされた。ゆっくりと昇っていくカーク。

外に出てくるカーク。
インディアンの女性 2人が、笑いながら記念碑に近づいてきた。カークに気づく。「待って。」
入口は自動的に閉まった。女性たちは持ってきた作物を捧げ、目を手で覆った。
カークを見る女性の一人。笑顔で立ち上がる。
階段を上り、カークの手を自分の額に当てた。
カーク:「君は誰だ。」
女性:「あなたに仕える者です。あなたがおいでになるのをお待ちしていました。」

航行中のエンタープライズ。
スポック:『航星日誌、宇宙暦 4843.6※14。副長スポック記入。エンタープライズに戻った我々は、行方不明のカーク船長の捜索を中断し小惑星に向かった。もちろんカーク船長の安否は重大な関心事だが、船長を救うためにはまず小惑星のコースを変えなければならない。』
機関室のスコット。「これ以上ワープ9 のスピードを維持するのは困難です。もはやエンジンはオーバーヒート状態に入っています。」

船長席に座っているスポック。「いかなる状態だろうとスピードを落とすことはできん! 時間以内に予定の位置に着かなくてはならんのだ。」

スコット:「わかりました。…しかし、危険が刻一刻増すことを忘れないで下さい?」

スポック:「君の意見はよくわかっている! 以上だ。」

ワープエンジンを見て、首を振るスコット。

インディアンの集落。
※15:「ミラマネ※16の話ではあなたは神殿の壁の中から、ミラマネと召使いの前に出てきた。伝説が予言しているとおりだ。我々は先祖※17の言葉を疑うわけではないが、運命の懸かっているときなので確かめなくてはならん。」
カーク:「知っていることは何でも答えたいが、言ったように私には初めてのことばかりだ。」
もう一人のインディアン、サリシ※18。「何も知らない男に我々を救えるわけがない。」
男:「会議で大酋長の言葉を遮るのは習慣に反する! 祈祷師にも許されないことだ!」
「しかし、空が暗くなったときに言葉では救えん。証拠を見せて欲しい。…この男が神ならその証拠が見たい!」
「作物が実ってからもう 3回も空が暗くなった。3回目は大変暗かった。伝説ではそのような危険が迫ったとき、我々をここへ導いた偉大な者たち※19が我々を救うために神を使わすことになっている。…神殿の魂を空高く上げて空を鎮めるのが、その神の仕事だ。…あなたにそれができるか。」
カークを見るサリシ。
カーク:「ミラマネが言ったように私は、神殿から来た。そしてそれが、第一歩だった。私の。ここへの。その前は空にいた。…空に。それ以上、思い出せない。しかし、空にいたんだ。」
ミラマネが小屋に入ってきた。「サリシ、大変なことになったわ。この子魚の網を張ってたら、網に足を取られて一番深いところに流されちゃったの。ルモ※20が助け上げたんだけど、動かないのよ。」
寝かされるインディアンの少年※21
サリシは心拍と目を確認する。「身体に音が聞こえない。…目に光もない。…この子もう動かない。」
カーク:「ちょっと待て。」 少年に近づく。
大酋長と顔を見合わせるサリシ。
カークは気道を確保し、人工呼吸を始めた。息を吹き込み続ける。
少年の腹が動き始めた。足を曲げさせるカーク。
サリシを止める大酋長。「待て!」
何度も足を動かすカーク。太ももをさする。
咳をし始める少年。
カーク:「もう大丈夫だ。」
大酋長:「我々みんな感謝する。」
「簡単な技術だ。昔から……昔。」
「死人に命を吹き込めるのは神のほかにはいない。…これでもまだ疑うのか。」
カークを見るサリシ。
大酋長:「彼に祈祷師の印を渡せ。」
ミラマネはサリシに近づき、マークがついた頭のバンドを取った。それをカークにつける。
カークに向けて敬礼する一同。サリシもだが、納得していないようだ。

小惑星※22に近づくエンタープライズ。
せり上がる操舵席のスコープ。
チェコフ:「目標地点まで、マイナス7。」

機関室に聞こえるスポックの命令。『フルスピードで前進。』
スコット:「オーバーヒートになって自動回路が受け付けません!」
『自動回路を通さずに、手動コントロールにしたまえ。』

スコット:『エンジンが焼けついてしまいます!』
スポック:「とにかく全エネルギーを出したまえ!」
『はい。』

スコットは言った。「こうなったら俺はもう知らんぞう、できるだけ頑張ってくれえ?」 連絡する。「フルスピードです!」

スポック:「ミスター・スールー、拡大レベル12 だ。」
スールー:「はい!」
スクリーンの小惑星が拡大された。
スコープを覗いているチェコフ。「目標地点まで、マイナス4。」
スポック:「エンジン停止、ここで位置を保て※23。」

動きを止める。
スコット:『エンジン、停止しました。』
スポック:「障害排除光線発射※24用意。」
スールー:「はい!」

状態を確認するスコット。結晶を見る。

チェコフ:「エネルギーが落ちました!」
ブリッジのライトが暗くなる。
スポック:「機関部、エネルギーのレベルを維持しろ! 最高レベルだ!」
スコット:『ダイリシウム結晶回路が故障です、交換しなければなりません。』
「あとにしろ。」
チェコフ:「ゼロ。目標地点、到着。」
「排除光線※24発射!」
ビームが小惑星に注がれる。
チェコフ:「エネルギー減少。」
スクリーンに映る小惑星とビーム。見つめるウフーラ※25
ビームは止まった。
スポック:「コース変更角度は?」
スールー:「十分ではありません。わずかに、0.0013度です。」
「…エネルギーをエンジンに切り換えろ、フルスピード。コース 37、マーク 010!」
「はい!」
チェコフ:「小惑星のコース上を、先に進むことになりますが。」
スポック:「そうだ。フェイザー光線に最高レベルのエネルギーを注入できるまで、小惑星の進むコースを後退する形になる!」
マッコイ:「何のために。」
「破壊するためです。ある一点にフェイザー光線を集中すれば、破壊できるでしょう。」
「破壊できなかったらどうなるんだ。エネルギーがなくなって逃げられなくなる。」
「いいえ。補助エンジンを使用すれば、小惑星のコースから逃げられます。」
「カークのいる惑星は逃げられんぞ?」
「そうなりますね。それを承知で、あえて危険を冒さねばなりません。」


※12: 吹き替えでは「0403.5802」。旧吹き替えでは次のカットと共に、この航星日誌は消えています

※13: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※14: 吹き替えでは「0403.5802」で、なぜか最初の数字 (脚注※12) と変わっていません

※15: 名前は Goro (リチャード・ヘイル Richard Hale 1981年5月に死去) ですが、言及されていません。「ゴロ」としている日本語資料もあります。声:石森達幸 (DVD 補完も継続)

※16: Miramanee
(サブリナ・スカーフ Sabrina Scharf) 声:油谷佐和子、DVD 補完では山川亜弥

※17: 原語では「巫女」

※18: Salish
(ルディ・ソラーリ Rudy Solari 1991年4月に死去) 声:資料では青野武になっていますが、間違っていると思われます

※19: Wise Ones

※20: Lumo クレジットでは戦士 Warrior
(ピーター・ヴァーゴ・ジュニア Peter Virgo, Jr.) セリフなし

※21: Indian Boy
(ラモント・レアード Lamont Laird) 特定のセリフなし

※22: のちに TOS第65話 "For the World Is Hollow and I Have Touched the Sky" 「宇宙に漂う惑星型宇宙船」のヨナダとして使い回し

※23: 吹き替えでは「惰性で前進」

※24: 原語では「ディフレクター起動」。ディフレクタービームが描かれるのは、TOS シリーズ中では唯一

※25: このウフーラは他エピソードの使い回し映像で、その他のシーンでは一切登場しておらずセリフもありません

湖から離れるミラマネ。
サリシ:「ミラマネ。」 ミラマネが持っている布に触れる。「何をしてる。」
ミラマネ:「神の命令に従ってるだけよ、それは務めでしょ。」
「俺たちの結婚衣装※26を作らないのか。」
「私達はもう結婚式を挙げられないのよ。」
「どういう意味だ、伝統を破ることは許されん。」
「…伝統を守るからこそあなたと結婚できないわ。」
「でも約束したじゃないか!」
「…彼が来る前の話よ。」
「酋長の娘と、祈祷師は結婚することになっているんだ。」
「でも今は彼が祈祷師と同じよ? …サリシ、あきらめて。ほかの女性を選んでちょうだい。あなたなら誰でも喜ぶわ。」
「俺はほかの女など、欲しくない!」
「……仕方がないのよ。」
「…ミラマネ。…どちらかを選べるなら…俺を選ぶか。」
答えずに歩いていくミラマネ。サリシは湖を見つめる。

ひょうたんの中をくり貫いているカーク。
ミラマネが小屋に入り、礼をする。「いつでもお風呂に入れるわよ。」
カーク:「ミラマネ。偉大な者たちの話をしてくれ。」
「話す? 神は何でも知ってるはずよ?」
「これは別だ、頼む。」
「偉大な者たちが私達を連れてきたの。そして神殿の秘密を守るために祈祷師を選んで、空が暗くなったときに使えと言ったの。」
「神殿の、秘密か。」
カークの制服を見るミラマネ。「ヒモがないわね、脱ぐときはどうするの?」
カーク:「その秘密は父から子供に、伝えられたのか。」
「そうよ、どうやって開けるの。」
「じゃあ、なぜサリシはそれを使って自分の仲間を救わないんだ。」
「彼はその秘密を教えてもらってないの。教えてもらう前にお父さんが死んでしまったのよ。」
女性たちが果物を運んできた。
大酋長も来る。「村人たちは喜び、あなたを讃えたいと言ってる。…しかしあなたを何と呼べばよいのかわしにはわからん。みんなに、何と言おう。」
思い出そうとするカーク。「……カ…カ…カ…」
大酋長:「カロク※27!」
「…ああ…。」 手を挙げるカーク。
女性たちは出ていった。
大酋長:「気に触ることを言ったか。」
カーク:「いや、そうじゃないんだ。」
「では、我々の暮らし方が気に入らんのか。偉大な者たちが望んでいたほど我々が進んだ暮らしをしていないからか。」
「豊かな土地に、平和な人たち。素晴らしい世界だ。」
「では何が気に入らん。言ってくれ。…すぐに変える。」
「…何も言うことはない。…言えるのはただ一つ。私はここで幸せだと、幸せだということだ※28よくは思い出せないんだが、こんな気持ちになったのは多分初めてだ。」
礼をし、出ていく大酋長。
カークはミラマネの腕に触れた。「なぜみんな私に期待するんだろう。」
ミラマネ:「あなたは神殿から出てきたし、死んだ子供を生き返らせたでしょ?」
「いやしかし私は……思い出す時間が欲しい。」
「時間はたくさんあるわ。」 ミラマネは一度ためらったが、カークの身体に触れる。「二人のためにも。」


エンタープライズの前に迫る小惑星。
スポック:「ミスター・チェコフ、位置は。」 ナビゲーターはハドレイだ。
チェコフ:「タウ、8 ポイント 7。…ベーター、ポイント 041。」
「それが、我々の目標。小惑星のウィークポイントだ。」
「ほとんど中心になります。」
「全てのフェイザーを目標にロック、可能な限りその一点に集中しろ。そこを攻撃して、裂け目を生じさせる。」
マッコイ:「ダイヤをカットするようだな?」
「いい表現ですね。」
スールー:「フェイザーを目標にロック。」
「ミスター・スコットがエネルギーを供給できる限り、断続的に攻撃を続ける。」
「準備できました。」
「フェイザー発射!」
操作するスールー。「フェイザー1 発射!」
フェイザーが小惑星に当たる※29

スコット:「あのヴァルカン人! パネルが焼けるまでエネルギーを使う気だ!」
スールー:『フェイザー2 発射!』

フェイザーが続く。
機関部員※30:「メイン回線が焼け切れました!」

続く攻撃。
スールー:「フェイザー4 発射!」
小惑星に変化は見られない。
スールー:「フェイザー全て発射しました。」
スポック:「同じ攻撃を繰り返し続けたまえ! …私の指示があるまで攻撃を中止するな!」

やまないフェイザー。
ワープエンジンの奥が、光を発し始めた。
あきれるスコット。「ほら見ろ、あれほど言ったのに※31。」

インディアンの服装になっているカークは、足音に目を覚ました。
ミラマネだ。「結婚衣装ができたわ。あなたさえよければ結婚式の日※32を決めさせて。」
カーク:「結婚式。」
「私は酋長の娘よ、祈祷師のサリシと婚約してたわ。…あなたに誰かいるなら、あきらめます。」
「いやあ君のほかには誰もいない、私には。君一人だ。」 微笑むカーク。
「なら私は結婚する資格があるわ。」
カークはミラマネの髪に触れた。「式の日を決めたまえ。」
ミラマネ:「…一日も早く幸せをつかめば、それだけ長く続くわ。…明日。」
カーク:「明日。」 キスする。

モニターに映る、惑星の神殿。
スコット:『ワープ9 のスピードを命令しても無駄ですよ。…ワープエネルギー装置は完全に破壊されて、補助エンジンしか使用できません。』
自室のスポック。「修理に要する時間は。」

スコット:「宇宙で修理するんですか? 無理ですよ。近くの補修基地へ寄港して修理する以外に、方法はありませんね。」

スポック:「私の推測通りか。ありがとう、ミスター・スコット。」
マッコイ:「ミスター・スポック、君は危険を計算した上であえてそれに挑戦し見事に破れたんだ。これで例の惑星とカーク船長を救う望みは絶たれた。」
「責任は全て私にあると認めます。」
「私は乗組員の健康維持に責任があるんだ。君は明らかに過労状態だ、速やかに休養したまえ。」
「ミスター・チェコフ、コース変更 883、マーク 41。」
「例の惑星へ戻るのか? 補助エンジンでは何ヶ月もかかるぞ。」
「正確に言えば 59日と 0.223日かかります。衝突コースを進んでくる小惑星は常に我々の後、4時間の位置です。」
「では何のために行くんだ。たとえカークが生きていたとしてもそれでは救い出す時間がない。下手をするとこの船も助からんかもしれん。自殺行為じゃないか!」
スポックは手を組み、コンピューターに集中している。
マッコイ:「私の言うことを聞いてないな? …そんな骨董品の記念碑ばかり見つめて今さら何になる!」
拡大されている神殿の文字。
スポック:「ヴァルカン人はあきらめません。また危険に挑戦するのです。」
出ていくマッコイ。

ミラマネに話しかけるインディアンの女性※33。「これで暗い空ともお別れですわ?」
ミラマネ:「私達みんなが祝福されるときよ。」
着飾ったミラマネを見たサリシは、小屋を離れた。

祈祷師の印をつけたカークの顔に、大酋長によって黄色いペインティングが入れられる。「わしが聖なる道を歩いて土の小屋までゆくまであなたは待つことになる。そしてわしは巫女にあなたの来ることを告げ、それからいよいよ儀式が行われる。」
記念碑の前だ。立ち去る大酋長。
カークは手を広げた。『私は天国を見つけた。これほどの幸せをつかんだ者はほかにいないだろう。』

独り歩くカーク。その前にナイフを持った者が立ちはだかった。
サリシだ。
カーク:「私の邪魔をするな。」
サリシ:「たとえお前が神だろうと、俺はこの式を許さんぞ!」
「お前の許可をうる必要はない。」
「だったら俺を殺してみろ!」
「なぜ殺さねばならんのだ。」
襲いかかるサリシ。手を押さえるカーク。
サリシ:「血が出た! …血を出したな、カロク! 血を流す神がどこにいる!」


※26: ritual cloak

※27: Kirok
吹き替えではこの個所を含め、「カロク」と聞こえるところがあります

※28: DVD では次のカットと一緒に吹き替えし直されているため「何も言うことはない。…言えるのはただ一つ。私はここで十分、幸せだということだ」

※29: エンタープライズはフェイザー 2発を角度をつけて同時に発射していますが、小惑星には 2本が収束して一個所に当たっています。まるで途中で曲がったかのように…

※30: Engineer
(ジョン・リンデスミス John Lindesmith) TOS第25話 "This Side of Paradise" 「死の楽園」以来の登場。一部資料では機関部員役としてシーン・モーガンが出演していることになっていますが、そのようなキャラクターは確認できません。声は Goro 役の石森さんが兼任

※31: 原語では「我が子よ。可哀想な我が子よ」

※32: Joining day

※33: Indian Woman
(ナオミ・ポラック Naomi Pollack TOS第59話 "That Which Survives" 「無人惑星の謎」のラーダ (Rahda) 役) 声はチャペル役の北見さんが兼任

声を上げるサリシ。「血を流す神がどこにいる!」
また近づいてくる。組み合うが、投げられるカーク。
木を利用して飛び蹴りした。再び蹴る。
カークはサリシの手をひねり上げた。
サリシ:「殺せ、早く殺せ! 早く殺さないと、俺はみんなにぶちまけるぞ! お前は偽の神だ!」
取り上げたナイフを捨てるカーク。歩いていく。

カークに色とりどりの衣装が着せられる。小屋に集まったインディアンたち。
楽器が鳴らされ、ミラマネの前に立つカーク。カークはミラマネの肩に手を広げ、二人で大酋長の方を向いた。

エンタープライズは、小惑星の方を向いたままだ。
スポックの部屋に入るマッコイ。「診療室へ来る約束だぞ?」
スポック:「暇がありませんね。記念碑の文字を解読しなければなりません。これは非常に進歩した暗号の一種と思われます。」
マッコイ:「しかし惑星へ戻り始めてからもう 58日もこれにかかりきりじゃないか…」
「それはよく承知しています。惑星に到着してから、救出を完了するまでにわずか 4時間しかないことも承知しています。…この暗号がその鍵を握っているんです。」
「しかし死んでは解読できんぞ。君は何週間も食事も睡眠もとってない。休養しないと君自身が危険だ…」
「何も食べたくありません。」 モニターに映る文字。「緊張してれば、ヴァルカン人は何週間も睡眠をとらずに生きられます。」
トリコーダーを使うマッコイ。「君たちヴァルカン人の新陳代謝は非常に低いので計りにくくて困るなあ、それに血圧にしても君たちのグリーンの血は…」
スポック:「重要なのは私の健康状態ではなく、あの記念碑ですよ。」
「君は明らかに衰弱してる。原因はオーバーワークと罪の意識だ。君は船が半身不随になったのを自分の責任にしてるがねえ、考えたらそれは誤りだ。…カークも君と同じ決断を下しただろう。ともかく、今の君に必要なのは休養だよ。保安部員を呼んで強制しようか?」
スポックは奥のベッドへ向かい、横になった。出ていくマッコイ。
だがすぐにスポックは起き上がり、またコンピューターの前に座った。

笑いながら走るミラマネ。
追うカークも楽しそうだ。「ミラマネ。…来なさい。」 上半身裸だ。「ミラマネ!」
カークはミラマネをつかまえ、口づけをした。その場に座り、抱きつく。
ミラマネ:「あなたの腕に抱かれる度に初めてのように震えるわ。」
カーク:「幸せだ。素晴らしく幸せだ。…これで夢さえ見なければ、私の心は安らかなのに。」
「あなたまだあの夢を見てるの? 変な形をした小屋が空に浮かんで動く夢を。」
「彼らは戻ってくる。一時姿を消しているが、必ず戻ってくる。彼らのか、顔が…ボンヤリと見えるんだ。私は、なぜか彼らを知っている。私は向こうに住むべき男で、ここは…違うんだ※34。私には、こんな幸せをつかむ資格がない。」
「贈り物があるのよ。」
「贈り物。…何だ。」
「きっと喜ぶわよ? …待ってて?」
『過去数週間、ミラマネに対する私の愛は日に日に強くなってきた。しかし、夢もまた毎夜私を怯えさせる。そして断片的なわずかな思い出。それを一つにつなぎ合わせられたら、きっと。』
ミラマネはそばに隠していたものを持ってきた。袋のようだ。「赤ちゃんができたの。」
笑うカーク。「…そうか!」 またキスした。

水たまりに棒を使って示すカーク。「運河が、水を引いてくる装置だ。湖から、小屋まで一直線だ。この装置を広げることによって、ほら。畑に水を入れ、作物を倍に増やせる。」
ミラマネ:「そして、ランプの力によって。ね?」
「そうだ。」
ひょうたんで作ったランプに触れるミラマネ。「夜を昼にして、料理を倍作ってそれをほ、ほ…」
カーク:「保存だ。」
「保存する。」
「そうだ。」
「凶作に備えて…」
「備えて。」 笑う二人。
「ランプを作ったわけがわかったわ? 夜も昼にしてしまって、一日中私に料理をさせたいからよ…」
「いやあ、そうじゃない。そりゃあ誤解も甚だしいなあ。君に一日中料理をさせるために作ったんじゃあないよ。」 口づけするカーク。
突然雷が鳴り、風が小屋の中にも入ってくる。
怯えるミラマネ。
カーク:「ただの風だ。雷と。」
ミラマネ:「バカな子供みたいね、私。…あなたがいれば怖くないのに。」 外を見る。
風に揺れる木。
ミラマネ:「時間がきたわ。」
カーク:「時間?」
「神殿へ行く時間よ、みんな待ってるの。」
「何しに。」
「みんなを救うの。」
「ただの風なのに救うも何もないだろ。」
「この風は前触れなのよ、すぐに空が暗くなって湖が波立って地面が震え出すわ? 救えるのはあなた一人。」
「私には、風も空も変えることはできんよ。」
「早く行かないと、手遅れになってしまうわ。神殿の中に入って、青い光を出してちょうだい。」
「しかし、私は神殿の中へ入る方法を知らないんだ。」
「でもあなたは神よ。」
大酋長が駆け込んできた。「カロク、カロク!」
サリシも一緒だ。「どうして早く神殿に来ないのだ。…すぐに地面が揺れ出すぞ、みんなお前の助けを待っているんだ!」
カーク:「ほらあなへゆこう、あそこなら安全だ。」
「ほらあな? 伝説では神はほらあなに逃げたりはしないぞ。」
大酋長:「地面が揺れ始めたらほらあなは安全ではない! …神殿の魂を呼び起こさないと我々は死んでしまう!」
ミラマネ:「神のあなたにできないことはないはずよ?」
サリシ:「何を待っているんだ? え、神様。天の助け※35か!」
外へ向かうカーク。「ミラマネを頼んだぞ。」

吹きすさぶ風。
神殿に近づくカーク。壁に触れる。
遠くから見つめるサリシ。
カークは神殿を叩くが、何も起こらない。手を挙げた。「私はカロクだ! 風よ、収まれー! 私はカロクだー!」
サリシは微笑んでいる。


※34: この辺りで、カークのおでこにハエが止まっています

※35: 原語では「お前の衣装」

エンタープライズ。
マッコイはスポックの部屋に入った。「眠れと言ったはずだぞ?」
ヴァルカン・リュートを持っているスポック。「休養しろと言ったんです。記念碑の記号は、言葉ではなく音楽の符号です。」
マッコイ:「音楽の符号? というとただの歌なのか。」
「ある意味では。この宇宙にはヴァルカン文明の支流をも含めて音符を言葉として使う文化が多く、端的に言えば音がアルファベットの役割を果たします。」
「で記念碑の音符の意味はわかったのか。」
「はい、我々の推測通りあれは記念碑で、保存者※36として知られるスーパー種族によって残されました。彼らは宇宙を旅行しながら滅亡に瀕してる原始民族を発見しては救い、生存し成長できる惑星に運んだわけです。」 チップ状のテープを持っているスポック。
「銀河系になぜ多くの人類※37が散らばってるのか不思議に思ってたんだが。」
「私もです。その多くは、保存者が運んだものと思われます。」
「あの惑星が何世紀も無事だったのはそのためだな? 保存者が惑星防衛装置を据えつけていったんだ。」
「それが今、何らかの故障を起こして働かなくなったんでしょう。」
「したがって早くその防衛装置を発見して故障を直さないと、惑星は…」
「粉々に破壊されます。」

サリシは叫んだ。「死ね、偽者だー!」
ほかのインディアンたちも、カークに向かって石を投げる。
ミラマネもやってきた。「駄目、待って! 乱暴しないで!」
カーク:「ミラマネ!」 近づこうとするが、遮られる。「来るなー!」
「やめて、石を投げないで…」
サリシ:「偽者だぞ!」
「でも私は彼の妻よ。」
「じゃあ行け! …行って偽の神と一緒に死ね!」
ミラマネを抱き上げるカーク。「殺されるぞ!」
ミラマネ:「やめて、やめて!」
攻撃はやまない。倒れるミラマネ。
カークはその前に立ちはだかったが、容赦なく石を受ける。
そばに転送されてくるスポックとマッコイ。
カークも遂に倒れた。スポックたちに気づき、逃げ出すインディアンたち。
カークを診るマッコイ。「クリスチンを呼んでくれ。」
スポック:「スポックからエンタープライズ。」
スコット:『こちらエンタープライズ。』
「船長を発見した。救急セットを持って至急クリスチンに来てもらいたい。」
声を出すカーク。「私の妻は…無事か。」
スポック:「妻? 幻想ですか。」
マッコイ:「カーク!」
カーク:「ミラマネ。」
転送されてくるクリスチン・チャペル看護婦※38
カーク:「ミラマネ。」
ハイポスプレーをミラマネに打つチャペル。
ミラマネは意識を取り戻した。
話しかけるスポック。「いま、痛みを和らげる処置をした。なぜ石を投げられたんだ。」
ミラマネ:「…カロクが、神殿の中へ入れな…かったの。」
「当然だ。彼は一度も入ったことがない。」
「…出てくるのを、見た。」
カークを見るチャペル。「……記憶がないんですか?」
マッコイ:「そうだ、脳を始め身体には何の異常も認められんが記憶を失ってる。」
スポック:「治療できますか。」
「時間がかかるな。」
「その時間がないために今我々は苦境に立たされているんです。」 呼び出しに応えるスポック。「スポックだ。」
スールー※39:『65分以内に脱出しないと、惑星と運命に共にしなければなりません。』
「了解した。ドクター、ヴァルカン心理療法※40に頼られるでしょうか。」
マッコイ:「ほかに方法がない。」
スポックはカークの顔に手を這わせた。「私は、スポックだ。あなたは、ジェイムス・カークだ。…2人の心は、いま次第に近づいている。…近い。…近い。…近づいてきた、ジェイムス・カーク。近づいた。」
カーク:「やめろ!」
「ジェイムス・カーク。」
「ミラマネ! …やめろ、ミラマネ!」
「私達の、心は一つだ。私は…カークだ!」
声を合わせるカーク。「カロクだ!」
スポック:「私は…カークだ!」
「私は…カロク!」
「私は…カー…」
叫ぶカーク。「カロクだ!」
スポック:「スポックだ!」※41
カークは静かになった。
マッコイ:「どうしたんだ。」
スポック:「船長は、非常に…ダイナミックな個性の持ち主です。」
起き上がるカーク。「思い出した。」 ミラマネを見る。
スポック:「船長、この記念碑の中に入りましたか?」
「入った。中には科学的な装置がギッシリと詰まっている。」
「これは巨大な、惑星防衛装置だと思われます。一刻も早く内に入らなければなりません。…船長、残念ながら時間がないのです!」
「ドクター。」
ミラマネの治療を行うマッコイ。
カーク:「入る方法がわからないんだ。」
スポック:「50分以内に内部に入って、その惑星防衛装置を何らかの方法で動かさないと惑星は完全に破壊されるでしょう。」
「鍵は、この記号にあるに違いない。解読しなくてはならん。」
「ある時点までは解明しました。これは音楽の符号です。」
「というと、何かの楽器によってこの音を出すと入口が開くのか。」
「それも考えられます。あるいはこれらの音楽を含んだ言葉を、いくつかしゃべるのかもしれません。」
「通信機を貸せ。…多分私が船に連絡したときにその鍵となる母音や子音に偶然触れたんだろう。」
「その時の言葉を正確に覚えていますか。」
カークはコミュニケーターを開いた。「カークからエンタープライズ。」
スコット:『はい。』
すると、ミラマネを乗せていた入口が横に開いた。
カーク:「スコッティ、小惑星のコースを変えられない場合は 20分以内に軌道を出ろ。エンタープライズを危険区域外に避難させるんだ。上陸班を犠牲にしても、エンタープライズを守れ! 以上だ。ミラマネ。ドクター、そばにいろ。手を尽くすんだ。」
神殿の中へ向かう。

先に入って装置を見ていたスポック。「この種の装置は見たことがありますが、これは遥かに複雑ですね。」
カーク:「注意しろ。私は偶然に何かに触って、光線を浴びたんだ。その時に記憶を失った。」
「多分それは記憶光線で、スイッチの押し方が悪かったんです。」
「まだ記号がある。これは読めるか。」
「私には音譜を読む特殊な才能があるようでして。ええこの場合、こちら側の回線のスイッチを順に入れますと…」
「スポック、早く正しいボタンを押したまえ。」
操作するスポック。音が響きだした。
神殿の先端から、青いビームが発射される。
それは小惑星に命中した。動き始める小惑星。
揺れが続く。
神殿から浴びせられるビームによって、小惑星は移動し続ける。

ミラマネを診ているマッコイ。小屋にカークも入った。
カーク:「どうだ。」
マッコイ:「内蔵をひどくやられてる、重体だ。」
「助かるか。」
「…いや。」
カークはミラマネを見つめ、近づいた。離れるマッコイ。
カークに気づくミラマネ。「カロク。…あなたは無事だったのね。」
カーク:「村の人たちも全員無事だ。」
「あなたは、必ず救ってくれると思ってた。私、良くなったらまた前のようになれるわね。ね?」
「もちろん、なれるよ。」
「私達はいつまでも幸せに生きるの。あなたの強い子供をたくさん産むわ。ああ…。愛、愛してるわ。あなた。」
「私も愛している、ミラマネ。いつまでも。」 口づけするカーク。
「いつまでも、あなたに抱かれていたい※42。」
表情を変えるミラマネ。動かなくなった。
カークはいつまでも寄り添っていた。

宇宙空間を飛行するエンタープライズ。


※36: Preservers

※37: 原語ではヒューマノイドで、地球人に限らない意味

※38: Nurse Christine Chapel
(メイジェル・バレット Majel Barrett) 前話 "Elaan of Troyius" 「トロイアスの王女エラン」に引き続き登場。声:北見順子

※39: 吹き替えではスコットのセリフになっています

※40: ヴァルカン精神融合 (Vulcan mind-meld) は、原語では Vulcan mind fusion と呼ばれています

※41: 吹き替えではマッコイが「スポック!」と呼びかけたものとして訳されています

※42: 原語では「キスの度に初めてみたい」。前の「あなたの腕に抱かれる度に初めてのように震えるわ」というセリフに関連して

・感想など
のっけから地球に似た惑星、種族まで地球人、そして動き続ける古代文明…と、よくあるパターンから始まります。ロケ撮影だったり、この話のために作られた記念碑がやたら大きかったり、のちのチャコティにもつながるネイティブ・アメリカンが登場したり、航星日誌の代わりにカークの心の声が何度も挿入されたり、TOS では最長と思われる期間に渡って描いていたり、カークが子供を授かりそうになったり、珍しい要素もあるにはあるんですけどね。
予算の都合上、どうしても他シリーズより目立つ異星の地球人、もしくは地球人にそっくりな種族については、保存者という設定が使われました。有名な TNG "The Chase" 「命のメッセージ」ではより明確に理由づけられましたが、そちらに比べて今回はいまいちファンの間でも知名度が低いようです。小説「ヴェンデッタ」や、シャトナー作の「栄光のカーク艦長」(原題 Preserver) でも使われてるんですけどね。
保存者がわざわざ防衛装置を置いていき、インディアンが伝承として空が暗くなるのを恐れ (過去に同じことがあったようにも取れる)、マッコイも「クレーターがない」や「何世紀も無事」と発言し、本来滅多に起こらないはずの小惑星衝突をやけに気にしています。これは元々、今回の惑星が小惑星地帯にあるという設定の名残だと思われます。「そんな場所に置いていくな」という気もしますが…。
旧題は "The Paleface" 「白人」で、ミラマネは子供と共に生き残る内容でした。初監督の Jud Taylor はほかに 4話を担当し、テレビ映画「悪夢のウィークエンド/恐怖の尼僧誘拐」(1970)、「実録! UFO大接近/消えた412ジェット機隊」(74) を演出。俳優としても「ドクター・キルデア」(61)、「逃亡者」(63〜65) に出演しました。


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