TOS エピソードガイド
第65話「宇宙に漂う惑星型宇宙船」
For the World Is Hollow and I Have Touched the Sky
イントロダクション
※16つの光の点が、宇宙空間を飛行している。 反対側から来るエンタープライズ。 非常警報の態勢だ。 船長席のスポック。「…スールー探知機を、最大限に拡大してくれ。」 スクリーンに映る光点。 スールー:「はい。」 カークがブリッジに入った。「スポック、間違いなくミサイルか。」 スポック:「それも、かなり古い形式のもんだと思われます。」 スコット:「ええ、あれは化学燃料ですよ。」 カーク:「ウフーラ大尉※2、通信への応答は。」 ウフーラ:「それが全くありません。」 「で、ミサイルのコースは?」 スポック:「探知機の反応によれば目標は明らかに、このエンタープライズです。」 「第1・第2フェイザー砲攻撃準備。」 スールー:「わかりました。」 「チェコフ、ミサイルの発射原点を計算してくれ。」 チェコフ:「わかりました。」 スールー:「フェイザーを目標にロックしました。」 カーク:「よーし、発射。」 フェイザーを発射するエンタープライズ。ミサイルに命中し、光が走った。 全て消えている。 カーク:「チェコフ、ミサイル発射原点にコース変更。」 チェコフ:「はい。」 「スピード、ワープ3 で前進。」 スールー:「ワープ3 で前進。」 方向を変えるエンタープライズ。 医療室のクリスチン・チャペル看護婦※3。「ドクター・マッコイ、私はエンタープライズの看護長としての義務を果たしているんです。」 マッコイはクリップボードを持っている。「いいから君は部屋へ引き取りたまえ。」 チャペル:「そういうわけにはまいりません。船長がお見えになるまでここにいます。」 カークがやってきた。「何の緊急呼び出しだ?」 マッコイ:「これで君の用は済んだろ? …わかったよ、クリスチン。私から直接船長に話す。」 出ていくチャペル。 カーク:「何か揉めてたようだな。」 マッコイ:「乗組員の定期検診の結果が判明したんだが。」 「ああ結構、で何か問題でも?」 「大したことはない、全員異常なしだ。一人を除いて。」 「悪いのか。」 「致命的だ。」 「病名は。」 「多血球血症※4。それも悪性のだ。」 「…誰だ。」 「長くて後一年だろう。」 「誰なんだ。」 「…本船の医療主任だ。」 「…君が。」 「できるなら、最期までこの船に勤務したい。伏せといてもらえないか。」 |
※1: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 パイリスの魔術師」収録「世界はがらんどう球で、おれは空にさわってしまったんだから」になります ※2: 吹き替えでは「中尉」。TOS では基本的に中尉は存在しないと考えられます ※3: Nurse Christine Chapel (メイジェル・バレット Majel Barrett) 前話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」に引き続き登場。声:北見順子 ※4: 異種多血球血症 xenopolycythemia polycythemia (赤血球増加症、多血症) は実在する病気で、それに「外の、異種の、宇宙の」といった意味の xeno をつけたもの。初言及 |
本編
エンタープライズは、小惑星※5に近づく。 ブリッジに戻るカーク※6。 『航星日誌、宇宙暦 5476.3※7。艦隊司令部にドクター・マッコイの病状を報告し、後任者の派遣を要請するという辛い任務を果たす羽目になった。』 スクリーンで近づいてくる小惑星。 カーク:「スポック。」 スポック:「はい、何でしょう。」 「ミサイルの発射原点の座標に間違いないな。」 スコープを覗いているスポック。「はい、間違いなくその座標に接近しています。」 カーク:「スクリーンに映った物体は。」 「小惑星です。…直径、320キロ※8。」 「敵艦は、あの小惑星に隠れているのか。」 「違いますね、探知機でその周辺はずっと走査しています。」 「…それでは、あの小惑星がミサイル発射原点だというのか…」 「その通りです。」 「…よし、徹底的に走査してくれ。」 「…組成分は、普通の小惑星と同じ。ただし、自転はありません。この太陽系内で、独自のコースを進んでいます。」 ※9「どういうことだ。ではあれは、動力で動く宇宙船なのか。」 「確かに動力を備えています。それに重力修正も行ってるようですね。」 「動力源は。」 「原子力です、それも旧式の。放射性廃棄物を撒き散らしています。」 「チェコフ。…小惑星船のコースを出してくれ。」 チェコフ:「はい。」 スポック:「表面は普通の地殻ですが、中は空洞ですね。周囲に大気圏を包む膜のようなものがあり、大気は呼吸可能です。しかし、生命形態の反応はありません。」 スコット:「じゃあれは、自動制御装置ですか。」 「あれを造った者も乗っていた者も、死んだんでしょう。」 チェコフ:「…小惑星のコース、つまり宇宙船です。…241、マーク17 です。」 「それは問題だ。」 カーク:「ほう?」 「あの小惑星のコースがチェコフの言うとおりだとすれば、ダラン5※10 と衝突します。」 「…ダラン5。住民がいるな。」 「そうです。記憶によれば、ダラン5 の人口は約37億2400万人です。…衝突までの日数は、そう 396日。」 「スールー。船の速度を、あの小惑星船に合わせてくれ。…スポックと私が行ってみる。スコット、指揮を頼む。」 スコット:「はい。」 転送室に来ているチャペル。「一年と言っても長いですわ? ですから、無理をなさらないで。」 やってきたカークは、転送台に立つマッコイを見た。「ドクター。…この任務は我々だけでいい。」 マッコイ:「のけ者にする気か? 私がいなきゃ無理だ。」 「しかし…何が起こるかわからんのだぞ?」 「行きたいんだよ。まだ大丈夫だ。」 「わかった、よかろう。…それほど言うなら。」 スポックも転送台に立った。 操作する転送部員。 小惑星船。 地表の岩場に転送される 3人。空は赤く、岩から蒸気が出ている。 カーク:「これは普通の惑星じゃないな。」 スポック:「惑星型宇宙船、まさに意表を突いたアイデアですね。」 「完璧なカモフラージュだ。カークからエンタープライズ。」 スコット:『はい、スコットです。』 「転送終了、異常なしだ。」 少し歩くと、円筒形の巨大な物体※11がいくつも置いてある。人の背より高い。 カーク:「入口もないようだ。」 トリコーダーを使うマッコイ。「スポック、知的生命は認められないと言ったが確かか?」 スポック:「この宇宙船は一万年以上も前に造られたもんだと思われます。まだ、生命体の存在は感じられません。」 壊れた物体もある。 すると突然物体の外壁が上部に上がり、中から人間が出てきた※12。3人に襲いかかる男たち。 最後に女性が現れる。男を投げ飛ばすカーク。 チョップで殴るスポック。手を相手の首に伸ばそうとするが、後ろから遮られる。 手を挙げたマッコイは、女性に気づいた。動きを止めたところを、横から殴られる。 カークとスポックも捕まった。 フェイザーとコミュニケーターを受け取る女性。「これは武器なのか。」 カーク:「少し違う。武器と※13、通信装置だ。仲間の様子を見さしてくれ。」 拘束していた男たちは、女性が挙げた手に従ってカークを離した。 マッコイを起こすカーク。「大丈夫か。」 マッコイ:「ああ、大丈夫だ。」 女性:「私はナティラ※14、人々に神の声を伝える者。ようこそ、ヨナダ※15の国へ来てくれました。」 カーク:「それにしては手荒い歓迎ぶりですね。」 「中へお連れして。」 筒の中に入るカーク。 階段※16の下には、たくさんのヨナダ人がいた。 廊下を歩くナティラに敬礼する。ナティラはドアの前に立ち、手を挙げた。 両端に手をかざす。文字のような記号が刻まれている。 それを見て片眉を上げるスポック。ドアが開いた。 中に入るナティラ。「ひざまずくのです。」 ナティラは中央の台座に載り、頭を垂れた。その先には太陽のようなシンボルが描かれた、石が置かれている。 密かに話すマッコイ。「さっき『国』とか言ったが、みんなこれが宇宙船だと知らないのかな。」 カーク:「一万年も前から飛び続けているんだ。…忘れられたのかもしれん。」 ナティラ:「答えたまえ、全能なる者よ。…人々に知恵を授けたまえ。※17…見知らぬ者が、この国に来ました。」 フェイザーなどを見せる。「我々の全く知らぬ道具を携えて。」 ナティラは礼をし、立ち上がった。「何者なのです。」 カーク:「私は、パトロール船エンタープライズの船長。こちらは、ドクター・マッコイ。それに副長の、ミスター・スポック。」 ナティラ:「このヨナダの国にやってきたわけは。」 「友好を、求めるためです。」 突然雷鳴が響いた。『友好がいかなるものかわきまえておけ。…敵意を秘めた者は必ずわかる。』 祭壇から聞こえる声※18だ。 するとカークたち 3人にエネルギーが浴びせられた。倒れる。 |
※5: TOS第58話 "The Paradise Syndrome" 「小惑星衝突コース接近中」の使い回し ※6: 冒頭のシーンを使い回し ※7: 吹き替えでは「0405.3069」 ※8: 原語では「200マイル」 ※9: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です ※10: ダラン5号星 Daran V TNG第25話 "Conspiracy" 「恐るべき陰謀」での宇宙艦隊本部の星図内にもあるそうですが、画面上では読み取れません。また、VOY第139話 "Child's Play" 「苦悩するボーグ・チャイルド」、第145話 "The Haunting of Deck Twelve" 「呪われた12デッキ」で、天体測定ラボの星図に載っています ※11: 奥の筒は小さな物が使われており、遠近法が用いられています ※12: 開くときに音がしていますが、スポックを含めて気づいた様子はありません ※13: 吹き替えでは「武器でなく」 ※14: Natira (ケイト・ウッドヴィル Kate Woodville ドラマ「秘密諜報員ジョン・ドレイク」(1964)、事件記者コルチャック「凍結細胞から生まれた北極原人」(75) に出演。パトリック・マクニーの元妻) 声:池田昌子 (DVD 補完も継続) ※15: Yonada ※16: この螺旋階段は、TOS第63話 "The Empath" 「恒星ミナラの生体実験」のセットと同じ ※17: 後ろに座っているカークたちが、アップになっている時と異なります (スポックとマッコイの位置、カークの高さと左手) ※18: 全能なる者 Oracle 吹き替えでは、ほかに「神の声」「神」「天の声」「神の言葉」という訳も使われています。"Oracle Room (Room of the Oracle)" は「神託の間」。声はスコット役のジェイムズ・ドゥーアンが兼任。吹き替えでは納谷六朗、TOS (第1シーズン代役)/VOY スールー、TNG レミック、DS9 初代ウェイユンなど |
部屋にいたカーク。「スポック。ドクター。…ドクター。」 スポックは目覚めたが、マッコイは眠ったままだ。 カーク:「ドクター!」 スポック:「かなり感電のショックが強かったようですね。」 「いやあ、そのせいじゃない。」 「しかし、ほかに原因はないでしょ。少なくとも、ここに来てからは。」 「ああ、君の言うとおりだ。ショックを強く感じたのはほかに原因があるせいだ。」 「差し支えなかったら、その原因を話していただけませんか。」 「…本人から口止めされているんだ。しかし君には話してもいいだろう。悪性の多血球血症だ。」 「…そうでしたか。…その病気は知っています。」 「長くて後一年だそうだ。」 マッコイが目を開いた。「…うーん…」 カーク:「ドクター。…ドクター、気分は?」 「いや、別に。君も無事かね、スポック?」 スポック:「ええ、何ともありません。船長も私も、大した影響は受けませんでした。」 「うーん、あの神の声のせいかな。魔法や神がかりには弱いらしい、これも職業柄かね。」 マッコイは自分に手を添えるスポックを見た。 カーク:「スポックには話した。」 無言のスポック。 マッコイ:「そろそろ制御装置を探す※19時間じゃないのか。」 頭を押さえる。 カーク:「もう起きて大丈夫かね。」 「なーに、心配いらんよ。」 スポック:「船長、宇宙艦隊の規約※20に従えばこれが宇宙船であることを住民に知らせるのは違法でしょ?」 カーク:「そうだな、住民がそれを知れば動揺するかもしれん。しかし全滅するよりマシだろ。」 「それはそうです。」 「ダラン5 の住民のこともある。」 「その通りです。」 マッコイ:「おい、誰か御客らしいぞ。」※21 ヨナダ人の老人※22が入ってきた。辺りを見て礼をする。 容器から何かを取り出し、渡していく。「あの力、神の怒りを受けた者はほかにも多くいる。これを、飲めば良くなる。」 マッコイ:「大昔の薬草みたいな味だな。」 「…あんた方、ヨナダの者じゃないな。」 カーク:「そう、外の世界から来た。」 「外とは、どこにあるんじゃね?」 「この上にも、ここ以外の周り全部だ。」 「…やっぱり本当か…」 老人は突然苦しんだような表情を見せる。「もう何年も前に、山に登ってみたんじゃ。掟を破ってな。」 また反応する。 「…なぜ禁じられている。」 痛みに耐える老人。「わからんのじゃ。…だがわしらの習ったことと、みんな違っとった。…この世界はちっぽけで、すぐ空に届いてしまったんじゃよ※23。」 老人は頭を押さえ、倒れた。 カーク:「どうしたんだ。」 マッコイ:「何か、こめかみの皮膚に。」 赤く光る老人のこめかみ。 脈を取るマッコイ。「死んだ。」 カーク:「『世界はちっぽけで、すぐ空に届いた』か。」 スポック:「山に登るのを禁止されていた。」 「それはそうだろう。この老人のように、一目でこの世界の正体がわかる。ちっぽけな岩の塊、実は宇宙船だ。それを知らせまいとしたんだろ。」 ナティラ:「どうしたのです。」 皿を運ぶ女性たち。 「わからん。急に苦しみだして死んだ。」 「番兵を呼んで。」 ナティラは遺体の前にひざまずいた。「許して下さい、年寄りのことですから。…歳を取って分別をなくしたのです、神の御心です。このヨナダの国の掟を破ったり罪を犯した者は、すぐに罰を受けます。」 ナティラは頭を下げ、立ち上がった。「これまで真面目に暮らした者です。手厚く葬るように。」 老人は番兵に運ばれていった。 座るマッコイに近づくナティラ。「加減が良くないのですか、私心配です。」 マッコイ:「いやいや、何ともない。大丈夫です。」 「神のお告げがありました、皆さん御客としてもてなすようにと。」 飲み物を汲むヨナダ人に近づくナティラ。 カーク:「お眼鏡にかなったようだな。」 スポック:「その通りです、あの御婦人はドクターに特別関心をもったようですね。」 マッコイ:「そりゃあ 3人並べてみりゃ当然だろ。」 カーク:「だが女性の趣味ってのは気まぐれだからな。とにかく君がお気に召したんだ、それに君の方もまんざらじゃないんだろ? …君が上手くもちかけて、ナティラと二人きりになればスポックと私はこの船を操作している動力源を探せると思うんだ。」 ナティラが近づいた。「皆さんどうぞお飲み物でも。」 カーク:「…ああ、こりゃどうも。」 ナティラと目が合うマッコイ。 カーク:「それでは新しい友情のために乾杯。」 スポック:「あなた方の世界は非常に興味深いですね。」 ナティラ:「それは光栄です。」 カーク:「そう、ちょっと見物したいんですが。」 「どうぞ、お好きなだけ御覧下さい。」 マッコイは咳をし始めた。 ナティラ:「あなたは残ってお休みになったら。」 マッコイ:「…そうしましょう。」 「…それが一番です。…私が、話し相手に。」 「どうも御親切に。」 「どうぞ、ご自由に人々に会って下さい。」 カーク:「ありがとう。では、ドクターをよろしく御願いします。」 「ご心配なく。できるだけのことはいたします。」 マッコイを見つめるナティラ。 「スポック。」 カークは共に部屋を出た。 差し出された食べ物を見るマッコイ。「いや、結構。」 ナティラ:「お下がり。」 「どうも気になるんですが、神はどうやってあの老人を罰したんです?」 「いえ、それは言えません。」 「あなたたちの話が聞こえているようでしたが。」 「神は全てお見通しなのです。話の内容だけでなく、心の中まで読まれます。…お体の具合が思わしくないようですね?」 「大丈夫。あなたたちの神についてもっと知りたいんですが。」 「あなたにどうしても言っておきたいことが、一目見たときから。……ここでは気持ちを抑えることは、美徳とされないのです。」 「正直でいることは、賢明だと思いますよ。」 「奥さんはいますの?」 マッコイは首を振る。「…いや、いませんが。」 ナティラ:「あなたはわたくしに、魅力を感じますか?」 「もちろん。とても魅力的だ。」 「…では、あなたたちが暮らす外の世界でも真実を大切にしていますか。わたくしたちのように。」 「もちろんです。」 「…ここに残って下さい。…このヨナダに。わたくしの夫として。」 マッコイは立ち上がった。「…だが、知り合ったばかりで。」 ナティラ:「男と女は本来そういうものではありませんか? お互いを知っていくのも喜びですよ。」 「確かに。」 「今の話よく考えといて下さい。」 カークとスポックに注目するヨナダ人たち。 スポック:「住民全部が、宇宙船に乗っている事実を知らないとは不思議ですね。」 カーク:「いつからこれが飛び続けているのか知らないが、それは大昔のことだ。いつか歴史に埋もれて、忘れられたんだろ。」 話すナティラ。「私達は今に時がくれば、新しい世界に行くのです。豊かな緑の、美しい素晴らしい新世界。見る人の目に喜びの涙があふれるような世界です。…あなたも、私と一緒にそこを治めて下さいませんか。」 マッコイ:「…その新世界には、いつ行けるんです。」 「『もうすぐ』。神の声はそう告げています。」 「…そういう希望がこの私にもあったらいいと思いますよ。」 「これまで、そんな寂しい暮らしを。」 「ああ、ずーっとね。」 「今はもう違います。…これからはもう寂しいとは思いません。」 「話さねばならんことがある。」 「何も話す必要はありません。」 「いや、あるんだよ。」 「では話して。あなたの気が済むまで。」 「私は不治の病にかかってるんだ。…あと一年しか生きられない。」 「…あなたに会うまで私の心は空でした。喜びも悲しみも、知らなかった。でも今は、違います。この素晴らしい気持ちをいだけるだけで幸せです。それが一年でも…一日でも。天がそれを許してくれる間は。」 マッコイはナティラに近づき、口づけをした。 スポックは立ち止まった。「船長、例の部屋ですよ。」 前に立つカーク。「問題は、どうやって入るかだ。」 スポック:「何とかわかりそうです。」 通りかかるヨナダ人に注意するよう、スポックに示すカーク。 スポック:「これはファブリン※24文字ですよ、さっき気づきました。」 カーク:「ファブリン。かなり前、新星になって滅びたファブリン星系のか。」 「ええ惑星ファブリンの住民は、ちょうどここのように地下で生活していました。」 「滅びる前にこの宇宙船を造り、別の星に向けて発った。その子孫が、彼らだというわけか。…今だ。」 スポックは文字の前で、ナティラと同じ動作を行った。ドアが開く。 中に入り、全能なる者を見るカーク。「まだ入ったのに気がつかないらしい。…さっきはどうやって感知したのかな。」 スポック:「船長、私の記憶が正しければあのナティラがこの台にひざまずいてから、例の天の声が聞こえたんです。」 「確かにそうだ、調査を続けてくれ。制御装置とここがつながっているのは確かだ、きっと手がかりがあるはずだ。」 全能なる者を見るカーク。 「装置の反応を見る限り、ここは単なる惑星です。…これを造った者が、神として伝承されているのに間違いありません。」 別の石を見るカーク。「この彫刻は、恒星とその惑星を表したものだな。」 中央の光から線が延び、周りの円とつながっている。 スポック:「惑星は 8個、ファブリン星系もそうでした。」 カーク:「では、やっぱりここにいるのはファブリン人の子孫か…」 「そうです、疑問の余地はありませんね。一万年も、この小惑星船でさまよっているんです。」 ドアの音がし、2人は隠れた。 独りで入るナティラ。台にひざまずくと辺りが明るくなる。 全能なる者が反応した。『誰だ。』 ナティラ:「私です、ナティラです。」 『話すがよい。』 「聖なる書物には、神に仕える者だけが結婚の相手を選べると書いてありました。」 『その通りだ。』 「外の世界から 3人、ここを訪れました。その中にマッコイという者がいます。彼をここに留めたいのです。…私の夫として。」 『相手は承知したのか。』 「話はしました、でもまだ返事をもらっていません。」 『まずこの世界の者となり、神を敬い絶対服従を誓わねば※25認めるわけにはいかん。』 「そのことはよく申し聞かせます。」 『もし彼が同意すれば結婚を認める。…この世界の法と掟をよく教えてやるがいい。神と同胞に逆らわぬよう、教えるのだ。』 「わかりました。そういたします。」 礼をするナティラ。 ナティラはドアの前で手を広げ、開けた。 その時、カークとスポックに電撃が走った。止まらないショック。 ナティラは急いで台座に戻った。 全能なる者:『誰だ、無断で入ったのは。』 ナティラ:「さっきお話しした、2人の訪問者です。」 『マッコイではないな。』 「違います。」 『その 2人は禁を破った。処置はわかっているな。』 「はい。」 番兵たちが駆け込む。 ナティラ:「神の手を離れたら、捕らえるのだ。愚か者め。…我々を侮って神聖な部屋を汚し、思いのままにできると思ったのか。」 |
※19: 吹き替えでは「船に戻る」 ※20: 今回の「艦隊の誓い (Prime Directive)」の訳語 ※21: 旧吹き替えでは、このセリフは訳されていません ※22: Old Man (ジョン・ローマー Jon Lormer TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」のドクター・セオドア・ハスキンズ (Dr. Theodore Haskins)、第22話 "The Return of the Archons" 「ベータ・スリーの独裁者」のテイマー (Tamar) 役。1986年3月に死去) ローマー、ニモイ、バレットの共演は "The Cage" (と、その映像を使った第16話 "The Menagerie" 「タロス星の幻怪人」) 以来。ハスキンズが現れるシーンと同じ音楽です。声:石森達幸 ※23: "For the world is hollow and I have touched the sky." 原題 ※24: Fabrini 原語では星系名はファブリナ (Fabrina)。TNG "Conspiracy" での宇宙艦隊本部の星図内にもあるそうですが、画面上では読み取れません。もしかすると「新世界」の方の位置かもしれません ※25: 原語では「従順の印を身につけねば」 |
壁画の前で祈りを捧げているナティラ。 マッコイがナティラの部屋に入った。「私の友人をどうするつもりだ。」 ナティラ:「2人は神託の間を汚しました。」 「その罰は死刑か。」 「そうです。…私達には選択の余地はありません。あの 2人は私の信頼を裏切りました。」 「知らないでやったことなんだ。」 「友好を求めて来たはずです。」 「頼む、2人を帰してやってくれ。」 「できません。」 「…私のために。」 ナティラの肩をつかむマッコイ。「心を決めたよ。ここに残る、永久に。」 ナティラは抱きついた。「ああ。」 マッコイ:「ナティラ。…あの 2人がやったことは、必要だと信じたためだ。…このまま帰してもヨナダの害にはならん。…これから初めて幸せをつかもうというとき、友達の死でそれを曇らせたくない。この気持ちわかってくれるだろ。」 「…ええ。…わかりました。あの 2人は釈放します。二人の将来と、幸せのために。」 ナティラはマッコイの手にキスした。 地表。 カークとスポックが待っているところへ、筒を出てマッコイが近づいた。戻る番兵。 マッコイはコミュニケーターを 2人に渡した。 カーク:「一緒に戻るんだろ。」 マッコイ:「いや、残る。」 「これは惑星じゃなく船なんだ。しかもダラン5 と衝突する。」 「こっちも将来の限られた身なんだよ、カーク。」 「よーしわかった、船長として帰還を命じる。」 「悪いが断る。」 「……この船のコースを変えられない場合、わかってるな。衝突を避けるため爆破する。」 「何があろうとこの船の人々と運命を共にする。もう決めたんだ。」 スポック:「その決意は論理に敵っていませんね。」 「君にはそう見えるだろうが、果たしてそうかな。…とにかく私はナティラに約束した。」 カーク:「結婚することも?」 「そうだ。…この気持ちはわからんだろ。」 カークはコミュニケーターを開いた。「エンタープライズ。」 スコット:『スコットです。』 「これより船に戻る、転送してくれ。」 『わかりました。』 「スポックと私の 2名を、ただちに転送するんだ※26。」 『ドクターはどうするんですか。』 後ずさりして 2人から離れるマッコイ。 カーク:「彼は残る、以上だ。」 転送されるカークとスポック。それを見つめるマッコイ。 話す全能なる者。『ヨナダの国民となるためには従順の印※27を身につけねばならぬ。そなたはこれに、同意するか。』 マッコイ:「…します。」 『ではすぐそれを。』 ナティラは礼をした。左手には小さな道具を持っている。「ではこれから、誓いの言葉を述べるのです。」 マッコイ:「誓います。」 ナティラは道具をマッコイのこめかみに当てた。 ナティラ:「これであなたは、ヨナダの民です。」 ナティラの手を取るマッコイ。 ナティラ:「共に愛と真心を捧げ、麗しの日々を過ごせますように。」 マッコイ:「これより身も一つ。」 「心も一つ。」 「命も。」 二人はキスした。 ナティラ:「終わりました。ご命令のままに。神と身を一つに結びます。」 全能なる者:『ヨナダの民として知るべきことを教えよ。』 うなずくナティラ。立ち上がるマッコイ。 部屋が暗くなった。ファブリン星系の図が描かれている石に近づく二人。 ナティラが惑星に触れると、石碑の上部が開いた。 中には文字の書かれた本が置いてある。 ナティラ:「これは、民族の教え※28です。約束の新世界に着いたとき開いて読むように、神が贈られたのです。」 マッコイ:「みんなはこの中身を知ってるのか。」 「この世界の部分だけです。それと、いつか訪れる新しい世界のことと。」 「それで、なぜ新世界に行くのかその理由は知ってるのかね?」 「いいえ、知りません。」 「それを知りたいとは思わないか?」 「いいえ、その時がくれば全て明らかになるはずです。それだけで十分です。」 マッコイを見るナティラ。 エンタープライズ。 『航星日誌、宇宙暦 5476.4※29。惑星船ヨナダは依然としてダラン5 に向かい、我々は平行コースを保った。コース変更の失敗とドクターの病状を、艦隊司令部に報告することは非常に苦しかった。』 モニターを見るカーク。 通信相手の提督※30。『君の希望には十分同情する。しかし任務の遂行が第一であることは、認識していると思う。』 カーク:「ああ、問題はそこなんです。」 『私の言葉は明確ではなかったようだ。こう言い直そう。…以後君は惑星船ヨナダに関し、何ら責任を負う必要はない。その処置は艦隊司令部が行う。』 コンピューターを切るカーク。 スポック:「そろそろ出発しないと。」 カーク:「ああ、命令だからな。」 ウフーラの呼び出し。『船長、船長どうぞ。』 カーク:「カークだ。」 『ドクターより緊急連絡が入りました。』 「つないでくれ。」 マッコイ:『カーク。』 「ああ、ドクター。」 『コースを変えさせる手がかりをつかんだ。』 「制御装置を見つけたのか。」 部屋でコミュニケーターを持っているマッコイ。「そうじゃないが、この船を建造した者が残した記録があるんだ。その本…」 こめかみを押さえた。「…それを手に入れれば、スポックが…読めると思うんだ。」 カーク:「どこにあるんだ。」 マッコイは声を上げ、倒れた。 カーク:「おい、どうした。ドクター、どうしたんだ!」 ナティラが部屋に入る。 カーク:『ドクター、聞いてるのか。返事してくれ。…ドクター、大丈夫か。おい、しっかりするんだ!』 光るマッコイのこめかみ。 |
※26: カークはコミュニケーターを持った手を下ろしていますが、すぐ後に上げた状態のアップが挟まります ※27: Instrument of Obedience ※28: Book of the People TOS第49話 "A Piece of the Action" 「宇宙犯罪シンジケート」の「20年代のシカゴ・ギャング」のプロップを使い回し ※29: 吹き替えでは「0405.3069」で、なぜか最初の数字 (脚注※) と変わっていません ※30: 名前は Admiral Westervliet (バイロン・モロー Byron Morrow 2006年5月に死去) ですが、言及されていません。「ウェスターヴリエット司令官」「ウエスターヴリエット司令官」としている日本語資料もあります。TOS第34話 "Amok Time" 「バルカン星人の秘密」のコマック提督 (Admiral Komack) と同じ俳優が演じているため、同一視してよいかもしれません。声:嶋俊介、TOS カイル、ムベンガ、旧ST5 マッコイなど |
倒れたままのマッコイの手を取るナティラ。そこへカークとスポックが転送されてきた。 ナティラ:「とうとう友達まで殺したのね、今度こそ容赦しない!」 カーク:「診てくれ。」 「2人とも死刑よ、この人が助けてやったのにまた背いて。今度こそ許さない!」 ナティラを押さえるカーク。「スポック、ドクターを頼む。」 道具※31を使うスポック。こめかみから装置を除去した。 うなずくカーク。 ナティラ:「ああ。」 スポックはトリコーダーを使う。 ナティラ:「あの人は掟に背いた。…あなた方が誓いを、破らせたのよ。」 カーク:「背いたのは、神の声が間違っているからだ。」 マッコイが目を覚ました。「ああ…」 寄り添うナティラ。 カーク:「ドクター。さっき言った本のこと、覚えてるか? どこにあるんだ。」 ナティラ:「教えては駄目よ。」 マッコイ:「本は、神託の間だ。」 「手は触れさせません、絶対に。」 外へ向かうナティラ。「番兵、早く! 誰か!」 カークが押さえた。「落ち着いて。頭を冷やしてよく聞くんだ。頼むから一分だけ待ってくれ。一分でいい。ナティラ。今から話すことを、嘘だと思ったらすぐ番兵を呼んでいい。どんな罰でも黙って受ける。」 ナティラ:「…一体どんな話です。」 「今から話すことは、絶対に本当のことなんだ。」 「ほんとのこと? 外の世界のでしょ…」 「そうだ、我々のでも君の世界でも真実だ。」 「神のお告げを信じないような者が、どうしてこの世界のことがわかるんです。」 「それがはっきりわかるんだ。…本当なんだよ。…一万年ほど昔、太陽が衰えて一つの世界が滅びかけた。神託の間の彫刻にある。」 「あれは今ヨナダのいる世界です。」 「違う。君たちの先祖の世界だ。ここを造った神とはその人々だ。」 「…そんなバカなこと!」 「ほんとだ、待ってくれ。聞くんだ。…その人々は自分たちの世界が滅びると知ったとき…一つの大きな船を造り、それに選んだ者を乗せこの宇宙へ飛び立たせたんだ。種族を生き延びさせるために。」 「そんな話を信じると思うの。…ヨナダが船だなんて。」 「本当だ。」 「太陽もちゃんとあります、夜になると星に舞う星も。」 「違う。君が今住んでいる世界は、船に過ぎないんだ。…先祖の人々は、この船が別の新しい世界に着くことを願って造ったんだ。」 こめかみを押さえるナティラ。「…ではどうして、その本当のことが今まで隠されていたんです。」 カーク:「…今この船も危険にさらされている。すぐ修正しないと、船はほかの世界と衝突して何億もの人々が死ぬんだ。」 「なぜ真実は隠されたの。神はどうして私達に知らせなかったの。嘘よ、嘘です。…今の話は嘘よ。神の言葉に間違いないわ、信じています。」 「そのこめかみに埋めてある物を、取らせてくれないか。それは危ない。…ナティラ。」 手をつかむカーク。 ナティラは部屋を出て行った。 カーク:「信用したと思うか。」 ドアを開けるスポック。通りかかったヨナダ人が挨拶する。 スポックはドアを閉めた。「何かは感じたみたいですね、番兵は呼ばなかった。」 全能なる者は尋ねた。『不信心者の言葉に耳を傾けたな。』 ナティラ:「はい。聞きました。」 『それは立派な罪だ。警告の痛みは感じたな。』 「感じました。」 『なぜそれでも聞いたのだ。』 「真実だと言ったからです。」 『彼らの真実だ。』 「真実は皆、真実でしょ。」 こめかみに触れるナティラ。 『ヨナダの真実のみ知ればいいのだ。そのほかに真実はない。不従順を悔いるがいい。』 「全ての真実を知らねばなりません!」 ナティラは倒れた。 カークたちが神託の間に入る。ナティラを支えるマッコイ。 ナティラ:「ああ、ああ。…お友達からこの世界のことを聞きました。」 マッコイ:「本当のことなんだ。」 「私、今は信じます。…あなたのことも。神は真実を隠していたんです。…今わかりました。私は、夫の言葉を信じます。…ああ。」 マッコイはスポックから道具を受け取り、ナティラのこめかみに当てた。 取り出された装置を見せる。意識を失うナティラ。 カーク:「大丈夫か。」 マッコイ:「治るだろう、私がついてる。本は石碑の中だ。」 全能なる者:『神聖不可侵の物だ。』 カーク:「こうするのも、ヨナダの人々を救うためだ。」 『神を信じぬ者が、それに触れることは許さん。』 「別に無礼なことをするつもりじゃない。これを見るのは神の意思に沿うことなんだ。」 『駄目だ、神を汚す行為だ。…必ず神罰が下るぞ!』 大きな音と共に、風が巻き起こった。壁面のファブリン文字の一部が、赤く光る。 部屋全体が赤くなる※32。石碑に近づくカーク。 トリコーダーを見るスポック。「気温が上がっています、現在 42度※33です。」 カーク:「ドクター、どうやって開けるんだ。」 「気温、45度になりました。」 マッコイ:「左手にある星の下の 3つを押すんだ、同時に強く。」 言われたとおりにするカーク。 スポック:「現在 49度!」 カークは本を手にし、スポックに渡す。「ああ、設計書もあるはずだ。…索引は。」 スポック:「あります。」 「急いでくれ。」 熱し続けられる室内。 スポックは星系の図が描かれているページを見る。「祭壇のところです。…中央部を、開くまで押せと書いてあります。」 押すカーク。すると祭壇が手前に出てきた。 奥の穴を通して中に入るスポック。機械音が響く。 中には様々な高度な設備であふれていた。全て自動的に動いている。 操作するスポック。 マッコイに近づくカーク。「外へ連れ出した方がいい。」 スポック:「熱源のスイッチを切りました!」 パネルが戻り、元の部屋に戻っていく。 マッコイ:「もう心配いらんよ。」 ナティラは意識を取り戻した。奥へ向かうカーク。 マッコイ:「もう神の罰は受けなくていいんだ。」 ナティラ:「あなたの、お友達がやめさせたの。」 「そうだ。」 「じゃあこれから、この船を新しい世界に向けてくれるのね。」 「そうだよ。」 「…よかったわ。」 コンピューターを操作するカーク。「性能も大したもんだ、エンタープライズとそう変わらん。」 スポック:「8本のチューブの内、どれかは弱くなってるようです。」 「それでコースが狂った。」 「ええ。エンジンをチェックしてきます。」 スポックは階段※34を上る。「…問題ありません、簡単に修正できそうです。」 マッコイ:「さあ、行こう。」 ナティラ:「いいえ。」 「もう心配ないよ。」 「罰を受けるのは少しも怖くありません。」 「じゃあ、一緒に来たって構わない…」 「駄目です、あなたとは行けません。…これは定めなのです。このヨナダを造った人々の、意図がわかりました。それに従います。」 「じゃああくまでここに、残るんだね?」 「ええ、自分の意思で。…それが私の務めだと思います。」 「…じゃあ私も残る。」 「このまま残って、ただ死ぬと言うの。いけないわ。…これからの一年を、もっと価値のあるように生きなければ。」 「今は前よりも、生きる価値がわかったんだ。これから全宇宙を回って治療法を探したい。…君も来て欲しいんだ。」 「ここが、私の世界です。…あなた方の尊い任務のおかげで、人々は救われました。それを見捨てて行けません。」 ナティラはマッコイのあごに触れた。「でもいつの日かそれが許されれば…きっと巡り会えます。この宇宙で。」 抱きつく。 戻ってくるスポック。「船長、もうコースを修正してもよさそうです。」 カーク:「よし。……コース変更、384※35。」 「誘導制御装置正常。これでもう自動制御に切り換えても、大丈夫でしょう。」 「よーし、コースは安定してるな。」 外へ向かうカーク。 「船長、情報ファイルです。ファブリンの、全ての文化を保存してあります。目的地に着いたとき、役に立つ知識の結集ですよ。ことに、医学に関するものが多い。かなり進歩していたようですね。」 スポックはトリコーダーを使う。 エンタープライズ。 医療室のベッドで横になっているマッコイ。スポックはトリコーダーを使い、チャペルにハイポスプレーを指示する。 モニターを見るチャペル。「素晴らしいですわ、白血球数は正常に戻りました。」 声を上げ、目を開くマッコイ。 スポック:「ヘモグロビンも、正常に戻りました。…ということは各細胞に酸素の供給が元通りスムーズに行われるようになったということで、病気は治ったということです。」 マッコイ:「ありがとう、ドクター・スポック※36。…ファブリンの記録をよく見つけてくれたな?」 カーク:「ところでドクター、ファブリンと言えばその子孫が求めて来た新世界に、あと 390日で到達することがわかった。何ならその時期を見計らって、その空域に行ってもいい。…多分君も今度のことで礼を言いたいと思うんだがね?」 マッコイは微笑んだ。 ヨナダから離れるエンタープライズ。 |
※31: リーダーチューブ (reader tube) という名称だそうです ※32: 予告編では、赤くなる映像効果は入っていません ※33: 原語では以降順に 111度、115度、120度。吹き替えでは華氏と見なして、摂氏に換算しているようです (正確には順に 43.9度、46.1度、48.9度) ※34: TOS "The Paradise Syndrome" のセットと同じ ※35: 原語では「予定のコースに戻った」 ※36: 原語では普通に「ミスター・スポック」 |
感想など
古典SF的な「宇宙の箱船」&いつものコンピューター支配が題材のエピソード。今回も第3シーズンらしく中心となる一人の女性が登場しますが、変わっているのは御相手がカークではなくマッコイということです。正史 (TAS を除く) では描かれていない、「過去に辛い離婚を経験 (娘ジョアンナがいる)」という、ある意味裏設定を生かしたものとも言えます。最後に全て明らかになった途端に、ナティラをエンタープライズに誘おうとした意図がよくわかりませんが…。当初はドクターではなく、スコッティが病気になる予定だったそうです。 セリフをそのまま使った原題は、もちろん史上最長。監督の Tony Leader は、ほかに「連邦保安官」「ミステリーゾーン」「ローハイド」「バージニアン」などに関わりました。TOS 自体が終わったために一年後に再訪することはありませんでしたが、小説「栄光の旅路」などでは今回の件が触れられています。 |
第64話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」 | 第68話 "Wink of an Eye" 「惑星スカロスの高速人間」 |