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TOS エピソードガイド
第16話「タロス星の幻怪人」(前)
The Menagerie, Part I

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・イントロダクション
※1※2惑星軌道上のエンタープライズ。
地表には基地があり、女性の士官がいる。
音が響き、カーク、スポック、マッコイが転送されてきた。
士官:「第11宇宙基地※3へようこそ。急にコースを変更しておいでになったことを准将は不思議に思ってらっしゃいます。」
カーク:「……急遽こちらへ向かうよう緊急宇宙連絡を受けたからだが?」
「連絡をした事実はありません。」
後をついていく 3人。

准将のメンデス※4。「理解に苦しむ出来事だな。」
カーク:「ミスター・スポックが、当基地の連絡を受信しました。エンタープライズ※5の前船長、パイク艦隊大佐※6が我々の寄港を要請しているとの内容でした。」
「考えられん。」
「副船長が受信したと主張している限り、私は信用します。だから…」
「わしは何も誰かを疑ってるのではなく、それはありえないことだと言ってるんだ。」
「なぜ。」
「知らんのか? パイク大佐がどうなったのか、本当に知らんのか。亜空間通信※7で噂に上っているはずだが。…辛いことだが本人を見てもらおう。2階の治療セクションにいる。」
部屋を出る 4人。

廊下の壁には、「静粛に/集中治療エリア」という表示がある。
メンデス:「前に会ったことはあるか?」
カーク:「彼が艦隊大佐※6に昇進した時に会いました。」
「君と同年配でしかもハンサム、活動的な男だよ。」
「私は彼の後任で、このスポックは数年彼の下にいました。」
スポック:「計11年 4ヶ月と 5日※8です。」
マッコイ:「大佐に何があったんですか。」
メンデス:「古い Jクラス※9タイプの練習船で、視察旅行に出かけた時、制御盤が破裂して…」
「…デルタ光線※10が。」
「…彼は飛び込んで、生きている子供たちを救い出した。ショックを受けないように覚悟したまえ。」
ドアを開け、部屋の中に入る。
メンデス:「パイク大佐。」
窓の方を向いていた機械が、動き出した。こちらを向く。
パイク※11は胸の上からだけ姿を見せているが、後の身体は全て機械の中だ。
顔には今も、生々しい傷跡が見える。
うつろな目でこちらを見るパイク。
メンデス:「大佐。彼らを覚えていると思うが、君に会いに来たんだ。」
高い音が 2回響いた。機械のライトが点く。
メンデス:「2回はノーの意味だ。……彼らだけは覚えていると思ったが。」
パイク:「(ノー)」
「冷酷な現実だ。」
カーク:「パイク。もし私にできることがあれば…」
パイク:「(ノー)」
スポック:「パイク大佐。…私は残ってもいいですか?」
今度は一度だけ鳴った。
スポック以外の 3人は出ていく。
近づくスポック。「なぜ来たのかは御存知でしょ。…フルスピードでわずか 6日のところです。慎重に計画しました。」
パイク:「(ノー)」
「……大佐の命令に背いたことは一度もありませんが…今回だけは背きます。」
「(ノー)」
「そうです。これは反逆であり暴動でありますが……私はしなければなりません。」
「(ノー)」
「必ずやり遂げます。」
「(ノー)」


※1: このエピソードは 1967年度ヒューゴー賞 (映像部門) を受賞しました。TOS ではほかに第28話 "The City on the Edge of Forever" 「危険な過去への旅」も受賞しており、スタートレック全体では TNG の 2話を含めて計4回となります

※2: 脚本はジーン・ロッデンベリー自らによります ("The Cage" 「歪んだ楽園」も)

※3: Starbase 11
前話 "Court Martial" 「宇宙軍法会議」より。吹き替えでは「宇宙基地 N11」

※4: ジョゼ・I・メンデス准将 Commodore Jose I. Mendez
(マラチ・スローン Malachi Throne TOS第1話 "The Cage" の飼育係 (The Keeper) の声、TNG第107・108話 "Unification, Part I and II" 「潜入! ロミュラン帝国」のロミュラン、パーデック評議員 (Senator Pardek) 役) 名のジョゼはカークが呼ぶシーンがありますが、訳出されていません。ミドルネームのイニシャルは後編で言及。"Court Martial" では第11宇宙基地の司令官はストーン准将だったため、その後で交代したものと思われます。タロス人番人の声は、このエピソードではヴィク・ペリンによって吹き替えし直されています。これはメンデスと被るためですが、LD に収録されている "The Cage" では「タロス星の幻怪人」の映像も使って修復されたため、番人の声がスローンとペリンで何度も入れ替わっています。声:島宇志夫、DVD・完全版ビデオ補完では福田信昭

※5: 吹き替えでは「エンタープライズ

※6: fleet captain
直訳すればこうなりますが、現在の米国海軍には存在しない階級のようです。一種の「名誉大佐」のようなものかもしれません。吹き替えでは単に「大佐」のみ

※7: 吹き替えでは「宇宙基地」

※8: このことから、パイクはファイブイヤー・ミッションを 2度行った可能性があります

※9: Jクラス宇宙船 Class-J starship
ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」ではホライゾンが Jクラスと言及されましたが、貨物船なので無関係と思われます (ENT第46話 "Horizon" 「兄弟の地平」で登場)

※10: delta rays
エンサイクロペディアではデルタ放射線 (デルタ線、delta radiation) と同一視されています。初言及

※11: パイク船長 (負傷) Captain Pike (Injured)
(ショーン・ケニー Sean Kenny TOS第19話 "Arena" 「怪獣ゴーンとの対決」などのデュパル大尉 (Lieutenant DePaul) 役) 元々 "The Cage" でパイクを演じたジェフリー・ハンター (注釈※33 参照) は存命中でしたが、セリフなしの役に多額の出演料を払う余裕もなく、別キャストになりました

・本編
メンデスのオフィス。
カーク:「繰り返しますが、スポックは当基地より緊急連絡を受け、その事実を明確に記録しています。証拠はそれしかありません。」
メンデス:「ところがレコードテープによればだ、ここから送信した事実はなく、君たちが受信した事実もない。」
「何者かがレコードテープに手を加えたに違いありません…」
「ハ。」
「コンピューターの専門家なら、テープに変更を加え記録を自由に操ることができます…」
「事実を見たまえ、事実を。スポックの前船長が重傷を負って当基地で治療を受け、しかも寄港を要請したという連絡を受けたのは問題のそのスポック一人だというのは…」
「スポックが大佐に会いたければ、私に申請し許可をうるはずです!」
「当然そうあるべきだ。」
「……誰が何のために仕組んだのか。現在パトロール中の宇宙には、何の問題もないし。外敵の脅威もない。」
コンソールをつけるメンデス。「コンピューターセンター。」

技師が応えた。「はい、ハンボルト主任※12です。」
メンデス:『問題のレコードテープをもう一度チェックしたか。』
ハンボルト:「しました。」
『我々の知らない間にメッセージが発信された可能性は?』
「全くありません、あらゆる可能性をチェックしました。」
『よろしい。繰り返しチェックしたまえ。以上だ。』
ハンボルトが席を立った。その時、スポックが姿を現す。
見つからないように動き、別の技師の後ろへ回る。
ヴァルカン首つかみで倒してしまった。
持っていたチップ型のテープを置き、コンピューターの内部を開ける。

カークたちを出迎えた士官がやってくる。
メンデス:「ミス・パイパー※13を紹介したかな。こちらはジム・カーク船長だ。」
パイパー:「一目お顔を拝見してわかりましたわ? お友達のヘレン・ヨハンソン大尉※14に詳しくうかがってましたので。」
「ヘレン? 私を?」
「彼女は船長に興味をもってます。」
微笑むカーク。パイパーも笑みを返す。
メンデス:「何か報告することがあるんだろ?」
テープを渡すパイパー。「はい、すみません。調査の結果ほとんど新事実は得られませんでした。まず、ミスター・スポックはパイク大佐の下で任務に就いていた期間中、非常に忠実であり前船長に対しては…」
カーク:「ミス・パイパー。ヴァルカン人は、生きている限り上官に対して常に忠実であり、私に対しても同様だ。」
「でも全ての可能性を考えなければなりません。パイク大佐が自分で送信できないのは明らかで、入院なさって以来 24時間厳重な保護下にあります。」
メンデス:「全く動けない状態だ。あの車椅子は彼の脳波に連動するように造られていて、もちろん少しは…前後に、動かせるだろうが。」
「イエスかノーかはランプで示します。」
「それが全てだ。それ以上のことは何一つできん。…心が異常なく活動を続けているが、身体は植物のように何の反応も示さないがな。機械で生命を保つ。バッテリー人間だよ。」
カーク:「じゃあ誰かに送信を頼むことも、不可能なわけですか。」

コンピューターセンターで、作業を続けるスポック。
音声が聞こえてきた。『宇宙基地司令室、宇宙基地司令室…』 何度も繰り返される。『宇宙基地司令室から、エンタープライズへ。速やかに行動に移れるように待機。』

エンタープライズ。
報告するウフーラ。「宇宙基地司令室から連絡です。」
通信が流れた。『宇宙基地司令室から、エンタープライズへ。速やかに行動に移れるように待機。命令は、船のコンピューターに直接記録するように。これは最高秘密指令である。』
応えるハンセン※15大尉。「記録準備できました。…確認を要請しろ。」
ウフーラ:「エンタープライズから宇宙基地へ。確認を要請します。」

戻ってきたハンボルト。「ここは立ち入り禁止です、何をなさってるんですか。」
スポック:「司令部の許可を得てきた!」
「誰が出したんです、連絡はきてません。」 割り込もうとするハンボルト。「回線を変えましたね!」
ハンボルトを押しのけるスポック。
ハンボルトも抵抗する。「このテープは何ですか!」
ウフーラの声が届く。『エンタープライズから宇宙基地へ。命令を受信。船長の、命令確認を要請します。』
何度もスポックを殴るハンボルト。しかし効果はなく、逆にヴァルカン首つかみで倒されてしまった。

繰り返すウフーラ。「宇宙基地どうぞ。カーク船長どうぞ。」

スポックが操作すると、カークの声が流れた。『こちらカーク船長。作戦命令を確認した。』

返答するハンセン。「船長、ハンセンです。命令は全て、直接コンピューターに記録されました。従って、行き先はわからないので行動に移れません。」

素早く別のテープを入れるスポック。再びカークの声だ。『ミスター・スポックに代わる。彼の指示で動きたまえ。以上。』
スポックはテープを抜き、通信機のスイッチを入れた。「…スポックだ。今回の作戦に関しては、コンピューターが舵を取りコースは自動的に計算されセットされる。この件について乗員および宇宙基地関係者に話してはならない。わかったか。」

ハンセン:「わかりました。」

スポック:「待機しろ。一時間後に軌道を離れる。」 階段を上る。

モニターでパイクの様子を見ていたカーク。
パイクはライトの明滅を繰り返している。
マッコイが戻ってきた。
カーク:「ノーばかりだ。何がノーだろう。」
マッコイ:「さっき話しかけてみたんだが、可哀想に彼は気ばかり焦って。」
「彼の寿命は。」
「私達と変わりないな。しかしあれでは悲劇だ。現代の医学でもその動きを明確に捉えられないものがある。頭脳だよ。頭脳こそ生命そのものなんだ。彼は私達と同じように考え、愛し、望み、そして夢見ることができるが、それを表現して他人に伝えることができないんだ。」
「…まだノーと言い続けている。」
「何がノーなんだ。その答えを知るためには何週間も彼と問答しなきゃならんだろう。」
「ドクター。…これはスポックと関係ないだろうか。」
「…何のことかわからんが。」
「つまりだ。…本当に連絡を受けたのか。……どちらか一つだ。誰かが密かに要請を送信したのか、船の誰かが受信したと嘘をついたか。もしそれがスポックだとしたら。」
「スポックのことは私達が一番よく知ってる。彼がヴァルカン人であることは取りも直さず絶対に嘘をつけないということだ。」
「しかし半分は地球人だ。」
「その半分は明らかに劣性だね? その証拠に彼は私達地球人の行動や考えを非難し非常に嫌ってるじゃないか。」
「誰かが私に反抗し欺いていることは事実だ。誰か知らんが必ず突き止める。君もだ! 君にそれができる技術があると思えば当然容疑者に入るぞ?」
「しかしスポックが嘘を報告するなんて…」
「誰かが嘘を報告したことは既に明らかな事実なんだ。それをどう説明する。」
「できんね。だがほかの人間を疑うのなら、話はわかる。この私だって嘘はつくだろうしそれは君も同じだ。しかしスポックは違う。ありえない!」
通信が入る。『ドクター・マッコイ、転送ルームへ出頭して下さい。至急転送ルームへ出頭して下さい。』
マッコイ:「どうしたんだ。」
『エンタープライズへ帰還して下さい、緊急事態です。』
「何があった。病気か、怪我か何なんだ。」
『緊急帰還を乞う連絡があっただけです。』
ため息をつくマッコイ。「多分誰か、指にトゲでも刺したんだろう。とにかく、帰って後で知らせる。」 オフィスを出ていく。

持っている書類を見るカーク。「『宇宙艦隊司令部専用』。」 タイトルはタロス4号星※16と書いてある。
メンデス:「そうだ。この機会に是非それを読んで欲しい。その惑星について何か知ってるか。」
パイパーはパイクの様子をモニターしている。
カーク:「船長として一応は。宇宙指令 7号※17により、いかなる宇宙船も、いかなる事態を問わずタロス4番星を訪れてはならない。」
メンデス:「もしそれを破れば理由を問わず死刑あるのみだ。わけを知ってるのは司令部だけで、このファイルもそれには触れてない。」 ファイルを開封する。「これまでにそこを訪れた船はただの一隻だけだ。」
中の紙にも、トップシークレットと書かれてある。
カーク:「…エンタープライズ。…船長はクリストファー・パイク大佐。」
メンデス:「混血のスポックという男が科学主任だった。」
パイパー:「准将※18!」 パイクの姿がない。「パイク大佐が消えました!」
連絡するメンデス。「…メンデスだ、どうした?」
士官:『パトロール船エンタープライズが軌道を離れます。こちらの送信には応答しません。』


※12: Chief Humbolt
(ジョージ・サワヤ George Sawaya TOS第27話 "Errand of Mercy" 「クリンゴン帝国の侵略」の第2兵士 (Second Soldier) 役) 肩書きは訳出されていません。声:矢田耕司

※13: Miss Piper
(ジュリー・パリシュ Julie Parrish 2003年10月に死去)

※14: Lieutenant Helen Johansson
姓のヨハンソンは訳出されておらず、「ヘレン大尉」と名に階級をつけています

※15: ミスター・ハンセン Mr. Hansen
(ハーガン・ベッグス Hagen Beggs) 前話 "Court Martial" 「宇宙軍法会議」に引き続き登場。声:井上弦太郎、TOS チェコフなど

※16: タロス4番星 Talos IV

※17: 一般命令第7条 General Order 7
"No vessel under any condition, emergency or otherwise, is to visit Talos IV." 宇宙艦隊一般命令・規則 (Starfleet General orders and Regulations) の一つ。一般命令の第1条が、艦隊の誓い (Prime Directive) として知られる不干渉の原則です。第7条は現在まで判明している中で、第1条に次いで最も上位の条文となります。一般命令は後で「(宇宙艦隊) 法令」とも訳されています

※18: 吹き替えでは「司令官」

惑星を離れるエンタープライズ。
ハンセン:「軌道を離れました。…ナビゲーターが座っていないと変ですねえ。」
スポック:「目的地はコンピューターに記録されている。」
スクリーンに映る宇宙空間。
ウフーラ:「基地が応答を要請しています。」
スポック:「当分通信は一切禁止だ!」 船長席に座る。「こちら副船長スポック。本日づけ宇宙艦隊指令により、私は一時的にエンタープライズの指揮を執る。目的地は極秘であるが、任務は比較的単純である。」
マッコイがブリッジに来た。

廊下に流れるスポックの声。『宇宙基地司令部は、カーク船長に我々が帰還するまで休養を取るように命令した。』

スポック:「船長は諸君に、全面的な服従を望んでいる。スポック以上。」
マッコイ:「どういうことだね、これは。船長が休養を命じられたなんて聞いたこともないし、船には誰も患者などいないじゃないか。私を呼んだのは誰だ。」
「呼んだ人間は見当たりませんか。」
「そうだ。」
「呼んだ人間よりも問題の患者を紹介しましょう。私と一緒に来て下さい。」
ターボリフトに入るスポック。マッコイも続く。

2人が部屋に入ると、そこにはパイクがいた。
マッコイ:「…何のつもりだ、これは。大佐、大丈夫ですか。まだノーを言い続けてるが…」
スポック:「ドクター、ちょっと待って下さい?」 テープをセットする。
カークの声が流れる。『カークからドクターへ。誤解のないようにこのメッセージを記録する。命令として伝えるのは心苦しいが、パイク大佐にはいかなる質問もしてはならない。スポックの指示に従って、パイク大佐の健康管理に専念するように。以上。』
まだノーと言い続けるパイク。

ブリッジに戻るスポック。
ハンセン:「物体が、我々を追跡中。サイズから見ると、宇宙基地連絡艇と思われます。」 スクリーンでは見えない。「引き返しましょうか。」
スポック:「あくまでも現状維持だ!」
「……いや、しかしこのスピードでは向こうは追いつけません。エンタープライズに用件があるのか聞いて…」
「私の命令は聞いたはずだ。通信は禁止する。」

※19エンタープライズの遥か後を、シャトルが進んでいた。
通信するメンデス。「連絡艇 1号よりエンタープライズへ、どうぞ。エンタープライズ、メンデス准将とカーク船長だ。もし聞こえるなら応答を命ずる。あらゆる緊急周波を使ってやってみよう。」
カーク:「やはりタロス4番星に向かってますね。」
「追いつけそうもない。燃料が 63.3 に下がった。ここで戻らなければ、基地までの燃料がなくなってしまうぞ。」
「…連絡艇からエンタープライズどうぞ? 連絡艇からエンタープライズどうぞ? …エンタープライズ、応答しろ!」

エンタープライズ。
操作するスポック。
コンピューター※20:『コンピューター作動。』
スポック:「探査装置でエンタープライズを追ってくる物体を調査しろ。」
『…分析完了、物体は「F」クラスの連絡艇※21で、船体はジュラニウム※22、エンジンパワーはイオン。』
「もういい。その連絡艇が基地まで戻れる燃料の限界までどれくらいだ。」
『…分析完了。基地に戻れる、燃料の限界は既に過ぎました。』
考えるスポック。

シャトル。

エンジン音が低くなっていく。
メンデス:「燃料切れだ。」
カーク:「宇宙の孤児ですな。なぜ一緒に来たんです。」 余計な計器を切っていく。
「私の自由意思だ、私にはその資格がある。※23
「…酸素は後 2時間分です。」
「結構だな?」
「もしエンタープライズが我々の救出に戻って、2人が収容されたらスポックは軍法会議にかけられて終わりですね。」
「タロスへ行っても、スポックは死刑に処せられる。…なぜパイクを連れて行くんだ。司令部の通信によればタロスには人類に利益をもたらすものは存在しないのに。」
「我々にはわからない理由があるんでしょう。」
「だろうな。それともイカレたかだ。

エンタープライズ。
マッコイ:「追ってくる連絡艇には一体誰が乗ってるんだろう。…いくら考えても答えは一つだ。これは私の考えは間違ってるんだろうか。」
スポック:「コンピューターコントロール、追跡してくる連絡艇にロックしろ。」
コンピューター:『ロックしました。誘導光線準備よし。』
「テープ、アベル・7・ベーカー※24をセット。指示通り行動しろ。」
マッコイ:「予想通りやはり船長なんだな?」
答えないスポック。
ハンセン:「エンジンが逆回転を始めました。……現在船は、静止しています。」
スポック:「こちら副船長スポック。保安部、武装した保安要員をブリッジへよこせ。…転送ルームはカーク船長の、転送収容準備をして待機。船長が収容されるまで、ハンセン大尉がブリッジの指揮に当たる。」
「はあ?」
「以上だ。ドクター、最上級士官として私は自分の逮捕を要求します。」
マッコイ:「何だと?」
「罪状は…反逆ですドクター。船の指揮を任された事実はありません。」
保安部員※25がやってきた。「保安要員出頭しました。」
どうすればいいのかわからないマッコイ。
スポック:「ドクター。」
マッコイ:「ミスター・スポックを…逮捕したまえ。部屋に軟禁するだけでいいか。」
「適切ですね。迷惑はかけません。」
「…早く連れて行け!」
保安部員:「はい。」
連行されるスポック。

転送機が操作される。
カーク:『スコット、連絡艇を格納デッキに収容して我々は直接転送を頼む。』
スコット:「はい船長。ロックしました。」
転送台に現れるカークとメンデス。
ハンセン:「指揮権をお返しします。」
カーク:「よろしい、ミスター・スポックはどこだ。」
「彼の部屋に軟禁してあります。」
メンデス:「彼の部屋に? 重大な罪を犯したのにか?」
ウフーラ:『ブリッジから船長へ、エンジンが動き始めました。』
カーク:「エンジン逆転、現在位置を維持。命令を下した者は直ちに…」
ハンセン:「命令を下した者はいません。装置は全て、コンピューターが動かしています。」
「…コンピューターコントロールを外せ。」
ウフーラ:『外そうとしましたが、舵が反応を示しません。』
スコット:「そんなバカなこと。」 転送室を出ていく。
カーク:「コンピューターコントロール※26。」
コンピューター:『…コンピューターです。』
「舵を自由にしたまえ。」
『できません。』

スポックは自室でカークのやり取りを聞いている。
カーク:『私は船長だ。私の次の命令で、これまでに与えられた指示を全て無視しろ。命令だ。舵を自由にしろ。』
コンピューター:『…命令に従えません。従えば船の生命維持装置がショートするでしょう。タロス4番星に到着するまでコントロールを外すことは不可能です。』
モニターを切るスポック。


※19: TOS の国内オンエア分では、カット部分が存在しています。完全版ビデオ (第1シーズンの一部) および DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (スーパーチャンネル版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※20: エンタープライズ・コンピューター音声 Enterprise computer voice
(メイジェル・バレット Majel Barrett) 声:沢田敏子 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)、DS9 初代ウィンなど

※21: Class-F shuttlecraft
見た目はエンタープライズのガリレオなどと同じですが、シャトルでワープ船を追いかけるのはいくらなんでも無謀なので、Fクラスというのは (短時間の航行ながら) ワープドライブを搭載しているのかもしれません

※22: デュラニウム duranium
初言及

※23: 原語では「R・H・I・P だよ、船長。階級には特権がある (Rank has [hath] its privileges.)」

※24: 吹き替えでは「ベーカー7」。A-7-B という意味

※25: 保安関係でクレジットされているのは保安主任 Security chief (ブレット・ダナム Brett Dunham)、保安部員 Security guards (トム・ルポ Tom Lupo) 後にも登場、(イアン・レディン Ian Reddin)。このシーンに登場するのは 2人

※26: 吹き替えでは「コンピューター

『航星日誌、宇宙暦 3012.4※27。エンタープライズ※5は、完全にコンピューターにコントロールされ、謎の惑星タロス4番星へ進んでいる。船内では宇宙艦隊法令に従い、ミスター・スポック※28の予審が開かれようとしていた。私の生涯を通じ、これは最も苦痛に満ちた時になるだろう。』
審理室。
カーク:「では予審を始める。ミスター・スポック。君には弁護士を選ぶ権利がある。」
スポック:「議長、権利を放棄します。さらに、当予審の権利も放棄し軍法会議の開催を要求するものです。」
「却下する。」
「何が理由で却下できるのでしょうか。」
「…反逆罪を裁くためには、最低 3名の指揮官が出席しなければならないが、当船には該当者が 2名しかいない。」
「私の判断では、該当者は既定通り 3名いると思われます。船長と、メンデス准将と、クリストファー・パイク大佐です。」
「違う。パイク大佐には資格がない。」
「大佐はまだ、現役士官リストに載っているはずですが?」
メンデス:「…とても引退を強制できなかった。負けだな。全てスポックの作戦勝ちだ。」

『航星日誌、宇宙暦 3012.6※29。軍法会議が開かれ、ミスター・スポックは再び弁護士を立てずに自ら有罪を認めた。』
審理室。
鐘が鳴らされ、テープが機械に入れられた。
メンデスやカークたちは礼服を着ており、パイクも部屋にいる※30
メンデス:「ミスター・スポック。これは単に反逆罪だけではない。タロス星群※31に入れば理由を問わず死刑に処せられなければならない。宇宙指令 7号については君も知っているはずだ。」
スポック:「はい。」
「じゃあなぜだ。タロス星へ行って何をする気だ。パイク大佐を連れて行くのか? 連れて行ってどうする。」
「今おっしゃったことは記録されていますか?」
「当然のことを聞くな!」
「どうも。モニタースクリーンのスイッチを入れて下さい。」
「何のためにだ。」
「今の御質問に、答えるためです。タロス4番星へ行く理由を説明したいと思います。」
カーク:「なぜと聞いたために、彼が望んでいたチャンスを与えたようですね。…彼の思惑通りです。」
メンデス:「証拠を提示したまえ。スイッチを入れろ。」
操作するスコット。
部屋が暗くなり、スクリーンに航行するエンタープライズの姿が映った。
スポック:「これは 13年前※32です。…船はエンタープライズ。」
そのままブリッジの中が映る。
スポック:「クリストファー・パイク船長の姿が見えます。」
船長席にいる、古い制服のパイク※33。元気な姿だ。
過去のスポック※34が報告する。『船長、前方から物体が接近中です。』
カーク:「スイッチを切れ。」 映像が消え、カークはパイクに近づいた。「パイク。今のは本当に君なのか。」
パイク:「(イエス)」
「考えられない。…ミスター・スポック、あれほど完璧な記録はいかなる船も取れないはずだ。今のは何だ。」
スポック:「現段階では言えません。」
メンデス:「パイク大佐、あの種のレコードテープを記録した事実はあるかね?」
パイク:「(ノー)」
「出どころが判明しない証拠など見るわけにはゆかん。」
スポック:「しかし法廷は被告になぜかと質問されました。だから提示したのです。」
「被告の巧みな罠にかかったまでだ。今の証拠は問題外だ。」
カーク:「言葉を返すようですが、私は先を見たいです…」
「もちろん見る権利はある。しかし被告が副船長で、君の友人だからというのなら…」
「全く関係ありません。」
「よろしい。続けたまえ。」
「スクリーンのスイッチを入れろ。」
スポック:「先ほど述べたごとく、これは 13年前です。我々がパトロール中、船の探知機が前方にある物体を確認しましたが、最初正体は不明でした。」
過去のエンタープライズのナビゲーター、タイラー※35が言った。『光速で接近中。衝突コース。』

警報が鳴り続ける。
タイラー:「隕石防御光線も効果がありません。」
操舵席にいる副長の女性、ナンバー・ワン※36。「脱出しましょうか。」
パイク:「そのままだ。」
通信士のガリソン※37。「物体は電波と判明。古いタイプの遭難信号に接触しました。」
パイク:「…探知機がキャッチしたのは遭難信号だったのか。」
「遭難した船が不時着しようとしています。ほかのメッセージはありません。」
タイラー:「位置判明。タロス星群から発信されています。」
ナンバー・ワン:「そんな遠くに地球の植民地はありません。」
スポック:「コールサインは、地球の宇宙探検船、S.S.コロンビア※38です。18年前、該当地区で消息を絶ちました。」
タイラー:「普通の電波だと向こうからここまで 18年かかる。」
スポックが手を振ると、スクリーンが星系の図に切り替わった。「タロス星群を探検した記録はありません。地球に似た太陽系です。惑星 11、4番星の規模は Mクラス。…大気は酸素系です。」
ナンバー・ワン:「じゃあ 18年後の今でも生きてるかもしれません。」
パイク:「事故の生存者がいればね。」
スポック:「行ったらどうでしょうか、確認に。」
「生存者がいるという証拠は何もない。予定のコースを進み、ヴェガ植民星※39の傷病者を収容する。…予定変更なし、現在コースを維持。」
タイラー:「はい。」
パイクはターボリフトに入った。顔を見合わせるクルー。

普段着で歩いているクルー。
パイクは部屋に入り、置いてあったコミュニケーターに触れた。
『ボイスです。』
パイク:「こちらへ来てくれないか?」 ベッドに横になる。
ドアを叩き、老齢のドクターがやってきた。カバンを置く。
パイク:「何だそれは。具合が悪いと言った覚えはないぞ?」
ボイス※40:「遭難信号をキャッチしたとか聞きましたが?」
「そうだ。しかし、さらに具体的な手がかりがない限り、乗組員を危険にさらしたくはない。」 ファイルを手にするパイク。「この私の判断について君はどう思う。」
「全面的に賛成ですが?」
「それで安心した。ヴェガ植民星へ行き、傷病者を収容するのが我々の任務だ。そして…。氷など入れてどうする。」
「マティーニは冷たくしないと。」
笑い、グラスを受け取るパイク。「私に飲ませるつもりか。」
ボイス:「…時には美味い酒でも飲んでバーテンと、話をするのもいいでしょ?」
自分も手にする。「ライジェル7番星※41のことで悩んでるんですか?」
「当然だ。戦死 3名※42、負傷 7名の犠牲を出した。」
「しかしあれは船長の責任ではありません…」
「いやあ、彼らの剣と鎧を見て危険を感じていれば、事前に処置を取れたはずだ。それなのに私が戦士の一人に攻撃を受けて※43…」
「船長はあまりにも自分に対して厳しすぎます。自分を他人並みに人間として扱ったらどうですか。おかげでこんなに疲れて。」
「そりゃあ確かだな。クタクタだ。203名※44の命を預かるのに、疲れ切ったよ。それだけじゃない、ことあるたびにどの任務に一番危険がないかを考えたり、上陸班を編成したり。誰が残って…誰が死ぬのか…私にはもう耐えられん。」
「私が勧めていた休養を取る時期のようですね?」
「いや、引退する時期じゃないかな。」
「…それで、何をするんですか。」
「うちに帰れるだけでもいい。…小さな町で、周りに自然公園があってね。…馬を飼ってるってことは話したかな。私が餌をやって、いつも乗り回した。」
「そりゃあ楽しいでしょうな。毎日弁当を持って遠乗りですか。」
「その頃には、未来に夢を抱いていた。やがて、レギュラス※45かオリオン※46植民星へ行って商売をしようって…」
「何です? 船長がオリオンの商人になって、奴隷や女※47を売り飛ばすんですか…」
「私が言いたいのは人生はこれだけじゃないということだ。宇宙には無数の人生が待ってる。」
「それは違います。…人間というものは、偶然歩むことになった今の人生を強く生き続けるのが当然です。それに背を向ければやがて消え去るでしょう。」
「医者のような口調になってきたな、バーテンさん。」
「どっちを選ぶか、それは自由ですが二つに一つ。生か、死です。」
呼び出しが鳴り、パイクはスイッチを入れた。
小さなモニターに映る。『スポックです、次の通信をキャッチしました。タロスに事故の、生存者がいます。』 映像は消えた。

コンピューターから打ち出される紙。
ガリソン:「『生存者は 11名、重力と酸素は許容レベル、食物と水は入手可能。ただし…。』 メッセージはここで消えてしまいました。」
船長席へ向かうパイク。「船内放送。」
タイラー:「スイッチ入れました。」
「こちら船長。針路を変更し、タロス星群へ向かう。」

スクリーンに映るパイク。『全速前進、ワープ7。』
タイラー:『…コース計算、スクリーンに出ます。』
ナンバー・ワン:『全デッキ確認しました。』
パイク:『前進。』
メンデス:「切れ。」 映像が消える。「ミスター・スポック。今の映像を作り出した君の技術はまさに驚嘆に値するもので、その想像力に敬意を表したい。しかしここは劇場ではなく宇宙法廷だ。」
スポック:「…大佐。これは想像で作り出した映像や、細工をした記録ではないと言って下さい。今のは全て 13年前に起こった事実ですね?」
パイク:「(イエス)」
「おわかりでしょ。今あのスクリーンには、タロス4番星におけるパイク大佐の驚くべき体験が、映し出されようとしているのです。それを見ても引き返せとおっしゃるならば、この船のコンピューターコントロールを解きましょう。」
メンデス:「条件を出せる立場ではない! バカげた話だ。この男は反抗し船を盗みパイク大佐を誘拐した。もはや議論する余地はない!」
カーク:「私は彼の主張を最後まで聞きたいですね。」
「わしは反対だ。当軍事法廷は即刻…」
「そうはいきません。最終決定はもう一人の意見を聞いて下されるべきです。」
「よろしい。パイク大佐。君次第だ、現状で裁判を続けるかね?」
パイク:「(イエス)」
カーク:「…イエスだ。」


※27: 吹き替えでは「0401.8284」

※28: 原語では「スポック少佐」と言っています。シリーズで一貫して中佐の階級章でもあるにかかわらず、第1シーズンでは少佐と呼ばれている場合があります

※29: 吹き替えでは「0401.8286」

※30: 2つの旗が掲げられています。向かって左側のストライプ状のは宇宙連邦 (United Space) の旗で、右の青色はエンタープライズの記章という説もありますが、そもそも垂れ下がっているため確認できません

※31: Talos Star Group

※32: 2254年。映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」では、モロー提督がエンタープライズを 20年の船と言っていますが、それだと 2265年就航となって矛盾します。クロノロジーでは 2245年就航としています

※33: クリストファー・パイク Christopher Pike
(ジェフリー・ハンター Jeffrey Hunter 1969年5月に死去) 第2パイロット版の TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」の際にハンターの都合がつかず、船長はシャトナー演ずるカークに変更されました。2人の前、ジーン・ロッデンベリーは「シー・ハント 潜水王ネルソン」(1958〜61) のロイド・ブリッジスも候補に考えていました。TNG第70話 "The Most Toys" 「究極のコレクション」に登場するシャトルは、パイクの名前がついています。この映像は新たに撮影したものではなく、2年前にパイロット版として製作されお蔵入りになった "The Cage" の大部分を使用しています。"The Cage" 自体は、ずっと後になってから 2種類の形で公開されました。微妙にエンタープライズのモデルも異なっています。ノヴェライズ小説版 (邦訳はハヤカワ文庫「宇宙大作戦 暗闇の悪魔」収録 『実験動物園』) では複雑な二部構成を避け、実質的に "The Cage" だけの内容となっています。声:中田浩二 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※34: 眉毛などメイクが異なっています

※35: ジョゼ (ジョー)・タイラー Jose (Joe) Tyler
(ピーター・デュリア Peter Duryea) 名前は言及されていません。声:DVD・完全版ビデオ補完では古田信幸、DS9 ダマール、VOY ホーガンなど

※36: Number One
(M・リー・ヒューデック M. Leigh Hudec =メイジェル・バレット (Majel Barrett)。TOS第7話 "The Naked Time" 「魔の宇宙病」などのサブレギュラー、クリスチン・チャペル看護婦 (Nurse Christine Chapel)、TNG第11話 "Haven" 「夢の人」、DS9第17話 "The Forsaken" 「機械じかけの命」などのサブレギュラー、ラクサナ・トロイ大使 (Ambassador Lwaxana Troi)、TOS/TNG/DS9/VOY 全話 (映画も含む) に渡る歴代エンタープライズ/ディファイアント/ヴォイジャーなどの連邦コンピューター音声役) ナンバー・ワンは副長 (First Officer) を表す語で、TNG でもピカードがライカーを呼ぶ時に使っています。本当の名前は不明。当初はレギュラーの予定でしたがネットワークの要請により、スポックが「格上げ」となりました。副長以上の女性が登場するのは、映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」の U.S.S.サラトガ艦長を待たねばなりません。声:翠潤子 (翠準子)、DS9 2代目ラクサナ (!) など。DVD・完全版ビデオ補完では塩田朋子、STN ドナトラなど

※37: ガリソン下士官 C.P.O. Garrison
(アダム・ローク Adam Roarke 1996年4月に死去) 名前・階級は言及されていません。ロークはもう一人、第一クルー First Crewman という役名でもクレジットされていますが、どこで区別されるのかは不明です。そのため本文では全てガリソンとしています。声:納谷六朗?、TOS スールー (代役。DVD・完全版ビデオ補完も含む)、TNG レミック、DS9 初代ウェイユン、VOY スールーなど

※38: S.S. Columbia
映画 TMP "The Motion Picture" 「スター・トレック」で U.S.S.コロンビアが言及。LD の解説書など、一部でヴァリアントとの混同が見られます (第2パイロット版 "Where No Man Has Gone Before" と勘違い?)

※39: Vega Colony
ヴェガはこと座のアルファ星 (織り姫)

※40: ドクター・フィリップ・ボイス Dr. Phillip Boyce
(ジョン・ホイト John Hoyt 1991年9月に死去) (DVD・完全版ビデオの) 吹き替えでは「イス」と聞こえます。名のフィリップ (フィル) はパイクが呼ぶシーンがありますが、訳出されていません。声:北村弘一 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※41: ライジェル7号星 Rigel VII
恒星ライジェルは一般的には「リゲル」と呼ばれる、オリオン座ベータ星。これまで 12号星まで言及されたことがあります。ただし太陽から 700光年以上も離れているため、ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」の 10号星を含め、全て同一星系とするには疑問も生じます (書籍 "Star Trek: Star Charts" では近隣の別の星をベータ・ライジェルと呼び、その星系としています))

※42: 原語では「一人しかいない秘書 (下士官、yeoman)」と 2人が死んだ、と言っています

※43: 吹き替えでは「戦いになったのは私が彼らに捕らえられたからだよ」

※44: カークの時代には 430名になっています

※45: Regulus
一般的には「レグルス」と呼ばれる、わし座アルファ星 (彦星)。これまで 3号星、5号星が言及

※46: Orion

※47: 原語では「緑色をした動物女 (animal women) の奴隷」。DVD・完全版ビデオでは「奴隷」だけに修正されています

『航星日誌、補足。反逆罪に問われたミスター・スポックは非常に変わった証拠を提示した。パイク大佐とエンタープライズ※5の禁じられた宇宙への旅が、モニタースクリーンに映し出されていく。』
メンデス:「映せ。」
操作するスコット。スクリーンに惑星が映し出される。

スクリーンに映ったタロス4号星。
タイラー:「軌道に乗りました。」
科学士官※48がブリッジに来た。「地質学ラボの報告終了しました。」
スポック:「予備観測準備よし。」
パイク:「大気観測。」
地質学者:「酸素と窒素を含む大気です。不活性元素も認められますが危険はありません。」
「引力は。」
「地球の 0.9倍。」
タイラー:「船長。惑星表面に反射物を発見。地上にある金属の破片の偏向作用と思われます。宇宙船の残骸ではないでしょうか。」
パイク:「6名の上陸班を編成。君も一緒に来るか。」
スポック:「はい。」
タイラー:「行きます。」
パイク:「……ナンバー・ワンは残れ。万一の事態に備えて、最も経験のある士官に船を任せるのが妥当だ。」
ナンバー・ワン:「わかりました。」
皆ターボリフトに乗る。

ジャケットを着るクルー。装備を準備する。
パイク:「危険兆候は見当たらないが、慎重に降りよう。」
ピトケアン転送主任※49。「はい、左に谷があります。そこなら誰にも発見されないでしょう。」
荷物を背負ったクルーを含め、みな転送台に乗った。
操作する転送士官たち。しばらくすると、6人は転送されていく。

地表で実体化した。
辺りは岩だらけだ。
銃を持って進む。
パイクは何かを見つけた。青い植物が揺れている。
その葉を手で止めると、同時に音も消えた。
真似し、微笑むスポック※50
一行は更に進む。

また同じ植物が生えている。
地質学者:「船長!」
テントだ。アンテナのような物も立っている。
身なりも汚れた老人※51たち。「人間だ。…地球人だぞ。」
パイク:「連邦宇宙船※52エンタープライズの、パイク船長です。」
生存者のリーダーが応えた。「アメリカ大陸研究所※53のドクター・セオドア・ハスキンズ※54です。」
老人※51:「懐かしい、人間だ。」
パイク:「すぐに、懐かしい地球に連れて帰りますよ。」
タイラー:「どんなに早く帰れるかあなたたちには想像できないでしょうね。時間の壁を破ることに成功して…※55」 目を見張る。
老人たちの後ろから、若い女性が現れた。やはり服は粗末だが、美しさが際立っている。
ハスキンズ:「これはヴィーナ※56です、両親は死にました。事故の直前に生まれたんです。」

その様子を、別のところから異星人たちが見ていた。頭が非常に大きく、血管が脈打っている。
エンタープライズのクルーと、コロンビアの遭難者たちが互いに話しているのが見える。
異星人の一人※57がうなずき、他の者※58はそこを去った。

連絡するパイク。「エンタープライズ。」
ナンバー・ワン:『上陸班どうぞ。』
「間もなく、生存者と必要な物資の転送収容を開始する。」
『部屋を準備中です。交代に科学調査班を降ろしていいでしょうか。』
「よし収容が終わったら…」
ヴィーナが近づいていた。「船長さんって、健康で頭もとても良さそうね。素晴らしい標本だわ。」
ナンバー・ワン:『最後のメッセージが聞き取れませんでしたが。』
パイク:「ああ…収容が終わったら降ろせ。後ほど連絡する。」
ハスキンズ:「いやあ、失礼な言葉を使ってすみません。生まれてからずっと年寄りの科学者と暮らしてきましたので。」
ボイス:「もしその、時間があれば診断の結果を報告したいんですが。」
ヴィーナ:「そろそろ私達の秘密を見せてもいい頃ね。」
「健康に異常はなく、いや良すぎるぐらいですが。」
ハスキンズ:「それにはわけがありましてな。しかしその秘密を知ってからも、地球が受け入れるかどうか。ヴィーナが案内します。意見を聞かして下さい。」
ヴィーナについていくパイク。

手を引くヴィーナ。「疲れてるのね。でも大丈夫、すぐ元気になれるわ。……ほら、見えるでしょ? ここ、ここにも。」
パイク:「…そうだな、さっぱりわからんが。」
「船長さん、あなたは理想的な人間よ。」
突然ヴィーナの姿が消えた。

作業をしていた遭難者たちも同じだ。テント類も消え、エンタープライズのクルーだけが残る。

岩山の一部が、ドアのように開いた。パイクのそばだ。
中から、あの異星人たちが出てきた。パイクに向かって何かの装置を使う。
ビームを受けたパイクは、そのまま倒れた。

事態に気づいたタイラー。「船長!」
他のクルーも追う。

パイクを引きずるタロス人。
やってくるクルー。
タロス人たちは、岩山の中をエレベーターのように降りていく。
ドアが閉まった。
開けようとするタイラー。
銃で狙う。複数の銃で撃っても表面の岩が壊れるだけで、ドア自体には全く効果がない。
出力レベルを上げるタイラー。いくら浴びせても無駄だ。

スクリーンのスポック。『スポックだ。』
ナンバー・ワン:『上陸班どうぞ。』
『この惑星には生存者などいない。何者かが仕掛けた罠だ。船長を奪われた。聞こえるか!』
呼び出しに応えるカーク。映像は中断される。「どうした。」
ウフーラ:『メンデス准将にです。』
「艦隊司令部からです。読み上げろ。」
『メンデス准将に緊急連絡。宇宙モニター※59の調査で、エンタープライズがタロス4番星からの送信を受けている事実が判明。これは宇宙指令 7号に違反する。』
「タロス4番星からの送信を受けている? じゃあ今見ていたあの映像は。」
スポック:「タロスから送られたものです。」
ウフーラ:『カーク船長は直ちに解任。貴下がエンタープライズの指揮を執り、今後の受信を防ぐために必要ならば装置を破壊せよ。発信人、宇宙艦隊司令部コムソル※60。』
メンデス:「タロス4番星との接触に関する命令は君も知っているはずだ。君は自ら死刑になる結果を招いた。自分を破滅させただけではなく、船長も破滅に追い込んだ。」
立ち上がるスポック。「カーク船長に関係のないことはよく御存知のはずです。」
メンデス:「船長はこの船で起こる全てのことに責任をもたなければならない。船の装置を手動コントロールに戻すことを命令する。」
「……准将。命令には従えません。」
「よろしい、結果はわかってるな。しばらく休廷する。」 出ていくメンデス。
記録が止められた。マッコイとスコットはパイクの車椅子に付き添う。
カークは立った。「君があのスポックか。気は確かか…」
スポック:「船長※61、お願いです。止めないで下さい。最後までやらせて下さい。パイク大佐の命が、全てがかかっています。タロスからの映像を最後まで見て下さい。」
「……監禁しろ。」
歩いていくスポックに、保安部員たちがつく。
独り残されたカーク。
カーク:『わからない。スポックの真意が、わからない。』※62


※48: 地質学者 Geologist
(エド・マッデン Ed Madden TOS第5話 "The Enemy Within" 「二人のカーク」のフィッシャー地質学専門家 (Geological Technician Fisher) 役) 怪我をしていたのか、左首に湿布のような物が見えます

※49: Transpoter Chief Pitcairn
(クレッグ・ホイト Clegg Hoyt 1967年10月に死去) 名前は言及されていません。隣にいる転送技師がメガネをかけていますが、操作するシーンになると外しています

※50: 設定が固まっていなかったんですね

※51: 生存者 Survivors
(レナード・ミューディー Leonard Mudie 1965年4月に死去)、(アンソニー・ジョーキム Anthony Jochim 1978年4月に死去)

※52: "U.S.S." を分解して United Space Ship と言っています。現在では United Star Ship の略と考えるのが一般的なようです

※53: American Continent Institute

※54: Dr. Theodore Haskins
(ジョン・ローマー Jon Lormer TOS第22話 "The Return of the Archons" 「ベータ・スリーの独裁者」のテイマー (Tamar)、第65話 "For the World Is Hollow and I Have Touched the Sky" 「宇宙に漂う惑星型宇宙船」の老人 (Old Man) 役。1986年3月に死去) SF映画監督、光学効果創作の Byron Haskins ("The Cage" の製作補) にちなんでかもしれません。吹き替えでは「ドクター・ヘス」。声が聞き取りにくいせいか、LD の英語字幕でも "Hess" になっています。

※55: この発言は本来 18年 (2236〜2254) の間にワープが発明されたことを意図したものだと思われますが、現在では 2063年となっています。もっともコロンビアがワープなしで旅していたとも考えにくいので、何らかの革新的な航法を指していると考えることもできます

※56: Vina
(スーザン・オリヴァー Susan Oliver 1990年5月に死去) 声:池田昌子 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※57: 飼育係 (長官、ザ・キーパー) The Keeper
(メグ・ワイリー Meg Wyllie 2002年1月に死去) 前編ではセリフはありませんが、演じているのが女性に対して男性のヴィク・ペリンが声を担当しています (元々の "The Cage" ではマラチ・スローン。注釈※4 参照)。これは異星人らしさを出すためですが、吹き替えでは女性の高橋和枝さんです (DVD・完全版ビデオ補完も継続)。ある雑誌の特集で「エンサイクロペディアでは声がワイリーになっている事実誤認がある」と書いてありましたが、それ自体が誤認であり同書の "The Cage" の項目に誤りはありません (日米版ともに)。Keeper という呼び名に対しては、吹き替えでは後編で「飼育係」という訳が一度だけ明示的に使われています。この人物は他のタロス人には長官 (magistrate) と呼ばれています

※58: タロス人 Talosians
(ジョージア・シュミット Georgia Schmidt 1997年8月に死去) 声:藤本譲 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)、VOY ダ・ヴィンチ、旧ST6/STG スコットなど、(セレナ・サンディ Serena Sande)

※59: 原語では「亜空間モニター」

※60: Comsol (Comsole)
吹き替えでは「宇宙艦隊司令コムソル」

※61: 原語では「ジム」と呼びかけています。この「船長」という部分は、完全版ビデオより DVD・LD の方がわずかに長いようです

※62: この心の声は、原語にはありません

・感想など
TOS 唯一の前後編であり、後年公開される「幻の」パイロット版 "The Cage" 「歪んだ楽園」を実質的に内包するという、離れ業をやってのけたエピソードです。当サイトでは TNG 以降の前後編と異なり、エンサイクロペディアなどの方針に従って一話扱いにしています。ですが本国では 2週に渡って放送されたものであることには変わりないため、まずは前編だけを扱いました。ストーリー全体の感想などは後編に譲ります。
TNG 以降のパイロット版は、近年のものほどその後の話との矛盾が少なく、シリーズ化が前提であるため、ある意味「パイロット」としての意味合いは薄れてきています。ですが TOS の場合はさすが (?) 却下されただけあって、キャラクターの多数などが大きく違っているのが特徴です。海外ドラマでは珍しくはないのですが、こうして過去の設定とすることにより、一気に正史まで引き上げてしまったのがすごいところですね。当時事情を知らない視聴者がどれほどの驚きをもって見たか、想像するだけでうらやましく感じます。


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