トゥポルを調べるフロックス。「思った以上に深刻です。」 
 アーチャー:「治せるのか…」 
 「わかりません。」 
 ハイポスプレーから逃げようとするトゥポル。「何をしてる!」 
 アーチャー:「君を助けようとしてるだけだ。」 
 「私を殺す気だ、お前が仲間たちを殺したように。…やめろ、放せー!」 
 トゥポルの頭を押さえるアーチャー。 
 トゥポル:「いやー!」 
 ハイポスプレーが打たれた。しばらくすると、静かになるトゥポル。 
 イメージングチャンバーに入れられた。
  
 一日前。 
 司令センター。 
 タッカー:「シェフと話したんですが、クルーを心配してました。…食事を抜くらしいんです。最近の忙しさや、任務へのストレスが原因じゃないかと。」 
 アーチャー:「私も食欲はないからな。」 
 「…この領域に入ってから、映画会やってませんよね。また、やりましょうか。」 
 「ズィンディと決着をつけてからたっぷり観ればいい。」 
 「…そりゃ俺だってズィンディは憎い。でも、今のクルーには休息が必要です。フロックスにあまり薬を使わせたくないなら…自分たちで気分転換しないと。」 
 「何を観るんだ?」 
 「コメディはどうでしょう。そうだなあ、ホープとクロスビーもの※1とか。」 
 「いい選択だ。」 
 トゥポルが入る。「船長?」 
 アーチャー:「もう一度、ズィンディの星図を見直していたんだ。このエリア内にまだ空間のひずみがあるかどうか、調べていた。」 
 「…私に言って下されば。」 
 「もう遅い、起こすのは酷だ。ちょうど不眠症の部下が、暇をもてあましてたしな?」 
 タッカー:「…火曜の夜は暇?」 
 トゥポル:「今のところは。」 
 「19時食堂に集合。」 
 「映画ですか?」 
 「前回好評につき。」 
 サトウの通信が入る。『アーチャー船長。』 
 アーチャー:「どうした。」
  
 ブリッジのサトウ。「自動救難信号を受信しました。ヴァルカンです。」
  
 アーチャー:「…呼びかけたか。」 
 サトウ:『はい、何度か。』 
 「すぐに行く。」
  
 ブリッジには、メイウェザーではない操舵士官がいる。 
 アーチャー:「現在位置は。」 
 サトウ:「3.2光年先です。方位 016、マーク 12。」 
 トゥポル:「…この周波数なら、知っています。セレヤ※2です。9ヶ月前、デルフィック領域に。」 
 アーチャー:「…呼び続けろ。コース、セット。」
  
 小惑星帯がある。複雑に動き、互いに衝突する小惑星。 
 その区域へ近づくエンタープライズ。 
 トゥポル:「小惑星が、無秩序に動いています。…ルートが予測できません。恐らく、空間異常が原因かと。」 
 アーチャー:「ヴァルカン船は?」 
 「およそ 2,000キロメートル先です。」 
 タッカー:「このエリアに惹かれた気持ちがわかりますよ。小惑星はトレリウムの宝庫だ。」 
 スクリーンの小惑星を見るアーチャー。「エンタープライズで進むのは無理だな。リードを起こせ。出発ベイに集合だ。」 
 サトウ:「了解。」 
 タッカーに命じるアーチャー。「鉱石を採取してくれ。トゥポル。」 ターボリフトへ向かう。
  
 小惑星を避けながら進むシャトルポッド。 
 トゥポル:「船首右舷、340メートル。」 
 アーチャー:「確認。」 
 背後で衝突した小惑星の破片が、シャトルにぶつかる。 
 リード:「ダメージなし。でもペンキを塗り直す必要はあるかもしれません※3。」 
 アーチャー:「距離は。」 
 トゥポル:「1,200キロメートル。…船長、操縦を代わりましょうか。」 
 「帰りは頼むよ。…セレヤについては?」 
 「よく知っています。乗船していましたから※4。…地球に赴任する、直前の勤務先でした。…ヴォリス船長※5の下、副科学士官を。」 
 「彼らは、何をしにここへ来たんだ?」 
 「温度気圧の境界の、図面化です。数日後ある種の亜空間の渦に巻き込まれ、この領域に引き込まれたと…そう報告が入りました。それが最後の通信です。…捜索に向かったヴァンカーラ※6が、どうなったかはおわかりですね。」 
 「セレヤの無事を祈ろう。」 
 「…正面、200メートル前方。」 
 「つかまれ。」 
 窓から小惑星が迫ってくるのが見える。何とか避けた。 
 横を見る MACO のホーキンス伍長※7。すぐ脇を小惑星が抜けていく。 
 リードと顔を見合わせる。
  
 転送台に実体化する岩。青い筋が見える。 
 スキャナーを使うタッカー。「アイソトープ率が高い。500グラムは、抽出できる。」 岩を運ぶ。「次はもっと、デカいやつを狙おう。」 
 タッカーはモニターを見る。「そうだなあ、これは。」 
 メイウェザー:「ロックしました。」 
 転送されるというとき、転送室の内部が揺らめいた。実体化しない。 
 タッカー:「トラヴィス?」 
 コンソールの背後を操作するメイウェザー。「再配列機※8がオーバーロードを。」 
 タッカー:「止めろ。」 
 「できません!」 火花があちこちで散る。 
 また空間異常が襲う。実体化しようとしていた岩は一旦消えた。 
 そして転送室の壁面を含め、あちこちに分散して現れた。 
 コンソールを操作できないタッカー。「クッソ、役たたずめ。コイルが焼けた。」 
 メイウェザー:「…シャトルで大きめの小惑星※9に降り立ってみるってのは?」 
 「…四方に動くんだぞ? 着陸できるのか。」 
 「やってみます。」 
 「…こいつの修理は大変だね。」
  
 シャトルポッドの前に、ヴァルカン船※10が見えた。一部は損傷している。 
 リード:「メインパワー、オフライン。深刻な被害を受けています。」 
 ホーキンス:「生命維持は。」 
 「辛うじて。2デッキで減圧が起きています。」 
 トゥポル:「複数の生体反応あり。」 
 アーチャー:「…エンタープライズ※11の、アーチャー船長だ。応答してくれ。……セレヤ、どうぞ。」 
 「…右舷のドッキングポートは無事です。」
  
 火花が散る船内。ハッチを開け、リードが登ってきた。 
 他の者も続く。廊下にはライトもついておらず、あちこちで梁が落ちている。 
 低い音が響く。 
 リード:「船長。」 壁に青い部分がある。「隔壁を、トレリウムで覆ってます。…この部分だけだ。」 
 トゥポル:「デッキ内に、生体反応を。…位置はわかりません。」 
 アーチャー:「…右舷へ回れ。」 
 リードとホーキンスは向かった。
  
 歩くリードたち。 
 スキャナーを使うリード。「ヴァルカン人の血だ。」
  
 ドアを開けるアーチャー。金属を叩くような音が響く。 
 そちらへ向かうトゥポル。「生体反応 1名。」 
 ドアを開けようとしたが駄目だ。トゥポルはスイッチの部分を開け、回路を操作する。 
 何とかドアを開けた。 
 向こう側にいた者が、いきなり棒で殴ろうとする。デコボコになった顔。 
 倒すアーチャー。相手はアーチャーを素手で殴り、立ち上がった。 
 フェイズ銃を向けるトゥポル。それでも近づいてくるため、トゥポルは発射した。 
 当たったが倒れない。相手を蹴るトゥポル。 
 アーチャーが背後からもう一発撃つと、やっとで倒れた。アーチャーの顔から血が流れている。
 
  
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※1: Hope and Crosby pictures ボブ・ホープとビング・クロスビーが共演した映画のこと。「シンガポール珍道中」(1940)、「アフリカ珍道中」(41)、「モロッコへの道」(42)、「アラスカ珍道中」(45) など。クロスビーは TNG レギュラーのターシャ・ヤー役、デニス・クロスビーの祖父
  
※2: Seleya 映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」で登場した、ヴァルカンの山にちなんで。吹き替えでは全て「セレヤ号」
  
※3: 吹き替えでは「(ダメージなし。) トレリウムはまだ塗ってません」と、的外れな訳になっています
  
※4: 原語では「一年以上」と、期間も言っています
  
※5: Captain Voris
  
※6: Vankaara ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」より。吹き替えでは「ヴァンカーラ号」
  
※7: Corporal Hawkins (Sean McGowan) ENT第54話 "Anomaly" 「オサーリア人の襲撃」以来の登場。名前は今回が初言及。声:江川大輔
  
※8: resequencer ですが、吹き替えでは「シーケンサー」
  
※9: 吹き替えでは「惑星」と略している個所がありますが、planet と asteroid は全く分類が異なるので、略せないはず…?
  
※10: ENT第27話 "Shockwave, Part II" 「暗黒からの衝撃波(後編)」で登場した、ディキーアと同タイプ
  
※11: 吹き替えでは「エンタープライズ号」
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