エンタープライズ エピソードガイド
第57話「幽霊船」
Impulse
イントロダクション
医療室に入るアーチャー。「ドクター、頼む。」 運ばれたトゥポルが、ベッドにベルトで固定されていく。 トゥポル:「…やめろ。」 アーチャーの首を絞めてくる。「やめろ! …殺してやる。」 アーチャー:「助けたいだけだ!」 顔に怪我をしている。 「嘘だ! …放せ、やめろ!」 トゥポルは絶叫した。 |
本編
トゥポルを調べるフロックス。「思った以上に深刻です。」 アーチャー:「治せるのか…」 「わかりません。」 ハイポスプレーから逃げようとするトゥポル。「何をしてる!」 アーチャー:「君を助けようとしてるだけだ。」 「私を殺す気だ、お前が仲間たちを殺したように。…やめろ、放せー!」 トゥポルの頭を押さえるアーチャー。 トゥポル:「いやー!」 ハイポスプレーが打たれた。しばらくすると、静かになるトゥポル。 イメージングチャンバーに入れられた。 一日前。 司令センター。 タッカー:「シェフと話したんですが、クルーを心配してました。…食事を抜くらしいんです。最近の忙しさや、任務へのストレスが原因じゃないかと。」 アーチャー:「私も食欲はないからな。」 「…この領域に入ってから、映画会やってませんよね。また、やりましょうか。」 「ズィンディと決着をつけてからたっぷり観ればいい。」 「…そりゃ俺だってズィンディは憎い。でも、今のクルーには休息が必要です。フロックスにあまり薬を使わせたくないなら…自分たちで気分転換しないと。」 「何を観るんだ?」 「コメディはどうでしょう。そうだなあ、ホープとクロスビーもの※1とか。」 「いい選択だ。」 トゥポルが入る。「船長?」 アーチャー:「もう一度、ズィンディの星図を見直していたんだ。このエリア内にまだ空間のひずみがあるかどうか、調べていた。」 「…私に言って下されば。」 「もう遅い、起こすのは酷だ。ちょうど不眠症の部下が、暇をもてあましてたしな?」 タッカー:「…火曜の夜は暇?」 トゥポル:「今のところは。」 「19時食堂に集合。」 「映画ですか?」 「前回好評につき。」 サトウの通信が入る。『アーチャー船長。』 アーチャー:「どうした。」 ブリッジのサトウ。「自動救難信号を受信しました。ヴァルカンです。」 アーチャー:「…呼びかけたか。」 サトウ:『はい、何度か。』 「すぐに行く。」 ブリッジには、メイウェザーではない操舵士官がいる。 アーチャー:「現在位置は。」 サトウ:「3.2光年先です。方位 016、マーク 12。」 トゥポル:「…この周波数なら、知っています。セレヤ※2です。9ヶ月前、デルフィック領域に。」 アーチャー:「…呼び続けろ。コース、セット。」 小惑星帯がある。複雑に動き、互いに衝突する小惑星。 その区域へ近づくエンタープライズ。 トゥポル:「小惑星が、無秩序に動いています。…ルートが予測できません。恐らく、空間異常が原因かと。」 アーチャー:「ヴァルカン船は?」 「およそ 2,000キロメートル先です。」 タッカー:「このエリアに惹かれた気持ちがわかりますよ。小惑星はトレリウムの宝庫だ。」 スクリーンの小惑星を見るアーチャー。「エンタープライズで進むのは無理だな。リードを起こせ。出発ベイに集合だ。」 サトウ:「了解。」 タッカーに命じるアーチャー。「鉱石を採取してくれ。トゥポル。」 ターボリフトへ向かう。 小惑星を避けながら進むシャトルポッド。 トゥポル:「船首右舷、340メートル。」 アーチャー:「確認。」 背後で衝突した小惑星の破片が、シャトルにぶつかる。 リード:「ダメージなし。でもペンキを塗り直す必要はあるかもしれません※3。」 アーチャー:「距離は。」 トゥポル:「1,200キロメートル。…船長、操縦を代わりましょうか。」 「帰りは頼むよ。…セレヤについては?」 「よく知っています。乗船していましたから※4。…地球に赴任する、直前の勤務先でした。…ヴォリス船長※5の下、副科学士官を。」 「彼らは、何をしにここへ来たんだ?」 「温度気圧の境界の、図面化です。数日後ある種の亜空間の渦に巻き込まれ、この領域に引き込まれたと…そう報告が入りました。それが最後の通信です。…捜索に向かったヴァンカーラ※6が、どうなったかはおわかりですね。」 「セレヤの無事を祈ろう。」 「…正面、200メートル前方。」 「つかまれ。」 窓から小惑星が迫ってくるのが見える。何とか避けた。 横を見る MACO のホーキンス伍長※7。すぐ脇を小惑星が抜けていく。 リードと顔を見合わせる。 転送台に実体化する岩。青い筋が見える。 スキャナーを使うタッカー。「アイソトープ率が高い。500グラムは、抽出できる。」 岩を運ぶ。「次はもっと、デカいやつを狙おう。」 タッカーはモニターを見る。「そうだなあ、これは。」 メイウェザー:「ロックしました。」 転送されるというとき、転送室の内部が揺らめいた。実体化しない。 タッカー:「トラヴィス?」 コンソールの背後を操作するメイウェザー。「再配列機※8がオーバーロードを。」 タッカー:「止めろ。」 「できません!」 火花があちこちで散る。 また空間異常が襲う。実体化しようとしていた岩は一旦消えた。 そして転送室の壁面を含め、あちこちに分散して現れた。 コンソールを操作できないタッカー。「クッソ、役たたずめ。コイルが焼けた。」 メイウェザー:「…シャトルで大きめの小惑星※9に降り立ってみるってのは?」 「…四方に動くんだぞ? 着陸できるのか。」 「やってみます。」 「…こいつの修理は大変だね。」 シャトルポッドの前に、ヴァルカン船※10が見えた。一部は損傷している。 リード:「メインパワー、オフライン。深刻な被害を受けています。」 ホーキンス:「生命維持は。」 「辛うじて。2デッキで減圧が起きています。」 トゥポル:「複数の生体反応あり。」 アーチャー:「…エンタープライズ※11の、アーチャー船長だ。応答してくれ。……セレヤ、どうぞ。」 「…右舷のドッキングポートは無事です。」 火花が散る船内。ハッチを開け、リードが登ってきた。 他の者も続く。廊下にはライトもついておらず、あちこちで梁が落ちている。 低い音が響く。 リード:「船長。」 壁に青い部分がある。「隔壁を、トレリウムで覆ってます。…この部分だけだ。」 トゥポル:「デッキ内に、生体反応を。…位置はわかりません。」 アーチャー:「…右舷へ回れ。」 リードとホーキンスは向かった。 歩くリードたち。 スキャナーを使うリード。「ヴァルカン人の血だ。」 ドアを開けるアーチャー。金属を叩くような音が響く。 そちらへ向かうトゥポル。「生体反応 1名。」 ドアを開けようとしたが駄目だ。トゥポルはスイッチの部分を開け、回路を操作する。 何とかドアを開けた。 向こう側にいた者が、いきなり棒で殴ろうとする。デコボコになった顔。 倒すアーチャー。相手はアーチャーを素手で殴り、立ち上がった。 フェイズ銃を向けるトゥポル。それでも近づいてくるため、トゥポルは発射した。 当たったが倒れない。相手を蹴るトゥポル。 アーチャーが背後からもう一発撃つと、やっとで倒れた。アーチャーの顔から血が流れている。 |
※1: Hope and Crosby pictures ボブ・ホープとビング・クロスビーが共演した映画のこと。「シンガポール珍道中」(1940)、「アフリカ珍道中」(41)、「モロッコへの道」(42)、「アラスカ珍道中」(45) など。クロスビーは TNG レギュラーのターシャ・ヤー役、デニス・クロスビーの祖父 ※2: Seleya 映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」で登場した、ヴァルカンの山にちなんで。吹き替えでは全て「セレヤ号」 ※3: 吹き替えでは「(ダメージなし。) トレリウムはまだ塗ってません」と、的外れな訳になっています ※4: 原語では「一年以上」と、期間も言っています ※5: Captain Voris ※6: Vankaara ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」より。吹き替えでは「ヴァンカーラ号」 ※7: Corporal Hawkins (Sean McGowan) ENT第54話 "Anomaly" 「オサーリア人の襲撃」以来の登場。名前は今回が初言及。声:江川大輔 ※8: resequencer ですが、吹き替えでは「シーケンサー」 ※9: 吹き替えでは「惑星」と略している個所がありますが、planet と asteroid は全く分類が異なるので、略せないはず…? ※10: ENT第27話 "Shockwave, Part II" 「暗黒からの衝撃波(後編)」で登場した、ディキーアと同タイプ ※11: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 |
倒れた者を見つめるトゥポル。 アーチャー:「…大丈夫か? …トゥポル?」 気づくトゥポル。「大丈夫です。」 スキャナーで調べる。「シナプス経路に、深刻なダメージを受けています。」 アーチャー:「シャトルへ運ぼう。」 だが更にヴァルカン人の姿が見えた。 トゥポル:「船長!」 身体を傾けたまま歩いてくる。 アーチャー:「それ以上来るな!」 何度か撃つとヴァルカン人は倒れた。 アーチャー:「アーチャーからリード。」 リード:『リードです。』 「クルーと遭遇したか。」 リード:「いいえ。」 アーチャー:『気をつけろ。正常じゃない、襲いかかってくる。』 「了解。」 ホーキンスがいきなり倒された。ヴァルカン人が複数いる。 銃を何発も撃たないと倒れない。ホーキンスは腕を襲われた。 電撃棒を使うホーキンス。ヴァルカン人は背後からリードに襲いかかる。 ヴァルカン人にフェイズ銃が浴びせられ、リードは解放された。 撃ったのはアーチャーだ。「大尉。大丈夫か。」 リード:「はい。…どうしたんでしょう。」 トゥポル:「…さらに 7名。この先、30メートルです。」 「船長。」 倒れたヴァルカン人が、もう起き上がってきている。 アーチャー:「ここを出よう。」 先頭を進むホーキンスは、銃を操作した。 トゥポル:「何をしてるの。」 ホーキンス:「麻痺じゃ甘い、殺人モードにセットした。」 「私達はヴァルカン士官を救助に来たの。」 「救助が必要だとは思えません!」 ホーキンスをつかむトゥポル。「聞こえなかった?」 アーチャー:「…麻痺にセットし直せ。」 ホーキンス:「はい、船長。」 歩いているヴァルカン人たち。 ホーキンス:「船長、こっちです!」 ヴァルカン人は振り向いた。 銃を構えるリード。「…動きません。」 ヴァルカン人のすぐ後ろに、ドッキングハッチがある。 近づくアーチャー。「宇宙船、エンタープライズ※11から来た。…聞こえてるのか?」 ヴァルカン人はそばのコンソールに触れた。隔壁が閉まっていく。 アーチャーとリードは止めようとするが、ハッチへの道は断たれた。 隔壁の操作盤は破壊されている。 アーチャー:「ほかに脱出路は。」 トゥポル:「ありません。」 背後のドアが開き、ヴァルカン人たちが銃を撃ってきた。反撃する。 トゥポル:「向こうへ。」 アーチャー:「行くぞ。」 ヴァルカン人は際限なく続いてくる。階段を上り、上のデッキへ入るトゥポル。 アーチャー:「急げ。」 最後に登ろうとしたが、ヴァルカン人につかまれる。 アーチャーはヴァルカン人を蹴ったり撃ったりしながら、何とか登りきった。 ハッチを閉める。下から叩く音がする。 コミュニケーターを使うアーチャー。「エンタープライズ。……おい、エンタープライズ!」 トゥポル:「通信システムが無事なら、ブリッジから連絡を取れます。」 汗をかいている。 「ブリッジは。」 「…この 7階上です。」 リード:「7階? クルーは何人いるんです。」 「全員生存していると仮定して、147名です。」 「…確か出発ベイは、このデッキのはずです。」 そばのコンソールを使い、船内の状況を見るトゥポル。 リード:「彼らのシャトルを使っては。」 トゥポル:「減圧されてます。小惑星がぶつかったんでしょう。」 アーチャー:「シャトルに戻るしかないな。」 「それは難しいです。防護壁が、全て閉じられています。」 ハッチの音が大きくなった。足でふさぐリード。 アーチャー:「とにかく動こう。腕はどうだ?」 ホーキンス:「大丈夫です。」 リード:「かなり、出血しています。早く処置しないと。」 アーチャー:「医療室はどこだ。」 トゥポル:「2階上です。」 「急ごう。…大丈夫か?」 「乗船してから精神の安定が…崩れ始めてます。クルーに起きていることが、私にも起きているんでしょう。」 「急いで、脱出しよう。」 小惑星へ向かうシャトルポッド。 タッカー:「ここならほかと、距離がある。埋蔵量もかなりあるようだしなあ。降りられるか。」 メイウェザーも環境スーツ用の服装だ。「僕の部屋より平らな場所が少ないです。」 タッカー:「パイロットだろ、頼むよ。」 「行きます。…回転速度を合わせました。」 「いい感じだ。200メートル。…左に流れてる。」 「了解。」 小惑星の地表にぶつかりながら、シャトルは着地した。 大きく揺れた。 メイウェザー:「…この着陸は記録しないで下さい。」 タッカー:「冗談だろ、勲章やれって推薦するよ。」 環境服を着て出てくる 2人。周りは複雑に動く小惑星だらけだ。 タッカー:「さっさと片づけるぞ。」 ドアを手で開け、中の部屋に入るアーチャーたち。リードは上から飛び降りてくるヴァルカン人に銃を浴びせた。 ホーキンスに包帯を巻いたリード。「よし。」 アーチャー:「原因がわかるか。」 トゥポル:「医者ではないので。」 スキャナーでヴァルカン人を調べていた。 「…だが科学士官だ。頼れるのは君しかいない。」 「最善を尽くします。…彼の名はソリン※12。セレヤの機関主任でした。知り合いです。」 うめいているソリン。 トゥポル:「私がわかりますか。…副司令官のトゥポルです。セレヤにいました。」 ソリンは声を上げた。 トゥポル:「私がわかりませんか。」 拘束されているのを、無理矢理解こうとするソリン。 トゥポル:「何が起きたんです。原因を知って、クルーを助けたいんです。…ソリン、私を見て。あなたは何かに冒されてる。…制御が利かないの。…一体何が起きたの。…教えて!」 ソリンにはねのけられた。「私にも起きつつあります。」 アーチャー:「まだわからん。」 「…いいえもう始まってる。感情の制御が利きません。」 「…急いで、船から降りよう。」 「手遅れです。」 「エンタープライズに戻ってフロックスに診てもらおう。何が起こったのか突き止める。…だがまずは、シャトルに戻るのが先決だ。…防護壁を開ける方法は?」 首を振るトゥポルの肩に、アーチャーは手を置いた。「…防護壁だ。」 「……副司令室に行けば開きます。エンジンデッキです。」 「わかった。」 チューブを這って進むアーチャーたち。 動きを止めるトゥポル。 ホーキンス:「副司令官。」 アーチャー:「トゥポル? 休んでいる暇はない。」 「…助けはいりません。」 廊下に出てきた。先の道はふさがれている。 リード:「生体反応 2名。ハッチの 50メートル前方。エンジンデッキの方向です。」 アーチャー:「リードは私と来い。ホーキンスはここに。」 ホーキンス:「了解。」 座り込むトゥポル。 ホーキンスは水筒を開けた。「水です。…飲んだ方が、いいと思います。」 トゥポルは口にした。「…ありがとう。」 ホーキンス:「先ほどはすみませんでした。…これは救助任務です。…聞いてもいいですか。…ヴァルカン人には感情がないのに、なぜここのクルーのように凶暴になるんです?」 「みな誤解している。…私達は単に感情を制御しているだけです。自らの意思で。…何らかの要因で、その制御が利かなくなったんでしょう。」 「だからって人殺しまで。」 「…かつて我々、ヴァルカンは…すごく凶暴な種族だった。互いに殺し合ったわ。…い、いつも人を疑い憎み合っていた。」 チューブを進むアーチャー。 リード:「あと 5メートル。」 ハッチを開けるアーチャー。銃を構えるリード。 先には誰もいない。だが突然、脇から 2人のヴァルカン人につかまれるアーチャー。 発砲するリード。アーチャーはもう一人のヴァルカン人を何度も殴り、倒した。 アーチャー:「…まだ残ってるか。」 リード:「…今はいません。」 フェイズ銃を拾うアーチャー。「ホーキンス。」 ホーキンス:「はい、船長。」 アーチャー:『邪魔は片づけた。』 「了解。すぐに向かいます。」 鉱石を集めるメイウェザー。「トレリウムの合成中に、事故が起きたそうじゃないですか。」 タッカー:「大したことないさ。…言うほどのことじゃない。」 「シャトルに載せてほんとに大丈夫なんですか?」 「心配すんな。液体でない限り安全だ。」 地面が揺れた。そばで砂が降り、空間異常が通り抜ける。 サトウの通信。『エンタープライズから、タッカー少佐。』 タッカー:「どうした。」 サトウ:「少佐の現在位置で空間異常を感知しました。」 タッカー:『いま見たよ。』 「少佐のいる小惑星※9のコースが変わり、密集エリアに向かっています。」 巨大な小惑星が近づいてくるのが見える。 |
※12: Solin |
シャトルポッド内に戻ったメイウェザー。「シートにつかまって下さい。」 タッカー:「俺のことはいいから、早く脱出しよう。」 細かい破片がシャトルにぶつかる。離陸した。 巨大な小惑星のそばを抜ける。 メイウェザー:「右舷スラスター、ダウン。」 タッカー:「破片がマニフォルドに入った。吐き出せるか。」 シャトルポッドのすぐ後ろでぶつかる小惑星群。 シャトル内では火花が飛ぶ。 メイウェザー:「脱出。スラスターは片側のみです。」 タッカー:「戻れるか?」 「恐らく。」 「こちらシャトルポッド2 だ。」 サトウ:『どうぞ、少佐。』 「帰路についたがダメージを受けた。ドッキングは荒れそうだ。準備を頼む。」 サトウ:「了解。」 天井の穴を抜け、降りてくるアーチャーたち。モニターが並んだ部屋だ。 アーチャー:「ドアをロックしろ。」 閉めるリードとホーキンス。 トゥポル:「通信機が壊れてます!」 アーチャー:「修理できるか。……トゥポル?」 「何!」 「…修理をする方法はあるか?」 「…補助送信機があります。…そこにアクセスできれば…通信は可能かと。」 リード:「船長。ロックコードを、暗号化しました。しかし、力ずくで来たら。」 大きく被害を受けたシャトルポッド。制服に戻ったメイウェザーも、発着ベイにいる。 部下に話すタッカー。「インパルスアッセンブリがやられたようだ。エンジンカバーを開けて、検査してみてくれ。」 サトウ:『ブリッジからタッカー少佐。』 通信機に触れるタッカー。「タッカーだ。」 サトウ:『船長から通信が入っています。急用のようです。』 「つないでくれ。」 『どうぞ、船長。』 アーチャー:『トリップ、シャトル2 で迎えに来て欲しい。どのくらいで来られる。』 タッカー:「実は小惑星フィールドで事故りまして、出せるには…あと 2、3時間はかかりそうです。何か問題でも。」 アーチャー:「ヴァルカンのクルーが…異常を来してる。…バイオ・データを送信する。フロックスに、分析させてくれ。彼らを救う方法がないかどうかな?」 タッカー:『了解、ほかには。』 「早くシャトルを直せ。」 タッカー:「了解。」 アーチャー:『以上だ。』 「聞こえたか? 修理チームを呼んでくれ。」 セレヤ。 部品をセットするトゥポル。「防護壁のコントロールが切れてる。補助グリッドを通じて、つなぎ直します。…リード大尉、作動装置の回路はつないだ?」 リード:「はい、終わりました。」 トゥポルが部品に触れようとすると、電流が流れた。 アーチャー:「大丈夫か。」 リードに言うトゥポル。「何をしたの!」 リード:「…指示通りに回路をつなぎ直しただけです!」 リードを押しのけるトゥポル。「…正しくつながっていないじゃないの!」 部品を取り出す。「ロックメカニズムがオーバーロードしたわ!」 アーチャー:「だったら別の方法を試せばいい。」 「…何をしても無駄です。回路がショートしたんですよ!」 トゥポルは部品を投げつけた。台を叩く。「見張っておけばよかった! ……私の邪魔をしたいのか。…だから司令センター※13でもコソコソしてたんだ。」 「何のことを言ってるんだ。」 「ズィンディの星図です。私に隠れて分析してたわ。私には内緒で。」 「誰も、君の妨害などしていない。この船から安全に脱出できるよう、手を尽くしているだけだ。」 リード:「何とかなりそうです。パワーグリッドをオーバーロードさせ、船中のシステムを停止させるんです。防護壁※14のメカも含めて。」 トゥポル:「リアクターは既に不安定です。…メインパワーを停止させれば、反物質が漏れ出します。リアクターに亀裂が入るわ。」 アーチャー:「ほかに選択肢はない。」 「……私達を殺す気ね。」 トゥポルはフェイズ銃を向けた。「ヴァルカン人を信じてない。…昔からそうだった。」 リード:「船長。殺人モードです。」 アーチャー:「…銃をよこせ。」 トゥポル:「よく覚えてるわ。…あなたはヴァルカン人を責めた。父親の研究を認めなかったことで。…だから私達に復讐する気ね。…撃つわよ!」 「聞いてくれ、これは救助任務だ。我々はクルーを救いに来た。」 「嘘をつくな。彼らを殺す気だ!」 「もしそうなら…なぜ我々はフェイズ銃を『麻痺』にセットしている? …論理的じゃない。」 ドアを叩く音が響いた。それでトゥポルがひるんだ隙に、飛びかかるアーチャー。 フェイズ銃を落とすトゥポル。逆に突きつけるアーチャー。 脳の状態がモニターに表示されている。 タッカー:「そんなバカな。トゥポルはずっとトレリウムを研究してたが、何の異常もなかったぞ。」 医療室のフロックス。「そりゃあそうでしょうなあ。あなた方は、トレリウムD の合成に成功しなかったんですから。しかしセレヤは、不幸にもトレリウムD を含有する小惑星フィールドに迷い込んでしまった。トレリウムD はヴァルカン人の神経系統を冒すのです。感情を制御する神経経路を停止させます。残念ながら、崩壊速度は加速している。」 廊下を歩いてくるヴァルカン人。壁を開け、中の部品を抜き取った。 アーチャーは尋ねた。「手遅れ?」 フロックス:『トゥポルは処置できますが、すぐにシナプスの再生を始めなければ。』 「…ほかのヴァルカン・クルーは。」 音声が乱れる。「フロックス、聞こえるか。」 『手の施しようがありません。長時間トレリウムを浴びすぎている。神経の損傷が激しすぎます。彼らは死ぬ。』 トゥポル:「嘘だ! クルーを見殺しにする気だ。」 アーチャー:「140人以上のクルーがいるんだぞ?」 フロックス:『残念ですが彼らは。』 「エンタープライズ。…フロックス聞こえるか、答えろ!」 リード:「通信システムダウン。」 ホーキンス:「船長! 六フッ素ガス※15をまき始めました!」 部屋の下から、白い気体が入ってくる。 |
※13: 吹き替えでは「司令室」。この訳語が使われる区画はブリッジ後部の Situation Room であり、第3シーズンになって導入された司令センター (Command Center) とは別です ※14: 吹き替えでは「ヴァルカン方式 (のメカ)」。bulkhead と Vulcan を聞き違えたようです…。なお bulkhead は最初だけ「隔壁」と訳されていましたが、あとは「防護壁」になっています ※15: hexaflourine 吹き替えでは単に「フッ素ガス」 |
壁を棒で叩き続けるヴァルカン人。コンソールを操作する者もいる。 咳き込むリード。 アーチャー:「止めろ!」 リード:「無理です、環境制御装置を迂回させてる※16。」 トゥポル:「船を破壊から守ってるんです。」 アーチャー:「…オーバーロードを始めてから…爆発までは。」 リード:「…約15分か、それ以内です。」 うなずくアーチャー。 トゥポル:「やめろー!」 アーチャー:「ドクターが言ってただろ? 彼らは無理でも君は助かる。」 「人殺しー!」 「脱出するぞ。」 ホーキンスから、もと入ってきた天井の穴へ向かう。 トゥポルにフェイズ銃を向けるアーチャー。「マルコム。」 リード:「始まります。」 「トゥポル。」 従おうとせず、咳をするトゥポル。 アーチャー:「急げ!」 トゥポルは仕方なく登っていく。副司令室のドアが開き始め、ヴァルカン人の手が見える。 アーチャー:「マルコム!」 リードが操作を終えると、警報が鳴り始めた。上へ向かうリード。 入ってくるヴァルカン人。アーチャーも逃げ出す。 廊下を歩くヴァルカン人。大きな火花が散る。 登ってくるリード。揺れる船。 一行は廊下を歩いていく。 セレヤの船体では、あちこちで爆発が起こる。 また大きな揺れがアーチャーたちを襲った。 リード:「時間がありません!」 来た道を引き返そうとするトゥポル。 アーチャー:「待て。」 トゥポル:「放せ! いやだ。…放せー!」 「ここには、おいていけん。」 ドアを開けるリードとホーキンス。天井から破片が降ってくる。 アーチャー:「あと 20メートルだ。」 かたわらには絶命したヴァルカン人がいる。それを見るトゥポル。 ホーキンスは立ち止まり、下を覗き込んだ。「船長!」 廊下の途中に大きな穴が開いている。下に落ちたら戻れない。 リード:「ジャンプ力に自信は?」 近づいてきたヴァルカン人を撃つ。 トゥポルをホーキンスに預けるアーチャー。「頼む。リード。」 そばに落ちている梁を運ぶ。穴の上に置き、向こう側に橋として渡した。 上に乗り、強度を確かめるアーチャー。 戻ってきてトゥポルをつかむ。「来い。…大丈夫だ。」 トゥポル:「私に触るな!」 「私が手を貸してやる!」 「今度触ったら殺す!」 飛びかかってくるトゥポルに、フェイズ銃を撃つアーチャー。意識を失ったトゥポルを抱える。 ゆっくりと渡っていく。さらにヴァルカン人が大挙してやってきた。 撃っていくリードとホーキンス。まだアーチャーは渡りきれない。 リードはホーキンスに言う。「行け!」 やっとで反対側に行ったアーチャー。 リード:「早く行け!」 渡り出すホーキンス。穴の左右からもヴァルカン人が手を伸ばしてくる。 一人がバランスを崩し、梁につかまった。ホーキンスを穴に引きずり込もうとする。 ホーキンスはヴァルカン人の顔を蹴った。落ちていくヴァルカン人。 渡りきったホーキンスに命じるアーチャー。「手を貸せ。」 力ずくで隔壁を開ける。まだ撃っているリード。 隔壁の先にドッキングハッチが見える。ホーキンスは近くの金属を手に取り、隔壁の下に挟んだ。 橋へ向かいながら撃ち続けるリード。一気に渡りきり、梁を下へ落とした。 ヴァルカン人たちはどうすることもできない。4人は全員隔壁の向こうへ入った。 挟んでいた金属が取られ、隔壁は閉まった。穴に落ちていくヴァルカン人もいる。 爆発が続くセレヤ。その端に、シャトルポッドがドッキングしている。 操作するアーチャー。 リード:「船長。」 アーチャー:「ドッキングクランプが外れない。…スラスターに、全パワー。」 ホーキンス:「…通信です。」 もう一隻のシャトルがセレヤへ向かう。 タッカー:「ご無事ですか。」 アーチャー:「クランプが引っかかってる。手を貸してくれ。」 タッカー:『スタンバイ!』 エネルギー兵器を発射するシャトルポッド2。 ドッキングクランプを破壊し、アーチャーのシャトルは離れた。 タッカー:『大丈夫ですか。』 アーチャー:「船が爆発する、急いで離れろ!」 セレヤで爆発が続く。逃げる 2隻のシャトルポッド。 ついに大爆発を起こし、粉々になるセレヤ。 アーチャー:「…アーチャーからシャトル2。まだ生きてるか?」 タッカー:『ええ何とか。エンタープライズで会いましょう。』 アーチャーはため息をつき、リードと顔を見合わせた。後ろで横になっているトゥポル。 トレリウムD の鉱石が置かれている。 タッカー:「60キロ以上あります。船首部分は、覆えるでしょう。」 アーチャーはケースを閉めた。「トゥポルの予防接種薬が見つかるまで、保管しよう。…第一貨物室の、バイオハザード・ロッカーに。」 発着ベイを出ていく。 タッカー:「了解。」 医療室に入るアーチャー。「どうだ。」 フロックス:「救出に間に合いました※17。シナプス経路は回復しつつある。しかし感情制御が完全になるまでには、数日かかるでしょう。」 「トゥポルと話したい。」 カーテンを開けるフロックス。ハイポスプレーを打った。 目を覚ますトゥポル。何も着ておらず、布を掛けている。 アーチャー:「治療に成功した。…すぐに治る。」 トゥポル:「…セレヤは?」 「うん。全壊した。…残念だが、仕方なかった。」 フロックス:「発見した時点で、既に彼らの運命は決まっていました。…手短に。」 離れる。 トゥポル:「…タッカー少佐は成功を?」 アーチャー:「どうかな。十分な量のトレリウムを採取したが、ヴァルカンのクルーを汚染したのはトレリウムD だと判明した。…君もそうだ。」 「……船の防護を優先すべきです。…近くの惑星で降ろして下さい。」 「そんな気は毛頭ない。」 起き上がるトゥポル。「たかが一クルーのために、大切な任務を危険にさらす気ですか。セレヤのクルーは全滅しました。…エンタープライズも例外ではありません。」 アーチャー:「きっと何か方法はある。…だがクルーを置き去りにする気はない。何があろうとな。…自分が人の道を外れた者が人類を救うことなどできん。」 通常飛行中のエンタープライズ。 映画が上映されている。『この先は行き止まりです…』 フロックス:「蝶ネクタイの探偵は、死んでないんじゃないかと思うんですけどねえ、フフン。」 ポップコーンを食べている。 タッカー:「あいつは火事で死んだじゃないか。」 「ああ、あの男ねえ。そうとは限りませんよ? あの死体は配達に来た男のものかもしれない。足の不自由な。家を出なかったでしょ。」 「あの庭師は? 彼もいたぞ?」 「背が高すぎる、フン。20世紀の遅れた検死医でも、それくらいわかりますよ、フフン。」 「フン。」 トゥポル:「最後まで観ていれば、わかるんじゃないですか?」 紫色の服※18だ。 「…ミステリー映画ってのは犯人を推理しながら観るもんなんだ。論理を使ってね。君の仲間には受けるんじゃないかあ?」 「…論理を使うなら、静かに御願いします。」 口を開けるタッカー。映画の映像が乱れる。 食堂が暗くなった。 アーチャーの通信。『全クルー配置につけ。戦術警報だ。』 出ていくクルー。 廊下を歩くトゥポル。 何者かの気配がある。前にも。 トゥポルはターボリフトに入る。いつの間にか隣に、セレヤのヴァルカン人がいた。 押しのける。ターボリフトを降りると、廊下で火花が散っている。 襲いかかってくるヴァルカン人。何人もいる。 取り囲まれるトゥポル。 フロックスの声。「トゥポル。」 フロックス:「トゥポル!」 トゥポルは目を覚ました。 ヴァルカン人の顔が迫る。 フロックスはトゥポルを押さえた。「大丈夫。ここはエンタープライズだ。…安全だよ。」 トゥポルは、また横になった。 |
※16: 吹き替えでは「環境制御装置から放出してる」 ※17: 吹き替えでは「じき、ここを出られます」 ※18: 赤、青、白の服に続いて初使用 |
感想
またありがちと言ってしまいますが、ゾンビとなったヴァルカン人の話。短いながらも効果的なプロローグ、一日前に戻る描写など、面白い部分もあるにはあるのですが。ただ最後はやっぱり蛇足ですね。途中で一度だけヴァルカン人が銃を使っているシーンがありましたが、入れなかった方がよかったと思います。クライマックスで手だけ伸ばしてワーワー言っているのが、無意味になってしまいますから。 脚本に関わっているのは新たな原案編集の Jonathan Fernandez と、製作協力の Terry Matalas。ただ 2人とも前話の Friedman 同様、担当したのはわずか 1〜2話です。今回、タイトルやテロップが画面からはみ出ているのが気になりました。本国で HDTV 放送に切り替わったせいかと思いましたが、それは来週のエピソードからでした (なお第4シーズンからは撮影がデジタル収録)。トリミング作業を米国でやっているとしても、何ともお粗末ですね。 |
第56話 "Rajiin" 「美しき潜入者」 | 第58話 "Exile" 「孤独な亡命者」 |