USS Kyushuトップ | hoshi.sa.to

エンタープライズ エピソードガイド
第27話「暗黒からの衝撃波」(後)
Shockwave, Part II

dot

・イントロダクション
※1スリバン船に取り囲まれたままのエンタープライズ。
トゥポル:「船長は乗っていません。そちらのセンサーで、確認できるはずです。」
スクリーンに映ったシリック。『お前たちは信用ならん。奴の居所を教えないとどういうことになるかわかっている…』
トゥポル:「では御自身で、確認するか…兵士に探させては?」
『ワープを解除しろ、これから乗船する。』 シリックは通信を終えた。
リード:「全ドッキングポート※2に、保安班配置。」
トゥポル:「こちら、トゥポル。今の大尉の指令を取り消します。」
タッカー:「本気か? スリバン人が大挙して来たら、船を乗っ取られちまうぞ?」
「我々は既に包囲されています。敵はエンタープライズのワープコアに照準を合わせているんですよ。…リード大尉。」
確認するリード。
トゥポル:「…ほかにいい方法がありますか?」
タッカーは首を振った。
エンタープライズにドッキングするスリバン船。


※1: このエピソードは、第2シーズン・プレミアです。TNG・DS9・VOY とは異なり、西暦の区切りとは連動していません

※2: 原語では「第1、第2、第3ドッキングポート」

・本編
31世紀の地球。
残骸の中を歩くアーチャー。「なあ、ダニエルス。ここが随分前から廃墟だって言うなら、君たちはここで何をしてる。どう見ても、この世界が君らにふさわしいとは思えない。」
ダニエルス:「タイムトラベルは H・G・ウェルズ※3の小説とは全然違います。もっと…複雑なんです。あなたには理解できない。」
「そうかな?」 ダニエルスの腕をつかむアーチャー。「いいか、君の小さな理想郷が消えたことには同情もする。だが、君の話が真実で、ほんとに私を 800年後の未来に連れてきてしまったと言うなら、何か解決策を示してくれ。」
「そんなものありません。…確かに私は、ここにいるべきでない。もちろんあなたもね。でも…現実に、存在してる。」 笑うダニエルス。「あなたを連れてきたのは、時間の流れを守るためだ。…こんな結果を招くとは。」
何かに気づき、驚いている様子のダニエルス。
アーチャー:「どうした。」
ダニエルス:「消えてる。」
「…何が。」
「モニュメントです。そこにあった。あそこの、ライブラリと同じ通りに。元からないようだ。」
「だからどうだって言うんだ。」
近づき、周りを見渡すダニエルス。
アーチャー:「誰の記念碑だ。」
ダニエルス:「人じゃない。」
「じゃ何の。」
「組織です。惑星連邦※4。あなたの時代にはまだなかった。」
「未来の組織か。」
ダニエルスは必死に探している。
アーチャー:「まあいい。消えたモニュメントは思い出にするんだな。それで、そのライブラリはどこだ。」
ダニエルス:「そこを下ったところです…あるとすれば。でもあっても情報は取り出せない、データは全て電子化されてる。」

図書館に入っていく 2人。
中には、天井まで届く本棚が並んでいた。
ダニエルス:「なぜ本が。紙の本なんて、あるはずないのに。」
アーチャー:「せっかくだ、今朝私が連れてこられるまで、この千年間君らが何をしてきたのか、じっくり調べてみようじゃないか?」

エンタープライズのドッキングポートには、スリバン船が連なっている。
廊下を歩くスリバンたち。スキャナーを使って部屋を捜索している。

機関室も同様に調べられる。

ブリッジにあった、ディスクを調べたスリバン※5。「コピーではありません。」
シリックはサトウに銃を向けた。「本当か。」
トゥポル:「スキャナーの結果を疑うの?」 他のクルーと同じく、スリバンに取り囲まれている。
「どうなんだ。」
サトウ:「コピーする暇などなかった…。」
タッカー:「手を出すな。」
シリックは部下に命じた。「…銃を下ろせ。もし船長が見つかったりしたら、我々を欺いた罰を受けてもらうぞ。お前ら全員きっちりとな。」
ターボリフトから出てくるスリバン※6。「船長はいませんでしたが、痕跡がありました。」
スキャナーを受け取るシリック。「どこで。」
スリバン:「リフト内です、1、2時間前ですね。」
「…そういえば私がこの前船長に会った時奴は、『時間冷戦』の話をしていた。一体どういう話だったんだ。」
トゥポル:「船長はクルーのダニエルスが未来人だと信じていました。その彼を、あなたが殺した。」
「それで?」
「それだけです。」
シリックはスキャナーを見せる。「ターボリフトに時間移動の痕跡があった。どういうことなんだ。」
トゥポル:「船長が最後に目撃されたのは、ターボリフトに乗るところでした。」
「…話は本当らしいな。」 タッカーに命じるシリック。「お前、機関室とブリッジ以外の通信システムと、コンピューター端末を全て切るんだ。」 続いてスリバンに言う。「クルー全員自室に拘束しろ、逆らう者は容赦するな。」
スリバン:「了解。」
スリバンに触れられたタッカーは抵抗した。「触るな!」
トゥポル:「この状況では、素直に従うしかありません、少佐。」
ブリッジを出されるクルー。

エンタープライズは向きを変えた。

宇宙艦隊司令部。
ソヴァル※7:「予定を 3日過ぎた。」
フォレスト:「ソヴァル大使。…船長はパラーガ2号星※8の悲劇がエンタープライズの責任ではないという証拠をもって、こちらに…」
「宇宙艦隊はトゥポル副司令官と医療士官を、ヴァルカン船ディキーア※9に呼び戻すという指令も出したはずです。…帰還予定日を 3日過ぎた。」
ウィリアムズ※10:「エンタープライズの居所を把握してるんでしょ。ディキーアの長距離センサーで。」
「…アーチャー船長のミスで、3,000人の命が失われたのですよ? …彼らには艦隊から地球への帰還命令も出されている。任務は終わっているのに命令を無視しています。」
フォレスト:「中佐の質問にお答え下さい。…エンタープライズを感知したんですか。」
「…何隻もの船と航行中だと、ディキーアの報告だ。今はセンサーの届かない位置にいて…」
ウィリアムズ:「どんな船とです!」
「距離が離れすぎていて識別不能でした。エンタープライズが我々の呼びかけを無視し、艦隊の指令に逆らっている以上、ディキーアで追跡するしかありません。」
フォレスト:「アーチャーはあなたの直属じゃない!」
「ええ、違いますよ? だが副司令官は部下です。トゥポルが船長の今の行動に従うはずはないですから、拘束されていると考えざるをえません。」
ウィリアムズ:「アーチャーをよく知らないからそんなことを。彼はヴァルカン人を誘拐するような人物ではありません!」
フォレスト:「結構。…追跡して下さい、私はアーチャー船長を信じています。…彼は冷静に行動している。」
ソヴァル:「どうですかな?」 他のヴァルカン人と共に出ていく。


※3: H.G. Wells
(1866〜1946) ハーバート・ジョージ・ウェルズ (Herbert George Wells)。DS9第137話 "Far Beyond the Stars" 「夢、遥かなる地にて」でも言及。VOY第118話 "Relativity" 「過去に仕掛けられた罪」の U.S.S.レラティヴィティは、ウェルズ級とされています。吹き替えでは「SF 小説」

※4: 原語では惑星連邦の正式名 "United Federation of Planets" ではなく、単に連邦 (Federation) とだけ言っています

※5: スリバン兵士 Suliban Soldier (Michael Kosik) 声:阪口周平

※6: 名前は Raan (Keith Allan) ですが、言及されていません。声:中田和宏

※7: Soval
(ゲーリー・グラハム Gary Graham VOY第26話 "Cold Fire" 「管理者サスピリア」のタニス (Tanis) 役) ENT第15話 "Shadows of P'Jem" 「恩讐を越えて」以来の登場。声:山路和宏

※8: Paraagan II
前編では惑星名は言及されていません。吹き替えは単に「パラーガ」

※9: D'kyr

※10: ウィリアムズ中佐 Commander Williams
(ジム・フィッツパトリック Jim Fitzpatrick) ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」以来の登場。声:仲野裕、前回の楠見尚己さんから変更

エンタープライズがドッキングしている、スリバン螺旋艦。
スリバン:「ほかに、方法はないんですか。」
シリック:「必ず応答して下さったのに。」 コンピューターを扱っている。
「アーチャーを連れ帰らなかったので怒りを買ったのでは?」
「奴は船にいなかった。指令が欲しいのになぜ何の反応もないんだ。」
「連れ帰れない場合、エンタープライズを破壊せよと命令があった。星雲の外で、破壊してしまいましょう。」
「時間移動の痕跡を感知したんだぞ、奴が時を移動したのなら、新たな指令を待つべきだ。どこにおいでなんだ。」
「怒りを買ったならまた罰せられますよ? …エンタープライズを破壊しましょう。」
「…尋問の準備を。ヴァルカンを連れてこい。」

図書館のアーチャー。「惑星連邦に関する文献は、一冊も見あたらないぞ?」
ダニエルス:「でしょうね?」 本を読んでいる。
「モニュメントが消えていたからか?」
「あなたが消えたからですよ。」
「ある日私が消えて、歴史が全て塗り変わったと?」
「21世紀と 22世紀を調べてみましたが、ワープ5 計画までは、正しいようです。その後は全て違ってる。」
「…ワープ5 計画には大勢の人が関わっていたんだぞ?」
「今朝みんなを連れてきたわけじゃありません。あなただけです。」
アーチャーは一冊の本に目を留めた。「ロミュラン帝国※11だと? これは…」
本を戻すダニエルス。「読まない方がいい。」
アーチャー:「……わからんな。私が何をした。そんな重要なことに関わるとは。」
「あなただけじゃない。あなたはきっかけを作ったんです。」
「時の流れが、変わってしまったんだろ? つまり、どういうことなんだ。任務が続行されていたら…。」
「…別の結果になっていたでしょう。」
「それで?」
答えないダニエルス。
アーチャー:「…よし、じゃ惑星連邦は? 地球はその一員か。私もか。」
ダニエルス:「シリックはディスクではなく、あなたを狙った。彼が仕えている連中は、コロニーの爆発をエンタープライズのせいにするより、あなたを捕らえること自体に興味があったんです。連中は今後、あなたがどういう役割を演ずることになるのか、明らかに知っていたんですよ。22世紀からあなたを移動させたことで、まさに私が阻止しようとしていたことを、引き起こしたんです。」
「つまり?」
「私の世界を戻すには、ほかに方法はない。あなたを元の時代に帰すこと。」
「…ニワトリが先か卵が先かって問題だな。だが時間の入り口は消えたんだろ? テクノロジーも何もかも、ここには電気さえない。自転車を探してタイムマシンに改造するか?」
「…タイムマシンなんていらないかも。通信機はありますね。」
取り出すアーチャー。「スキャナーは。」
ダニエルス:「こちらに。スリバン人が仕えているのは、およそ 300年前から来た種で、タイムトラベルの能力こそありませんが、時を越えてイメージを送り返す能力を、身につけているんですよ。」
「その装置じゃ無理だろ。」
「ええ…少し、複雑に作り替えますが、簡単です。ハイスクールで習いました。」 何かの図を描き始めるダニエルス。「探すのにちょっと手間がかかる材料が、必要になりますけど。」
「……じゃさっさと始めよう。」
微笑むダニエルス。

スリバン螺旋艦。
暗い部屋でシリックは尋ねた。「アーチャーの居所は。」
トゥポル:「知りません。」 下着姿で、機械が取り付けられている。目は虚ろだ。
「未来人のボスは誰なんだ。」
「…ヴァルカン科学理事会は、タイムトラベルは不可能だという結論を下しました。」
「アーチャー船長もその意見に同意しているのかな?」
「意見ではありません。」
「アーチャー船長はその決定に、同意しているのか。」
「船長はクルーのダニエルスが未来人だと…思いこんでいます。」
「ダニエルスは消されたはず。」
「……船長は 2日前に、彼を目撃したと…。」
「船長は消えた。ダニエルスが奴を、過去か未来に連れ去ったと言うのか。」
「…タイムトラベルは不可能であると…ヴァルカン理事会は結論を出しています。」
ため息をつくシリック。

コミュニケーターを分解するダニエルス。
アーチャーが「今度こそ、多分銅だ。」 持ってきた道具を渡す。
舐めて確認するダニエルス。「やりましたね。これを叩き潰して、1ミリ以下の厚さに薄く伸ばして下さい。」
石を取り、叩き始めるアーチャー。

部屋でどうすることもできないリード。
何かの音が、通信機から聞こえてきた。
応答するリード。「もしもし。」
相手の声は全く聞き取れない。
リード:「もう一度。よく聞こえません。…まだよくわかりません。副搬送波に、変調してみて下さい。…かすかに。シグナルを増幅させて。」
タッカー:『どうだ。』
「ええ。通信は、使えないはずでは。」

分解した通信機に装置を当てていたタッカー。「そうだ。EPS グリッドを通して送った。Bデッキとなら通話可能だ。」

喜ぶリード。「無事なんですね。」

タッカーは周りを見る。「君も、無事らしいな。身動きは取れないが。」

尋ねるリード。「ほかのクルーは。」
タッカー:『トゥポルとはまだ連絡が取れていない。Cデッキのホシとトラヴィスともね。』

リードの声が流れる。『スリバン人を船から追っ払う名案はありませんか。』
タッカー:「まあ焦るなって。Cデッキの、ドア通信機につなぐ方法を見つけ出す方が先決だ。また連絡する、そこを動くな。」

微笑むリード。「出かけたくても、無理ですよ。」

作業を続けるアーチャー。「どうだ。」
ダニエルス:「エンタープライズの座標はわかっているんですが、量子識別機※12がないと船長が消えたその日のエンタープライズと交信するのは難しい。」
「ハイスクールで体験済みだろ?」
「机に量子識別機が揃ってました。」
「…なぜ同じ日じゃないとダメなんだ。私が消えた一週間前だって、構わないじゃないか。一ヶ月前とか。」
「私は今朝タイムトラベル史上最大の過ちを犯した。これ以上状況を悪くしたくない。」

スリバンが、トゥポルを部屋に入れて出ていった。
身体を震わせるトゥポルは、洗面所に入った。
水を飲む。

そのままの格好で眠りにつくトゥポル。
アーチャーの声が聞こえてきた。『トゥポル、こちらアーチャー。聞こえるか。』 空中に顔だけが浮かんでいる。乱れた映像だ。『…ダメみたいだ。』
身体を起こさず、つぶやくように応えるトゥポル。「行方不明です。」
アーチャー:『行方不明って誰が。副司令官。こちらアーチャー船長、よく聞こえない。もっとはっきりしゃべってくれ。』
トゥポル:「船長は消えました。ターボリフト内に痕跡が、どこに行ったのか。」
『ダニエルスに未来に連れてこられたんだ。それでリフト内に痕跡が残った。…大丈夫か。』
「…ヴァルカン科学理事会は決定を下しました。タイムトラベルは……ありえないと。」
『何でも構わんが、無事なんだな?』
「全員部屋に隔離されています。」
『君はどこにいる。』
「自分の部屋です。」
『いやそういう意味じゃなくて、エンタープライズの位置だよ。』
態勢を変えるトゥポル。「窓から螺旋艦が見えます。」
アーチャー:『トゥポル、よく聞いてくれ。君に頼みがある。何とかして君に、ダニエルスの部屋まで行って欲しいんだ。わかるね。』
「なぜ天井に。なぜモニターに出ないんです。」
『ここにはそういうテクノロジーがない。』
「未来にいるんでしょ。」
『トゥポル、以前心を開けと言ったこと覚えてるか。』
「…はい。」
『私が戻ることや、任務だけじゃない。未来に関わる一大事だ。これから言うことをよーく聞いて欲しい。私を信じてくれ。』
映像を見つめるトゥポル。


※11: Romulan Star Empire
吹き替えでは区別されていませんが、"Star" が入るのがロミュラン帝国 (Romulan Empire) の正式名称

※12: quantum discriminator

ドア通信機に装置を当てたタッカー。「ダメだ。部屋の外から切り離しピンにアクセスするしかない。」

会話できるようになっているメイウェザー。「ロックが開けないなら…EPS コンジットを使用してる、シャフトはどうです。エアーダクトと隣り合ってる。」

話すリード。「ダクト流は船が完成した時、ふさがれたはず。狭すぎて通れない。」

タッカーは尋ねた。「『狭い』って、どの程度だ。」

答えるリード。「大人には無理ですねえ。子供じゃないと。」

タッカーは言う。「ホシなら。」
リード:『可能ですが、どうかな。』
「どうだ、ホシ。やってくれないかな。」

同じく通信機の前にいるサトウ。「…ほかに力になれることはないの? 言語に関わることは? 狭いところは苦手なの。」

頼むメイウェザー。「あの空間を通れるのは君しかいないんだよ。ネイマン※13がいればよかったけど。彼女小柄だから。」

まだ下着姿のトゥポル。「時間がない。可能なら今すぐ始めて欲しい。サトウ少尉。」
サトウ:『ドクターの部屋まで何メートルぐらいですか?』
「4、50メートルってとこね。」

聞くサトウ。「リード大尉の部屋は。」
タッカー:『すぐだよ、ホシ。君ならできる、頼りにしてるぞ。』

上着を脱いだ姿で、ライトを持って通るサトウ。狭いシャフトはギリギリだ。

下を通るスリバンを見る。

ハイポスプレーを準備するフロックス。
天井から音が聞こえた。ハッチを開けると、手が伸びてきた。
フロックス:「ホシだな?」
サトウ:「当たりよ。」
「ご苦労さん。」
「ええ。とにかく早く済ませてしまいたいの。」
手渡すフロックス。「がんばって?」
ハイポスプレーをしまうサトウ。

進むサトウ。下の廊下に誰もいないことを確認した。
ハッチを外し、身体を入れる。
だが背中のシャツが突起に引っかかってしまった。
そのまま落ちてしまうサトウ。上にはシャツだけが残された。

ドアを開けるサトウ。中にいたリードは驚く。
サトウ:「黙って私の言うとおりにして。シャツを貸して?」 上半身は裸で、胸を隠している。
慌ててロッカーを開けるリード。

廊下を歩いていたスリバンたち。
声が聞こえた。トゥポルが座り込み、何かをつぶやいている。
周りを確認するスリバン。
もう一人は銃を向ける。「何をしてる。」
トゥポルの目は宙をさまよったままだ。
スリバン:「立て、ヴァルカン。立て!」 蹴り上げる。
連れて行かれるトゥポル。「いや! いや、やめて! いや!」
そこへリードとタッカーが、天井から下りてきた。
トゥポル:「離して! いや!」
タッカーたちは、スリバンをハイポスプレーで気絶させる。銃をトゥポルに渡し、スリバンを運んでいく。

サトウが待つ部屋に入るトゥポル。「何モタモタしていたの。危ないところだったわ。」
タッカー:「慎重に行動してたのさ。」 スリバンを入れ、リードに尋ねる。「ほんとにやってくれるのか? ボコボコにされるぞ。」
銃を受け取るリード。「本気です。」
タッカー:「30分ある。」
「十分です。」
ハイポスプレーをサトウに渡すトゥポル。「意識が回復しそうになったら、迷わずこれを使って。」
サトウ:「任せて?」
タッカー:「急ごう。」 サトウを残し、出ていく。

独り行動するリード。
スリバンがやってきた。ターボリフトに乗る。
廊下脇のパネル内に隠れていたリード。

ドアにつけられていたロックを解除するリード。
ダニエルスの部屋に入り、ロッカーを開ける。
ロッカーの中ではなく、扉に手を伸ばすリード。
すると、手が外見からはわからない空間に入っていく。
中から一つの機械を取りだした。
外に出、ロックを戻すリード。だがスリバンに囲まれていた。

倒され、血を吐くリード。
シリック:「我々がダニエルスの部屋の監視を怠るわけないだろ。」
リード:「…私としたことがうかつだった!」
リードを船長席に座らせるシリック。「そのようだな、今からじっくり考え直してもらおうか。私の質問に答えないとどんな目に遭うかよく考えるんだな。わかって頂けたかな、リード大尉。」
うなずくリード。
シリック:「よーし、ではこれが何の装置か答えるんだ。」
「知らない。」
殴るシリック。「答えろ。」
リード:「知らない!」
また手を振り上げるスリバン。
リード:「わかった!」
シリック:「よーし。」
「壊すよう指令を受けただけで、何の装置かは知らない。」
「誰に壊せと言われた。」
「…船長だ。あ…消える前に、あんたに見つかる前に壊せと。」
「見つかるとなぜまずい。」
「…誰かとの接触に使われないようにだ。相手は知らない! ほんとだ…。」
「大尉を部屋に放り込んでおけ。」

機関室にいるスリバンが、突然銃で撃たれていく。
他のスリバンが人影を見つけたが、背中から肩に手を伸ばされた。倒れる。
ヴァルカン首つかみをしたトゥポル。「少佐。」
急いでワープコアに近づくタッカー。

螺旋艦。
ダニエルスの装置を必死で操作するシリック。

エンタープライズのブリッジで、警告音が鳴り響いている。
スリバン:「機関室、どうした。応答せよ!」

装置の扱い方がわからないシリック。通信の呼び出しに応える。「何だ。」
スリバン:『反物質の流れが漏れています。』
「ワープリアクターを遮断しろ。」
『機関室から応答がないので、今チェックに行かせています。』
「また知らせろ。」 装置の操作に戻るシリック。

機関室のコンピューターには、「コア亀裂が進行中」と表示されている。
蒸気が噴き出している。突然ワープコアの横が爆発し、スリバンは吹き飛ばされた。
部屋から逃げ出すスリバンたち。コアは連鎖的に爆発する。

シリックが操作する装置の前に、イメージが現れ始めた。また呼び出しだ。
シリック:「何だ!」
スリバン:『人間というのは相当愚かな種ですねえ。服従より集団自殺を図るつもりですよ。』

ブリッジに流れるシリックの声。『機関室の状況は。』
スリバン:「手遅れでした。リアクターが危ない。」

指示するシリック。「螺旋艦を危険にさらせない。兵を撤退させてエンタープライズを星雲の外に追いやるんだ。」
スリバン:『時間が迫っています。曳航班に知らせてくれますか?』
「駄目だ、私は忙しい。」
イメージを見つめるシリック。

撤退するスリバン。エアロックに入る。
螺旋艦を離れたエンタープライズは、トラクタービームを出す何隻ものスリバン船によって移動させられる。

シリックの前に、人影が見え始めた。

星雲を出されるエンタープライズ。ナセルにダメージが見える。

話しかけるシリック。「ご命令を。聞こえますか。」

エンタープライズから離れるスリバン船。
ナセルからのプラズマ漏れが著しい。大きく爆発する。
船を操縦するスリバンにも揺れが伝わる。
プラズマに引火し、線を描いた。全てのスリバン船は星雲へ逃げていく。
だがエンタープライズは自力で針路を変えると、そのままワープに入った。

尋ねるトゥポル。「状況は?」
メイウェザー:「反物質の流れが、通常に戻りました。」
「…爆発装置を使いすぎたのかもしれませんね。右舷ナセルが相当ダメージを受けているようです。」
タッカー:「今度リアクター亀裂のふりをする時は、覚えておこう。※14
サトウ:「細胞船※15です、30隻、35。ワープで急接近。」
トゥポル:「少尉、コースとスピードを維持して。」

人影に話し続けるシリック。「この 2日間、ずっとあなたをお待ちしていました。ご命令に従いましたが、アーチャーはエンタープライズにいませんでした。時間移動の痕跡が発見されたんです。次の御指示を! …装置の操作法がわかりません、お力をお貸し下さい!」
人影は、何かをしゃべったようだ。
シリック:「おっしゃってることが、はっきり聞こえません! もう一度お願いします、お願いです、もう一度ご指示を!」
すると人影は、突然飛び出してきた。シリックを跳び蹴りする。
そのアーチャーは近づき、シリックを殴った。「何度でも言ってやる、間抜け野郎!」 銃を突きつけた。「いいか、変身したりカメレオンみたいに色を変えたりしたら…頭を吹っ飛ばしてやるから覚悟しろ!」


※13: ネイマン乗組員 Crewman Naiman

※14: 吹き替えでは「今度から爆発のふりだけすることにしよう」。既に「爆発のふり」は行っています

※15: スリバン細胞船 Suliban cell-ship
種別名が言及されるのは始めて

シリックを押しつけるアーチャー。「エンタープライズはどこだ。」
シリックはまだ話す。「聞こえますか! アーチャーを連れてきました、ここにいます。私をお許し下さい!」
アーチャー:「船はどこだ、シリック。」
「遥か彼方さ。」
「細胞船を何隻追跡させた! 答えろ!」
「知らん。20 か 30 か。」
「すぐ呼び戻せ。そしてデータディスクを返してもらおう! 立て!」
「ここから出られるもんか。」
「黙れ!」 部屋から出る前に、ダニエルスの装置を撃って壊すアーチャー。「歩け!」

ワープ中のエンタープライズを、ビームで攻撃するスリバン細胞船。
タッカー:「ホシ。ヴァルカン船はいるか。」
サトウ:「まだです。」
メイウェザー:「左舷船尾部分※16、防御プレートダウン。」
トゥポル:「コース変更、右舷 10度。」
エンタープライズは攻撃を受ける一方だ。
メイウェザー:「接近中。」
出てきたフェイズ砲が細胞船を攻撃する※17
サトウ:「司令船に追いつかれそうです。」
双方の応戦が続く。
メイウェザー:「左舷、装甲ダウン。腹部装甲もです。」
だが急に、静かになった。
サトウ:「突然どうして。」
メイウェザー:「弾の節約か、包囲されたんだ。」
スリバン船は何もしない。
トゥポル:「長距離センサーは、まだ使えるの。」
サトウ:「…ヴァルカン船はいません。」
すると、細胞船は離れていった。
メイウェザー:「副司令官。」
トゥポル:「ええ。」
タッカー:「…やったね! 船長だ。」
微笑むサトウ。
一隻のスリバン船が、後方から近づいてくる。
メイウェザー:「船が一隻、船尾に接近中。」
トゥポル:「武装解除。回線オン。」
操作するサトウ。
トゥポル:「エンタープライズよりスリバン船。」
アーチャー:『…エンタープライズ、どうぞ。』
タッカー:「ご無事で! よかった、船長。」

細胞船を操縦するアーチャー。「私も嬉しいよ、随分留守にした気分だ。千年ぐらいね。全員無事か。」

報告するトゥポル。「リード大尉が軽傷を負いましたが、幸い現在順調に回復中です。…船長、なぜ船長はほかの細胞船に阻止されなかったんですか。」
アーチャー:『宇宙艦隊の規則に反するとは思ったんだが、人質を取った。』 かたわらには、シリックが眠っていた。『こいつがお目覚めの頃には我々は遥か彼方だ。ドックの許可を求める。』
「許可します。」

別の船とドッキングしているエンタープライズ。
『航星日誌、補足。ヴァルカン船ディキーアと合流する。今後の任務については、宇宙艦隊とヴァルカン司令部で話し合われることになる。』
ブリッジに流れるソヴァルの声。『船長がディスクを入手したいきさつはいささか荒唐無稽ですが、エンタープライズがコロニーの爆発に責任がなかったということは、よくわかりました。』 フロックスを含めたクルーが話を聞いており、ヴァルカン人の姿もある。
アーチャー:「大使には荒唐無稽な話かもしれません、でも…私には…」
『最後まで言わせて頂きたい…。』 スクリーンにはフォレストやウィリアムズも映っている。『ディープスペース探査に出て一年に満たないというのに、あなたは様々な種と武力衝突を引き起こしています。ヴァルカンとアンドリア人の関係を一層悪化させ、我々が崇める聖地の破壊という悲劇をもたらした。※18さらに強制収容所から 89人のスリバン人を逃亡させた。※19任務の一環だと言うかもしれませんが、あなたの無謀と無責任が導いたものです。宇宙域にとって危険きわまりない。…爆発がエンタープライズのせいではなくても、私はヴァルカン最高司令部に宇宙艦隊への進言を変えないよう忠告するつもりです。エンタープライズは、呼び戻すべきです。』
タッカー:「あんたらは最初からこの任務を潰したかったんだろう! 俺たちは 3,600人を殺していないと証明したのに、事実を無視するのか? あきれるね!」
フォレスト:『よすんだ、少佐。…私は誰よりも君たちに、あの悲劇の責任がなかったことを喜んでいる。だがソヴァル大使の言い分も、一理ある。…艦隊司令部は今厳しい決断を迫られている。』
アーチャー:「…かつて私が、東アフリカ※20を旅した時に、ガゼルの出産に出会いました。感動的だった。赤ん坊は数分で自分の足で起きあがったんです。そして数分後には、もう歩き始めてました。群れと共に移動しながら、母親に寄り添うように。でも、人はそうはいきません、大使。ガゼルと同じ地球に生まれても、生まれ立ての人間は、無力なんです。ハイハイするまで、数ヶ月はかかる。さらに歩くまでに一年近く。我々のディープスペース探査も、それと似ています。よろけながら、足場を固めていく。それまでは、たくさんの過ちを犯すでしょう。でも我々は、その過ちから多くを学びます。人間というのはそういう存在なんです。…ご理解いただけなくて残念だ。」

地球のソヴァル。「なかなかユニークな例えでした。ですが…それであなたの行動が変わるかははなはだ疑問ですねえ? フン。」
トゥポルが話し出した。『一つの過ちから学ぶという概念は、我々ヴァルカンにとっても難しいものではありません、大使。我々の祖先は、野蛮な争いを何世紀も続けて初めて※21、我々の熱しやすい感情を抑える術を見つけました。聖地破壊の話が出ましたが、アーチャー船長が見つけたヴァルカンの監視施設はどうなんです? …我々ヴァルカン人もあの事件で、学んでいることを望みます。どう言い訳しても、聖地でほかの種を監視したのは、不名誉な行為としか言えません。船長の意見を否定する気はありませんが、過ちから学ぶのは人間だけの特性ではありません。任務は続行されるべきです。』

ソヴァルたちは出ていった。ブリッジにいたヴァルカン人士官たちも去る。
フォレスト:『後日証拠と、本日の議論を司令部で再検討することになる。当然ヴァルカン人からも意見を聞く。決定が出次第、すぐに知らせよう。幸運を祈る。…それでは。』 通信を終える。
トゥポルを見るアーチャー。

トゥポルの部屋。
寝ていたトゥポルは、ドアチャイムに応えた。「どうぞ。」
アーチャー:「もしかしたらクルーのフラー※22に、私がここへ来るのを見られたかもな。」
「彼女は分別がありますから。」
「ああ。」
「私に何か?」
「……君には感謝している。…提督によると、君が我々を擁護したなんて誰も信じなかったそうだ。監視施設を非難したこともだ。」
「提督から連絡が?」
「真夜中に叩き起こされた。信じられるかい?」
「いい知らせですね。」
うなずくアーチャー。「…君の説得のおかげだよ。」
出ていくアーチャーに、トゥポルは言った。「タイムトラベルは信じてません。」
アーチャー:「嘘だろ?」 去る。

エンタープライズはディキーアを離れ、ワープに入った。


※16: 吹き替えでは「左舷船尾

※17: 最近のシリーズでは珍しくありませんが、ワープ中に撃っています (スリバン細胞船のもビーム兵器)

※18: ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」および "Shadows of P'Jem" より

※19: ENT第21話 "Detained" 「テンダーの虜囚」より

※20: 吹き替えでは「西アフリカ」と誤訳。また、訳出されていませんが「20歳代前半に」旅したと言っています

※21: 吹き替えでは「野蛮な争いの後すぐに」。"only after" は「〜して初めて、やっとで」という意味です

※22: フラー乗組員 Crewman Fuller
吹き替えでは「もしかしたらクルーのフラーが、私に会いに来たんじゃないかと思って」「こんな時間には」。トゥポルの「分別がある」というのは、フラーが言いふらしたりしないという意味でしょう

・感想
前編がそうであったのと同様、いわゆる「後編」も ENT 初となります。残念ながら VOY で多かった後編と同じく、何とかストーリーを収束させることだけに終始してしまった感があります。前にシリックに殺されたダニエルス乗組員が生きていた謎や、結局彼や未来の地球がどうなったかは不明のままです (恐らく全て元通りなんでしょうけど)。謎といえばアーチャーが消えた後、シリックが未来人にコンタクトできなくなっていたのも何だか意味ありげですね。
最後の一連の「演説」はシーズン・プレミアらしい内容で、さらに「ENT というシリーズ自体も赤ん坊だから、見守って欲しい」という意図さえあったのかもしれません。本国では視聴率的にもかなり苦戦した第2シーズンですが、とりあえず見守りましょう。


dot

previous第26話 "Shockwave, Part I" 「暗黒からの衝撃波(前編)」 第28話 "Carbon Creek" 「スプートニクの飛んだ夜に」previous
USS Kyushuトップ | hoshi.sa.to | ENT エピソードガイド