エンタープライズ エピソードガイド
第15話「恩讐を越えて」
Shadows of P'Jem
イントロダクション
地球、サンフランシスコ。 ソヴァル※1:「ヴァルカン人にとっての損失は計りしれません。プジェム※2は我々が最も崇める聖地でした。」 フォレスト※3:「大使……この度の件は残念ですが、失礼を承知で言わせていただければ、最高司令部にも責任がある。監視施設の、偽装に使ってたんですから。」 「危険かつ好戦的な隣人を監視するのは当然です。…アーチャー船長が行かなければ、アンドリア人が施設に気づくこともなかった。…あなた方はディープスペースに進出して、半年で星域中を脅かす存在になっているのです。」 「それには同意できませんな、大使。あなた方の争いは、ずーっと以前から続いているはずだ。もしも、我々に知らせてくれていたら、悲劇は避けられていたかもしれん。」 「事前に警告しておいたはずです。彼は衝動的すぎる。ガードナー大佐※4の方が、遥かに船長にふさわしかったでしょう。」 「ヴァルカン人の大使に、船長の任命権はありません。」 「……以前のあなた方は、我々の教えを求めていた。状況が変わったことを残念に思います。今後ヴァルカンでこの件を話し合う予定ですが、その間我々の共同探査任務は、一時中断とします。」 出ていくヴァルカン人たち。 フォレストは部下を呼び出した。 『はい、提督。』 フォレスト:「アーチャー船長を呼べ。」 『了解。』 |
※1: Soval (ゲイリー・グラハム Gary Graham) ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」以来の登場。声:山路和弘 ※2: P'Jem ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」より ※3: フォレスト提督 Admiral Forrest (ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong) ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」以来の登場。声:金尾哲夫 ※4: Captain Gardner |
本編
エンタープライズ。 食事中のタッカー。「何でコースを変えたんです?」 アーチャー:「新しい星系を見つけたんだよ。コリダン※5だ。ここから 2、3光年なんで、寄ってみようと思ってな?」 「生命体は?」 「30億人以上のヒューマノイドがいる。…ヴァルカンは採掘権の同意を取り付けてるらしい。ホシに言って、首相にメッセージを送らせたら、正式に首都への招待を受けたんだ。」 「じゃ靴磨いとかなきゃな。」 「ん…悪いが、ホシと行くよ。今回はな? 首相から、一緒に連れて行ける人数を限定されているんだ。向こうも慎重になってる。」 「…ほう?」 「悪く思うなよ。データベースによると、彼らはこの星域最大の宇宙船を建造する予定だそうだ。ヴァルカンよりずっと高性能な船になるらしい。」 「ワープ速度は?」 「驚くな? 私が聞いたところじゃ、ワープ7 らしい。ま、それも、あくまで噂だ。」 「ワープ7!」 「うん。…ホシにカメラを貸せよ? 写真を撮ってきてもらえばいい。」 タッカーは無言になった後、言った。「ちょっと船長! 勘弁して下さいよ!」 笑い出すアーチャー。「コロッとだまされたなあ。」 タッカー:「絶対ついていく。」 サトウ:『ブリッジからアーチャー船長。』 アーチャー:「どうした。」 『艦隊司令部から、通信が入っています。フォレスト提督からです。』 コンソールに映ったフォレスト提督に尋ねるアーチャー。「死傷者は?」 フォレスト:『アンドリアは砲撃開始 3時間前に警告を出したそうだ。…おかげで、全員無事脱出した。』 「ヴァルカン側の反応は?」 笑うフォレスト。『いいわけないだろう。』 アーチャー:「…私に言わせれば、アンドリアの攻撃は当然だ…」 『ジョン?』 「逆の立場だったらヴァルカンも同じことをしていたはずです。」 『ヴァルカンにはアンドリアを監視せねばならない理由があった。例の、アンドリアの攻撃隊は非常に危険な集団だ。』 「ヴァルカンは我々に対しても同じことを言っていました!」 『君の功績は認めるが…もっと慎重になれ。種族間の争いに、地球を巻き込むわけにはいかん。』 「…わかってます。」 『…悪いニュースはこれだけじゃないんだ。』 エンタープライズ右舷側面の窓にもたれかかり、外を見つめていたアーチャー。 作戦室のドアチャイムが鳴る。「入れ。」 トゥポルがやってきた。 アーチャー:「かけたまえ。」 言われたとおりにするトゥポル。 アーチャー:「フォレスト提督と話をした。…非常に言いにくいんだが、アンドリアがプジェムを破壊したそうだ。」 パッドを受け取るトゥポル。「生存者はいるんですか?」 アーチャー:「幸い攻撃前に、修道士や監視部員に警告があったらしい。全員無事脱出した、心配ない。」 「安置してあった遺骨や秘宝は?」 「わからん。最高司令部は我々の責任だとし、君を……ヴァルカンへ、連行すると言っている。迎えが来るのは 2日後だ。」 立ち上がるトゥポル。「…2日ではこの星域をスキャンしきれませんので、メイウェザー少尉に引き継ぎます。」 アーチャー:「言葉が足りなかったようだ。…これは一時的な移送ではない。職を解かれる。」 「状況はよく理解しています。最高司令部は最適な後任を配属するでしょう。」 「決定に疑問があるのは私だけか? 君は、全く動揺していないようだが?」 「私がエンタープライズに乗船するのは 8日間のはずでした。無期限にエンタープライズの乗船を許されるなどとは思っていません。」 「司令部はスケープゴートを探しているんだ。責任を取らせる相手を。私を処分できないから君を標的にした。ヴァルカン人にしては感情的なやり方だよ。」 「…やはり私には重大な責任があると思います。」 「それは自分を買いかぶりすぎじゃないか? データでプジェムを見つけたのは私だ。上陸班を指揮したのも。私は正式に司令部に抗議をするつもりでいる。」 「しても何も変わりません。」 「どうしてわかるんだ。」 「船長。…私は単にオブザーバーとして配属されたわけじゃない。ヴァルカンの利益を守るのも私の務めです。司令部はその務めを果たしていないと、判断したのでしょう。」 「だからって船から降ろす権利はない。…君は私のクルーだ。」 「あと 48時間は。……ほかに御用は?」 「…ない。」 出ていくトゥポル。 廊下を歩くタッカー。「それももちろん冗談ですよね?」 アーチャー:「すまん。今回はトゥポルを連れて行きたいんだ。彼女と二人で、過ごす時間が欲しい。」 「やっぱ冗談なんでしょ?」 「…トゥポルが移送される。ヴァルカン船が迎えに来るそうだ。」 「え?」 「昼食の時に話すよ。」 食堂にいるトゥポル。 フロックス:「いいですか?」 隣に座る。「ああ…船を降りるって聞きました。お別れは辛いですな? …新しい配属先でも、ご活躍されることでしょう。」 トゥポル:「まだ配属先は決まってません。」 「ああ…てっきり、ご栄転かと。」 「ヴァルカンの上層部はプジェムが破壊された件を私の責任だと考えています。」 「あなたに、異論はないんですか?」 「…論理的な結論です。」 「あなたのクルーに対する貢献度を知れば、司令部も考え直すのでは? 地球の宇宙船に配属されたヴァルカン士官はあなたが初めてじゃない。司令部は何度か、地球の船に士官を送ったがもってせいぜい、数週間。地球のクルーは無秩序で、我慢ならないらしい。」 笑うフロックス。「だがあなたは半年もいる。しかもクルーに耐えているどころか、溶け込んでいます。その業績に誇りをもつのは、論理的では?」 「『誇り』は人間の自己満足でしょう?」 「…そうかもしれません。…そういえばどうやら一部のクルーがあなたのために、パーティを準備してるようですよ? 『お別れパーティ』とやらのつもりでしょう。あなたも心づもりをしてた方がいい。」 フロックスは立ち去った。 シャトルポッドが発進した。 互いを見たアーチャーとトゥポル。 アーチャー:「…それで? コリダンの情報は?」 トゥポル:「居住人口は 30億人。ほとんどが、赤道付近にある数カ所の街に集中しています。」 「私が知りたいのはそういうことじゃない。コリダンとはもう何十年の付き合いだろ? どんな文化なんだ。…彼らの食べ物は。娯楽は?」 「データベースにその種の情報はありません。」 「フン。そうだろうな?」 「なぜこの任務に私が選ばれたんです?」 「コリダンの人々とは、初対面だ。彼らがよく知っている種族を同行させた方が都合がいい。」 「迎えが来るまでにすべき仕事が山ほどあるんです。」 「心配ない。そう長くはかからんさ? うん…最後に、楽しんで欲しくてな? 君の船長との任務を。……気が進まんならエンタープライズへ戻ってくれてもいい。」 「…首都まで後数分です。今引き返すのは燃料の無駄だと思います。」 降下していくシャトル。 タッカーからの通信が入った。『エンタープライズから船長。』 アーチャー:「どうした、トリップ。」 『ポッドに、不審船が接近中です。』 「了解。」 トゥポル:「固定翼機の一種のようです。」 「首相は迎えをよこすと言ってたか?」 突然シャトルが揺れた。 トゥポル:「出迎えではなさそうです。」 相手の通信が響く。『異星人船に告ぐ。推力を 4分の1 に。針路を方位 4-1-7、マーク 5 へ。』 アーチャー:「回避行動を取る。プラズマ兵器、オンライン。」 トゥポル:「了解。」 「発射。」 武器を発射するシャトルポッド。敵船は避けた。 さらに攻撃を続ける。 |
※5: コリード Coridan 惑星。TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」のバーベル会議で、惑星連邦への加盟が検討されました。その際に加盟が認められたことが、TNG で明らかになっています |
外では雨が降っている、暗い部屋。 アーチャー:「…フーディーニなら、脱出できるだろうな。」 トゥポル:「次の任務にはその人を入れて下さい。」 「…ハリー・フーディーニってのはマジシャンだ。脱出専門のね。どんな物で、がんじがらめにされようと、そこから…脱出できる。ロープでも、鎖でも、何でも。」 アーチャーは後ろ手に縛られているようだ。 「とても、信じられません。」 トゥポルも抜け出そうとする。 「だから、魔術師って呼ばれてたんだよ。二重関節って噂もあった。…ヴァルカン人は、二重関節じゃないよな?」 「残念ながら違います。」 明かりがつき、ドアが開けられた。 複数の男たちが入り、アーチャーたちの頭に被せていた布を取る。 コリダン※6:「ヴァルカン人。コリダンに何の用だ。」 アーチャー:「その件なら私に聞け。」 「この女の上官か?」 「その通りだ。」 「見かけん種族だな。」 「人間だ。地球から来た。」 「ヴァルカン人がほかの種族になど従うものか。」 「…何か行き違いがあったようだなあ。我々は君らの首相から招待を受けた。」 「俺の首相ではない。今の政府はヴァルカンの傀儡政権だ。その客は俺たちの敵も同然。これはどういう武器だ? …言わない気か。」 トゥポルに向けるコリダン。 「フェイズ銃だ。」 「…有効に使わせてもらおう。」 コリダンは仲間に投げ渡す。「お前らの宇宙船に興味がある。情報をよこせ。」 「タンパク質再配列機があって、チキンサンドができる。」 アーチャーを殴るコリダン。 ひもで縛られているため、一緒に倒れるトゥポル。「やめて。彼は戦略士官じゃない。ただの食事係です。…食事会の準備を、手伝いに来ただけ。首相のね。」 アーチャーは鼻血を流す。 コリダン:「…お前らの種族は嘘をつかないと言われている。今の話は本当だろうな。…わかってるぞう、お前が船長だろ?」 トゥポル:「だとしたら?」 「まあとにかく、来る時期を間違えたことは確かだ。」 出ていくコリダンたち。明かりも消される。 アーチャー:「食事係?」 コリダン軌道上のエンタープライズ。 コンピューターに映ったコリダン首相※7。『シャトルは過激派の一派に、強制着陸させられたものと思われます。しかし、我々のセンサー圏外で襲われたため…そう簡単に発見できるとは思えません。』 タッカー:「過激派がいるとはうかがってませんでしたが?」 『小規模なグループなので、このような攻撃を行うとは夢にも思っていなかったのです。でも御安心下さい、少佐。あなた方のお仲間は、恐らくまだ生きています。』 リード:「恐らく生きてる?」 『彼らは人質と交換に必ず何かを要求してきます。いつでもそう。武器類に、ダイコバルト爆弾※8。でもここで重要なのは、要求に応じないことです。』 「じゃ人質はどうなるんですか。」 タッカー:「戦争中なら我々を招待する時に伝えておくべきでしょう。」 首相:『戦争中だなどとんでもない。これは全く予想不能の事件です。』 「どう呼ぼうが構いませんが、クルーを返してもらえませんか。」 『現在我が国が、全力を尽くして捜索を続けてます。』 通信は切られた。 「犯人からの連絡をじっと待ってる気はない。人間とヴァルカン人の生体反応をスキャン。」 サトウ:「居住者が多いので、特定に何日かかるか。」 メイウェザー:「ポッドを探す方が楽かも。」 「やってみるけど、ポッドがパワーを停止させていたら、感知するのはほとんど不可能です。」 タッカー:「…できることをやるしかない。」 アーチャーは尋ねた。「いいか?」 トゥポル:「はい。」 二人で背中合わせのまま、同時に立ち上がろうとする。 アーチャー:「いくぞ。…もう少し。」 失敗。「もう一度、それ!」 横に倒れてしまった。 アーチャー:「あ…。もう少しで立てそうだったのに。」 トゥポル:「あとほんの 2、3センチでした。」 「気のせいか声がいらだってるようだ。」 「…まさか。」 「だよな。もう一度やろう。1、2 の、3!」 まず座った姿勢になるアーチャー。「いいか。」 「はい。」 「それ!」 今度は立ち上がることができた。 アーチャー:「手のロープも、緩くなってきた。そっちは。」 トゥポル:「かすかに。…何とかして、向き合いましょう。」 「そしたらほどけるな。…ヴァルカンのデータベースには、ここの…内戦は載ってなかったのか?」 「データベースは正確です。…コリダン政府はこの争いを、内戦とはみてません。」 「データベースも返せって言われるんだろうな、君と一緒に。」 密着したまま向き合う二人。 アーチャー:「…ほどけるか?」 トゥポル:「…そう思います。…データベースがなければここには来なかった。プジェムにも。」 「君には何の責任もない。…君は何も知らなかったはずだ。監視施設の、存在も。…ましてや、アンドリア人がいることもな。だろ?」 「エンタープライズにヴァルカンの聖地を訪れるべき理由はありませんでした。止めることもできたのに、私は同行を…選んだ。…この船に乗り、人間と接し始めてから、私の理性は明らかに…失われ始めてます。」 「なるほど、そういうことか。君は…逃げるんだな? 我々に溶け込むことを恐れて。」 「違います。逃げてはいません。」 「だったらなぜ上に抗議しない。……君らの種族は、父から大切なものを奪った。私に同じことはさせん。」 二人はバランスを崩し、また倒れてしまった。 トゥポルの体が、アーチャーの上に乗りかかる。 やっとで分かれる二人。残りのロープを外していく。 また明かりがついた。 構えたアーチャーは、やってきたコリダンを蹴り上げた。ひもを使い、相手を倒す。 トゥポルに命じるアーチャー。「武器を奪え!」 だが他の仲間がやってきた。「やめろ!」 エンタープライズ。 地図を見るリード。「ダイタニウム※9サインに間違いありません。首都から約4キロ離れた地点です。」 タッカー:「目と鼻の先じゃないか。」 「これを見ると、首都全体が貧しい地区に囲まれています。そこと首都で、ほぼ同数の生体反応が見られました。」 「自由主義社会の街作りを学んだ方がいいな?」 笑うリード。 タッカー:「船長たちの生体反応は。」 リード:「ありません。」 「ポッドの自動発信機は。」 「スイッチを切ってあるようです。出発ベイに、救助チームを待たせてます。」 「早まるな、マルコム。まだうちのポッドかはわからん。のこのこ地上へ降りていって、捕まるのは御免だ。」 「うちのポッドです、間違いありません。私は様子を見に行こうと言ってるだけです。」 サトウ:「通信が入りました。音声のみです。」 タッカー:「誰だ。」 「わかりません。」 「つないでくれ。」 乱れた音声が入る。『エンタープライズか?』 タッカー:「そうだが。君は?」 『船長と食事係を拘束した。無事に返して欲しければフェイズ銃 40丁をよこせ。シャトルに積んであった物と、同じ型だ。明日のこの時間に連絡する。』 「船長と話をさせろ。」 『彼女に危害を加えられたくはないだろう? 言うとおりにした方が身のためだ。』 音は消えた。 「どうした?」 サトウ:『通信を切りました。』 「発信源は。」 「三重信号で、探知不可能。」 リード:「船長のことを『彼女』と。本当にうちの船長なんでしょうか。」 メイウェザー:「少なくとも、生きてることは確かだ。」 「いつまで? フェイズ銃は、15丁しかありません。それを渡したとしても、約束を守るという保証はない。ポッドの場所はわかっています。不意をつける可能性のあるうちに、救助チームを送るべきです。」 サトウ:「別の通信が入りました。」 タッカー:「まだ何かねだるのかよ。」 「惑星からではありません。ヴァルカンの宇宙船、ニヴァー※10からです。」 「…つなげ。」 スクリーンにヴァルカン人のソペク※11が映し出された。『アーチャー船長は。』 タッカー:「ちょっと、外してます。何でしょう。」 『1時間後に到着すると伝えてくれ。』 「…随分早いですねえ。てっきり明日来るのかと思ってました。」 『そちらの計算機能に不備があるのでは? トゥポル副司令官に準備をしておくよう、伝えてくれたまえ。』 「…それが、その…問題がありまして。彼女もいないんです。トゥポルと船長は、コリダンへ行く途中誘拐されました。」 『都合よくか。』 「誘拐されたって言ってるんです。」 『なぜわかる。』 「たった今犯人から通信が入り、脅迫されたばかりです。言うとおりにしなければ二人を殺すってね。」 『人質を殺すなど、非論理的だ。交渉の切り札も失ってしまう。』 「あいにく俺たちの相手は論理的な種族ではないんでねえ。」 『ヴァルカン人の士官が巻き込まれたとあっては…黙っているわけにはいかん。後は我々に任せくれぐれも早まった行動を取らないよう。』 「ちょっと待って下さい…」 通信は終わった。「どいつもこいつも一方的に切りやがって。」 |
※6: 名前は Traeg (ジェフ・コーバー Jeff Kober VOY第159話 "Repentance" 「宿命の殺人星人」のアイコ (Iko) 役) ですが、言及されていません。声:宗矢樹頼 ※7: Coridan Chancellor (バーバラ・J・ターバック Barbara J. Tarbuck TNG第97話 "The Host" 「愛の化身オダン」のレカ・トライオン主席 (Governor Leka Trion) 役) 一部資料では Kalev という名前がありますが、言及されていません。声:羽鳥靖子、DS9 サラ ※8: dicobalt explosive TOS第23話 "A Taste of Armageddon" 「コンピューター戦争」などでトリコバルト爆弾 (tricobalt explosive) が言及。ダイ=2、トリ=3 を表す接頭辞 ※9: ditanium ※10: Ni'Var 吹き替えでは「ニヴァー号」 ※11: Sopek (グレゴリー・イッツェン Gregory Itzin DS9第8話 "Dax" 「共生結合体生物“トリル族”」のアイロン・タンドロ (Ilon Tandro)、第136話 "Who Mourns for Morn?" 「モーンの遺産」のヘイン (Hain)、VOY第151話 "Critical Care" 「正義のドクター・スピリット」のドクター・ダイセク (Dr. Dysek)、ENT第95話 "In a Mirror, Darkly, Part II" 「暗黒の地球帝国(後編)」のブラック提督 (Admiral Black) 役) なお「大佐」と訳されていますが、「船長」で構わないと思われます。声:土師孝也、DS9 シャカールなど |
合流したスラク級ヴァルカン船、ニヴァー。 ソペクはエンタープライズにいる。「君らの船の装備では救出するのは無理だ。一緒に人質に取られるのが落ちだろう。…我々なら敵の基地を突破できる。」 タッカー:「どういう意味です。」 リード:「奇襲を仕掛けるように聞こえますが?」 「船長やトゥポルに危険が及ぶとは考えないんですか?」 ソペク:「このような脅迫事件は過去にも扱ってる。素早く断固として。それが論理的対応だ。」 「感情を抑制できるヴァルカン人にしては、随分好戦的だ。」 「ヴァルカン士官の命がかかっている。予期しうる状況は、全て阻止せねばならない。」 リード:「ここはあなたの星じゃない。コリダン政府の意見も聞くべきじゃないですか?」 「首相には既に連絡済みだ。我々にこの件の全権を委任してくれたよ。」 タッカー:「あんたは二人を本気で心配しちゃいない。だから平気で戦火の中に放り出せるんだ。プジェムの復讐だと考えてるんじゃないですか?」 「テロリストと交渉する気はないだけだ。」 「ハ! …二人の命がかかってても?」 「…そちらに船長と副司令官の居場所を特定できそうなデータがあれば教えてくれないか?」 「…残念だが、何もありません。」 ソペクたちヴァルカン人はブリッジを出ていった。 タッカー:「ポッドの準備をしよう。」 また両手を固く結ばれてしまったアーチャー。別々になったトゥポルも、ロープを外すことはできない。 コリダンが皿に入った食事を持ってきた。 アーチャー:「これじゃ食えない。」 何も言わず出ていくコリダン。 アーチャー:「無視だ。」 仕方なく横に転がり、皿に口を近づける。「自分の食えるか?」 トゥポル:「…いいえ。」 「…君も食った方がいい。突っ返したところで何の得にもならん。」 「食欲がないんです。」 「そんなこと聞いてない。体力を蓄えるんだ。早く食え、命令だ。」 トゥポルも横になり、食べ始めた。少しだけ指につけ、口にする。 アーチャーは皿の中が、赤く点滅し始めたことに気づいた。小さな機械を取り出す。「これを見ろ。」 操作するサトウ。「通信だわ? …ソペク大佐。」 メイウェザー:「つなげよ?」 ソペク:『こちらソペクだ。タッカー少佐は?』 サトウ:「今はずしているので、伝言を承ります。」 『ポッドはどこへ向かったのかね?』 「どのポッドですか?」 『9分前、君らの出発ベイから飛び立ったものだ。』 「…それだけじゃわかりかねます。うちには始終シャトルポッドが行き来しているもので。まるで宇宙ステーション※12のようだわ?」 素早くコンソールを操作するサトウ。 ソペクの映像が乱れ始めた。『タッカー少佐はどこにいるのだ?』 サトウ:「よく聞こえません、通信が乱れてます。」 『ああ…』 ソペクの姿は消えた。 地上を歩くタッカー。「この辺は半端じゃない貧しさだな。」 スキャナーを使うリードも、ジャケットを着ている。「ええ。」 突然、隠れていた者が襲ってきた。皆フードを被っている。 タッカー:「離せ!」 2人とも頭に布を被らされ、連れて行かれる。 閉じこめられた部屋に、誰かがやってきた。 リードとタッカーの布が取られる。 声が響く。「なぜヴァルカンの言うことを聞かない。馬鹿な真似はするなと言われてただろ。」 暗闇の中に、2本の触角が見えた。 タッカー:「お前らがここで何してるんだ。」 アンドリア人のリーダー※13は言った。「お前らピンクスキンを探してたんだよ。もし船長のシャトルポッドの近くに行っていたら、殺されていた。」 部下※14もいる。「あれはお前たちをおびき寄せる、おとりだよ。」 タッカー:「なぜソペクとの通信内容を知ってる。機密通信だ。」 リーダー:「ソペクはこの星域の上級士官だ。俺たちが奴を監視するのは当然だろ。プジェムの聖地の一件以来、ヴァルカン人の通信内容や、船の配備場所は全て監視している。何もかもお見通しだ。奴らが俺たちとの戦争を考えてることも。」 「ヴァルカンの肩もつ義理はないが、それは誤解だ。」 「戦争はとっくに始まってる。ヴァルカン人はその首謀者だ。コリダンの過激派の一部は、腐りきったこの国の政府を転覆させようとしている。平和と論理が好きなお友達に、頼りっきりの政府をな。」 リード:「なるほど? 君らと過激派の敵は、同じなわけか。」 「フン。誘拐した連中は、船長とヴァルカン人の女クルーを返すつもりはない。武器を手に入れたら、すぐ殺す気だ。だが喜べ。幸い俺たちはここの過激派連中をよく知ってる。」 タッカー:「前にあった時は俺たちを殺そうとした。なぜ今になって助ける。」 「ここのところ、よく眠れんのだ。プジェムの神殿でお前らと会っちまってからな。…誰かに借りを作るのは我慢ならん。まして人間になど。」 部下に解放されるタッカー。「なるほど。船長のおかげで監視施設が見つかったんだもんな?」 リーダー:「奴を救えば、俺の借りも…綺麗さっぱりと消せる。見せろ。」 部下は地図を表示させた。 リーダー:「二人は、ここにいる。見張り番が休むバラックだ。」 リード:「見張りは?」 部下:「敷地内には少なくとも 4人。塀の上に 2人。ここだ。それからこのゲートの外に 2人。全員粒子銃で武装してる。」 タッカー:「なぜそんな詳しい情報を。」 リーダー:「敷地内にスパイを送り込んでる。」 リード:「見張りを全員外に出さなければ、人質を救出するのは難しいんじゃないのか?」 「余計な心配だ。」 タッカー:「船長が死んだらどうする。4人がかりでも足りないぞ?※15 それとも秘策があるのか?」 部下:「…一緒に連れてったら。」 リーダー:「…武器を渡してやれ。」 アーチャーが手の中に持っていた装置が、また赤く光り出した。 タッカー:『船長。聞こえますか?』 アーチャー:「トリップか。」 『マルコムと一緒にそこから 500メートルの地点にいます。』 「…2人だけか。」 『それが違うんです。懐かしい友人に会いましてね。アンドリア人が船長に借りを返したいと言ってます。』 「これほどいいタイミングはないよ。」 『見張りの一人は彼らの仲間です。彼が縄を解いたら、ゲートに向かって下さい。現在地から 20メートルのところにあります。彼が現れるまで、そこで待機を。』 「よーし、わかった。」 |
※12: 原語では「ユニオン・ステーション (Union Station)」。大都市の合同駅のこと ※13: Shran (ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) ENT "The Andorian Incident" 以来の登場。今回も名前は言及されていません。声:中村秀利 ※14: Tholos (Steven Dennis) ENT "The Andorian Incident" 以来の登場。今回も名前は言及されていません。声:水内清光 ※15: 原語では「4 対 1 で不利だぞ」。アンドリア人が 2人で、敵のコリダンが 8人であることを言っています (タッカーとリードの数は入れていません) |
コリダンのバラックに、フードを被ったタッカーがやってきた。「ああ…冷えるなあ? アンドリアン・エール※16だ。あったまるぜ?」 見張りが飲み始めた隙に、コリダンのスパイが後ろを通る。 スパイは隅の荷物をどかし、アンドリア人たちを招き入れた。 音に気づく見張り。「ん? 誰だ。」 タッカー:「ああ、俺の仲間だ。別に…」 見張りに身体を持ち上げられる。 叫ぶタッカー。「離せよ、この野郎! おい、離せってば! あ!」 その声に塀の上のコリダンが注目する。階段を上るリーダー。 タッカーは瓶で見張りを倒し、フードを脱ぐ。 アンドリア人は塀のコリダンを倒した。 リーダーがゲートを開け、タッカーとリードが中に入る。 合流し、向かう 4人。 だがその時、ゲート付近で大きな爆発が起こった。 タッカー:「おい、何だよこれ!」 音に気づいて出てきたコリダンが撃たれる。 相手はソペクたち、ヴァルカン人だった。撃ち合いが始まる。 コリダンのスパイがアーチャーたちのもとへやってきた。だが壁を突き抜けた流れ弾に当たり、倒れてしまう。 アーチャー:「伏せろ!」 隠れているリーダー。「ヴァルカンめ! 踏み込むことを知らなかったのか。」 タッカー:「そっちこそ通信傍受してたんだろ!」 リード:「これじゃあ作戦は滅茶苦茶だあ。」 流れ弾が近くをかすめる。 タッカー:「早く二人を助けよう。」 武器を撃ちながら、タッカーたちはアーチャーたちのところへやってきた。 タッカー:「無事でよかった。」 アーチャー:「どうなってる。」 「ヴァルカンが踏み込んできたんです。」 手を差し出すリーダー。 アーチャー:「助かった。」 リーダー:「これを、あんたに返す。…監視施設で渡されたスキャナーだ。」 「わざわざ返しに来てくれたのか。」 トゥポルにスキャナーを渡すアーチャー。 「俺が来た理由は一つ。ぐっすりと眠りたいからだ。…これで借りは、全て返した!」 ヴァルカン人は強力な武器を使い、コリダンを吹き飛ばした。 撃ち合いは終わった。コリダンは全員倒れている。 出てきたアンドリア人と武器を向け合うヴァルカン人。 ソペク:「お前たちがここにいるのはタウ・セティ協定※17違反だ。」 リーダー:「貴様らに人を違反者呼ばわりできるのか。」 倒れていたコリダンの一人が動き始めた。 ソペク:「早く武器を下ろせ。」 リーダー:「ヴァルカン人の前で武器を下ろすほど馬鹿じゃない。」 コリダンの動きに気づいたトゥポル。 アーチャー:「やめろ! ここではみんな味方のはずだ。」 トゥポルはソペクに走りより、突き飛ばした。コリダンが撃った武器はトゥポルに命中する。 コリダンはアンドリア人に射殺された。 すぐにトゥポルに近づくアーチャー。「船に運ぼう。」 ソペク:「もはや君の部下ではない。彼女はニヴァー※10に収容する。」 気を失ったトゥポルは、腹から緑色の血を流している。 アーチャー:「トゥポルは私の科学士官だ。」 抱き上げる。「ポッドへ運ぶ。」 リード:「はい。」 「行こう。」 開けられたゲートから、アーチャーたちは出ていった。 ソペクに近づくリーダー。「あいつじゃなくお前が撃たれるべきだった。」 部下と共に去った。 医療室の中はカーテンで仕切られている。 ソペクたちが近づく。トゥポルが眠っている。 ソペク:「容体は。」 フロックス:「かなり危険な状態です。」 中に入るソペク。「助かるのか?」 フロックス:「……今は何とも。」 アーチャー:「……気持ちはわかりますよ。以前、私も救ってもらった。このトゥポルは確かに、厄介だし? 頑固だし、横柄です。時々本気で頭にきて、外に放り出したくなる。ヴァルカン最高司令部だって頭を悩ませるわけです。だが、よほどの勇気がない限りプラズマ弾は受けられない。なのに、まだ彼女に汚名を着せるんですか。」 ソペク:「聖地を破滅に追いやった言い訳にはならん。」 「勲章を授けろと言っているわけではない。もう一度チャンスをやって欲しいと言っているだけです。……もしも信頼の厚いあなたが最高司令部へ行き、トゥポルのために嘆願して下されば、彼女が上官の命を救ったと伝えて下されば、移送はなくなると思いませんか?」 「独りで戻るわけにはいかん。」 フロックス:「…彼女はひどい怪我を負っている。しばらく安静にしておくべきでしょう。」 ソペクは外へ出ようとする。「3日後に最高司令部へ行く。もしも…時間があれば、彼らと話し合ってみるとしよう。」 アーチャー:「感謝します。」 医療室を去るソペクたち。 アーチャーはフロックスにうなずいた。 ハイポスプレーを打たれたトゥポルは、目を覚ました。「何が起きたんです。」 起きあがろうとするトゥポルを押さえる。アーチャー。「おいおい。撃たれたんだ。覚えてないのか?」 トゥポル:「…ソペク大佐は。」 「無事だよ? 君のおかげだ。」 「…自分の部屋に戻ります…」 また身体を起こそうとするトゥポル。 フロックス:「まだ、ここにいてもらいます。少なくとも、あと 1日は。」 離れる。 アーチャー:「大佐は、君にえらく…感謝してる。きっと、司令部と掛け合って、君の移送の件を取り消してくれるだろう。…君はもうしばらくこの船に乗ることになりそうだな?」 身体を起こすトゥポル。「先に私の意見も聞くべきです。」 ため息をつくアーチャー。「…今から行けば、大佐の船に追いつくだろう。」 トゥポル:「……それはできません。ここを出ればドクター命令に背くことになります。」 再びベッドに横になった。 うなずくアーチャーは、部屋を後にした。 |
※16: Andorian ale DS9第54話 "Meridian" 「次元移動惑星M」より ※17: Tau Ceti Accords タウ・セティ (くじら座タウ星) は実在する恒星 (TOS第71話 "Whom Gods Destroy" 「宇宙の精神病院」)。他のエピソードでも同星系の惑星が言及 |
感想
原題「プジェムの影響」が示している通り、以前のエピソードにそのままつながる話です。先週の感想でクリンゴンとの関係も一つの流れだと書きましたが、ヴァルカン人&アンドリア人はそれ以上に強い「線」となっていますね。再登場キャラクターが 4人もいることもあり、多少 DS9 的な展開とも言えます。 ENT にしてはテンポが早い方で、地球、コリダン、ヴァルカン、アンドリアがそれぞれ絡むために複雑になっています。無駄なシーンがないわけではありませんが。 |
第14話 "Sleeping Dogs" 「名誉に生きる者」 | 第16話 "Shuttlepod One" 「引き裂かれたクルー」 |