エンタープライズ エピソードガイド
第95話「暗黒の地球帝国」(後)
In a Mirror, Darkly, Part II
イントロダクション
アーチャーはタッカーに向き直った。「中佐※1。」 タッカー:「スラスターオン。」 「ドッキングクランプを外せ!」 トゥポル:「できません。」 「武器は。」 コンソールに向かうリード。 タッカー:「複雑すぎる、あと 2、3分下さい。」 リード:「やった! …シールド起動。」 アーチャー:「すぐに張れ。」 揺れるブリッジ。 リード:「クランプを刺激してます。…だが外れない!」 アーチャー:「左右のスラスターを交互に動かせば、外れるかもしれん。」 大きな揺れが起こった。 トゥポル:「外れました。」 アーチャー:「船尾スラスター起動。」 スコープを見るトゥポル。「ソリア船 6隻が、こちらへ向かっています。」 アーチャー:「まだ武器は使えんのか!」 タッカー:「パワー連結機が外れていて、バイパスできるかどうか。」 メイウェザー:「あれを。」 スクリーンを見るアーチャー。 ソリア船が前方にクモの巣を張り始めた。即座に完成する。 アーチャーはうなった。 |
※1: 吹き替えでは「少佐」。前編でタッカーは中佐の階級章でした |
本編
待てないアーチャー。「…ミスター・タッカー!」 タッカー:「待ってください。…すまん、手を貸してくれ。」 機関コンソールに近づくトゥポル。 タッカー:「合図をしたら、プラズマを前方エミッターへ送れ。」 リード:「さらに 3隻接近。」 「あと数秒辛抱を。」 壁を叩くアーチャー。船が少し揺れた。 アーチャー:「今のは。」 リード:「牽引ビームです。…敵に牽引されています。」 「もう待てん!」 タッカー:「もうすぐです! …今だ!」 操作するトゥポル。「戦術システムオンライン。」 ディファイアントの後方、基地から発射されているトラクタービーム。ディファイアントは船尾フェイザーを発射した。 爆発し、ビームは止まる。 さらに前方を攻撃するディファイアント。ソリア船 3隻が一瞬にして破壊された。 喜ぶアーチャー。「出力最大。」 リード:「残りも退却します。」 トゥポル:「…基地が攻撃を開始。」 アーチャー:「船尾に魚雷を装備してあるか。」 タッカー:「ないわけがない。…ありました。」 操作するリード。 攻撃を受けるディファイアント。離れながら、光子魚雷を発射した。 連続で反撃する。 リード:「脱出ポッドです。…左舷 12キロメートル。うちのです!」 アーチャー:「……収容しろ。」 通常航行中のディファイアント。 環境服を脱いだアーチャー。「なぜワープドライブがない!」 タッカー:「基地で分解されたからです。しかし幸い、部品は全て格納デッキにある。…ただ、組み直すには時間がかかります。」 トゥポル:「…どのくらい?」 「2、3日。…実際、何の機械かわからない物もあります。まるで汽船勤めの機関主任が、初めて宇宙船に乗り込んだようで。」 アーチャー:「12時間以内にワープを可能にしろ。でなければお前はクビだ。」 トゥポル:「…捕虜にした異星人に手伝わせては? 何か知っているかもしれません。」 リードに命じるアーチャー。「作業中目を離すな※2。ワープエンジンが直ったら、突撃部隊との合流点に向かう。」 壁には帆船※3とディファイアントの絵が飾られている。 トゥポル:「戦える状態ではありません。」 リード:「ソリアは簡単に片付いた。」 「この船は 400人のクルーを要します。我々は全部で 47人ですよ。…ディファイアント※4は、まず地球へ運ぶべきです。宇宙艦隊に託し、隅々まで分析…」 アーチャー:「時間がないのだ! …このディファイアントの武器をすぐ前線に持ち込まなければ、帝国は反乱軍に負ける! 解散!」 会議室を出ていくクルー。 アーチャーはトゥポルの腕をつかんだ。「少佐、君は残れ。」 椅子に座るトゥポル※5。 アーチャーはメイウェザーの武器を取り、トゥポルのあごに突きつけた。「よくも裏切りやがったな。」 トゥポル:「あなたが艦隊命令を受けたというのは明らかに嘘でした。…フォレスト船長に指揮権を戻すことは、艦隊士官として当然の任務では?」 「俺に忠誠を誓ったはずだ!」 「…フォレスト船長からあなたを殺せと命じられたわ。」 アーチャーはトゥポルを立たせた。「なぜ俺に言う!」 トゥポル:「フォレストが死んで、命令は無効になった。…今はあなたが指揮官です。」 「…上手くいってると思ってた、ヴァルカン人とはな。だが俺を裏切りやがった。お前の代わりが務まる士官がいればとっくにエアロックから放り出している! この船には、お前が必要だ。だが今度俺を裏切るようなことをすれば!」 「わかってます。」 「出てけ。」 部屋に入ったサトウは笑った。「何て格好してるわけ?」 外には MACO。 アーチャーは緑色のチュニックを着ていた。「制服だよ、ここの船長の。」 サトウ:「…服の趣味は人それぞれだって言うけど。」 「…どこにも記録が載ってない。」 「記録って?」 「帝国だ。もう一つの世界には存在しないらしい。」 「帝国が?」 緑色の液体が入った瓶※6を手にするサトウ。 「同じ名は出てくるが、歴史は全く違う。地球は帝国を築く代わり異種族間で同盟を作り、その一部になってる。」 「この惑星連邦ってやつ?」 コンピューターに、連邦のシンボルと文章が表示されている。 アーチャー:「フン、バカどもの寄せ集めだ。」 サトウ:「私達は? …向こうにも存在するの?」 「コンピューター、経歴ファイルにアクセス。艦隊士官ホシ・サトウ。」 コンピューター※7:『検索。』 アーチャー:「『ホシ・サトウ。…宇宙艦隊初のワープ5 シップの通信士官。』」 画面に表示されている、サトウ少尉の写真。「『30代後半、宇宙言語※8の翻訳マトリックスを完成させる。』」 サトウ:「一応名を残したようね。」 「フン。結婚相手も載ってるぞ? どうやってこの世を去ったかも。」 「やめて。知りたくない。」 「これは君じゃない…」 「知りたくない。…コンピューター? 経歴ファイルにアクセス、艦隊士官ジョナサン・アーチャー。」 アーチャーの膝の上に座るサトウ。 止めようとしたアーチャーだが、サトウは制した。 コンピューター:『検索。』 サトウのファイルから、アーチャー船長のもの※9に切り替わった。 サトウは笑った。「すごーい。…『高名なワープ専門家、ヘンリー・アーチャーの息子。…ジョナサンは宇宙艦隊初となる、ワープ5 シップの船長に任命された。』」 離れるアーチャー。 サトウ:「『惑星連邦内で彼の名を知らぬ者はいない。彼はその生涯で数々の褒賞を受け、歴史家は彼のことを…22世紀の最も偉大なる探検家と絶賛。』」 アーチャー:「フン。」 「『2つの惑星の名』にもなってる。」 アーチャーはコンピューターを叩いて消した。 サトウ:「ちょっと。」 アーチャー:「この男はクズだ! 奴は地球の未来を、下等な人種の集団に売り渡した。…偉大な人間とは、間違っても平和を望んだりはしない。望むのは征服だ!」 「もう忘れて。」 ため息をつくアーチャー。 サトウ:「あなたの未来は、始まったばかりじゃない。…地球帝国皇帝が、この船を見たらどんな顔をするか。…あなたは一躍帝国の英雄になるわ? 自分の船を任されるはずよ。」 アーチャー:「…自分の船なら、もうこうしてもっている。」 顔を逸らすサトウ。 暗い廊下を歩くタッカーも、未来の制服※10を着ている。「どうした。」 ジェフリーズ・チューブに入っているケルビー※11はビクついた。「中佐。プラズマレギュレーターが、どちらもなくなっています。」 タッカー:「そんなことで俺を呼びつけたのか? 格納庫にあるだろ!」 「違います、10分前までここにあったんです。…連結機を取りに行き、戻ったら消えてました。」 「すぐ探すんだな。10分でここを起動できなければ、ワープできないのはお前のせいだとアーチャーに言う。」 歩いていくタッカー。 「はい、探します。」 ケルビーはスキャナーを使う。 音が聞こえてきた。登るケルビー。 上に出てきたケルビーは、フェイズ銃を構える。「誰かいるのか?」 ジェフリーズ・チューブ※12の先に、道具が落ちている。 それを拾うケルビー。 また音が聞こえた。天井の通路から、何かがケルビーに向かって落ちてくる。 叫ぶケルビー。身体が通路に引き上げられる。 ブリッジ。 フロックス:「傷口から爬虫類の唾液が、検出されました。」 アーチャー:「噛み殺したわけか。」 「うーん、傷口から見てかなり大きな生き物です。体長 2メートル以上。」 「内部センサーで見つけられんのか?」 トゥポル:「主要部にはいません。が、機関部はまだセンサーが機能していません。」 リード:「前のクルーが、飼っていたペットでは。」 フロックス:「恐竜※13を飼うも同然ですよ、そんな可能性はまずない。」 ターボリフトを降りるタッカー。「レギュレーターが見つかりません。…このままじゃリアクションチェンバーが動かせない。ワープは不可能です。」 トゥポル:「誰が盗んだにしろ、我々の最大の弱点を知っている。」 アーチャー:「捕虜の一人を、会議室に連れてこい。」 リード:「わかりました。」 殴られる異星人※14は声を上げた。続けて手を振るう、シャツ姿のメイウェザー。 トゥポルは見ないようにしている。 アーチャー:「クルーを襲ったのは?」 異星人:「…それをあんたらに言ったら、俺たちが殺される。」 「言わなければ私がお前を殺す。」 「勘弁してくれー…。」 「下がれ。」 離れる MACO とメイウェザー。アーチャーはフェイザーを取り出した。 連絡※15するトゥポル。「リード少佐、新しい捕虜を会議室へ。」 リード:『了解。』 アーチャー:「出力最大にセットすると、人体を破壊できるらしい。…試す時を楽しみにしてた。」 首に近づける。 異星人:「…奴の名前はスラー※16って言うんだ。」 「奴とは?」 「お、俺たち奴隷の頭だよ。…この船の、回収作業を任されてた。…あんたたちが乗ってきたとき、奴は運搬用の通路に隠れ…船を破壊しようとしてたんだ。」 「その通路はどこにある!」 「多分 22デッキの、パワートランスファー・コンジットのそばにあると思う。」 トゥポルに向かってうなずくアーチャー。 異星人:「そこはあったかいんだ。…奴の種族は高温を好む。」 アーチャー:「奴の種族とは!」 「…ゴーンだ、奴はゴーン人※17だよ。」 異星人は泣き崩れた。 |
※2: ここで掲げられている惑星連邦旗は、もともと DS9 で使われたもの (第375宇宙基地や、DS9第150話 "Tears of the Prophets" 「決意の代償」など) ※3: エンタープライズの作戦室にある絵と同じく、同名の船という設定でしょうが、現実にはディファイアントという帆船はありません。ただし H.M.S.ディファイアントは、映画「戦艦デファイアント号の反乱」(1962) に登場しました ※4: 吹き替えでは「ディファイアント号」 ※5: 机の上にある 3面モニターは、ENT第79話 "Home" 「ヒーローたちの帰還」でフォレストのオフィスにあったもの。そもそも TOS のオマージュです ※6: TOS第50話 "By Any Other Name" 「宇宙300年の旅」へのオマージュ ※7: コンピューター音声 Computer Voice (メイジェル・バレット Majel Barrett TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」のナンバー・ワン (Number One)、第7話 "The Naked Time" 「魔の宇宙病」などのクリスチン・チャペル看護婦 (Nurse Christine Chapel)、TNG第11話 "Haven" 「夢の人」、DS9第17話 "The Forsaken" 「機械じかけの命」などのベタゾイド、ラクサナ・トロイ大使 (Ambassador Lwaxana Troi)、TOS/TNG/DS9/VOY (映画も含む) に渡る歴代エンタープライズ/ディファイアント/ヴォイジャーなどの連邦コンピューター音声役) バレットは今回演じたことにより、全5シリーズ (&TAS) に出演した唯一の俳優ということになります。声:森夏姫、過去最も有名な声優は TNG で多く担当した磯辺万沙子 ※8: linguacode 映画第1作 "The Motion Picture" 「スター・トレック」など。その際のヴィジャーのほか、TNG第68話 "Tin Man" 「孤独な放浪者」ではガムトゥーとのファースト・コンタクトにも使われました。当時の吹き替えでは「交信」(映画)「記号化」「言語コード」(TNG) ※9: これら脚本のマイク・サスマンが考えたアーチャーとサトウの経歴は、画面に登場するものの実際にはほとんど読めません。ですがサスマン自らが本国の掲示板サイトに投稿しており、興味深い部分もあるため、特別にこのページの一番下で紹介しています ※10: 23世紀の制服を着るのは前編において環境服で乗り込んだ上陸班なので、アーチャーを含め、タッカー、トゥポル、リード、メイウェザーの 5人だけです。サトウとフロックスは変わっていません。ただし全員部門の色は合っていますが、アーチャー以外階級章は少尉 (以下) になっています ※11: Kelby (デレク・マジャル Derek Magyar) ENT第93話 "Bound" 「誘惑の甘い罠」以来の登場。階級は少尉ですが、訳出されていません。声:飯島肇 ※12: コンスティテューション級 (TV期) で、ジェフリーズ・チューブの上部や縦穴、さらに歩ける横の部分が描かれるのは初めて ※13: 原語では「ヴェロキラプトル」 ※14: Alien (パット・ヒーリー Pat Healy ドラマ「プロファイラー/犯罪心理分析官」(1998)、「NYPDブルー」(99)、CSI:科学捜査班「冷たい街」(2005) に出演) 声はブラック役の近藤さんが兼任 ※15: 呼び出し音が TNG のものになっています ※16: Slar ※17: Gorn ENT "Bound" など |
スクリーンの船体図を示すリード。「一時は奴をここに追い詰めたんですが、アクセスチューブを通って逃げられました。追い詰めたクルー※18は、行方不明です。」 声が聞こえる。「時間を掛けすぎだ。」 アーチャーが振り返ると、船長席にもう一人のアーチャーがいた。「私は船の緊急時、決して保安部に任せたりしなかった。自分で解決したぞ。」 もう一つの世界のアーチャーだ。 話し続けるリード。もう一人のアーチャーの姿はない。 アーチャー:「テラライト人を送った方がまだマシな仕事をしたろう。…チームを組織しろ、私が指揮を執る!」 コンソールを叩く。 サトウ:「船内から例の爬虫類が、こちらに呼びかけてます。」 「場所を特定できるか?」 「スクランブルをかけてます。」 「回線をつなげ。」 「翻訳マトリックス起動。」 「アーチャーだ、プラズマレギュレーターを返せ!」 スラー※19:『この船から脱出したい。』 「レギュレーターを返せば相談に乗ってやる!」 『断る、お前ら地球人は信ずるに値する種族ではない。』 通路に隠れ、声を上げているゴーン人のスラー。「先にシャトルをよこせ。ここを脱出した後で、レギュレーターがどこにあるかを教える。」 腕には未来のコミュニケーターを持っている。 アーチャー:「お前と交渉するつもりはない! レギュレーターはどこだ! 答える気がないなら、力ずくで…」 サトウ:「回線切られました。」 「…少佐、隊を組織しろ。…精鋭でだ。」 ブリッジを出ていくリード。 トゥポル:「ゴーンの申し出は正当です。」 アーチャー:「奴はレギュレーターを返さんよ。…シャトルを渡せば、仲間を伴い戦艦で攻めてくる。ワープできなきゃ一巻の終わりだ!」 ターボリフトに入った。 ターボリフトの中で、もう一人のアーチャーが話しかける。「ゴーンを打ち負かせば、初めて部下の尊敬をうることができるな。」 廊下に集まったアーチャーたちは、はしご※20を登る。 ジェフリーズ・チューブに入り、スキャナーを使うリード。「生体反応。…すごく弱い。ジャンクション3 の近くです。」 アーチャー:「この隔壁を閉めれば、逃げ道は一つしかなくなる。…奴をジャンクション3 に追い詰めろ。待ち伏せる。」 「…了解。」 進むリードたち。アーチャーは MACO に合図し、別の方へ進む。 暗いチューブを歩くリード。スキャナーに反応があり、MACO たちに合図する。 位置につき、一斉に銃を向けた。 だが先にあったのは、音を発するコミュニケーターだけだった。 リード:「アーチャー船長。」 アーチャー:『どうした。』 「奴はいません。通信機を改造し、偽装サインを出してました。」 アーチャー:「ジャンクション3 へ急げ。」 リード:『わかりました。』 リード:「その耳障りな音を止めろ!」 MACO はコミュニケーターのフリップを閉じた。 手の上に置かれた機具に、長い爪が触れる。 音に気づくリード。壁に小さな装置が見える。 リード:「罠だ!」 MACO たちのいたところが爆発する。リードも巻き込まれ、倒れた。 揺れはアーチャーたちの元にも伝わる。 倒れたまま息をつくリード。アーチャーたちが近づく。 リード:「しくじりました。」 アーチャー:「アーチャーからトゥポル。奴は。」 ジェフリーズ・チューブでは火が起こっている。 トゥポル:『ゴーンは主要部に移動しました。現在、第9デッキに。』 リードの上体を起こすアーチャー。意識を失っている。 アーチャー:「作戦を変更する。第9デッキの環境制御装置にアクセス。…私の合図を待て。」 ブリッジのトゥポル。「…わかりました。」 先に進むアーチャー。顔を怪我した MACO が倒れている。 はしごを降りるアーチャー。「環境/機関部員に限る」と書かれている。 近くには死んだディファイアントのクルーが倒れていた。 アーチャーたちは上から観察されている。 ほかにも倒れたクルー※21。息をつくアーチャー。 MACO と共に進む。アーチャーの上の通路に、スラーの影が見えた。 音に振り返るアーチャー。スラーには気づかず、MACO に向かってうなずいた。 ため息をつき、進み始めるアーチャー。 その時、天井からスラーが飛びかかった。フェイザーを落とすアーチャー。 取っ組み合う 2人。MACO は撃つに撃てない。 スラーを殴るアーチャー。MACO も銃を直接使う。 スラーの爪がアーチャーの足を襲った。殴り続ける MACO に向かっていくスラー。 スラーは MACO を持ち上げ、壁に叩きつけた。アーチャーに向かって振り返る。 アーチャー:「アーチャーからトゥポル。」 アーチャーを見るスラー。 アーチャーは床の「重力傾斜板」の表示を読み上げる。「セクション 4-A、起動準備。」 トゥポル:『スタンバイ。』 「今だ!」 トゥポル:「重力強化。」 スラーは動きを止め、床に這いつくばった。 トゥポル:『重力プレート、20G。』 駆けつける保安部員。 アーチャー:「武器をよこせ。」 アーチャーはスラーに向け、何発も発射した。ため息をつく。 ワープ中のディファイアント。 『ディファイアント航星日誌、2155年1月18日。プラズマレギュレーターを無事取り返し、突撃部隊との合流点に向かう。』 娯楽室には立体チェスが置かれている。 トゥポル:「リード少佐の具合は?」 フロックス:「…フーン、今のところ何とも言えない。フフン、死んだとしたらいくつか儀式の準備をしなきゃなりません。」 後ろのテーブルにはテラライト人がおり、テーブルには色とりどりの立方体をした食べ物も置かれている※22。 周りを見るトゥポル。「ライブラリーのデータベースを、熱心に閲覧してるようね。」 フロックス:「…古典文学を調べていただけです。もう一つの宇宙ではどう描かれているのか気になって。…有名な作品を、何作か読んだんです。ハハ、ストーリーは同じだがキャラクターが一様に違う。みな弱く、実に哀れみ深い。…シェイクスピアはもちろん? 例外です。彼の戯曲だけは、どちらの宇宙においても残酷だ。」 「歴史ファイルも見てみては? …惑星連邦に興味をもつはずです。…もう一つの宇宙では、地球人とデノビュラ人は同等だそうよ。もちろんヴァルカン人も。」 「フーン。」 「興味ないようですね。」 「危険な記録だ。私が船長ならアクセスを禁じます。よからぬ思想の種を植えつけたくはない、うん?」 「いいか悪いか決めるのは私達…」 警報が鳴った。 アーチャー:『こちら船長、総員配置につけ。』 残骸のそばを進む NX級の宇宙艦隊船、I.S.S.アヴェンジャー※23。攻撃を受けている。 相手はアンドリア船やヴァルカン船ほか、他種族の艦隊だ。 爆発するブリッジ。船長は額に破片が突き刺さったまま絶命している。 船長の脈を取る提督※24。「報告!」※25 操舵士官はアンドリア人だ。 科学コンソールのソヴァル※26乗組員は、ヒゲを生やしている。「Bデッキに亀裂。…非常用防護壁、起動。」 提督:「アンドリア船に集中砲火を浴びせろ。」 「防御プレート、32%。提督、別の船が接近中。」 「反乱軍か。」 「…違います。」 無言になるソヴァル。 アンドリア戦艦が爆発した。ディファイアントは易々と、もう一隻のワープナセルも破壊する。 パイロット席のメイウェザー。「命中です。」 サトウ:「テラライト船が砲撃。ダメージなし。」 アーチャー:「リアクターを狙え。ロック後発射。」 攻撃音が聞こえる。 メイウェザー:「…ターゲット破壊しました。」 サトウ:「ヴァルカン船が逃げようとしています。」 アーチャー:「追いかけろ。」 トゥポル:「船長…敵は戦意を喪失しています。」 「ロックし発射しろ。」 スクリーンを見るトゥポル。 光子魚雷を発射するディファイアント。全てを受けたヴァルカン船は、中央の構造を失った。 サトウ:「最後のアンドリア船が逃げます。」 トゥポルを見る。 メイウェザー:「ロックしました。」 アーチャー:「待て。行かせろ。ここで何が起きたか仲間に言わせるんだ。…フン、ブラック提督を呼べ。」 イヤーレシーバーを着けるサトウ。 ブラック:『アーチャーか。』 アーチャー:「遅れてすみません、ブラック提督。」 スクリーンに映る、アヴェンジャーのブラック。『エンタープライズは。フォレスト船長はどこだ。』 アーチャー:「説明するには時間がかかります。まずは御自分で、この船を御覧になってみては?」 ディファイアントはアヴェンジャーと並んで飛行している。 会議室に入るブラック。「実に素晴らしい船だな、副長。」 表情をこわばらせるアーチャー。トゥポルは一緒に来たソヴァルと挨拶を交わす。 ブラック:「この船のテクノロジーをもってすれば、反乱軍に勝ち目はない。」 アーチャー:「おっしゃるとおりです。」 「次に船長の空きができたら、君を推薦しよう。」 「あなたなら、今すぐ私を昇進させられるのでは?」 「…残念ながら今空いてる船はない。」 「ディファイアントがある。」 「それは元帥が許可されんだろう。」 アーチャーの後ろから、もう一人のアーチャーが顔を近づける。「彼らは君にこの船を渡すつもりはない。分解して、秘密を探る気だ。君には任されてせいぜい、衛星の定期便※27だろう。彼の本音がわからないか? この船を自ら皇帝に、献上する気だ。手柄は独り占め。そして君は、一生脇役のままで終わる。」 話し続けていたブラック。「君は帝国の救い主だよ、副長。」 アーチャー:「…船長だ。」 メイウェザーを見た。「あなたはもういらない!」 メイウェザーはブラックの部下を蹴り倒した。 アーチャーはフェイザーを取りだし、ブラックが武器を手にする前に蒸発させた。 |
※18: 原語では「マッケンジー (McKenzie) とブラウン (Browne)」。マッケンジーは ENT第54話 "Anomaly" 「オサーリア人の襲撃」に登場した MACO の鏡像版かもしれません。2人は死んだようにも取れますが、ブラウンに関しては後で MACO の一人に "V. BROWN" という名札がついているので (スラーを追い詰める時に、リードと一緒に行動するエキストラ)、同一人物かもしれません。Browne という綴りは CC より ※19: Slar (声) (David Sobolov) 前編のソリア人同様、追跡スーツによるモーションキャプチャー技術を使った CG です。動きのあるシーンではスタント調整の Vince Deadrick Jr.、そのほかは David Anderson が演じています。TOS第19話 "Arena" 「怪獣ゴーンとの対決」でゴーンを演じたボビー・クラークが、撮影時にスタジオを訪れたそうです ※20: この部分のセットは、ENT第81話 "Cold Station 12" 「コールド・ステーション」で使われた縦穴通路の使い回し ※21: 顔は見えませんが、ここで後ろ姿で倒れているディファイアントのクルーは、脚本のマイク・サスマンが演じています ※22: フロックスが飲んでいる青い液体は、ロミュラン・エール (Romulan ale) という設定のようです。映画 ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」など。娯楽室は会議室セットの改装 ※23: I.S.S. Avenger 登録番号は NX-09。映画「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」のスターデストロイヤー・アヴェンジャーにちなんで ※24: ブラック提督 Admiral Black (グレゴリー・イッツェン Gregory Itzin DS9第8話 "Dax" 「共生結合体生物“トリル族”」のアイロン・タンドロ (Ilon Tandro)、第136話 "Who Mourns for Morn?" 「モーンの遺産」のヘイン (Hain)、VOY第151話 "Critical Care" 「正義のドクター・スピリット」のドクター・ダイセク (Dr. Dysek)、ENT第15話 "Shadows of P'Jem" 「恩讐を越えて」のソペク船長 (Captain Sopek) 役) 前編で言及。声:近藤広務 ※25: 船長席の後ろにある大きなパネルは、ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」でイントレピッドのブリッジに使われたもの ※26: Soval (ゲイリー・グラハム Gary Graham) ENT第85話 "Kir'Shara" 「バルカンの夜明け」以来の登場。階級の乗組員は階級章より。ヒゲはもちろん、TOS第44話 "Mirror, Mirror" 「イオン嵐の恐怖」でのスポックへのオマージュ。声:青山穣 ※27: この「月シャトル」は、TOS第3話 "The Corbomite Maneuver" 「謎の球体」でマッコイが初登場した時のセリフにありました。当時の吹き替えでは「宇宙特急列車」 |
ディファイアントと共にワープ中のアヴェンジャー。 アーチャー:「我々全突撃艦隊は、反乱軍に完敗した。」 発着ベイに集まった 2隻のクルー。「何万という艦隊士官が、殺されたのだ。…ディファイアントが来なければ、君らの多くもそうなっていただろう。責めを負うべきは誰か。…帝国に命を捧げた戦士諸君ではない。…この戦犯は、戦況の危機にも関わらず艦隊司令部の椅子にふんぞり返っていた連中だ※28。」 シャトルポッドの上に立つアーチャー。「奴らの弱腰が敵の猛攻を招き、奴らの堕落と傲慢が帝国に敗北をもたらしたのだ。…一兵士として言わせてもらう。…何世紀にも渡り栄えてきたこの偉大なる帝国を、そんな腰抜けどものせいで終わらせられん! だから私に、力を…貸してくれ。これ以上あの恥知らずな連中に、指揮を執らせていては到底反乱軍を打ち負かすことはできん。…まずは上層部を倒さねばならん! …外の※29あの船さえあれば、全てに勝てる! …ディファイアントさえあれば、誰も我々を止められはしないのだ。」 視線を落とすトゥポル。 ※30アーチャー:「諸君の力を借り…私は地球に戻って帝国のかつての栄光を取り戻す。いざ、行かん! 神々の預言と敵どもの悪行が我々を呼んでいる! いま賽は投げられた! 帝国よ、永遠なれ!」 同様に敬礼する一同。「帝国よ、永遠なれ!」 拍手が起こる。 ためらいがちに手を叩き始める者もいた。 出ていくアーチャーは、メイウェザーにささやいた。「最初に拍手をやめた奴を撃て。」 ソヴァルの部屋。 考えていたソヴァルは、ドアチャイムに応えた。「入れ。」 トゥポルはヴァルカン・サインをした。 ソヴァル:「たとえドアが閉まっていても、そんなことするものじゃない! …会えて嬉しく思う。」 トゥポル:「…もう歴史ファイルを御覧に?」 「なかなか、面白く読ませてもらったよ。」 「面白い?」 「この、もう一つの宇宙は別世界だな。我々の世界は、惑星連邦などとは無縁だ。」 「あなたは理想主義者だったはずです。」 「確かに、大昔はな?」 「我々が行動に出なければ、帝国はアーチャーの手に落ちます。」 「アーチャーは正しい。帝国は腐りかけている。あの男に、任せてみては。」 「同胞はどうなるんです。あの船は反乱軍を全滅させる、何千という同胞もです。我々で、同胞の加勢をしましょう。」 「加勢を?」 コンピューターを扱うトゥポル。「…ディファイアント※4のエンジンと戦術システムのデータを、彼らに送ります。」 ソヴァル:「そんなことをしたところで、アーチャーがひるむものか!」 「私はあの船を破壊する気です。」 「何だと!」 「パワーシステムを無力化します。力を貸してください。…死ぬまで帝国にかしずいている気ですか。」 「…もう、革命を起こすには老いすぎた。」 「アーチャーはきっと、皇帝になったら我々に反乱の罪を着せるでしょう。ヴァルカンを破滅させます。…私に力を貸してください。」 暗いアーチャーの部屋※31で、サトウは息をついているアーチャーの背中にキスをした。 反応するアーチャー。「…上級士官連中は、俺のこと認めちゃいない。」 サトウ:「そのうち変わるわ?」 「トゥポルもそうだ、あいつの目を見てればわかる。」 「だったら、追い出しちゃえば? 船も動くようになったし。」 「……ほかにも、地球人以外は全員排除するとしよう。ディファイアントから叩き出す。」 「全員を?」 「ああ、どこにスパイがいるかわからん。俺の船には一人だって異星人は乗せられん。」 「しばらくは病気にならないように気をつけてよ? …忘れてるようだけど、ドクターも異星人よ。」 アーチャーの身体にキスするサトウ。 「フロックスは別だ。…デノビュラ人は、反乱に…加わってない。」 アーチャーは口づけする。「彼は残す。」 「…私、皇帝の女になるのは初めてよ。…勉強しとくことある?」 「…もう十分、俺の役に立ってるさ。」 ベッドに倒れ込む二人。 トゥポルは、周りをうかがいながらチップ状のテープを操作する。画面に無数のデータが表示される。 ブリッジにアーチャーたちが来た。コンピューターを止めるトゥポル。 アーチャー:「ガードナー元帥につなげ。」 テープを取るトゥポル。 アーチャー:「伍長、トゥポル少佐を第2転送室へ御案内しろ。」 MACO がトゥポルに近づく。アーチャーはトゥポルの前に立ちふさがった。 メイウェザーがトゥポルのフェイザーなどを取り上げる。 アーチャー:「これ以上君にこの船のためにしてもらうことはない。」 アーチャーを睨むトゥポル。 通信が届く。『アーチャー、一体何が起こっているというんだ。』 スクリーンに映るガードナー元帥※32。 アーチャー:「私の進言を御覧に?」 『我々艦隊に無条件降伏をしろとは、貴様正気を失ったか!』 「ディファイアントのスペックを見たでしょう? これは無敵の船です。」 『ブラック提督と話をさせろ!』 「フン、いま席を外してます。」 船長席に座るアーチャー。「私は元帥に、艦隊の武装解除をお勧めします。これ以上船を失うわけにいかんでしょう?」 『最初で最後の警告だ、副長。…地球には近づくな。近づけば容赦はしないぞ!』 ガードナーは通信を切った。 廊下を歩いているフロックス。 呼び出しが入る。『ドクター・フロックス。』 フロックス:「フロックスです。」 『アヴェンジャー※33で急患発生。至急向かってください。』 「了解。」 アヴェンジャー。 廊下で待っているトゥポルとソヴァル。 フロックスが来た。「…どちらも急患には見えん。」 発着ベイで話すフロックス。「ディファイアントに破壊工作! 正気とは思えません。」 ソヴァル:「頼めるのは君しかいない。我々が動けば、怪しまれる。」 トゥポル:「あのアーチャーのスピーチ。あれは妄想よ。」 フロックス:「何事も実現できれば妄想にはなりません。…アーチャー船長なら実現は可能です。船長に報告します。」 ソヴァル:「帝国に忠誠心は。」 「あるに決まってます!」 トゥポル:「アーチャーは皇帝を殺す気です。そして後釜に。」 「…船長なら、統治者としてふさわしいのでは。」 ソヴァル:「アーチャーがしくじれば、その責めはクルーが負わされる。」 トゥポル:「私達は死刑です。…知っていますか。皇帝の命を救った者は、何を望もうと叶えられるそうです。…素晴らしいと思いませんか。…自由に使える専用の医療施設がもてるなんて。…どんな実験だって好きなだけできます。」 「女性にしてもそうだ。」 フロックス:「…女性?」 「好きなだけ、そばにおいておくことができるだろう。」 「…皇帝が私の患者であれば救う義務がある。命の危機という点では、この件も同じです。」 |
※28: アヴェンジャーのクルーが左肩につけている専用パッチには、"Audentes Fortuna Imperii" というモットーが書かれています。ラテン語で「幸運は帝国に味方する」という意味だとか ※29: 吹き替えでは「外に止まっている」。直前で描かれているように、現在はワープ中です ※30: 色を変えている個所は、撮影はされたものの放送版からは削除されたシーンです (SCENE 77)。DVD に特典として収録されており、日本語版は字幕のみ ※31: 奥の棚に保管庫のドアが見えますが、本来はこちら側にはないはず。間違いに気づくのが遅かったため、結局両側に保管庫がつくことになりました ※32: Admiral Gardner (ジョン・マオン John Mahon) ガードナーは ENT "Shadows of P'Jem" 以来何度も触れられてきましたが、登場するのは初めて。声:木村雅史、ENT デグラなど ※33: 吹き替えでは「アヴェンジャー号」 |
周りをうかがいながら、廊下を歩くトゥポル。制服※34は元に戻っている。 ターボリフトを開けると、サトウと MACO が銃を向けていた。 トゥポル:「何の真似?」 サトウ:「とぼけないで。ダウンロードした回路図はどこ。」 「回路図?」 MACO はトゥポルのフェイズ銃とナイフを取り上げた。 サトウ:「行きなさい。」 トゥポルは素早く振り向くと、MACO を倒した。 ナイフで切りつけるサトウ。傷つけられたトゥポルの顔には、緑の血の跡が見える。 サトウ:「ずっとあんたとやりあいたかった…」 トゥポル:「…さんざんベッドを渡り歩いて、よくそんな元気が残ってるわね。」 サトウを壁に押しつけるトゥポル。 サトウ:「タッカー中佐が少しあんたに手ほどきしてやれってさ。」 ナイフを奪い、サトウを殴るトゥポル。サトウは倒れた。 逃げるトゥポルだが、背後から銃撃を受ける。MACO が撃ったものだ。 起き上がるサトウ。「連れてって。」 通常航行中のディファイアントとアヴェンジャー。 ディファイアントの廊下を独り歩くフロックス。クルーがいなくなったのを確認し、ジェフリーズ・チューブに入った。 アンドリア人クルーが、意識を失った操舵士官をどけた。 アヴェンジャーのブリッジに入るソヴァル。「ターボリフトを止めろ。…ブリッジを確保※35。」 戦術コンソールにつくオリオン人士官。 ディファイアントの会議室では、サトウが見ている前でアーチャーがテープを手にしている。「誰とグルなんだ。」 トゥポルは手錠をつけられている。 アーチャー:「死ぬ覚悟はできてるな。」 テープでトゥポルの髪に触れる。 トゥポル:「私が死んでも何も変わらない。…あんたに勝ち目はないわ。」 「だがディファイアントは勝つ。物理的に言って火力が違う…」 「未来は惑星連邦のものです。」 「こことどっかの宇宙がゴッチャになってるようだなあ。」 「…地球人はいつか必ずその傲慢さのツケを払うことになる※36。」 「フン。」 ジェフリーズ・チューブ※37の中で、フロックスは装置のパネルを開けた。 呼び出しが鳴り、コミュニケーターに触れる。「この忙しいのに何です。」 ソヴァル:『現状の報告を。』 「あなたがくれた、回路図とは全く違うようだ。」 ソヴァル:「デュオトロニック※38・モジュールを外してくれ。リレーは、その後ろにある。」 部品を取るフロックス。「外した。」 ソヴァル:「リレーを外す前に、フローレギュレーターを止めるのを忘れるな。プラズマが、燃え出す。」 フロックスは作業を続ける。 警告音に気づき、科学コンソールを見るソヴァル。「何者かがブリッジの封鎖を無効にしようとしている※39。ドクター、急いでくれ!」 ディファイアントのブリッジにいるメイウェザー。「ワープフィールドが揺らいでます。」 タッカー:「パワーが漏れてる。…主要 EPS リレーだ。」 「船長に知らせます。」 「待て。コンジットに穴が空いただけだろう。船長をわずらわせる必要はない。…俺が直す。代われ!」 クルー:「はい、中佐。」 MACO に命じるアーチャー。「アヴェンジャー※33に行って、異星人を全員拘束しろ。」 サトウ:「これ以上尋問を続けても時間の無駄です。…さっさと殺しては。」 「…ずっとこの時を待ってたんだろ?」 サトウに顔を近づけるアーチャー。 ディファイアントが揺れた。 EPS リレー※40を外しているフロックス。衝撃が襲う。 警報が鳴る。 アーチャー:「アーチャーからブリッジ、報告!」 様子を見ているトゥポル。 メイウェザー:『メインパワー停止。ワープ不能に。』 うなるアーチャー。 ソヴァル:「1万メートルへ接近。船の、円盤部を狙え。」 ディファイアントを攻撃するアヴェンジャー。 ジェフリーズ・チューブに来たタッカー。背後が爆発する。 フロックス:「ソヴァル、こちら終わりました。…転送準備をしてください…」 タッカーはフロックスに飛びかかった。「貴様一体何をした!」 タッカーを離すフロックス。 ブリッジに入ったアーチャーは、ナビゲーターを押しのけた。「武器を起動しろ!」 メイウェザー:「全てが停止してます!」 コンソールを叩くアーチャー。 ソヴァル:「砲撃を続けろ!」 タッカーを殴るフロックス。タッカーはそばにあった道具でフロックスを倒す。 リレーを手に取り、元に戻し始めた。 メイウェザー:「主要システムが戻り始めました。」 両手を額に当てていたアーチャー。「シールドも使えるな? …ただちに起動!」 ソヴァル:「フロックス! パワーが戻ったぞ! 何が起きた! ドクター!」 転がったコミュニケーターから、ソヴァルの声が聞こえる。『答えろ!』 無視して作業を続けるタッカー。 メイウェザー:「武器オンライン。」 アーチャー:「アヴェンジャーを破壊しろ!」 フェイザーと光子魚雷を発射するディファイアント。アヴェンジャーの後部が爆発した。 火花が散るブリッジ。 ソヴァル:「…射程領域外へ退避!」 梁が落ちてくる。「全パワー、防御プレートへ回せ!」 火が巻き起こる。 サトウ:「被害は甚大です。」 メイウェザー:「奴ら逃げる気ですよ。」 アーチャー:「…光子魚雷用意。リアクターを狙え。」 倒れたオリオン人。ソヴァルは絶叫した。 アヴェンジャーは爆発し、粉々になった。 裸のアーチャーは、声を上げながらベッドで横になった。隣にいるサトウに覆い被さる。 微笑むサトウ。 アーチャー:「忘れる前に…」 サトウ:「ん…?」 「頼みがある。明日朝一で、歴史ファイルを消してくれ。…これ以上誰にも知られたくないからな。例の、惑星連邦なんて存在は。」 サトウは脇に置いてあったグラスを渡した。「もう一つの宇宙のデータなんて、全部消せばいい。」 アーチャー:「その通り。」 乾杯し、口にした。 「艦隊は 2日後には地球に戻るわ。指揮官たちの支持を得られる?」 「全員皇帝に忠実だ。誰が皇帝になろうとな。艦隊が着く頃には…」 キスするアーチャー。「すでにもう、誕生してるさ。このジョナサン・アーチャー皇帝の支配が。」 手を挙げ、酒を口に注ぐ。 顔を背け、アーチャーと一緒に笑うサトウ。 アーチャー:「反乱軍を鎮圧したら…我が帝国の規模を…さらに…」 アーチャーを見るサトウ。 アーチャーは苦痛の声を上げる。ベッドから落ちた。 サトウ:「大丈夫?」 答えられないアーチャー。サトウはドアを開けた。 メイウェザーがアーチャーの部屋に入る。 2人を見るアーチャー。サトウはメイウェザーと口づけをした。 サトウに見られながら、アーチャーは意識を失った。 地球に近づくディファイアント。 メイウェザーたちと共に、ブリッジに入るサトウ。「ガードナー元帥につないで。」 通信士官:「回線、オン。」 「こちらは宇宙船ディファイアント。ただちに降伏しなければ、地球を攻撃する。応答せよ。」 スクリーンのガードナー。『アーチャーはどこだ。お前は何者だ!』 サトウ:「帝国の新たなる皇帝、サトウです。今後は私に服従なさい。」 |
※34: 今度は階級章が乗組員になっていますが、少佐と呼ばれ続けています (前編の脚注※27 参照) ※35: もうブリッジには入ってるわけですから、確保というより隔離 (封鎖) でしょうね ※36: DS9 (第43話 "Crossover" 「二人のキラ」など) での鏡像世界の地球人を示唆したセリフ ※37: 本来は設定的にも機関室が適していますが、予算などの都合で再現できませんでした ※38: duotronic TOS第53話 "The Ultimate Computer" 「恐怖のコンピューターM-5」など ※39: 吹き替えでは「何者かがこの船に侵入した」 ※40: ENT第76話 "Zero Hour" 「最終決戦」では、ズィンディ兵器の制御棒として使われました |
感想など
鏡像世界編は、こないだの優生クリンゴンと同様前後編で終わりました。今回ありきたりな「エイリアン」的追い詰めがあったり、実質的なクライマックスが結構あっさりしていることもあって、ほんとに 2話でよかったのはちょっと疑問です。1話に詰めるか、逆に 3話に膨らませた方がよかったような…。とはいえ、ソリア人に続くゴーン人の登場、それに普段の扱いの裏返しになったどんでん返しは、なかなかのものでした。コンスティテューション級がデザインされたのは 40年前なのに、ちゃんと NX-01 からすれば未来に見えてくるのが不思議ですね。ほんとに綺麗な船です。 マイク・サスマンは今まで原案としては前後編にクレジットされたことは一度ありますが、メインとなる脚本に関して 2話とも手がけたのは初めてのことです。今回が最後ですが、まぎれもなく ENT を代表する脚本家になりましたね。このエピソードの「その後」を描いた短編を自ら手がけ、"Glass Empires" に収録予定です。Marvin V. Rush は通常撮影監督を務めており、監督としては 8年前の VOY 第3シーズン以来。なお打ち切りが発表されたのは、この話を製作中のことでした。 |
アーチャーとサトウの経歴
※41宇宙艦隊経歴ファイル:アーチャー/ジョナサン 識別番号:SA-022-9237-CY 退役時の階級:提督/参謀長/宇宙艦隊司令部 これまでの職務: 船長/エンタープライズ NX-01/2150※42〜2160年 アンドリア大使/2169〜2175年 連邦評議員/2175〜2183年 UFP※43 大統領/2184〜2192年 生誕地:ニューヨーク北部/北アメリカ/地球 両親:ヘンリー・アーチャー、サリー・アーチャー※44 高名なワープ専門家、ヘンリー・アーチャーの息子。ジョナサン・アーチャーは宇宙艦隊初となるワープ5 シップ、エンタープライズ NX-01 の船長に任命された。探検家そして平和の使者として、惑星連邦内で彼の名を知らぬ者はいない。エンタープライズでの先駆的な航海は、何十もの星の子供たちが学校で学んでいる。その惑星の多くは、アーチャーの時代の地球人が知らなかった場所だ。歴史家ジョン・ギル※45は彼のことを、22世紀の最も偉大なる探検家と絶賛した。彼はその生涯で数々の褒賞を受け、それには複数回の勇敢勲章※46、スタークロス※47、プレンタレス・リボン賞※48、連邦名誉表彰※49といったものがある。アーチャーは 2164年には Thy'lek シュラン※50将軍により、アンドリア防衛軍の名誉士官にも選ばれた。栄誉を称えて 2つの惑星の名になったただ一人の地球人であり、ガンマ・トリアンギュリ※51星域のアーチャー惑星※52と、おおぐま座61番星※53軌道上のアーチャー4号星※54だ。アーチャー4号星は、この有名な探検家が最初に発見した Mクラスの星だった。その惑星は大気中に含まれる毒性花粉のため、22世紀にはずっと居住不能だった。だが 2200年代初頭に花粉への対抗策が発見された。今日、アーチャー4号星の人口は 7億人以上を数える。 ※55アーチャーは 2245年、ニューヨーク北部の自宅で静かに息を引き取った。初めてエンタープライズと名づけられた連邦宇宙船、NCC-1701 の命名式に出席した翌日のことだった。 宇宙艦隊経歴ファイル:サトウ/ホシ 識別番号:SA-037-0198-CL 退役時の階級:少佐 これまでの職務:通信・儀典士官/エンタープライズ NX-01 生誕地:京都/日本/地球 ホシ・サトウは、宇宙艦隊初のワープ5 シップ、エンタープライズ NX-01 の通訳および儀典・通信士官を務めた。2129年7月9日※56、日本の京都で 3人家族に生まれた 2人目の子供だった。30代後半に宇宙艦隊を離れ、宇宙言語の翻訳マトリックスを完成させた。依然今日の連邦宇宙船でも使われている。 ※57残念ながら、ホシと家族はタルサス4号星※58で 2246年に死んだ 4,000人の中に含まれていた。外来の菌に由来する食糧不足が、植民地の人々を脅かしたときである。コドス知事※59は残りの植民地を救うため、サトウたち犠牲者の虐殺を命じた。彼女は夫のタカシ・キムラ※60と共に、京都に埋葬された。 |
※41: これらの文章は劇中の画面に小さく表示されたものを、サスマンが公表したものです (転載。脚注※9 参照)。実際には公式サイトのアーチャーとサトウのページからそのまま引用した文章も含まれているため、それ以外の部分に当たります。この時点ではできていなかった最終話と矛盾する点もあるため、彼自身も「ハード・キャノン=厳密な正史」ではなく、あくまでお遊び程度だと考えています。TNG第114話 "Conundrum" 「謎めいた記憶喪失」の経歴ファイルと同じような、「半正史」的な扱いが最適かもしれません ※42: 2151年の間違い ※43: United Federation of Planets=惑星連邦の略 ※44: Sally Archer ※45: John Gill TOS第52話 "Patterns of Force" 「エコス・ナチスの恐怖」で発端となった人物 ※46: Medal of Valor with clusters ※47: Star Cross TNG第35話 "The Measure of a Man" 「人間の条件」より ※48: Prentares Ribbon of Commendation TOS第15話 "Court Martial" 「宇宙軍法会議」より。公表された文章内では "Preantares..." ※49: Federation Citation of Honor ※50: Thy'lek Shran "Thy'lek" は未言及のファーストネーム ※51: さんかく座ガンマ Gamma Trianguli TOS第38話 "The Apple" 「死のパラダイス」より。当時の吹き替えでは「ガンマー (のみ)」 ※52: Archer's Planet ※53: 61 Ursae Majoris ※54: Archer IV TNG第63話 "Yesterday's Enterprise" 「亡霊戦艦エンタープライズ'C'」より。以下の説明により、ENT第4話 "Strange New World" 「風が呼んだエイリアン」での無名惑星のことだとわかります ※55: 以下の部分は画面にも出ていません ※56: 誕生日はリンダ・パクと同じ ※57: 以下の部分は画面にも出ていません。セリフ中で「サトウの結婚相手と死についても載っている」と触れられた部分 ※58: Tarsus IV ※59: Governor Kodos 惑星・事件も含めて、TOS第13話 "The Conscience of the King" 「殺人鬼コドス」より ※60: Takashi Kimura サスマンが好きな、日本映画の俳優 2人を組み合わせた名前だそうですが…誰でしょうねえ? |
第94話 "In a Mirror, Darkly, Part I" 「暗黒の地球帝国(前編)」 | 第96話 "Demons" 「テラ・プライム(前編)」 |