エンタープライズ エピソードガイド
第94話「暗黒の地球帝国」(前)
In a Mirror, Darkly, Part I
イントロダクション
※1雲の中に光が見える。音が大きくなってきた。 モンタナ州ボーズマン、2063年4月5日※2。 人々が空を見上げる。 雲を抜け、空から降りてくる船。風が強くなり、一帯が明るくなる。 集まる人々。無言で見つめる女性。 船は着陸した。 その一部が開いていく。中から強い光。 地面への道ができた。人影が見える。 船の方へ独り進み出るゼフレム・コクレイン。 下りてくる異星人。後ろにも 2人の姿が見える。 コクレインと向き合った。頭のフードを取る。 その耳は、先が尖っていた。 片手を上げ、中指と薬指の間を開ける。「長寿と、繁栄を※3。」 コクレインは真似しようとしたが、無理だった。そのまま手を懐に入れる。 銃を取り出し、ヴァルカン人を撃った。 見ていた男※4も武器を持った。「船に乗り込め! 片っ端からかっさらうぞ!」 ヴァルカン船に押し入る人々。 |
※1: このエピソードは、2005年度エミー賞でヘアスタイリング賞にノミネートされました ※2: Super! drama TV 版では、日付の方が上に表示されています。このシーンは映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」のものに、新たに収録した部分を加えた映像。新録部分は映画と違和感がないようにするため、旧型のパナフレックス・カメラでフィルム撮影されています。ヴァルカン船の下部のセットも、10年ぶりに使用されました。この導入部はマニー・コトの案 ※3: 当時の吹き替えでは「友よ、永遠に栄えあれ」。声はタッカー役の内田さんが兼任 (映画では中田和宏さん) ※4: ヒゲが半白の男 Grizzled Human (フランク・ロス Franc Ross) 声:奈良徹 |
オープニング
※5地球の地図。 イカダの船が航海する。 帆船エンタープライズ。 大砲を発射する軍艦。 戦闘機が墜落する。 地面を進む兵士と戦車。 剣で貫かれた地球のシンボル※6。 並んだ大砲。 兵士は強力な火炎を放射する。 戦闘機の編隊。 海に巨大なキノコ雲が起こった。 ジェット機が空母から飛び立つ。 魚雷を受け、大破する潜水艦。 燃えさかる街を侵攻する戦車。 ミサイル。 射程に入った飛行機。 ミサイルがばらまかれ、地面に次々と爆発が起こる。 発射されるサターン・ロケット。 月面で、環境服を着た者がシンボルの入った赤い旗を立てる。 分離するフェニックス。 ワープ船が地表の施設を魚雷で攻撃する。 編隊※7を組むエンタープライズには、船体に黄色の模様が入っている。攻撃は地面の建物を貫通した※8。 星雲の中でクリンゴン・バードオブプレイを攻撃するエンタープライズ※9。 天井から降りてきた MACO が銃を撃っていく※10。 エンタープライズは相手の船をフェイズ砲で破壊する※11。 船団同士の戦闘の中を進むエンタープライズ※12。 シンボル。 |
※5: この前後編においては、通常のオープニングとは音楽が異なって歌でもなくなっており、タイトルは白色から途中で黒く変わります。初めの部分など同じ映像もありますが、全く異なった地球の歴史が描かれます。パラマウントのドラマ "Call to Glory" (1984〜85)、映画「レッド・オクトーバーを追え!」(90)、「ジャケット」(2005) の映像を使用。エンディングも曲が変更されています ※6: TOS第39話 "Mirror, Mirror" 「イオン嵐の恐怖」で使われたシンボルということで、視聴者にもはっきり鏡像世界 (mirror universe) の出来事ということが判明します。DS9第43話 "Crossover" 「二人のキラ」から始まる一連のエピソードでも扱われました。鏡像世界を登場させるのはマニー・コトのアイデアで、その発端を ENT第77・78話 "Storm Front, Part I and II" 「時間冷戦(前)(後)」とする案もありました。なお鏡像世界という用語はセリフ中で言及されたことはありませんが、無数にあるとされる平行宇宙 (平行世界、parallel universe。TNG第163話 "Parallels" 「無限のパラレル・ワールド」など) の特定の一つを区別する意味で、以前からエンサイクロペディアやファンの間で使われている言わば固有名詞です (全ての事象が「鏡」になっていないことは承知の上で)。DVD の音声解説では脚本家のマイケル・サスマンらが用語について触れているものの、自らもその前後一貫して「鏡像世界」と原語では呼んでいます ※7: エンタープライズの周りにいる 2隻の宇宙艦隊船は、ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」などに登場した無名のタイプ。同様にペインティングされています ※8: VOY第127話 "Dragon's Teeth" 「亜空間制圧戦争」のワンシーン ※9: ENT "The Expanse" のワンシーン ※10: ENT第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」のワンシーン ※11: ENT第89話 "United" 「ロミュランの陰謀」のワンシーン ※12: ENT第74話 "The Council" 「評議会の分裂」のワンシーン |
本編
ワープ中のエンタープライズ。 フォレスト※13:『航星日誌、2155年1月13日。ゴリアン・ステーション※14を発ち、急襲部隊との合流ポイントへ向かう。リード少佐※15とドクターから、最新プロジェクトの御披露目があるそうだ。』 船体には I.S.S. ENTERPRISE※16 とあり、シンボルが描かれている。 透明なカプセルの中で、苦痛の声を上げるテラライト人。宇宙艦隊の制服を着ている。 ※17MACO※18 のリード。「このブース※19は従来の拷問方式より、遥かに効果的です。」 フロックスは黒い服だ。「いかなる人種の痛覚中枢も刺激できる。…シナプスをスキャンし、その都度対応します。フン。」 勲章が並び、帯をつけているアーチャー。「これが画期的だそうです。」 フォレスト:「昔で言うところの鞭打ちと同じだ。」 リード:「…鞭とは違うから、画期的だと言ってるんです。従来の拷問法では神経組織が麻痺し、時間が経つと何も感じなくなる。」 フォレスト:「この装置は刺激する神経群を変えていくんです。拷問の対象者が永遠に苦痛から逃れられないようにね。」 叫び続けるテラライト。 フォレスト:「個人的な趣味も入ってるんじゃないか?」 答えないフロックス。 アーチャー:「ミスター・テレヴ※20は何をしたんだ?」 リード:「知りません。仕事に遅れたか何かでは。」 笑う。「テラライト人ってだけで罪だが?」 出ていくフォレストを追うアーチャー※21。 廊下のあちこちに、直立したクルーが並んでいる。 アーチャー:「私の提案書を御覧に?」 フォレスト:「ああ読んだ。」 フォレストたちが通ると、手を挙げて敬礼※22するクルー。2人には護衛がついている。 「それで?」 「命令通り部隊と合流する。出所不明のデータを当てにしてソリア※23領にゆくことなどできん。我々の任務は反乱軍の鎮圧だ、ソリアに行く気はない。」 「データを見たでしょう? …あのテクノロジーを手に入れられれば、反乱を鎮圧できます!」 「…君にとっては大きなチャンスだな。」 「船長。」 「その船を持ち帰ればヒーローになれる。」 フォレストはアーチャーの勲章の一つに触れた。「帝国からは勲章を授けられ、船を一隻任されるかもしれん。」 「私は帝国を救いたいだけです。」 「フン。持ち場に戻りたまえ。」 「船長、あなたは間違っている!」 フォレストは近づいた。「すぐにブリッジへ戻るか、あのテラライトと変わるか…好きに選べ。」 アーチャー:「…戻ります。」 歩いていくフォレスト。 部屋でコンソールを見ている、私服のフォレスト。 薄い布で身をまとったサトウ。「何してるの?」 フォレスト:「報告書の見直しだ。」 「ここはあなたのお城じゃなかった? …仕事なんか全部忘れて、楽しむ場所でしょ?」 サトウはコンピューターを切り、フォレストとキスする。 「うーん。私を屈服させられるのはこの船で君だけだよ。」 「あなたの背中をナイフで刺す気がないのも私だけよ。」 フォレストの鼻に触れたサトウ。「タウ・セティ※24では勝利したそうね。」 「盗聴したのか。」 「うーん、戦争はもうすぐ終わるみたいだから。…ブラジルに戻って、また教師をやるわ。あなたは本部でのんびりとデスク業務をこなし、週末に私と会うの。」 フォレストはグラスを受け取った。「…ただのプロパガンダだ。タウ・セティの戦況は良くない。大苦戦だ。…12隻失った。…誰にも言うなよ? クルーが真実を知れば…」 サトウの顔に触る。 サトウ:「そんな話もうよして。せっかく二人でいるんだもの。」 また口づけを始める。 廊下。 作業しているヴァルカン人クルー。 フォレストはターボリフトの前に立った。ドアを開ける MACO。 すると中にリードたちがおり、MACO を撃った。 後ろから現れるアーチャー。「動くな!」 フォレストの銃を奪う、MACO のメイウェザー。 フォレスト:「絞首刑だな。」 アーチャー:「拘束室へ。」 リード:「いえ、貨物室で片づけます。音も立てず、一瞬に。」 「生かしておく。」 フォレストを押しやるリード。「無事に拘束室までたどり着けるかどうか。」 アーチャーはリードを壁に押しつけた。「フォレストに何かあれば、俺がお前を撃つ! わかったか、少佐。」 フェイズ銃を突きつける。 リード:「よくわかりました。」 またフォレストを押した。 船長席のトゥポル。髪は長く、腹の部分が空いた※25宇宙艦隊の制服だ。 ブリッジにメイウェザーたちがやってきて、銃を向けた。 アーチャー:「動くな、少佐。」 トゥポル:「フォレスト船長は? …保安部に連絡。」 操作を始めた戦術士官。合図するアーチャー。 戦術士官をメイウェザーが撃った。 連絡するアーチャー。「こちらは副長のアーチャーだ。…本日、宇宙艦隊の命令によりフォレスト船長をエンタープライズ※26の指揮官から解任した。」 ベッドで通信を聞いているサトウ。 アーチャー:『我々は、帝国を救う重要任務のためソリア領に向かえとの命を受けた。』 動物を解剖しているフロックス。 アーチャー:『任務の詳細を言うことはできん、だがこれだけは言える。』 機関室のタッカー。顔の右側に大きな傷跡が見える。 アーチャー:『もし我々が成功すれば、艦隊は反乱軍の息の根を止められる。永遠にだ。』 アーチャー:「二度と艦隊のクルーを、戦場に送らずに済む。私は諸君を信じている、必ずこの任務に死力を尽くすと。誰にも勝利への行進を邪魔させはしない。」 敬礼する。「帝国よ、永遠なれ。」 トゥポルをはじめとするブリッジのクルーも、全員手を挙げた。「帝国よ、永遠なれ。」 トゥポル:「艦隊司令部からそのような命令は届いていませんが。」 アーチャー:「……私個人に届いた。」 「記録を見せてください。」 「そのうちにな。…針路を変える。215、マーク 13。ワープ最大。」 操舵士官:「了解。」 アーチャー:「…伍長。…トゥポル少佐を、第2貨物室へ。」 近づく MACO。 アーチャー:「スリバンの遮蔽装置がある。機関室に運び、トリップとインストールしろ。この任務を完遂するには遮蔽装置がいる。」 出ていくトゥポル。 アーチャーは船長席に座り、ため息をついた。肘掛けをなでる。 アーチャー:『航星日誌、船長ジョナサン・アーチャー。クルーは何の混乱もなく命令に従った。機関主任タッカーによれば、6時間後には遮蔽が可能になると言う。』 作戦室。 銃を持つアーチャー。 トゥポル:「どうやら命令は本当らしいですね。」 パッドを持っている。 アーチャー:「らしい? …君は俺に忠実でなければならん。そう言えるか?」 階級章※27は大佐のものになっている。 「指揮官は、あなたです。」 「それがわかってるならいい。」 銃を見せるアーチャー。「誰のかわかるか。ゼフレム・コクレインだ。最初に地球※28に降り立ったヴァルカン人をこれで殺した。…彼が君らの侵略に無抵抗だったら歴史は、どう変わっていたろう。」 壁には様々な銃が並んでいる。「奴隷になっていたのは地球人の方かもしれん。」 「私は奴隷ではない!」 「忘れるな。…お前はヴァルカン人だ! …いつ頃、ソリア領に入る。」 「すでに入っていると考えます。彼らは領域外の星系を、しばしば勝手に併合しますから。」 「ワープサインはわかっている。見つけたら知らせてくれ。」 アーチャーはチップを渡した。 「いない可能性も…」 「いや、いる。…君を副長に昇格させよう。」 「しかし順番でいけば、リード少佐…」 「彼は有能な兵士だが従順さに欠けている。それに野心をもっている男だ。」 「あなたはヴァルカン人を認めていないはずです。」 「…君らに対する、俺なりの礼の言い方だと思ってくれ。君らの能力がなければ、今ある帝国はなかった。下がってよし。」 コクレインの銃を壁に納めるアーチャー。 アーチャーの部屋。 メイウェザーに話すアーチャー。「私の護衛として特権を与える。部屋にも、食事にも。君は私だけに従え、いいな。」※29 メイウェザー:「わかりました。船長、よろしいでしょうか。見事な戦術に対して、改めて祝意を表します。私は、きっとこんな日がくると思って…」 「仕事に戻れ、軍曹。余計な口は聞くな。」 動物のうなり声が聞こえた。ロットワイラー犬がかたわらにいる。 アーチャー:「ポートス※30なら怖くない。腹が減ってるだけだ。」 ドアチャイムに応える。「入れ。」 MACO に付き添われ、サトウ※31が部屋に入った。 アーチャー:「以上だ。」 敬礼し、出ていくメイウェザー。もう一人の MACO と共に、部屋の外に立つ。 ポートスをなでるアーチャー。 サトウ:「艦隊から通信なんか入ってないわ。入ればわかるはずだもの。」 笑った。「もしかして反乱? そんな度胸があったの?」 アーチャー:「それは誉めてるのか?」 「フォレスト船長は?」 「無事だ。」 「…エアーロックから放り出してないっていう保証はどこにもないわ。」 アーチャーはコンソールを操作した。拘束室にいるフォレストが映る。 サトウ:「話をさせて。」 アーチャー:「今は駄目だ。」 映像を切る。「君が面倒を起こさない限り殺さんよ。艦隊に助けなんか求めるな、私には君の技能が必要だ。」 「…技能だけかしら。」 うなり、顔をそらすアーチャー。 サトウ:「まだ私に未練があるんじゃない? …傷つけたならごめんなさい。」 アーチャー:「…君は目の前にあった昇進のチャンスをつかんだだけだ。」 「あなたのようにね? …最初からあなたが船長になるべきだったのよ、そうでしょ? …もし提督たちが裏で結託するようなことがなければ、エンタープライズはあなたのものだった。…前任者のものは何でも、後任者のものになるって…伝統があるんじゃない?」 近づくサトウ。 顔を一旦は離すアーチャー。「伝統には逆らわん。」 キスする。 その時、サトウは背中に隠したナイフを手にする。振り上げたが、アーチャーは口づけをしたままそれを止めた。 ナイフを取り上げる。 通信が入る。『トゥポルから船長。』 アーチャー:「俺たちには割り切った関係が似合いかもしれん!」 ベッドに押されるサトウ。 トゥポル:『アーチャー船長、応答願います。』 アーチャー:「どうした。」 『ワープサインに接近中です。』 「すぐに行く。」 アーチャーはナイフをサトウに近づけた。「戻ったときは下手な考えは捨ててろ。」 通常空間に出てくるエンタープライズ。 ブリッジに入るメイウェザーとアーチャー。 リード:「船長のお越しだ。」 トゥポル:「目標に接近中、2万キロメートル。」 「生体反応、一名。ソリア人です。」 アーチャー:「トラクター※32エミッター起動。」 「…こちらを確認。…武器を装填してます。」 揺れた。 「無力化しろ、パイロット捕獲。」 ソリア船と撃ち合うエンタープライズ。 リード:「命中。」 トゥポル:「リアクターが、オーバーロードしています。」 アーチャー:「少佐。」 リード:「私はしていません、武器を狙っただけです。」 トゥポル:「恐らく、パイロットが自爆しようとしているのでしょう。」 アーチャー:「パイロットをロックし、汚染除去室に転送。」 リード:「船長!」 スクリーンに映ったソリア船は、爆発した。 トゥポルを見るアーチャー。 トゥポル:「転送完了。」 アーチャー:「アーチャーから医療室。ソリア人を転送した、汚染除去室を調整しろ。」 また別の動物を扱っていたフロックス。「時間がかかります。ソリア人の生命維持条件は非常に厳しい。温度を 480ケルビンに上げます。」 高いノイズのような音が聞こえた。 フロックス:「ご機嫌斜めか? フン、まあ待ってろ。」 |
※13: マキシミリアン・フォレスト船長 Captain Maximilian Forrest (ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong) ENT第83話 "The Forge" 「狙われた地球大使館」以来の登場。通常世界では提督でしたが、そのエピソードで命を落としました。ファーストネームは言及されていませんが設定では「マクスウェル」ではなくなっており、略称にした場合の「マックス」だけ共通です。声:白熊寛嗣 ※14: Gorlan Station ゴリアンは TOS "Mirror, Mirror" で、帝国への反乱があったと言及された種族 ※15: リードは宇宙艦隊士官ではなく MACO になっているので、少佐は Lieutenant Commander ではなく Major。ENT の当初の設定では、リードは宇宙艦隊海兵隊の少佐になる案もありました ※16: 通常世界の連邦所属=U.S.S. に相当する、I.S.S. 名がつけられています ※17: タイトル表示は "In a Mirror, Darkly" のみですが、このサイトでは便宜上わかりやすくするため "In a Mirror, Darkly, Part I" で全て統一しています。新約聖書「コリント人への第一の手紙」13章12節より。同じ一節は映画第10作 "Star Trek Nemesis" 「ネメシス/S.T.X」でもピカードが言及していますが、多少異なった言い回しです ※18: 左肩のマークは通常世界のサメに対し、ドクロになっています (壁紙) ※19: 拷問ブース (agony booth) のこと。TOS "Mirror, Mirror" より。ENT第81話 "Cold Station 12" 「コールド・ステーション」で使われた、医療用カプセルの使い回し ※20: Terev エキストラ ※21: エンタープライズのマークも同様に、交差した剣の絵が入っています ※22: TOS "Mirror, Mirror" でも同じような敬礼をしていましたが、手は開いていました。当初は手を挙げずに胸に手を当てるだけの案もありましたが、それだと映画「ギャラクシー・クエスト」と同じになるので変更 ※23: Tholian TOS第64話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」など ※24: Tau Ceti くじら座に実在する恒星。TOS第71話 "Whom Gods Destroy" 「宇宙の精神病院」など ※25: TOS "Mirror, Mirror" と同様 ※26: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 ※27: 通常世界ではバッジが階級章でしたが、肩章になっています。ここではトゥポルは少佐の階級章 (2本線の上に四角形) ですが、最初や後のシーンでは中佐 (3本線の上に四角形) になっています。アーチャーが降格させて、すぐ戻したのでしょうか。原語では Commander としか呼んでいないため区別できず、吹き替えでは一貫して少佐です。なお通常世界の階級章では 3つ星しかなく、中佐と少佐の区別はありません ※28: 原語ではこの個所などで、「地球の」という意味でテラン (Terran) と言っています。DS9 の鏡像世界エピソードでは、地球人が通常の human ではなくテランと呼称されていました (脚注※48 も参照) ※29: 窓から見える星が右から左に流れているため、アーチャーの部屋は左舷側にあることがわかります。通常世界では右舷でした (ENT第64話 "Chosen Realm" 「選ばれし領域」) ※30: 通常世界のビーグル犬であるポートスより大きな犬ですが、実際は幼いそうです。サスマンはグレート・デンを使うよう提案しました ※31: サトウの階級は大尉 (階級章が 2本線のみ) ※32: 通常世界のエンタープライズは、トラクタービームはなくグラップラーしか装備していません |
廊下を歩いてくるアーチャー。「彼は?」 フロックス:「『彼』とは限定しない方がいいでしょう。ソリア人は、両性の特質を備えていますから。…生体反応らしきものは…安定しています。」 「言葉はわかるか。」 うなずくサトウ。 汚染除去室の中は温度が上げられ、一面赤くなっている。アーチャーは会話ボタンを押したが、中には何も見えない。 突然、下から水晶のような身体をした生命体※33が姿を見せた。 驚くアーチャー。「…船長のアーチャーだ! お前は地球の旗艦、エンタープライズ※26にいる。質問に答えなければ、苦痛を味わうことになる。」 声を上げるソリア人。 サトウ:「ただ解放を要求しています。」 アーチャー:「フン。…お前が拿捕した地球船は今どこにあるのか答えろ。」 ソリア人:「――。」 サトウ:「『仲間がお前の船を探し、破壊するだろう。』」 ため息をつくアーチャー。 フロックス:「生命維持装置を微調整すれば、協力的になるのでは? …温度を 50度下げてみます。」 ふらつくソリア人。何本もの足が見える。 アーチャー:「私が質問したことに答えろ。」 ソリア人:「――。」 サトウ:「これは恐らく、侮辱語の一種かと※34。」 アーチャー:「…もう 50度下げてくれ。」 声を上げ、震えるソリア人。 微笑むフロックス。「外骨格が砕け始めたようです。」 サトウ:「『わかった、答える。』」 温度を上げるよう指示するアーチャー。「続けろ。」 ソリア人:「――。」 サトウ:「船はヴィンターク星系※35にある。ガス巨星の軌道上にある施設だ。」 ソリア人が今度は高い、継続的な音を出し始めた。 アーチャー:「こりゃ何だ。」 トゥポル:「短距離通信です。」 リード:「…救難信号か? 中に通信機はないぞ。」 「結晶体の身体が、通信機の役割を。」 「船長、ただちに宇宙へ放り出すことをお勧めします。」 アーチャー:「駄目だ。さっきの答えが事実か確かめるまで拘束を続ける。…何とかしてこいつを黙らせる方法を考えろ!」 歩いていく。 フロックス:「わかりました。」 機関室で装置に対して作業を行うトゥポル。 タッカー:「何か忘れてないか? ビッグズ※36!」 驚いて振り返る機関部員。 タッカー:「少佐に放射線メーター※37を。」 箱から器具を取り出し、トゥポルに渡すビッグズ。 タッカーも制服につけている。「俺みたいになりたいのか? デルタ線※38を浴びすぎて、孫の代まで後遺症で悩まされる。」 トゥポル:「フラックス連結器。」 「…ワープリアクターのそばにいると毎年、10年単位で寿命が縮まるらしい。」 道具を渡すタッカー。「ってことは、俺の寿命は週末までだ。」 「アーチャー船長に昇進させてもらったら?」 「あんた副長だろ、代わりに進言してくれ。」 「なぜその必要が。」 「…恩を忘れたか?」 「それは禁句のはずじゃない。」 「今まではな。」 「何が恩よ、自分だって楽しんだくせに。」 「たっぷり満足させてもらったよ? …それで? 次のポン・ファーまで後何年待てばいいんだ?」 音が響いた。「おい、この音何だ。」 光が遮蔽装置につながれたケーブルを伝わってくる。 タッカー:「マトリックスコンバーターだ!」 ケーブルを抜こうとしたタッカーは、吹き飛ばされた。 機関部員:「どうした!」「何をした!」「ドクターを呼べ!」 苦しむタッカー。 フロックスから治療を受けるタッカー。 機関室に来ているアーチャー。「遮蔽装置が直るのは?」 タッカー:「一日はかかります。」 「6時間で直せ。」 リード:「…何十という EPS がある中で、オーバーロードしたのはただ一つ。遮蔽装置につながる EPS だけです。」 タッカー:「ほかのシステムにも被害が出ています。内部センサーも Gデッキの重力プレートもダウンをしていて…」 話を聞いているトゥポル。 アーチャー:「遮蔽装置が最優先だ!」 リードを小突く。「責任の所在が誰にあるのか、すぐ突き止めろ!」 タッカー:「調査なら部下にさせます。部外者にウロウロされちゃ仕事の邪魔になる。」 「遮蔽装置を直せ!」 出ていくアーチャー。 リードはタッカーとにらみ合う。 アーチャーは拘束室に入った。「誰が遮蔽装置を壊した。」 フォレスト:「…何かあったのか。」 「ブラック提督※39がスパイを送り込んでるんだろ? 名前を言え!」 「本当に提督がこの私の船にスパイを乗せているなら、誰か聞きたいのはこっちだ。」 メイウェザーに命じるアーチャー。「フォレストの部屋へ行き、個人ファイルを調べろ。…艦隊から通信がないか。」 フォレスト:「従えば共謀者としてお前も死刑にされるぞ?」 メイウェザー:「…了解です、船長。」 フォレストを見て、出ていく。 フォレスト:「フン。…らしくないな、ジョナサン。君は権力には、無欲だったはずだ。だから私は君を信頼し、そばにおいてきた。野心とは無縁だと思ってたからな!」 アーチャーはドアを開けた。フォレストを殴る。「ああそうだ! 何でここにいるのか、わかってるのか?」 首を絞める※40。 フォレスト:「…放してくれ! …そうすれば死刑の時には、苦しまずに死なせてやる! …て、提督はそう楽な殺し方はせんだろう!」 ナイフを取り出すアーチャー。 フォレスト:「…殺せ! …この報いは必ずくる※41!」 アーチャーはフォレストを放した。ドアを閉め、去る。 司令室で船体図を指差すリード。「犯人はこのジャンクションに侵入し、故意にこの EPS をオーバーロードさせました。」 アーチャー:「立入禁止区域だぞ?」 「侵入者警報が解除に。」 「どうやって!」 「可能な方法は一つ。点検用のスキャン中には解除されます。タッカー中佐※42は、オーバーロードの 30分前にスキャンを開始していました。」 拷問ブースに入れられているタッカー。声を上げる。 アーチャー:「破壊工作を命じたのは誰だ。」 タッカー:「…俺は無実だ!」 またリードによってスイッチが入れられる。 タッカー:「…リード! ここを出たら貴様を殺してやる!」 リード:「できるものならな。」 アーチャー:「お前はブラック提督から、ここの機関主任に命じられている! フォレストの子飼いを弾いての抜擢だ。お前は、提督のスパイだろ? 目的は何だ。」 タッカー:「…船長。全て誤解です。」 苦痛を受ける。「俺はやってない。」 「何を命じられた!」 「わかってください! …あなたを裏切ったことはありません!」 「…続けろ!」 拷問室を出ていくアーチャー。 微笑むリードは、操作を続けた。 アーチャーの部屋。 裸のアーチャーの隣で寝ているサトウ。「こんなの久しぶり。すごーく、よかったわ。…キャリアなんて、どうでもいい。」 アーチャー:「俺が渡したデータ、もう元帥に送信したか。」 「…したわよ? 中身は。」 「万一の保険だ。」 ベッドに座るアーチャー。 「どうしたの。」 「タッカーは有能な機関士だ。遮蔽装置を破壊したいなら、もっと上手くやる。」 「…トゥポルがいたから思うようにできなかったんじゃない?」 コンソールに触れるアーチャー。「コンピューター、トゥポル少佐の居場所は。」 男性型のコンピューター音声※43。『…返答不能。内部センサー、オフライン。』 アーチャー:「センサーを切るのが目的だったのか!」 シャツを着る。 「どうしたの。」 「そこにいろ。」 アーチャーはフェイズ銃を持って出ていく。 銃を持ち、ヴァルカン人たちを引き連れて廊下を歩くトゥポル。 拘束室の外で、銃声が聞こえた。身構える MACO。 ドアが開き、何かが放り込まれた。強烈な光を発する、スタン爆弾だ。 立ち上がるフォレスト。トゥポルが中に入る。 歩いてくるアーチャー。いきなりクルーが撃ってきた。 倒れるアーチャーの部下。反撃するアーチャー。 隠れるヴァルカン人。アーチャーはターボリフトに入った。 銃を受け取るフォレスト。「来るのが遅いぞ。」 トゥポル:「助けを募っていたんです。」 「警報は。」 「内部センサーを切ってあります、通信システムも。」 「まずはブリッジの奪還だ。」 ブリッジ前方で、通路に隠れているトゥポルたち。反対側にはフォレスト。 合図で飛び出し、クルーを撃っていく。操舵席に座るトゥポル。 フォレスト:「ソリア領から脱出しろ。ワープ最大!」 トゥポル:「…針路を変更できません。」 「では停止だ。」 「全く応答しません。」 ターボリフトが開いた。アーチャーが両手を挙げて立っている。「問題でも?」 フォレスト:「貴様か。」 「目的の座標に着くまで自動航行は解除できない。そうセットした。」 銃の設定を変えるフォレスト。「では解除してもらおう。今すぐにだ。」 アーチャー:「できない。乱数コードで暗号化してある。」 「何とかできないのか。」 トゥポル:「暗号の解読には、4、5日かかります。」 アーチャー:「座標ポイントに着く方がずっと早い。…ブリッジはお返しします、船長?」 敬礼した。 |
※33: TOS 以来、ソリア人が姿を見せるのは初めて。また、全身が判明するのは史上初。撮影時には追尾スーツを着て演じ、モーションキャプチャー技術が使われています (ENT "The Xindi" などの昆虫ズィンディと同じ) ※34: 原語では「何か『お前の母方の先祖』に関することです」 ※35: Vintaak system ※36: Biggs エキストラ。ENT第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」で同名のクルーがコロンビアにいましたが、別人 ※37: radiation meter ※38: delta rays TOS第16話 "The Menagerie" 「タロス星人の幻星人」より。そのエピソードでのクリストファー・パイクもデルタ線のせいで顔を含めて身体を損ねており、タッカーの姿はそのオマージュ。当時の吹き替えでは「デルタ光線」 ※39: Admiral Black ENT 脚本家の Chris Black にちなんでサスマンが命名 ※40: フォレストが一瞬、舌を出します。監督の指示 ※41: 原語では「彼女 (=サトウ) が絶対に許さないだろう」 ※42: 吹き替えでは「少佐」。タッカーは中佐の階級章です ※43: これも通常世界より進歩している描写。TOS "Mirror, Mirror" と同じく、男性の声になっています |
拷問を受けるアーチャー。フォレストが拷問室に来る。 フロックス:「もう中に入って 10時間です。恐れ入る。」 フォレスト:「外に出せ。」 ブースが開き、アーチャーは倒れ込んだ。 フォレスト:「リード少佐を呼べ。自分の発明品の威力を試させよう。」 フロックス:「フーン。」 出ていく。 アーチャー:「ここで、俺を殺す気か。それとも、裁判に?」 フォレスト:「ガードナー元帥※44が解放しろとさ。…データを受け取ったらしい。元帥はお前の申し出に、興味があると。お前が勝手にコースを設定したせいで、謎の船とやらの調査を命令された。」 微笑むアーチャーを、フォレストは立たせた。「裏切り者め。一瞬たりともこのことは忘れんからな。」 手を離す。「身支度をし、一時間後に会議室で報告を。」 会議室。 トゥポル:「平行宇宙ですか?」 うなずくアーチャー。 トゥポル:「科学理事会が徹底的に調査したところ、平行宇宙が存在するという証拠は…何もなかったようですが?※45」 アーチャー:「ソリア人は君らの種族より柔軟な発想ができる。…トリコバルト弾頭※46を爆発させた。」 星図※47を指差す。「この、死んだ星の重力のくぼみの中でな。爆発は両面に通じる裂け目を作った。出入口だ、別の宇宙への。」 タッカー:「出入口?」 「裂け目は不安定で、同胞の船を送るのは危険と考え救難信号を送ったらしい。この裂け目に向かって。向こうから助けが来るように。そして作戦は見事成功した。」 サトウ:「…どこからの情報です?」 「ソリア人は異星人を雇って働かせている。その一人だ。彼らは相応の値で、情報を売ってくれる。」 タッカー:「ボッタクられてないといいが。」 「彼は通信が妨害される前、この画像を送ってきた。」 岩状の小天体が拡大される。 タッカー:「別に何も見えませんが。」 アーチャー:「コンピューター、3アルファ拡大。」 内部に隠されるように、白い宇宙船が見える。 フォレスト:「地球の船か。」 アーチャー:「平行宇宙には、我々の宇宙に存在するものが全て存在すると言います。」 サトウ:「地球帝国※48や艦隊が、別の宇宙に?」 タッカー:「だから、何だって言うんです。」 アーチャー:「ソリア人が製造年を調べたところ、この船は別の宇宙のものというだけじゃなく、100年後のものでもあった。」 2本の線が表示される。「使われているテクノロジーのことを考えてみろ。未来の戦術システム、進化した生物兵器、エンジンは夢のようなスピードを可能にする。全て我々の手に、入るんだ!」 トゥポル:「聞く価値もありません。あの船は誰かが我々をおびき出すために造ったおとりに過ぎない。アーチャー副長は、反乱騒動の責めを負うべきです。」 フォレスト:「もうよせ、少佐。」 「船長、我々は直ちに…」 「黙れ、調査は元帥の命令だ。…すぐに遮蔽装置を直せ。」 出ていくフォレスト。 アーチャーはトゥポルに向かって微笑んだ。 スリバン遮蔽装置を扱うタッカー。 トゥポルが機関室に入る。「船長に進捗報告を。」 タッカー:「フィールドコンバーターを調整して終わりだ。…お前のせいで 4時間も拷問ブースにぶち込まれたんだぞ!」 「その怒りはアーチャー副長にぶつけるべきじゃないかしら?」 「内部センサーを不能にして、俺のせいにしたのはお前だ。」 「それは違うわ。」 「何が違う! 俺が何かしたなら、覚えてるはずだろうが。」 「そうとは限らない。」 「俺に何をした。」 「機関室から部屋におびき出したの。」 トゥポルとキスするタッカー。 トゥポル:「性的関係を結ぼうと。」 トゥポルはタッカーの顔に触れた。声を上げるタッカー。 トゥポル:『我の精神は…』 トゥポル:「二人きりになると、精神融合を使って私の意識を移し…」 『汝の精神へ。』 「パワーグリッドに細工するよう強要した。」 トゥポル:「任務完了後、再び精神融合し? あなたの記憶を全て入れ直したわ? フォレスト船長に指揮権を戻すことが私の任務だから。」 タッカー:「きっと後悔させてやるからな。」 「脅しは非論理的よ※49。」 「機関室からブリッジ!」 フォレスト:『続けろ。』 「準備完了。非常用以外の全パワーを回します。」 フォレスト:「遮蔽を開始しろ。」 タッカーは無表情のトゥポルを見る。 遮蔽装置が起動される。辺りが明滅する。 ブリッジも同じだ。 エンタープライズの姿が消えていく。 報告するトゥポル。「座標に接近中です。自動航行解除されました。」 フォレスト:「…外を見てみよう。」 スクリーンに映る、輪をもった惑星。いくつもの衛星も見えている。 アーチャー:「右下の月を拡大。」 次々とズームアップし、地球船が映った。 見つめるクルー。 そこにあったのは NCC-1764、コンスティテューション級 U.S.S.ディファイアント※50だった。ソリア船が辺りを飛行している。 |
※44: 通常世界では、階級は提督としか言及されていません ※45: これまで ENT第11話 "Cold Front" 「時を見つめる男」などでは、トゥポルが「ヴァルカン科学理事会 (Vulcan Science Directorate) の研究ではタイムトラベルは不可能」と言ってきました。ここではヴァルカンと言っていないので、帝国に吸収されたのかもしれません ※46: tricobalt warhead トリコバルトは TOS第23話 "A Taste of Armageddon" 「コンピューター戦争」など ※47: TOS "The Tholian Web" で登場した図とそっくりです ※48: テラン帝国 Terran Empire 実際にこの呼称がセリフで言及されたのは、初めてかもしれません ※49: TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」で、サレックが言ったのと同じセリフ。当時の吹き替えでは「脅迫は理性的ではない」 ※50: U.S.S. Defiant TOS "The Tholian Web" より。当時の吹き替えでは「デファイアント」。同名のディファイアント級の船 (NX-74205) は、DS9第47話 "The Search, Part I" 「ドミニオンの野望(前編)」以来活躍しました |
船体図の前で説明するトゥポル。「生命維持装置を含む主要システムはオフライン。生体反応は 13名、全て異星種です。うち一名は、爬虫類。このセクションに、集中しています。」 光る点。 アーチャー:「船のクルーは。」 「地球人は一切関知していません。」 リード:「きっと全員殺されたんでしょう。」 タッカー:「コイルのサイズを見て下さい。ワープ7 は出せるはずだ。」 フォレスト:「乗船班を送った方がいいな。君の提案だ、指揮を執れ。…可能な限りデータを引き出し、船を破壊してこい。」 アーチャー:「破壊? あの船は拿捕すべきです。」 「危険すぎる、ここはソリア領のど真ん中だぞ…」 「船長、考え直して下さい!」 「これは命令だ、副長! …解散。」 司令室を出ていくアーチャーたち。 フォレストはトゥポルに言う。「同行しろ。二度とアーチャーをこの船に戻す気はない。私の言う意味がわかるな。」 ディファイアント。 転送される 5人。環境服※51を着ている。 剥き出しになった装置。 スキャナーを使うトゥポル。「コンポーネントがありません。」 アーチャー:「バラしてるんだ。」 廊下に赤いシャツを着た男が倒れている。 トゥポル:「地球人です。」 身体を起こすアーチャー。制服※52の中央に穴が空き、傷ついている。 近くにあった銃を拾うアーチャー。フェイザーだ。 リード:「よろしければ、私が携帯します。」 アーチャーは自分の腰に納めた。 汚染除去室の前にいるフロックス。ソリア人が声を上げだした。 フロックス:「昼寝の時間は終わってないぞ。」 操作するが、声は止まらない。 サトウ:「送信波感知しました。汚染除去室です。」 フォレスト:「ブリッジからフロックス、何が起こってる。」 フロックス:「鎮静剤が効きません。」 フォレスト:『では殺せ、今すぐだ。』 「はい、喜んで。」 温度が一気に下げられる。粒子を発するソリア人の身体。 サトウ:「3隻の船がこちらへ接近中!」 フォレスト:「ドクター!」 フロックス:「あと数秒で死にます。さっさと死んでくれ。」 ソリア人は身体を震わせ、粉々に砕け散った。 フロックス:「フロックスからブリッジ。もうこの客にわずらわされることはありません。」 サトウ:「ソリア船が呼びかけています。」 アーチャーたちは暗いブリッジに入った。 アーチャー:「彼が船長だ。」 トゥポル:「首が折れています※53。」 タッカー:「ここからリアクターをオーバーロードできそうです。」 アーチャー:「よーし、かかれ。」 サトウ:「さらに 4隻!」 フォレスト:「アーチャーを呼べ、即刻任務中止だ。退避コースを設定。」 「通信不能です。」 ソリア船はビームを発射した。それは仲間の船に向けたもので、さらにそこから複数の線が続く。 次々と伸びるビーム。辺り一帯を取り囲む。 スクリーンを見るフォレスト。 そのビームの中を、さらに細かい網目が覆っていく。まるでクモの巣※54のようだ。 フォレスト:「近くの船を狙え! 発射!」 サトウ:「ダメージなし。」 「魚雷を装填、ただちに発射。」 遮蔽したまま発射される魚雷だが、全て網に吸収された。エネルギーが伝わっていく。 周りのソリア船から攻撃が始まった。 サトウ:「敵に見つかりました!」 火花が飛ぶブリッジ。 フォレスト:「脱出しろ。…機関室、遮蔽を解除し全エネルギーをエンジンに回せ。」 機関部員:『遮蔽装置が反応しません!』 アーチャー:「所要時間は。」 タッカー:「それを聞きたいのはこっちの方です。」 トゥポル:「私がシステムを起動します。」 アーチャー:「君は下がっていろ。」 タッカー:「もうすぐです。」 ブリッジ※55が明るくなった。作動音が鳴り始める。 ディファイアントの窓やワープナセルが明るくなる。 警告音に気づき、スコープを覗くトゥポル。「エンタープライズが、攻撃を受けています。」 気体が吹き出すエンタープライズのブリッジ。 サトウ:「…防御プレートダウン。…3デッキパワーダウン、C、D、E です。」 機関部員:『こちら機関室、抑制フィールド崩壊中です。』 フォレスト:「反物質の排出は。」 『…無理です、リアクター爆発まで 3分!』 「……こちらは船長。総員脱出ポッド※56へ向かえ。船を放棄する。…聞こえないのか!」 ブリッジを出ていくクルー。 サトウはフォレストに近づく。「何をする気ですか?」 操作するフォレスト。「できる限り時間を稼ぐ。…ここを離れろ、早く。」 出ていくサトウ。フォレストは操舵席に座った。 ヘルメットを外したトゥポル。「エンタープライズの被害は甚大です。」 アーチャー:「武器とエンジンを、オンラインにできるか。」 タッカー:「手を尽くしてみます。」 「死体を片づけろ!」 エンタープライズのブリッジは、火が上がっている。 船体のパネルが剥がれ、脱出ポッドが次々と離脱していく。 だが網にぶつかって壊れたり、直接ソリア船の攻撃を受けるポッドもある。 爆発が続くブリッジで、独り操作を続けるフォレスト。 アーチャーはパイロット席のスコープ※57を起動させた。 トゥポル:「副長。」 スクリーンを見るアーチャー。 網の目の中央で、エンタープライズが大爆発を起こした。 無言のアーチャーたち。 |
※51: リードは MACO なので、通常世界だと異なったタイプの環境服 (宇宙服) を着るはずですが、いつもの宇宙艦隊タイプになっています ※52: TOS期では船ごとに異なったシンボルを制服につけていたので、今回初めてディファイアントのものが作られました。コンスティテューション級の船体などにもあった、ブーメラン型のマークが元。ただし TOS "The Tholian Web" では、エンタープライズと同じシンボルが使われていました。このシーンの制服をよく見ると、エンタープライズの矢じり型シンボルがつけられていた跡が見えます。DS9第104話 "Trials and Tribble-ations" 「伝説の時空へ」で使用されたため ※53: TOS "The Tholian Web" でカークたちがブリッジに入ったときと、首が折れているのも含めて同様の状況です ※54: ソリアのクモの巣、ソリアン・ウェブ Tholian web TOS "The Tholian Web" でも使っていましたが、作るのに非常に時間がかかっていました (船の数も少ないものでしたが) ※55: コンスティテューション級のブリッジが再現されるのは 3度目ですが (TNG第130話 "Relics" 「エンタープライズの面影」、DS9第104話 "Trials and Tribble-ations" 以来)、当時と同じ完全な 270度セットが造られたのは初めて。船長席と操舵コンソールは、以前アトラクション用に製作されたもの。このシーンは全景が一瞬で終わりますが、本来はもっと長く映されていました。ターボリフトのドアがすぐ後で開いたり閉まったりしているので、それを気づかせないようにするためだそうです ※56: これまで通常世界のエンタープライズで使われたことはありません。脚本のサスマンによれば、これも鏡像世界にしかない、進んだテクノロジーという設定だとか ※57: ファン製作ムービーから借用したもの |
To Be Continued...
感想など
TOS で導入され、DS9 で一つのシリーズものとなった鏡像世界編。今回初めて、全て平行宇宙側だけで話が進むという思い切った手法が用いられました。いつもと違うクルーの様子が見られるのは、船などの設定を含めてファンには嬉しいものです。遮蔽装置、精神融合の悪用、さらにエンタープライズの爆発など、切り離した世界だからこそできるというのもおなじみのお楽しみですね。 さらにひねってあるところは、TOS 第3シーズン "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」の続編となっている点です。最初からソリアについて触れ、当時以来初めてソリア人が姿を見せ、さらにコンスティテューション級ディファイアント、そして完全なブリッジの再現! 2つのアイデアを組み合わせる手法はよくありますが (スンの先祖+優生人類、ボーグ+ファースト・コンタクトなど)、ディファイアントが鏡像世界に消えたというのを思いついた時点で、成功が約束されましたね。 脚本は数年前から温めていたというマイク・サスマン。フォレストは一シーズンで 2度目の死を迎えることになりましたが、前回のあっけなさを補うような活躍ぶりでした。 |
第93話 "Bound" 「誘惑の甘い罠」 | 第95話 "In a Mirror, Darkly, Part II" 「暗黒の地球帝国(後編)」 |