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エンタープライズ エピソードガイド
第80話「ボーダーランド」
Borderland

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・イントロダクション
※1報告するクリンゴン人戦術士官※2。「輸送用シャトルです。武装はしてません。エンジン、生命維持装置共に停止。」
艦長※3:「クルーは。」
「地球人が 2人いるようです。」
「牽引しろ。…ドッキングポートに保安班を。」
バード・オブ・プレイ※4は、シャトル※5に向けてトラクタービームを発射した。

クリンゴン人について歩く地球人。廊下の途中で止まった。
クリンゴン人※6:「歩け!」
集まるクリンゴン。2人の地球人は顔を見合わせた。
後ろを向く一人、マリック※7
クリンゴン人:「さっさと行け!」
銃で突いたが、マリックは全く動じない。
マリックはおもむろに身体を回転させると、クリンゴン人を蹴った。何メートルも飛ばされる。
銃を撃とうとする別のクリンゴンから武器を奪い、頭を突く。ディスラプターを発射されても素早くよけた。
もう一人の地球人も、生身の身体でクリンゴン人を倒していく。
駆けつけたクリンゴンに気づいたマリックは、一人を殺した直後に身体を回転させながら銃撃を避ける。
蹴り飛ばされたクリンゴン人は倒れた。
銃を奪い、先へ進む 2人。

命じる艦長。「最高評議会に連絡だ。捕虜の措置について指示を仰げ。」
戦術士官:「司令官、船内で武器が使用されました。」
音が響いた。地球人が立っている。
銃を構える艦長。「キー・ヤ!」
だがそれより早く、2人は武器を発射した。


※1: このエピソードは 2005年度エミー賞で、スタント調整賞にノミネートされました

※2: Klingon Tactical Officer
(Dayo Ade)

※3: クリンゴン人艦長 Klingon Captain
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler DS9第1・2話 "Emissary, Part I and II" 「聖なる神殿の謎(前)(後)」のヴァルカン人艦長 (Vulcan Captain)、第73・74話 "The Way of the Warrior, Part I and II" 「クリンゴンの暴挙(前)(後)」などのクリンゴン人マートク (Martok)、第164話 "Chimera" 「仮面の下の孤独」のラーズ (Laas)、VOY第135話 "Tsunkatse" 「囚われのファイター」のヒロージェン・ハンター (Hirogen Hunter)、ENT第45話 "Judgment" 「反逆の法廷」のクリンゴン人コロス (Kolos) 役。ゲーム "Klingon"、"Armada"、"Armada II"、"Elite Force II" でも声の出演)

※4: クリンゴン・バードオブプレイが登場するのは、ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」以来。のちの映像から 115m ほどと推察できるそうです

※5: ENT第23話 "Fallen Hero" 「追放された者の祈り」に登場した、マザール・シャトルの使い回し

※6: クリンゴン人兵士その1 Klingon Soldier #1
(Thom Williams スタント)

※7: Malik
(アレック・ニューマン Alec Newman ミニシリーズ「デューン/砂の惑星」(2000) に出演) 声:内埜則之

・本編
宇宙艦隊司令部。
紙に左手で何かを書き続けている腕には、手錠が見える。スン※8だ。
通信が届く。『博士、面会だ。』
スン:「…今は手が離せない。」
『いいから立て。』
ため息をつき、立ち上がるスン。壁には一面、紙が貼られている。
通信:『腕を。』
スンが腕を上げると、両手の装置が自動的にくっついた。
音が聞こえる。ドアを開ける宇宙艦隊士官。
続いてアーチャーが近づいた。
スン:「ジョナサン・アーチャー。…何しに来た。…この刑務所も改名か?」
アーチャー:「あんたに聞きたいことがある。」
笑うスン。「悪いが取り込み中でね。」
アーチャー:「すぐ済むさ。」
「まあこうして話せるのは実に光栄なことだな。『地球の救世主』だ。どうぞ。」
中に入るアーチャー。
スン:「こんな、張り紙だらけで申し訳ない。…簡単なレコーダーも使わせてもらえないもんでね。」
アーチャーの合図で、ドアを閉めて去る艦隊士官。
アーチャー:「パッドを改造して、拘留センターのセキュリティを全て破ったそうだな。」
スン:「あれは力作だったよ。一気にソーサリートまで逃げた。…まあ滅多にないが、発想に行き詰まったとき派手な脱走計画を立てるんだ。気分転換に。」
山と積まれた紙に、手を触れようとするアーチャー。
スン:「どうぞ。DNA 配列だよ。それで人間の T細胞を改造するんだ。その技術なら、シャラット症候群※9も撲滅できる。見てくれ。そっちのは可視帯域を、5%増加させるものだ。…どれも、実験にすら至らんがね。せっかくいい理論を書き留めても、没収されて…プッ、塵と消える。」
アーチャー:「そうなるとわかってるのに、なぜこんな理論を書き続けてるんだ?」
「全く理解に苦しむ。人間は本来知的な生物のはずじゃないのか? 種を進化させるテクノロジーをなぜ拒む。」
「遺伝子工学の研究はかつて、大きな悲劇を呼んだ。」
「核分裂だってそうだろ。…だが初期の宇宙船※10には、その核燃料が使われてたんだぞ? しかし、今はそんな話はどうでもいい。」
「バード・オブ・プレイが襲われた。クルーは全員殺され船は消えた。」
「そうらしいな。クリンゴンは心穏やかじゃないだろう。宇宙の平和も束の間だな。」
「宇宙に放り出されていたクルーたちの遺体から、犯人の DNA が検出された。」
「その犯人は、地球人か?」
「ちょっと違う。」
「……そういうことか。」
「優生人類※11だ。…DNA が、20年以上前に研究施設から盗まれた受精卵数個のものと一致した。盗んだのはあんただ。」

宇宙ドック内のエンタープライズ。
アーチャー:「スンは、コールド・ステーション12※12 で研究をしていた。極秘の医療研究を行う機関だ。」
リードをはじめ、司令室に集まっているクルーはアーチャー以外みな私服だ。「艦隊が伝染病の病原体を保管してるところですよね。」
アーチャー:「遺伝子強化された受精卵もな。優生戦争で生み出されたものだ。…もちろん存在は公にはされていない。」
メイウェザー:「博士の裁判は見ましたけど、受精卵のことには触れてませんでしたよ?」
「受精卵は、トライアラス星系※13へ持ち出しそこで育てたと言ってる。逮捕されたとき子供たちは 10歳だったが、それから 10年だ。」
タッカー:「その子供たちが大人になって宇宙をうろついてるわけですか。」
メイウェザー:「考えたくもない。」
リード:「でもなぜクリンゴンを襲ったんでしょう。」
アーチャー:「さあな。スンも一応、見当がつかないとは言ってる。だが自分なら、穏便に解決するよう説得できると言うんだ。」
「連れて行くんですか?」
「スンは、ボーダーランド※14の情報にも詳しいんだよ。」
サトウ:「ボーダーランド?」
リード:「クリンゴン船が襲われた場所だ。」
トゥポル:「クリンゴン帝国と、オリオン・シンジケート※15が対立している危険地帯です。…壮絶な領域争いが起こっています。」
サトウ:「そうなんですか。」
アーチャー:「クリンゴンは報復のためなら手段を選ばないだろう。この船なら、優秀なクルーも揃ってる。我々が優生人類を地球へ連れ帰るんだ。戦争を防ぐ方法はそれしかない。6時間で出発するぞ。」

惑星軌道上のバード・オブ・プレイ。
優生人類の女性、パーシス※16。「エンジンのシステムはわかったわ?」
マリック:「ウイングマウント・ディスラプター砲に、光子魚雷まで。まさに最高の武器が揃ってる。」
「これでやっと自由ね。」
別の優生人類が仲間を引き連れ、ブリッジに入ってきた。それを見てマリックから離れるパーシス。
優生人類:「いい船だなあ、フン。」 いきなりマリックを殴った。
反抗しようとするマリックだが、取り巻きがナイフを構えた。
手を挙げるマリック。「喜ぶと思ったんだ。」
優生人類:「攻撃を許可した覚えはないぞ。失敗したら全員クリンゴンにやられてた※17!」
「でも成功した。」
「クリンゴン政府は必死になって、俺たちを捜してるはずだ!」
「フン、どうせ見つかりっこない。」
無言の男。ほかの優生人類もマリックと視線を合わせない。
マリック:「それにこの腐った星を出るには丁度いい機会だろ。」
優生人類:「いつ星を出るか決めるのは俺だ! リーダーは誰だ。…言ってみろ!」
「ちゃんとわかってる。」
「言え。」
「あんただよ、ラーキン※18。」
ラーキンはパーシスの手をとった。「二度と同じことを言わせるな。…荷物の積み込みが済んだら知らせろ。軌道を離れる。」 共に出ていく。

エンタープライズへ向かう検査ポッド。

エアロックが開くと、MACO に付き添われたスン博士が立っていた。手錠をされたままの手を合わせる。「乗船許可願います。」
何も言わないアーチャー。「…科学士官の、トゥポルだ。」
スン:「紹介の必要はない。…ヴァルカン人は素晴らしい種族だよ。地球人への見方には同感だ。」
トゥポル:「どんな見方です。」
「まだまだ改善の余地がある。」
「…それはほとんどの種について言えることだと思いますが。
笑うスン。
アーチャー:「兵器士官の、リード大尉。」
リード:「どうも。」
スン:「名前は知ってる。だが顔は初めてだ、功績の割には知名度が低い。」
「知名度は求めてません。」
アーチャー:「適当な部屋を用意したが、常に監視はつけさせてもらう。ゆき詰まって『気分転換』したくなっても…」
スン:「ハ…この船はワープで航行するんじゃないのか? 脱走なんかできっこない。」
「フン、こっちだ。」
ついていくスン。「DNA サンプルを分析すれば、子供たちがどれだけ成長したか詳しいことがわかる。」
アーチャー:「あとで部屋に、情報を送らせよう。」
「医療室なら設備的にも都合がいいんだが。ドクター・フロックスはよきライバルだ。捕まる前の話だがね。彼と情報交換したい。」
「考えておく。」

船長席の調整をしているタッカー。トゥポルからパッドを受け取る。「…ハネムーンはどうだった。」
トゥポル:「ハネムーン?」
「俺が帰ってから 2週間、ヴァルカンにいたんだろ?」
ブリッジに入ったアーチャーは、新しくなった椅子※19を見た。
タッカー:「…タンパク質再配列機以外は完全装備。必要なら、すぐに。」
座ってみるアーチャー。「…いいな。」
タッカー:「説明する時間はありませんが、それは押さないで。」
アーチャーはボタンを見る。
サトウ:「発進許可です。」
立ち上がるアーチャー。「宇宙へ戻ろう。」 クルーの顔を見る。「それ以外にないだろ。」
再び腰を下ろした。「トラヴィス!」
係留が解除される。エンジンが起動し、エンタープライズは進み出した。
宇宙ドックを抜け、月が見える。ワープに入った。

作戦室。
中に入るトゥポル。
アーチャー:「いま、調査報告が入ったところだ。プロキシマ・コロニー※20付近でクリンゴン船が確認された。フォレスト提督は、これを襲撃に備えた偵察と見てる。…把握しておいてくれ。」
トゥポル:「ヴァルカン政府が、外交的解決を試みています。それが上手くいく可能性も。」
「わずかにな。…もう一つ。」 テーブルに置いてあった箱を手にするアーチャー。「今日から艦隊の一員だな。…トゥポル中佐。…お祝いだ。」
宇宙艦隊の階級章がついた※21トゥポルは、ふたを開ける。
アーチャー:「20世紀初頭の物だよ。」
トゥポルが取り出したのは、航海用のコンパスだった。
アーチャー:「いつも正しい方向に導いてくれる。」
トゥポルはアーチャーを見た。
アーチャー:「歓迎するよ。」
トゥポル:「…ありがとうございます。」
微笑むアーチャー。

『航星日誌、2154年5月17日。ボーダーランドに入った。バード・オブ・プレイが襲われた現場から 3光年の位置だが、クリンゴンの姿はない。』
医療室。
DNA 配列を見るスン。「マリックだ。」 笑う。「反抗的な奴でね。私の若い頃そっくりだったよ。…我が子のように育ててたんだ。」
MACO がドア※22のそばに立っている。
フロックス:「子供たちと離れるのは辛かったでしょう。」
スン:「心配はしなかったがね。」
「…昔の地球で考えると、かなりの技術ですが?」
「まあね。…独自の改良を加えた。」
「はあ、なるほど。どんな改良です。」
「うん。あの子たちを見てもらえばわかる。」
「…力はわかった。」
「君も地球人と同じとはね。遺伝子工学の研究には反対と見えるな。」
「とんでもない。デノビュラでは 200年以上前から、遺伝子工学を有効活用しています。」
「私の研究も同じだ。」
「あなたは種族を作り替えようとした。地球では過去に、3,000万人の犠牲が出ています。」
「過去に囚われていては、いつまでも前進できない。」
「過去の失敗から学ぶのが、科学者としてのあなたの務めでは?」
「私が学んでないとでも?」
「違いますか?」 離れるフロックス。

揺れるブリッジ。
リード:「2隻の船が追ってきます。」
トゥポル:「オリオンの迎撃船※23です。」
「変わった挨拶だな。ホシ!」
サトウ:「応答なし。」
通常空間に出てくるエンタープライズ。続くオリオン船は、攻撃を続ける。
フェイズ砲で反撃するエンタープライズ。


※8: エリック・スン博士 Dr. Arik Soong
(ブレント・スパイナー Brent Spiner TNG レギュラーのアンドロイド、データ (Data) 役。関連するキャラクターとして TNG第13話 "Datalore" 「アンドロイドの裏切り」などのデータの「兄」ローア (Lore)、第77話 "Brothers" 「永遠の絆」などのデータの生みの親ヌニアン・スン博士 (Dr. Noonien Soong)、映画第10作 "Star Trek Nemesis" 「ネメシス/S.T.X」の B-4 役) ファーストネームは言及されておらず、発音は公式サイトの記事より。設定上はヌニアンの高祖父 (ひいひいおじいさん。一部資料では曾祖父) とされていますが、劇中で触れられるわけではありません。声:牛山茂、TNG ローア、STG ソラン、旧ST5 スールーなど

※9: Sharat Syndrome

※10: 原語では「太陽系をコロニー (植民地) 化するための初期の宇宙船」

※11: Augments
日本語の資料などでは「優生戦争 (Eugenics Wars、TOS第24話 "Space Seed" 「宇宙の帝王」など))」に基づいて以前から優生人類という言い方が存在していましたが、英語で固有名詞としてきちんと設定されるのは実は初めて (augment =「増える、増加させる」という意味の動詞)。なお eugenics =優生学なので、「優人類」や「優人類」は誤り

※12: コールド・ステーション・トゥウェルブ Cold Station 12

※13: Trialas System

※14: Borderland
タイトル

※15: Orion Syndicate
DS9第107話 "The Ascent" 「あの頂を目指せ」など

※16: Persis
(Abby Brammell) 声:北西純子

※17: 原語では「追われてた」

※18: Raakin
(ジョエル・ウエスト Joel West)

※19: 映画第10作 "Star Trek Nemesis" 「ネメシス/S.T.X」のカットシーン (DVD に収録) で、エンタープライズ-E に搭載された最新式のマーク7 艦長席の使い回し

※20: Proxima colony
プロキシマはケンタウルス座アルファ星の第2伴星 (アルファ・ケンタウリC) のことで、太陽に最も近い恒星。ENT第60話 "Twilight" 「留められない記憶」で、アルファ・ケンタウリに地球人のコロニーがあることが触れられていましたが、それと同一かもしれません。U.S.S.プロクシマが DS9第112話 "In Purgatory's Shadow" 「敗れざる者(前編)」で、プロクシマ修理工場 (Proxima Maintenance Yards) が DS9第57話 "Past Tense, Part I" 「2024年暴動の夜(前編)」で言及

※21: そのほか、科学部門を示す青い線も服に入っています。それなら ENT "Twilight" のように宇宙艦隊の制服を着るべきなのに…と思いますが、視聴率的な (?) 都合でしょう

※22: 青いドアに変更されています

※23: Orion Interceptor

火花が飛ぶ機関室。
タッカー:「これじゃあエンジンがやられます!」

アーチャー:「撃ち続けろ!」
トゥポル:「オリオン船 1隻に、エネルギーサージを感知。」
「武器か。」
「違います。」 トゥポルの身体が転送で消えた。

階段を滑り降りる機関部員も、転送される。また一人。
タッカー:「タッカーよりブリッジ、クルーが 2人消えました。」

リード:「敵がワープに入りました。…消えた!」

話すアーチャー。「トゥポルを含む 9名が連れ去られた。」
ベッドで寝ているスン。「うん。この辺りにオリオンはいなかったのに。10年で随分と領域を広げたらしい。」 舌打ちする。「残念だなあ。あの科学士官は気に入ってたのに。」
アーチャー:「助ける方法は?」
「…簡単にはいかん。」
「そんな返事はいらん!」
「…恐らくステーションに連れて行かれたんだろう。ヴェレックス3号星※24にある。」
コミュニケーターを使うアーチャー。「アーチャーよりブリッジ。」
リード:『リードです。』
「最高速度で、ヴェレックス3号星へ。」
『了解。』
「クルーたちはどうなる。」
スン:「新しい生活を送るんだよ。奴隷としてな。…ステーションはかなり警備が堅い。入れるのは許可を受けた仲買人だけだ。」
「あんたなら入れるようだな。」
「まあオリオンには昔世話になったからなあ。生き延びるために、いろいろ物資を調達させてもらった。中に入ることはできるが、仲間を助け出すことはできんぞ。」
「まず入ってからだ。」

ワープ航行中のバード・オブ・プレイ。
歩いてきたマリックの前に、パーシスが現れた。
後ろを振り返るマリック。「ラーキンは別の星系へ向かうつもりだ。『平和に暮らせる』場所だと。…もう本人から聞いてるだろうけどな。」
パーシス:「そこまでは聞いてないわ。」
「コソコソ隠れて暮らすなんて冗談じゃない。父さんをガッカリさせるだけだ!」
「じゃどうしたいの?」
「お前からラーキンに言ってくれ、考え直すように。」
「ラーキンは私にアドバイスなんて求めてないわ。」
「…ガラじゃないぞ。」
「何が?」
「被害者ぶるな。……お前は、ラーキンを選んだ。強い男が好きだったんだろ。」
「今もそうよ。…何が望みなの?」
マリックは突然、パーシスとキスを始めた。
マリックを壁に強く押しつけるパーシス。「そう焦ることないでしょ。」 歩いていく。

首に小さな装置をつけられたトゥポルは、声を上げた。
身体を持ち上げる、肌が緑色のオリオン人の男性※25。「お前はオリオン・シンジケートの、所有物になったんだ。ルールを破れば罰を受ける。おとなしくしてりゃ痛い目には遭わん。連れてけ。」
別のオリオン人に連行されるトゥポル。
区切られた牢屋のような箱には、たくさんの異星人が入っている。
オリオン人に押しのけられる、外にいる異星人。「…何すんだい。」
トゥポルも箱の一つに入れられた。すぐに鍵が閉められる。
隅に座っているエンタープライズのクルーに近づくトゥポル。「少尉。」
少尉:「副長!」
「大丈夫ですか。」
「この装置が、痛くて。」
「触らないで。…ほかのクルーを見ましたか。」
「見てません。」 叫び声に驚く少尉。「どこなんです?」
「オリオンの奴隷市場です。」
「奴隷市場?」
「労働者を競売に掛けているんです。私達も売られます。」
「冗談だろ? …そのために船を襲ったんですか?」
「少尉。」
「船長なら来てくれますよね!」
「少尉! …名前は。」
「ジェフリー・ピアース※26です。着任したばかりで。」
「ジェフリー。必ず助けが来ます。でも時間がかかる。とにかく、それまで一緒に待ちましょう。」

エンタープライズがいる惑星の軌道上には、ほかにも多数の異星人船が見える。
ブリッジに通信が流れる。『ID コードを送って下さい。』
送信するサトウ。
リード:「何年も前のコードですよ?」
アーチャー:「待とう。」
管制官:『…着陸を許可します。』
ブリッジを出るアーチャー。

ハイポスプレーを準備しているフロックス。
アーチャー:「フロックス。」 制服は着ていない。
スンに注射するフロックス。
アーチャー:「トランスポンダーだ、受信範囲は 10キロ。」
タッカー:「一歩でも範囲を外れたらすぐに収容します。」
壁が新しくなった転送台※27に近づくスン。「私が嫌いなのか、タッカー少佐?」
タッカー:「嫌いです。」
「…私のせいでさらわれたと思ってるんだろう。お友達を。」
アーチャー:「…よせ!」
「…ユーモアもわからんのか。」
「エンジンの復旧を急げ。助け出したら、全速で脱出することになる。」
うなずき、転送機を操作するタッカー。

話すピアース。「任務記録は全部読んだし、心構えはできたって自信満々だったのに。」 金属音に身体をビクつかせる。「とんでもなかった。」
トゥポル:「よければ、不安を軽減させる方法を教えます。」
「はい、お願いします。…ぜひ試したい。」
オリオン人が箱に入り、トゥポルを連れて行く。
ピアース:「おい、離せ!」
殴られるピアース。まだ抵抗しようとする。
トゥポル:「いいから!」
監視していたオリオン人が、持っていた装置を起動させた。ピアースは絶叫し、首を押さえる。

音が鳴り響き、異星人が集まる中央の台にトゥポルが上げられた。
背後のパネルに表が映し出される。笑い、トゥポルの身体を持ち上げるオリオン人。
見ている者は手元の機械を操作する。パネルの文字が次々と増えていく。
満足そうなオリオン人。落札額の桁が上がっている。
操作を続けるテラライト人。
パネルを見て、トゥポルにささやくオリオン人。「なかなかの値だ。」
テラライト人は操作をやめない。奴隷も競りに注目している。
音が鳴った。笑うテラライト人。
またトゥポルを持ち上げるオリオン人は、笑い続ける。「360万※28だ、俺の妻※29だってこんな値段はつかなかった…。」
無言のトゥポル。


※24: Verex III

※25: オリオン人商人その1 Orion Slaver #1
(ビッグ・ショー Big Show WWE 最大のレスラー、ポール・ワイト) オリオン人の男性が登場するのは史上初 (ただし TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」で、アンドリア人に化けていたテレフは除く。脚注※31 も参照)。また、オリオン・シンジケートとオリオン人が明確に関連づけられるのも初めて

※26: Jeffrey Pierce
(Dave Power)

※27: 今までと比べて、丸い模様が入っています

※28: "three million six" ですが、吹き替えでは「300万トローク」と貨幣単位をつけたように訳されています

※29: 原語では「俺の最後の妻」

奴隷の箱を叩くオリオン人。「座るな!」 驚いて立ち上がる奴隷。「女を連れてけ! …早くしろ! そこのお前だ!」
スンと一緒に行動しているアーチャー。「一人いた。」
箱の中で立ち上がる女性クルー。アーチャーはそのままでいるように指示する。
再び座るクルー。
スン:「とりあえず 4人は残ってるな。地球人はあまり人気がないらしい。」
奴隷を見るアーチャー。「首についてる装置は何だ。」
スン:「神経破壊装置※30だよ、考えたもんだ。反抗的な奴隷は、痙攣発作で痛めつける。もし脱走なんぞ図ろうもんなら…」
「転送で、直接船に…」
「生きて連れ戻したきゃお勧めできんな。」

競りが続いている。次に箱から出されたのは、オリオン人の女性※31だ。
機械に入力する落札者たち。数字が上がっていく。
隅で見ているアーチャー。「オリオンも売るのか。」
スン:「女だけだ。…オリオンの女は性欲が極めて強いことで有名なんだ。テクニックが人気でな。」
「行こう。」

指示するオリオン人。「次はそこのだ。…男は後でいい!」
スキャナーを使い、箱※32に近づくアーチャー。「トゥポル。」
そばに寄るトゥポル。
アーチャー:「無事か。」
トゥポル:「誘拐されたのは。」
「9人だ。5人は見つけた。いま、助け出す方法を…」
オリオン人商人※33が棒で箱を叩いた。「もう売却済みだ。…向こうに買い手がいる。」
割って入るスン。「ああ、すまん。…別のを探した方がいいな。」 笑う。「悪かったね、どうも。ほんと世話かけて、申し訳ない。さあ、行こう。」
アーチャーと歩いていく。座り込むトゥポル。

廊下を歩くラーキン。「命令にいちいち文句つけやがる、しかも全員の前でだ。」
パーシス:「この船を奪ったことに、賛成してる人もいるわ?」
「誰のおかげで生き延びてこられたと思ってる。俺がいなきゃ、とっくに全員飢え死にだぞ。」
「マリックならそこから解放してくれるって信じてるのよ。」
「お前もそうなんだな?」
「ちょっと何言ってるの?」
「俺はごまかせないぞ。」 船室に入るラーキン。
「マリックはただ指示に反抗してるだけじゃない。あなたを陥れる気よ。リーダーの地位を奪おうとしてる。」
「何でわかる。」
ラーキンの手を取るパーシス。「そう言ってたから。マリックは私に惚れてるわ? だから私も気がある振りして、何企んでるのか聞き出したの。あなたは臆病者だって。」 身体にキスする。「あなたがみんなを弱気にさせてる。父さんの期待を裏切ってるって言うのよ? …もし父さんなら、自分をリーダーにするはずだって。」
ラーキン:「いいだろう、これから父さんを裏切ってやる。」 パーシスの身体をつかんだ。「我が弟を、この手で殺す!」

箱を開けるオリオン人。ピアースが連れ出される。
台に乗せられた。
オリオン人:「もし奴隷として売れなかったら、食いもんとして売ってやるからな。」
あまり乗り気にならない買い手たち。アーチャーもスキャナーを持って混じっている。
入力するアーチャー。競りは終わった。
オリオン人:「…こんな値段じゃ利益なんかほとんどありゃしない!」 ピアースを降ろす。
連絡するアーチャー。「エンタープライズ。」
タッカー:『タッカーです。』
「クルーを全員発見した。トリタニウム・コバルト※34を、6キロ転送してくれ。」
スン:「9 だ。」

アーチャー:『9キロだ。』
船長席のタッカー。「船にある半分ですよ?」

アーチャー:「とにかく、至急用意してくれ。」
タッカー:『了解。』

エンタープライズ。
医療室のベッドで、ピアースから装置が取り外されている。
アーチャー:「普通売り渡すまでは、外さないらしい。だから看守を買収して装置はつけたまま、機能だけ止めさせた。」
タッカー:「全員買い取れないんですか。」
「トゥポルには買い手がいたし、全員買い戻す時間もない。」
フロックス:「あと少し、動かないで?」
タッカー:「何て奴らだ。」
スン:「君の祖先だって似たようなものだ。…南部の出だろ?」
「あんたの大好きな優生人類だって、大勢を奴隷にしてた。」
笑うスン。「そりゃむしろ逆だ。」
タッカー:「ああ、可哀想なのは奴らってか?」
痛むピアースから、装置が取り外された。
タッカーに手渡すアーチャー。「トゥポルが連れ出される前に、解明しろ。」

歩いてくるマリック。
パーシス:「ちゃんと話したわ? あなたが反逆を企ててると思ってる。」
マリック:「策を練ってきそうか。」
ラーキン:「どうだろうなあ。」 銃を持って近づく。「ここまで予想してたか? …兄弟の問題だ! お前も覚えてるだろ、子供の頃川で溺れかけたのを助けてやった。」
「覚えてる。」
「まさか、その弟に反逆されるとは…」
「俺は誰より強いし、頭も切れる。」
「そうは思えないがな。」 銃を向けるラーキン。「反逆なんて、バカなことを考えたもんだ。」
引き金を引くラーキン。だが発射されない。
マリック:「悪いな。」 周りから優生人類が現れた。
パーシス:「ごめんなさい、ラーキン。」
ラーキン:「きさ…」 皆に銃を突きつけられる。
マリック:「兄弟の問題か。」
「ソール※35。」
名前を呼ばれても動じない優生人類は、マリックと一緒にバード・オブ・プレイを占拠した男だ。
ラーキン:「ジャイヤ※36、よく聞け!」
マリック:「2人とも、俺の言うことしか聞かない。」 指示すると、銃を下ろした。
ラーキンの肩に手を置くマリック。「昔は俺も、兄貴を尊敬してた。…だがもう兄弟じゃない。」
ラーキン:「俺は一生お前の兄貴だ。」
「父さんの教えを否定するような奴は兄貴でもなきゃ、俺たちの仲間でもない。…父さんを裏切れば、死ぬことになるんだよ。」
マリックは素早くナイフを取りだし、突き刺した。
涙を浮かべるパーシス。
もう一度刺すマリック。「神様も許してくれるさ。」
倒れるラーキン。
マリック:「始末しろ。」
ソールたちによって運ばれていく遺体。
声を上げるパーシス。
マリック:「泣くな。…裏切り者だ。」

夜の地表でスキャナーを使うアーチャー。
タッカー:『コードを送ってます。』
アーチャー:「届いた。」
オリオン人の姿が見える。
ハイポスプレーをスンに渡すアーチャー。
回り込み、オリオン人の前に現れるアーチャー。向かってきたところを、背後からスンが注射する。
声を上げたが、倒れそうで倒れないオリオン人。見つめるスン。
しばらくすると、やっとで後ろに倒れた。アーチャーはその様子を見ている異星人がいたことに気づいた。
逃げていく異星人。
2人はコンピューターでの作業を始める。

オリオン人は箱を開けた。「外へ出ろ。」
座っているトゥポル。外ではテラライト人が微笑んで待っている。
オリオン人:「さっさとこっちへ来い。」
立ち上がるトゥポル。

作業を続けるアーチャーたち。
さっきの異星人がこちらを見ながら、オリオン人の肩を叩いた。「ちょっと旦那。…向こうで装置に細工してる奴らがいますぜ?」

外に出されるトゥポルは、耳元で音がしたのに気づいた。
笑い、押し出すオリオン人。トゥポルはいきなりテラライト人を殴った。
オリオン人は手に持った装置を使う。だがトゥポルに反応は出ない。
奴隷:「装置が消えてるぞ、逃げろ!」
逃げようとする、ほかの奴隷を投げ飛ばすオリオン人。「奴隷が逃げたぞ、急げ全員つかまえろー!」

警報が鳴り、騒ぎに気づくアーチャーとスン。

奴隷は自ら箱を開け、逃げ出していく。電流が流れる棒を使って押さえようとするオリオン人。

アーチャー:「転送してくれ、5人一度だ。」 だが倒れた。
背後にいたスンが棒を持っている。「悪いね、船長。あとは頑張ってくれ、助かったよ。」
痛むアーチャー。スンはまたコンピューターに触れてから、逃げていく。

オリオン人はトゥポルの首を絞めた。「活きがいいな、俺の手元においてやろう。」
トゥポルはオリオン人の股間を蹴った。苦しむオリオン人。
トゥポル:「私は売り物じゃない!」
倒れるオリオン人を見ながら、転送されるトゥポル。

倒れたままのアーチャー。「トリップ、全員戻ったか。」

タッカー:「あとは船長とスンだけです。」
アーチャー:『スンは逃げた。探し出して転送しろ。』

走ってきたスンは、棒を自分の身体に当てて使った。倒れ込む。

奴隷を取り押さえるオリオン人たち。
アーチャーはその中を歩いていく。

タッカー:「スンの信号がありません。消えてる。」

アーチャー:「生体反応で探せないか。」

タッカー:「やってますが、人が多すぎるんです。」

混乱の中、競り台に立つアーチャー。下を見下ろす。
台の上に立ち上がった。スンが逃げていくのが見える。

追いかけるアーチャー。スンの背中が見えた。
アーチャーはスキャナーを操作する。
すると、スンの両手が手錠によってつながった。それでも逃げるスン。
奴隷がスンに話しかける。「助けてくれ…連れ戻されちまうー!」 オリオン人に捕まった。

スンは外に出てきた。高い壁が立ちはだかる。
脇をつたい、壁の上方に突き出た棒にぶら下がるスン。
アーチャーも追いついた。
スンは棒に足を掛け、登ろうとしている。
再びスキャナーを取り出すアーチャー。
今度は手錠が離れ、スンは落下した。
アーチャー:「トリップ、2名転送だ。」


※30: neurolytic restraint
あとで restraint は抑制装置とも訳されており、そちらの方が適切かもしれません

※31: オリオン人奴隷女 Orion Slave Woman
(Bobbi Sue Luther モデル) セリフなし。オリオン動物女 (Orion animal woman) とも呼ばれ、TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」などに。登場するのは TOS第71話 "Whom Gods Destroy" 「宇宙の精神病院」以来

※32: ここでトゥポルの左にいる異星人奴隷は、ENT第58話 "Exile" 「孤独な亡命者」のタークウィンと同じ種族のように見えます

※33: オリオン人商人その2 Orion Slaver #2
(ゲイリー・カスパー Gary Kasper)

※34: tritanium cobalt
トリタニウムは TOS第47話 "Obsession" 「復讐! ガス怪獣」など

※35: Saul

※36: Jaya
2人ともエキストラ

ワープ航行中のエンタープライズ。
拘束室に入れられたスン。
アーチャー:「オリオンの誘拐は読んでいたんだな? あわよくば自分が標的になって、船から逃げ出そうと思ったんだろう!」
スン:「確率は低かったがね。」
「誰を犠牲にしても、自分だけは逃げるのか。」
「犠牲は出てない。」
「9名が奴隷として売られるところだったんだぞ? …そのうち 2人は、抑制装置のおかげで後遺症が残った!」
「よく考えた末の結論だ。」
「そんな言い訳が通じると思うか!」
「そうじゃない。私だってあんたたちを危険にさらすのは、心苦しかった。…あんたを尊敬してる。」
「優生人類の居場所を教えろ。…知ってるはずだ。」
「バード・オブ・プレイを盗んで、観光でもしてると思うか?」
「彼らは危険だ。」
「彼らは未来だ。…力も頭脳も優れている。病気などしないし、寿命だって我々の倍も長い。…あんたならその価値がよくわかるはずだ。」
「なぜ私が?」
「親父さんが、クラーク病※37に苦しんだろ。…最期の数年は、耐え難い苦痛に見舞われたはずだ。」
「私の父は関係ないだろ!」
「遺伝子工学の技術があれば、親父さんを救うことができたんだぞ。…あの子たちを捕らえようとするような奴らが、親父さんを見殺しにしたんだ。今すぐ地球へ戻れ。子供たちには、手出しするな。」
「彼らは見つけ出す。あんたが協力を拒んでもな。」 出ていくアーチャー。

医療室に入るタッカー。たくさんのクルーが寝ている。
フロックスからパッドを受け取る。トゥポルはベッドの上で座っていた。
タッカー:「休んでなきゃ駄目だろ。」
トゥポル:「午後には任務に戻れるとドクターに言われました。」 パッドを読む。
「妙な器具が取れてよかった。」
「少し耳鳴りがしていますが、しばらくすれば収まるでしょう。」
「そうか。…邪魔して、悪かったな。」 出ていこうとするタッカー。
「…ヴァルカンはハネムーンには行きません。…儀式が済んだ後は、セレヤ山※38で瞑想をしました。…独りで。」
「俺には関係ないよ。」
突然火花が散った。

ブリッジも同じだ。
リード:「オリオンの迎撃船が、2隻急接近中!」
サトウ:「呼びかけです。」
アーチャー:「エンタープライズ※39のアーチャーだ…」
オリオン人:『奴隷を盗み出したな!』
「いきなりクルーを誘拐したのはそっちだろう!」
『ただちにワープを解除して、武器を全て停止しろー!』
「悪いがそうはいかん!」 攻撃が続く。「マルコム!」
フェイズ砲を発射するエンタープライズ。撃ち合いになる。
リード:「ナセルを狙ってます。」
メイウェザー:「ワープ不能です。」
アーチャー:「魚雷を。」 よろめく。
リード:「別の船です。」
下方から攻撃を受けるオリオン船。
バード・オブ・プレイだ。片方のオリオン船は爆発する。
リード:「1隻が方向転換、撤退します!」
サトウ:「クリンゴン船からドッキング要請です。」
無言のアーチャー。

バード・オブ・プレイとドッキングしているエンタープライズ。
作戦室を歩くマリック。「父さんがここにいるはずだ。信号を受信した。」
アーチャー:「逃げようとしたとき、コンソールを操作してた。」
「来るとわかってたのか。…父さんは。」
「拘束室だ。」
「また牢屋か、話をさせろ。」
「それはできない。」
「助けてやっただろ。」
「君たちを探しに来て、危険な目に遭ったんだぞ?」
「…俺たちをどうする気だ。」
「地球へ連れ帰るよう指示を受けてる。」
「地球か。父さんを犯罪者扱いする奴らの星だろ。俺たちを創ったからだ、あんたらは俺たちの存在そのものを否定することになるんだぞ。」
「君たちはクリンゴン船を襲った! 戦争勃発の危機だ…」
「知ったこっちゃない。別に、あんたらのこともどうだっていい。…地球人になんか興味はない。地球の哲学者も言ってるだろ、ニーチェだ。…『人類は凌駕されるものである』ってな。」
リードはアーチャーを見た。
アーチャー:「凌駕するのは君たちだと?」
マリック:「…今あんたの首を絞める。」
マリックはあっという間にアーチャーに後ろを向かせ、首に手を回した。
フェイズ銃を向けるリードと MACO。
マリック:「どうだ。来るとわかってても、よけられやしないんだよ。」
リード:「船長を離せ。」
「俺の力はお前らの 5倍だし、知力も 2倍は高い。」
「今すぐ離せ!」
「こいつの喉を切り裂かれたいか! …武器を降ろせ!」
従おうとしないリードたち。
マリックは手に力を込める。「…今すぐ。」
仕方なく銃を下げる 2人。
マリックは通信機を使う。「パーシス。」

バード・オブ・プレイにいるパーシス。「セキュリティ解除、突入するわ。」
銃を構える優生人類たち。
エアロックで待っていた MACO たちは、ドアが開くと同時に銃を発射した。
撃たれるパーシス。だが優生人類によって倒される MACO。
パーシスはすぐに動き出す。エンタープライズ内に入る優生人類たち。

アーチャーの首に手を回したまま、ブリッジに出るマリック。「殺すぞ!」
そのままターボリフトに入った。

スンは音に振り返った。見張っていた MACO が武器を構える前に、パーシスに殴られる。
MACO の銃は外れ、ソールに倒された。
感心するスン。
パーシスは力ずくで独房のドアを開けた。「…パーシスよ。」
スン:「パーシス。」 抱き合う。「…大きくなったな?」

廊下を歩くマリック。
優生人類と集まっているパーシス。「父さん、マリックが来たわ。」
スン:「…マリック。」
アーチャーを壁に押しやるマリック。スンと抱き合った。
スン:「必ず会えると思ってた。…立派になったな。…私の誇りだ。」
アーチャー:「スン、よーく聞け。」
「話すことはないよ。」
マリック:「こいつらどうする。」
「…ほっとけ。」
「でもまた追ってきたら。」
「船は動く状態じゃない。修理が済む頃には、遥か彼方だ。楽しませてもらったよ。…一つアドバイスだ。…地球へ戻って、クリンゴン語の勉強をしろ。」
マリックはアーチャーを見てから、スンについていく。

エンタープライズから離れたバード・オブ・プレイは、ワープに入った。

バード・オブ・プレイのブリッジに入るスン。「私は地球で拘束されている間、自分を疑っていた。自分の研究を。…だが今は違う。耐え続けてきた価値はあったと実感したよ。」
パーシスはマリックを見た。
スン:「新しい世界を築こう。夢を実現させるのは、まだこれからだ。お前たちの仲間が、何千人と生まれてくるぞ。」 振り返る。「さあ、行こう。」※40


※37: Clarke's Disease

※38: 映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」より

※39: 吹き替えでは「エンタープライズ

※40: その他の声優は植倉大、武虎、飯島肇

・To Be Continued...
・感想など
「待ってました」のブレント・スパイナー登場作。第1シーズンにも以前のレギュラーが出演したエピソードはありましたが、もろにキャラクターを関連させたのは初めてです。ある意味では禁じ手とも言えますが、それだけ追い込まれていたわけでもあり、ここは素直に歓迎します。それに優生人類に加え、今回はオリオンのスパイスを混ぜたファンには嬉しい設定です。前回の最後が「つづく」ではなかったのに多少引きずっているのは、まだ第3シーズンの作り方が残っているという感じがします。
歓迎できないのがスン博士の声優。データ役の大塚芳忠さんをブッキングできなかったので「せめて」とローア役にしたのか、それとも初めから牛山さんと決めたのかはわかりませんが。善のデータと同じ俳優が悪人を演じるから面白いのであって、それを変えてしまったのでは元も子もありません。ですからローア&ヌニアン・スン (一部除く) などの配役も、TNG 日本語版の数少ない欠点の一つと私は考えています。最近のサブレギュラーといい、どうしちゃったんですかね。久しぶりに「地球人」という訳が多かったのはよかったんですが。
エキストラがてんこもりの奴隷市場のシーンでは、ENT スタント調整、そして TOS の頃に同じくスタントマンだった Vince Deadrick 親子が登場しています。脚本を初めて担当した Ken LaZebnik は新スタッフの監修製作者で、以前「プロビデンス」や "Touched by an Angel" に関わりました。TNG・DS9 で 3話を書いた Philip LaZebnik とは兄弟です。


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