エンタープライズ エピソードガイド
第96話「テラ・プライム」(前)
Demons
イントロダクション
※1ドアを開けたスーツ姿の男、ジョン・パクストン※2。「深刻なのか。」 後につく白衣の男、マーサー※3。「腫瘍が悪化すると、呼吸困難になることも。」 パクストン:「すぐ報告しろと言ったはずだぞ。腫瘍ができたのは何日も前だろ。」 部屋のロックに触れる。 「モニターはしてましたが、今朝まで何も出なかったんです。通常の患者とは違いますから。」 カプセルを見るパクストン。「それで。」 マーサー:「熱は引きました。頑張ってくれた。」 「それはよかったな。お前にとっても。」 「…血管内圧は安定しました。酸素量も正常。」 「無垢な顔をしてる。…この子がどういう存在か忘れそうだ。」 「このまま、寝かせておいた方が。」 「…ああ。」 出ていく 2人。カプセルの中にいたのは、赤ん坊だった※4。 その耳は先が尖っている。 |
※1: このエピソードは、TNG ラフォージ役のレヴァー・バートン監督作品です。ENT で担当した 9話中、第82話 "The Augments" 「野望の果て」以来で最後となります。当然、現時点では TNG・DS9・VOY を含めた 29話で最後の演出です (参考) ※2: ジョン・フレデリック・パクストン John Frederick Paxton (ピーター・ウェラー Peter Weller 映画「バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー」(1984、バカルー・バンザイ役)、「ロボコップ」(87) &「ロボコップ2」(90、ロボコップ役)、「裸のランチ」(91)、ドラマ「オデッセイ5」(2002、マニー・コト創作。主人公チャック・タガート役) に出演) 声:仲野裕、DS9 Gelnon、ヴェラルなど ※3: Mercer (パトリック・フィッシュラー Patrick Fischler ドラマ「刑事ナッシュ・ブリッジス」(1996〜2001) に出演) 名前は言及されていません。声:高階俊嗣 ※4: カメラは注目しませんが、カプセルの中に一瞬「タッカー」というラベルが見えます |
本編
宇宙艦隊司令部。 『航星日誌、2155年1月19日。人類の歴史的な瞬間に立ち会うため、我々は地球へ帰還した。』 床にある宇宙艦隊のシンボル※5。 話している男性、ネイサン・サミュエルズ※6。「我々地球人は悲劇の大戦を乗り越え※7、各国の代表者たちが共に、この町で民族を越えた、末永い平和を約束しました。」 異星人も同席している。「…そして今日再び集い、今度は宇宙の代表者たちと、価値ある同盟を築き上げようとしている。」 記者の一人は、頭に着けた装置で映像を録画している。 サミュエルズ:「この惑星連合※8によって、これまでの友好関係を更に深め、宇宙の平和をより確かなものとして、未知なる世界の探索を進めていきたい。」 タグをつけたエンタープライズの上級士官たちも見守っているが、苦い表情をした者もいる。 サミュエルズ:「全霊を尽くして価値あるゴールを目指しましょう。…いつか遠い子孫たちが、この歴史的瞬間に誇りと感謝を抱いてくれることを、祈ります。」 拍手が起こる。アーチャーたちがいるのは、あくまで脇だ。 アーチャー:「みんな見てるぞ。」 タッカー:「主役しか見てませんよ。」 「ちゃんと拍手しろ、命令だ。」 サミュエルズに近づく記者たち。 フロックス:「…ああ、素晴らしいスピーチだ。」 メイウェザー:「大事な名前が抜けてます。」 リード:「自分の功績みたいだ。」 サトウ:「別にどうだっていいじゃない。」 タッカー:「エンタープライズのエの字もない。アンドリアとテラライトを和解させたのに※9。」 トゥポル:「我々の貢献は、確かに歴史に残るはずです。」 「記録されてりゃな。」 アーチャー:「もういい。」 階段を下りる。 サミュエルズ:「どうも? つまらないスピーチでお恥ずかしい。」 「さすがですよ、大臣。」 「ネイサンでいい。」 握手するサミュエルズ。「…来ていただいて感謝しています。…エンタープライズの存在感は大きい。…あなた方は宇宙の英雄ですから。」 「…お力になれたなら。」 「これだけの種族が集まると何かと大変ですが…翻訳機が大活躍してくれてます。」 胸についた装置。「ありがとう。」 サトウ:「少し言語を足して、アップデートしただけです。」 「いやあ、この性能は素晴らしい。…まあテラライトの皮肉がわかってしまうのは、ちょっと痛いところですがねえ。」 トゥポル:「憲章を 6週間で。大変な目標を掲げられましたね。」 「大きな目標を立てれば、それだけ大きな結果を得られる。」 先ほどの記者のガネット※10がカメラを外し、メイウェザーに近づいた。「もう待ちくたびれちゃった。」 メイウェザー:「…何に?」 「そっちから声かけてくれるの。」 「忙しそうだったから。」 笑うガネット。「仕事中でも来てくれたら嬉しいでしょ? 笑って?」 カメラを向けようとする。 笑顔を作るメイウェザー。 ガネット:「…カメラの前じゃ、笑わないんだったわね。」 メイウェザー:「仕事は順調?」 「…忙しい。ズィンディの攻撃以来、いろいろ話題が多くて。…しばらく、地球にいるんでしょ?」 「とりあえず、会議が終わるまでは。」 「…時間取ってよ。」 「ああ…」 「だって後 4年も先じゃ、全部話しきれなくなっちゃう。」 「まあ、確かに。」 「うん。今のは、乗り気な返事と受け取っとく。」 浮かない顔をするメイウェザー。 ガネット:「じゃ、後で。」 うなずき、離れるメイウェザー。ガネットもカメラを着け、戻っていった。 そこへ、女性がフラフラと歩いてくる。 アーチャーに話すトゥポル。「タッカー少佐の意見も一理あります。…この会議を実現させたのは、エンタープライズです。取材されるべきなのは、船長でしょう。」 アンドリア人と並んだサミュエルズの写真を撮る記者。「どうもありがとうございます…」 アーチャー:「まあいいさ、大臣はスポットライトを浴びるのが好きなんだよ。」 女性※11がトゥポルにすがりついた。※12「あいつらあの子を殺す気よ。」 トゥポル:「何です?」 女性はトゥポルに何かを渡した。「お願い、早く止めて。」 息をつき、倒れる女性。サミュエルズたちも気づく。 女性:「…ごめんなさい。」 フロックスが上着を開けると、女性の腹には大きな傷跡が見えた。 リード:「フェイズ銃で撃たれてる。」 フロックス:「ショック症状が出る。医療キットを頼む!」 受け取った小さな容器を見つめるトゥポル。 地球軌道上のエンタープライズ。 医療室のモニターを見ているフロックス。アーチャーたちが入る。 フロックス:「艦隊医療部から連絡が来ました。傷が深く助からなかったそうです。」 リード:「…自殺の可能性については?」 「特に何も。身元の方は?」 トゥポル:「名前は、スーザン・コーリ。医療系の技術者ですが、精神的な問題を抱えていたようで 1年前から休養中でした。」 タッカー:「で、あの髪の毛は。」 フロックス:「主はわかった。…赤ん坊です、生後 6ヶ月未満。あらゆる手法で DNA を照合しました。クリンゴンの手法まで使った。」 アーチャー:「それで?」 「…地球人とヴァルカン人の特徴が、含まれている。…艦隊のデータバンクで調べたところ該当者がいました。念のため…4回検索をかけたので、間違いない。」 「誰だ。」 操作するフロックス。「あらゆるテストをしましたが、この赤ん坊はタッカー少佐と、トゥポル副長の子です。」 ろうそくの火。瞑想していたトゥポルは、ドアチャイムに応えた。「どうぞ。」 トゥポルの部屋に入るタッカー。「話した方がいいだろう。」 トゥポル:「…全く筋の通らないことをどう話せと。」 「DNA は嘘をつかないって。」 「私もです。妊娠したことはない。」 「だったらほかにどうにか、説明できるか?」 「…できません。」 ため息をつくタッカー。 トゥポル:「…信じてくれますか。」 タッカー:「……ああ。きっと、分析が間違ってたんだろう。妊娠してないんだったら、子供は産めない。」 「…トリップ。フロックスに私達の子だと言われたとき、事実だと感じました。」 「でも妊娠してないって。」 「そうです。」 「…どういうことだ。」 「説明はできませんが、そう感じたんです。…その赤ん坊は私達の子です。」 「何でそんなことわかる。」 「ヴァルカンだから。」 「…。」 会議室のサミュエルズ。「幸い事件は一般市民には伝わってません。公表は避けた方がいいでしょう。」 飲み物を注ぐアーチャー。「しかし公表すれば、何か情報が得られるかもしれない。」 サミュエルズ:「騒ぎ立てると、会議の進行に影響が出る。」 「どうして。」 「まあ知らないのも無理はない。あの攻撃の後、ズィンディに対する恐怖症が蔓延したんです。」 「よくわかる※13。」 「落ち着いてきたが消えてない。宇宙へ出ることに対して否定的な声もあるんです。ヴァルカン人と地球人の子なんて、彼らが聞いたら暴動を起こしかねない。」 「反対派は少数ではないわけですか。」 「ずっと地球にいればわかる。」 「地球人を信じる気持ちは私の方が強いようだ。」 「信用だけでは決められない。…単純な貿易交渉とはわけが違う。ズィンディと戦ったあなたなら、異種族との同盟がどれだけ重要かおわかりでしょう。…もうヴァルカンは守ってくれない。」 「ヴァルカンに代わる保護者が欲しいというわけですか?」 「仲間は多い方がいいと言ってるんです。」 「…なるほど。…今日は事件の情報をお聞きしたくて、お呼びしたんです。…機関主任と科学士官が事情を知りたがってまして。」 「新しい情報は入ってきてません。」 「我々にできることは。」 「…宇宙艦隊の調査員は優秀だ、詳しい調査は彼らに任せましょう。…何かわかったら、すぐにお知らせしますよ。今日はありがとう。」 握手し、出ていくサミュエルズ。 連絡するアーチャー。 リード:『リードです。』 アーチャー:「アーチャーだ。君の友達に用がある。」 夜の街。 私服姿で歩いてくるリード※14。周りをうかがう。 声が聞こえた。「この間は確か、連絡してくるなと言ってただろう。」 リード:「どうしても知りたいことが。スーザン・コーリを?」 「その前にきちんとしておこう。」 「何をです。」 ハリス※15は言った。「これで君は任務に復帰した、そういうことだ。」 リード:「…何者です。」 「ただの問題を抱えたナースではない。孤立主義を掲げる組織のメンバーだった、テラ・プライム※16。」 「聞いたことがある。異星人との交流を断てと訴えてた。」 「地球を駄目にされるとな。」 「エンタープライズが出航するときも、反論があった。」 「ズィンディの攻撃で活発化してな。…コーリは組織を抜けたがってた。」 「それで殺された。」 「脱退は、赤ん坊に関係してるようだ。」 「…みたいですね。」 「…仲間の子だろう、話を聞いてないのか?」 「2人は知らないと言ってる。」 「そんなわけはないだろ。」 「私は信じる。」 「見上げた忠誠心だ。テラ・プライムは怪しい。何か企んでる。」 「でも何かはわからない。」 「その鍵は赤ん坊が握ってる。見つけ出せ、答えがわかるはずだ。」 歩いていくハリス。 ゴツゴツとした地表に並ぶ、様々な施設。飛行している船※17も見える。 パクストン:「選んだのはお前だ。」 マーサーは今は白衣を着ていない。「技術は確かでした。信頼できると思って。」 パクストン:「見込み違いだったようだな。」 「彼女が機密を漏らしていれば、こちらにも伝わってきます。」 「そんなことはわからんだろ。にしてもなぜコーリは我々を裏切った。」 「恐らく赤ん坊に同情したんでしょう。…長時間付き添ってましたから。」 「お前はどうだ。」 「…私が?」 「そうだよ、お前もかなり一緒にいるだろ。」 「私はただの患者に同情など感じません。」 「…『ただの患者』とはわけが違う。…憎しみの象徴だ。時が来たら、しかるべき処置を施す。」 「わかってます。」 窓の外には、地球が見えている。 パクストン:「…ここを去るのは名残惜しい。シンプルな景色、障害物一つなしに…地球を一望できる。グリーヴス※18を中へ呼べ。」 部下:「了解。」 入れ替わりに作業服姿の男が入った。「指示は伝えました。いつでも準備 OK です。」 パクストン:「みんなには苦労を掛けたな。」 「わかってますよ。」 「それともう一つ、片づけたい仕事がある。…グループに分けて、第3ジャンクションへ来させろ。今から…一時間後だ。」 「了解。」 |
※5: 上に「宇宙艦隊司令部」とあって、下に「地球連合宇宙開発局 (United Earth Space Probe Agency)」とあります。略して UESPA (ユースパ) は TOS第8話 "Charlie X" 「セイサス星から来た少年」などで言及。連邦または宇宙艦隊の設定が固まる前の設定でしたが、VOY第167話 "Friendship One" 「終焉の星」に登場した探査機フレンドシップ1 (2067年打ち上げ) には "UESPA-1" という登録番号が書かれていました。今回の書き方からすると、この時代でも宇宙艦隊の上部組織として存在しているようですね。式典の撮影にはパラマウント・シアターのロビーが使用されました。ENT パイロット版などのスタートレック関係の上映が行われた劇場 ※6: Nathan Samuels (ハリー・グローナー Harry Groener TNG第68話 "Tin Man" 「孤独な放浪者」のタム・エルブラン (Tam Elbrun)、VOY第49話 "Sacred Ground" 「聖霊の怒り」の行政長官 (The Magistrate) 役。ドラマ「バフィ〜恋する十字架」(1998〜2003) に出演) 声:近藤広務 ※7: ここでサミュエルズの左隣 (向かって右側) にいる 2人の異星人は、ライジェル人 (Rigellian)。ENT第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」で初登場しましたが、きちんと見えるのは今回が初めて ※8: Coalition of Planets 後の惑星連邦 (United Federation of Planets) が現在の国際連合とするならば、これは第一次大戦後の「国際連盟」に相当するものと言ってもいいかもしれません。この部分の吹き替えは「この結束を基盤として」。Coalition に対しては後で「連盟」という訳語も使われていますが、後編では一貫して「(惑星の) 連合」 ※9: ENT第88話 "Babel One" 「バベル1号星」・第89話 "United" 「ロミュランの陰謀」より ※10: ガネット・ブルックス Gannet Brooks (ジョアンナ・ワッツ Johanna Watts) 姓は言及されていません。北米にガネットという新聞チェーンがあります。声:原田桃子 ※11: スーザン・コーリ Susan Khouri (Christine Romeo) 声:森夏姫 ※12: 後ろに見えるエキストラの提督は、VOY/ENT セット警備員の Steve D'Errico ※13: ENT第79話 "Home" 「ヒーローたちの帰還」より ※14: パラマウントの木工所近くでのロケ撮影。DS9第79話 "Little Green Men" 「フェレンギ人囚わる」でも使用 ※15: Harris (エリック・ピアーポイント Eric Pierpoint) ENT第92話 "Divergence" 「優生クリンゴン」以来の登場。声:武虎 ※16: Terra Prime ※17: 右上を飛行している船は、VOY第166話 "Author, Author" 「夢みるホログラム」の貨物船の使い回し。その CG モデルのデザインはノルコヴァ (DS9第9話 "The Passenger" 「宇宙囚人バンティカ」) と同じで、元々ノルコヴァはバトリス (TNG第20話 "Heart of Glory" 「さまよえるクリンゴン戦士) を改造したもの ※18: ダニエル・グレーヴズ Daniel Greaves (ピーター・メンサ Peter Mensah) 声:竹田雅則、ENT 人間ズィンディ |
宇宙艦隊司令部。 サミュエルズ:「テラライトは船の襲撃を理由に、オリオンとの取引禁止を求めてる。」 異星人:「何百年もオリオンと貿易してるが、そんなの初耳だ。テラライトの作り話だろ。」 「しかし簡単に否定はできませんよ…」 「テラライトは我々の大事な顧客を奪うつもりなのか。コリダン※19は貿易制限には断固反対だ。」 アーチャーが会議場に来た。 サミュエルズ:「大使、アーチャー船長です。」 アーチャー:「どうも。」 礼をするコリダン大使※20。「政府に今日の話し合いの報告をしなければ。では失礼。」 サミュエルズ:「…ご用ですか。」 アーチャー:「艦隊がつかんだ情報を全て知りたい。」 「なぜ私に?」 「主任捜査官に断られましてね。説得していただきたい。」 「悪いがそれはできない。」 「スーザン・コーリはテラ・プライムにいた。」 「もし事実なら、それは大変なことだ。」 「もっと大変な事実がある。…あなたも昔いたと。」 周りを見て歩き出すサミュエルズ。「なかなかよくお調べになったようだ。」 アーチャー:「だから事件を隠すんですか。」 「情報を伏せる理由は御説明したはずです。あの頃は私も若かった。」 「18歳だ。」 「あなただって若気の至りというのはあったでしょう。…いま思えば本当にバカだった。父が貨物船の事故で死んで、相手のデノビュラ人を憎んだ。…だが、心の中の悪魔※21は追い払いました。」 「あなたの若い頃のことはどうでもいいんです。…協力がいるだけだ。」 「フン。…甘く見てましたよ。…そんな駆け引きをする方だとは。一時間でデータを用意します。」 「どうも?」 エンタープライズ。 私服姿のメイウェザー。ドアチャイムが鳴り、開けた。 ガネット:「うーん、迷うわね。…制服と私服、どっちが似合ってるかしら。」 メイウェザー:「何でここにいるんだ。」 「上からエンタープライズの取材を任されちゃったのよ。」 笑うガネット。「ワープ航行できる船にしては随分こぢんまりした部屋ね。」 「取材って?」 「クルーの視線から見た宇宙。任務のこととか、旅のこととか。生活のこと。ね、中案内してよ。」 「仕事あるから。」 「非番でしょ?」 「ガネット。」 「わかったわよ…。」 カメラを切るガネット。「ほんとは、上に任されたんじゃない。…自分から、編集長にネタを持ちかけたの。」 「編集長さんは君の本音知ってんの? 『宇宙探索は最後の植民地探索』、だろ?」 「それはあなたを宇宙に行かせたくなかったから。」 「別のネタ考えろよ。」 「もう無理、期限は一週間後よ?」 「じゃ僕じゃなくてほかのクルーを当たればいいだろ…」 「何で私のこと避けるの…」 「避けない理由が一つでもあんなら言ってみろよ。」 「…もう過ぎたことでしょ。…2人で決めたんじゃない。」 「でも君は気が変わったみたいだな。」 「正直、自分でもわからないの。」 「いま初めて本当のこと言ったな。」 「…じゃあ…仲直りに、船案内して。」 暗い医療室に入ったタッカー。「ちょっといいか。」 フロックス:「もちろん。」 「…赤ん坊だけど。男か女か、わかってんのか。」 「女の子です。」 「女。大丈夫か、その…地球人と、ヴァルカン人って。」 「…生理学上、さほどの違いはありません。私が調べた限りでは、いたって健康と言って問題ない。」 「ならよかった。」 「外見で言えば、目はあなた似だ。」 笑うタッカー。 フロックス:「耳は、トゥポルです。」 タッカー:「…でもまだ信じられないよ。」 「私も、正直戸惑ってます。トゥポルは妊娠さえ、していない。」 「俺に内緒で妊娠してたってことは。」 「ああ、受精卵を取り出して育てた。それも、あなたに内緒で? …その答えはよくわかっているはずです。」 「ああ、そうだな。」 「真実は解明される。それまでそんな考えはくれぐれも、胸の内に。」 「…そうするよ。…実は、親父が孫娘を欲しがっててさ。」 フロックスは笑う。 タッカー:「うるさくて妹が困ってたんだ。」 フロックス:「…願いが叶いましたね?」 「うん。ああ…。」 部屋で映像が流されている。『もはやこの世界は荒れ果てている。これは我々にとって、大きなチャレンジです。世界を立て直すべき時が来た。』 拍手の音。『一つの家や街ではなく、我々人類そのものを。ためらっている場合ではありません。疑いは無用、自分たちの力を信じるしかない。』 部屋に入ったグリーヴス。 パクストン:「…第三次世界大戦から 2年後の映像だよ。」 映像の男性:『今ここで行動に移さなければ、未来には変種のはびこる、腐敗した社会しか残せません。』 グリーヴス:「グリーン大佐※22。」 パクストン:「見事な演説だ。世の中は彼をすっかり誤解してる。」 グリーン:『子供たちのために、そして孫たちのために。異分子はこの地球から、一人残らず排除すべきなのです!』 パクストンは映像を切った。「親父が死んで、独りになるまでは歴史家を目指してたんだ。教授たちとよく口論したよ。グリーン大佐を、大量虐殺を主張する腐った男だと言われてねえ。」 グリーヴス:「私の教授もそうでしたよ。」 「彼は放射能に冒された患者を何十万人も安楽死させた。何百万という子孫たちを苦しみから救ったんだ。それなのに歴史は彼の偉大な功績を、全く評価してない。」 「誰が歴史を決めるかですよ。」 「私も彼と同じ運命をたどるのかなあ。」 「あなたの功績は評価されます。」 「そうか? だが時々自信がなくなるんだ。」 「全ては社会のためです。決してエゴではない。」 「グリーンも自分にそう言い聞かせたんだろうな。」 「彼は正しい。我々もね。」 「…ダニエル。…お前はほんとに、賢い男だ。」 チップを渡すグリーヴス。「医療レポートです。症状は完全に消えたと。」 パクストン:「一安心だ。ご苦労だったな。」 出ていくグリーヴス。 パクストンは椅子に座り、テーブルの下から取り出した器具で自分に注射した。 廊下を歩くメイウェザー。「ほんと大変だったよ。ワープフィールドを融合させた状態で、相手との距離を保ったんだ。一歩間違えば少佐は吹き飛んでた※23。」 ガネット:「成功の決め手は?」 「チャック・イェーガー※24の言葉だね、いつも念じてるんだ。『恐れなど感じてはならない。ただコンソールに集中し、操縦のことだけを考える。』」 「ずいぶんシンプルね。」 「シンプルな方が大抵上手くいく。」 発着ベイに入ったメイウェザー。「これが、僕らのシャトルポッド。」 ガネット:「デルフィック領域で球体の中に入った※25っていうのはどっち?」 「シャトルポッド1。」 近づくガネット。 メイウェザー:「中も見てみる?」 ガネット:「できれば。」 ロックを解除し、ハッチを開けるメイウェザー。 ガネット:「わあ、すごく綺麗ね。」 メイウェザー:「乗る度に思うよ。でも、最近は活躍の機会が減ってるんだ。」 「何で?」 「転送に慣れてきちゃったから。」 「なるほど、瞬間で移動できる。」 「しかも何の技術もいらないしね。」 「ふーん、パイロットは不要。」 「でも、僕はこっちの方が好きなんだよな。いつも転送装置を使う度に、何かシャトルに申し訳ないような気がしちゃって。」 「でも進歩ってそういうことでしょ。」 カメラを止めるガネット。 「…会場で君を見たとき、いろいろ考えてたんだ。あの結論のことも。」 ガネットは笑い、カメラを外す。「気のせいかもしれないけど、心開いてくれた?」 メイウェザー:「やめろよ。」 「何を?」 「真面目に話そうとすると、いつもそうやってふざけるだろ?」 「…悪い癖ね。…ほかにもあるけど。」 ガネットは微笑み、メイウェザーにキスした。「これもそう。好きになると、すぐ行動に移しちゃうの。」 「ほんと、困ったもんだよ。」 口づけを続けるメイウェザー。 ガネットはカメラを床に落とす。 モニター映像の前で話すリード。「検死の結果やはりスーザン・コーリは、フェイズ銃で撃たれたと確認されました。」 トゥポル:「調査データに有力な情報は見当たりません。個人データはありましたが、古いものばかりでした。」 「ここ数年の居住地もつかめてない。別の星にでもいたんですかね。」 フロックス:「その通りかもしれませんよ?」 「何か、証拠が?」 「成長ホルモンレベルが高かったんです。血液から筋繊維薬※26が検出された。」 「長期の無重力任務で、処方される薬だ。でも人工重力が開発されてからは、軍隊でしか使われていないはずでは。」 「人工重力のない遠隔地では、今でも処方されているんです。」 アーチャー:「採掘コロニーとか?」 トゥポル:「月に、オルフェウス※27鉱山があります。」 リード:「月にはテラ・プライムのメンバーが多いって話を聞きました。…トラヴィスの友達が、オルフェウスで働いてた。…そのツテで、何人か入り込めるでしょう。正体を隠して、偵察に。」 タッカー:「それ、行かせてください。」 トゥポル:「私も希望します。」 アーチャー:「トラヴィスに頼んでくれ。」 リード:「了解。」 会議室を出て行く一同。 オルフェウス鉱山。 岩を運ぶ作業員たち。その中に埋もれて死んでいたのは、マーサーだった。 |
※19: Coridan 次項参照 ※20: Coridan Ambassador (トム・バージェロン Tom Bergeron ENT第20話 "Oasis" 「閉ざされたオアシス」のドゥマール (D'Marr) 役。"Hollywood Squares" の司会者) コリダンは ENT第15話 "Shadows of P'Jem" 「恩讐を越えて」で登場しましたが、その際はさほど地球人と変わらない姿でした。今回はマスクのような物を着け、外見も大きく異なっています。コリダン (コリード) が最初に言及された TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」の原語では "Coridan planets" と言っているため、生命体が別々に進化を遂げた複数の居住惑星があるのかもしれません。ちなみに今回の惑星連合にコリダンは入っているようですが、TOS ではコリダンの惑星連邦加入が検討されています (その後 TNG では加入済み)。声:駒谷昌男 ※21: demons 原題 ※22: Colonel Green (スティーヴ・ランキン Steve Rankin TNG第55話 "The Enemy" 「宿敵! ロミュラン帝国」のパターク (Patahk)、DS9第2話 "Emissary, Part II" 「聖なる神殿の謎(後編)」のカーデシア人士官 (Cardassian Officer)、第24話 "Invasive Procedures" 「突然の侵入者」のイエトー (Yeto) 役) TOS第77話 "The Savage Curtain" 「未確認惑星の岩石人間」に登場した悪人の一人で、その際の俳優はフィリップ・パイン。前話 "In a Mirror, Darkly, Part II" 「暗黒の地球帝国(前編)」のモニターに映る連邦に関する歴史の中で、「フィリップ・グリーン (Phillip Green)」というフルネームが書かれているそうですが、読み取るのはほぼ無理。TOS で演じた俳優から取られたものと思われます。ENT第80話 "Borderland" 「ボーダーランド」以降の優生人類三部作でグリーンが悪役となる案もありました。声はマーサー役の高階さんが兼任 (TOS では石森達幸) ※23: ENT "Divergence" より ※24: Chuck Yeager 初めて音速を破ったテストパイロット。TNG第110話 "New Ground" 「新ワープ航法ソリトン・ウェーブ」より。ENT のオープニングにも登場しています (宇宙飛行士の前) ※25: ENT第74話 "The Council" 「評議会の分裂」より ※26: myofibrilin ※27: Orpheus ギリシア神話の登場人物であるオルフェウス (オルペウス) にちなんで。彼は死んだ妻を取り戻すため、冥界に入りました |
月のオルフェウス鉱山に到着する小型船。 『航星日誌、補足。トラヴィスのツテでトリップとトゥポルの 2人を、オルフェウスの採掘施設に送り込んだ。』 岩を運ぶ作業員※28。巨大な装置から発射されたビームが、岩盤に向けられている。 タッカー:「なあ、ここさっきも通っただろ。見たことあるぞ。」 トゥポル:「現場監督への報告までは、20分あります。」 2人とも作業員の服装だ。 「その地図古いんじゃないのか。」 「地図は正確です。」 スキャナーを使うトゥポル。 「じゃ見方が悪いんだ。」 「では道を尋ねては?」 「…貸せよ。…なるほど、そういうことか。」 「何です。」 「迷ったんだ。…とりあえず、あっち行ってみよう。」 「何か根拠でも?」 「唯一見たことのないトンネルだ。」 人気のないトンネルを歩くトゥポル。「トリップ。」 タッカー:「もうちょいだって。」 「…私を信じていないようですね。赤ん坊について。」 「どういう意味だ。」 「内緒で妊娠していたと思ってますね。」 「…そんなこと言ってない。」 「わかります。」 「…ドクターと話したのか?」 「いいえ? あなたは?」 「つまりヴァルカン人だから、わかるって言うんだろ?」 「そうです。」 「そういう妙なつながりはもうウンザリなんだ。」 「好きでそう感じているわけではありません。」 「いいか、二度と言わないからよく聞けよ。俺は君を信じる。もし何か感じるなら…」 トゥポルの視線に気づくタッカー。「何だよ。」 扉の入口に「第3区域」と書いてある。 タッカー:「あれだ。…よし、行こう。」 2人は中に入った。 暗い部屋に置かれたカメラ。 メイウェザー:「シャトルの中じゃなくてよかったよ。」 ガネット:「好きなんじゃなかったの。」 「飛ばすのはね。」 「うーん、飛んでる気分だったけど。」 脱ぎ捨てられた服。笑う 2人はベッドにおり、キスする。 ガネット:「大事なルール。私と寝る男は私だけを見なきゃダメ。」 メイウェザー:「どういうこと?」 「…もう!」 メイウェザーを身体の下にするガネット。「いま、目がどっか行ってた。」 「友達※29のことが心配でさ。」 「心配って?」 「…誰にも話すなって命令なんだ。」 「…記者にそんな言い分通じると思う?」 笑うメイウェザー。「別の話題にしよ? …何で結婚せずにいたの。」 ガネット:「ただしたくなかったから。…でも真剣に付き合う気がないわけじゃないのよ? それなりの状況が整えば、考えるかも。」 「それなりのって、例えばどういう状況。」 「その時が来ればわかる。…ねえ、さっきのどういう意味? あなたがいろいろ考えたって。」 「…僕は生まれてから今までずっと、宇宙を旅して過ごしてきた。でも君を見て、ちょっと考えたんだ。…僕にとっては、挑戦になるかも。一つの場所に留まることが。」 二人はまた口づけを始めた。 ブリッジのリード。「ホシ。」 パッドを扱っていたサトウ。「…はい。2人から連絡はありません。」 リード:「何か、手伝えることあるか。」 「翻訳機が壊れて、アンドリア語とライジェル語がゴッチャになって。でも異常が見つからないんです。」 「…続けて。」 鉱山を歩きながら、スキャナーを使うタッカー。 作業員が話しかけた。「おい、新入りかい? ああ S-K モデルとは、なかなかいいもんもらったな。」 タッカー:「…トラヴィスの、友達?」 笑う作業員。「ジョサイア※30。」 握手する。 タッカー:「ターナー※31だ。」 「何でこんなゴミ溜めに来た。」 「ああ、地上に飽きて。」 「…ま、俺も似たようなもんだ。飽きたのは景色じゃないけどな。」 視線を横に向けるジョサイア。 異星人作業員が話している。「あっちだろ、俺がやっといたよ。向こうにはもう…」 ジョサイア:「ここは異星人が少なくていい。地球はもう誰の星だかわかんねえような状態になってるだろ。」 タッカー:「まあ、確かに。」 歩くジョサイア。「こええ顔した異星人がウジャウジャしてて子供は泣きわめいてんのに、政府はそいつらと同盟組むんだとよ。」 タッカー:「この先どうなるんだろうな。」 「ほっといたら、異星人に星を奪われる羽目になる。俺たちの星だ。」 「ああ、何とかしなきゃな。」 「誰かがやるしかない。…今夜 10時に、7階の第4ジャンクションで集会があるんだ。面白い話が聞けるぞ。」 「じゃあ、行ってみるよ。」 「待ってる。」 歩いていくジョサイア。 近づくトゥポル。「一つ情報が。」 タッカー:「シッ。」 トゥポルを隠すようにする。「ここじゃ、ヴァルカンも嫌われそうだ。情報って。」 「昨日、あるドクターが遺体で発見されたそうです。…周りは事故だと。」 「怪しいのか。」 「スーザン・コーリと同じクリニックにいた人物です。」 「お互い予定は決まったな。」 第4ジャンクション。 ジョサイア:「ズィンディの攻撃で、700万人が死んだ。」 作業員たちの前で話している。「奴らは謝罪の一つでもしたか。」 作業員:「してない!」 「地球の政府は謝罪を求めたか。」 「求めてない!」 「何のフォローもなしだ、それじゃあ残された遺族はどうなる。」 後ろで話を聞いているタッカー。 作業員:「賠償金を払わせろ…」「無責任だ…」 ジョサイア:「しかも、今度は異星人たちと同盟を組もうとしてる。テラライト、アンドリア、ライジェル、コリダン※32、ヴァルカン! ヴァルカンには前科がある、ついこないだ大使館で 45人も地球人を殺してる※33。…ネイサン・サミュエルズの妄想じゃ、子孫たちがこの時代に誇りをもつらしい。…だがこのままほっときゃ、子孫も何も未来自体がなくなる。人類は絶滅だ。」 「冗談じゃねえ…」「俺たちで何とかするんだ…」 「地球を愛する人間として、黙ってるわけにはいかない。」 独り洞窟を歩くトゥポル。スキャナーを使い、区切られた中に入る。 反応がある。スキャナーを納めた。 その時、トゥポルは突然撃たれた。倒れる。 銃を持って近づくのは、グリーヴスだ。 話し続けるジョサイア。「地球には、少なくとも 5,000人の不法滞在異星人がいると言われてる。5,000 どころか 1万近いって話もある。地球をこんな風にしたのは、くだらねえ政策を掲げる政府と、それを支えてる宇宙艦隊だ。」 作業員:「艦隊は潰しゃいいんだよ!」「艦隊を潰せ!」 「艦隊の権力者に思い知らせてやろう。…今日はここに、最高の協力者が来てくれてる。」 指差すジョサイア。「タッカー少佐だ。…宇宙艦隊エンタープライズ※34の。」 エンタープライズ。 制服に戻ったメイウェザー。「さっき言ったことさ、船を降りるかもって。」 ガネット:「大丈夫、オフレコだから。」 笑う。「任務の間、船の取材続けててもいい?」 チャイムが鳴り、ドアを開けるメイウェザー。アーチャーやリードのほか、MACO たちもいる。 アーチャーはガネットに言った。「ちょっと話がある。」 ガネット:「…どうかしました?」 「来てくれ。」 「どこへ?」 メイウェザー:「何なんですか?」 アーチャー:「彼女はエンタープライズの取材に来たんじゃない。」 ガネットを見るメイウェザー。 リード:「スパイなんだよ。テラ・プライムの。」 ジョサイアによって部屋に入れられるタッカー。倒れていたトゥポルが気づいた。 タッカー:「大丈夫か。」 トゥポル:「平気です。」 ドアの外から見ているパクストン。 グリーヴスに向かうタッカー。「お前何した…」 ジョサイア:「おーい、やめろ!」 グリーヴス:「大したことはない。」 パクストンはドアを開けた。「心配するな、ロミオ。…ジュリエットは無事だろ、惑星を越えた愛とはな。最高のハッピーエンドを迎えさせてやろう、やはり墓場で仲良く自殺を図るのがいいかな。」 タッカー:「あんた何者だ。」 「ジョン・フレデリック・パクストン、ここのオーナーだ。」 「今はだろ。」 「ま、採れるものが底をついてきたし丁度潮時だ。ダニエル、始めろ。」 離れるグリーヴス。 タッカー:「…あんたが黒幕か。」 パクストン:「黒幕とは失礼な、堂々とステージに上がってるじゃないか。安心しろ、君たちの子は元気になったよ、フン。ぐっすり眠ってた。一瞬憎しみを忘れかけたよ。」 「会わせてくれ。」 「ノーだ。…艦隊もこれから『ノー』という返事にもっと慣れた方がいい。…今までは何でも『イエス』だっただろう? 『今度はあの星へ行ってこい』と言われりゃイエス、『誰彼構わず情報をやれ』と言われりゃイエス、『未来を異星人に委ねろ』と言われてもイエスだ、『感性なんか違ってたって大したことない、異星人はどんどん受け入れろ、地球を汚してもお友達との関係は…大切にしろ。』 …その! 『イエス』の返事も、耳にするのはこれが最後になる。…地球を本来の持ち主の手に返すんだ。…地球はどこの異星人のものでもない、我々地球人のものだ。私はこの使命に、人生の全てを懸けてきた。異星人だろうと地球人だろうと、誰にもこの神聖なる任務の邪魔はさせん。」 |
※28: 左側で機械を操作しているエキストラは、バンド「ザ・フレーミング・リップス」のベース、マイケル・アイヴァンス (Michael Ivins) によるカメオ出演。後ろでレーザーを発射する男性はマネージャーのスコット・ブッカー、その前を歩いていった女性はスコットの妻のジェニファー (公式サイトの記事)。後のシーンにも出演しており (ジョサイアの演説を聞いている)、ほかにスコット・バクラの広報担当者である Jay Schwartz も参加していたそうです ※29: "some friends of mine" を「鉱山の友達」と訳しています。mine は当然「自分のもの」という意味ですし、メイウェザーが安易に任務のことを話すことも考えられません ※30: Josiah (アダム・クラーク Adam Clark) 声はハリス役の武虎さんが兼任 ※31: Turner ※32: この個所は原語では種族名として、Coridanites と言っています ※33: ENT第83話 "The Forge" 「狙われた地球大使館」より。その際は地球人の犠牲者は 31人とされていました ※34: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 |
部屋に入るパクストン。「ここは父が設計した。採掘事業は、一種の賭けだ。いつ鉱物が尽きないとも限らん。」 ジョサイア:「全員乗り込みました。」 「離陸モードに入れ。機関士なら、素晴らしさがわかるだろ。」 揺れ出す。 施設の外側の部分が、気体を発し始めた。 パクストン:「よく見ておくといい。」 タッカー:「どこへ行く。」 「君らにとっては散歩程度のものだ。」 操作するグリーヴス。 パクストン:「閉めろ。」 警報が鳴り、窓が隔壁で閉められていく。 パクストン:「つかまった方がいいぞ、少々揺れるからな。」 火を吹き、浮き上がる施設。 エンタープライズ。 サトウからユニバーサル翻訳機を受け取るアーチャー。「ほかの翻訳機の会話を全て取り込めるようになってたよ、上手く改造したな。盗聴してたわけか。」 サトウ:「間違って ID プロトコルを起動させちゃったみたいね。そこからあなたにいきついた。」 ガネット:「何の話してるのかさっぱり。」 カメラに触れるリード。「ホール中の会話全部知ってるんだろ?」 メイウェザー:「ただの取材かもしれません。テラ・プライムのスパイとは限らない。」 アーチャー:「もちろん裏はとった。君は先月、3度月の採掘コロニーへ行ってる。」 ガネット:「問題でも?」 「それは何をしに行ったかによる。」 「仕事で行ったんです。」 「どこの。」 「うちの通信社の。」 リード:「上司は知らないと言ってる。」 反応するメイウェザー。 ガネット:「…もし、私を逮捕するなら…」 アーチャー:「クルー 2人がオルフェウスの採掘施設に行って、連絡が取れなくなった。」 「あなたのクルーのことなんて知らない…」 「危険なのか?」 「…弁護士を呼んで。…今すぐ!」 「拘束しろ、弁護士でも何でも呼べばいい。」 メイウェザーを見るガネット。会議室から連行された。 通信が入る。『ブリッジよりアーチャー船長。』 アーチャーはメイウェザーに言った。「残念だよ。」 通信機に触れる。「アーチャーだ。」 クルー:『鉱山から、巨大な物体が飛び立ちました。』 「どんな物体だ。」 『センサーでは、採掘施設そのものが動いてます。』 報告するジョサイア。「通信が入ってます。艦隊司令部です。」 パクストン:「…放っておけ。リアクターの準備は。」 グリーヴス:「完了。」 タッカー:「ワープする気か。」 パクストン:「5秒間噴射。」 トゥポル:「星系内ですよ※35。」 タッカー:「星にぶつかって木っ端微塵だぞ。」 パクストン:「運に任せるさ。やれ。」 グリーヴス:「10秒前。」 音と揺れが大きくなる。 上空の円形の採掘施設は、ワープに入った。 きしむ音が続く。 ブリッジに戻るアーチャー。「呼びかけろ。トラヴィス、追跡だ。」 メイウェザー:「了解。」 サトウ:「応答ありません。」 アーチャー:「司令部に後を追うと伝えろ。」 通常空間に出てくる採掘施設。 その先にあるのは、火星だ。 息をつくタッカー。 グリーヴス:「火星の軌道です。…全システム順調。」 パクストン:「素晴らしいよ、見事な操縦だ。」 「まだこれからです。」 「頼もしいな。」 「下降します。」 大気圏を降りていく。 パクストン:「映像を。」 出てきたモニターに地表の施設が見える。 ゆっくりと降下する採掘施設。 グリーヴス:「間もなく着陸。」 採掘施設は着陸脚で地面に着いた。 パクストン:「連結しろ。」 出てきたアームが、地表の施設をつかんだ。電気が走る。 グリーヴス:「完了です。」 パクストン:「どんな様子か見よう。」 隔壁が開き、赤い光が差し込む。 一面赤茶けた大地だ。 パクストン:「全てはここから始まる。ジョサイア。」 報告するリード。「着陸しました。」 アーチャー:「場所は。」 「ヴァーテロン・アレイ※36の真横です。彗星の軌道を変える装置が。」 サトウ:「全周波数で、亜空間通信を送っています。」 スクリーンに、テラ・プライムの名前とシンボルが表示された。 パクストン:『ジョン・フレデリック・パクストンだ。たった今ヴァーテロン・アレイの所有者となった。星系内の船や施設は全て射程内だ。』 合図する。 操作するジョサイア。 アレイが動き、アンテナ状の施設からビームが発射された。 リード:「月を攻撃してます。」 ヴァーテロン・ビームは月に当たり、土煙を起こす。照射が続く。 パクストンの映像。『我々の要求に従えば危害は加えない。星系内にいる異星人は一人残らず立ち去れ、今すぐだ。…新しい時代が始まる。…種族を越えた結束などという下らん戯れ言は、新時代の地球には無縁だ。…我々人類こそが地球の真の主だ。その意識を共有すれば、地球は最強の星になる。』 パクストン:「ここに宣言しよう、今後人類は異星人からのいかなる干渉も受けない。進むべき道は、自分たちで決めるのだ。」 話を聞くグリーヴスたち。 パクストン:『テラ・プライムは、不滅だ。』 |
※35: 星系内でのワープが危険とする、数少ない言及の一つ (映画 TMP "The Motion Pitcure" 「スター・トレック」など)。実際にはドックを出てすぐにワープしたりする描写は無数にあります。今回のように惑星や恒星に向けての場合のみ危ないのでしょうか。ちなみに次のタッカーのセリフ、原語では「星にぶつかって」の部分はありません ※36: verteron array 粒子ヴァーテロンは DS9第20話 "In the Hands of the Prophets" 「預言者の導き」など |
To Be Continued... 次回へつづく
感想など
番外編だった鏡像世界ものを終え、今回は本流も本流、まさに第4シーズンの集大成ともいえる内容になっています。惑星間同盟を阻む「悪魔」は、時間をいじくる種族でも、優生人類でも、ロミュランでもアンドリアでもテラライトでもクリンゴンでもオリオンでもソリアでもゴーンでもなく、単なる普通の地球人だったわけですね。なかなか面白い逆転の発想だと思います。冒頭の赤ちゃん、施設自体がワープ&ビームの描写など、見所もありました。 原題が Part I & II でないのに邦題が前後編になるのは、DS9「ディープスペース・ナイン奪還作戦」以来。単数形だと VOY 第4シーズン「人を呼ぶ流動生命体」のものですね。 |
第95話 "In a Mirror, Darkly, Part II" 「暗黒の地球帝国(後編)」 | 第97話 "Terra Prime" 「テラ・プライム(後編)」 |