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ディープスペースナイン エピソードガイド
第24話「突然の侵入者」
Invasive Procedures

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・イントロダクション
『ステーション日誌、宇宙暦 47182.1。激しいプラズマ分裂現象※1が起きたため、一般市民は一時 DS9 を避難。残っているのは、わずかなクルーのみとなった。』
DS9 の周りでは、青白いプラズマ※2が発光している。
シスコ:「どんな状況だ。」
キラ:「大丈夫です。頑丈さだけがカーデシアの技術の取り柄ですから。」
ダックス:「万が一に備えて、オリノコ※3をいつでも発進できるようにしてあります。」
シスコ:「オブライエンからの報告は。」
「1時間前に報告があり、オドーと目標塔のエアロックを封鎖後、ドッキングリングへ回るとか。」
「シスコよりオブライエン。」
オブライエン:『オブライエンです。』
「作業の進み具合は。」

廊下にいるオブライエン。「ほとんど終わりました。レベル21 までから 23 までの、エアロックは封鎖完了。これから隔壁をチェックし、プラズマ放出による結晶化が起こっていないかどうか調べます。長くはかかりません。通信終了。」
歩くオドー。「今の聞きました?」
オブライエン:「今のって?」
「確かに今物音がしました。」
オドーがエアロックを開けると、クワークが座っていた。手を合わせている。
オブライエン:「クワーク…」
オドー:「何をやっているんだ。勝手に出歩くのは禁止されてるはずだぞ?」
クワーク:「何だい、その言い草は。せっかくステーションに残って協力してやろうってのに。」
「お前がここに残ったのは脱出するシャトルに 600本のラチナムの延べ棒を積み込む余地がなかったから、仕方なくだろうが。…それよりドッキングリングのこんなところで一体何をしているんだい。」
「可愛い弟にお別れを言ってたんだよ。」
「ロムにだと? もう 3時間も前に出発しただろ。」
「そっか。寂しくて呆然としてて、時の経つのもわからなかったよ。」
「ホ、おいおい。3時間もここでロムを想って泣いてたってのか? 笑わせるな。」
「まあな、確かに。ロムは俺の足を引っ張ってばかりの野郎だがしかし…たとえどんなバカでも、可愛い弟なんだ。」
「自分の得になると思えば簡単にロムなんぞ見捨てるくせに。」
「でも俺はあいつを愛してるんだ。」
「ハ!」
「チーフ、あんた弟いるかい。」
オブライエン:「ああ、弟ならいるよ。2人ねえ。※4
「うん、弟と遠く離れた経験ある?」
「ああ、艦隊に入った時。」
「別れる時は泣いたでしょ?」
「…そりゃあまあね。」
「ほーれ! それが当然の反応なんだよ…ああもう…。」 出てくるクワーク。
ドアを閉じるオドー。
エアロックの内部壁面には、稼働中の装置が取り付けられていた。


※1: plasma disruption

※2: 黒いベルベットの上に液体窒素を置き、溶ける様子を高速度撮影することで表現しています

※3: 吹き替えでは第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」のヨウスコウ同様、「スターゲイザー」と訳されています

※4: 原語では兄と弟の区別はわかりません

・本編
司令室。
ダックス:「嵐の密度が 37%※5上昇。」
キラ:「この嵐いつまで続くのかしら。」
「まだ何とも言えないわねえ? プラズマ嵐※6は稀だから。でもものは考えようよ? 今回は観測するいい機会だわ?」
「さすが科学士官ね?」
ベシアが来た。「プロムナードから外を眺めると実に壮観ですよ。」
シスコ:「プロムナードの閉鎖は終わったのか。」
「ええ司令官。すっかり店仕舞いしてきましたから、ご心配なく。」
ダックス:「ベンジャミン、これを見てちょうだい。…小さな船が通常の 4分の1 の出力で接近中。」
キラ:「通信してきたわ?」
シスコ:「スクリーンオン。」
「…映像は出せないわ。」
乱れた音声が聞こえる。『こちらは貨物船エキーナ※7。プラズマ嵐に巻き込まれ、エンジンに多大な損傷を負いました。…救援を御願いします。聞こえますか。繰り返す、こちらは貨物船エキーナ。』
キラ:「…途絶えました。」
シスコ:「ビームで転送はできないか。」
「…障害が多すぎます。」
「ではトラクタービームだ。一番近いドックへ牽引しろ。」
ベシア:「負傷者に備えて診療室にいます。」
「よーし、頼む。シスコよりオブライエン。」

プロムナードを通っていたオブライエン。「オブライエンです。」
シスコ:『チーフ、第5ドックに嵐に巻き込まれた船を牽引する。悪いが行ってみてくれ。』
「エアロックの封鎖を解除しないと、ステーションには入れませんね。すぐ行きます。」

牽引されるエキーナ※8

エアロックに来たオブライエンは、パネルを外した。
一緒に来たオドーに指示する。「脇によけて。」
エキーナ側のドアが開くと、煙が充満した室内から女性が出てきた。咳き込んでいる。
オブライエン:「大丈夫ですか、怪我は。」
続いて降りてくるクリンゴン人のツカール※9。オブライエンを押しやる。「触るな!」
オブライエン:「おい、何するんだ!」
女性も演技をやめ、オドーに銃を向けた。
ツカール:「うるさい黙れ!」
船からはもう一人のクリンゴン人のイエトー※10と、別の男が出てきた。
オブライエン:「これが命を救ってくれた恩人に対する態度か。」
ツカール:「ほーらな、ご親切に連邦なら助けてくれる。こっちの予想通りだ。」
「言っておくが惑星連邦と、クリンゴン帝国は同盟関係にあるんだぞ?」
つばを吐くツカール。「今の政府は愚か者と臆病な婆さん連中が寄り集まっただけの、とても帝国とは呼べないようなしろもんだ。マリール※11、バッジを取れ。」 オブライエンのコミュニケーターを取る。
異星人の女性はオドーのを外した。「こいつが流動体生物だわ。」
イエトー:「急げ、何をためらっている。」
最後に出てきた男は、持ってきた装置を床に置いて操作し始めた。トリル人らしい。
オブライエン:「何をするんだ。」
答えないトリル人。
ツカール:「おい、お前。中に入れ。」
オドー:「…もし嫌だと言ったら?」
トリル人:「お願いです。言うとおりにしてくれれば、誰も殺しません。」
ツカール:「早く。こいつを殺してもいいのか。」
オドーは仕方なく、姿を変えた。容器の中に入っていく。
操作するイエトー。容器をマリールに渡す。
ツカール:「さあ、行くぞ? 同志。」

振り向くベシア。「チーフ。負傷者はいませんか。」
ツカール:「それはそっち次第だ。」
「これは、どういうことです。」 ベシアはイエトーにコムバッジを取られる。
「イエトー! フェレンギ人を呼べ。うるさく質問するのはよすんだ。」
トリル人:「乱暴はよしてくれ。」
「マリール。箱を。」 ベシアに言うツカール。「これを保存室へ入れておけ。早く。でないと壊しちまうぞ。」
ベシア:「もしかして、それは脅迫ですか。」
オブライエン:「オドーが入ってるんだ。」
受け取るベシア。「わかった。そういうことなら。」 保存室の一つを開け、容器を収める。

報告するダックス。「オドーからもオブライエンからも応答がありません。」
シスコ:「レベル3 のスキャンをかけよう。」
ツカール:「その必要はない。」 ベシアたちと共に、司令室に入る。
トリル人:「お願いです。コントロールパネルから、手を離して下さい。」
「早く!」 天井に向けてディスラプターを撃つツカール。「部屋の真ん中に出るんだ。」
シスコ:「…逆らうな。」
マリールはトリル人に話しかけた。「ヴェラード※12、心配しなくてもいいのよ。」
ヴェラード:「うん。」
中央に集まるシスコたち。
指示するツカール。マリールは全員のコミュニケーターを取り上げる。
ベシアたちに命じるツカール。「お前たちもだ。行け!」 ヴェラードに言う。「お前の出番だぞ。」
マリールとヴェラードは、コミュニケーターを装着した。
席につくヴェラード。「メインシステムも、バックアップシステムもダウンさせないと。」
モニターの映像が乱れ始めた。
オブライエン:「私の、責任です。隙を突かれてしまって。ドッキングリングの、セキュリティシステムが解除されていたようです。」
シスコ:「どうやって解除したんだ。」
「これはあくまでも推測ですが…その直前、クワークがエアロックにいたんです。」
キラ:「…クワークの奴、今度こそタダじゃおかないわよ。」
ヴェラードを見るダックス。
シスコ:「知っているのか。」
ダックスは首を振った。

店にいるクワーク。「…ああ、イエトーか。あんたらクリンゴン人ってのは約束の時間に遅れたことがないなあ。感心するぜ。計画通り連邦に、上手く救われたな? ああ、品物は用意してあるぞ? ラチナムはどこだ?」
イエトー:「フェレンギってのは、自分じゃ利口なつもりでいるんだろうが、とんだ勘違いだな…」
「おいおい、取引の相手にそれはねえだろう。この液体データチェーン※13がいらねえのか?なら別の買い手を探すまでのことだ。」
「せいぜい探しなよ!」
「イエトー。あんた取引は中止だって言うためだけに、嵐の中をこんなとこまで来たんじゃねえだろ?」
クワークの襟をつかみ、銃を突きつけるイエトー。「ええい、グダグダ言うな!」
怯えて笑うクワーク。

ツカールは言った。「動くなと言ったはずだぞ。」
シスコ:「私はここの司令官だ。何のつもりだ。」
「俺の雇い主に聞きな。」
マリールと顔を見合わせたヴェラード。「…ああ、そのほんとに申し訳ないと思っています。皆さんが協力して下さればすぐに終わりますので、どうぞよろしく御願いします。」
シスコ:「すぐ終わるって何がだ。」
クワークがイエトーに連れられてきた。「おい、冗談じゃねえよ。すぐに解放しないと怖いぞ。」
イエトー:「うるせえ! 静かにしろ!」
「こいつら誰だい、何しに来たんだい。」
クワークに詰め寄るキラ。「あーら、あんたなら知ってるんじゃないの。」
クワーク:「いやいや。」
マリール:「いい加減にして!」
シスコ:「同感だな、そっちの目的は何だ。」
ヴェラード:「…ダックスです。私は、ダックスが欲しいんです。」
「だが彼女は君を愛してはいない。」
「…いえ、私はその女性が欲しいのではありません。数年前に私のものに、なるはずだったものが欲しいんです。……ダックスが欲しいのです。」
ダックス:「…共生生物のことよ。私の身体の中にいる。」


※5: 吹き替えでは「37%

※6: plasma storm

※7: Ekina

※8: TNG第144話 "Starship Mine" 「謎の潜入者」でテロリストが使った船と同型。TNG第114話 "Conumdrum" 「謎めいた記憶喪失」で登場した、リシア監視ポッドのモデルを上下逆さまにしたもの

※9: T'Kar
(ティム・ラス Tim Russ VOY レギュラーのトゥヴォック (Tuvok)、TNG第144話 "Starship Mine" 「謎の潜入者」のデヴォア (Devor)、映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」のエンタープライズ-B 戦術士官役。DS9第65話 "Through the Looking Glass" 「鏡の裏のシスコ」でもトゥヴォックとして登場。ゲーム "Voyager: Elite Force"、"Elite Force II" でも声の出演。TNG ラフォージ役のオーディションにも参加しました) 声:若本規夫、TNG/DS9 カーン

※10: Yeto
(スティーヴ・ランキン Steve Rankin TNG第55話 "The Enemy" 「宿敵! ロミュラン帝国」のパターク (Patahk)、DS9第2話 "Emissary, Part II" 「聖なる神殿の謎(後編)」のカーデシア人士官 (Cardassian Officer)、ENT第96話 "Demons" 「テラ・プライム(前編)」のグリーン大佐 (Colonel Green) 役) 声:立木文彦、DS9 コール、VOY カラ、叛乱 ガラティンなど

※11: Mareel
(メーガン・ギャラガー Megan Gallagher DS9第79話 "Little Green Men" 「フェレンギ人囚わる」のフェイス・ガーランド看護婦 (Nurse Faith Garland)、VOY第153話 "Body and Soul" 「セブンになったドクター」のジャーリン大尉 (Lt. Jaryn) 役) 声:棚田恵美子、DS9 モリーなど

※12: Verad
(ジョン・グローヴァー John Glover) 声:小杉十郎太

※13: liquid data chains

ベシアは言う。「でも共生生物を出したら…ジャッジアは死んでしまう。」
シスコ:「それは承知の上だろ。」
ヴェラード:「それは、ええ。私だって、申し訳ないと思っているんです。できることなら、こんなことはしたくないんです。」
「ならばやめろ。」
「仕方がないんです。私は、今までずっと共生生物との合体を目指して、必死に…努力して、自分を高めることだけを考えてきました。そのほかのことは、何もかも犠牲にしてきたのに共生生物との、合体審査理事会※14は…そんな私の今までしてきた努力を、不適格という…一言で、片づけたんです。」
ダックス:「だからって何も恥じることはないわ? 私の両親も妹も合体はしていないけれど…幸せな人生を送ってるもの。トリル人※15で合体するのは 10人のうち一人※16なのよ?」
「合体できたあなたが言うのは簡単だ。」
「私はただラッキーだっただけよ。」
マリール:「今度はヴェラードがラッキーになる番よ。」
キラ:「なぜダックスなの。共生生物ならほかに何千もいるはずでしょ。」
ヴェラード:「いろいろと調査してみた結果、ダックスが私には一番相性がいいんです。科学や政治などに対する考え方も一致していて…」
シスコ:「ヴェラード。理由はほかにもあるんじゃないか? …ワームホールだろ。共生生物を奪ってすぐにガンマ宇宙域に逃げ込めるからだろう。」
マリール:「人生をやり直すには最高の場所よ。」
ダックス:「あなたの気持ちはよくわかるわ? でも理事会があなたを本体に選ばなかったのには理由があるはずよ? 審査は慎重に行われないと。誤った合体は計り知れない心理的なダメージを与えるの。共生生物にも本体にもね。決定は、あなたのためを思ってなの。」
ヴェラード:「それはそちらの思いこみというものだ。理事会の決定は、私の人生の可能性を奪うものだ。こんな…平凡なままで終わるのは、私は耐えられない。納得できないまま引き下がれば、死ぬまで後悔します。私は、本体になる…資格はあるし、努力もしてきた。選ばれるのが…当然だ。…ダックスは頂きます。」
マリール:「イエトー、ツカール? やりましょう。」
クワークを押しやり、ダックスをつかむイエトー。
ツカールに抵抗するベシア。「僕は協力しないからな。」
ヴェラード:「そう言われると、思ってました。」
ヴェラードはいきなり、オブライエンをフェイザーで撃った。
シスコ:「チーフ!」
隠れるクワーク。
ヴェラード:「わかりましたか、ドクター。」
オブライエンは意識は失っていない。
笑うヴェラード。「今のは、まだ序の口に過ぎません。……どちらにしろ私には失うものなどないんです。協力するか、友人をみんな死なせるか決めるのはあなたです。」
ダックス:「…協力するわ。私のせいでみんなを傷つけたくないもの。…ただし、ほかの人間には決して危害を加えないって約束してくれなければ駄目よ。」
「ええ、約束します。ドクター。」
「…ジュリアン、言うとおりにして。お願い。」
シスコはうなずく。
ツカールの手を振り払うベシア。「その前に、チーフの手当をさせろ。長くはかからない。コンソールに緊急医療キットが入ってる。」
ツカール:「…よーし取れ。」
キットを開けるベシア。「動かないで下さい。」
痛みに苦しむオブライエン。
ベシア:「よーし。とりあえずはこれで大丈夫だ。」 装置をキラに渡した。「20分ごとにこれを当てて。回復が早まります。」
ツカール:「グズグズするな!」
シスコ:「言うとおりにしておけ。逆らっても今は無駄だ。」
「診療室へ行くんだ。」
キラ:「あきらめないでよ。必ず助ける。」
シスコ:「ダックス…。」
ダックス:「わかってるわ、ベンジャミン。あなたなら私のために、何でもしてくれるってこと。今までほんとにありがとう。」
マリール:「…さあ行くわよ。」 ヴェラードの額にキスする。「がんばって。」
ヴェラード:「そう長くはかからないよ。手術が終わったら、必ず僕の…言ったとおりになる。」
「…わかってるわ。」

診療室※17
2つのベッドに横になっているダックスとヴェラード。腹の部分だけ布が空いている。
イエトーが見張っている。
近づけられた器具に驚くヴェラード。「それは何だ。」
ベシア:「デルタ波誘発剤※18だ。手術の間眠っていられるし、傷の回復を促進するエンドルフィンの分泌を促す作用もあるんだ。」
「そんな物はいらない。」
「でも使った方がいいと思うよ。手術による身体への負担も軽くなるし。」
「うるさい、いらないって言ってるだろ。…起きていたいんだ。神経電気抑制装置※19を使ってくれ。それから、手術経過を見られるようにモニターをつけろ。何かトラブルが起きたら、私がアドバイスする。さあ、早く始めろ。」
ダックスに近づくベシア。「ごめんよ、ジャッジア。」 額に器具をつけた。
ダックス:「いいのよ、自分を責めないで。あなたのせいじゃないもの。」
「僕は……。寝ているうちに終わるよ。」
「ありがとう。」 目を閉じるダックス。
「許してくれ。」

コインをもてあそんでいるクワーク。
キラ:「ダックスはどれぐらい生きていられるの。」
シスコ:「共生生物がいなくなれば、本体は数時間で死亡する。…だがジャッジアは若いし健康だ。それにベシアもいる。…今晩はもつかもしれない。」
オブライエン:「…もっても今晩ですか。」
ツカールはオブライエンの怪我しているところを蹴った。「おーい、黙ってろ!」
シスコ:「よせ!」 ツカールと取っ組み合う。
キラはマリールに殴りかかるが、逆に倒されてしまった。
シスコはツカールを連続して殴り、投げ飛ばした。
だがマリールがフェイザーを突きつける。「殺したくはないけど必要ならやるわよ!」
抵抗するのをやめるシスコ。

腹部から、共生生物ダックス※20が引き出される。
その様子を見ているヴェラード。手袋をつけたベシアは、共生生物を切り離した。
息を呑むヴェラード。ベシアによって共生生物が腹に入れられる。
身体を震わせ、痛みに耐えるヴェラード。入っていく共生生物。
ヴェラードは目を見開き、歓喜の表情を浮かべた。

司令室では、みな無言だ。
小声で話すクワーク。「冗談じゃねえよ。奴ら俺たちを殺す気だ。黙って座ってないで何とかしないと。」
キラ:「何とかしろって何をよ。」
「俺にわかるわけないっしょ。俺はただの一般人なのに、こんなことに巻き込まれて…」
「被害者ぶらないの! そもそも、ドッキングリングのセキュリティグリッドを解除して、奴らを中に入れたのはどこの誰よ。」
「何のことだかさっぱり…」
「とぼけないでよ! 今度という今度はやり過ぎよ。あんたのせいで、ダックスは死ぬかもしれないのよ。もしそんなことになったら、絶対にあんたを許さないからね。」
うなるクワーク。キラは離れた。
マリール:「大丈夫?」
キラ:「…何とかね。」
「私は誰にも危害を加えるつもりはないのよ。」
「ジャッジアにそう言ってみたら。」
「…彼女は別よ。」
「…でも良心が痛まない?」
「だってヴェラードにはああするしか仕方ないのよ。」
「それは彼の言い分でしょ? あなたのは。」
「恩返しよ。ケフカ4※21 でひどい暮らしをしていた私をヴェラードが助けてくれたの。」
シスコ:「ヴェラードはなぜケフカ4 へ。」
「連邦の領事館の通信技師をしていたのよ。私の働いてた場末のカジノ※22に来て…私と知り合ったの。トリルに戻る時君も一緒においでって。それ以来ずっと一緒よ。」
キラ:「だからなの? 彼があなたを救ってくれたからって、人の命まで奪っても構わないわけ?」
「ヴェラードは私にとって恩人よ? 彼の役に立てるなら私は何でもするわ。」
シスコ:「彼を失うことになってもか?」
「…どういうこと。」
「…手術が終われば、彼はただのヴェラードではなくなるんだ。ヴェラードとダックスが混ざり合った、新しい人格になる。思い出も、知識も全て共有になる。」
「ええ、ヴェラードからそのことは聞いてるわ。確かに彼は変わる。もっと賢く強くなるのよ、でも基本的には彼は変わらないわ。」
「彼がそう言ったんならそれは嘘だ。共生生物との合体は、生まれ変わるのと同じだ。全く別の人格になってしまう。」
「それでも私はヴェラードを裏切らないわ。あなたが何を言ったって、彼を愛してる。どんなことがあってもヴェラードのそばを離れないわ。」
ヴェラード:「そう信じていたよ。」 自信にあふれた顔だ。
マリール:「ヴェラード。」 抱きつくが、離される。
「もうただのヴェラードじゃない。ヴェラード・ダックスだ。」


※14: Symbiosis Evaluation board

※15: 吹き替えでは「トリル

※16: DS9第50話 "Equilibrium" 「仮面の幻影」では、1,000人に一人とされています。(単に設定が変わっただけかもしれませんが) 原語では「トリル人 10人に一人しか合体には選ばれない」と言っていることから、まず合体候補生になれるのが 10%で、実際に合体できるのは人口全体から考えた 0.1%ということでしょうか?

※17: 手術室の部分が登場するのは初めて

※18: delta wave inducer
「剤」というよりは、「デルタ波誘発器」と器具自体のことを言っていると思われます

※19: neuroelectrical suppresser

※20: TNG第97話 "The Host" 「愛の化身オダン」での共生生物とは見た目が変更されています。今回はメーキャップ部長マイケル・ウェストモアが「トイザらス」で買った「振動する鉛筆」が仕組まれており、動きを表現しています。トリル人の腹部はラテックスのシートで表現

※21: ケフカ4号星 Khefka IV
変身」で有名なフランツ・カフカ (Franz Kafka、1883〜1924年) のもじり

※22: 原語では accommodation house=売春宿

ジャッジアを診察しているベシア。「おい頼む、手伝ってくれ時間がないんだ。これを傷に沿ってゆっくりと動かしてくれ。」
イエトー:「どうでもいいだろ、どうせ後何時間かしたら死ぬんだ。」
「いいやそれはわからないぞ。さあ早く。」
「何で俺が。こんなされるがままのティグラ※23みたいにおとなしく殺される女。死にたいんなら、勝手に死ねばいい。」
「…僕たちを救うために自分を犠牲にしたんだ…」
「そこがバカだったんだ。死ぬのも当然だろうよ。」
「いいかイエトー、君には君なりの哲学があるんだろうがそんなものはどうでもいい。今は彼女を助けたいんだ、早くこれを持って手伝え!」
「ははあ、地球人にも根性のある奴はいたか。」 装置を手に取り、ジャッジアの腹の傷に沿って動かすイエトー。
ハイポスプレーを打ち、モニターを見るベシア。「目を開けて、お願いだ。」
モニターの数値が回復し始めた。
ジャッジアは目を覚ます。「…ジュリアン。」
ベシア:「よかった、気がついたね。…もう駄目かと思った。」
「共生生物は。もういないのね…」 嘆くジャッジア。
顔に触れるベシア。「何も心配することはないよ。手術は完璧な成功だった。」
ジャッジア:「胸に、穴が空いたみたい。」
「少し鎮静剤を打つよ。間に合ううちに、共生生物を戻せれば。」
「怖いわ、ジュリアン…。」
「大丈夫だよ、約束する。…君を死なせはしないよ。」
「…すごく空っぽな気持ちだわ…。」
「少しお休み。」

話しかけるシスコ。「ダックス。」
ヴェラード:「そうだよ、ベンジャミン。…私だ。」
「クルゾンも、トビン※24もジャッジアも。…ほかの本体も。みんな君の一部か。」
笑うヴェラード。「いい気分だ。知識も思い出も、あふれ出すようだよ。」
シスコ:「8人分の人生だからな。…想像を絶してるよ。」
「予想よりずっと素晴らしい。」
「ステーションも前とは違って映るだろ。」
「ああ、その通りだ。…見覚えがあるよ。…君のことも知っているぞ、ベンジャミン。」
一緒に笑うシスコ。「そりゃあそうだ。初めて会ったのは…」
ヴェラード:「ペリオス・ステーション※25だ。」
「アナスタシア※26は。」
「ボールの崖※27に行ったことを覚えてるかあ?」
「…リヴィングストン※28では、一緒に勤務したよな。」
「科学士官のクスタノヴィッチ※29は、アンドリアンのアカコウモリ※30を 8匹も食ったっけなあ。」
つまらなさそうなマリール。
シスコ:「あいつはほんとに大食いだったよな。俺の結婚式は。」
ヴェラード:「独身最後の夜の大騒ぎならよく覚えてるよ。」
「…ワームホールを発見した時のことは? 覚えてるか。」
表情を変えるヴェラード。「ジャッジアの最高の瞬間だ。」
シスコ:「だがそのジャッジアは今手術室で死にかけてる。」
「そのことは話したくないな。」
「事実から逃げるな、ダックス。彼女を見殺しにしていいのか?」
「ジャッジアは死なない。私の中で、生き続ける。」
「ジャッジアの思い出は生き続けても、ジャッジア本人はもうすぐ死ぬぞ。君が殺すんだ。」
「その罪悪感なら、私は一生背負っていく。…だがそれを償うためにできるだけのことはする。もうガンマ宇宙域に隠れたりはしないよ。私の知識と経験をもってすれば、大勢の人々の役に立てるはずだ。全力を尽くして、がんばりたい。」
「人助けをしたいのか。」
「もちろんだ。」
「ならジャッジアを助けろ。私と一緒に、手術室へ行こう。共生生物を元に返すんだ。」
「悪いが、それはできない。今となっては、もう戻すのには遅すぎる。合体のプロセスはもう始まってるんだ。」
「だが今ならまだ間に合う。今ならジャッジアの命は救えるんだ。」
マリール:「そんな奴の言うことに耳を貸したりしちゃ駄目よ?」
ヴェラード:「いいんだよ、マリール。共生生物は、手術の直後でまだ弱っている。それをまたジャッジアに戻したりしたら…死んでしまうかもしれない。その危険を冒してもか。」
シスコ:「もちろんだ。…問題は君だ。どうする。」
マリール:「ヴェラード、何でそいつを相手にするのよ!」
ヴェラード:「大事な親友だからだ! …わかったらあっちへ行ってろ。…私達はまだ友達だよな?」
シスコ:「もし友達なら、共生生物をジャッジアに返してやってくれ。」
「…それはできない。」
手を振り払うシスコ。「…ならお前は私の知ってたダックスじゃない。卑怯者とは友達でも何でもない!」


※23: t'gla
吹き替えでは訳出されておらず、「こんなされるがままにおとなしく殺されるような女」

※24: トビン・ダックス Tobin Dax
前話 "The Siege" 「帰ってきた英雄 パート3」より

※25: Pelios Station

※26: Anastasia

※27: Cliffs of Bole
監督の一人、Cliff Bole にちなんで

※28: U.S.S.リヴィングストン U.S.S. Livingston
エクセルシオ級、NCC-34099。独立宣言書に署名したアメリカの政治家、ロバート・R・リヴィングストンにちなんで。もしくは製作・監督 David Livingston にちなんで。ピカード艦長がエンタープライズの作戦室で飼っている、ミノカサゴの名前でもあります

※29: Kustanovich

※30: Andorian Redbat

司令官室に独りで座っているヴェラード。
マリールはレプリケーターから取りだしたカップを、オブライエンの前に置いた。「さあ、これを飲んで。」
オブライエン:「何だこれ。」
「セナリアン・エッグブイヨン※31。飲むと力が出るわよ。」
「ああ…。」
「いいわよ、別に気に入らないなら飲まなくても。」
「悪かった。…頂くよ。」 口にするオブライエン。
ヴェラードを見るマリール。
シスコ:「…前とはまるで別人のようだ。口の利き方も、動き方も。全然違う。」
マリール:「ずっと素敵になったわ。」
「素敵に見えるか。」
「もちろん。」
「本当か? でも昔の彼なら君に、きつく当たったりはしないだろ。」
「それは気が立っていたからよ。」
「でも昔のヴェラードならどんなに気が立っていても、君に冷たくはしないはずだ。」
「一体何が言いたいの。」
「わかってるはずだ。」
「…私はヴェラードを裏切らないわ。」
「でも君の言うヴェラードはもうどこにも存在していないんだよ。」
「彼がヴェラード・ダックスになっても同じことよ。私達の気持ちは変わらないわ。」
「本気でそう思うのか。」
「ええ。」
「…わかった。それじゃその証拠に、彼に話しかけて見せてくれ。」
「何を話しに行くの。」
「別に何でもいいだろ。恋人ならいくらでも話題はあるはずだ。」
「…でも、邪魔はしたくないわ…」
「何でだよ。」
「別に何だって構わないでしょ!」
「でも独りぼっちで寂しそうじゃないか。君を待ってるぞ。」
「やめてよ。」
「話しに行くのに何でそうためらうんだ。新しい彼のことを知りたいとは思わないのか…」
「やめてって言ってるでしょ!」 フェイザーを突きつけるマリール。
出てきたヴェラード。「マリール。…どうかしたのか?」
マリール:「いいえ? 万事順調よ。」
「よし。気をつけろよ? 君に何かあったら困るからな。」 ヴェラードは戻った。
座っていたクワークは、コインを転がした。
足に当たり、それを拾おうとするツカール。
クワークは飛びかかった。ツカールの上に乗る。「ヘ! チョークスリーパー※32、やったぞ!」 笑う。
叫ぶツカール。
フェイザーをキラに向けるマリール。「動かないで!」 シスコをも制する。
ツカールは苦しみながらも、クワークを手すりにぶつける。
クワーク:「あ…何ちゅう馬鹿力だ。」 結局落とされた。
ヴェラードがまた出てきた。
クワーク:「ああ、耳が…。ああ、ああ、ああ!」
ツカール:「相手を選べ。」
叫び続けるクワーク。
ヴェラード:「マリール。治療室へ連れて行け。」
クワークと共に出ていくマリール。ヴェラードはため息をついた。

診療室のベシア。「今度はどうしたんだ!」
叫ぶクワーク。「助けて、痛いよ。」
ベシア:「わかったよ。待ってろ。」 トリコーダーで調べる。「何だ仮病使ってるのか?」
ささやくクワーク。「馬鹿野郎!」
ベシア:「しかし、フェレンギ人の耳は驚くほどデリケートでねえ。精密検査をしてみないとわからないな。」
叫び続けるクワークを、睨みつけるイエトー。

コンソールを操り、シスコに話すヴェラード。「嵐の密度が、また更に 20%低下。君の辛い気持ちはよくわかるよ。私だって辛い。だがもうすぐ終わりだ。」
戻ってきたマリール。「よかった、こんなところ早く出ていきたいわ。気分はどう?」
ヴェラード:「ああ、最高だよ。君のおかげだ。…君が助けてくれなければ、私は自分が本体に選ばれなかったことを恨みながら、一生平凡なまま終わったことだろう。…計画はわかってるな。」
「あなたは先にワームホールを抜けて? 私はイエトーやツカールと後から行くわ。」
「いや、君はすぐにここを出た方がいい。一時間私を待ってもし私が来なかったら、ワームホールへ向かってくれ。シャトルはパッドC だ。」
「わかったわ、でもなるべく早く来てね? 楽しみに待ってるわ。」 抱きつくマリール。
だがヴェラードは手を回そうとはしない。
マリール:「すぐに来てくれるんでしょ。」
ヴェラード:「…ランデブーポイントで、待っていてくれ。」
キスしようとするヴェラード。一瞬抵抗するマリール。
ヴェラードはキスし、歩いていった。
その様子を見ていたシスコ。

クワークに怒るイエトー。「おい、気色悪い声を出すな。殺されたいか!」
ベシア:「仕方ないよ。耳たぶに打撲傷がある上、椎骨がずれている疑いがある。フェレンギ人にとっちゃ、致命傷だからね。…声がうるさくて嫌なら、手伝ってくれないか?」
「俺は看護婦じゃねえんだ!」
「だが、ほかに誰もいないんだ。これを耳に当てるだけだよ。」
仕方なく器具をクワークの耳に当てるイエトー。一層騒ぎ出すクワーク。
ベシア:「おい、もっと優しく。…そう、その調子だ。…力抜いて。」
ベシアはクワークにハイポスプレーを使う振りをして、イエトーの首に打った。
瞬間ベシアの手をつかむイエトーだが、クワークの上に倒れ込む。
ベシア:「やった。」
クワーク:「ありがとう、ドクター。すっかり良くなりましたよ。」 イエトーを押しのけ、ベッドを降りる。「ジャッジアは。」
「状態は安定してるが、それがいつまでもってくれるか。…間に合ううちに共生生物を戻さないと。」 ベシアは保存室を開け、容器を取りだした。
「何です、それ。」
「オドーが入ってるんだ。」
「オドーが。」
「ああ。出してやらないとね。」
「ケ、一生入ってろ。」
「クワーク。」
「冗談っスよ。」
「…アクセスコードさえわかればなあ。」
「ねえドクター、俺がやります。」 耳を近づけ、コードを入力してみるクワーク。「ああ。これはデルゴリアン・ロックメカニズム※33ですよ。よくできてるが…要領を知ってりゃ簡単に開けられる。レーザーメスを貸して?」
メスを側面の一部に当てるクワーク。「よっしゃあ。うーん。」 操作を続けると、ロックが解除される音がした。「…才能だね?」
微笑むベシア。

報告するツカール。「密度が、15%低下だ。」
ヴェラード:「よろしい。それなら、ワームホールへ向かうにはもう何の支障もないだろう。ヴェラードよりイエトー。…ヴェラードよりイエトー!」
「イエトー、どうした。」
「ドクターにやられたとしか考えられない。」
「あの医者に? まさかな。」
「流動体生物を自由にしたに違いない。ツカール、急いで船へ!」
マリール:「人質を連れてくのよ。念のためにね。」
シスコ:「私が行こう。」
ヴェラード:「そう言ってくれるのは嬉しいが、君は私に対して好意をもってくれていないようだからねえ。キラ、悪いが一緒に来てもらおうか。」
シスコは制するが、キラは言った。「構わないわよ。オドーが復活したのなら、逃げるのは無理だもの。」
振り返るヴェラード。「マリール。」
マリール:「…グッドラック。」
「…いよいよお別れだな、ベンジャミン。2代続く友情なんて、滅多にあるもんじゃない。できれば、3代続けたかった。」
シスコ:「…逃げ切れると思うなよ、ヴェラード。」
司令室を出て行くヴェラード。


※31: Senarian egg broth

※32: 原語では「捕まえたぞ!」と連呼しているだけです。未だに「プロレス (格闘技) に毒された訳」の影響が見受けられます

※33: Delgorian locking mechanism

浮かない表情のマリール。
シスコ:「それで、ランデブーポイントってのはどこなんだ。」
マリール:「私が教えるとでも思ってるの?」
「いいや。いいところなんだろうなあ。そこで長いこと彼を待つ羽目になるんだからね?」
「何でそう思うの。」
「さっきの君の顔だよ。ヴェラードに先に行って待ってろって言われた時。」
「…計画では、彼が先に行くはずだったの。彼が私を待ってるはずだったのよ。」
「でも、言い間違いってこともあるだろうし。勘違いじゃないのか?」
「いいえ。嘘をついたのよ。彼が嘘をつくなんて初めて。彼はきっと来ない。もう私はいなくてもいいのよ。」
「いいや、それは違う。ヴェラードには今こそ君が必要なんだ。」
笑うマリール。「まだあきらめてないの? でも私は絶対彼を裏切ったりしない。」
シスコ:「誰も裏切れなんて言ってない。私達と協力してヴェラードを救ってくれって言ってるんだ。」
「ジャッジアのことしか考えてないくせに!」
「その通りだ。でも君だってヴェラードを取り戻したいんじゃないのか。…考えてもみろ。ヴェラードは合体には不適格なんだぞ。まだ間に合う。共生生物をジャッジアに戻すんだ!」
「……彼を傷つけたら…殺してやるから。」 マリールはフェイザーとコミュニケーターを渡した。
「…任せておけ。」

エアロックを開けるヴェラード。中には道具の置かれた棚が残されている。
奥のドアを開けようとするヴェラードだが、ロックされている。外には船はない。
出てくるヴェラード。「船※34がなくなってるぞ!」
棚が姿を変え、オドーになった。「私がクランプを解除したからだ。」
ツカールに殴りかかるキラ。逃げていくヴェラード。
キラはツカールに殴られる。オドーと協力し、ツカールを倒した。

別のエアロックを開けるヴェラード。
シスコが立っていた。「言ったろう、逃げ切れると思うなよって。」
ヴェラード:「バカな、君に私が撃てるはずがない。」
「やけに自信ありげだな。」
「君が親友のダックスを殺せるものか。一番低いフェイザーレベルでも私を撃てば、共生生物は死ぬかもしれん。」
「お前を行かせれば、ジャッジアは死ぬ。」
「だがダックスは生きる。女一人死んでも 8代に渡る知識と経験に比べれば何でもない。…君には撃てない。お互いわかってるはずだ。」 フェイザーを降ろすヴェラード。「またな、ベンジャミン。フン。」
ランナバウトに入っていくヴェラード。
シスコ:「ヴェラード。」
ヴェラードは振り返った。
シスコ:「ベンジャミンと呼ぶのはやめてもらおう。」
フェイザーを撃つシスコ。
ヴェラードは吹き飛ばされ、意識を失った。

ベッドで目を開けるヴェラード。
マリールが見守っている。
ヴェラード:「……変な気持ちだ。…空っぽで。」
シスコ:「全て終わったんだよ。共生生物は元へ戻った。」
「…あと一歩だ。…手に入った。夢から覚めたら……僕は、独りぼっちだ。」
マリール:「いいえ、独りぼっちじゃないわ? 私がいる。いつでもそばにいるわ?」
「…何も思い出せないんだよ。……あの知識も…あの自信も。…もうない。」
ベシア:「司令官。」
ダックスは起き上がった。
シスコ:「ジャッジア。」 抱き合う。「あ…平気か。」
ダックス:「ええ、大丈夫。」
「ああ…。」
「…全部記憶に残ってるわ。ヴェラードの考えたこともしたことも全部。…悲しみにあふれてる。…この記憶も、ずっと受け継がれていくのね?」
二人はヴェラードを見た。
横になったままのヴェラードは宙を見つめ、何やら口を動かしている。
DS9 の周りのプラズマ嵐は去っていた。


※34: 吹き替えでは「シャトル」。最初に乗りに来たのはランナバウト (オリノコ) ではありません。エキーナのことをシャトルと訳しているのかもしれませんが、最初に貨物船と言っていますしね

・感想
アイラ・スティーヴン・ベアもお気に入りだという、トリル人を深く扱ったエピソード。他のシリーズなら船が乗っ取られるのはパターンとはいえ、各キャラクターがしっかり描かれているのが良いですね。意外と DS9 初心者向けかもしれません。クワークのせいで起こった事件ではありますが、その償い(?)をしているのがミソです。時間的には短いですが、ダックスではないジャッジアを目にすることもできます。
嵐のため閉じこめられるというのは、戯曲 (映画化もあり) 「キー・ラーゴ」と同じシチュエーションです。前話で退避したばかりなのに、また出なくてはいけなかった DS9 の住人…。俳優ではラスはもちろん、後に (20世紀の) 地球人とロキリム人を演じたギャラガーが出ています。クリンゴン人 2人の声優もいいですね。


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