ディープスペースナイン エピソードガイド
第25話「戦慄のカーデシア星人」
Cardassians
イントロダクション
レプリマット。 取りだしたカップに口をつけるベシア。 ガラック※1が独りでテーブルにいた。「ああ、またターカリアン・ティー※2ですか。」 ベシア:「ああ。君もロカサ・ジュース※3だろ、ガラック?」※4 「わかります?」 「その臭いを間違えるはずないよ。」 笑うガラック。「確かにそうだ…。ロカサ・ジュースはねえ、神経を和らげるんですよ。今日は、横柄なお客さんがいらしたものでねえ。ベイジョー人の技師なんですが、店に来ると必ず難癖つける人なんです。」 ベシア:「しかし君も随分と手広く商売をやってるんだなあ。ベイジョー人まで来るなんてね。君はカーデシア人なのに。」 「やはり服の仕立てのよさと、お客様へのサービスが、ほかでは類を見ないものだからこそ御贔屓にして下さるんでしょうねえ。」 「ああ、でもそうやって堅実に固定客を増やしていけば、お客との信頼関係ってのが…自然に、できあがってくるんじゃないの…」 「ああ…信頼関係は大切です。」 「一度信用を勝ち得れば、腹を割って話もできるから、情報も…集まるだろうね?」 「いやはや、ドクター。遠回しにきついことをおっしゃいますねえ。…私はスパイじゃないんですから。見た目通りの、ただの…」 「商売人かい?」 「大体ドクターは私の仕事について、想像をたくましくしすぎますよ。全くどうしたら納得していただけるんですかねえ。私は…」 「裏の顔なんかもってないってのか?※5」 「その通りです。…これはこれは、今日は珍しい光景を見る日だ。」 エアロックから降りてきたベイジョー人の老人。その傍らにはカーデシア人の少年がいる。 2人をテーブルに案内する異星人、ゾラン※6。「さあ座って、飲み物を持ってくる。」 離れた。 少年はガラックを見る。笑みを浮かべるガラック。 少年の耳には、ベイジョー人のようにイヤリングがついている。席につく。 ベシア:「何だ、あの子? 知ってるのか?」 ガラック:「とんでもない。一度も会ったことはありません。」 近づく。「いきなり失礼します。こちらはおたくの息子さんですか? 随分と育ちの良さそうなお子さんだ。」 無視するベイジョー人。 少年はいきなりガラックの手をつかむと、噛みついた。 叫ぶガラック。ベシアは手の様子を診る。 少年はベイジョー人に抱きついた。 |
※1: Garak (アンドリュー・ロビンソン Andrew Robinson) DS9第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」以来の登場。声:大川透 ※2: Tarkalean tea DS9 "Past Prologue" など ※3: Rokassa juice ※4: 後ろに奇妙な帽子を被った異星人たちがいます。このエピソード以降、このような通りがかりのエキストラが増えることになります ※5: 原語では "Plain, simple Garak?" 「ただの何もないガラックだろ?」。前回登場した DS9 "Past Prologue" で、ガラックが言ったセリフより ※6: Zolan (ディオン・アンダーソン Dion Anderson) 名前は脚本にあるだけで、言及されていません。声はパダール役の宝亀さんが兼任 |
本編
司令室に来たベシア。「遅れてすいません。仕立て屋のガラックが、襲われて怪我をしたので。」 オドー:「襲われたってどこで。」 「レプリマットで手を噛まれたんです。」 ダックス:「服が気に入らなかったのかしら。」 オブライエン:「ズボン丈が長すぎるんだよ。」 シスコ:「フン。」 ベシア:「噛みついたのは子供です。カーデシア人のね。」 「カーデシア人の子供が来るなんて報告は受けてないぞ。」 オドー:「私もだ。」 出ていく。ため息をつくキラ。 ベシア:「ついさっき、父親だと名乗るベイジョー人に連れられて、着いたばかりのようです。」 キラ:「きっとカーデシア軍が撤退した時に取り残された孤児ね。結構数が多いんですよ。…司令官、カーデシアから亜空間通信が入ってきました。相手は…ガル・デュカットです。」 シスコ:「オフィスへ回せ。」 司令官室に入るシスコ。 デュカット※7が映った。『司令官。君のステーションに住んでいるカーデシア人が、暴行を受けたというがそれは本当なのかね。』 シスコ:「随分と耳が早いですねえ、ガル・デュカット。私も今聞いたばかりなのに。」 『犯人は、父親と名乗るベイジョー人に連れられた、カーデシア人の少年だそうだが?』 「確かにカーデシア人の少年だったそうです。」 『…恐れていたとおりだ。私が、以前から危惧していたことなんだ。』 「どういうことです。」 『カーデシア戦災孤児の問題だよ。軍の撤退時に、取り残された。不名誉なことだ。ベイジョー人は、その孤児たちに同胞を憎むよう教えている。この事件が証拠だ。』 「まだそう断定するのは、早すぎるでしょう。」 『そうかな。…ではなぜ、その子はガラックを襲ったのだ。自分に何もしていないガラックを。』 「ご希望なら、調査してみましょう。」 『そうしてもらえると助かるな、シスコ君。その少年について、できる限りのことを知りたい。戦災孤児を、カーデシアに帰国させることについては、世論の関心が今ひとつでね。この事件がきっかけで、孤児帰国の機運が高まるかもしれん。』 通信を終えるデュカット。 話すベイジョー人の老人、プロカ・ミダール※8。「面倒を起こすために来たんじゃない。ガラックが苦情を申し立てたんですか?」 シスコ:「いやしかし、カーデシアから事件の調査を依頼されてね。」 「何を今更そんな虫のいいことを。子供たちを置き去りにしてさっさと撤退したくせに。」 「しかしなぜ彼を養子に。」 「だって誰かが育ててやらなきゃならないでしょう、まだ子供なんだから。」 「でもなぜ同じカーデシア人を襲うんです。」 「いきなり話しかけてきたりするからですよ。」 ベシア:「ガラックは、ただ挨拶をしただけでしょ。…なのにあの子は、異常な怯えようだった。」 シスコ:「ベイジョー人はカーデシアの戦災孤児に、カーデシアを憎むよう教えてるそうですが。」 プロカ:「カーデシアを憎むのが…そんなにいけないことですかね。あの子には真実を教えてます。…あるがままにね。…カーデシア人がベイジョーに何をしたか。それを教えることがいけないとは私は考えていません。…私にとって、ルーガルは敵の子供じゃありません。カーデシア人じゃない。…ベイジョー人なんだ。……ルーガルはもう…私達には実の息子同然なんです。」 ダボを楽しむゾラン。「よーし、いくぞう! 頼むぞう、きてくれよ。さあこいこいこい。」 盤が止まる。「ダボー!」 他の異星人も喜ぶ。ダボ・ガールからラチナムを受け取るゾラン。 クワーク:「勝ち続けて喜ぶ客の声ほど耳障りなものはないよ。」 笑うベシア。 ゾラン:「ダボ!」 クワーク:「だあ!」 ゾランに近づくベシア。「次に止まるところを知ってるみたいですねえ。」 ゾラン:「ダボー! …わたしゃダボが大好きでね。…あなた確かドクター…」 「ベシアです。」 「お友達のガラックとかいうカーデシア人の手は、無事だったかな?」 「おかげさまで、骨は折れてなかった。いきなり噛みつくもんだから、ビックリしましたよ。」 「ルーガルはちょっと変わった子でね。」 「家族とは、親しいの?」 「ダボ!」 「どうなんです?」 「何で急にそんなことを聞くんだ。」 「いやあ、僕はただ…医療報告書を書くのに、事実が知りたいだけですよ。」 「…ほかの人に聞いてくれないかな。」 「何でそんなに警戒するんです? 家族と親しいか聞いただけで。」 「…親しいほうだね。…何ヶ月か前に父親が仕事を探してるって聞いて、口を利いてやったんだ。ベイジョーのうちにも何回か行ったな。」 「親子関係は、いいんですか。」 「…ルーガルにとっちゃ針のむしろだろうよ。親からあれだけ辛く当たられちゃな。とにかくカーデシア人の子だってことでいびられるし、ほんのちょっとしたことでも殴られる。ルーガルも可哀想だな。カーデシアへの恨みを全部ぶつけられて。」 否定するプロカ。「そんな真似はしてない。真っ赤な嘘ですよ、ルーガルに聞いてもらえばわかります。…カーデシアの差し金なら?」 シスコ:「もちろんあなたにも反論の機会が与えられると思いますが、調査が終わるまでルーガルは、オブライエン夫人に引き取ってもらうことになりました。ここの学校の先生です。」 「…もし嫌だと言ったら?」 「そうしたら強制的にルーガルを連れ出さなければなりませんが。できれば穏便に済ませたいのです。」 ため息をつくプロカ。奥へ向かう。 ルーガル※9の声が聞こえる。「何で。」 プロカ:「少しの間だけだ。」 「僕は悪いことなんかしてない!」 「わかってるよ、ルーガル。心配するな。」 ルーガルが出てきた。「僕は何もしてません。」 シスコ:「心配することなんかないよ、ルーガル。逮捕しに来たんじゃない。…私は司令官のシスコ。こちらは、ドクター・ベシアだ。」 ベシア:「やあ、ルーガル。」 「調査は一日二日で終わるだろうと思う。それにお父さんに会いたければ、明日にでも会えるよ。」 プロカ:「行っておいで。明日話そう。……怖がらなくていい。この人たちは、カーデシア人じゃないんだ。」 部屋を出るルーガル。シスコはプロカに振り返った。 |
※7: ガル・デュカット Gul Dukat (マーク・アレイモ Marc Alaimo) DS9第21話 "The Homecoming" 「帰ってきた英雄 パート1」以来の登場。声:幹本雄之。前回のみ大川透さんでしたが、戻っています ※8: Proka Migdal (テレンス・エヴァンス Terrence Evans DS9第15話 "Progress" 「第五の月“ジェラドー”」のベイジョー人バルトリム (Baltrim)、VOY第72話 "Nemesis" 「ヴォリ防衛隊第4分隊」のトリーン (Treen) 役) 声:田原アルノ、DS9 初代 (&3代目) ロム、初代ブラント、旧ST4 カートライト、旧ST6 スールー/サレクなど ※9: Rugal (ヴィダル・ピーターソン Vidal Peterson TNG第108話 "Unification, Part II" 「潜入! ロミュラン帝国(後編)」のダタン (D'Tan) 役) 声:北浦隆宏 |
診察するベシア。「怪我の功名とはこのことだよな?」 ガラック:「は?」 「おかげでルーガルの家庭事情がわかったんだからね。怪我ぐらい、子供一人助けると思えば何でもないさ。」 「でも自分が怪我するのはねえ? いやあ冗談ですよ、ドクター。」 「…今回のことで、ガル・デュカットは戦災孤児問題を一気に解決したい意向らしいよ?」 「誰ですって?」 「…ガル・デュカットさ。事件の直後に司令官に連絡があって、君の怪我の具合をとても心配していたそうだよ。知り合いとは知らなかった。」 大きく笑うガラック。「で、ガル・デュカットは戦災孤児をどうする気なんです。」 ベシア:「ベイジョーから引き上げさせるそうだ。」 「本当かなあ。」 「…ガラック、それはどういう意味だ?」 「ねえドクター。我々カーデシア人の、一番の特徴は何だとお思いですか。何と言ったって、物事に細かいことです。その我々が、ベイジョーに残してきた幼い子供たちのことを忘れたとでも思いますか。…戦災孤児など、どうなったっていいって見捨てると思います? 第一ベイジョーからの…撤退を指揮したカーデシアの武官は誰だか御存知で。」 スクリーンに映っているデュカット。『何と御礼を言えばいいのか。』 シスコ:「礼を言うのはまだ早いですよ。養父母のもとへ戻るかもしれないし。」 『しかしその少年は家庭で、虐待を受けているとか。』 「それはまだ、事実と決まったわけでは。」 『…だがその子を、ベイジョーに留まらせるなどできない相談だ。とにかく、君が公正な調査を行ってくれることを期待している。』 司令室へ来たベシア。デュカットに気づく。 デュカット:『…協力は惜しまないぞ?』 シスコ:「実は一つ御願いが。もしルーガルがカーデシアへ戻ることになったとして、誰が引き取るんですか。身内が生きてるかどうか、調べていただけませんか。」 『その子の DNA サンプルを送ってもらえれば、直ちにこちらのデータバンクにかけて調べることができる。』 「すぐに送付します。」 ベシア:「あの失礼ですが。……質問があるんです。」 デュカット:『ドクター…ベシア、だったかな?』 「ええ。ベイジョーからの撤退を指揮したのはあなただったんですか?」 『ああ、私だった。』 「…ではルーガルのような戦災孤児を生み出したのはあなたじゃないですか。幼い子供たちを置き去りにして逃げるなんて。…なぜです。」 『…私は自分の意思で、子供たちをおいてきたのではない。そうしろと命令を受けていたのだ。』 「…命令って、誰のです。」 『文民指導者からだ。彼らの…』 「失礼ですが、カーデシアの政治制度においては文官に、軍人に対して直接命令を下す権限はないはずです。」 『誰から、カーデシアの政治の仕組みなどを習ったのかね。』 「…あなたも御存知の、ガラックです。」 『では、そのガラックにこう伝えておいてもらおうか。ベイジョーからの撤退は軍部ではなく、文民指導者が決めたことで、私は最後まで反対した。その上、子供たちは見捨てろというのが命令だったのだ。私は断腸の思いで、それに従った。…これで、納得いただけたかな? では司令官。』 通信を切るデュカット。 「…嘘ですよ。」 シスコ:「嘘だとして、それを裏付ける証拠はあるのか。」 「ガラックの証言が。」 「ガラックねえ。」 「この事件の裏には絶対何かあるはずです。」 「何かあるって一体何があるんだ。」 「それは、わかりません。ガラックは、はっきり…こうだって言ったわけじゃないんで。…だから、推測なんですが。」 笑うシスコ。「では君はつまり、確たる証拠もないのにガラックの顔色から推し量り、ガル・デュカットは嘘をついてると思って会話に割り込んできたというわけか?」 ベシア:「…すいませんでした。丁度いい機会だと思って。」 「謝ることはない。思いつきとしてはよかった。…ただし、二度とやるなよ。」 ダックス:「…ガラックは、なぜガル・デュカットを疑ってるの?」 ベシア:「よくわからないけど、あまり好感をもってないみたいだ。」 シスコ:「私が直にガラックと話してみよう。21時に私のオフィスに来るように。」 喜ぶベシア。「了解。」 笑うキラ。 オブライエンが部屋に帰ると、ルーガルがいた。 ケイコ※10:「おかえり。」 オブライエン:「ただいま。」 キスする。「ああ、僕がやる。」 「ああ、ありがとう。」 皿を配るオブライエン。「いいことだ。」 ケイコ:「何が?」 「皿が 3枚だけだ。モリーは、フレデリクス※11さんの家へ泊まらせたんだね。」 「いえ、寝てるのよ? ルーガルとめいっぱい遊んだから、疲れたらしいの。」 小声で話すオブライエン。「…一緒に遊ばせたのか。」 ケイコ:「ええ、そうよ?」 「人に噛みつくような子だぞ? 危ないだろ。」 「大丈夫よ、私がずっとそばで見てたわ? それにルーガルは、おとなしくて優しい子よ?」 「カーデシア人が『優しい』なんて僕は初耳だな。」 「あなた。…そういう偏見に囚われた物言いは美しくないわよ?」 「いや、僕はだね…」 「もう二度と口にしないで。ルーガル? 食事にしましょ?」 席につくルーガル。 レプリケーターから取りだした料理を置こうとするケイコ。「好きだといいけど…」 ルーガルは目をつぶり、手を広げている。 次に手を合わせた。やっとで皿が置かれる。 オブライエン:「ケイコ! な、何なんだいこの料理は。」 ケイコ:「レプリケーターのメモリーバンクに、カーデシア料理の作り方が入ってたのよ。シチューなの。カーデシア産のザブ・ミート※12入りよ?」 ルーガルはシチューを見ている。 ケイコ:「召し上がれ? カーデシアでは一般的な家庭料理らしいわ?」 ケイコを見るオブライエン。 口にするケイコ。「うーん。」 微笑む。 ルーガルはまだ食べようとしない。 一口食べてみるオブライエン。スプーンを置き、皿を前に押し出した。 ルーガルも皿を押す。2つの皿がぶつかった。 オブライエンの部屋。 あくびするオブライエンは、コンソールを操作していた。 ルーガルが来たのに気づく。カップを口にした。「……眠れないのか?」 ルーガル:「僕はこれからどうなるの?」 「さあ、どうかな。…でもこれは、君のことなんだから…シスコ司令官に、君の希望を言うといいよ?」 「…僕は帰りたいんだ。」 「ああ、そりゃ当然だよ。…撤退の時、子供を置き去りなんてひどいよな?」 「違う、そうじゃなくて。…ベイジョーへさ。」 コンピューターを切り、近づくオブライエン。「だけど、辛いんじゃないのか? ああ…ベイジョーに住むのは。」 ルーガル:「何で?」 「カーデシア人なのに。」 「それは僕のせいじゃない。…そう生まれただけだ。」 「いやあカーデシア人だから悪いって、そういう意味で言ったんじゃないんだ。」 「…でもそうなんだ。」 「何でそんなことを。」 「…本当のことだよ、みんなそう言ってる。」 「…ご両親はカーデシア人のことを何て?」 「憎んでるよ。」 「…憎まれてるのに、何で帰りたいんだ?」 「僕のことは可愛がってくれてるもの。叱られたことなんか、一度だってないよ。」 笑うオブライエン。「ほんとかい? この私だって、親父にお尻を叩かれたことぐらいあるぞ?」 ルーガル:「僕はない。両親は預言者の教えに従ってるから。…カーデシア人をどう思う?」 「え? …そうだな、まあ…何とも言えないなあ。」 「何で?」 「…そりゃあ…民族全体をこうと決めつけることは、できないだろ? カーデシア人だから、クリンゴン人だから、地球人だからって、一つの型にははめられない。…確かに嫌なカーデシア人もいるが、感じのいい奴もいるよ。君みたいに。」 「…占領時代カーデシアに何人のベイジョー人が殺されたか知ってる? 1,000万人※13以上だよ。…学校でもテストに出たんだ。…ベイジョー人に生まれたかったな。」 |
※10: ケイコ・オブライエン Keiko O'Brien (ロザリンド・チャオ Rosalind Chao) DS9第23話 "The Siege" 「帰ってきた英雄 パート3」以来の登場。声:吉田美保 ※11: Fredericks 吹き替えでは「友達の家に」 ※12: zabo meat ※13: 吹き替えでは「1億人」と誤訳 |
ベッドで寝ているベシア。 ドアが開く音が聞こえた。起きる。 ガラック:「さあ、ドクター。服を着たら、すぐ出かけますよ。」 ベシア:「出かける? …どこへ行くんだ。」 「ベイジョーへです。」 ドアが開くと、寝間着姿のシスコがいた。「朝まで待てない用なんだろうな。」 制服のベシア。「そうなんです。シャトルを、使いたいんですが。」 シスコ:「…理由を言え。」 「ガラックが来て…ベイジョーへ行きたいって言うんです。」 「ベイジョーへ、なぜだ。」 「…それは、わかりません。」 「そうか、素晴らしい理由だな? シャトル一台だけでいいのか。」 通信が入る。『司令室より司令官。』 「どうしたんだ。」 『ガル・デュカットより司令官に緊急通信が入っております。』 ドアを開けたまま、自室のコンソールを起動させるシスコ。 デュカット:『こんな夜遅く申し訳ないが、大ニュースなんでね。君の送ってくれた、DNA を鑑定したところ…ルーガルは我が国で最も高名な政治家の息子であることが判明した。コタン・パダール※14の子だ。』 シスコ:「コタン・パダールがベイジョーに。」 『もう 8年も前だ。カーデシア人入植地の監督として赴任中、ルーガルはベイジョーのテロリストに殺されたと思われていたんだ。』 「生きているって教えたんですか。」 『もちろんだ。コタン・パダールの喜びようといったら。もうそちらのステーションに向かって、出発したよ。』 「…それは困りましたね。」 『どういう意味だ。』 「あの子はベイジョーへ戻りたがってます。」 『まさか。自分を虐待する親のどこがいいんだ。』 「虐待の事実が確認されたわけじゃありません。ルーガル自身は可愛がられているって言ってるんです。」 『とはいえ実の親が生きていたわけだから、ルーガルだって気持ちを変えるだろうと思うがね。それに、カーデシアに帰る方がルーガルのためだ。』 「とにかく、コタン・パダールの到着を待ちます。通信終了。」 ベシア:「これが偶然のはずありません。ガラックは、コタン・パダールのことを知ってたんです。…ベイジョーで何をする気なんだろう。」 「それはベイジョーに行けばわかる。」 発進するランナバウト。 惑星ベイジョー。 机に集まっていたベイジョー人の子供たちは、逃げ出した。 ガラックと一緒に来たベシア。「失礼します。ここが、トザット養護施設※15でしょうか。」 ベイジョー人※16:「ええ。」 「ああ。私はディープ・スペース・ナインのドクター・ベシアと申します。実は養子に出される前、この施設にいたカーデシアの少年についてお聞きしたいんですが。」 「ええ。ベイジョー人は敵の子供にも、温かいのです。」 ガラックを見るベイジョー人。 「その子の名前はルーガルで、引き取ったのはプロカ・ミダールですが。」 「…どちらも聞き覚えがないわ? 一体何を調べてらっしゃるの?」 「ああ、確かに。一体何を調べればいいんだい、ガラック?」 ガラック:「ルーガルが養子に出された時の状況を知りたいんです。8年前に、出されたはずですが。」 ベイジョー人:「占領時代のことは今ではもうわからないんですよ。」 そばのコンピューターに近づくガラック。「いや、カーデシア人は記録を残すことにかけてはしつこい。ここのシステムだって、カーデシアのスタイルを模倣したものじゃないですか。当時の記録が全く残っていないとは信じられません。コンピューターへの通常登録は、なされていたはずです。」 ベイジョー人はため息をついた。「私には当時のことはわかりません。レジスタンスに入ってたから。」 ガラック:「そうですか。じゃあ当時お会いしてるかも。」 ベシア:「ガラック。」 ベイジョー人に尋ねる。「コンピューターを調べていいですか。」 ベイジョー人:「いま故障中なんです。なかなか直しに来てくれなくて。いつも後回しにされてしまうんですよ。」 ガラック:「私が、直して差し上げますよ。」 ベシア:「…コンピューターが直せるのかい。」 「アイソリニア・データサブプロセッサーをちょっといじればいいんですよ。ま、任せておいて?」 ため息をつくベシア。 コンピューターを操作しているガラック。 ベシア:「僕は君を過小評価してたよ。」 ガラック:「こんな物、ボタンをつけるのと大差ありませんよ。ちょっと失礼?」 アイピースを渡されるベシア。「いつも持ち歩いてるのかい?」 ガラック:「仕立て屋のたしなみですよ、いつどこでズボンのお直しを頼まれてもいいようにねえ?」 笑うベシア。 ガラックは表示を見る。「ああ、ここにはないなあ。」 ベシア:「何がないの。」 「ルーガルも父親も名前がない。」 「8年前のファイルをもう見つけ出したのかい?」 「簡単ですよ、やり方さえ知ってりゃあね。失礼? ということはファイルを間違えて入れたか、名前が違うか、この施設にはいなかったかのどれかだなあ。」 「おおい、ベイジョー中の施設を訪ねて回れってんじゃ…」 「そんな必要はありません。ここからどんなファイルにもアクセスできるし、データクリップにダウンロードできるんですよ。」 カーデシア人の少女が、奥から出てきた。 ベシア:「でも何千個ってファイルを…」 ガラック:「何万個というファイルですよ。」 パッドを取り外し、立ち上がる。 少女やほかのカーデシア人を含め、ベイジョー人孤児たちが見ていた。 カーデシア人少女※17:「カーデシアから、迎えに来て下さったんですか?」 ガラック:「…残念だが違うんだ。…さあ行きましょう。」 ベイジョー人に話す。「コンピューターシステムは完璧に動くようにしておきましたから。」 ベシアを見つめる少女。 |
※14: Kotran Pa'Dar Kotan という表記も見受けられます。原語の発音でも「コタン」です ※15: Tozhat Resettlement Center ※16: 名前はディーラ (Deela) (カレル・ヘンゼル Karen Hensel TNG第107話 "Unification, Part I" 「潜入! ロミュラン帝国(前編)」のブラケット元帥 (Fleet Admiral Brackett) 役) ですが、脚本にあるだけで言及されていません。声:棚田恵美子、DS9 モリーなど ※17: 名前はアシャ (Asha) (ジリアン・ツィーマー Jillian Ziesmer) ですが、脚本にあるだけで言及されていません。声:増田ゆき |
帰還するランナバウト。 ガラック:「コンピューター、データバンクをセットアップ。年齢、性別、養子に出された年をリストアップせよ。」 ベシア:「コンピューター、今の命令を無視し、全エンジンを停止せよ。」 ランナバウトは止まった。 ガラック:「…孤児を見て同情するのはわかります。…でも戦災孤児は、カーデシア社会では差別を受けるんです。可哀想だとは思いますが、こればかりは私にはどうしようもないことですから。」 ベシア:「そう言いながら君は何を企んでるんだ? 今回の事件の裏にある秘密を知ってるんだろ?」 「何事にも駆け引きは、ありますよ?」 「腹が立つのは、僕には何がどうなってるのか全然見当もつかないことだ。君が一体何を考えてるのか、何をしようとしてるのか教えてくれるまで、シャトルはここから動かないからな。」 「お聞きしますが…カーデシアはなぜ、ベイジョーから撤退したと思います?」 「ガル・デュカットは、文民指導者の決定だって言ってた。」 「これは偶然ですかね。その文民指導者の息子が戦災孤児としてベイジョーに残されてたなんて、よくできてますよね。」 「ルーガルの父親? コタン・パダールは、ベイジョーからの撤退の決定に関わってたって言うのか?」 「さすがドクター、頭がいい。わざわざお付き合いいただいた甲斐があったというものです。」 「つまり、ガル・デュカットの政敵ってことになる。ガル・デュカットは、撤退には反対だったんだ!」 「だいたい彼ほどの高い地位にある男が、戦災孤児一人にあれほど関心をもつのも、おかしなことです。その上シスコ司令官に調査を頼み…DNA サンプルを送らせて鑑定した結果、孤児じゃないってことがわかった。何と高名な政治家の息子だったとはねえ。」 「偶然なのかな。」 「偶然というものは馬鹿にできません。それに、偶然は毎日起こります。しかし偶然は信用できない。」 ドアが開くと、カーデシア人がいた。「コタン・パダール※18だが。」 後ろには保安部員もついている。 オブライエン:「オブライエンです。こちらへ。」 部屋に入るパダール。保安部員は去った。 オブライエン:「さあどうぞ。」 パダール:「…息子はどこだ?」 「妻とおります。すぐ戻ります。…息子さんと、会われる前にお話をしておこうと思いまして。…ルーガルの、ことについて。」 「名前だけはそのままだったか。」 「息子さんと別れたのは…」 「ベイジョーでだ。まだ 4つに、なったばかりで。私のことも覚えていないかもしれん。…どうかな。」 「覚えてないって言うより、忘れようとしてますよね?」 「それはどういう意味だ。」 「ルーガルは自分を呪っています。カーデシア人である自分を許せないんですよ。」 「ああ、それはよく聞く話だ。ベイジョーで育ったんだから仕方がないが、これからは私がいるんだ。」 「ルーガルは、あなたのところへは帰りたがらないかも。」 「私は父親だぞ! …ミスター・オブライエン、私は地球の文化に疎いので地球人の家族とはどういうものか知らないんだが。」 「いや、家族はかけがえのないものです。うちの娘は、今 4歳でルーガルが行方不明になった歳です。」 「では今の私の気持ちもわかってもらえるだろ。…カーデシアでは、家族は何より大事なのだ。カーデシアでは親を大事にし子供を可愛がるのが美徳とされる。4世代が同居している家もあるほどなんだ。家族こそ、全てなのだ。なのに私は息子を守ることすらできなかった。」 「でも、生きてるって御存知なかったんですから。」 「知らなかったでは許されん! あきらめずに探せばよかった。…息子を置き去りにし、戦災孤児としてベイジョー人に育てさせるなど、これ以上不名誉なことはない。カーデシア人として失格だ。」 ケイコが部屋に入り、呼び寄せる。 ルーガルが続く。 見つめるパダール。「お前か、ルーガル。」 後ろへ下がろうとするルーガルを、ケイコは止めた。 パダール:「…私を覚えてるか。…ほんの少しでも。」 首を振るルーガル。「いいえ。」 ケースを手にするパダール。「子供の頃のお前の写真を持ってきたんだ。」 ルーガル:「嫌だ。」 ケイコ:「待って。」 ケースを置き、近づくパダール。ケイコは離れる。 ルーガルのイヤリングに気づくパダール。「…これだけはわかって欲しい。ベイジョーのテロリストに、襲われて…家は焼け落ちた。母さんも死んだ。…炎の中、私は…お前を捜したが、見つけられなかった。だから私はすぐに、ベイジョーを離れた。お前のことを思い出すとたまらなかったんだ。」 ルーガル:「あんたが悪いんだ。自業自得だよ! カーデシア人なんか、なぶり殺しにされて当たり前なんだ!」 「お前のそういう気持ちはわかる…」 抱きつこうとしたパダールに抵抗するルーガル。「わかるはずなんかないよ! カーデシア人はみんな野蛮な人殺しだ! 息子を殺されるぐらい当然だよ。」 パダール:「ルーガル。」 「あんたなんか親じゃない。僕はカーデシアなんか行かないよ。絶対に。」 ルーガルは隣の部屋へ向かった。 目を見開くパダール。 司令官室。 パダール:「我が子を引き取るのにベイジョーの裁判所の許可をもらうつもりなど毛頭ない。」 プロカ:「ルーガルを見捨てて逃げたくせに今更何を言う。」 「ルーガルは私の実の子だ。カーデシアの法では明確な規定によって…」 「ベイジョーではカーデシアの法なんぞ無効だ!」 シスコ:「お二人とも。これは仲裁人を立てて話し合った方がいいのでは。」 「…カーデシア人でもベイジョー人でもない。それならいいが。…あなたはどうです。」 「結構ですが、私で構わないですか? 連邦とベイジョーとは友好関係にある。」 パダール:「いやあ、司令官。あなたも同じ父親だ。私には異存はない。」 「わかりました。では話し合いの場を…」 通信が入る。『オドーより司令官。』 シスコ:「ああ、オドーか。どうした。」 オドー:『つい先ほど、ガル・デュカットがステーションに到着しました。』 |
※18: Kotran (Kotan) Pa'Dar (ロバート・マンダン Robert Mandan ドラマ "Soap" (1977〜1981) に出演) 声:宝亀克寿、TNG イヴェック、ENT クリタサン船長など |
『ステーション日誌、宇宙暦 47177.2。我々は利用されているのではとの懸念は、ガル・デュカットの到着により一層強まった。』 診療室。 シスコ:『ドクター・ベシアは、ガラックとルーガルが養子に出された時の事情を調査中だが、まだ新事実は出てこない。しかし、ルーガルをどちらの親に渡すか、決めなければ。』 作業を行っているベシアとガラック。 デュカットと話すシスコ。「子供一人のためにわざわざおいでになるとは。」 教室にはパダールほか、当事者が全員集まっている。 デュカット:「…パダールは文民議会の、中心的人物だ。今回の事件は、我が政府の高いレベルにおいて大きな関心事となっている。」 「じゃあここへは、政府代表として?」 「いや、そうではない。私は、子供たちのために来たのだ。ベイジョーに残る全ての戦災孤児のために。ルーガルは当然、実の親のもとに戻るべきだ。」 「あなたがいれば、ミスター・パダールも心強いでしょう。」 ため息をつくパダール。 シスコ:「しかし確かお二人は政治的には対立してるのでは。違いますか、ミスター・パダール?」 パダール:「…過去、対立したこともあった。しかしそのこととこれとは…」 デュカット:「過去のことは過去のこと。今回の事件とは何の関係もないはずだ。大事なことは子供たちの未来だ。戦災孤児問題をどのように解決するかだろ?」 シスコ:「ではミスター・パダール。8年前にルーガルと別れた時のことを、詳しく教えていただきたい。」 診療室のガラック。「何て私はバカだったんだ。」 ベシア:「今になって冗談はよせよ。スペリングミスを探して 7,420 もファイルを見たのに。」 「ガル・デュカットは頭のキレる男だ。」 「だから?」 「考えても御覧なさい。…証拠のファイルを残すはずがないんです。」 「じゃあ、ルーガルのファイルを消したってこと。」 「決まってますよ。」 「…つまり人に見せたくなかったってわけだ。」 「その通り。残る希望はただ一つ。そのファイルを書き込んだ人を探し出すことです。」 「誰なんだ、その男。」 「女です。」 「女? 何でわかる。」 「もう名前を見つけたんですよ。ジョマット・ルソンです。」 尋ねるシスコ。「当時のことを何か覚えてるだろ。」 ルーガル:「いいえ。」 「じゃあ養子に出されたことは。」 「いいえ。」 「…一番、昔の記憶は?」 微笑むルーガル。「お父さんに泳ぎを教えてもらったこと。」 笑い、ルーガルの肩に手を置くプロカ。 コンピューターに映ったベイジョー人の女性。『その男の子のことは覚えています。』 ベシア:「確かですか。」 ジョマット※19:『当時カーデシアの女の子は何人かいましたが、男の子は一人でね。』 「名前は、ルーガルで間違いない?」 『ええ、そう言われました。』 「言われたってほかの誰かから。」 『ええ、だからこそあの子のことをはっきり覚えているんです。ほかのカーデシア人の子供はみんな、路頭に迷っているところをベイジョー人に保護されて来るのに、ルーガルはカーデシア人が連れてきましたので。』 「それはカーデシアの軍人じゃなかったですか。」 『ええ、女性士官でしたわ?』 「女性。」 『…名前は忘れてしまいましたが、確かテロック・ノール※20の司令官づきの武官だったと思います。…ほかに何かございますか?』 ガラックは笑みを浮かべて、首を振った。 話すオブライエン。「ルーガルはカーデシア人を憎んでます。息子から人殺しだと、ミスター・パダールはののしられました。お気持ちを考えると辛いですね。」 ドアが開き、ガラックと一緒に入るベシア。「司令官。…私が司会をしていいでしょうか。」 うなずくシスコ。 ベシア:「チーフ、ミスター・パダールは今回の件について何て言ってました?」 オブライエン:「カーデシア人として、これ以上の不名誉はないって言ってました。」 「息子さんが見つかったことは、カーデシア国民に公表されたんですか?」 パダール:「いや政府はまだ発表を控えているんだ。」 「でももし発表されたら。」 「私の政治家生命はおしまいだ。」 「…残念だな? こんな時期に失脚だなんて。」 「こんな時期に。」 「もうすぐ先だってのベイジョーの軍部クーデター未遂※21に関与していたカーデシア人への尋問が始まるそうじゃないですか。」 「そうだが。」 「こちらのガル・デュカット※22も、証言を求められると聞いています。」 立ち上がるデュカット。「関係のないことをもちだして、私を侮辱するのか、司令官。どういう気だ。」 シスコ:「司会は、ベシアに任せたんでね。」 「話題を戦災孤児に戻すべきじゃないか?」 ベシア:「結構です。…話を戻しましょう。ルーガルがいた、トザット養護施設を訪ねたことはおありで?」 「ないね。」 「でしょうね、トザットは 8年前にパダールが赴任していた所です。」 「それは知ってる。」 「……ルーガルが養子に出された記録を探しましたが、ファイルはありませんでした。」 「それは残念だったな。」 「ええ? でも当時施設で働いていた職員と連絡が取れました。…ジョマット・ルソンというベイジョーの福祉ワーカーを御存知ですか?」 「いいや?」 「ジョマットは、ルーガルがカーデシアの武官によって連れてこられたのを覚えていました。その武官がルーガルという名前も、教えてくれたと。」 「…だからどうだと言うんだ。」 「要するにです。その武官はルーガルが、コタン・パダールの息子で孤児なんかじゃないってことを知りながら、施設に連れてきたんじゃないかということなんです。いつの日かパダールにダメージを与えることを目的としてね。」 「…私にはわからんね。」 「それではカーデシアの占領時代の基地、テロック・ノールはどこにあったか御存知ですか?」 「テロック・ノール? それはここだ、DS9 のことだ。」 「…ジョマットが言うには、ルーガルを連れてきた武官はテロック・ノールの司令官づきの士官だったそうです。」 ガラックを見すえ、出ていこうとするデュカット。 ベシア:「ガル・デュカット。8年前のテロック・ノールの司令官はどなたです?」 デュカットは何も言わず去った。 ベシア:「言うまでもなく、8年前のテロック・ノールの司令官は、ガル・デュカット※23です。」 ガラックはうなずいた。 『ステーション日誌、宇宙暦 47178.3。ベイジョー人の養父母が、ルーガルを慈しんで育て上げたことに疑いはないが、私は実の父であるパダールに、ルーガルの引き取りを認めた。ルーガルは謀略の犠牲者と言えよう。心の傷が癒えるのを、祈るばかりだ。』 プロムナード。 パダール:「ドクターのおかげで引き分けにもちこめました。」 シスコ:「と言いますと?」 「デュカットは自分の失態を公表しないだろうから、私にダメージも与えられない。」 「引き分けね?」 「そういうことだ。君が政治家生命を救ってくれたことは一生忘れない。」 「それなら、ほかの戦災孤児のことも考えてあげて下さい。」 「…ああ。そうだな、そうしよう。」 オブライエンがやってくる。「いいかい、ルーガル。ベイジョーを訪ねたくなったら、連絡してくれれば迎えに出るから。」 パダール:「おはよう、ルーガル。じゃあ行こうか。」 ルーガルは無言でエアロックに入る。 パダール:「焦らないでやりますよ。」 シスコを見た。 ドアが閉まり行く中、パダールはルーガルを見つめている。 オブライエンはシスコを見る。 レプリマットのベシア。「あと一つ質問が残ってるんだけどね、ガラック?」 ガラック:「ん?」 「なぜデュカットの過去を暴いたんだ? 君たちはどういう因縁なんだ。」 「真実というものは目を見ればわかるものです。口に出して言うような真実なんて、どこにもないんですよ。だから私は、真っ直ぐ布を裁つ仕立て屋って仕事が、心から気に入ってるんです。」 指でハサミの真似をするガラック。 「やっぱり教えてくれないんだ?」 「教えなくたってわかるはずですよ。細かい事実をつなぎ合わせればいいんです。テーブルの上にこぼれているパンくずを集めるみたいにね。…ではまた、ドクター。」 礼をし、離れるガラック。通りかかった男に話しかける。「ああ、こんにちは。」 男:「やあ。」 「この前私が仕立てたガウンですね?」 「ああ、気に入ってるんだ。またよろしく。」 ガラックは、歩いていった。 |
※19: ジョマット・ルソン Jomat Luson (シャロン・コンレイ Sharon Conley) 声は Deela 役の棚田さんが兼任 ※20: テラック・ノア Terok Nor 初言及 ※21: 「未遂」は訳出されていません ※22: 吹き替えではどちらも「ミスター・ガル・デュカット」と訳されています。「ガル」が肩書きだと知らなかったようです |
感想
「カーデシア人たち」という原題どおり、主だったキャラクターだけでも 4人のカーデシア人が絡む、非常に DS9 らしいエピソードです。この時期にエピソードガイドを作ることになったのは単なる偶然ですが、違う文化に残された者という問題は、いつの時代にもあります。TNG だと "Suddenly Human" 「宇宙孤児ジョノ」が該当しますね。それと「孤児の存在で地位を失う」というのは、後に "Indiscretion" 「デュカットの娘」で関わってきます。 二度目の登場を果たし、晴れてサブレギュラー・キャラとなったガラックはもちろん、オブライエンのカーデシア人との過去も上手く生かされてますね。監督の Cliff Bole は、以前「VEGA$・ベガス (私立探偵ダン・タナー)」や "Matt Houston" といったドラマでロビンソンと関わったそうです。最後にデュカットの陰謀が暴かれるシーンで、後ろでニコニコしてるだけのガラックが何とも…。そういえばあまり関係ありませんが、ある日本語ガイドブックではガラックとして今回のパダールの写真が使われているページがありましたね。 日本語といえば、このエピソードがあまり印象に残ってないのは、一つは邦題のせいかもしれません。「戦慄」「恐怖」「謎」「宇宙」あたりのありきたりキーワードは、結局ないのと同じ場合もありますからね。 |
第24話 "Invasive Procedures" 「突然の侵入者」 | 第26話 "Melora" 「エレージアン星人」 |