エンタープライズ エピソードガイド
第26話「暗黒からの衝撃波」(前)
Shockwave, Part I
イントロダクション
※1※2船長用食堂。 アーチャー:「パラーガ人※3は歓迎してくれるかなあ。」 トゥポル:「ご心配なく。半年近く、訪問者がないと本部主任が嘆いていました。」 「ふむ。」 タッカー:「女系社会ってのはほんとなのか? 女に全ての決定権があるって。」 トゥポル:「最近までは。でもこの 10年で、パラーガ人男性の地位は向上し、平等の権利を得ています。」 「…でも、男はあんまりチヤホヤしてもらえないんだろうな。」 アーチャー:「そうだな?」 笑うタッカー。 アーチャー:「このコロニーは、20年前わずか 30人の鉱夫からスタートした。今や人口 3千以上。学校や、様々なコミュニティもできてる。美術館まであるそうだ。」 タッカー:「こういうところに、いずれ地球のコロニーもできるかなあ。人間の子供もヴァルカンのように、居住区※4で育つ。」 笑うアーチャー。「父が生きていたら、絶対信じただろうな? 我々は一光年ずつ…」 タッカー:「歴史を刻んでる。その話は耳にタコができるほど聞かされてます。」 「ハハ…」 呼び出しに応えるアーチャー。「アーチャーだ。」 メイウェザー:『パラーガ人から、軌道進入許可が出ました。』 トゥポル:「…着陸プロトコルは届いてますか?」 『ただ今受信中です。』 アーチャー:「すぐ行く。」 惑星に到着したエンタープライズ。 シャトルポッドが降下していく。 操縦するリード。「通常より時間がかかりそうです。」 アーチャー:「パラーガの大気中で噴射するのは失礼だぞ? …プラズマダクトは、いつ閉じるつもりなんだ。」 「着陸プロトコルでは、50キロとなっていますが大事を取って…約75キロ地点でロックします。」 トゥポル:「船長。女系支配の文化が消えたといっても、やはり今一度確認した方がよろしいかと…」 突然大きな音が聞こえ、辺りは光に包まれた。 大きく揺れるシャトル内。 ポッドは炎に巻き込まれ、姿勢を失う。 巻き起こった衝撃波は、地上を焼き尽くしていく。 |
※1: このエピソードは ENT 第1シーズン最終話 (フィナーレ) です。本国では約4ヶ月後に第2シーズンが始まりました ※2: また、このエピソードは後編の "Shockwave, Part II" も含めた内容が、本国ではノヴェライズ小説として発売されています [Amazon.com / スカイソフト / Amazon.co.jp] ※3: Paraagan(s) ※4: 原語では「ニューソーサリート (New Sausalito)」。ソーサリートはヴァルカン居住区がある地球の地名。ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」より |
本編
※5医療室で話すリード。「プラズマダクトはどちらも閉じました! 確かです。」 アーチャー:「本当に跡形もないのか。」 サトウ:「コロニーを最大に拡大し確認作業を行いましたが、少なくとも 100キロ四方に渡って、大地は焦土と化しています。」 「制御装置の一つが機能不全だったんじゃないのか。」 リード:「ダクトは閉じました! 機能不全が起きた場合の警報は二重だったのに、鳴らなかった。事故防止のバックアップ機能だって作動していない。ダクトは閉じました!」 トゥポル:「責任を押しつけあっている場合ではありません。調査すればいずれ真相ははっきりします。容態は。」 タッカーを診ているフロックス。「軽い打撲だけですから直回復します。」 アーチャー:「コロニーに呼びかけてみたのか。誰か生き残っているはずだ!」 サトウ:「船長、残念ながら何も残っていないんです。建物も生命体も跡形ありません。」 「ありえない。3,600人が一瞬で消えた?!」 惑星は茶色に変色している。 ブリッジに戻るアーチャー。「チェックは済んだか。」 トゥポル:「6つのポッドセンサー記録を分析しました。残るは 2つ。」 「続けろ。3時間以内だ。エンタープライズのセンサー記録は。大気中のテトラジン※6量が記録されているはずだ。濃度がパラーガの想定より相当濃かったんじゃないか。存在する高度もパラーガの予想以上に高かったということは。」 タッカー:「それが不思議なんですよ。テトラジンは、100万分の3 以下の濃度でした。プロトコルに出ていた半分の数字です。」 「爆発地点はどこだ。」 リード:「爆発点はシャトルポッドの真下です。ですが火元は、右舷プラズマダクトだと考えられます。」 「…閉まっていたはずのプラズマダクトからな?」 トゥポル:「ダクトが両方閉じられロックされていたことは、全ての記録から明らかです。」 「だったら、その記録をもう一度チェックしろ。これじゃつじつまが合わない。…フォレスト提督を呼んでくれ。辛い報告だ。」 コンソールに映ったフォレスト※7。『テトラジン?』 アーチャー:「発掘作業で出る副産物です。大気圏の 45 から 50キロの間に溜まっています。廃棄プラズマのせいで、テトラジンが爆発したとしか考えられません。」 『しかし、プラズマダクトは閉まっていたんだろ?』 「そうです。現在全力で原因を究明中ですが…3,600名の命が失われた事実は覆りません。」 『…記録の分析を続けてくれ。…私は緊急、司令会議を招集しよう。パラーガ人は間違いなくヴァルカン人を巻き込んでくるだろう。パラーガの母星との交渉役を、誰にしたらいいものか。』 「全ては私の責任です。」 『だとしてもだ。一つずつ、問題を片づけていこう。』 「…家族に、どうやって伝えるべきか。」 『君は相手のプロトコルに従った。』 「パラーガ人に会いに行ったのは、彼らを消すためではなく学ぶためでした。」 『指示に従ったんだ。…船長がこの事件にどう反応するか、クルーはみんな注目している。…彼らを失望させるな。できるだけ早く連絡する。残念だ、ジョン。』 通信を終えるフォレスト。 フロックスに話すトゥポル。「アーチャー船長の態度は、異常です。不安と絶望、罪悪感の狭間で、ずっと揺れ動いておかしくなっています。…部屋に引きこもったまま。あれは事故だったんだと納得させようとしましたが、非常に非論理的な反応が…返ってきました。まるで船長としての責任を放棄したかのようです。」 フロックス:「ヴァルカンですねえ。…私の経験からいっていわゆる責任と絶望という感情を切り離して考えることは、人間にはなかなかできません。」 「それだったら、ドクターとして船長が指揮を執れるようになるまで、間近で監視すべきだと思います。」 「よくわかりますよ? あなたのお気持ちは。副司令官としては不安でしょう。でも大丈夫。こんな状況になって船長が悲しみに暮れなかったら、その方が不自然です。それが、人間性ってもんだ。…心配ありませんよ?」 アーチャーはポートスを抱き、コンピューターで亡くなったパラーガ人のリストを見ている。 表示スピードを上げても、次から次へと顔写真が映し出される。 呼び出しが鳴った。「何だ。」 サトウ:『フォレスト提督です。』 リストを消すアーチャー。「…わかった。」 ポートスを降ろし、ため息をついた。通信に出る。 報告するサトウ。「探査機の大気分析が届きました。」 リード:「送ってくれ。」 メイウェザー:「……結果は?」 「地表付近の大気は、ボロン炭素※8の残留物だらけだ。」 タッカー:「テトラジンが廃棄プラズマで爆発したとき、引き出される結論は一つ。」 メイウェザー:「ボロン炭素の残留物。」 「そういうこと。」 リード:「探査機がどんな残留物を拾おうと、知ったことじゃない。どちらのプラズマダクトもロックされていたし、システムに穴はなかったんだ。漏れた穴が、自然に直れば別だが?」 アーチャーがブリッジに戻った。「トゥポル。…トリップ。」 そのまま作戦室に入る。 2人に話すアーチャー。「今後の任務は中止になった。」 タッカー:「何ですって?」 「提督の話では、ソヴァル大使はこう言ってるそうだ。人類が再び…ディープスペースに出られるのは 10年か、20年後。」 「20年?! …宇宙艦隊が納得しません。」 「そうかな。」 トゥポルに言うタッカー。「…何とか言ってくれよ!」 アーチャーに尋ねた。「それじゃミスを認めたことになるじゃないですか。」 アーチャー:「…3日以内にヴァルカン船が君とドクターを迎えにやってくる。少尉に、この座標に向かうよう…伝えてくれ。」 トゥポルにパッドを渡す。 「こんな処分に従うなんて信じられません。ようやくディープスペース探査に出られたというのに。」 「解散。」 「ですが…」 「下がれと言ったんだ! …2人とも。」 出ていくトゥポルとタッカー。 エンタープライズは惑星を離れ、ワープに入った。 |
※5: タイトル表示は "Shockwave" のみですが、このサイトでは便宜上わかりやすくするため "Shockwave, Part I" で全て統一しています ※6: tetrazine ※7: フォレスト提督 Admiral Forrest (ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong) ENT第23話 "Fallen Hero" 「追放された者への祈り」以来の登場。声:金尾哲夫 ※8: borocarbon |
食堂のメイウェザー。「ブラジルで、先生の職はまだあるの?」 サトウ:「なくてもきっと呼び戻されると思うわ? 語学の天才よ? …あなたはどう?」 「…エンタープライズで過ごした後じゃ、輸送船で働くのは気乗りしないな?」 「船長に抜擢されても? あなたは最も有名な宇宙ブーマー※9よ?」 「…悪名高いになるかも。タッカー少佐の話じゃ、地球に戻ったらただトラブルを起こしに行ってきたと思われるって。」 「だったらみんなに真実を知らせてあげなきゃ。私の前でアーチャー船長の悪口を言う人がいたら言い返してやる。何語でだってね。」 うなずくメイウェザー。 ポートスがいる自室で、水球のボールを投げているアーチャー。 ドアチャイムが鳴る。「入れ!」 水球の映像が流れている。 入ってきたトゥポルに尋ねるアーチャー。「朝まで待てないほど緊急なのか。」 トゥポル:「…お邪魔でしたら、出直します。」 「いや、すまない。」 アーチャーは映像を切った。「どうした。」 「リード大尉のチームが、シャトルポッド1 の船体腹部に未確認の電磁サインを発見したんです。」 パッドを渡すトゥポル。 「それがどうした。」 ボールをトゥポルに投げるアーチャー。 「船長が興味を示されるのではと。」 トゥポルは投げ返す。 「何に。大尉も甘いな。宇宙艦隊がこれを見て謝罪し、任務続行を許すか? ご苦労だったと伝えてくれ。」 アーチャーはパッドを返した。 「…その感情は、人間の『自分を哀れむ』という感情ですか?」 「わかったようなこと言うな。」 「…すみません。」 「…自分だけ哀れんでいられたらどんなに楽か。みんなにすまないという気持ちで一杯だ。艦隊のメンバー全員に対して。彼らの未来は、私がこの任務に成功するか否かに懸かっていた。」 「…今回の事件で、エンタープライズの責任がはっきりすれば、ヴァルカン最高司令部がこれを利用してくるのは予期してました。」 「何が言いたい。」 「船長にはヴァルカンの勧告に異議を唱える責任があります。」 「宇宙艦隊はその勧告を、百パーセント受け入れたんだぞ?」 「でしたら艦隊を説得する責任があります。」 「なぜ私にそんなことを。」 「…船長はこれまで賛成しかねる決断も下してきましたが、クルー全員が納得するような決断も、数多くありました。…ヴァルカン政府は私が説得しますから、船長は艦隊の説得を。」 「…トゥポル。…こんなこと初めてかもしれないな。人間がヴァルカン人に励まされるなんて。」 「では明朝。」 出ていくトゥポル。 タッカーが容器に触れようとすると、動物が反応した。 フロックス:「触らない方がいいですよ? 大変ありがたいんですが、荷造りは私に任せていただいた方がよろしいでしょう。」 「今回のことでドクターはもっと落ち込んでるかと思った。」 「ええ、まあねえ? 任務はもう少し続くと思っていましたが、こうした冒険の機会は何も今回が最後じゃありません。」 「そう思えたらな。」 「人間は本来楽天的なのに、ずいぶん悲観的ですねえ。探査のチャンスはいつでも、銀河に待ち受けています。」 「それが問題だ。宇宙艦隊の未来には、銀河なんてない。今後 10年間はね。」 「おお、そうでしょうか。」 「そうなんだよ! ドクターだって、ヴァルカンをよく知ってるだろ。エンタープライズは尻尾を巻いてすごすご地球に戻るんだ。ソヴァルの大手柄になる! 大使は派手派手しい勲章を授与されて、やがてヴァルカン人の隠居場みたいな場所に送られるんだ。」 「フフン。ソヴァル大使の勤務記録には、立派な業績もありますよ?」 「ドクターは人の長所を見つける天才だな! いいですか? 俺にはそう言うところが信じられない! こっちの頭がおかしくなりそうだよ!」 「フフン、そのズケズケした物言いが懐かしくなるでしょうな?」 「もう失礼するよ。」 下着姿のアーチャー。「さあ、ポートス。…寝る時間だ。」 横になり、ライトを消す。 真っ暗になった。「ポートス、おいで。…どうしたんだあ? まだ眠くな…」 ライトを再びつけると、辺りの様子が変わっていた。 上半身裸のアーチャーは立ち上がり、カーテンを開けた。 窓の外にはビルが建ち並び、シャトルが行き交っている。 アーチャー:「ポートス。」 床に座っていた。「何が起こったんだ。」 コンピューターに反応がある。応えるアーチャー。「はい。」 タッカーの声だ。『夜分遅く失礼します。点検ポッド※10が今夜、分解検査を受けることになりました。昼までかかりそうなんですよ。ですから、ゆっくりお休み下さい。』 声を揃えるアーチャー。「お休み下さい。朝食は…スペースドックのカフェに 9時半でどうだ?」 タッカー:『心が読めるんですか? 今そう言おうとしてました。』 「では、明日。」 通信を終えるアーチャー。 部屋を見渡す。「この 10ヶ月が夢だったなどと言われても…信じないぞ。」 アーチャーは通信コンソールに触れた。 女性※11が映し出される。『こちら IME ですが。』 アーチャー:「ジョナサン・アーチャー、大佐だ。宇宙艦隊公認番号、アルファ 6-4…」 『存じ上げています。何か御用ですか?』 「種族間医療交換計画に、デノビラ人のドクターはいるか。」 『…はい。ドクター・フロックスがここサンフランシスコの艦隊医療部に配属されています。連絡するよう手配しますか?』 「…いや、いいんだ。ありがとう。」 通信を終えるアーチャー。「私はクラングが運び込まれるまで、ドクターの存在すら知らなかった。そしてあの日の前日、夜遅く…トリップから連絡が入ったんだ。」 いきなり声が聞こえた。「夢ではありません。」 いつの間にか後ろに立っていた。 アーチャー:「ダニエルス※12。」 ダニエルス:「混乱させたことは申し訳なかったが、ほかに方法がなかったので。」 「君は殺されたはずじゃあ。あのシリックに。」 「確かに。そうとも言えます。お話があります。ほかの人に知られては絶対まずいんです。私があなたをここに連れてきたことをね。」 「本当に、君が私をここに…連れてきたのか? 10ヶ月前の世界に。…じゃ 10ヶ月前の私はどこなんだ。どこにいる。」 「ここです。」 「…じゃあ、エンタープライズに乗っているのは誰なんだ。」 「それは未来の出来事です。」 「そういう冗談はやめてくれ。」 「フン、何度こういう会話を交わしたか。いつも同じ会話になる。」 「はっきり答えてくれ!」 「…質問によります。」 「わかった。これは、どうだ? なぜ私はここにいる。…君は時間の流れを守るべき人間だろ? いじっていいのか。」 「もうとっくに、『いじられて』います。船長、パラーガ・コロニーの爆発は起こるべきではなかった。」 「もちろんさ、事故だからな。」 「そういう意味じゃありません。あの事件は、歴史に残っていない。何者かが時間協定を破ったんです。あなたの任務の成功を阻止するためにね。」 「爆発はエンタープライズのせいじゃなかったというのか?」 「時間冷戦のことを覚えていますか?」 「忘れられるわけがない。」 「私の話をよく聞いて。時間がないんです。」 エンタープライズ。 制服を着ながら連絡するアーチャー。「上級士官は全員 15分以内に、司令室に集合。リード大尉、至急私の部屋に来てくれ。」 司令室に集まったクルー。 リードもやってくる。「電磁サインを感知したのは、このせいでした。でもこの装置は全く見えなかったんですよ? なぜフェイズ識別器※13で見つけられるとわかったんですか。」 小さな装置を渡す。 アーチャー:「…いずれこれがプラズマを発生させるために取り付けられたことがわかるだろう。すぐチームを招集しろ。ポジトロンを使った量子ビーコン※14を 2本造り、200ギガワットの出力をもたせるんだ。」 タッカー:「ポジトロンで?」 「いいから始めろ。追って設計図を渡す。しばらく通信をわざと故障させる必要がある。頼んだぞ。」 サトウ:「了解。」 「兵器室を完全非常態勢に。船を反転させろ、トラヴィス。これからパラーガのコロニーに戻る。…さっさとやれ!」 タッカー:「船長。」 「あの爆発は…我々のせいじゃない。」 ため息をつくタッカー。 |
※9: 今までは「ブーム世代」という訳でした ※10: inspection pod ENT "Broken Bow, Part I" ではオービタル6 (Orbital 6) という名前が付いていた小型船。種別名は初言及。なぜか後では「検査ポッド」と訳されています ※11: 受付係 Receptionist (ステファニー・アーブ Stephanie Erb TNG第129話 "Man of the People" 「生命リンクテレパシー」のリーヴァ (Liva) 役) 声:山口真弓 ※12: Daniels (Matt Winston) ENT第11話 "Cold Front" 「時を見つめる男」以来の登場。声:津田英三 ※13: phase discriminator TNG第126話 "Time's Arrow, Part I" 「タイム・スリップ・エイリアン(前編)」など ※14: quantum beacon |
設計図を説明するアーチャー。「この分散曲線を見てくれ、ここから、ここ。エミッターアルゴリズムから、サブアセンブリ体制を分離させなきゃならん。」 タッカー:「あの…ちょっと待って下さい。アセンブリをエミッターから独立させるっていうんですか?」 「そうだ!」 「不可能ですよ。」 「ポジトロン伝導体の間に、安定した流れを発生させれば大丈夫。あとは第3次波動関数を正規化すればいいんだ。」 「お言葉を返すようですが、これは私が学んできた量子工学のレベルを遥かに超えています。なぜ船長がわかるんです。」 「ダニエルスを覚えてるか。」 「ええ。例のシリックに蒸発させられた男でしょ。」 「その彼が、豊かな情報をもたらしてくれた。2時間、話を聞いた。」 「エンタープライズで?」 「そうじゃないが。後で詳しく説明する。今はビーコン造りに専念してくれ。」 「…わかりました。」 部品を見ているトゥポル。 アーチャー:「回路構成が、我々の技術と互換性がない。接続機が必要だ。」 サトウ:「何のために?」 「後で、スリバンのディスクを再生してもらいたいんだ。君なら中身を解読することができるだろう。だがその前に、データにアクセスする方法を見つけなければ。」 トゥポル:「ダニエルスが、これがスリバンの技術だと言ったんですか。」 「彼の話を全てチェックしてみたが、疑う理由は見あたらなかった。」 サトウ:「全力を尽くします。」 トゥポル:「船長! …こちらに向かっていたヴァルカン船は、我々のコース変更に気づいているはずです。」 アーチャー:「呼びかけはあったのか。」 サトウ:「わかりません。通信は故障中ですから。」 微笑み、ターボリフトに乗るアーチャー。 廊下を歩くリード。「なぜダニエルスの部屋にそれがあると?」 アーチャー:「彼が消える前に持ち出す余裕があったとは思えない。」 「はあ…残ってたとして、言うとおりの情報が入っていたら艦隊にとってすごい収穫だ。」 「ダニエルスと約束したんだ。我々が頂くのはスリバン・ステルス船※15の図面だけ。それだけだ。」 「残念。彼の言うとおり、ステルス船を探すとして、スリバンが追ってこないとなぜわかるんです。」 ロックの解除コードを入力するリード。 「昔の映画と同じだよ。『台本になかった』。」 ロックが外された。 暗い部屋に入る。 ケースを取り出すアーチャー。 中に装置が入っていた。「今のところダニエルスの言うとおりだ。」 それを起動させると、空中に情報が表示された。 リード:「すごい。見て下さい。クリンゴン船※16の設計図がこんなに詳しく出てる。」 アーチャー:「目的はスリバンのステルス船だけだ。」 次々と情報を表示させる。 「あった。これですよ。」 記録するリード。 機関室に入るアーチャー。「トリップ。」 タッカーはビーコンを造っている。「食べたこともない料理を注文されたシェフの気分です。」 アーチャー:「指示通りか?」 「忠実に。」 トゥポルの通信が入る。『ブリッジよりアーチャー船長。』 アーチャー:「何だ。」 『コロニーに接近しています。』 「2.5光年先の連星系を探してコースをセットするよう、メイウェザー少尉に伝えてくれ。」 『了解。』 「早速グラップラーに取り付けよう。」 エンタープライズは連星へ向かう。 アーチャー:「小さい方に向かってくれ。第2惑星の内側の衛星に。ブリッジより兵器室。」 作業中のリード。「こちら、リード。」 アーチャー:『ターゲットポイントは全て決定したか。』 「はい。」 『待機を。』 魚雷が準備される。 衛星へ近づくエンタープライズ。 アーチャー:「出発ベイで待機してくれ。上手くいけばすぐ出発だ。」 向かうタッカーとトゥポル。 アーチャー:「ビーコンを出せ。」 量子ビーコンを取り付けた、グラップラーが船体から出てくる。 アーチャー:「スクリーン変更。この座標に設定。最大に拡大。」 衛星の映像が切り替わり、拡大される。 アーチャー:「ビーコン作動。」 すると、隠れていた船やドックの位置が判明した。 アーチャー:「スリバン・ステルス船に直行。」 サトウ:「敵のセンサー領域内に入ります。」 「こっちが見えても、自分たちの船が丸見えとは思いもよらないはず。そのまま真っ直ぐ進んでくれ、トラヴィス。」 連絡するアーチャー。「マルコム。」 兵器室のリード。「もう少し接近を。」 ゆっくりと衛星に近づくエンタープライズ。 映像も拡大される。 サトウ:「武器を装填しています!」 アーチャー:「大尉、今だ!」 操作するリード。 2門のフェイズ砲が次々に発射され、スリバン船を攻撃する。 姿を現した。 戦術クルー※17:「遮蔽装置、停止!」 リード:「4つの兵器庫も全てダウン。」 「両エンジン無力化。」 「よーし。ここからが技ありだ。」 魚雷が発射される。プログラムされた弾道通りに飛び、ステルス船の腹部に命中した。 シャトルポッドに乗り込むアーチャー。 リード:『リードよりシャトルポッド2。』 アーチャー:「アーチャーだ。」 トゥポルにフェイズ銃を渡す。 『後はよろしく。幸運を!』 「最後の攻撃で下位デッキは孤立しているはずだ。ダニエルスが正しければ、倒すべきスリバン人は 20人以下のはず。」 タッカー:「楽勝だ。」 発進するシャトルポッド。 ステルス船の下部へ向かい、ドッキングする。 スリバン船内へ入る 3人。 パネルをスキャナーで調べるアーチャー。 タッカー:「3秒後に爆発させます。」 手にスタン爆弾※18を持っている。 ドアが開けられると同時に、通路に放り投げた。 爆発し、天井に潜んでいたスリバンたちが落ちてくる。 進むアーチャー。 トゥポルが道を指示する。 スリバンが攻撃してきた。応戦する。 兵器室でスリバン船をモニターするリード。3人の生体反応が出ている。「あと 10メートルですよ…。」 通路を進む 3人。 アーチャー:「行け!」 広い部屋に入った。 また通路に爆弾を放り投げるタッカー。アーチャーは 2階へ上る。 トゥポル:「どれです。」 コンピューターを使うアーチャー。「それだ!」 1階へ下りてコンソールを操作し、中から数枚のディスクを取り出した。「行くぞ。」 スリバンが集まっている。天井を伝う者も。 調べるトゥポル。「船長。囲まれました。」 コミュニケーターを使うアーチャー。「アーチャーよりリード。」 リード:『どうぞ。』 「援護を頼む。」 応えるリード。「お任せを。」 3人に近づくスリバンの生体反応を見ている。「伏せてて下さい。」 コンピューターを操作した。 フェイズ銃がスリバン船に命中する。 通路の壁が崩れ、落ちるスリバンたち。 命じるアーチャー。「行け!」 エアロックに戻ってきた。スリバンが追いつく、間一髪のところでドアを閉める。 床下に入る 3人。 シャトルポッドのハッチを閉めるアーチャー。 エアロックに入ったスリバンが追いかける。パネルを操作した。 シャトル内に警告音が鳴る。 アーチャー:「どうしたんだ。」 タッカー:「ドッキングクランプを切り離せません。」 上からドンという音が響いた。 フェイズ銃を構えるトゥポル。銃声も聞こえてくる。 アーチャー:「スラスターに点火しろ。」 揺れるシャトル。「フルパワーだ!」 ポッドは無理矢理発進し、クランプを壊した。中に入っていたスリバンが宇宙空間に落ちていく。 スリバン船を離れるシャトルポッド。 アーチャー:「アーチャーよりメイウェザー。」 メイウェザー:『やりましたね。』 「コースを、ヴァルカン船に戻してくれ。戻り次第ワープ4 で出発だ。」 『了解。』 ため息をつき、スリバンのディスクを見つめるアーチャー。 |
※15: Suliban Stealth Cruiser ※16: 原語では「6種類のクリンゴン船」。表示されるのはENT第14話 "Sleeping Dogs" 「名誉を生きる者」で登場したクリンゴン・ラプターのようです。その他 NX級を始め、ディファイアント、イントレピッド、ノヴァ、さらにヴァルカンのスラクと思われる各クラスの図も表示されます ※17: Tactical Crewman (David Lewis Hays) 声:福田信昭 ※18: stun grenade ENT第6話 "Terra Nova" 「植民星テラ・ノヴァの謎」で言及されましたが、実際に使用されたのは初めて。訳出されていません |
エンタープライズ。 トゥポル:「3枚のディスクを同時に動かすということがわかりました。接続機は機能しています。」 アーチャー:「ホシ。」 サトウ:「爆発時、ステルス船は確かにパラーガ・コロニーの軌道上に存在しました。我々の間近で監視していたんです。エンタープライズのコースと高度、船体温度までたどったセンサー記録が残っていました。」 エンタープライズの写真が次々に映し出される。 アーチャー:「こんなに接近されていたのか。」 トゥポル:「そんなものではありません。」 コンピューターを操作すると、シャトルポッド発進時の様子になった。 そして、半透明のスリバン・セルシップがシャトルに近づいていく。 サトウ:「遮蔽装置ってほんとに便利ですね?」 セルシップがシャトルの腹部にドッキングし、離れていった。 トゥポル:「シャトルポッドにドッキングしていた時間はほぼ 2分。」 小型装置を渡すアーチャー。「これを取り付けて消えるには、十分だ。よくやった。続けてくれ。フォレスト提督を。」 通信相手のフォレスト。『決定的な証拠のようだな。どこで手に入れた。』 アーチャー:「スリバンのステルス船から奪い取った 3枚のディスクの中にです。」 『スリバン船のことはどうやって知った。それにどうやって、ステルス船を探し当てたんだ。』 「上の方に友人がいまして。」 『実に面白い報告が聞けそうだなあ?』 笑うアーチャー。 フォレスト:『できるだけ早く、ヴァルカン船と合流してくれ。成果は、伝えておこう。君にはとても感謝している、ジョナサン。今回の成果を考えると、旅を終わらせたくない。』 アーチャー:「我々を信じて下さって感謝します。」 うなずくフォレスト。 アーチャー:「以上。」 スリバン螺旋艦。 シルエット姿の、未来の人物※19に話しているシリック※20。「奴らはステルス船に乗り込んできたんです。ディスクの正確なありかも知っていました。」 未来の人物:『協力者がいるのだろう。』 「私にお任せを。エンタープライズを追いかけて破壊します。」 『いや、私の前にアーチャーを連れてこい。エンタープライズは放っておくんだ。』 「ですがディスクを取り戻さなければ…」 『アーチャーだ。シリック、お前はまた失敗して痛い目に遭いたいのか。』 無言になるシリック。 説明するアーチャー。「10ヶ月前だった。彼に 10ヶ月前に引き戻されたんだ。それも 10ヶ月間の記憶をもったままだぞ?」 トゥポル:「前にもお話ししましたが、ヴァルカン科学理事会はタイムトラベルは不可能だと結論づけました。」 「だったら今回のことをどう説明する。昨日私がどうやってスリバン船の正確な位置を知ったのか教えてくれないか。なぜ、突然ステルス船を見通すための量子ビーコンを造る能力を手に入れたか、それでどうやってあの 3枚のディスクを見つけたのかも教えてくれ。」 「ご質問は理解できますが…亡くなっているクルーによって、10ヶ月前の過去に引き戻され、情報を手に入れたと結論づけてしまうのは、論理的じゃありません。」 「では違う説明をしてくれよ。」 「できません。」 「結論は一つだ。検査ポッドに関する、トリップからの呼び出し。あれはクラングが発見された前日に受けた呼び出しと一言一句同じだった。」 「夢だったのでは?」 「…トゥポル。私もこんなことはあり得ないと思っていた。だが…私は過去に戻った。君にも信じてもらいたい。」 「なぜです。」 「この問題を、科学士官なしで全て理解するのは困難だからだ。私は、君を信頼し、頼りにしている。君は私が自分を哀れむのを止めてくれた。妄想に囚われたイカレ野郎と責めた。」 「…責めたつもりなど、全くありません。」 リードの通信。『ブリッジより船長。』 アーチャー:「…何だ。」 『エンジンの調子がおかしいんです。至急ブリッジまで御足労願います。』 作戦室を出るアーチャー。 ブリッジに入る。 リード:「タッカー少佐も呼んでおきましたので、ご了承を。」 アーチャー:「どうしたんだ。」 「ワープフィールドを一定に保てません。」 艦長席で調べるアーチャー。「異常なさそうだが?」 リード:「それが、一瞬は安定するんですが、わけもなく突然、調整が微妙にずれるんです。」 タッカーもやってきた。「私のエンジンに何をしたんだ?」 トゥポル:「自動安定機が正しく機能していません。」 「コンピューターの診断テストを行ってから 10分も経ってない。」 調べるタッカー。「問題ない。」 リード:「異常ですよ。この 1時間で、ワープフィールドを何度再調整したことか。」 アーチャー:「……魚雷の準備を。…攻撃に備えるんだ。…ビーコンを出せ、トラヴィス。画面を変更。後方を映してくれ。」 そこには、遮蔽している多数のスリバン・セルシップが見えた。 アーチャー:「ゆっくり回転させろ。」 船体の下部にも、同様に集まっている。 タッカー:「目に見えないハチの大群に囲まれてるようだ。」 アーチャー:「フェイズ砲を装填。」 サトウ:「呼びかけです。」 「……つないでくれ。」 シリックが映る。『武器は使わない方が身のためだ、ジョナサン。遮蔽を解除すれば理由はわかるだろう。』 通信を終えた。 全ての船が遮蔽を解いた。 アーチャー:「マルコム。」 リード:「全て高出力の粒子兵器を装備してます。」 「何隻潰せる。」 「やられる前に? わずかです。」 うなずくアーチャー。再びシリックが映る。『船を 1隻右舷ドッキングポートに向かわせた。直ちに船長に乗ってもらいたい。』 アーチャー:「…私に何の用だ。」 『あと 5分はある。要求に応じない場合はエンタープライズ攻撃の許可を出す。』 「どっちにしろ、我々を破壊するつもりなんだろう?」 『約束は守ろう。船長、残された時間は後 4分半しかないぞ。』 通信を終えるシリック。 アーチャーは、トゥポルに言った。「……今から君が指揮官だ。できるだけ現在のコースと速度を維持してくれ。今後何が起こるかわからない。だが常識に囚われるな。…ヴァルカン科学理事会が不可能だという結論を出したときは特に、気をつけて欲しい。」 トゥポル:「…心がけます。」 うなずくアーチャー。 タッカー:「どうかしてますよ、船長。何をされるかわからない…」 アーチャー:「今はトゥポルが指揮官だ。彼女の力になってくれ。…協力し合うんだ。」 サトウに言う。「…ポートスの世話を頼んだぞ。言い忘れた。チーズはやるな。」 ターボリフトに入り、後ろ向きのままドアを閉めた。 到着したターボリフトから降りるアーチャー。 ドアが開き、そちらを向く。 戸惑うアーチャー。足を踏み出す。 その先には、崩れた建物のような残骸が広がっていた。 呼びかけ音が鳴り、トゥポルはうなずいた。 シリック:『船長は非常に危険なゲームをやっているぞ。』 トゥポル:「ゲーム?」 『残り時間は後 30秒。これは遊びじゃないんだ。』 通信を切らせるトゥポル。 タッカー:「ターボリフトは Eデッキです。空だ。」 トゥポル:「船長は?」 「生体反応を感知できない。スリバン船に乗ったんじゃ?」 トゥポルは再び回線をつながせた。「アーチャー船長はもうエンタープライズにはいません。さっきやってきたスリバン船に乗っているはずです。」 シリック:『船長がこれほど愚かだったとは。全員の命を救えたのに。馬鹿な奴だ。』 通信を終えた。 メイウェザー:「スリバン船が戻っていきます。」 リード:「ワープコアが狙われてる。…敵のターゲットはワープコアです。」 残骸の中を歩くアーチャー。既にターボリフトのドアは見えない。 割れた窓の外にあったのは、崩壊したビル群だった。 ダニエルス:「10分前まではそこに美しい景色が広がっていました。」 後ろに立っていた。 アーチャー:「…ここはどこだ。」 変わった服を着ているダニエルスは、今までと違って落ち着かない。「ほんの、30分前…私はあの部屋で、朝食を摂っていたんです。そしてあなたを連れてこいと指示を受けた。あなたがスリバン船に乗ったら、時間の流れが危ないと言われたんです。その指示は間違いだった。」 アーチャー:「ここはどこなんだ。」 「31世紀の未来ですよ、そういうことです。」 「君は、スリバンは我々を追ってこない、安全にヴァルカン船にたどり着けると言った。」 「確かにそういう展開になるはずだったんです。」 「じゃこれは、偶然の出来事だと言うのか。偶発的に起きたとは思えないな。」 「ええ。ずいぶん前に起きたのかもしれない。」 「私がここに来たのが原因なら、過去に戻してくれ。シリックに賭けてみるしかない。」 「…わかっていないようだ。我々の装置全て、時間の入り口も…破壊されたんです。何もかもがね。過去にはもう戻れません。」 アーチャーは無言で外を見つめた。 2人がいる建物を含め、周りのもの全てが朽ちていた。 ※19: ヒューマノイドの姿 Humanoid Figure | (ジェイムズ・ホラン James Horan) ENT "Cold Front" 以来の登場。声:森田順平 ※20: Silik (ジョン・フレック John Fleck) ENT "Cold Front" 以来の登場。声:楠見尚己 |
To Be Continued...
感想
前編となる第1シーズン最終話は、やはり当初から続く「時間冷戦」ストーリーをもってきました。パイロット版はもちろん、謎めいた展開だった第11話「時を見つめる男」も見ておかないといけない内容になっています。最初の方の「悩むアーチャー」を除いて、ほとんどのシーンが説明不足かとも思えるほどの小気味いいスピード感にあふれています。 タイムラインを修正しようとアーチャーを時間移動させたことが、逆に未来の崩壊につながってしまう…。ダニエルスが所属している何らかの「組織」も、決して完璧ではないようです。何度も感想で書いているように、時間ネタは決して嫌いではないので、実質的に ENT 初の「後編」となる第2シーズン・プレミアの出来にも期待したいところです。 ENT は他シリーズと違って、驚くほど短い本国との時間差で放送されていますので、新着エピソードはこれで (恐らくは一旦の) 終了となります。毎週のエピソードガイドは FBS 先行時代を含めて約3年連続 (その前は LD先行なので間がありました) で作ってきました。もちろん新作は無理ですが、何らかの形で続けたいとは思っています。 |
第25話 "Two Days and Two Nights" 「楽園での出来事」 | 第27話 "Shockwave, Part II" 「暗黒からの衝撃波(後編)」 |