エンタープライズ エピソードガイド
第21話「テンダーの虜囚」
Detained
イントロダクション
天井から光が差し込む、暗い部屋。 横になっていたメイウェザーは目を覚ました。うめく。「船長。船長。」 隣のアーチャーは、まだ起きない。 立ち上がったメイウェザーは、入り口のドアを開けた。 声が聞こえてくる。 歩いていたのはスリバンたちだった。 |
本編
スリバンが歩くのを見ているメイウェザー。後をつけていく。 スリバンたちが集まっている部屋がある。 子供もいる。何かを運んでいる者たちも。 目を覚ましたアーチャー。「…人数は?」 メイウェザー:「30人はいました。かなり広い施設です。もっといるかもしれません。」 「シャトルは、誰に攻撃されたんだ。」 「確かめる余裕はありませんでした。」 立ち上がるアーチャー。「…衛星の向こう側から出ていたエネルギーは、螺旋艦※1からのようだった。」 ドアを開けてみるが、また閉めた。 天井の窓に近づいたアーチャーは合図し、足を持ち上げてメイウェザーに外を見せる。 メイウェザー:「塀が見えます。高さは約5メートル。建物全体を取り囲んでいるようです。あそこに見えるのは、監視塔のようですがよくわかりません。」 アーチャー:「人はいるか。」 「……いません。」 メイウェザーを降ろすアーチャー。「もう一度、偵察だ。」 歩いていたスリバン女性※2は、アーチャーたちを見て足を止めた。「新入りのようねえ。」 アーチャー:「…なぜ拘束した。」 「こっちだって知りたいわよ。」 突然、ブザーが鳴り響いた。 運んでいた物を床に降ろす女性。直立姿勢をとる。 他のスリバンも、それぞれの部屋から出てきた。廊下に並ぶ。 スリバンが並んでいる区画へ、別種族の者たちがやってきた。 先頭を歩くクレヴ少佐※3。 一人のスリバンが物を落としてしまった。音が響く。 それを拾おうとしたスリバンを、クレヴは持っていた棒で攻撃した。 クレヴはアーチャーたちのところに来た。「ついてこい。」 従う 2人。 部屋で待っていた男は振り返った。 中に入るアーチャーとメイウェザー。 命じる男。「ご苦労、少佐。」 クレヴは出ていく。「おかけ下さい。」 従わない 2人。 男:「戸惑われるのもごもっとも、大変な一日だったでしょうねえ?」 アーチャー:「ええ、かなり。」 「もっと早くお会いしたかったが、緊急の仕事で遅くなって申し訳なかった。宇宙船の船長とは珍しい。」 手元の装置を見る男。「『ジョナサン・アーチャー』。」 「そうですが。」 「そちら、『トラヴィス・メイウェザー※4』だね?」 メイウェザー:「そういうあなたは。」 「グラット大佐※5だ。」 アーチャー:「あなたがここの指揮官だな?」 グラット:「悪いが、シャトルを勝手に調べさせてもらいましたよ。そして地球という星から来たこと、エンタープライズ※6のクルーであることはわかりましたが、我々の軍事領域で一体何をしていたんです。」 「……軍事領域?」 「第2衛星※7の軌道に侵入したのは御存じだったはず。」 「確かに、珍しいエネルギーを感知しましたが、どこから出ていたのかわかりませんでした。好奇心で、接近しただけです。」 「その好奇心が命取りにもなる。幸い警備艇がシャトルを破壊しなかったからよかったものの…」 「『立ち入り禁止』のサインを出すべきだったかもしれませんねえ。」 「伝えておきましょう?」 メイウェザー:「ここはどこです。」 「拘留施設ですよ。捕捉地点から、何光年も離れています。」 「領域を侵すと、いきなりこういう施設に拘束するわけですか?」 「我々は、どんなヒューマノイドにも変身可能な種と戦争中であり、敵かどうか…確かめる必要があった。」 「スリバンだとお疑いなら御安心を。違います。」 「わかってます。DNA 検査をしました。カバル※8の存在を御存じか?」 アーチャー:「…不本意だが。」 椅子に座る。 「では奴らの遺伝強化も御存じのはず。その危険性も。」 「経験済みです。」 「大勢の犠牲者が、出ていないといいが。」 「何とか、無事です。今のところ。早速、エンタープライズに戻りたい。シャトルに御案内いただければ、出ていきます。」 「残念ながら、その権限は私にはありません。厳しい規則がありましてねえ? テンダー・プライム※9の判事と、会っていただかないと。だが審問はすぐ終わります。今回の件は単なる誤解だったと、私が説明しましょう。」 「審問はいつですか。」 「3日以内には輸送船が来ます。」 メイウェザー:「3日?!」 「もっと快適な宿泊施設を御提供したいが…非常に混み合っている状態して、しばらく御辛抱いただきたい。ほかの連中とは関わらないことです。スリバン人に何かされたら、警備にお申し付け下さい。」 アーチャー:「自分たちの無事を、クルーに伝えたい。」 「それは許可できません。」 「規則ですか?」 うなずくグラット。「私が連絡して、事情を説明しておきましょう。」 呼び出す。クレヴが戻ってきた。 グラット:「お部屋に御案内して、ちゃんとした食事を差し上げろ。…こんな状況でお会いすることになって残念です。」 アーチャー:「…そうですね。」 夜の拘留施設。 器に入った食事をかき混ぜるメイウェザー。「これがちゃんとした食事? …タッカー少佐のおみやげになるかな。密閉材に使えそうだ。」 アーチャー:「少し眠ったらどうだ。見張りは私がやる。」 メイウェザーは、容器に残っていた水をカップに注ぐ。「これじゃ足りないよ。」 アーチャー:「取ってこよう。」 スリバンが集まる区画へ来たアーチャー。 アーチャーを見る人々。 水が出るパイプから、次々とスリバンがカップにくんでいく。 割り込まれたアーチャー。「順番をちゃんと守れよ。」 無視するスリバン。 アーチャーは、その男と一緒に子供がいることに気づいた。 部屋に戻ろうとしたが、話しかける。「一体どういうつもりだ。」 スリバン:「何が。」 「こんな幼い子供をカバルにするとは。」 「何もわかってないな。」 「報酬に遺伝操作をしてもらえるんだろう? …その子は何をされた。」 またブザーが鳴った。 スリバン:「誰だか知らんが、我々を誤解してる。」 アーチャー:「そうかな?」 「私たちは遺伝的強化は受けてないし、カバルの一員でもない。」 「じゃなぜここにいるんだ。」 「…グラット大佐に聞いてないのか? 危険だからさ! スリバン人はみんな危険な存在なんだ。」 クレヴがやってきた。「こんな時間に何してる。」 スリバン:「…今、戻るところでした。」 「悪いな、ダニク※10。今週に入って 2度目だ。」 「クレヴ、頼むよ。」 「一晩の辛抱だ。」 アーチャー:「私のせいだ。私が彼を引き留めた。」 「部屋に戻れ。」 「どこに連れて行く。」 「独房だよ。お前も入りたくなかったら、言うとおりにしろ。」 ダニク:「子供を送り届けてくれ。朝には帰る。心配するな?」 頭にキスするダニク。 ダニクはアーチャーを見てから、クレヴに連れて行かれた。 部屋に戻される子供のナーラ※11も、アーチャーをにらみつける。 |
※1: スリバン螺旋艦 Suliban Helix ENT第1・2話 "Broken Bow, Part I and II" 「夢への旅立ち(前)(後)」に登場 ※2: Woman (Wilda Taylor) 声:山口真弓 ※3: Major Klev (David Kagen) 声:池田勝 ※4: 吹き替えでは「トラヴィス少尉」と訳されています。それを言うなら「メイウェザー少尉」だと思うんですが… ※5: Colonel Grat (ディーン・ストックウェル Dean Stockwell アーチャー役スコット・バクラ主演のテレビドラマ「タイムマシーンにお願い」(スーパーチャンネルで放送歴あり) で、バクラ演じるサム・ベケット博士の相棒アルバート (アル) を演じました) 声:佐々木勝彦、DS9 スローン ※6: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 ※7: 吹き替えでは「第3衛星」 ※8: Cabal ENT "Broken Bow, Part II" より ※9: Tandar Prime ※10: Danik (デニス・クリストファー Dennis Christopher DS9第48話 "The Search, Part II" 「ドミニオンの野望(後編)」のボラス (Borath) 役) 声:野島昭生 ※11: Narra (Jessica D. Stone) 声:伊藤亜矢子 |
エンタープライズ。 トゥポル:「話をさせて下さい。」 グラット:『残念だが、規則でできません。何の心配もありません。2人の安全は保障され、快適な部屋で過ごしています。』 スクリーンに映っている。 タッカー:「元気な声だけでも聞かせてくれ。」 『残念だがそれもできません。』 トゥポル:「審問に立ち会えますか?」 『もちろん。』 「法的代理人は認められますか?」 『弁護士を選ぶ自由もあります。テンダー・プライムに到着したら、中央判事事務所※12に連絡をいただきたい。』 「座標をお知らせ下さい。」 作業するサトウ。 グラット:『早速、送信します。』 トゥポル:「…感謝します。」 『ではまた。』 通信は終わった。 リード:「ホシ?」 サトウ:「追跡できません。搬送波にスクランブルがかかっています。」 タッカー:「続けてくれ。」 トゥポル:「…ご不満のようね? 救助に行きますか?」 「できればそうしたい。」 「…これ以上テンダー人※13を刺激すべきではありません。」 「じゃあ、じっとしてろってのか?」 「審問は 3日後です。」 「有罪になったらどうする。禁固 30年の判決が出たら。」 「ありえません。…異文化と交流したいなら、彼らの法を尊重すべきです。アーチャー船長がいたら、同意してくれるでしょう。…お望みなら、ヴァルカン最高司令部に連絡を取って、仲裁人を送ってもらいますが?」 「ヴァルカンの弁護士? 電気椅子送りの方がマシだ。」 「…電気椅子?」 「もういいよ。」 操舵士に命じるトゥポル。「…コースをテンダー・プライムに。」 ワープに入るエンタープライズ。 拘留施設。 スリバンの子供が壁に絵を描いて楽しんでいる。 それを見ていたアーチャー。 ダニクたちがテーブルでゲームをしている。 近づくアーチャー。「この前はどうも。」 他のスリバンは無言で立ち去った。 アーチャー:「独房は快適とは言えんだろうな?」 ダニク:「夜になるとひどく冷える。遺伝的に強化されていたら楽だったろうなあ。…謝りに来たのなら結構。誤解だったんだから仕方ないさ。」 「知りたかったんだ。」 隣に座るアーチャー。「この収容所で、一体何が起きているのか。」 「…テンダー人と話をすればわかる。」 「グラット大佐と話したが、どうやら全てを話してくれたわけじゃないようだ。…よろしく。」 アーチャーは手を差し出す。「私はジョナサン・アーチャー。」 ダニクの手を握った。 ナーラが器を持ってきた。「どうぞ。」 メイウェザー:「もうお腹いっぱいだ。美味しかったよ。」 「テンダー人みたい。」 ダニク:「もういいから、友達と遊んでおいで? ちゃんと時間を守るんだぞ?」 「わかってる。」 部屋を出るナーラ。 見送るダニク。「私たちは犯罪者じゃないし、兵士でもない。スリバン人であることが罪なんです。」 アーチャー:「君たちの DNA を調べれば、遺伝的に強化されていないことがわかるはず。」 「彼らにとってはそんなことどうでもいいんだ。君だって私がカバルだと思ってた。…違うかい?」 「…そうだな?」 「ハ…連中には、見かけが全てなんだ。『スリバン人の意地の悪い笑いと、黄色く光る目に気をつけろ。夜になるとスリバン人が扉の隙間から滑り込み、皆殺しにされちゃうぞ。』 テンダー人の子供はこんな歌を唄って、娘をいじめるんだ。少なくとも、ここにいれば安全だ。」 メイウェザーにつぶやくアーチャー。「…まるで強制収容所だ。」 ダニク:「拘留施設…26※14。でもここはまだマシな方らしい。」 アーチャー:「なぜこんなことに。」 「8年前にカバルが攻撃を始めた。テンダー人はすぐに、領土内に住むスリバン人の忠誠心を、片っ端から疑い始めたんだ。…私たちは一斉に捕まり、彼らはそれを『移動』と呼んだ。移動は一時的なもので、身の安全のためだと言われてね。『カバルが崩壊した暁には、自由に家に戻っていい』とも。それを待ってる。ここにいるのは 89人だが、ほかの施設には大勢の同胞がいる。私たちは全員テンダー星域内の惑星に住む、一市民だった。ここの看守をやっている男と同郷だなんて、皮肉だと思わないか。クレヴ少佐さ。子供の頃はあいつの兄貴と、よく遊んだよ。」 メイウェザー:「スリバン政府は、一体何をしているんだ? 政府はこの事態を黙認してるのか?」 「政府が存在すればの話さ。…私たちの故郷は、300年前に人の住めない星になった。スリバン人の多くは放浪の民となり、その上一部はほかの文化に同化された。ハ、私の祖父は運悪く、定住先にテンダー・プライムを…選んでしまったんだ。」 ドアを叩く者がいる。「誰だ?」 スリバンが入り、アーチャーたちに気づいた。「こいつらは。」 ダニク:「心配ない。私が呼んだ。」 「…これが、今日届いた。」 受け取った紙を広げるダニク。 スリバン:「あんたら何もんだ。」 アーチャー:「我々は人間だ。」 「聞いたことがない。」 ダニク:「セイジン※15? 失礼だぞ? また駄目か。」 アーチャー:「悪い知らせか。」 「女房からだ。…移動の際に別れわかれになった。妻は、別の収容所にいる。移動願いが、また却下されたようだ。ここに移りたいと訴え続けているが、連中は耳を貸そうともしない。」 「可哀想に。」 ブザーが鳴り、室内の赤いランプが点滅する。 ダニク:「正午の点検だ。行儀良くしろ?」 身なりを整える。 アーチャー:「ご馳走になった。」 「いや、私の方こそ。」 出ていくアーチャーたち。 セイジン:「なぜ奴らを入れた!」 ダニク:「お前と話すのも飽きてきたからかな?」 「グラットの仲間かもしれないぞ。」 テンダー人による点検が行われている。 ナーラをどけるクレヴ。アーチャーに言う。「おい! グラット大佐がお呼びだ。」 ついていこうとしたメイウェザーを止めた。「お前はいい。」 向かうアーチャー。 尋ねるグラット。「夕べ外出禁止時間後に、スリバン人に会いに出かけたとか。」 アーチャー:「誤解があったもので。」 「私の助言をお忘れですか?」 「いえ? わかってます。だがどうにも気になって、好奇心を抑えられなくなった。…新しい生命体に出会うと、その種についていろいろ知りたくなる。ここにいるスリバン人のことも徐々にわかってきましたよ。」 「その探求心には感心しますが、そのうちトラブルに巻き込まれますよ? 自制して下さい。」 「気をつけます。…では? ほかにお話がないのなら失礼。」 立ち上がるアーチャー。 グラットも席を立った。「ええ…だが、質問したい。行ったことはありますか? 『オクラホマ』に。」 パッドを読む。「私もあなたに劣らず好奇心が強い方でねえ? あなたからカバルをよく知ってると聞いた後、諜報部と連絡を取ることにしたんです。そして興味深い話を耳にした。2人のスリバン人兵士が『オクラホマの、ブロークン・ボウ』という町の近くに不時着したという話ですよ。2人はクリンゴン人を追跡してた。スリバン人が、そこで何をしていたのか情報をおもちでは?」 「知りません。そのことなら、上官に聞いて…」 「あなたは詳細を御存じのはずだ。あなた方が、そのクリンゴン人を故郷に送り届けた。そうでしょう。…ライジェル10号星、立ち寄ってますねえ? こちらの情報によると、あなたはサリンというスリバン人女と会っている。覚えていますか? …これで思い出すかな? 彼女はスリバンの、レジスタンス組織のリーダーだったが、商業地域の撃ち合いでカバルに殺された。大勢の同胞があなたを目撃している。あなたは足を撃たれ、怪我を負った。この件も上官に聞かなきゃわかりませんか。」 「…目的は、何ですか。」 「情報が欲しい! カバルについて何を知ってる。どんな遺伝的強化を目にした。螺旋艦配備の指令は誰が出してるんだ。」 「なぜここにいるスリバン人に聞かないんですか。」 「あいつらは役立たずなんだ!」 「じゃなぜ拘束を。」 「それは別の話だ。」 「生き別れの家族もいる! ある男は何年も妻と離ればなれだ。」 「情報を提供しろ。」 「スリバン人の扱いは不当だ!」 「彼らの安全のための隔離だ!」 「そうですかあ?」 「…我々だって収容施設など造りたくなかったが、選択の余地はなかった。カバルが攻撃を開始したとき、我々テンダー人の間には大変な恐怖が広がり、暴力事件が起きた。1日で無実のスリバン人が 14人も殺された。早急に彼らを保護することにした。」 「…どこか遠くに、移動させればよかったんだ。」 「遠隔地は駄目だ。皮肉なことにスリバンがテンダーの領域を出ると、カバルは彼らを誘拐し、兵士に仕立てるんだ。ならここにいる方がいい。」 「それに異を唱えるスリバン人たちもいますよ?」 「カバルのリーダーに、シリックという男がいるだろ。奴は 3ヶ月前に、ボロサン※16の殉教者になりすましエンタープライズに侵入した。奴の目的は何だ。…時間冷戦について何か聞いてないか。質問に答えろ!」 無言のままのアーチャー。グラットはクレヴを呼び出した。「この件は予想以上に手間取りそうだな。明朝の輸送船に乗っていただけないようだ。次の船が到着するのは 60日後だ。」 グラットを見るアーチャー。連れて行かれる。 |
※12: Central Magistrate's Office ※13: Tandarans ※14: Detention Complex 26 ※15: Sajen (クリストファー・シー Christopher Shea DS9第126話 "Rocks and Shoals" 「洞窟の密約」などのヴォルタ人キーヴァン (Keevan)、VOY第114話 "Think Tank" 「頭脳集団クロスの陰謀」の Saowin、ENT第41話 "Cease Fire" 「戦場の絆」のテレヴ (Telev) 役) 声:沢木郁也、TNG 旅人など ※16: Borothan ENT第11話 "Cold Front" 「時を見つめる男」より。その際には種族名は言及されていませんでした |
スクリーンに映っているグラット。『審問は、延期されました。』 トゥポル:「理由は?」 『この件を担当する治安判事は、非常に複雑な裁判の最中でして、予想以上に手間取っています。』 タッカー:「後どれくらい待つんだ?」 『2、3日で済めばいいが。じきテンダー・プライムに到着するようなら、大使に手配しておきますので是非首都を御見学下さい。」 「観光に行くわけじゃないんだぞ。2人を返して欲しいだけだ。」 『できるだけのことはしています。今しばらくお待ち下さい。また、連絡します。』 画面は消えた。 リード:「搬送周波数を分離しました。わかるか。」 サトウ:「ただ今追跡中。方位 1-7-8、マーク 1-2。」 タッカー:「遠いか?」 リード:「5.2光年です。」 「…じっと待ってないでこっちから現地に乗り込んで、2人を奪回しよう。」 トゥポル:「…行きましょう。」 歩きながら話すアーチャー。「今まで出会ったほとんどの異星人は、交流に熱心でしたが…中には不幸な出会い方もありました。フン、スリバンとテンダーもそうだ。」 ダニク:「私はずっと彼らと共存してきた。多くのテンダー人は、親切です。」 「君自身は、ここに来るまで何をしていた。」 「私は工学研究所の、研究所長をしていました。クレラ地区※17にあります。見学に行くといい。審問が、上手くいけばの話だが。」 「当分、出られそうもないでしょうね。」 「グラットに知ってることを話せば、すぐに出してもらえる。」 「…無理強いは御免だ。君らに対する、彼らのやり方も気に入らない。」 無言になるダニク。 アーチャー:「…今までここから出ようとした者は?」 ダニク:「脱走ですか。…ああ 2年ほど前に 3人の同胞が、警備の鉄格子をこじ開けた。そして、ドッキングベイを目指しました。」 「ドッキングベイ?」 「ええ、ここから約100メートル※18の所にあって、没収されたスリバン船が保管されています。」 「…それで?」 「3人は船に近づいたものの、もう少しのところで全員殺されてしまった。…グラット大佐が、馬鹿げたでっち上げをした。」 周りの者に気を遣うダニク。「3人が、武装していたと。」 「外からの協力があれば成功していたかもしれない。…まもなくエンタープライズが、私と少尉を探しにやってくる。」 「……申し出は感謝するが…仲間の多くは危険を冒してまで、ここから逃げようとは思っていない。」 「確かめたのか? ……ドッキングベイには、何隻船がある。」 水を飲んでいたメイウェザーは、セイジンに近づいた。「手紙かい?」 セイジン:「…記録だよ。」 「ここでの出来事なら、きっとみんな知りたがるさ。」 「実際、読まれるかどうか。」 「じゃ、なぜ書いてる?」 「…俺に構うなよ。本心はわかってるさ。スリバンは化け物だろ? 俺がこの壁を駆け上がったり、顔を裏返しにしても、あんた驚きもしないだろ。…カバル。スリバン。お前には同じだろ。」 「それは違う!」 「フン…。」 去るセイジン。 夜の拘留施設 26。 紙に描いた、施設の地図を見るアーチャー。 その目の前に、コミュニケーターが転送されてきた。 微笑み、手にするアーチャー。「ずいぶん遅かったな。」 トゥポル:『無事ですか?』 「まあまあだ。」 『スリバンの生体反応を感知しましたが。』 ブリッジに流れるアーチャーの音声。『いいんだ。それよりこの周波数は安全だろうな。』 サトウ:「シグナルを三軸化しましたから、艦隊司令部のど真ん中でも見つかりません。」 『よーし。今どこだ。』 トゥポル:「軌道上です。気づかれるのも時間の問題でしょう。」 タッカー:「お二人をロックする準備ができています。指令を。受信次第転送します。」 メイウェザーも通信を聞いている。 アーチャー:「待ってくれ、トリップ。今戻るわけにはいかないんだ。大勢のスリバン人たちも囚われの身となっている。罪もないのに拘束されているんだ。何とか脱出の手助けをしたい。」 トゥポル:『船長?』 「君は、マンザナール※19を知っているかな?」 答えるトゥポル。「そのような惑星は知りません。」 アーチャー:『惑星じゃない。地球で、第二次世界大戦中に実在した強制収容所のことだよ。日系アメリカ人市民が、そこに収容されていた。何も悪いことしていないのに、同じことがここで起きている。』 「異文化に口出しはしないと決めたんじゃないですか?」 アーチャーは言った。「今回だけは例外にしようと思っている。わかってくれ。」 応じるトゥポル。「わかりました。」 さらに話すアーチャー。「この収容所を隅々まで知るスリバン人がいる。計画を進めているが、君たちの協力が不可欠だ。」 地図を見るアーチャー。「人手がいるなあ。粒子ビームを扱える者がいいだろう。」 セイジン:「収容所を出て 10メートルも行かずに撃たれるのが関の山さ。前みたいに。」 ダニク:「それにたとえ船にたどり着いて離陸できても、周辺に警備艇がいては逃げ切れない。」 アーチャー:「それはエンタープライズに任せろ。」 セイジン:「だが奇跡的脱出を成功させたとしても、その後どこへ行く。」 ダニク:「…テンダーの領域を出るのが先決だ。…その後は、ニブロン※20のどこかのコロニーに行ってもいい。知り合いがいるんだ。喜んで協力してくれるさ。」 「危険すぎる。」 メイウェザー:「じゃあこのまま一生監獄暮らしを続けるのか?」 「…知り合って 3日の連中を、ずいぶん信用しているんだな。こいつら反乱をそそのかすために送り込まれたのかもしれない。グラットが俺たちを殺す理由になる。」 アーチャー:「奴らの仲間じゃない。」 「娘のことを考えろ。娘まで危険にさらしていいのか!」 ダニク:「…出ると決めたんだ。」 「…俺は、協力はできない。これは、自殺行為だ。」 出ていくセイジン。 アーチャー:「ほかの人々は、のってくれるといいんだがね?」 地図を説明するダニク。「これがこの前話した壁だ。ドッキングベイから 40メートルしか離れてない。」 グラットのオフィス。 グラット:「…考え直してくれたかね、船長。…こちらは譲歩する用意がある。シリックについて、知ってることを話してもらおう。」 手を挙げるアーチャー。「確か、これぐらいの…背丈。骨張った体つきで、ひどい歯だ。」 グラット:「スリバン人のことを話したくないと言うなら、別な話をしていただこうか。夕べ我々はおかしなエネルギーを感知した。最初は自然発生的ノイズと思ったが、記録したものをよく調べてみると…君の部屋から出ていることがわかったんだ。」 「センサーをよく調べた方がいい。壊れてますよ。」 「いいや、100%正常だったよ。」 呼び出すグラット。 クレヴを先頭に、怪我をしたメイウェザーが連れてこられる。 メイウェザー:「申し訳ありません。」 コミュニケーターを見せるグラット。「メイウェザー少尉のポケットからこれを見つけたんだが、事情を説明してくれないんでねえ?」 グラットに飛びかかろうとしたアーチャーは、クレヴに攻撃された。 メイウェザー:「おい!」 グラット:「素直に吐けばいいものを! …独房に入れとけ。」 クレヴに連行されるアーチャーたち。 エンタープライズ。 地図を確認するタッカー。「東から低く入れば、侵入警報を避けられるだろう。」 トゥポル:「これはパルス砲です。」 タッカー:「よーし、最初に狙おう。」 「ブリッジより医療室。」 道具を使っているフロックス。「こちらフロックス。」 トゥポル:『現状は?』 「仕上げの段階です。ただいま鼻を修正中。」 タッカーを見たトゥポル。「…もう時間です。」 フロックス:『了解。』 サトウ:「アーチャー船長です。」 トゥポル:「つないで。…どうぞ、船長?」 グラットの声だ。『コースを外れてますよ? テンダー・プライムに向かってるはずでは? なぜここにいる。』 トゥポル:「アーチャー船長はどこです。」 『我々の法手続を回避しようなんてやめておいた方が身のためだな。これ以上惑星に近づいたら警備艇が火を吹きますよ?』 |
※17: Querella Province ※18: 吹き替えでは「数百メートル」 ※19: Manzanar 関連ページ ※20: Niburon |
セイジンはメイウェザーに近づいた。「…何があった。」 血をぬぐうメイウェザー。「…僕に構うなよ…。」 セイジン:「ダニクがアーチャー船長を探してた。知らないか。」 「…独房に入れられたよ。これでも奴らの仲間だと疑うのか? 君たちを助けようなどと思わなかったら、僕らはとっくの昔に出られてた。」 「誰も頼んでない!」 「なぜだ! 同じスリバン人じゃないからか? テンダー人とよく似ているからなのか? 確かに、最初にここに来たとき、スリバン人をつい偏見の目で見てしまったことは認める。だが今は違う! 君にもできるだろ。」 歩いていくメイウェザー。 エンタープライズは、惑星に近づく。 サトウ:「呼びかけです。大佐ですね。」 うなずくトゥポル。 グラット:『現在 2隻の警備艇がそちらに向かっている。』 トゥポル:「…我々は戦いに来たのではなく話し合いに来たのです。」 『1分以内に君の船は射程圏内に入る。』 「肉はお好きですか、大佐?」 『何?』 「シェフが肉を用意したので、大佐が菜食主義かどうか確認したかったもので。…是非ディナーに御招待したい。そうすればお互い理解も深まるでしょう。」 『45秒以内に軌道を出るんだ!』 「こんなことで、大佐が本気で我々の船を攻撃するはずはありません。大佐は優れた知性をおもちです。我々にも独自の文化があることをお見せするチャンスをいただきたいのです。…ただ今こちらから地球の歴史データベースを、宇宙艦隊憲章と共に送ってます。」 操作するサトウ。 トゥポル:「そこには人類と異星人の交流が記録されています。それでも真意をお疑いでしたら、送ったデータは破棄して下さい。」 手元のコンピューターを見るグラット。 矢継ぎ早に話すトゥポル。「すぐにヴァルカンのデータベースを送信して。…ヴァルカン人とテンダー人には、多くの共通点があると気づかれるでしょう。」 グラットの映像が乱れてきた。『周波数を妨害してるな! 今すぐ送信を打ち切れ!』 トゥポル:「でもお返事が。ディナーには…」 『最後の警告だ、すぐに通信を終わらせるんだ!』 回線を切るグラット。 呼び出すトゥポル。「…タッカー少佐。」 転送台から物体が消えた。 タッカー:「成功です。」 報告するサトウ。「警備艇が急接近しています。」 トゥポル:「撤退して。」 食事するメイウェザー。 ドアを叩く者がいる。開けると、一人のスリバンが立っていた。 メイウェザー:「何か?」 スリバン:「…脱出計画に協力したい。」 「君は?」 ドアを閉めるスリバン。「…私だよ、トラヴィス。」 「大尉?」 スリバン姿のリードは笑った。「当たり。ああ…ひどい顔だなあ。何があった。」 メイウェザー:「ありすぎて。」 持ってきたバッグを降ろすリード。 メイウェザー:「どうやってここへ?」 リード:「転送装置だ。ようやく慣れてきたよ。」 「敵に気づかれてないんですか?」 「ホシのおかげだ。センサーを占有中に、転送された。おめでとう、少尉。この一件は、片づいたも同然だ。」 メイウェザーにフェイズ銃を渡すリード。 メイウェザーたちの部屋。 地図を示すダニク。「ここが隔離棟です。船長はこの独房にいる。」 リード:「私がやる。」 「爆弾は?」 メイウェザー:「セット済みです。…覚悟はいいですか?」 「うーん。」 ブザーが鳴りだした。「…夜の点検だ。」 リード:「点検は 15分後じゃなかったのか。」 「戻らなければ。軌道で会おう。」 「幸運を。」 「ああ。」 出ていくダニク。 コミュニケーターを使うリード。「リードよりエンタープライズ。」 トゥポル:『どうぞ。』 「点検が早まった。現状は。」 ブリッジのトゥポル。「20万キロの位置にいます。」 リード:『もう少しスピードアップして下さい。』 「最善を尽くします。」 点検するクレヴ。 ダニクが立っている。 惑星へ近づくエンタープライズ。 サトウ:「警備艇です。」 トゥポル:「防御プレート起動。魚雷発射準備。」 従う保安部員。 背後から、テンダー警備艇 2隻が攻撃してきた。 トゥポル:「船尾魚雷装填、発射。」 サトウ:「直撃、向きを変えました。」 「船体降下。」 大気圏を降りていくエンタープライズ。 トゥポル:「追跡は?」 サトウ:「損傷を受けて、不時着を試みています。」 伝えるトゥポル。「発進準備 OK。」 シャトルポッドに乗ったタッカー。「了解。」 出発する。 呼び出しに応えるリード。「どうぞ。」 トゥポル:『シャトルは 2分後に収容所に接近します。』 「少佐に…」 クレヴが部屋に飛び込んできた。「出るんだ!」 外に出るメイウェザー。クレヴはリードを攻撃した。 廊下にはスリバンが並んでいる。 クレヴ:「今度こんな怠慢をしたら、独房送りになるから覚悟しとけ!」 メイウェザーは呼び止めた。「少佐、よろしいですか。…揉め事を起こす気はありませんが、もうちょっとマシな食べ物を出していただけませんか? …言っちゃ悪いが、ここの食事はひどすぎる。」 クレヴ:「出された物を食え。」 「…食いたいが、またあんな不味い物を食えるか自信がない。何でしたっけ。オガクズみたいな味の。ありゃオガクズか? もしそうだったら、ハンガーストライキだって辞さないぞ! どんな目に遭おうと…」 「もういい!」 部下と共に歩いていくクレヴ。 うなずくリード。持っていた機械を作動させた。 近くの壁につけた装置が音を発し始める。 気づいたクレヴは近づく。 スリバンたちに指示するリード。「逃げよう、早く!」 振り向くクレヴ。 スイッチを押すリード。壁は爆発した。 吹き飛ばされるテンダー人たち。 リード:「リードよりタッカー少佐。壁は崩れた。」 操縦中のタッカー。「了解。スタンバイ。」 警報が鳴り始める。 リードと分かれるメイウェザーは、フェイズ銃を受け取った。 抑留施設に近づくポッドは、地上を攻撃していく。 監視塔を破壊した。 指示するダニク。「急げ! この子を頼む。」 ナーラを仲間に預けた。「早く! さあ急げ、急ぐんだ!」 テンダー人がやってきた。 ダニク:「早く!」 スリバンが撃たれてしまった。 フェイズ銃で反撃するダニク。撃ち合いになる。 ナーラ:「パパー!」 ダニク:「先に行ってろ、ナーラ! 早く! 行くんだ!」 独房のアーチャー。 ドアを開けたスリバンをつかみ、壁に押しつける。「…会いたかったよ、マルコム。」 フードを取るリード。「なぜわかったんです。」 外に出るリード。だが殴られ、倒れた。 銃を持ったグラットがアーチャーに詰め寄る。「何ということをしてくれた。奴らを自由にしたつもりか。死に追い込んだんだ!」 攻撃をやめないシャトル。 倒れ、うめいているテンダー人たち。 壁の穴から逃げるスリバン。「行け、いけ!」 「気をつけろ!」 「まだ間に合うかしら、こっちよ!」 見守っているメイウェザー。前にはセイジンもいる。 連れられて来たナーラは、セイジンに話す。「パパが広場に戻っちゃったの! パパを助けて! …お願い!」 動かないセイジン。 メイウェザーが近づく。「僕が行こう!」 セイジンは止めた。「いや! 待て。」 うなずき、フェイズ銃を受け取る。 ナーラたちに言うメイウェザー。「さあ、急ごう。」 アーチャーを壁に押しつけるグラット。「邪魔する権利はない!」 アーチャー:「私の権利は関係ない! 彼らの権利だ!」 「スリバンに権利はない! カバルが我々を攻撃したときから権利などない! カバルがどれだけのテンダー人を殺したか。船をどれだけ破壊したか、コロニーは! お前は 89人の兵士を増やしたんだぞ!」 「なぜ彼らがカバルになるんだ!」 「何もないからだよ! 絶望的だ! カバルの差し出すものに抵抗できないだろう。」 倒れていたリードが気を取り戻した。 アーチャー:「長い付き合いじゃないが、彼らがそんな人々でないことは私にはわかる!」 リードはグラットに飛びかかった。 アーチャーは武器を奪い、グラットを殴ろうとする。 目を見開き、怯えるグラット。 アーチャーはリードに合図した。出ていくリード。 グラットを残し、アーチャーは去る。鍵が閉められた。 何隻ものスリバン船に続き、シャトルポッドもドッキングベイから飛び立った。 アーチャー:「アーチャーよりエンタープライズ。」 トゥポル:『どうぞ。』 「間もなく着く。警備艇はどこだ。」 船長席のトゥポル。「…脅威は消えました。」 アーチャー:『スリバン船は。』 トゥポルは確認した。「…軌道を通過したところです。」 アーチャー:『よかった。数分後に会おう。』 一緒にポッドに乗っているリード。「ドクターを医療室に待機させて下さい。そろそろ皮膚が、かゆくなってきたので。」 トゥポル:『知らせておきます。』 メイウェザー:「…船長。彼ら逃げ切れますか。」 アーチャー:「テンダーの領域を出られるかってことか? 安全に? ああ…無事を信じよう。」 上空へ戻るシャトルポッド。 |
感想
悪役異星人も単なる悪の存在ではない…という、ストーリーが進展してくるに従って見られる定番エピソードです。スリバンについてはパイロット版から「カバル」という設定が導入されていましたが、さらに詳しく描いていますね。最後にダニクたちがどうなったか明確にはわからないのは残念ですが、ダラダラとエピローグが続くよりはマシです。スリバンが流浪の民という設定は、もしかすると 23世紀以降に全く見られない理由につながっているのかも? 3話連続で続いている嬉しい俳優の起用も、今回はさらにマニアック(?)な配役でした。バクラとストックウェルがレギュラーの「タイムマシーンにお願い」は本当に面白い SF作品なので、ぜひ未訳分を含めてスーパーチャンネルで再放送してもらいたいですね。 |
第20話 "Oasis" 「閉ざされたオアシス」 | 第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」 |