スリバンが歩くのを見ているメイウェザー。後をつけていく。 
 スリバンたちが集まっている部屋がある。 
 子供もいる。何かを運んでいる者たちも。
  
 目を覚ましたアーチャー。「…人数は?」 
 メイウェザー:「30人はいました。かなり広い施設です。もっといるかもしれません。」 
 「シャトルは、誰に攻撃されたんだ。」 
 「確かめる余裕はありませんでした。」 
 立ち上がるアーチャー。「…衛星の向こう側から出ていたエネルギーは、螺旋艦※1からのようだった。」 ドアを開けてみるが、また閉めた。 
 天井の窓に近づいたアーチャーは合図し、足を持ち上げてメイウェザーに外を見せる。 
 メイウェザー:「塀が見えます。高さは約5メートル。建物全体を取り囲んでいるようです。あそこに見えるのは、監視塔のようですがよくわかりません。」 
 アーチャー:「人はいるか。」 
 「……いません。」 
 メイウェザーを降ろすアーチャー。「もう一度、偵察だ。」
  
 歩いていたスリバン女性※2は、アーチャーたちを見て足を止めた。「新入りのようねえ。」 
 アーチャー:「…なぜ拘束した。」 
 「こっちだって知りたいわよ。」 
 突然、ブザーが鳴り響いた。 
 運んでいた物を床に降ろす女性。直立姿勢をとる。 
 他のスリバンも、それぞれの部屋から出てきた。廊下に並ぶ。
  
 スリバンが並んでいる区画へ、別種族の者たちがやってきた。 
 先頭を歩くクレヴ少佐※3。 
 一人のスリバンが物を落としてしまった。音が響く。 
 それを拾おうとしたスリバンを、クレヴは持っていた棒で攻撃した。
  
 クレヴはアーチャーたちのところに来た。「ついてこい。」 
 従う 2人。
  
 部屋で待っていた男は振り返った。 
 中に入るアーチャーとメイウェザー。 
 命じる男。「ご苦労、少佐。」 クレヴは出ていく。「おかけ下さい。」 
 従わない 2人。 
 男:「戸惑われるのもごもっとも、大変な一日だったでしょうねえ?」 
 アーチャー:「ええ、かなり。」 
 「もっと早くお会いしたかったが、緊急の仕事で遅くなって申し訳なかった。宇宙船の船長とは珍しい。」 手元の装置を見る男。「『ジョナサン・アーチャー』。」 
 「そうですが。」 
 「そちら、『トラヴィス・メイウェザー※4』だね?」 
 メイウェザー:「そういうあなたは。」 
 「グラット大佐※5だ。」 
 アーチャー:「あなたがここの指揮官だな?」 
 グラット:「悪いが、シャトルを勝手に調べさせてもらいましたよ。そして地球という星から来たこと、エンタープライズ※6のクルーであることはわかりましたが、我々の軍事領域で一体何をしていたんです。」 
 「……軍事領域?」 
 「第2衛星※7の軌道に侵入したのは御存じだったはず。」 
 「確かに、珍しいエネルギーを感知しましたが、どこから出ていたのかわかりませんでした。好奇心で、接近しただけです。」 
 「その好奇心が命取りにもなる。幸い警備艇がシャトルを破壊しなかったからよかったものの…」 
 「『立ち入り禁止』のサインを出すべきだったかもしれませんねえ。」 
 「伝えておきましょう?」 
 メイウェザー:「ここはどこです。」 
 「拘留施設ですよ。捕捉地点から、何光年も離れています。」 
 「領域を侵すと、いきなりこういう施設に拘束するわけですか?」 
 「我々は、どんなヒューマノイドにも変身可能な種と戦争中であり、敵かどうか…確かめる必要があった。」 
 「スリバンだとお疑いなら御安心を。違います。」 
 「わかってます。DNA 検査をしました。カバル※8の存在を御存じか?」 
 アーチャー:「…不本意だが。」 椅子に座る。 
 「では奴らの遺伝強化も御存じのはず。その危険性も。」 
 「経験済みです。」 
 「大勢の犠牲者が、出ていないといいが。」 
 「何とか、無事です。今のところ。早速、エンタープライズに戻りたい。シャトルに御案内いただければ、出ていきます。」 
 「残念ながら、その権限は私にはありません。厳しい規則がありましてねえ? テンダー・プライム※9の判事と、会っていただかないと。だが審問はすぐ終わります。今回の件は単なる誤解だったと、私が説明しましょう。」 
 「審問はいつですか。」 
 「3日以内には輸送船が来ます。」 
 メイウェザー:「3日?!」 
 「もっと快適な宿泊施設を御提供したいが…非常に混み合っている状態して、しばらく御辛抱いただきたい。ほかの連中とは関わらないことです。スリバン人に何かされたら、警備にお申し付け下さい。」 
 アーチャー:「自分たちの無事を、クルーに伝えたい。」 
 「それは許可できません。」 
 「規則ですか?」 
 うなずくグラット。「私が連絡して、事情を説明しておきましょう。」 呼び出す。クレヴが戻ってきた。 
 グラット:「お部屋に御案内して、ちゃんとした食事を差し上げろ。…こんな状況でお会いすることになって残念です。」 
 アーチャー:「…そうですね。」
  
 夜の拘留施設。 
 器に入った食事をかき混ぜるメイウェザー。「これがちゃんとした食事? …タッカー少佐のおみやげになるかな。密閉材に使えそうだ。」 
 アーチャー:「少し眠ったらどうだ。見張りは私がやる。」 
 メイウェザーは、容器に残っていた水をカップに注ぐ。「これじゃ足りないよ。」 
 アーチャー:「取ってこよう。」
  
 スリバンが集まる区画へ来たアーチャー。 
 アーチャーを見る人々。 
 水が出るパイプから、次々とスリバンがカップにくんでいく。 
 割り込まれたアーチャー。「順番をちゃんと守れよ。」 無視するスリバン。 
 アーチャーは、その男と一緒に子供がいることに気づいた。 
 部屋に戻ろうとしたが、話しかける。「一体どういうつもりだ。」 
 スリバン:「何が。」 
 「こんな幼い子供をカバルにするとは。」 
 「何もわかってないな。」 
 「報酬に遺伝操作をしてもらえるんだろう? …その子は何をされた。」 
 またブザーが鳴った。 
 スリバン:「誰だか知らんが、我々を誤解してる。」 
 アーチャー:「そうかな?」 
 「私たちは遺伝的強化は受けてないし、カバルの一員でもない。」 
 「じゃなぜここにいるんだ。」 
 「…グラット大佐に聞いてないのか? 危険だからさ! スリバン人はみんな危険な存在なんだ。」 
 クレヴがやってきた。「こんな時間に何してる。」 
 スリバン:「…今、戻るところでした。」 
 「悪いな、ダニク※10。今週に入って 2度目だ。」 
 「クレヴ、頼むよ。」 
 「一晩の辛抱だ。」 
 アーチャー:「私のせいだ。私が彼を引き留めた。」 
 「部屋に戻れ。」 
 「どこに連れて行く。」 
 「独房だよ。お前も入りたくなかったら、言うとおりにしろ。」 
 ダニク:「子供を送り届けてくれ。朝には帰る。心配するな?」 頭にキスするダニク。 
 ダニクはアーチャーを見てから、クレヴに連れて行かれた。 
 部屋に戻される子供のナーラ※11も、アーチャーをにらみつける。
 
 
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※1: スリバン螺旋艦 Suliban Helix ENT第1・2話 "Broken Bow, Part I and II" 「夢への旅立ち(前)(後)」に登場
  
※2: Woman (Wilda Taylor) 声:山口真弓
  
※3: Major Klev (David Kagen) 声:池田勝
  
※4: 吹き替えでは「トラヴィス少尉」と訳されています。それを言うなら「メイウェザー少尉」だと思うんですが…
  
※5: Colonel Grat (ディーン・ストックウェル Dean Stockwell アーチャー役スコット・バクラ主演のテレビドラマ「タイムマシーンにお願い」(スーパーチャンネルで放送歴あり) で、バクラ演じるサム・ベケット博士の相棒アルバート (アル) を演じました) 声:佐々木勝彦、DS9 スローン
  
※6: 吹き替えでは「エンタープライズ号」
  
※7: 吹き替えでは「第3衛星」
  
※8: Cabal ENT "Broken Bow, Part II" より
  
※9: Tandar Prime
  
※10: Danik (デニス・クリストファー Dennis Christopher DS9第48話 "The Search, Part II" 「ドミニオンの野望(後編)」のボラス (Borath) 役) 声:野島昭生
  
※11: Narra (Jessica D. Stone) 声:伊藤亜矢子
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