ディープスペースナイン エピソードガイド
第129話「ディープスペース・ナイン奪還作戦」(前)
Favor the Bold
イントロダクション
ディファイアントが、プラズマを漏らしながら漂っている。 ダックス:「候補生。」 ノーグ※1:「依然、全周波数で救難信号を発信しています。」 「チーフ?」 オブライエン:「プラズマを放出。1億キロ以内の船に感知されるはずです。動けないこともね。」 ノーグ:「艦長、お客さんが来ました。ドミニオンの船が 2機接近中。方位 1-9-7、マーク 1-3-5。」 オブライエン:「22秒以内に敵の射程圏内に入ります。」 ダックス:「シールドは?」 ノーグ:「強度 30%です。」 「フェイザーバンクは。」 オブライエン:「兵器システムは、全てダウン。」 「じゃ、全員何かにつかまって。」 身構えるダックス。 ジェムハダー船が攻撃してきた。爆発が起こるブリッジ。 ノーグ:「シールド、20%にダウン!」 その時、遮蔽していたバード・オブ・プレイが姿を現した。ジェムハダー船 1隻を後ろから狙い、撃破する。もう一隻を追う。 オブライエン:「艦長。」 ダックス:「今よ。シールドアップ。通常エンジン全開にして。パワーをメインフェイザーへ。」 「ターゲット、ロック。」 「発射!」 フェイザーキャノンが発射され、もう一隻のジェムハダー船も爆発した。 ダックス:「候補生。まだほかにドミニオン船はいる?」 ノーグ:「一機も見当たりません。」 「こちらは艦長のダックス。戦闘態勢は解除。みんなご苦労様。」 「ロタランから通信です。ウォーフ少佐から、艦長へ。」 「スクリーンへ。」 ウォーフの顔が映される。『よくやったな。見事におとりの役を果たしてくれた。』 ダックス:「今度は役を交代しない? そしたら私が助けに行くから。」 オブライエン:「それは後回しですね。今、艦隊本部から指令が入りました。この星域の船は全部、第375宇宙基地へ戻れってことです。」 「また撤退。」 「前進、撤退、前進、撤退、全く。馬鹿の一つ覚えみたいだ。」 ベシア:「早く違う手に出ないと、今に征服者ドミニオン万歳って叫ぶことになるぞ。」 ダックス:「私はまだそんなこというつもりないわよ、ドクター。ウォーフ。それじゃ、基地で会いましょう。」 ウォーフ:『ああ、待ってるぞ。』 通信が終わり、ロタランが映し出される。 操舵士に指示するダックス。「基地に向けコースセット。ワープ 7 よ。」 第375宇宙基地に到着した、ディファイアントとロタラン。 シスコのオフィスに入るダックス。「艦隊本部のお歴々が何を考えているのか知らないけど、前線で戦ってる士官の意見を言わせて。毎回敵から逃げてたんじゃ、いつになっても勝ち目がないんじゃない?」 シスコ:「わかってるさ。」 「ベンジャミン、部隊の士気は下がりっぱなしなの。クリンゴン人でさえ、ドミニオンに勝てないんじゃないかと思い始めてる。…はっきりした勝利の実感が必要なのよ。それも今すぐにね。」 「全くもって賛成だな。」 「だったら、何とかしたらどうなのよ!」 「もう手は打ってある。しかも、明日の朝 8時、艦隊司令部に計画を提出する予定だ。」 「何の計画?」 立ち上がるシスコ。モニターの星図の前に行く。「ディープ・スペース・ナイン奪還作戦だ。」 |
※1: Nog (エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) 前話 "Behind the Lines" 「レジスタンスの苦悩」に引き続き登場。声:落合弘治 |
本編
ディファイアント。 ガラック※2をトリコーダーで調べるベシア。「どこを調べても、全く何も出てこないね。残念だったな。」 ガラック:「もっとよく探してもらえませんか。宇宙艦隊のことだ、きっと巧妙に埋め込んでるんです。」 オブライエン:「妄想だよ。」 「チーフはそう言いますがね、よくわかるんです。彼らは必死なんですから。」 ダックス:「ガラック、そんな話信じられるわけないじゃない。艦隊情報局が、あなたの思考を読むために極秘で脳にニューロトランスポンダーを埋め込んだなんて。」 「私が彼らなら、そうします。実際、私がオブシディアン・オーダーで対象を尋問した時は、もっとひどいことをしましたよ。」 ベシア:「うなずけるね。」 レプリケーターのところへ行く。 ウォーフ:「ガラック、あれは尋問じゃない。報告を聞いた。ただそれだけだ。」 ガラック:「そうは思えませんね。」 ダックス:「ジュリアン! ラクタジーノお願い。」 ベシア:「ラクタジーノも。」 オブライエン:「俺たちは今、ドミニオンと戦争中だ。カーデシアは、ドミニオンの仲間で、あんたはカーデシア人。しかも昔は大物だった。艦隊情報局が情報をよこせといってくるのも、そりゃ無理ないだろ。何でも知っときたいんだよ。」 ウォーフ:「小さな情報が大きく役立つこともあるからな。」 ガラック:「そりゃ、わかりますよ。ただ質問はされるよりする方が楽しいんです。…あんな場に引き出されるぐらいなら…皆さんと前線に行った方がよかったですよ。」 オブライエン:「そう面白いこともなかったよ。」 ダックス:「今後は面白くなって欲しいわ。」 テーブルに戻ったベシア。「シスコ大佐の計画は、許可されるかな。」 ダックス:「結果はもうすぐわかるわ。たった今説明してるところ。」 オブライエン:「城を奪還しに行くぞ。」 ベシア:「そしてまた塔のてっぺんに、連邦の旗を掲げよう。」 乾杯する。 ダックス:「2人ともホロスイートでゲームのやり過ぎじゃない?」 説明するシスコ。「第2、第5、第9艦隊の分隊からなる機動部隊を投入して、ディープ・スペース・ナインを敵から奪還します。アルファ宇宙域における最大の要衝ですから。」 ヴァルカン人女性の提督※3が言う。「メリットがあるとはいえ、成功率については懐疑的にならざるを得ない。ドミニオンは当然奪還を阻止しようと、大艦隊を送ってくるでしょう。」 「そうなれば彼らの戦力は分散され、連邦内での優位が揺らぎます。」 ロス※4:「その結果当然脇が甘くなる。」 「これまでの姿勢から転じて、攻撃に出るチャンスです。」 もう一人の地球人男性の提督※5。「もう一つ留意すべき点がある。」 「何でしょうか。」 「地球だ。防備が薄くなり、格好の標的になる。」 ロス:「地球防衛には第3艦隊が残る。」 「予想通りにいかず、ドミニオンがディープ・スペース・ナインの防衛に軍勢を割かなかったら? 代わりに地球に総攻撃を仕掛けてきたとしたらどうなる。仮に君の計画を採用すれば、万一の時地球に援軍を送っても間に合わん。」 シスコ:「地球はターゲットになりません。」 ヴァルカン:「断言する理由は?」 「アルファ宇宙域の重要拠点は地球ではなく、ワームホールなんです。そしてディープ・スペース・ナインを抑えた者がワームホールを手に入れる。」 テロック・ノール。 店で、クワークがモーンの横でパッドを読んでいる。「本気かね、こりゃ。驚きだ。困ったおふくろさんだ。モーン、お前も大変だな。でも解決法は簡単だ。お前も大人だし、おふくろさんの誕生パーティに行くのがそんなに嫌なら、行かなくていいんだよ。それでも、もしおふくろがグチグチ言うなら、今は戦争中でそれどころじゃないんだって言ってやりゃいいんだよ。ビールお代わり?」 クワークはキラが歩いているのを見つけた。瓶を置く。「ああ、ああ。じゃあな。店のおごりだ。」 モーンは渡されたグラスを傾けたが、一滴も入っていなかった。 キラを追いかけるクワーク。「少佐。行きましょう。」 キラ:「今?」 「今すぐ。」 「わかったけど、どうせ無駄よ。」 ターボリフトから降りるクワーク。「オドーはわざとやったわけじゃないって、俺は自分に言い聞かせてる。単なる間違いで、運が悪かったんだってな。」 キラ:「私も最初はそう思ってた。」 「俺とオドーは長い付き合いだ。あいつは、裏切ったりしない。」 「じゃあなぜあんたの弟は、拘留室にいるのよ。」 角を曲がる 2人。 クワーク:「オドーに会わせてもらう。」 ドアの前に立っているジェムハダー※6。「誰も入れるなと言われている。」 「いいか、俺たちは特別なんだよ。」 「例外は、認められない。」 キラ:「ならオドーに直接聞くわ。」 ベイジョー人の保安部員※7が言う。「いくら言っても時間の無駄ですよ。絶対に誰も入れるなと、オドーから言明されてる。今お客さんが来てるんでね。」 「そのお客が入ってから、どれぐらい?」 「私が知る限りでは、あの可変種の女性が部屋に入って、3日は経ってる。」 クワークはジェムハダーにつっかかる。 ジェムハダー:「ドアに近よるな、フェレンギ!」 キラ:「ちょっとやめて!」 ベイジョー人:「ここは一旦帰った方がいいですよ。同僚は職務に忠実な、生真面目な奴でね。オドーには少佐たちが来たと伝えておく。」 ジェムハダーを睨みつけるキラ。「行きましょう、クワーク。」 2人は去った。ジェムハダーは、再び直立姿勢に戻った。 オドーとベッドの上に座っている女性可変種※8。「そう。固形種はこうやって、愛情を確かめ合うのね。」 オドー:「固形種全部じゃありません。地球人※9に、ベイジョーに。」 「あなたにお礼を言うわ、オドー。」 「何でです。」 「固形種に対する新たな視点を与えてくれた。」 「何かわかりましたか。」 「彼らにとって愛情とは、偉大なるつながりの単なる真似事でしかないわねえ。……異論がある?」 首を振るオドー。「そうは言ってません。」 「以前にも体験があるの?」 「ほんの何度か。」 「その時は、充実していた?」 「……ええ。」 「キラ少佐とは体験できなくて、残念に思っているようね。」 「今、少佐のことは話したくありません。」 「何の不都合があるの。つながったとき、彼女への愛情をはっきり感じた。」 「…なら、今改めて…話す必要もないでしょう。」 「あなたにはまだ会話がとても大切だからよ。でもいつか必要なくなる。つながりさえあれば、何もいらなくなるわ。そしてその日は近い。」 「そうですか?」 「つながりなしでこれほど長く生き延びられたのが不思議よ。私自身、こうして偉大なるつながりから引き離されてみて、あなたがどれほど辛かったのか初めてわかったわ。」 「楽ではありませんでしたね。」 「オドー、もう二度と独りになることはないわ。」 立ち上がるオドー。「……じゃあ、私は出かけます。ステーションの統治評議会がありますので、デュカットとウェイユンが待ってます。」 「その会議だったら、3日前よ。」 「3日前ですか? ……3日前。…3日も時間の感覚を失ってたなんて。」 「気になるの?」 「……もちろんですよ。」 「気にすることはないわ。あなたは固形種の時間の概念で生きてきたから、そのせいね。会議のことなど放っておけばいいの。彼らの問題でしょ? あなたには関係のないことよ。あなたは可変種なの。時を超越している。私と同じに。」 手を取り合う 2人。 また体を溶け合わせ始めた。目を閉じるオドー。 |
※2: エリム・ガラック Elim Garak (アンドリュー・J・ロビンソン Andrew J. Robinson) DS9第126話 "Rocks and Shoals" 以来の登場。声:大川透 ※3: Sitak 提督 Admiral Sitak (Ericka Klein) 名前は言及されていません。階級章は 2つ星 ※4: ロス提督 Admiral Ross (Barry Jenner) 前話 "Behind the Lines" に引き続き登場。声:石波義人 ※5: Cobum 提督 Admiral Cobum (Bart McCarthy) 名前は言及されていません。階級章は 2つ星 ※6: ジェムハダー兵士 Jem'Hadar Soldier (Andrew Palmer VOY第147話 "Unimatrix Zero, Part II" 「聖域ユニマトリックス・ゼロ(後編)」の隔離ドローン (Errant Drone)、映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」のボーグ役) ※7: ベイジョー人士官 Bajoran Officer (William Wellman, Jr.) ※8: 創設者リーダー Founder Leader (サロメ・ジェンス Salome Jens) 前話 "Behind the Lines" に引き続き登場。声:宮寺智子 ※9: 「人間」と訳されています |
上級士官室。 ウェイユン※10がテーブルの上に置かれた絵を、まじまじと見つめている。キラが入った。 ウェイユン:「私に用ですって? 少佐。」 キラ:「ええそう、あなたに…」 「その前に、聞かせてもらえますか。これをどう思います。」 「ジヤルの絵じゃないの?」 「ええ、そうです。デュカットが私にくれたんです。カーデシアで賞を取った絵だとか言ってね。」 「娘を自慢したかったのよ…」 「それよりも、この絵は…いいんですか?」 「ええ、あなたはそう思わないの?」 「判断ができないんですよ。我々ヴォルタ人には、美的感覚がありませんから。」 「気の毒ねえ。」 「私も時々そう思います。でも、もし美的感覚が大事なら、創設者が我々の遺伝子に組み込んでいるはずです。」 「もしくは、ただミスを冒したか。」 「神々はミスなど冒しません。…ただ、時々…歌を唄えればいいのにと思うことはありますね。」 笑うウェイユン。「それで、何の用です、少佐。」 「ロムのことよ。」 「ああ…フェレンギの妨害分子ね。」 「拘留室に入れて、1週間以上になるわ。」 「もうそんなですか。」 「そろそろ釈放してもらえないかと、思ってるんだけど。」 「無理ですね。釈放してしまったら、処刑できないじゃないですか。」 「ロムを処刑するですって?」 「彼はドミニオンに対して、テロ行為を働きました。…しかも我々の、地雷撤去計画を妨害しようとしただけでなく、その上…私の知るところによりますと、何とあの凡庸そうな男が自己複製機能をもつ地雷を考案した張本人だそうですか。見逃すわけにはいきません。模倣犯が出ないようにするためにも、見せしめとなってもらわなければなりません。」 「彼の妻はベイジョー市民なのよ。」 「知ってますとも。妻の方は共謀者ではなさそうだ。今のところはそう信じています。でなければ夫と同じ運命をたどってもらいますからね。…残念ですが、ドミニオンはテロリズムを許さないんですよ。あなたの…お友達には、罪の償いをさせます。」 「そんなことしたら、ベイジョー政府が黙ってないわよ。」 「この件に関しては、交渉の余地はありませんね。少佐! 」 出て行くキラを呼びとめ、ジヤルの絵を指差す。「……青が入っていたら、もっと美しいと思いませんか?」 キラは何も言わず、部屋を後にした。 拘留室のロム※11。「僕は死ぬんだなあ。」 外にいるリータ※12。「そんなこと言わないでよ。」 「兄貴がそう言った。」 クワークもいる。「俺が言ったのはだなあ、奴らは処刑する気だってことだ。同じじゃない。」 「同じだよ。」 リータ:「ロム、絶対にあなたを殺させたりしない。キラ少佐がベイジョー政府の議会に掛け合って、ドミニオンに正式に抗議するように頼んでくれるわ。」 「嬉しいけど、どうにもならないよ。」 クワーク:「グランド・ネーガスのゼクと直接話した。ドミニオンからお前を買い取ってもいいといってくれたぞ。」 「ウェイユンはラチナムには興味ないだろ。…僕は終わりだよ。」 リータが高い声を出して泣き始めた。 クワーク:「リータを悲しませるのはやめないか。」 ロム:「ごめんよ。」 「それに…」 後ろを見て、小さい声で言う。「俺が弟を見殺しにすると思うか。」 「でもどうする?」 「まだわからん。だが必ず、何とかしてみせる。どんなに金がかかっても…どんな手を使おうと、必ずお前をここから出してやる。」 リータ:「そうしてくれたら、私ただでダボガールやっちゃうわ。」 「どれだけ?」 「まる 1年。」 「2年だ。」 ロム:「兄貴!」 「シッ!」 うなずくリータ。 クワーク:「2年分の価値はあるだろう。黙って待ってろ。お前の兄貴を信用するんだ。」 ロム:「僕を助けるなんてやめてくれ。」 リータ:「ロム、あなた何言ってるのよ。頭に何かされたんだわ。」 クワーク:「元々だよ。」 ロム:「僕は本気だよ。兄貴、僕の心配より大事なことがあるだろ。」 「店のほうは順調だよ、ありがとな。」 「店のことなんかじゃない!」 リータ:「あなたの命より、大事なものなんてないわ。」 奥にいるジェムハダーを見て、小声で話すロム。「あるよ。ディフレクターを破壊することさ。」 クワーク:「シーッ!」 「ドミニオンが地雷を撤去するのを絶対に食いとめることだよ。…僕の代わりに兄貴がやってくれ。アルファ宇宙域の運命が、兄貴にかかってる。何十億って人が、兄貴を頼りにしてるんだよ。」 「がっかりさせちまうな。」 「兄貴! 兄貴ならできる。やるしかないんだ。やってくれるよね?」 「もし捕まったら、どうなる。」 「一緒に死ぬだけだよ。兄弟仲よく。でも僕たちは…胸を張って死ねるじゃないか。」 リータ:「ああ、ロム…。」 クワーク:「死ぬなんて御免だねえ。」 ロム:「もしそうなったら、しょうがない。それが、運命だ。」 無言になるクワーク。 「兄貴、早く行ってくれ。やることが山ほどあるぞ。」 出て行くクワーク。ジェムハダーがロムたちに近づく。 ロム:「それで……変わったことあったか? 部屋のソニックシャワー修理に来てくれた?」 また泣き出すリータ。 プロムナードで、絵を描いているジヤル※13。 キラが近づく。「ジヤル。」 「ネリス! 何週間も会ってなかったわね。」 「今、ちょっといい?」 「座って。」 周りを見て、話すキラ。「あなたのお父さんに頼んで欲しいことがあるの。」 「どんなこと?」 「…ロムよ。」 ジヤルはキラを見つめた。 司令官室に入るジヤル。「お父さん?」 デュカット※14:「やあ。」 「頼みがあるの。」 「何かあったのか、ジヤル。」 「お父さんなら解決できるわ。」 「言ってみなさい。」 「ロムを釈放して欲しいの。」 「また冗談を。」 「本気よ。」 笑うデュカット。「ジヤル、ロムは釈放できないよ。彼はドミニオンから死刑を宣告された。」 「恩赦を与えればいいわ。ねえ、考えてもみて。ベイジョーの人たちやキラ少佐に示す、いいチャンスよ。お父さんはほんとはどんな人なのかね。寛大で思いやるのある人だって、わかってもらえるわ。」 「一つ聞かせてくれ。ジヤル、お前はあの破壊行為に、どういう形であれ関係していたのか。」 「…関係なんてしてない。」 「本当なんだな。本当のことを言わないと、お前を助けられない。」 「嘘なんかついてないわ! お父さんこそ、ずっと私に嘘ついてきたんじゃない?」 「何のことだ。」 「ベイジョー占領時代のことよ。当時、彼らにひどいことをして後悔してるって言ったわ。」 「…後悔しているとも。心からね。」 「それをみんなに証明する、いいチャンスじゃない。私も含めてね。冷酷な人じゃないってところを見せて。」 「……ロムは、カーデシア・ドミニオン連合への反逆者なんだよ。反逆者には情けなど必要ない!」 ため息をつくジヤル。「完全にカーデシア人の口ぶりね。」 「私はカーデシア人だからな。お前もそうだ。」 「いいえ、違うわ! あなたはお父さんみたいにはならない。」 「ジヤル!」 デュカットの手を振り払い、出て行くジヤル。デュカットはため息をついた。 キラはクワークに言う。「信用できない。」 「ラチナム 5本あれば、ノーシカン 5人と速い船を一隻雇える。何も聞かれずにね。…ロムを脱獄させるぐらい、奴らにはお茶の子さいさいですよ。」 「そのプランはだめよ。ロムを助けるには注意深く綿密に計画を練らないと、ノーシカンには無理よ。ステーションにズカズカとやってきて、ジェムハダーを睨みつけ、気がついたらプロムナードは血の海になってる。」 「…金取り戻せるかなあ。」 階段を降りる 2人。 カウンターにつくキラのところへ、ダマール※15がやってきた。「少佐!」 ため息をつくキラ。「タマロン穀物※16の貨物船が、1時間で到着する。第5貨物室が使えるように、準備させておけ。」 キラ:「言っておくわ。後で。」 「いや、やるんだ。今な。」 席を立つキラ。 「お前のそのでかい態度に、いつまでも我慢してると思うな。」 「私の態度が気に入らないなら、代えさせれば? いつでもどうぞ。」 歩いていくキラ。 ボトルを持ってきたクワークに愚痴るダマール。「デュカットはあの女のどこがいいんだ!」 クワーク:「そりゃあんた、目の検査した方がいいっすよ。カナールだ。ボトルごと出しておくかい?」 「…お前に毒見をさせた方がいいかもな。毒を盛られちゃ困る。」 「お客に毒盛るほど余裕ないねえ。」 「そうかな。弟のために復讐する気なら、やれるかもしれん。」 クワークはグラスを手に取る。「俺は違うね。」 クワークが飲む直前に手をつかみ、笑うダマール。「お前はフェレンギの鑑だなあ。弟とは違って、長いものには巻かれる。」 グラスを飲み干す。 クワーク:「言ってくれよ、それとも当てた方がいいかなあ。」 「何をだ?」 「またまた、とぼけなさんな。その機嫌の良さは、誰か嫌いな奴が死んだか、昇進したかだろう?」 「もっとめでたいねえ。」 話を聞いていた隣のベイジョー人を睨みつけるダマール。ベイジョー人は去った。「地雷原のことだ。」 「それが?」 「撤去できる。」 「それなら前にも聞いたよ。」 「実地でテストをするって言ったのを覚えてるか? 成功したんだよ。地雷の撤去は、もう始まってる。」 「へえ、あんたも相当忙しくなるね。どのぐらいかかる、2ヶ月か、1年か。」 「1週間だ。」 「1週間。」 「ああ、そうだ。1週間後、アルファ宇宙域が手に入る。」 乾杯する 2人。クワークも酒を飲んだ。 |
※10: Weyoun (ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) 前話 "Behind the Lines" に引き続き登場。声:内田直哉 ※11: Rom (マックス・グローデンチック Max Grodenchik) 前話 "Behind the Lines" に引き続き登場。声:田原アルノ ※12: Leeta (チェイス・マスタースン Chase Masterson) クワークのバーの従業員。DS9第124話 "Call to Arms" 「DS9撤退の日」以来の登場。声:榎本智恵子 (継続) ※13: トーラ・ジヤル Tora Ziyal (メラニー・スミス Melanie Smith) DS9第127話 "Sons and Daughters" 「過去を越えた絆」以来の登場。声:高田由美 ※14: ガル・デュカット Gul Dukat (マーク・アレイモ Marc Alaimo) 前話 "Behind the Lines" に引き続き登場。声:幹本雄之 ※15: Damar (ケイシー・ビッグス Casey Biggs) 前話 "Behind the Lines" に引き続き登場。声:古田信幸 ※16: Tammeron grain 「タマロン」は訳出されていません |
第375宇宙基地の周りには、宇宙艦隊の船が集まってきている。 シスコ:「私の計画した作戦は、クリンゴン防衛軍の協力なしに成功し得ない。」 ウォーフ:「我々は賛成ですが、ガウロン※17総裁の方が。」 「君らが総裁を説得してくれ。」 マートク※18:「一つの作戦にそれほどの大艦隊を割くのは、懸命ではないとおっしゃってる。」 ウォーフ:「帝国母星の防衛が手薄になります。」 シスコ:「艦隊司令部も、地球が無防備になるのを心配した。だがこの状況を考えると、リスクもやむを得ないと判断したんだ。」 「将軍、クロノスへ帰って総裁に直談判して頂けますか。総裁は将軍を信頼しています。説得できるのは将軍以外にいないでしょう。」 マートク:「…ガウロンに会うとするか。お前も一緒に来い。」 「いいえ。私が行っては、不興を買うだけですから。」 「わかってる。だからこそ行くんだ。どう思われていても、2人で同じことを言えば、認める以外ほかに、道はないだろう。」 シスコ:「何としてでも、船を回してくれ。」 ウォーフ:「……我々にお任せを。」 オフィスを出て行く 2人のクリンゴン人。 テロック・ノール。 クワークの店の隅にいるキラ。「1週間? ほんとに間違いないの?」 クワーク:「奴は断言した。今度のは、ホラ話じゃなさそうっすよ。」 「阻止しなくちゃ。」 「最期は弟と共に捕まっちまうのか。勘弁してくれ。オドーに連絡が取れりゃあな。奴が目を覚ましてくれれば、何か手があるかもしれない。」 「オドーのことは忘れるのよ。第一に、もう連絡は取れない。もし取れても、協力はしてくれない。」 「なら艦隊に知らせましょう。できることは、それしかない。」 「艦隊にどうやってメッセージを送るって言うのよ?」 「俺に聞かれても。テロリストは少佐の方なんだから。」 ジェイクがやってきた。「ここだったの。その顔からすると、ロムの釈放の件はうまく進んでないみたいですね。」 「事態は悪くなるばかりだよ。」 ジェイクは微笑む。「そうでもないよ。」 キラ:「いいえ、そうなの。」 「じゃあ、これは? 俺、親父にメッセージを送れるんだ。」 「どうやって?」 笑うジェイク。「こう見えても、俺も記者だよ。」 「ジェイク、いいからどういうことなの。」 後ろを指差すジェイク。モーンが一生懸命、プレゼントを包んでいる。 キラ:「モーン?」 ジェイク:「おふくろさんの誕生日で、くにへ帰るらしいんだ。プレゼントのリボンに、親父あての暗号メッセージを忍ばせる。」 うなずくクワーク。 モーンが結んでいるリボンを、キラは指で止めた。モーンを見つめるキラ。クワークも。 ギャラクシー級の船数隻を含め、艦隊が集結する第375宇宙基地。 ロスはリボンを手にしている。「信頼できる情報なのか。」 シスコ:「運んできた男とは、5年の付き合いですから。」 「非常事態だな。情報が確かなら、地雷は 3日で撤去される。第9艦隊が着くのは 4日後だ。」 「では抜きで行くしかないでしょうね。」 「クリンゴンの援軍は。」 「それもあきらめるしかなさそうです。ことは一刻を争いますから。」 「ドミニオンがワームホールを越えてきたら、我々は全て失う。」 「召集可能な船を、全てディープ・スペース・ナインへ向かわせ、反重力子エミッターを破壊するしかありません。」 「頼んだぞ。」 |
※17: Gowron クリンゴンの指導者であり、最高評議会の長 ※18: マートク将軍 General Martok (J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) DS9 第127話 "Sons and Daughters" 「過去を越えた絆」以来の登場。声:大山高男 |
テロック・ノール。 窓の外を指差すデュカット。「あそこだ。」 宇宙空間の点状の光が消えた。 ウェイユン:「どこ?」 「そこだ。今一瞬光ったのが、地雷を狙った反重力子ビームの閃光だ。」 「地雷の複製ユニットを破壊しているんですね。」 「ああ、そうだ。見えなかったのか?」 「…残念ながら。」 「皮肉だなあ。地雷を撤去しろと、我々を何ヶ月も急かし続けて、やっとそれが実現したというのに。見ることすらできない。」 「目が悪くてね。」 「何だって?」 「ヴォルタ人は視力が弱いんです。生きてはいけますけどね。その反対にジェムハダーは、素晴らしく目がいい。戦士には必要ですからね。」 指差すデュカット。「ああ、また光った。」 「見えませんが、信じましょう。」 「全ての地雷の複製ユニットを機能停止させ、その後で…地雷原全体を一気に、爆発させる。一つ保証しよう。いくら目が悪くても、その時は巨大な火の玉が見える。」 「爆発はいつになるんです。」 「およそ、78時間後と見ている。3日後には、ワームホールの向こうで待機している、ジェムハダーの援軍を迎えられる。」 「素晴らしい! やってくれると思ってました。」 「……そうかな?」 「…疑ったことなど、ありませんよ。」 ダマールが上級士官室へ入った。「閣下! 敵の動きで情報が入りました。」 デュカット:「報告しろ。」 「第2艦隊がコタンカ星系※19から撤退し、第5艦隊もヴァルカンの戦場から引き上げました。両艦隊が向かっているのが、375宇宙基地です。」 星図を指差す。 「シスコ大佐がいる基地じゃないのか。」 「ロス提督の副官になってます。」 ウェイユン:「昇進ですね。でもなぜ、艦隊が集まっているんです?」 「わかりません。」 「わからないですって? 敵の大艦隊が前線を離れ、基地で合流するというのに、理由がわからないとはどういうことです?」 デュカット:「それは、これから解明すればいいだけのことだ。そうだろ?」 「急がせなさい。」 部屋を後にするウェイユン。 ダマール:「あの偉そうな物言いは許せん!」 笑うデュカット。「そのうちに、お前が礼儀を教えてやれ。だが今はその前に、やってもらいたいことがあるのだ。私の個人的な問題だ。細心の注意が…必要でね。娘の件なんだ。」 「ジヤルの?」 「ちょっとした…誤解があってな。娘のところへ行って、話し合うよう…言ってくれないか。」 「でも俺は…敵艦隊の動きを追跡する方が、お役に立てます。」 「これは命令だ、ダマール。我々は今、大勝利を目前にしている。そしてその時、私の傍らには、娘にいてもらいたい。わかったら急げ。」 向かうダマール。デュカットは席に座った。 貨物室で話すジヤル。「父は変わったと本当に信じてたのに。平和を求めてるんだと思ったわ。」 パッドを使うキラ。「目的達成のためには、そういう振りもするのよ。」 「今まで私に言ってたことは、全部嘘だった。」 「全部じゃないわ。彼は、あなたを大事に思ってる。」 「関係ない。もう父のもとには戻らない。……本気にしてないのね。」 「…今は腹が立って傷ついてる。冷静になってから、本当にどうしたいか決めるべきよ。」 ダマールがやってきた。「ジヤル! ちょっと話がある。」 ジヤル:「あなたと話すことなんて何もない。」 「だがお父さんとはあるだろう。会いたがってる。」 「私の方は会いたくないの。」 キラ:「聞こえたでしょ?」 ダマール:「少佐は引っ込んでろ。ジヤル、聞くんだ。お父上は偉大な方だ。運命を担ってる。」 ため息をつくジヤル。「だが同時に重荷も多い。ドミニオンとの同盟は危ういものだ。少しでも弱みを見せれば、連中は容赦なく潰しに来る。だから俺たち全員が協力しなきゃならない。真のカーデシアの娘として、お父さんを支えてやってくれ。」 ジヤル:「ダマール、あなただってよく知ってるはずじゃない。私は真のカーデシアの娘なんかじゃない!」 「ガル・デュカットはあんたをブリーンの強制収容所に見捨ててくるべきだった! だがそうせずに、情けをかけた。恩返しをする番だ、一緒に来い!」 無理やり連れて行こうとするダマール。 キラ:「やめなさい。」 「やめなかったら? どうするつもりだ。」 「聞いてくれて嬉しい。」 ダマールを殴るキラ。殴り返そうとする手を止め、更に殴り続ける。何もできないダマールは、ついに床に倒れた。 驚くジヤル。「殺しちゃったの?」 息を荒げるキラ。「いいえ。ちょっと考えたけどね。」 「意識が戻ったら、どうする?」 「そいつ次第よ。」 歩いていくキラ。ジヤルも振り返りながら、貨物室を出る。 第375宇宙基地。 シスコのオフィスにロスが入る。立ちあがろうとするシスコを制するロス。「激励に来ただけだ。」 「ああ、どうも。父が言ってました。応援は多すぎることはないって。」 「父上は知恵者らしい。」 「最高のジャンバラヤを作ります。」 笑うロス。「それは?」 パッドを見せるシスコ。「古代ベイジョーの書物です。」 「ああ、選ばれし者は導きを求めたわけか。」 「導き、洞察、逃げ道。必要なら何でも使います。」 「預言者は何と言ってる。」 「私が彼らの預言を読み解くには、まだまだ時間がかかるそうです。」 「…この戦争が終わったらじっくり、読み解いてみるといい。」 「それもいいですね。1、2週間ベイジョーで過ごして、ダーキン修道院※20にでも行くかな。」 「ベイジョーには行ったことがない。いい星らしいな。」 「らしい? そんな言葉じゃ足りませんよ。ベイジョー東部の地域は、まるでエデンの園です。肥沃で、緑の谷は一晩明けると野の花が辺り一面咲き乱れる。何百という小さな澄んだ池があって、数々の滝でつながっています。」 手を挙げるロス。「わかったわかった。実を言うと、次の私の休暇は、ベイジョーで取ると決めてある。だがその様子だと、君がディープ・スペース・ナインで任務が終える時に、ベイジョーが連邦に加盟していたら、離れるのは辛くなりそうだな。」 「離れる気はありませんよ。…ベイジョーに家を建てるつもりなんです。」 「だが別の星系に派遣されることもありうるぞ。」 「もちろん命令とあればどこへでも行きます。でも私が帰るのは…いつもベイジョーでしょうね。」 ディファイアント。 士官の制服を着たノーグが部屋から出てきた。嬉しそうにため息をつく。 オブライエンも出てきた。 ノーグ:「ああ、チーフ。丁度探してました。聞いて下さい。僕、少尉※21になりました。」 オブライエン:「人材不足は深刻らしいなあ。」 歩き始める 2人。 「びっくりですよね。アカデミーのクラスメートに、晴れ姿見せたいです。」 「驚くだろうなあ。」 「きっとひっくり返ります。」 「そりゃひどい。」 「とにかく、チーフにお礼を言わなきゃと思いまして。」 「俺に?」 「いろいろ教えてもらいました。技術のことだけじゃなくて、兵士としての心得も教わりました。」 「制服着たからって勘違いするな。まだ半人前だ。勉強しろ。おめでとう、少尉。胸張って歩け。」 「わかってます、チーフ。」 微笑むオブライエン。2人はブリッジに入った。 反対側からシスコが入る。 ノーグ:「艦長、いらっしゃいました!」 ダックス:「椅子暖めといたわ、ベンジャミン。」 艦長席を譲り、操舵につく。 座るシスコ。「少尉、全艦隊に伝えろ。出発。」 ノーグ:「了解。」 惑星連邦の大艦隊は、宇宙基地を離れていく。 |
※19: Kotanka system ※20: Dakeen Monastery 惑星ベイジョーの宗教寺院。DS9第44話 "The Collaborator" 「密告者」より ※21: 部門は機関 (エンジニア) の黄色 |
司令官室にウェイユンと共に入るデュカット。「情報部からの報告が、正式に確認された。連邦の艦隊は、動き始めてる。」 ウェイユン:「目的地はどこなんです。」 「ここへ、向かっているようだ。」 「ここへ!」 「うん。」 ため息をつくウェイユン。「地雷を撤去してるのに気づいたんですね。…誰かが知らせたということですね。」 「ああ、そのようだな。」 「ここへ来れば、叩くのみです。」 「ああ、もちろんそうだ。しかし、そのためには、かなりの数の戦闘機を前線から引き戻さねばならないことになる。」 「それが?」 チャイムが鳴った。 デュカット:「入れ!」 顔に怪我を負ったダマールが入る。 ウェイユン:「地雷の撤去が済めば、すぐにそれ以上の援軍が到着します。」 2人はダマールの顔に気づいた。 デュカット:「ああ…わかった。ちょっと待ってくれ。」 ウェイユンから離れる 2人。 ダマール:「キラ少佐を逮捕する許可を下さい。」 デュカット:「キラ? ジヤルはどうした。話をしたのか。」 「連れて来ようとしました。彼女が嫌がり、少佐が…歯向かってきた。」 「お前、ジヤルに何をした。」 「何もしてません。」 ダマールの顔をつかむデュカット。「ではなぜ少佐がお前に歯向かう! 娘を脅すような真似を、何かしたとしか考えられない。慎重にと言ってあったはずだ!」 ウェイユン:「ちょっと失礼。家族のゴタゴタを解決するのは、戦争に勝ってからでも間に合うんじゃないですか? …耳の方はいいんですよ。」 「ああ、そうだなあ。言う通りだ。」 「なすべきことはわかっていますね。」 「連邦の艦隊を壊滅させるべく、戦闘機を呼び戻し、この基地を守り抜いて見せる。」 うなずくウェイユン。部屋を出て行く。 ダマール:「連邦が向かってくるんですか!」 デュカット:「ああ、そうだ。さあジヤルと会って、何があったのか、全部詳しく、教えるんだ!」 2階からプロムナードを見ているオドー。「奇妙だ。ここには何度となく立っているのに、なぜか全てが違って見える。」 女性可変種:「固形種ばかり。小さく下らない存在に、見えるんじゃない?」 「彼らのせいじゃない。」 「責めてはいませんよ。」 「囚われてるんです。」 「ただ一つの身体にね。」 「一つの、ものの見方に。」 「狭い世界だわ。」 「…気の毒に思います。」 「同情するのではなく、導いてやるんです。」 「でも彼らは自由が好きだ。」 「それは、捨てさせないと。」 「捨てさせる?」 「表現の問題よ。ああ、固形種の言葉というのはほんとにもどかしいわ。」 「具体的には、どうするんです。」 「オドー、あなたは何も心配しなくていいのよ。やるべきことを、やるまでです。簡単なことなのよ。」 ウェイユンがやってきた。「すみません、お邪魔します。重要なお知らせがあるんですが。」 「オドー、部屋に戻っていてはどうです? 私もすぐ行きます。」 オドーの身体に触れる。「大丈夫よ。何も心配はありません。約束します。」 離れるオドー。 ウェイユン:「助かります。オドーをうまく変えて頂いて。」 女性可変種:「どういうこと?」 「彼は我々にとっては常に脅威でした。ですが、あなたは…」 笑うウェイユン。「彼を手なずけてしまわれた。」 「オドーを手なずけるですって? そのために来たと思っているの? オドーは可変種です。彼を連れ帰り、偉大なるつながりに戻す。その方が遥かに、アルファ宇宙域より大切なのです。覚えておきなさい。」 「彼を侮辱する気は…。」 「ええ、そんな気はないでしょう。よくわかっていますとも。お前はドミニオンのしもべだもの。さあ、来なさい。重要な知らせとは何です?」 1階に降りたオドーは、プロムナードを歩いているキラに気づいた。すぐに追いかける。 ターボリフトに乗るキラ。ドアが閉まるところへオドーが来る。「少佐!」 だがドアは閉まった。別の道へ向かうオドー。 ターボリフトを降り、廊下を歩くキラ。 オドーが追いついた。「キラ! キラ! 待って下さい。」 キラ:「話すことは何もないわ。」 「腹を立てるのはわかります。」 「ええ、腹が立ってる。今どういう事態か知ってる?」 「ああ、大体は。ずっと忙しかった。」 「ああ…デュカットがね、もう地雷の撤去を進めてる。ドミニオンの援軍が来て、連邦は完全に制圧されるわ。それにロムの処刑が決まったの。だけどあなたは、忙しかったのよね。」 「説明するのは難しいんです。」 「つながりの話なら結構。私は固形種で、わかりっこないから。」 オドーはキラの腕をつかんだ。「ネリス。」 立ち止まるが、手を払うキラ。 「すまない。」 「すまない? 言うことはそれだけなの? すまないって。」 「ああ。」 「一つ言わせてもらうわ、オドー。あなたのことは…絶対に、許せない。」 キラは歩いていく。取り残されるオドー。 進み続ける連邦の艦隊。 オブライエン:「艦長、コルテス※22からメッセージです。左舷エンジンの誘導スラスターの制御にトラブルがあるそうです。」 シスコ:「下がって修理を済ませるように言え。代わりにサレク※23を上がらせるんだ。」 「了解。」 ガラック:「編隊から外れた船は、11隻目ですよ。」 ダックス:「数えててくれてありがとう、ガラック。」 ベシア:「悲観的なのはしょうがない。彼の性格だから。」 ガラック:「とんでもない。いつだって希望をもってますよ。ただ最悪の事態に備えることも、必要だと知っているだけです。」 オブライエン:「センサーに反応あり。ドミニオン軍の大艦隊です。方位 0-0-4、マーク 0-0-9。」 シスコ:「規模はわかるか。」 「1,254機の編隊です。」 ベシア:「2 対 1 で劣勢だ。」 ガラック:「どっちが悲観的なんですか。」 シスコ:「少尉、スクリーンへ。最大に拡大しろ。」 ノーグ:「了解。」 ドミニオンとカーデシアの戦艦が、スクリーンを埋め尽くすように映し出された。 言葉の出ないクルー。 シスコはコンソールを操作した。「全艦に告ぐ。こちらはシスコ艦長。攻撃フォーメーション、デルタ 2 だ。」 非常警報態勢になる。シスコは言った。「古いことわざがある。『大胆さは運を呼ぶ』※24という。……一つ、試してみようじゃないか。」 |
※22: U.S.S.コルテス U.S.S. Cortez エルナン・コルテス (Hernan Cortez) にちなんで命名。スペインの栄誉のためアステカ帝国を滅ぼし、メキシコを征服したスペイン人征服者。「コルテス号」と吹き替え ※23: U.S.S.サレク U.S.S. Sarek TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」などに登場した、スポックの父であるヴァルカン人大使にちなんで命名 ※24: "Fortune favors the bold." 原題の由来。「運命の女神は勇者に味方する」、「幸運は勇者に味方する」、「幸運は大胆な者に微笑む」とも |
To Be Continued...
感想
ついに始まった DS9 奪還計画。これまで小競り合いはありましたが、映画を圧倒的に上回る規模の大艦隊が、第5シーズンの最後のシーン以来やっとで登場しました。まだ双方の艦隊が激突するまでには至りませんでしたが…予想できたとはいえ、何とも憎い引っ張り方です。 DS9 ならではのサブレギュラー陣がこれでもかと登場し、その数は実に 11人! レギュラーの 9人と合わせて、計 20人です (+単発ゲストが 4人)。あのモーンまでストーリーに絡むとは (エキストラだからセリフもないのに…)、ほんとにファン泣かせですね。これだけ人数がいながら、それぞれにキャラクターが際立っているのが DS9 の真髄という気がします。 こんなに後編が楽しみという感覚も久々ですね。 |
第128話 "Behind the Lines" 「レジスタンスの苦悩」 | 第130話 "Sacrifice of Angels" 「ディープスペース・ナイン奪還作戦(後編)」 |