※1『大使日誌、宇宙暦 53263.2。ケサット人※2の母星での取引交渉時には、協力的だったトゥヴォック少佐も、旅の友としては最悪の部類に入るだろう。』
デルタ・フライヤー。指でコンソールを叩き、リズムを取っているニーリックス。
操縦席のトゥヴォック。「ミスター・ニーリックス。」
ニーリックスは叩くのをやめた。「失礼。」 退屈そうだ。「ねえ、ゲームでもやんない? 何の生命体か、宇宙船か※3当てるゲーム。」
「もう少し、有意義な時間の過ごし方を考えた方がいい。」
「トゥヴォック、そう堅いこと言うなって。一人が好きな生命体や宇宙船を決めて、もう一人が 15問※4質問しながら当てる。やろ、やろ。」
「私は黙って静かに過ごしたい。」
「…なぞなぞは?」
「ミスター・ニーリックス。」
「いいじゃないかあ。楽しいぞ。」
「楽しみなど必要ない。」
「じゃあそれは置いとこう。いいなぞなぞは、頭の刺激になる。これなら断るヴァルカン人はいないだろ?」
ため息をつくトゥヴォック。「いいだろう。一つだけだぞ。」
「ああ、じゃあこれ。一人の少尉が、Lクラス※5の惑星に迷い込んでしまいました。食料は一切なし。唯一あるのは、カレンダー。しかし宇宙艦隊が 1年後に発見した彼は、健康そのものでした。どうして飢え死にしなかったのか。」
「理論的に言って、その種の惑星に温泉が湧いていたとしても、何の不思議もない。数週間、命をつなぐことは可能だ。」
「うーん、でも 1年は?」
「結論。理論的に考えた場合、その少尉は死んでいるはずだ。」
笑うニーリックス。「降参って言えよ。いいこと教えてやろうか。少尉は生きてただけじゃない。お腹もいっぱいだった。なぜか。日ばっか食ってたから、カレンダーの※6。」
「その答えは、単なる言葉遊びだ。現実に基づいていない。」
まだ笑っているニーリックス。
トゥヴォックは席を立った。「ちょっと失礼する。」
「どこへ?」
「平穏と静寂を求めに。」
「いってらっしゃい!」
トゥヴォックはシャトルの後部に入り、パッドを手に取り読み始める。何かに気づいた。奥で勝手にコンピューターが作動し、データが表示されている。連絡するトゥヴォック。「こちらトゥヴォック。」
操縦席のニーリックス。「もう寂しくなったのかい?」
『船尾戦略ステーションを稼動させたか。』
「いや。何で?」
トリコーダーを構えるトゥヴォック。「ダウンロードが進行中だ。」
「変だなあ。」
『異常な周波数を探知。』
『異常な周波数?』
「よくわからんが、多分偽装周波数だ。」
その瞬間一部の空間が揺らぎ、トゥヴォックのトリコーダーに向けてエネルギーが発せられた。体全体に広がり、苦しむトゥヴォック。
通信が途切れた。ニーリックスはフェイザーを手にする。「少佐?」
床に倒れ、皮膚に変質を起こしているトゥヴォック。ニーリックスが駆けつける。
「トゥヴォック!」 通信を行う。「デルタ・フライヤーからヴォイジャー。メイデー!」
近寄り、落ち着かせようとするニーリックス。「トゥヴォック! 何があった!」
トゥヴォックは息を荒げ、体中を震わせていた。
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※1: ベラナ・トレス役のロクサン・ドースン初監督エピソードです。演出しているシーンが公式サイトにあります。なおそのためでしょうが、トレスは登場しません
※2: Kesat
※3: 正確には「生命体か、宇宙艦か、現象か (species, starship or anomaly)」
※4: 訳出なし
※5: Class-L 惑星分類システム (planetary classification system) による区分の一つ。Lクラスは酸素・アルゴンの大気をもった、一般に小型で岩石質の地表をもった惑星。VOY第17話 "The 37's" 「ミッシング1937」など
※6: 原語ではかけことばなので日本語訳では訳しにくかったのでしょうが、"date" が「日付」と「ナツメヤシ (棗椰子)」の 2つの意味があることからきています
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