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TNG エピソードガイド
第123話「ボーグ“ナンバー・スリー”」
I, Borg

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・イントロダクション
『航星日誌、宇宙暦 45854.2。アーゴリス星団※1にコロニーを作る計画があり、エンタープライズは 6つの星系を調査することになった。』
ワープを止めるエンタープライズ。
スクリーンに恒星が拡大されている。
ライカー:「すごい眺めだな。」
トロイ:「美しいわ。少し怖いくらいね。」
データ:「艦長、この星系の中から出ている信号を受信しました。」
ライカー:「どんな信号だ。」
「一定のパターンを、繰り返しています。」
ピカード:「発信源は?」
「第4惑星付近の、月です。」
「生命反応は?」
「お待ち下さい。…電磁波で、センサーの精度が落ちています。はっきりした数字は出ませんが、この大気なら生命がいる可能性もあります。」
ライカー:「救難信号では。」
うなずくピカード。
ライカーは立ち上がり、制服の裾を引っ張った。「操舵士※2、転送可能距離まで接近。ドクター・クラッシャー、上陸しますので第2転送室へ。」
クラッシャー:『了解。』
ウォーフもターボリフトに入った。

衛星の地表は岩だらけで、雪が積もっている。そして機械の残骸があった。
白い気体を出している。転送されてくるライカー、クラッシャー、ウォーフ。
ライカーとウォーフはフェイザーを取り出した。
トリコーダーを使うクラッシャー。「生命反応があるわ。とても弱いけど。」
近づき、ウォーフが鉄板を取り除く。倒れている人物がいる。
クラッシャーはライカーを見た。
それは、ボーグだった。


※1: Argolis Cluster
初言及

※2: 吹き替えでは「データ」と呼びかけています。データは操舵士ではないのに、いつも「主任パイロット」と誤訳されるせいかもしれません

・本編
コミュニケーターに触れるライカー。「エンタープライズ。」
ピカード:『どうだライカー。』
「小型機が墜落していました。生存者は一名発見。ボーグです。かなりの、重傷を負っているようです。」

データ:「艦長。センサー有効範囲内に、ほかのボーグの姿はありません。」
ピカード:「…ただちにエンタープライズへ戻れ。」
クラッシャー:『艦長、負傷者を放っていくわけにはいきません。』

ライカー:「艦長はわかって言ってるんですよ。」
クラッシャー:「わかってないわ?」
「死体はボーグの仲間が取りに来る。」
「まだ死んでないわ!」
「急がないと。」
「まだ生きてる。」
「救難信号を受けて、ボーグの船が向かっているはずだ。…ここにはいられません。」
クラッシャーが装置を当てると、額の傷が治っていく。「せめてその仲間が来るまでもつように、応急処置だけでもさせて。」

ピカード:「気持ちはわかるが、処置をすれば我々の存在をボーグに知らせることになる。」

クラッシャー:「その心配ならもう手遅れですわ。」
ウォーフ:「殺しましょう。墜落死のように見せかけて。証拠は全て消してしまうんです。」

ピカード:「……安全対策を取ってからボーグを収容する。」
クラッシャー:『ありがとうございます、艦長。』
「データ、保安部に拘留室の準備をさせてくれ。ブリッジから機関部。」
ラフォージ:『ラフォージです。』
「負傷したボーグを収容するが、救難信号を出しているんだ。何か対策を取って外部との通信を断ってくれ。」

機関室のラフォージ。「拘留室に、フィールドを張って信号を遮断します。」
ピカード:『頼むぞ。』

歩くウォーフ。ほかにも死んだボーグが何体も倒れていた。
脳が剥き出しになった者もいる。
ライカーに報告するウォーフ。「…死体が 4体ありました。」
ピカード:『ピカードからライカー。』
ライカー:「どうぞ艦長。」

ピカード:「ボーグは直接拘留室へ転送する。」
クラッシャー:『医療室に運んでください。』
「それは許可できん。医療器具が必要なら運べばいい。」
『…わかりました。』
ピカードはため息をつき、作戦室へ向かった。トロイを見るデータ。
トロイも後に続く。

テーブルへ向かうピカードは、ドアチャイムに応えた。「入れ。」 コンソールを起動させる。
トロイ:「…私に御用があるんじゃないかと思ったんですが。」
「別に何もないが。」
「…ボーグを船に乗せることになって、ご心配かと。」
「私の心配なら必要ないぞ。」
「…人間は耐え難いほどの屈辱を受けた場合、その傷は心のどこかに残っているものなんです。…艦長はボーグにさらわれ、改造されてボーグの身体…※3
「カウンセラー。…気づかってくれるのはありがたいが、あの時のことはもうとっくに克服した。…この船にボーグを乗せたのも考え抜いてのことだ。リスクも計算した上で…正しい選択をしたつもりだ。…自分のやっていることはわかっている。」
「そうですか。…では、何かあれば呼んで下さい。」
「ありがとうカウンセラー、大丈夫だ。」
船体図を見つめ続けるピカード。

拘束室の中で、ボーグの治療を行うクラッシャー。医療部員が近づく。
ウォーフ:「フォースフィールド解除。」 ほかにも保安部員がいる。
中に入る医療部員。ピカードも来た。
ウォーフ:「艦長、ボーグはまだ意識不明です。」
クラッシャー:「内部の傷が大きくて、出血は何とか止めましたが脳に埋め込まれたバイオチップ※4は取り出して治さないと。」
ピカード:「そのチップが、脳を動かしている。治らなければボーグは死ぬだろう。」
「ジョーディなら修理できるんじゃないかしら。」
ラフォージ:「プログラミングは、それほど複雑なものではありませんでした。…艦長の時のファイルが残っていますから、できると思います。」
ボーグを見つめるピカード。「ラフォージ。…ボーグのプログラムに手を加え、ルートコマンド※5の経路を変えることができるか。」
ラフォージ:「やってみないことには。アクセスコードの解明が必要になりますが、それにはまずデータ処理アルゴリズムの分析から始めないといけません。」
「ルートコマンドに触れれば、バイオチップにウイルスプログラム※6を仕込んでボーグの集合体に送り込むことができる。」
「インターフェイスを通じて、感染していきますね。」
「ボーグ全体が感染すれば…向こうのニューロ・ネットワークは崩壊するだろう。」
クラッシャー:「感染なんて、病気みたいな言い方ですね?」
「その通りだよ。死につながる、病気だ。」
ピカードを見るクラッシャー。


※3: TNG第74・75話 "The Best of Both Worlds, Part I and II" 「浮遊機械都市ボーグ(前)(後)」より

※4: biochips

※5: ルートコマンド構造 root command structure

※6: 侵略プログラム invasive program

観察ラウンジのラフォージ。「上手く狙い通りにいけば、ウイルスプログラムが動き出してから数ヶ月もすればボーグはシステムに異常を来すでしょう。」
ジャケットを着たピカード。「意見は?」
クラッシャー:「質問です。…システムに異常が起きると、どうなるの。」
データ:「ボーグはコンピューターで動いていますから、システムが壊れれば終わりです。」
「みんなわかって言っているの? …一つの種族を滅ぼすことになるのよ?」
ピカード:「通常なら非難されるべきことだが、ボーグが相手では選択の余地はない。」
ライカー:「そうです、これは戦争だ。」
クラッシャー:「宣戦布告があったわけじゃないわ。」
トロイ:「ボーグははっきりと言っているわ。我々を征服するって。」
ピカード:「いつの日か人類はボーグに吸収されてしまう。」
クラッシャー:「戦争にだってルールはあるでしょう。無関係な市民は殺せないわ。」
笑うライカー。「ボーグに市民なんていませんよ。」
ピカード:「彼らは一つの集合体だ。一人一人は独立した個人ではなく、手足に過ぎない。」
クラッシャー:「そうでしょうか。」
「何が言いたい。」
「…あの患者を見る限り、集合体の一部だなんてとても思えません。一人の青年が傷ついて、助けを求めているんです。その彼を、道具みたいに利用して仲間を殺させるんですか?」
「甘いことは言ってられん。敵は我々を倒しにかかってくる。話し合いで平和が得られる望みはない。…今の状況では、生き残るためには手段は選んでいられないんだ。」
通信※7が入る。『保安部から、艦長。』
ピカード:「ピカードだ。」
『ボーグが、意識を取り戻しました。』
「わかった。計画を進めろ。」

ボーグは独房の中で動いている。フォースフィールドの前で腕を伸ばす。
フォースフィールドに触れてしまい、壁の方へ向かった。
クラッシャー:「何をしているの?」
ピカード:「集合体にアクセスするインターフェイス※8を探しているんだ。自分が切り離されているとも知らずにな。」
ラフォージ:「仲間を呼ぶ誘導信号を発信していますが、フィールドを張ってあるので遮られています。」
「恐らく、集合体とのつながりを断たれ独りになったのは生まれて初めてなんだろう。」
クラッシャー:「空腹なんだわ? ……もちろん物は食べないわよ? …あらゆる有機物質から、必要な体内組織を合成することができるから。足りないのは、エネルギーよ。」
「…補給してやれ。」 拘束室を出ていくピカード。
ラフォージ:「了解。…パワーコンジットを調整して取り付けますよ。」
ボーグは壁を探るのをやめ、こちらを見ている。
クラッシャー:「機械なのにまるで、怖がってるみたい。」

フェンシング場で試合をする 2人。ガイナン※9とピカードだ。
ピカードがポイントを取った。マスクを外す。
ガイナン:「このスポーツ嫌いだわ?」
ピカード:「先週勝ったときは好きだと言ってたじゃないか。今日は剣※10が下がり気味だったからつけ込まれたんだ。」
「…だって剣を上げたら、下を突かれるじゃない。あなたとは実力が違うのよ。」
汗をぬぐうピカード。
ガイナン:「変わったゲストを乗せたようね。」
ピカード:「…まあな。」
「良かったのかしら。」
「どうかな? わからん。」
「あなたを理解してたつもりだけど、わからなくなったわ。」
「怪我人は助ける義務がある。そう言って、人道主義のドクターが譲らなかったよ。」
「ボーグは必ず追ってくるわ。…それはよくわかってるはずでしょ?」
「……もう一戦。」
ガイナンはため息をつき、立ち上がった。マスクを被る 2人。
突き合う中、ガイナンが足を押さえた。「痛い!」
ピカード:「…大丈夫か。」
その時、ガイナンは剣を刺した。マスクを外す。「敵に同情すると、こうなるのよ。」

拘束室に戻るラフォージ。「…パワーコンジットを取り付ける。」
ウォーフ:「私も一緒に入る。フィールドを一旦解除しろ。」
保安部員によってフォースフィールドが解除され、2人は独房に入った。見つめ続けるボーグ。
ラフォージ:「よーし。ジッとしてろよ?」
壁のパネルを開けるラフォージ。
ボーグは腕を動かし、近づいてきた。
ウォーフ:「少佐!」
だがボーグは動きを止めた。コンジットを取り付けるラフォージ。
ボーグは声を上げた。『我々は、ボーグだ。…お前たちを、征服※11する。抵抗しても、無意味だ。』
作業を続けるラフォージ。「周りを見てみろ。デカいこと言ってられる、立場じゃないぞ?」
ボーグ:『我々は、集合体に戻る。』
「…我々?」
『我々は、ボーグだ。』
「…ここには、お前一人だ。…名前は? 何て呼べばいいんだ?」
『サード・オブ・ファイブ※12だ。』
「番号で呼んでんのか。ほかにはないのか?」
『サード・オブ・ファイブ。』
「…単純でいいね? …OK。こいつを使え。…お前に合うようにパワーフローを調整してある。これが接続部。お前のアダプターに合わせてある。…礼はいいよ。」 ウォーフに近づくラフォージ。「もういいぞ。」
ウォーフ:「フォースフィールド解除。」
外に出るラフォージとウォーフ。ボーグはゆっくりとコンジットに近づく。
こちらをうかがいながら、腕を接続した。目を閉じる。
ラフォージ:「腹減ってたんだな?」
ボーグ:『なぜ、これを作った。』
「俺は親切なんだよ。気分は?」
『お前はボーグじゃない。』
「そうさ、なりたいとも思わないよ。」
『お前たちを征服する。…抵抗しても無意味だ。』
「それが御礼か?」 ラフォージは出ていった。


※7: 一部資料では声優に岩永哲哉さんがクレジットされており、これらの保安部員か転送部員のどちらか、または両方だと思われます

※8: アクセス端末 access terminal

※9: Guinan
(ウーピー・ゴールドバーグ Whoopi Goldberg) 前話 "Imaginary Friend" 「イマジナリィ・フレンド」に引き続き登場。声:東美江

※10: foil
TOS第7話 "The Naked Time" 「魔の宇宙病」でも

※11: このように「同化」が「征服」と訳されている個所があります

※12: Third of Five
(ジョナサン・デル・アルコ Jonathan Del Arco VOY第161話 "The Void" 「略奪空間の怪人達」の怪人 (Fantome) 役。ゲーム "Armada II"、"Bridge Commander" でも声の出演。ウェスリー役のオーディションも受けたそうです。ウルグアイ生まれ) 初登場。原語では次のラフォージのセリフで「船に 5人いたのか」と言っています。後に VOY で登場するセブン・オブ・ナインも似たような命名規則ですが、今回は「サード」と序数になっています。吹き替えでは「ナンバー3」。声:檀臣幸

ラボのラフォージ。「反抗的な態度をとったときは、エネルギーの量を減らしています。…その辺は奴もわかっていますよ。」
クラッシャー:「…まるで実験動物ね。」
「ドクター、そうは言いますけどルートコマンドを突き止めるためには奴がどういう情報処理パターンをもっているか把握しないといけないんです。そのために認識テストをやらせるんですから、反抗されてちゃできませんよ。」
「自分の仲間を滅ぼす手伝いだとも知らずにね。」
「ドクター!」
「戦争ですものね? わかってるわ。…協力はするけど、私は反対よ。」
「よしと。転送準備完了。もし奴が問題を起こせば、すぐにフォースフィールドを操作します。…いいですね? ラフォージから第3転送室。準備は?」
転送部員※7:『スタンバイしてます。』
「転送。」
中心にボーグ、それに付き添う保安部員も転送されてきた。周りを見るボーグ。
ラフォージは近づき、うなずいた。パワーコンジットに腕を接続するボーグ。
ラフォージ:「サード・オブ・ファイブ、こちらはドクター・クラッシャーだ。ドクター、サード・オブ・ファイブです。」
クラッシャー:「こんにちは。」
ボーグ:『ドクターとは。』
「ドクターっていうのは病気とか、怪我を治す人よ。」
『病気や怪我の者は回収し、ほかの者と代える。』
「あなたの場合は違うわ? 死にかけていたけれど、私が治したの。」
『…なぜだ。』
「命を救うのが仕事だからよ。」
『…エネルギーをくれたな。』
ラフォージ:「…ああ。」
『それが仕事か。』
「うーん、そんなとこだ。いいかサード・オブ・ファイブ、ドクター・クラッシャーが壊れたバイオチップを直してくれたんだが、正常に動くかどうかをテストするからな?」
『テスト。』
クラッシャー:「テストって言っても簡単なものよ? 図形を見て質問に答えてくれればいいの。」
『お前たちを征服する。』
ラフォージ:「わかったよ。でもその前に、質問に答えてくれてもいいだろ?」
『…答えてもいい。』
「悪いね。じゃあちょっと待ってろよ、サード・オブ・ファイブ。」
『お前の識別コードは。』
「コードって?」
自分を指すボーグ。『サード・オブ・ファイブ。』
クラッシャー:「名前のことね? 私達は番号じゃなくて、名前で呼ぶの。私はビヴァリー、彼はジョーディ。」
『我々の名前は※13。』
ラフォージ:「欲しいのか?」
『名前。』
クラッシャー:「私はビヴァリー、彼はジョーディ、あなた (ユー) は…」
『あなた…』
「あなたは…」
ラフォージ:「いや待って。それだ。ヒュー※14。どうだ?」
ボーグ:『ユー。』
「いや、『ユー』じゃなくて『ヒュー』だ。」
『…ヒュー。』
クラッシャー:「決まったわね、私はビヴァリー。」
ラフォージ:「俺はジョーディ。」
ボーグ:『…我々はヒュー。』
笑う 2人。

医療室。
図形が表示されている。
クラッシャー:「この図形を裏返しにしたら、どんな形になるか答えて?」 3つの図に切り替わる。「…どれになる?」 後ろには保安部員もいる。
ヒューは指差した。『これだ。』
クラッシャー:「正解。…パーフェクトね。…全問正解、空間図形認識能力はトップレベルだわ?」
ラフォージ:「あのアイレンズだ。複雑な映像情報もあれで処理しているんだ。」
「…一種のホログラムシステムを備えているのかしら。」
「多分そうでしょう。ヒュー、君のアイレンズをよく見たいんだけどいいかな。」
左目部分の装置を取り外すヒュー。『見ろ。』
ラフォージ:「…どうも?」
『ボーグに同化すれば、同じ装置を取り付ける。』
クラッシャー:「ヒュー。…私達は同化されたいとは思ってないわ?」
『なぜ抵抗する。』
「あなたたちのような生き方は嫌なの。」
『ここは静かだ。ほかの声が聞こえない。』
ラフォージ:「ほかの声?」
『ボーグの船では、我々は集合意識の中で生きている。常にほかの者の声が聞こえている。』
クラッシャー:「…今は独りぼっちで、寂しいってこと?」
ラフォージ:「返すよ。」
ヒューは部品を取り付けた。『このテストが終了したら、どうするつもりだ。』
ラフォージ:「……君を、送り返すよ。」
『…我々は戻れるのか?』
無言のクラッシャーとラフォージ。

テン・フォワードのラフォージ。「妙なもんで最初は罪悪感なんか全然感じてなかったのに、ヒューのことを調べてるうちに…」
ガイナン:「待って。…ヒュー?」
「そう、ヒューって呼んでるんだ。」
「…名前をつけたの?」
「だって、何かあった方が呼ぶときに便利だろ?」
「それであのボーグに、ヒューってつけたのね?」
「何かさ、思ってたのと違うんだ。」
「どう違うの?」
「わかんないけど…何だかあいつ、親とはぐれた子供みたいでさ。」
「そう言ったのは今日あなたで 2人目よ。あのボーグがまるで迷子の子供みたいだってね?」
「…これでいいのかって気がしてきたんだ。俺、プログラミングを変えてあいつを歩く爆弾に変えようとしてるんだからな。」
「一つ言っとくわ。『迷子の坊や』の親が探し回ってるはずよ。彼らはあきらめないわ。いつか必ず見つけて、私達を倒しに来る。ボーグはあなたと違って容赦なんかしないわ? 感情をもっていないんだから。」
「じゃあヒューと話してみろよ。そう言いきれなくなるから。」
「話すことなんか、何もないわ。」 目を逸らすガイナン。
ため息をつき、カウンターを離れるラフォージ。「話すのが嫌なら、会うだけ会ってみれば?」 出ていく。

ブリッジ。
作戦室を出るピカード。「どうしたライカー。」
ライカー:「長距離スキャナーが、接近中の船を捉えました。」
「分析を。」
データ:「現在スピードは、ワープ7.6。…質量、250万メートルトン。形状は…立方体。」
ライカー:「ボーグです。」
「…月に墜落していた、小型偵察機※15と類似しています。…星から出ている電磁波がセンサーを妨害していますので…接近するまで、探知されずに済みます。」
ピカード:「時間にすると?」
「現在の速度でいくと、あと 31時間7分です。」


※13: 原語では "Do I have a name?" と言っているため、自我が目覚める前なのに変だという指摘があります

※14: Hugh
吹き替えでは「ブルー」。「ヒュー」が日本語では発音・聞き取りしにくいからだそうです。「私はビヴァリー…」の個所から、次のように訳されています。クラッシャー「見た目に、近い名前がいいわ?」 ボーグ『何だ』 「うーん…」 ラフォージ「いいのがある。例えば、ブルーとか。どうだ?」 ボーグ『ブルー?』 「顔色が青いから、ブルーだ」

※15: scout ship
ボーグ偵察船 (Borg scout ship)

拘束室に来ているガイナン。ヒューを見つめる。「ボーグにしちゃ弱そうね。」
ヒューはパワーコンジットから離れた。『…何者だ。』
ガイナン:「…お前たちを征服するって言わないの?」
『征服されたいのか。』
「違うけどボーグは…いつもそう言うでしょ。」
うなずくヒュー。
ガイナン:「『抵抗しても無意味だ。』」
ヒュー:『抵抗しても、無意味だ。』
「…無意味じゃない。私の種族はボーグに襲われて、抵抗したわ。何人かは生き残った。」
『抵抗は、無意味ではないのか。』
「ええでも、ボーグのせいで…仲間はわずかになって、宇宙に散り散りになってしまった。帰る故郷ももうないわ。」
『…お前も…寂しいのか。』
「寂しい?」
『仲間もいない。故郷もない。…同じだ。我々も寂しい。』

ラボ。
ヒューの腕に装置が当てられている。
ヒュー:『何をしてる。』
ラフォージ:「…腕のメカニズムを調べてるんだよ。」
『…なぜ。』
「詳しく知りたいんだ。」
『なぜだ。』
「…なぜって、違う種族だから。未知の種族に会うと、いろいろ調べたくなるのさ。」
『我々はどんな種族も同化する。同化すれば全てがわかる。』
「…そうだな。知ってるよ。」
『…その方がたやすい。』
「…だが、俺たちはそういうやり方はしない。」
『なぜだ。』
「…いいか? こう考えろ。お前たちボーグは自分の話をするときは、いつも『我々』って複数形でしか言わないだろ? 自分を独立した存在として捉えたことなんかないんだ。だからお前はいつも『私』じゃなく、『我々』としか言わないのさ。みんな一人一人、別々の存在なんだ! 俺は、ジョーディだ。…俺の生き方は俺が決める。他人じゃなく、自分自身で決める。俺たちにとっちゃ、自分が自分だって思えなくなるくらいなら死んだ方がマシなんだ!」
『眠ってるとき、ほかの声は聞こえてこないのか。』
「聞こえない。」
『…寂しくは、ないのか。』
「寂しいときもある。でも友達がいる。」
『友達。』
「そう。寂しいときに、そばにいてくれる人のことだ。いつも…一緒にいたい相手だ。」
『…友達は、ジョーディだ。』

観察ラウンジのラフォージ。「これがそうです。」
ピカード:「この図形が?」
モニターに複雑な図形が表示されている。
ラフォージ:「ボーグに変則プログラムだと見破られるとまずいので、カモフラージュしてあります。」
ピカード:「この図形でコンピューターシステムを壊せるのか?」
データ:「これはパラドックス図形で、現実の空間には存在しません。」
ラフォージ:「ヒューがこの映像を捉えれば、バイオチップの機能で分析をします。」
「…分析は不可能なので彼はメモリーバンクに図形を記憶し、サブルーチーンで更に分析を続けるでしょう。」
「ヒューがボーグの集合体に戻れば、メモリーがネットワークに乗ってボーグ全体に伝わるわけです。」
「…この図形を分析すると、各段階で矛盾が発生します。答えのないパズルを解くようなもので、やがてボーグの解析システムは破綻を来します。」
ピカード:「考えたな。どれくらいの時間で効果が出る。」
ラフォージ:「図形の分析が、数百サイクル繰り返された後です。」
「いつ始められる?」
「約20時間後です。バイオチップの最終テストをしていますので。」
「わかった。準備を進めてくれ。」
出ていくデータ。裾を伸ばすピカード。
ラフォージ:「艦長。…計画をこのまま進めて、いいものでしょうか。」
ピカード:「…どうした。」
「その…ボーグが思っていたのと、違うんです。」
「…何がだ。」
「ただの機械だと思っていたら、感情があるんです。寂しがってる。…彼を利用するのは、正しいこととは思えません。」
「何世紀も前、科学者が動物実験の動物に愛情をもって実験に支障を来すことがあった。…特に、動物が死ぬような実験ではな。…あのボーグには必要以上に深く関わらないことだ。」 外へ向かうピカード。
「了解。」

寝間着姿のピカードは、本を取り出した。チャイムが鳴り、ドアを開ける。
ピカード:「ガイナン。…入ってくれ。」
ガイナン:「入っていいの? 独りで過ごそうとしてたんじゃない?」
「いやあ来てくれて嬉しいよ、何か飲み物は。」
「お構いなく。こないだフェンシングの剣が下がり気味だって、言われたじゃない? 腕の筋肉を鍛えなきゃって思ったわ。」
「いい心がけだ、フェンシングに腕力は大事だからな。」
「バーテンダーにもね。…ボーグのことだけど、あなたも彼を見て驚かなかった?」
「…驚く。」
「名前もあるのよ。ジョーディがつけたの。ヒューって名前。…おまけにホームシック。ボーグと会って話してみろって、ジョーディに言われたけど断ったわ。でも気がついたら、ボーグの前に立ってた。なぜ行ったのかわからない。多分…好奇心ね。……あなたがやっていることは間違ってないって、はっきりそう言って?」
「計画を思い留まるように私を説得しに来たのか?」
「違うわ。自分で自信がなくなってきたの。」
「…つい 2日前、君はボーグに同情することがどんなに危険か私に説いたじゃないか。その君が今になって、ボーグを敵と思うなと言うのか。」
「違うわ、だけどあのボーグと話してみてあなたは何の疑問も感じなかった?」
「話してはいない。」
「どうして?」
「必要ない。」
「あの子を利用する気なら。」
「あの子じゃない、あれはボーグだ!」
「あの子を利用してボーグを滅ぼす道具にするつもりだったら…その前に一度あの子の目を見て、確かめることね! …彼がまだボーグなのかどうか。」
「…たとえラフォージが名前をつけたからといって、ボーグには変わりない。まだ若いからといって無害ではない。ボーグはボーグだ。たとえ君たちが奴をペット扱いしようと…計画の変更はしない。」
「…いいわ。でも一度も彼と話さないままでいたら、後々まで今の決断を悔やむことになるかもしれないわよ?」

作戦室。
中を歩いているピカード。
通信が入る。『ウォーフから艦長。』
ピカード:「ピカードだ。」
『転送準備ができました。』
「……転送。」
ピカードの背後に、ヒューとウォーフが転送されてきた。振り向くピカード。「外で待っていてくれ。」
無言で出ていくウォーフ。
ヒュー:『ロキュータス?』
ピカード:「……そうだ。…私はボーグのロキュータスだ。」
『…なぜここに。』
「この文明はまだ幼い。同化をスムーズにするために派遣されている。…お前の識別コードは?」
『ヒュー。』
「識別コードを聞いている。」
『…我々はヒュー。』
「それはボーグの識別コードではない。」
『…サード・オブ・ファイブだ。』
「この文明と同化する。」
『彼らは望んでない。』
「構わん。」
『抵抗するはずだ。』
「抵抗は無意味だ。」
『…抵抗は、無意味ではない。逃れた者もいる。』
「逃げても無駄だ。いずれ見つかり、残らず同化される。」
『…ジョーディも同化してしまうのか。』
「そうだ。」
『彼は嫌がってる。…同化されるぐらいならば死を選ぶだろう。』
「では死ぬまでだ。」
『…駄目だ。ジョーディは死なせない。ジョーディは、友達だ。』
「この船を征服するのに手を貸せ。」 詰め寄るピカード。「お前はボーグだ、我々に協力しろ。」
『私は嫌だ。』
「何だって?」
『私は、お前に協力しない。』
「私。」
『ジョーディを同化してはいけない。』
「だがお前はボーグだろう。」
『…違う。私はヒューだ。』



観察ラウンジのピカード。「計画の妨げになるものは全て排除しようと思い、これまでボーグと会うのを避けてきた。…だが確かに彼は…自我に目覚めた。独立した存在と…思わざるを得ない。私のこともロキュータスではなくピカードだということを受け入れたよ。」
ラフォージ:「計画は変更ですか。」
「そうだ。…人格があるのにそれを無視して利用するようでは…ボーグのやっていることと変わらん。そこでだ、提案はないか。」 裾を伸ばすピカード。
ライカー:「彼を墜落現場に戻しましょう。…エンタープライズでの記憶は全て消して。」
クラッシャー:「でも記憶を消せば、今の彼の人格は消えてしまうのよ?」
「どのみち戻ればボーグの集合体に吸収されてしまう。」
ラフォージ:「人格を与えておいて、それを勝手に奪おうというんですか。」
クラッシャー:「…おかしいと気づいて、ボーグが彼を壊す恐れはないかしら。」
ピカード:「壊しても、何のメリットもない。恐らくヒューの記憶を消し去って、元に戻すだけだろうが。」
ライカー:「いずれにせよ記憶は消されますね。」
「…だがもしも、ボーグがヒューの変化に気づいて記憶を消す前に…取り調べ、彼の中に芽生えた自我の概念が…ボーグ全体に伝わったとしたらどうなると思う。それぞれが自意識に目覚めれば、今の集合体としてのありかたに…矛盾が生じる。…彼らにとってこれ以上危険なプログラムはない。集合意識しかもたなかったボーグが自己の意識をもつようになれば、やがて近いうちに…ボーグは変わるだろう。……記憶を消すのはやめる。」
クラッシャー:「一ついいですか? ヒューが帰りたくないと言ったら。」

魚のリヴィングストンを見つめているヒュー。
作戦室に入るラフォージ。「やあヒュー。」
ヒュー:『やあジョーディ。』
ピカード:「ヒュー。ボーグの救護船が、あと 3時間ほどでこちらに着く。墜落事故の場所に戻って、待っていれば…故郷に帰れる。…ここに残ってもいい、君の意思次第だ。」
『私の意思は、関係ない。』
ラフォージ:「関係あるんだよ。大事なことだ。」
『ボーグは集合体に属する。一人欠ければ、取り戻しに来る。』
ピカード:「ボーグの報復は今は考えなくていい。君自身はどうしたいんだ。」
『お前たちの方が、数が多い。…私の意思は重要ではない。』
ラフォージ:「そうじゃない、お前が選べるんだよ。」
『…選ぶ。』
「選ぶんだ。ボーグに戻りたいのか、ここに残るか。」
『残っていいのか。』
ピカード:「君の身柄を保護しよう。」
『……自分で、選ぶのか。…ジョーディのところに残りたい。……だがそれではジョーディが、危険だ。…私を戻してくれ。そうするしかない。』
ラフォージ:「ヒュー。それでいいのか。本当に。」
『…そうだ。』

転送室。
ピカードが入った。「あと一時間もすればボーグ船が、君を迎えに来る。…ヒューを月に転送した後、我々は星の陰に入る。そこならボーグのセンサーには映らない。」
クラッシャー:「…さよならね。知り合えてよかったわ。」
ヒュー:『さよならビヴァリー。命の恩人だ。』
ラフォージ:「ヒュー。考え直してもいいぞ。」
『…戻らなければ。』
「…一緒に、行かせて下さい。」
ピカード:「…ボーグはラフォージには手を出さないと思うがどうだ。」
ヒュー:『ボーグのターゲットは文明だ。個人は関係ない。』
クラッシャー:「でも艦長は誘拐されたわ?」
ピカード:「人間と対話するのに代弁者が必要だったからだ。…君がボーグ船に行ったときも無事だっただろう? 同行を許可する。」
転送台に立つヒューとラフォージ。
微笑むピカード。「お別れだ。」
ヒュー:『私は、ヒューであることを忘れたくない。』
「…転送。」
転送される 2人。

衛星に実体化する。
指差すラフォージ。「あそこだよ、お前が倒れていたのは。」
ヒュー:「ではあそこで待つ。」

恒星のそばに戻ったエンタープライズ。
データ:「星の陰に入りました。電磁波レベル、上昇中。」 操舵席にはゲイツがいる。
ピカード:「防御スクリーン強化。待機する。」
ライカー:「ボーグ船の位置は。」
データ:「星の電磁波で※16センサーが妨害されています。…速度から計算すれば、約3分後に星系内に到達します。」

ボーグ船の残骸のそばにいるラフォージ。「迎えが来たようだ。……元気でな?」
ヒュー:『ジョーディ。君を忘れないようにする。』
ラフォージはため息をつき、残骸を離れた。ボーグ 2体が転送されてくる。
ラフォージが見ている前で、ヒューに近づく。腕同士をつないだ。
歩いていく 3人。死んだボーグから部品が回収され、全て転送される。
並ぶヒューたち。転送される中、ヒューはラフォージの方を見た。

宇宙空間を進むエンタープライズ。


※16: 吹き替えでは「星の電磁波」と聞こえます

・感想など
ヒュー (ブルー) が初登場し、故マイケル・ピラーもお気に入りだったというエピソード。ボーグ弱体化の始まりという見方もあって、関連エピソードの中では比較的低い順位となりました。とはいえ紛れもなく過去のボーグ話を引き継ぎふくらませた上での、ST (TNG) らしい展開と言えます。ラフォージやクラッシャーのキャラクターが明確に生かされていることはもちろん、ピカードがヒューと対峙するシーンは絶品ですね。この後 "Descent" 「ボーグ変質の謎」で後日談が描かれ、映画 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」では「怖いボーグ」に戻るものの、VOY で自我をもったセブンのレギュラー入りと流れていくわけですね。
監督の Robert Lederman は初演出ですが、この後 TNG 第7シーズンでもう一度担当しただけです。タイトルはアイザック・アシモフの「われはロボット」からですね。


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