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TOS エピソードガイド
第8話「セイサス星から来た少年」
Charlie X

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・イントロダクション
※1※2※3『航星日誌、宇宙暦 1533.6※4。我々は今科学調査船※5アンタレス※6に接近し、船長と副長※7が珍客を連れて現れるのを待っている。』
廊下。
ターボリフトを出たカークは、チュニック姿だ。
転送室に入った。「準備はいいぞ、転送開始。」
操作する転送部員。
荷物と共に宇宙艦隊士官 2人と、少年が転送されてきた。
握手するカーク。「レイマート船長※8、カークです。」
レイマート:「これはナビゲーターのトム・ネリス※9。」
「やあ、いらっしゃい。」
ネリス:「はじめまして。」
レイマート:「そしてこれが難破船の生き残りの、チャーリー・エヴァンズ※10です。記録をどうぞ。」 チップ状のテープを渡す。
カーク:「エヴァンズ君、話は聞いてる。…よく来てくれた。」
エヴァンズもレイマートたちも何も言わない。エヴァンズは一瞬白目を見せたが、カークは気づいていない。
レイマート:「素晴らしい少年です、こういう少年を発見したのは私達の誇りです。」
ネリス:「いやこれは一生の思い出となるでしょう、非常に頭のいい少年でして。」
「そうなんです。問題の惑星にただ一人生き残って大きくなったんですよ。2、3本のマイクロ・テープだけを頼りにして…」
エヴァンズは荷物を持ってきた。「この船には何人乗ってるんですか?」
言葉を遮られたレイマート。「宇宙に街一つ作れるほどだ。旗艦クラス※11だから確か 400人以上でしたね?」
カーク:「428名です、正確には。…何か御要望はありませんか、医療品とか食料とか。」
エヴァンズ:「…400人。…僕みたいな人間が。こりゃすごいや。…本当なんですね。」
ネリス:「楽しいだろ、先のことを思うと。」
レイマート:「…実は、手放したくないんですが第5植民星※12にこの子の親戚がいてあなたがそっちへ行かれるというので。」
エヴァンズ:「中を見せてください。全部。…乗組員も装備も。」
カーク:「話の邪魔をしないで欲しいな。行儀が悪いぞ?」
「…すいません。」
「レジャー用のテープをたくさん持ってますんで、少しお分けしましょう。」
レイマート:「いやあ我々はわずか 20名でいつも仕事に追われていますんで御辞退しますよ。」
「調査船の人たちは仕事だけが生き甲斐みたいですねえ。」
「今は別に。」
自動で開くドアに驚くエヴァンズ。ジャニス・ランド船長付下士官※13がやってきた。
カーク:「じゃ、ソーリアン・ブランデー※14はどうです。」
レイマート:「いえ結構です。じゃ、ご無事を。」
「ありがとう。」
転送される 2人。
※15カーク:「ランド、こちらチャーリー・エヴァンズ君だ。部屋へ案内したまえ。ついでに記録をドクター・マッコイに渡してもらいたいんだが?」
ランド:「はい。どうぞごちらへ?」
ランドを凝視していたエヴァンズは、カークと見比べる。「あの、君女なの?」
不満そうなランド。
エヴァンズ:「これ女ですか?」
カーク:「女だよ。」
連れて行くランド。


※1: このエピソードは、ジーン・ロッデンベリー原案です

※2: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 見えざる破壊者」収録「チャーリイの法則」になります。邦題が原題の直訳になっていませんが、これは小説では当初のタイトルである "Charlie's Law" ("Charles's law" 「シャルルの法則」のモジリ) が原題になっているため

※3: 本編であるにも関わらず、パイロット版エンタープライズのストック映像しか使われていないのは今回だけ

※4: 吹き替えでは「0401.6156」

※5: 原語では「貨物船」「輸送船」「科学調査船」と呼び方がブレていますが、吹き替えでは統一

※6: Antares
エンサイクロペディアでは「U.S.S.」名がついており、番号は NCC-501。リマスター版で姿が初登場し、その際番号も公式のものになりました。形状は TOS第5話 "More Tribbles, More Troubles" 「謎の新兵器パラライズ光線」の、無人貨物船と同一。書籍 "Star Trek Concordance" 新版 P.278 にも NCC-717 として絵が載っていますが、ファンによる創作です。さそり座で最も明るい星にちなんで。吹き替えでは「アンタレス

※7: 吹き替えでは「一等航海士」

※8: Captain Ramart
(チャールズ・J・スチュワート Charles J. Stewart) 声:高城淳一

※9: Tom Nellis
(ダラス・ミッチェル Dallas Mitchell) アンタレスの 2人とエヴァンズは、パイロット版の「古い」制服を着ています。記章はもちろん独自のものです。声:家弓家正

※10: チャールズ・エヴァンズ Charles Evans
(ロバート・ウォーカー・ジュニア Robert Walker Jr. クレジットでは「ジュニア」表記はなし。父親は「見知らぬ乗客」(1951) に出演。母親も女優のジェニファー・ジョーンズ) 吹き替えでは「ピーター・エヴァン」。スコットにチャーリーという名前を使っているため、ファーストネームが変えられました。なおこのエピソードには、スコットは登場していません。またこのレイマートのセリフのみ、「エヴァン」と言っているようにも聞こえます。声:前川功人。DVD・完全版ビデオ補完では真殿光昭、VOY キムなど

※11: 原語では宇宙船 (starship、パトロール船)

※12: Colony V
アルファー第5植民星 (Colony Alpha V)、Earth Colony V とも

※13: Yeoman Janice Rand
(グレース・リー・ホイットニー Grace Lee Whitney) 前話 "The Naked Time" 「魔の宇宙病」に引き続き登場。声:此島愛子、DVD・完全版ビデオ補完では榎本智恵子

※14: Saurian brandy
TOS第6話 "The Man Trap" など。吹き替えでは「宇宙ブランデー」

※15: 旧国内オンエア版では、カークが近づくシーンがほんのわずかカット

・本編
『航星日誌、宇宙暦 1533.7※16。我々は珍客を、アルファー第5植民星へ運ぶことになった。チャールズ・エヴァンズは 14年前の遭難事故でただ一人生き残り、奇跡的にも知性をもつ健康な人間として成長してきたのだ。』
医療室。
壁の運動器具を使うエヴァンズ※17
マッコイ:「しかし、その難破船が積んでいた食料だけでまさか 14年もの間もつわけないだろう。」
エヴァンズ:「なくなってからは、自分で探したんです。その、歩き回って。」
「そしてテープを聴いただけで言葉を覚えたのかね?」
「記憶バンクを使って、会話の練習をしました。」
「よし、卒業※18だ。」
「卒業?」
「そう、百点満点だね。健康そのものだ。」
ベッドを降りるエヴァンズ。「あの船長さん、カークとか。」
マッコイ:「そうだ。」
「どうして僕をエヴァンズ君って。」
「君の名前だろ?」
「船長さん、みんなとは違った感じですね。」
「当然さ、二人といない立派な船長だよ。」
「…僕は好きですか。」
「どうしてだね?」
「だって、この前の船じゃ嫌われちゃって。僕は、好かれるように努力したのに。みんなに好かれたいんです。」
「君の年頃じゃみんなそうだよ。」
一瞬笑みを見せたエヴァンズ。
マッコイ:「さあ行こう、部屋でゆっくりしなさい。」

廊下で作業しているクルーに近づくエヴァンズ。笑みを返すクルー。
床下※19に棒が入れられている。エヴァンズは微笑んだ。

ジェフリーズ・チューブを出てくるエヴァンズ。
続く技師※20たちが話している。「あとは、俺が片づける。娯楽室へ行ってろよ。」
クルー※21:「OK、向こうで待ってる。」 技師の尻をはたいて歩いていく。
「よーし。」
エヴァンズに挨拶する技師。「やあ。」
エヴァンズは微笑み、歩いていく。

自室※22を出たランド。エヴァンズがいた。
追いかけるエヴァンズ。「プレゼントがあるんだ!」 香水を手渡す。
ランド:「まあ、ありがとう。ゆっくり御礼を言いたいんだけど、いま仕事中なのよ行かないと。」
「そういうの好き?」
「ええ、もちろん。」 改めて香水を見たランド。「…私の一番好きなものよ? どこで手に入れたの? この船で売ってないのに※23。」
「プレゼントだよ。」
「それは、でもどこで…。早く御仕事しないとダメなの…ごめんなさい…」
「少し遅れてもいいでしょ?」
「…今日は後一時間で暇になるわ? そしたら、6号娯楽室へ行ってるわ。デッキ3 よ?」
「じゃ僕も行くよ。」
ランドが歩いていこうとしたとき、エヴァンズはランドのお尻をはたいた。
ランド:「待ちなさい!」
エヴァンズ:「どうして? 怒らないでよ、別に。…何も。」
周りを見るランド。「だってあなた、肩ならともかくこともあろうに女性の…。…まいいわよ、でも二度とやっちゃダメよ?」
エヴァンズ:「怒らないで?」
「ねえ、このことをカーク船長かドクター・マッコイに聞いてみたらどう? …そしたら教えてくださるわよ、ね?」
「聞くよ。」
「それじゃ。」

ブリッジのスクリーンに映る宇宙空間。
マッコイ:「しかしもしだ、セイサス星人※24がいたならいたとどうして言わないんだ※25。」
スポック:「それは、なかなか面白い質問ですね。…探査機によればこちらには障害物はありません。」
カーク:「よし。ドクター・マッコイ、ミスター・スポックはチャーリー…」
ウフーラ:「すいません、現状報告です。」
クリップボードにサインするカーク。「ありがとう。…チャーリー・エヴァンズの教育プログラムを作ってるんだがね。…地球の歴史とか、彼自身の思想的背景とかいったもんだ。…君は必要な医学的指導を行って欲しいな。もちろんこの場合問題になるのは、その…思春期だ。」
マッコイ:「君がやった方がいいんじゃないのか? 彼は君をパパのように尊敬してるぞ…」
「逃げ腰になるなよ、これは君の仕事だ。」
スポック:「チャーリーは、セイサス星人のことを何か言ってませんでしたか。」
カーク:「問題の惑星にまだセイサス星人が生き残ってるという伝説を信じるのかね?」
「チャーリーが何よりの証拠ですよ、知性をもつ生物がいることはまず間違いないですね。いなければチャーリーは死んでます。…船の食料はほぼ一年ほどで底をついたでしょうし…」
マッコイ:「でも 4つになれば木の実 (このみ) や果物を摂って食べて…」
「調査ではほとんど植物はありませんよ、あの星には…」
「調査ほど当てにならんものはないよ。」
「科学的に話して欲しいですね、感情は一切捨てて。」
カーク:「やめたまえ。それよりもだ、チャーリーをどう扱うかが差し迫った問題じゃあないのかな?」
マッコイ:「いま必要なのは父親代わりになってくれる人だ。」
「ふーん、父親代わりの人間が必要なら君がなったらどうだ? …適任者だぞ。」

※26ヴァルカン・リュート※27を弾くスポック。
娯楽室ではウフーラとランドもトランプで遊んでいる。
ウフーラが鼻歌を歌い始めた。
演奏を止めるスポック。
ウフーラ:「ごめんなさい。…つい釣られて。」
笑うレズリーたちクルー。
スポックはわずかに微笑み、別の曲の演奏を始めた。
ウフーラに向かって微笑むランド。
ウフーラは立ち上がり、歌い出す※28。「この船のどこかに 恋する悪魔が一人 恐ろしい耳と瞳で 心の扉開く 見つめて眠らせ 手で触れその気にさせる 異星人の愛の虜よ 心奪われ ほら宇宙に暮らす 美しい乙女は 胸振るわせて君を待つの」 笑う。「彼はみんなの素晴らしい恋人 何をするか
わからない」
やってきたエヴァンズはカードを手に取りランドに見せるが、相手にされない。
歌が終わり、拍手するクルー。
ランド:「アンコール!」
エヴァンズを見たウフーラ。「宇宙の彼方の星から 若者がやってきた 当てもなく恋を求めて あなたを捜し求め チャーリーはみんなの 素晴らしい恋人 何をするか わからない」
エヴァンズは一瞬、睨んだ。
その途端、ウフーラは苦しむ。スポックのリュートも鳴らない。
ウフーラは喉に手を当て、咳をした。
ランドに尋ねるエヴァンズ。「いいもの見たい?」 トランプを 3枚テーブルに置く。「裏返してみてよ。」
言われた通りにするランド。
すると図柄は消え、ランドの写真※29になっていた。「すごい、どうやったのよ。」 それぞれ違うものだ。
エヴァンズ:「手品はたくさん知ってるんだ。アンタレスで教えてもらったの。」
集まるクルー。カードは元の図柄に戻っていた。
ランド:「…どこでどうなってんの?」
4つのエースを並べ、一枚を投げ捨てる。残りを手にし、ランドを見つめるエヴァンズ。
ランドの胸元から、投げ捨てたはずのカードが出てきた。笑い、拍手する見物人。

廊下。
カーク:「地球では今日は感謝祭※30だから、七面鳥に似た人工肉をみんなに御馳走して欲しいな。」
エヴァンズがやってきた。
カーク:「やあ。」
エヴァンズ:「船長さん。」
「何だ?」
「聞きたいことがあるんです。どうして叩くと…ちょっと言いにくくて。」
「言いたいことははっきり言った方がいいね。」
「さっき下の通路であの子に、ジャニスに会ったときに…こうやったんですよ。」 カークの尻を叩くエヴァンズ。「そしたら怒って、船長に聞けって言われました。」
「私に。そうか、それはね。…ああ女性に、ましてもいいことはたくさんあるが、その少なくとも君には。…うーんとにかく女性を叩くのはね、いけないことなんだ。男同士なら…別に問題はないが。相手が女性となると、これは……その、当然その話は別だ。…わかるかな?」
「わかりません。」
ウフーラの呼び出し。『カーク船長。』
カーク:「失礼。カークだ。」
『アンタレスのレイマート船長から緊急連絡※31です。』
「よし、すぐにブリッジへ行く。」
エヴァンズ:「僕もいいですか?」
「いやあ、後にしろ…」
「邪魔しませんから。」
「じゃあ。」
ターボリフトに入る。

操作するウフーラ。「出力を強くして頂けませんか、通信状態が悪くて聞こえません。」
レイマート:『出力はこれで最大だ。早くカーク船長を出してくれ!』
やってきたカーク※32。「カークです、どうしました。」
レイマート:『船長、ここまで離れるのを待ってたんだが大変なんです。』
「通信を再開しろ。」
ウフーラ:「もう発信していません。」
「呼んで。」
エヴァンズ:「あの船は出来が良くないんだよ。」
エヴァンズを見たカーク。エヴァンズはそれ以上何も言わない。
カーク:「アンタレスが発信していた付近を探査機※33で厳重に調査。」
スポック:「はい、わかりました。」
「…アンタレスに何かあったと思うのかね?」
エヴァンズ:「…わかりません。」
スポック:「探査機で、破片をピックアップしました。」
カーク:「アンタレスは。」
「…ピックアップしたのはアンタレスの破片です。」
カークはまたエヴァンズを見た。
通信※34が入る。『カーク船長、こちら調理室。』
カーク:「カークだ。」
『オーブンに入れておいた肉が、いつの間にか本物の七面鳥に変わっています。』
「冗談を…」
笑うエヴァンズ。ブリッジを出ていく。


※16: 吹き替えでは「0401.6157」

※17: エヴァンズはベッドで横になっているはずですが、マッコイが見たモニターに立った姿で映り込んでいます

※18: 原語では "four-O" 「完璧だ」。海軍の適性試験での最高評価、4.0 に由来する俗語

※19: このように床に格子がある描写もありますが、今後は出てきません

※20: クルーその1 Crewman I
(ジョン・ベラー John Bellah 前話 "The Naked Time" の笑うクルー (Laughing Crewman) 役 (同一人物?))

※21: クルーその2 Crewman II
(ガーランド・トンプソン Garland Thompson TOS第5話 "The Enemy Within" 「二人のカーク」のウィルソン転送技師 (Transporter Technician Wilson) 役 (同一人物?))

※22: 「3F 125」という部屋番号が見えます

※23: 原語でも「船の店 (stores) にはないのに」。貯蔵庫という解釈もできるかもしれませんが…

※24: Thasians
惑星名は Thasus

※25: 今後もよく使われる環状星雲 (M57) の写真が、モニター上に見えます

※26: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。完全版ビデオ (第1シーズンの一部) および DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※27: Vulcan lute
初登場、Wah Chang デザイン。VOY第24話 "Persistence of Vision" 「ボーサ人の攻撃」で名称が言及される前は、ヴァルカン・ハープなどと呼ばれていました

※28: スコットランドの歌、"O Charlie is My Darling" が原曲のようです

※29: 宣材写真

※30: Thanksgiving
2266年11月22日と思われます

※31: 原語では「『D』チャンネルで連絡」

※32: ターボリフトに入るときは普通の制服でしたが、到着するといつの間にかチュニック姿になっています

※33: 発射するタイプの探査機ではなく、探査スキャナーのこと

※34: 調理室シェフの声 Galley chef's voice
(ジーン・ロッデンベリー Gene Roddenberry) ロッデンベリーが「出演」した唯一の例。ENT でシェフが登場しなかったのは、このことへのオマージュなのかもしれません。ノンクレジット。吹き替えでは井上弦太郎?、TOS チェコフなど

『航星日誌、宇宙暦 1535.8※35。地球連合政府※36は科学調査船アンタレスの行方不明を発表した。』
娯楽室。
立体チェスをやっているカーク。
スポック:「ゲームに身が入りませんね。チェック。…アンタレスですか?」
カーク:「乗員 20名の調査船が消えた。…理由もなく。レイマート船長は予期していなかったに違いない。まさに謎だよ。」
「私は関係あると思いますね。少年と。」
「いくら君の勘が鋭いと言ってもそれは※37。」
「彼はアンタレスの運命を知っていたような態度でした。」
エヴァンズが来て微笑んだ。
カーク:「しかしそれを立証するものは何一つないぞ。こっちへ来たまえ?」
スポック:「またですよ。チェック。」
「…チェックメイト。」
「…船長の、非論理的な考え方もチェスでは役に立つようですね。」
「理論では得られない閃きだ。」
「何とでもどうぞ、とにかくこの勝負は負けです。」
「チェスは知ってるかね?」
エヴァンズ:「何度か、アンタレスで見ました。やっていいですか。」
「チェスの名人の手ほどきを受けるといい。」
出ていくカークを見るエヴァンズ。
スポック:「この立体チェスの基本的な原理は、数学によって解明できる。例えば白をここに、黒を 2階のここに置くと…」
エヴァンズ:「わかってますよ、やりましょう。」
「よろしい?」
ゲームを始める 2人。スポックは黒、エヴァンズは白の駒だ。
スポック:「…それは命取りだったな。」
エヴァンズ:「そんなはずない。」
「…チェックメイト。」
「嘘だ! …そんなの。」
「……勝負は終わった。」 スポックも娯楽室を後にした。
白目を見せるエヴァンズ。すると、白い駒だけ焼けただれたように変化した。
立ち去るエヴァンズ。

廊下を早足で歩くエヴァンズ。クルーが注目する。
ランドとぶつかりそうになる。「あらチャーリー、探してたのよ? あなたに紹介したかったの、ティナ・ロートン※38よ。…チャーリー・エヴァンズ。」
ロートン:「よろしくね?」
「年が同じぐらいだから気も合うでしょう?」
エヴァンズ:「話があるんだ、二人で。」
「でも、ティナは。」
ロートン:「私行くわ? 何だかお邪魔みたいだから。」 歩いていった。
「チャーリー、失礼じゃないの。あんな態度ってないわ?」
エヴァンズ:「でも、僕が話したいのは君なんだ。」
「言い訳にならないわ。礼儀ってものを習いなさい、これからはあなた独りで生きていくんじゃないんだから。」
「でも彼女には、興味ないよ。…違うんだもん。…君とは。…あの子はただの女だけど、君はいい匂いがする。この船の女はみんな、ティナと同じだ。君だけが、特別なんだ。…わかってくれるだろ? …君の、そばにいたいんだ。いつも。もし宇宙を手に入れたら、君にあげる。君を見ると、心が騒ぐんだ。とても、抑えきれない。…この気持ちわかる?」

ブリッジのカークは微笑む。「何だって?」
ランド:「私に打ち明けました、好きだって。」
「しかし彼はまだ 17歳の子供だぞ。」
「そうですわ? でも…」
「例の叩いた件ならもう話したよ。」
「あれとは別です。あの顔は、思い詰めてる感じです。早く何とかしないと、あの子は傷ついてしまいますわ。何とか話して下さい。」
「ふーん。」
「そうしないと彼が可哀想です。…恐らくこれはあの子にとっては、初恋でしょう。だから上手に…」
「よーしわかった、ああできるだけやってみよう。」
「お願いします。」

微笑んで部屋に入るエヴァンズ。
カーク:「入りたまえ。…チャーリー。
…チェスの駒が、いつの間にかこんな風になってしまったんだが。…気づかなかったかね? …さっき使ったとき※39。」 テーブルに置いてある。
エヴァンズ:「いえ、それじゃ。」
「いや、ちょっと。まあかけて。17 というのは一番大事にしなきゃならない年頃だ。まあ生物学的な現象はドクターに聞けば教えてくれるだろうから…ここではもっと具体的に話そうね。ランドは立派な女性だ。」
「もう叩いたりしません。」
「いやあ、それだけじゃないんだよ。」
「…僕のやることはみんなダメなんだ。規則を破って、みんなの邪魔をして。これならいいだろうと思ってやると必ず文句が出るんだ!」
「先走りするなよ。」
「どうすればいいんですか。僕は一体何者なんだ、何をすればいい。…どうしてこう、僕のやることって間違いだらけなんだろう。」
「そのうちに、わかってくる。人間は誰でも君とおんなじようなことを経験し、それによって成長して初めて大人になるんだ。」
「誰かが好きになればどうすればいいんです。」
「…優しくするんだな? …あんまり、慌てずに。だってねえ、一方通行とは違うんだよ? 相手が何と思っているか、それが大事になってくる。ここで無理してはいかん。もし相手の女性が同じ気持ちでいるのなら、やがてわかる。そうじゃないかな。」
「じゃあの人は…ジャニスは、ダメだって言うんですか。」
「ランドは子供じゃない、君とはあまりにも年が違う。ほかにも問題はあるよ。」
「ありません。」
「思い詰めるな。」
「嘘だ!」
「チャーリー…」
「ジャニスだって僕が好きなはずだ!」
「この宇宙には簡単に手に入るものもあるし反対にどうにも手に入らないものもある。…その事実をわきまえなければ生きてはいけないんだよ?」
「…じゃどうすればいいんですか。」
「我慢するんだ、忘れるまで。みんなそうしてる。」
「嘘だ!」
「嘘じゃない、私もおんなじだ。」
「…やってみます。…自信はないけど。」
ウフーラの通信が入る。『カーク船長。』
カーク:「カークだ。」
『コースの修正が必要になりましたので、ブリッジへいらして下さい。』
「…ミスター・スポックに一任する。チャーリー? ちょっと来たまえ。」

※40棒を使って、組み合う男たち。
体操の練習をしている女性もいる。
上半身裸のカークは、マットの上で受け身を取った。「倒れたときに衝撃を吸収するために床を叩くんだ。」
柔道着※41姿のエヴァンズ。上手くできない。
カーク:「…何でもおんなじだが、練習第一だ。もう一度。…ほう、良くなった。次は肩を使う回転だ。」 やってみせる。「やって?」
エヴァンズ:「あんなの嫌です。」
「怖がってないで思い切って…」
「やりたくないんです。」
「よーし、じゃ今日はこれで終わりだ。」
「試合はやらないんですか?」
「試合をやるにはまず受け身を覚えなきゃダメだよ。それも単に受け身を覚えるだけではなくて。」
離れるエヴァンズ。
カーク:「チャーリー、これはただ…チャーリー。おいサム※42、2、3手付き合って投げてくれないか。」
そばにいたクルー。「はい!」
カーク:「よく見てろ?」 サムに投げられる。「こんな具合だ。今度は投げるぞ、さあ来い。」
投げられたサム。笑う。
エヴァンズ:「難しいですね。」
サム:「いやあ…。」
カーク:「さあ、今度は君だ。いくぞ?」
エヴァンズはカークと組み合い、投げようとする。だが逆に倒された。
笑うサム。
カーク:「なかなかよかったぞ?」
エヴァンズ:「何笑ってる。」
「チャーリー。」
「やめろ、笑うな!」
白目を剥くエヴァンズ。するとサムの姿が白くなり、消えてしまった。
立ち上がるカーク。離れるエヴァンズ。
カーク:「チャーリー。」
エヴァンズ:「相手が悪いんです。あんな失礼な。僕をバカにして。」
「サムはどうした。」
「…いませんよ。」
「…どこへ行った。」
「消えましたよ! 僕を笑ったりするからいけないんだ。人をバカにして。」
通信機に触れるカーク。
クルー※43:『ブリッジです。』
カーク:「カークだ。保安部員を 2名よこしてくれ。」
『はい。』
エヴァンズ:「どうするつもりです。」
カーク:「君を部屋へ監禁する、当分外へ出るな。」
「もし僕に手を出したら、みんな消してやるぞ。」
「誰が手を出すと言った。」
保安部員※44がジムに入った。
カーク:「君を部屋へ連れて行くだけだ、ゆきたまえ。」
エヴァンズに近づく保安部員。すると触ってもいないのに、身体が弾かれた。
フェイザーを向けられ、エヴァンズは白目を見せた。「やめろ!」
消滅するフェイザー。
カークは近づいた。「部屋へゆきたまえ。」
エヴァンズ:「…手を出そうとしたからだ。」
「命令を聞かないと私が担いで連れて行くぞ。」


※35: 吹き替えでは「0401.6158」

※36: 惑星連邦の訳語ではなく、原語でも「UESPA 本部 (UESPA headquarters)」と言っています。初言及の UESPA は United Earth Space Probe Agency (地球連合宇宙開発局) の略称でユースパと発音し、宇宙艦隊や連邦の設定ができる前に 原案編集 John D. F. Black が発案したもの。長らく無視された設定になっていましたが、近年の作品では取り入れられている描写もあります

※37: 原語では「いつもなら君の話も理解できるが今回は…」。ヴァルカン人が勘というのは…

※38: ティナ・ロートン船長付下士官 Yeoman Tina Lawton
(パトリシア・マクナルティ Patricia McNulty) 原語では「第3級船長付下士官 (Yeoman Third Class)」と呼ばれています。声:杉弥生、DVD・完全版ビデオ補完では三浦智子

※39: 旧吹き替えではカットの後ここまで、「チェスは覚えたかね? なかなか面白いだろう、駒一つ一つに特徴があって。…どうだ。…私と一戦やろうか?」

※40: ジム (gymnasium) が登場するのは今回のみで、機関室の改装セット。体操しているシーンは会議室

※41: 言及はされていませんが、やっぱり柔道でしょうねえ。記章もつけられています。タイツはさておき…

※42: Sam
(ロバート・ハーロン Robert Herron TOS第77話 "The Savage Curtain" 「未確認惑星の岩石人間」のカーレス (Kahless) 役。スタント) 資料では俳優がボー・ヴァンデネッカー (Beau Vandenecker) になっています。小説では姓がエリス (Ellis)。ノンクレジット

※43: 今回スールーは登場していませんが、原語では別のエピソードのスールーの声を使い回しているという説があります

※44: (左側) Secutiry guard
(フランク・ダ・ヴィンチ Frank da Vinci) 名前をヴィンチ (Vinci) とする見方もあります。TOS第6話 "The Man Trap" 「惑星M113の吸血獣」以来の登場。セリフなし、エキストラ。 旧国内オンエア版では、ドアが閉まるシーンがほんのわずかカット

エヴァンズはカークを見る。「……やれるならやれ。」
カーク:「私は後へは引かんぞ。」
外へ向かうエヴァンズ。「僕に変なことをしたら。」
カーク:「誰も変なことはせん。」
ジムを出るエヴァンズに、ついていく保安部員。
ウフーラの呼び出しが入った。『カーク船長。』
カーク:「カークだ。」
『フェイザー関係の武器が全て消えてしまいました。…船長、聞いていますか。』
「もちろんだ、聞いてる。…ミスター・スポックとドクター・マッコイを会議室に招集しろ。」

会議室。
スポック:「記録によりますと問題の、セイサス星人は物質を変形さしたり見えなくしたりする超能力を備えていたそうです。これは伝説とされてますが、チャーリーはその能力をもっているようですね。」
カーク:「チャーリーは地球人ではなくセイサス星人と考えられるか。」
マッコイ:「いやあそれはないだろう、セイサス星人ならどこか違うはずだ。ところが彼の手足の発育状態は我々地球人※45と全く同じだからね。」
スポック:「同感です。」
カーク:「何者であろうとも、危険な力をもっていることは事実だ。それは私が目撃して知っている。」
マッコイ:「思春期の少年はただでさえ扱いにくいのにそんな恐ろしい力をもっていられては…」
「彼が常にイライラしているのは、全てのことが自分の思い通りにならないからだ。」
スポック:「アンタレスは多分彼が破壊したものと、思われますね。となると人命尊重の観念はありません。」
カップに口をつけるカーク。「生命の価値がわからないんだ、まだ子供だよ。」
マッコイ:「…子供だからどうすればいいんだね。鍵を掛けておくのか?」
「それだけでは解決できんな。植民星へ連れて行くのは見合わせよう。自由になればそれこそ何をするかわからん。…必要なのは、話し合いだ。相手は大人になりたいと願っている少年だよ。傷つきやすい思春期の少年だ。」
スポック:「ただ違うところは、恐ろしい超能力をもっていることですか。…使われたらどうなります。」
マッコイ:「…ま、今は落ち着いてるからな。それは君を尊敬してるからだ。」
「同感です。だから船長に任せる以外にはないですね。もし下手に誰か邪魔したら。」
ドアが開いた。保安部員に付き添われたエヴァンズが、笑みを浮かべている。
中に入ると、その表情が一旦固くなった。「僕に聞きたいことがあるんですって?」
カーク:「アンタレスを破壊したのは君か? …どうなんだ。」
「…どうして?」
「どうなんだ。」
「…そうです。…エネルギー貯蔵タンクの遮蔽板※46にひずみができたので、裂いてやった。…どうせ爆発したんですよ。だって僕に冷たくして、追っ払った奴らだ。仕返しだよ。」
「私達はどうだ。」
「……わかんない。」 出ていくエヴァンズ。
スポック:「…運命は少年の手にありか。」

ブリッジ。
戻るカーク。「大尉※47、第5植民星と連絡。総督と話をしたい。」
ウフーラ:「はい。」
「ナビゲーター※48、第5植民星にあまり接近せずに時間を稼げ。」
ナビゲーター:「はい。」
ウフーラのコンソールが火花を吹き、ウフーラは叫んだ。倒れる。
カーク:「スポック、至急ドクターを呼べ。大丈夫か。」
ウフーラ:「…はい、もう大丈夫です。」
「よし。」
「あのチャンネルがショートするなんて普通では考えられません。だって 15分前にあたくしがチェックしました…」
「すぐドクターが来る。」
操舵士※49:「船長!」
ナビゲーター:「コース修正を指示しても思い通りになりません。まるで嫌がってるみたいです。」
「舵も反応ありません。」
スクリーンの星が動き、針路が定まってないことがわかる。
カーク:「ミスター・スポック、至急分析したまえ。」
ブリッジに独りで来たエヴァンズは、茶色のチュニック※50を着ている。スポックを睨んだ。
スポック:「『虎よ虎よぬばたまの、夜の森に燃える瞳よ※51。』」
カーク:「ミスター・スポック。」
※52「『我が頭に土星の輪を巻き、赤き火星の炎を眺めんとす。』」
エヴァンズ:「コースを変えようとしただろ。…そうはさせないぞ、僕は第5植民星へ早く行きたいんだ。」
カーク:「妨害をやめたまえ。」
「余計なおしゃべりすることないよ。」
マッコイが来た。「何事なんだね。急に変な詩が聞こえてきたけど、ミスター・スポックはどうかしたのか…」
カーク:「大尉を診てくれ。」
スポック:「『ある真夜中私は夢見心地で思索にふける※53。』」
エヴァンズ:「なかなか上手だね※54。…ほかのことをさせようか? 這い回ったり泣いたり。どうだい?」
カーク:「いい加減にしろ。」
「面白くないの、せっかく見せてるのに。」
「私の部下を構うな。」
何も言わず、出ていくエヴァンズ。
スポックが近づいた。「このままでは今にブレーキが利かなくなりますよ。」
カーク:「わかってる。」

ターボリフトを出たエヴァンズ。
ロートンが通りかかった。「チャーリー、どうしたの?」
白目を剥くエヴァンズ。
その場から一瞬にして消えるロートン。すると、その場に一匹のイグアナがいた。
声を上げる。

私服姿のランド。トリコーダーがそばに置いてある。
ランドの部屋に入るエヴァンズ。「いい物持ってきたよ。」 一輪の花を差し出す。「バラの花が好きなんだろ?」
ランド:「…ノックもしないで入ってくるのは失礼よ?」
「だったらもう鍵なんか掛けないでよ。好きなんだ。」
「いつ掛けようと私の勝手よ。あなた一体何が欲しいの?」
「……君だ。」 近づいてくるエヴァンズ。


※45: この辺りでは地球人 (human) という意味で、Earthling という言葉も使っています

※46: baffle plate
初言及

※47: 吹き替えでは「尉」。シリーズ中一貫して、ウフーラの階級は大尉です

※48: Navigator
(ドン・アイトナー Don Eitner)

※49: Helmsman
(ジョン・リンデスミス John Lindesmith TOS第25話 "This Side of Paradise" 「死の楽園」などの機関部員 (Engineer) 役) ノンクレジット

※50: 元はカーク用に作られ、ボツになったもの。そのため腰にエンタープライズの記章 (司令部門) がついてます

※51: ウィリアム・ブレイクの詩、「虎」(1794年頃) の冒頭

※52: スポックのコンソールにある丸い装置 (センサーアレイ?) の動きが止まっています (先ほどウフーラが倒れた辺りまでは回転)

※53: エドガー・アラン・ポーの詩、「大鴉」(1845年) の冒頭

※54: 原語では「ミスター・トンガリ耳 (Mr. Ears)」と呼んでいます

ランドの部屋。
エヴァンズ:「君に喜んで欲しいの。…何でもあげるからさ、言って。」
ランドは密かに、モニターのスイッチを押した。「出てって欲しいわね。」

部屋の会話がブリッジに流れる。
エヴァンズ:『悪いことしてないのに。』
ランド:『出てってよ。』
カーク:「スポック。」
『同じことばかり言わせないでちょうだい?』
カークとスポックはターボリフトへ向かう。

ランドのあごに触れるエヴァンズ。「愛してるんだ。」
ランド:「愛の意味も知らないくせに。」
「じゃ教えて。」
「嫌よ!」
部屋に入るカークたち。近づこうとしたが、エヴァンズの能力ではねつけられた。
立てない 2人※55
ランド:「チャーリー!」 平手打ちする。
白目を見せるエヴァンズ。ランドは消滅した。
エヴァンズ:「どうしてあんなことしたんだ。…愛してるのに。僕の気持ちを踏みにじった。…船長さんだってひどいけど、いま消えられると困るんだ。…アンタレスはこのエンタープライズ※56と違って、簡単に動かせたけど…でも今度は我慢しないよ。…わかったね。」
エヴァンズに睨まれ、苦しむカーク。
解放されて立ち上がる。「ミスター・スポック。」
スポック:「脚が、折れてます。」
「…早く治したまえ。」
エヴァンズ:「どうして。」
「必要だから言ってるんだ。彼なしではエンタープライズ※***は満足に動かん。」
しばらくすると、スポックの脚は治ったようだ。
エヴァンズ:「今度僕に手をかけたら、みんな片っ端から消してやる。」
カーク:「ジャニス※57はどうなったんだ、消えただけか。それとも死んだのか。」
「…どうでもいいだろ。」 外へ向かうエヴァンズ。「大人が何だい、えばるな。…僕は思い通り何だってできるんだぞ? 意気地なし。」

空気システムの調整をしている技師に話すスポック。「電磁スクリーンのスイッチは私が入れるから行っていいぞ。」
技師:「はい。」
カークと共に来るエヴァンズ。「生意気だから、凍らせてやったんだ。ヤな奴だよ。」 部屋に入る。「入って来ないのか。」
首を振るカーク。
外に出ようとするエヴァンズ。するとドアの部分が反応し※58、エヴァンズはフォースフィールドに弾かれた。
白目を見せるエヴァンズ。拘束室の入口全体が消えた。操作盤さえない。
さらに能力を使い、カークとスポックの動きを止める※59。「よくもやったな。後悔するぞ。こんなことして必ず後で泣くからな。」
動き出す 2人。
エヴァンズ:「覚えてろ。」 歩いていく。

部屋を出る女性士官。エヴァンズとすれ違う。
振り返るエヴァンズ。
すると女性の手が皺だらけになる。壁に寄りかかった。
手に気づく女性。その手で触れる顔も、老婆※60のものになっていた。
叫ぶ。
廊下で笑っているクルーの影が見える。
エヴァンズ:「うるさい、笑うな!」
影の動きがピタリと止まった。立ち去るエヴァンズ。
一人だけうめき声がする。その顔には、目も鼻も口もなかった。

ブリッジ。
操舵席で操作するエヴァンズ。
ウフーラ:「カーク船長、計器によると第3宇宙周波にメッセージをキャッチしています。」
反応するエヴァンズ。
ウフーラ:「宇宙通信らしいのですが、耳には聞こえません。」
カーク:「君が発信してるのか、それとも妨害してるのか。」
エヴァンズ:「知りたかったら自分で調べれば。そんなこと一つできないのか。さあ代わってやるよ。コースを第5植民星にセットしたから。」 通信席を見た後、出ていった。
独りターボリフトにいるエヴァンズ。

ターボリフトを降りたエヴァンズ。女性クルーと出くわす。
そのまま動かなくなる女性。
クルーを押しのけ、廊下を歩いていくエヴァンズ。

ブリッジ。
カーク:「これ以上我慢できん、行動に出よう。」
マッコイ:「君だからと言って安心はできんぞ! もう駄目だ、今度下手なことをしたら君でも消される。」
「ミスター・スポック。」
スポック:「問題外です。」
「待てよ。チャーリー…そうだ、スポック。彼は船を乗っ取ってから誰かを消したか。」
「いいえ? 現在までは。」
「…余裕がないんだな。エンタープライズは大きいんで、コントロールに大きな力がいる。さらに力を使わせるために、船内の全ての装置やライトのスイッチを入れたらどうだろう。それに対して彼が、抵抗している隙を狙って注射をすればいい。意識をなくせば、第5植民星へ行っても心配ない。」
マッコイ:「危険だな。」
「しかしこのままでは、いずれ全員消される。残された道はただ一つだ。」
エヴァンズが戻ってきた。「その気になれば消せるんだぞ。みんないっぺんに消してやってもいいんだ。」 船長席に座る。
カーク:「私の席を空けたまえ、君には用はない。」
「この船は僕のものだ。」
合図するカーク。「そうかもしれんが、この辺が限界じゃあないのかな?」
行動するスポックとマッコイ。コンピューターのライトが灯っていく。
カーク:「…君はこれで精一杯だ、もう何もコントロールできないはずだ。」
次々と起動させていくスポックたち。
カーク:「どうだ、できるか。」
落ち着きをなくすエヴァンズ。「…お前なんか消してやればよかったんだ。」
カーク:「今から消したらどうだ。」
「今は駄目だ。」
「これは私の船だ、返してもらおう。消した乗組員も返したまえ。…暴力を振るっても返させる。」 カークはエヴァンズを引きずり下ろした。
「調子に乗るな。」
近づけないカーク。
エヴァンズ:「悪いんだ。…そっちが。僕は…」
奇妙な通信音が聞こえてきた。
エヴァンズ:「やめろ。」
その隙を突いて立ち上がり、殴ろうとするカーク。
エヴァンズ:「やめろと言ってるのに!」
スポック:「船長! ナビゲーション装置が直りました。…コースをコントロールできます。」
ウフーラ:「右舷に正体不明の物体接近。セイサス星より来たと言っています。」
ブリッジにランドが現れた。消えた時の姿のままだ。
エヴァンズ:「ああ。」
ランド:「船長、いつ私は…」
カーク:「心配するな。」
スポック:「物質探知機が何かをキャッチしましたが電磁スクリーン※61には何の反応もありません。」
緑色のもや状の物体が、スクリーンに映る。
エヴァンズ:「やめろー! …頼む。僕を守ってくれ。あの星へ戻るのは嫌だ。」
揺らめきながら、緑色をした男の顔だけが現れた。
エヴァンズ:「友達だろ。僕と友達だって言ったじゃないか。僕がここへ来たときに。」 空中の顔を見つめる。「頼む。僕は地球人なんだ。あの星へ戻るのは嫌だ。」
男が口を開いた。『諸君と交信できるよう、数世紀以前のこの姿に戻って現れた。…我々は不覚にも少年が脱出したことを、あとになるまで気づかず少年の手で諸君の宇宙船が破壊されたことを知って愕然とした。悲惨な出来事だ。しかしこの船は少年の手より奪い、乗組員と共に返した。全て以前の状態に戻ったわけだ。』
エヴァンズ:「…もう絶対にしないよ。…もう悪いことはしないから助けて! ……アンタレスのことは謝るよ。ごめんなさい! …もう二度としないから。…連れて行って下さい。助けて。…助けて!」
カーク:「……この少年は私達の仲間だ。」
セイサス人※62:『今は仲間ではない。』
「正しく導けば、人間社会に住める。超能力を使わないように教えれば。」
『生きるための手段として彼に力を与えた。…彼は常にその力を使うだろう。その結果は諸君が少年の手で滅亡するか、自己防衛のために少年を破壊するかいずれかだ。』
「防ぐ方法はないのか。」
『生命を与えたのは我々だ。したがって我々が引き取る。…来い、チャールズ。』 消えるセイサス人。
エヴァンズ:「ねえ御願い、連れて行かせないでよ。あいつら姿がないんだ。ジャニス。あいつらないんだ、何も感じないんだよ。愛情もないし。お願い。僕を守って。守って、守って、守って、守って…」 動きが止まり、消滅していく※63
スクリーン上の物体も見えなくなった。
ウフーラ:「チャーリーは、セイサス星の宇宙船に戻りました。…宇宙船が離れます。」
涙を流し、カークに近づくランド。
カーク:「忘れたまえ、悲しいことだが。」
何も見えないスクリーン。
マッコイは、ランドを連れて行く。


※55: 壁に穴が空いています。予告編では壁に当たるときの別テイクが見られます

※56: 吹き替えでは「エンタープライズ

※57: 原語では「ランド船長付下士官」ではなく「ジャニス船長付下士官」と呼んでいます

※58: 拘束室は初登場ですが、入口に左右からバーが出てくるような仕組みがあるのは今回だけ

※59: 止められた後に、スポックが瞬きをしています

※60: Old lady
(ローラ・ウッド Laura Wood TOS第40話 "The Deadly Years" 「死の宇宙病」のジョンソン夫人 (Mrs. Johnson) 役) 珍しいズボン姿の女性士官ですが、これは老婆になることを見越して (?) の処置。吹き替えなし

※61: 原語ではディフレクター

※62: 「セイサス星人」 "The Thasian"
(エイブラハム・ソファー Abraham Sofaer TOS第56話 "Spectre of the Gun" 「危機一髪! OK牧場の決闘」のメルコト人の声 (Melkotian Voice) 役。1988年1月に死去)

※63: この際の音楽は、今後も使われます

・感想など
子供+超生命体のオーソドックスなエピソード。この時期にして確立され、お手本のように進むストーリーはさすが初の D・C・フォンタナ脚色と言ったところです。とはいえ内容自体はさして目立った出来ではないですね。チャーリーの演技は、ほんとに嫌なくらい印象には残るのですが…。吹き替えでの名前はピーターパンからでしょうか?
このエピソードだけを監督したラリー・ドブキンは俳優でもあり、映画「地球の静止する日」のほか、TNG第98話 "The Mind's Eye" 「裏切りの序曲」にも出演しています。全編船内だけで進む、初のボトルショーでした。


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