ワープで逃げるレテリアン貨物船。追うエンタープライズ。
ブリッジに戻るアーチャー。「状況は。」
メイウェザー:「ワープ2 では、そう遠くへ行けません。」
「呼びかけろ。」
サトウ:「…応答なしです。」
「…フェイズ砲準備。エンジンを狙え。」
操作するリード。「左舷ナセルに直撃。ワープ解除しました。」
通常飛行に入る 2隻。
アーチャー:「接近して捕獲しよう。もう一度呼びかけを。」
首を振るサトウ。
メイウェザー:「船長。」
見ると、レテリアン船から緑色の物質が排出されてきた。スクリーン一杯に広がる。
アーチャー:「トゥポル。」
トゥポル:「ダイリチウム水酸基※6、電離ピロ硫酸塩※7です。」
メイウェザー:「離されました。」
アーチャー:「…ついて行け。」
レテリアン貨物船は、再びワープに入った。
アーチャー:「ナセルに直撃したはずだろ。」
リード:「しましたよ?」
メイウェザー:「ワープドライブが作動しません。」
「霧のせいで、排気口が詰まったんです。つまりを、解消しないと。」
「センサーより、船体消滅。……見失いました。」
起きあがるタッカー。いきなり殴られた。
棒を持っている女性。「(お前は?)」
タッカー:「な、何をするんだよ。」
「(何者です?)」
「待て! 待ってくれ。俺は奴らの仲間じゃない。」
「(どこに連れて行く?)」
「落ち着け、何もしないから。俺は…エンタープライズという、宇宙船から来た。」 制服のエンブレムを示すタッカー。「エンタープライズだ。…さあ、それを置いてくれたら、縄を解こう。」 身振りで教えようとする。「手を、自由にしてやる。…縄を解いてあげよう。」
「(騙したら許しません)」
ゴフがやってきた。銃を向ける。
タッカー:「一体どういうことなんだ。」
ゴフ:「…直ったのか。」
「何?」
「冬眠ポッドだよ!」
「アーチャー船長はどこだ。」
「船は…遥か後方さ。」
女性:「(いずれ死刑よ)」
「ポッドを修理して、女を中に戻すんだ。」
タッカー:「…数時間は…かかる。」
「すぐ始めろ。」
出ていくゴフ。タッカーは女性の縄を解いた。
女性:「(ありがとう)」
タッカー:「ああ…どういたしまして。」
「(何をしている?)」
「小型の装置を見なかったか。あ、ああ…これぐらいで、キーボードがついてる。ああ…自動翻訳機なんだよ。…それがあると、意思の疎通ができる。」
女性は床に落ちているのを見つけた。「(これ?)」
タッカー:「それだ。」 渡してもらえない。「それで、話が通じる。」
やっとで渡す女性。
起動するタッカー。「何か話してみてくれ。何か、しゃべって。」
女性:「(共犯なら処罰します)」
「…ん、続けて。」
「(お前は何者? 誘拐のこと、何か知っているの?)」
「俺の言葉がわかる?」
「(何をしている?)」
「ああ、ホシがいてくれたら。」 翻訳機に反応が出た。
「ホシって誰?」
「いいぞ。…事情を、話してくれないか。」
「…わたくしは何時間眠ってたの?」
「奴らが知ってる。」 コミュニケーターを使うタッカー。「タッカー少佐よりエンタープライズ。エンタープライズ、聞こえますか。」
「士官なのか?」
「機関主任だ。…ワープで飛んでるようだ。」
棒を突きつける女性。「説明してちょうだい。誘拐について何を知っている?」
タッカー:「奴らは操縦士じゃないのか? 君は乗客だと聞いた。」
「わたくしは捕虜です。外交任務から戻る途中に、輸送船が襲われたのです。護衛も殺されました。…わたくしが誰だか御存知ないようね?」
「…まずいか?」
「一族の名は宇宙中に知れ渡っています。」
「…その中に、地球は入っていない。君はドクターじゃないのか。」
「このあたくしは、クリオス・プライム※8で王位に就く者です。」
「俺は……チャールズ・タッカー三世。よろしく。連中の、目的は。」
クリオス人:「身代金です。いずれ高額な代償を要求する気でしょう。」
「いいか、船長は俺たちを捜してる。この船を降りて、仲間に居所を知らせるのが先決だ。」
「何かいい方法でもあるのですか?」
「ここに乗った時、シャトルベイで脱出ポッドを見かけた。」
「勝手な真似はさせません。」
「何だって?」
「彼らが我が国と連絡を取るまで待ちなさい。身代金が支払われれば、無事解放されます。」
「宇宙空間に脱出する方に賭けてもいいかなあ。」
「危険です。逃げたら彼らを刺激します。」
「このチューブは、確かシャトルベイ付近の連結部につながってるはずだ。」
「ここから出ることは許しません!」
「…お言葉ですが…俺はあんたの家来じゃない。」
エンタープライズ。
アーチャー:「彼はパートナーだろ? どこに行ったか目星ぐらいつくはずだ。」
プリン:「私も彼の捕虜なんですよ。だから置き去りにされた。」
トゥポル:「行き先はどこなんです?」
「…データはゴフが知ってる。」
アーチャー:「どの星系かも知らないというのか?」
「それは私の責任じゃない。船を操縦していたのは奴だ。私はずっと船の管理を担当してた。ほんとですよ、船長。私だって是非『パートナー』を探し出したいと思ってます。」
「…だったら…協力し合って奴を探し出そうじゃないか?」
「…どう協力しろと?」
「長距離センサーだけでは、貨物船が 6光年以内のどこにいるかわからない。船のワープ周波数がわかるととても助かる。」
「残念だが協力できない。ワープエンジンのことはよく知らないんだ。」
「彼を、第2ドッキングポートに連れて行け。…エアロックに放り込んでしっかり見張っておくんだ。」
「私は嘘はついていない!」
作戦室のドアを開けるアーチャー。「ハッチの鍵は開けておこう。外に出たかったら勝手に出るがいい。」
レテリアン船。
道具を使っているタッカー。「サーキットプローブを取ってくれないか。ハンドルがついてる、緑の。」
従わないクリオス人。
タッカー:「役立たずの外交官だな。」
クリオス人:「あなた方の種はみんなそんなに不作法なの?」
「いや。俺だけさ。」
「理性的に考えるなら、あなたはあの冬眠ポッドを修理すべきね? そうしないと殺されるかも。」
「だから逃げようとしてる。修理が終わったらいつまでも俺を生かしておくわけがない。…君の身分じゃ俺みたいな男に助言されることはないだろうが、絶対君も一緒に逃げた方がいい。」
「わたくしは大事な人質ですから安全です。」
「人質事件に関わったことがあるが、相手は思い通りには動かない。」
「…その通りです、ミスター・タッカー。あなたのような者から助言は受けません。」 火花に驚くクリオス人。
「…いいか。冬眠ポッドは自然には直らない。…あと 5ヶ月この狭くて汚い貨物船に閉じこめられるんだぞ? 王家の旅とは、ほど遠いな。」
「心配ご無用。」
「エンタープライズに戻ったら、君の母星にメッセージを伝えておくよ? クリオス…」
「クリオス・プライムよ?」
「お大事に。」 チューブへ入ろうとするタッカー。
「…脱出ポッドで逃げても、破壊されてしまったら終わりだわ?」
「貨物船の内部センサーを細工する。連中が気づいた頃は 100万キロの彼方ってわけさ。…楽しい旅になるぞ?」
チューブをはって進むクリオス人。「どこまで続くの?」
タッカー:「あと 2、3メートルだ。」
「ほんとにこの方向でしょうねえ。」
「声を潜めて。…ところで、君を何て呼べばいい。女王様? …妃殿下かな。」
「カイターマ※9。」
「…何かの称号かい。」
「わたくしの名前です。…何をしている!」
「ここが内部センサーにつながっている。」
シャトルベイに出てくるタッカー。段差を飛び降りる。
その高さに躊躇するカイターマ。
タッカー:「時間がないんだ。」 カイターマを抱くようにし、下に降ろす。
脱出ポッドのハッチを開けるタッカー。
カイターマ:「ここに 2人乗るの?!」
タッカー:「…仕方ないさ。…操縦できるなら独りでどうぞ。」
長いドレスのせいで、なかなか入れないカイターマ。自ら裾を破り、後ろ向きに入った。
あきれるタッカー。続いて狭いポッド内に入る。
翻訳機を取り出し、コンピューターを起動させるタッカー。
ワープ中のレテリアン貨物船から、脱出ポッドが打ち出された。
大きな揺れが起こる。
カイターマ:「今のは?!」
タッカー:「亜空間境界を通過中だ。」 収まる。「…乗り越えた。」 翻訳機を手に取り、モニターを読み始める。
「次は何をするの?」
「正直言うと、そこまで考えてない。」
「計画もなく逃げたの?!」
「冗談だってば。君の国にもユーモアはあるだろ?」
「庶民には。…冗談です。」
「フーン。奴らが気づくのは時間の問題だ。必ず追ってくるだろうから、どこかに隠れなければ。」
「どこに。」
星系の図に切り替えるタッカー。「翻訳が正しければ、ここから 9,000万キロ付近に星系がある。一日かそこらでたどり着けるはずだ。」
カイターマ:「人が住める惑星があると、なぜわかるんです?」
「行ってみるしかない。…コースをセットしてもよろしいでしょうか?」
「…よろしい。」
エンジンを噴射する脱出ポッド。
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※6: dilithium hydroxls
※7: ionized pyrosulfates
※8: Krios Prime クリオスは TNG第98話 "The Mind's Eye" 「裏切りの序曲」で初言及。TNG第121話 "The Perfect Mate" 「究極のパートナー」では、「エンパスのメタモーフ」であるカマラが登場しました。カイターマは普通の (?) 女性のようですが、メイクはカマラに似ています
※9: Kaitaama (Padma Lakshmi) 声:麻生侑里、TNG ゴメスなど
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