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エンタープライズ エピソードガイド
第37話「眠る女の謎」
Precious Cargo

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・イントロダクション
ハーモニカの音色が響く。
タッカーの部屋。
テーブルの上に足を投げ出し、吹き続けるタッカー。
ワープが解除されたことに気づき、外を見る。
異星人船が近づいてきている。
通信が入った。『アーチャーよりタッカー少佐。』
タッカー:「どうぞ。」
アーチャー:『休みのところ悪いが、間もなく客が来る。』
「のようですね。」
『修理を頼みたいんだ。』
「はい?」
『第2ドッキングポートに来てくれ。』
「すぐ行きます。」



・本編
異星人船はエンタープライズとドッキングしている。
トゥポルたちと合流するタッカー。「深刻なんですか。」
アーチャー:「彼らによると、生命維持装置の一つが不調とか。」
「『彼ら』?」
トゥポル:「レテリアン※1の貨物船です。」
アーチャーが操作すると、ライトが緑に灯った。
トゥポル:「開けていいわ。※2
開いたドアの向こうから、2人のレテリアン男性がやってきた。
アーチャー:「ようこそ。」
握手する一人、ゴフ※3。「応答ありがとうございます、船長。誰も応えてくれないと、あきらめかけていたところでした。」
アーチャー:「トゥポル副司令官と、機関主任の…タッカー少佐です。」
もう一人のプリン※4が礼をする。「どうぞよろしく。」
タッカー:「生命維持装置の具合が悪いとか。」
ゴフ:「ある女性客を、母星に送り届けるところなんですが…数日前から、彼女の冬眠ポッドが不調でして。」
アーチャー:「冬眠? 怪我でも?」
「いいえ、いえ。我々の貨物船は、本来生命体ではなく物を運ぶように設計されている上、今回はかなりの長旅で、乗客を仮死状態で運ぶしかなかったのです。」
プリン:「旅は後 5ヶ月残っています。彼女が目を覚ましても、食べ物も、空気もない。任務を中断したら報酬も、ゼロだ。」
トゥポル:「タッカー少佐は優秀ですから、きっとお役に立てるでしょう。」
タッカー:「…中を拝見します。」
プリン:「どうぞ。」 共に向かう。
ゴフ:「本当に助かりました。ご迷惑でなければ、もう一つ御願いしてもよろしいですか。…長旅で随分遠ざかっているもので…風呂に入りたい。」
笑うアーチャー。「わかります。トゥポルに、部屋まで案内させましょう。風呂の後は、ぜひ食事をどうぞ。」
トゥポルについていくゴフ。アーチャーは握手した手を見た。

狭い貨物室へ入るプリン。「これでバイオ・ポッドのパワーを調整しています。」
タッカー:「…なかなかユニークだ。」
「このリレーは、古いアーダナ・シャトル※5のものなんです。パワーがよく流れるよう改良しました。」
「EPS コンジットを使えば、大丈夫でしょう。」 バイオ・ポッドのパネルを見るタッカー。「言葉が理解できれば、作業がはかどります。よろしければうちの通信士官を呼んでもいいですか?」
「…是非とも。」
凍った冬眠ポッドの表面を、拭き取るタッカー。中で眠っている女性は、レテリアンではないようだ。
プリン:「どうかしましたか?」
タッカー:「…いえ? いえ…別に。船に戻って道具を取ってきます。…上手くいけば、『眠れる森の美女』を起こさずに済む。」
出ていく 2人。

エンタープライズ。
アーチャーは作戦室のドアチャイムに応えた。「どうぞ。」
クルーに案内され、部屋に入るゴフ。「水は十分、残っていますか。」
アーチャー:「ご心配なく。どうぞ? …貨物船は、ワープ2 までしか出ないそうですねえ。」
「2 ポイント 2 です。」
「…ちょっと計算してみたんですがね? 計算通りなら、エンタープライズで行けば、ワープ4 ポイント 5 で 4日以内に目的地に着きます。」
「ありがたい申し出だが、これ以上御迷惑をおかけすることはできません。」
「迷惑だなんて。未知との出会いも目的です。我々の知らない種の住む星に行くのでしょ? あなた方のような馴染みの種が一緒なら、ファースト・コンタクトも上手くいくでしょう。」
「我々がいなくても、大丈夫。」
「船はドッキングしておけばいい。冬眠ポッドの問題も解消します。部屋はありますから、クルーと乗客はそちらに。」
「そう簡単には、変更できません。スケジュールは綿密に組まれている。彼女の家族は、5ヶ月後に戻ると思っていますから、現在は家を留守にしているんです。でも御食事は、頂きますよ? …今からでも是非。」
立ち上がり、外を示すアーチャー。

レテリアン船に入るサトウ。「少佐?」 バイオ・ポッドの女性を見た。「少佐?」
下から出てくるタッカー。「翻訳機か?」
サトウ:「操作は簡単です。」
「…ありがとう。」
「2人なら寂しくないわね?」
「…寝たままの旅なんてな。」
「彼女、どういう人?」
「プリンに聞いたが詳しいことは知らなかった。調査先のコロニーで医学を研究しているらしい。」
「ドクター?」
「恐らく。…こんな旅に耐えて研究なんて相当な情熱家だ。…話したかったな。」
「そんなに見つめては失礼です。」
「…それ、どういう意味だい。」
笑うサトウ。「じゃあ何かあれば、知らせて下さい。」 出ていく。
「別に…見つめてなんか…。」
何かを叩く音が聞こえた。
タッカー:「ホシか?」
冬眠ポッドの女性だった。異星人語で叫んでいる。
タッカー:「大丈夫か?」

船長用食堂にいたゴフは、持っていた装置に反応が出たのに気づいた。
アーチャー:「問題でも?」
ゴフ:「冬眠ポッドが…。」
トゥポル:「どうしたんです?」
「不調に陥った。ちょっと、失礼します。」 外へ向かうゴフ。
「ポートまで御案内を。」
「独りで結構。」

必死にバイオ・ポッドを開けようとしているタッカー。
ゴフ:「何をしている!」
タッカー:「開けるんだよ!」
「勝手なことは許さん!」
「苦しがってる! …ロックが外れない、邪魔するな!」
やっとでポッドが開いた。女性は両手を結ばれている。
タッカー:「大丈夫か、酸素再処理装置が切れた。」
異性人語で話す女性。「(触らないで)」
タッカー:「もう大丈夫だ。」
「(許しません)」
だがゴフが、タッカーを後ろから殴り倒した。

スパゲティを口に運ぼうとしたプリンは、呼び出しに応えた。「はい。」
ゴフ:『問題が起きた。戻ってきてくれ。』
「一体どうしたんだ。」
『事態が込み入って、ちょっとまずい展開になってきた。』
「すぐ戻ります。食事中失礼します。」
アーチャー:「どうぞ?」
走っていくゴフ。
トゥポルと顔を見合わせたアーチャーは、連絡した。「アーチャーよりタッカー少佐。…聞こえるか、トリップ。…アーチャーよりリード大尉。」

廊下を急ぐプリンに、リードが合流した。「ミスター・プリン?」
プリン:「そうだが。」
「リードです。船まで御案内するよう言いつかりました。」 保安部員もつく。
「その必要はありません。」
「ですが、命令ですから。」
「何か失礼でも?」
「念のためです。」
「…ちょっと席を外しただけだ、心配には及ばん。」

エンタープライズへ戻ってくるゴフ。
プリンたちが来ていることに気づいた。手を後ろに伸ばす。
そしていきなり銃を撃ってきた。
かがむプリン。反撃するリード。
ゴフは自分の船へ逃げ帰った。保安部員は逃げないよう、プリンへ銃を向ける。
閉まったエアロックのパネルを操作するリード。
レテリアン貨物船のエンジンが起動される。
やってくるアーチャーたち。
リード:「逃げる気です。」
アーチャー:「ドッキングクランプを固定しろ。」
大きな衝撃が走った。
無理矢理クランプを引きはがし、レテリアン船は離れた。


※1: Retellian

※2: 船長相手にこの言葉遣い…

※3: Firek Goff
(Scott Klace VOY第115話 "Juggernaut" 「憎しみはコロナの果てに」の Dremk 役) 声:手塚秀彰

※4: Firek Plinn
(リーランド・クルック Leland Crooke DS9第138話 "One Little Ship" 「ルビコンの奇跡」などの Gelnon 役) 2人とも "Firek" は言及されていません。肩書きの一種と思われます。声:北川勝博

※5: Ardanan shuttle
アーダナ (Ardana) は TOS第74話 "The Cloud Minders" 「惑星アーダナのジーナイト作戦」より

ワープで逃げるレテリアン貨物船。追うエンタープライズ。
ブリッジに戻るアーチャー。「状況は。」
メイウェザー:「ワープ2 では、そう遠くへ行けません。」
「呼びかけろ。」
サトウ:「…応答なしです。」
「…フェイズ砲準備。エンジンを狙え。」
操作するリード。「左舷ナセルに直撃。ワープ解除しました。」
通常飛行に入る 2隻。
アーチャー:「接近して捕獲しよう。もう一度呼びかけを。」
首を振るサトウ。
メイウェザー:「船長。」
見ると、レテリアン船から緑色の物質が排出されてきた。スクリーン一杯に広がる。
アーチャー:「トゥポル。」
トゥポル:「ダイリチウム水酸基※6、電離ピロ硫酸塩※7です。」
メイウェザー:「離されました。」
アーチャー:「…ついて行け。」
レテリアン貨物船は、再びワープに入った。
アーチャー:「ナセルに直撃したはずだろ。」
リード:「しましたよ?」
メイウェザー:「ワープドライブが作動しません。」
「霧のせいで、排気口が詰まったんです。つまりを、解消しないと。」
「センサーより、船体消滅。……見失いました。」

起きあがるタッカー。いきなり殴られた。
棒を持っている女性。「(お前は?)」
タッカー:「な、何をするんだよ。」
「(何者です?)」
「待て! 待ってくれ。俺は奴らの仲間じゃない。」
「(どこに連れて行く?)」
「落ち着け、何もしないから。俺は…エンタープライズという、宇宙船から来た。」 制服のエンブレムを示すタッカー。「エンタープライズだ。…さあ、それを置いてくれたら、縄を解こう。」 身振りで教えようとする。「手を、自由にしてやる。…縄を解いてあげよう。」
「(騙したら許しません)」
ゴフがやってきた。銃を向ける。
タッカー:「一体どういうことなんだ。」
ゴフ:「…直ったのか。」
「何?」
「冬眠ポッドだよ!」
「アーチャー船長はどこだ。」
「船は…遥か後方さ。」
女性:「(いずれ死刑よ)」
「ポッドを修理して、女を中に戻すんだ。」
タッカー:「…数時間は…かかる。」
「すぐ始めろ。」
出ていくゴフ。タッカーは女性の縄を解いた。
女性:「(ありがとう)」
タッカー:「ああ…どういたしまして。」
「(何をしている?)」
「小型の装置を見なかったか。あ、ああ…これぐらいで、キーボードがついてる。ああ…自動翻訳機なんだよ。…それがあると、意思の疎通ができる。」
女性は床に落ちているのを見つけた。「(これ?)」
タッカー:「それだ。」 渡してもらえない。「それで、話が通じる。」
やっとで渡す女性。
起動するタッカー。「何か話してみてくれ。何か、しゃべって。」
女性:「(共犯なら処罰します)」
「…ん、続けて。」
「(お前は何者? 誘拐のこと、何か知っているの?)」
「俺の言葉がわかる?」
「(何をしている?)」
「ああ、ホシがいてくれたら。」 翻訳機に反応が出た。
「ホシって誰?」
「いいぞ。…事情を、話してくれないか。」
「…わたくしは何時間眠ってたの?」
「奴らが知ってる。」 コミュニケーターを使うタッカー。「タッカー少佐よりエンタープライズ。エンタープライズ、聞こえますか。」
「士官なのか?」
「機関主任だ。…ワープで飛んでるようだ。」
棒を突きつける女性。「説明してちょうだい。誘拐について何を知っている?」
タッカー:「奴らは操縦士じゃないのか? 君は乗客だと聞いた。」
「わたくしは捕虜です。外交任務から戻る途中に、輸送船が襲われたのです。護衛も殺されました。…わたくしが誰だか御存知ないようね?」
「…まずいか?」
「一族の名は宇宙中に知れ渡っています。」
「…その中に、地球は入っていない。君はドクターじゃないのか。」
「このあたくしは、クリオス・プライム※8で王位に就く者です。」
「俺は……チャールズ・タッカー三世。よろしく。連中の、目的は。」
クリオス人:「身代金です。いずれ高額な代償を要求する気でしょう。」
「いいか、船長は俺たちを捜してる。この船を降りて、仲間に居所を知らせるのが先決だ。」
「何かいい方法でもあるのですか?」
「ここに乗った時、シャトルベイで脱出ポッドを見かけた。」
「勝手な真似はさせません。」
「何だって?」
「彼らが我が国と連絡を取るまで待ちなさい。身代金が支払われれば、無事解放されます。」
「宇宙空間に脱出する方に賭けてもいいかなあ。」
「危険です。逃げたら彼らを刺激します。」
「このチューブは、確かシャトルベイ付近の連結部につながってるはずだ。」
「ここから出ることは許しません!」
「…お言葉ですが…俺はあんたの家来じゃない。」

エンタープライズ。
アーチャー:「彼はパートナーだろ? どこに行ったか目星ぐらいつくはずだ。」
プリン:「私も彼の捕虜なんですよ。だから置き去りにされた。」
トゥポル:「行き先はどこなんです?」
「…データはゴフが知ってる。」
アーチャー:「どの星系かも知らないというのか?」
「それは私の責任じゃない。船を操縦していたのは奴だ。私はずっと船の管理を担当してた。ほんとですよ、船長。私だって是非『パートナー』を探し出したいと思ってます。」
「…だったら…協力し合って奴を探し出そうじゃないか?」
「…どう協力しろと?」
「長距離センサーだけでは、貨物船が 6光年以内のどこにいるかわからない。船のワープ周波数がわかるととても助かる。」
「残念だが協力できない。ワープエンジンのことはよく知らないんだ。」
「彼を、第2ドッキングポートに連れて行け。…エアロックに放り込んでしっかり見張っておくんだ。」
「私は嘘はついていない!」
作戦室のドアを開けるアーチャー。「ハッチの鍵は開けておこう。外に出たかったら勝手に出るがいい。」

レテリアン船。
道具を使っているタッカー。「サーキットプローブを取ってくれないか。ハンドルがついてる、緑の。」
従わないクリオス人。
タッカー:「役立たずの外交官だな。」
クリオス人:「あなた方の種はみんなそんなに不作法なの?」
「いや。俺だけさ。」
「理性的に考えるなら、あなたはあの冬眠ポッドを修理すべきね? そうしないと殺されるかも。」
「だから逃げようとしてる。修理が終わったらいつまでも俺を生かしておくわけがない。…君の身分じゃ俺みたいな男に助言されることはないだろうが、絶対君も一緒に逃げた方がいい。」
「わたくしは大事な人質ですから安全です。」
「人質事件に関わったことがあるが、相手は思い通りには動かない。」
「…その通りです、ミスター・タッカー。あなたのような者から助言は受けません。」 火花に驚くクリオス人。
「…いいか。冬眠ポッドは自然には直らない。…あと 5ヶ月この狭くて汚い貨物船に閉じこめられるんだぞ? 王家の旅とは、ほど遠いな。」
「心配ご無用。」
「エンタープライズに戻ったら、君の母星にメッセージを伝えておくよ? クリオス…」
「クリオス・プライムよ?」
「お大事に。」 チューブへ入ろうとするタッカー。
「…脱出ポッドで逃げても、破壊されてしまったら終わりだわ?」
「貨物船の内部センサーを細工する。連中が気づいた頃は 100万キロの彼方ってわけさ。…楽しい旅になるぞ?」

チューブをはって進むクリオス人。「どこまで続くの?」
タッカー:「あと 2、3メートルだ。」
「ほんとにこの方向でしょうねえ。」
「声を潜めて。…ところで、君を何て呼べばいい。女王様? …妃殿下かな。」
「カイターマ※9。」
「…何かの称号かい。」
「わたくしの名前です。…何をしている!」
「ここが内部センサーにつながっている。」

シャトルベイに出てくるタッカー。段差を飛び降りる。
その高さに躊躇するカイターマ。
タッカー:「時間がないんだ。」 カイターマを抱くようにし、下に降ろす。
脱出ポッドのハッチを開けるタッカー。
カイターマ:「ここに 2人乗るの?!」
タッカー:「…仕方ないさ。…操縦できるなら独りでどうぞ。」
長いドレスのせいで、なかなか入れないカイターマ。自ら裾を破り、後ろ向きに入った。
あきれるタッカー。続いて狭いポッド内に入る。
翻訳機を取り出し、コンピューターを起動させるタッカー。

ワープ中のレテリアン貨物船から、脱出ポッドが打ち出された。
大きな揺れが起こる。
カイターマ:「今のは?!」
タッカー:「亜空間境界を通過中だ。」 収まる。「…乗り越えた。」 翻訳機を手に取り、モニターを読み始める。
「次は何をするの?」
「正直言うと、そこまで考えてない。」
「計画もなく逃げたの?!」
「冗談だってば。君の国にもユーモアはあるだろ?」
「庶民には。…冗談です。」
「フーン。奴らが気づくのは時間の問題だ。必ず追ってくるだろうから、どこかに隠れなければ。」
「どこに。」
星系の図に切り替えるタッカー。「翻訳が正しければ、ここから 9,000万キロ付近に星系がある。一日かそこらでたどり着けるはずだ。」
カイターマ:「人が住める惑星があると、なぜわかるんです?」
「行ってみるしかない。…コースをセットしてもよろしいでしょうか?」
「…よろしい。」
エンジンを噴射する脱出ポッド。


※6: dilithium hydroxls

※7: ionized pyrosulfates

※8: Krios Prime
クリオスは TNG第98話 "The Mind's Eye" 「裏切りの序曲」で初言及。TNG第121話 "The Perfect Mate" 「究極のパートナー」では、「エンパスのメタモーフ」であるカマラが登場しました。カイターマは普通の (?) 女性のようですが、メイクはカマラに似ています

※9: Kaitaama
(Padma Lakshmi) 声:麻生侑里、TNG ゴメスなど

脱出ポッド。
タッカー:「頼むから少しジッとしててくれないか。」
カイターマ:「触るからよ!」
「狭いんだから仕方ないだろう。」
「女王に触れるとは、何と無礼な!」
「じゃあ作業が終わるまで外で待ってるか。…失礼。」 上のパネルに手を伸ばすタッカー。「やったぞ、着陸スラスターだ。あ…違う、安定装置だ。」
「よく知りもせずに船を操縦しているの?」
「必死にやってる!」
「何とか死なずに着陸させることができて、そこに息ができる空気があったとしても、食料はどうするんです? …水は? 反友好的な種がいる可能性もある。どうやって身を守るの。」
「いいか。星系のスキャン方法を考えて、未知の言語で着陸プログラムを作るのに 24時間もない。5秒おきに君の邪魔が入ったら全然進まない! 作業が終わるまで、少し黙っててくれないか。…じゃ、お尻をあげて。」
「何ですって?!」
「尻を浮かせてくれ! 下のパネルをチェックする。」 中に操作棒があった。
「…早くして!」
「君は、冬眠ポッドにいた方が快適だったかな。あ…着陸スラスターが見つかったぞ。…王族として育った君にこういう状況は耐え難いだろ。」 調整し、パネルを閉めるタッカー。「けど、しばらくここで我慢するしかない。何とか仲良くやっていこう。…君も努力して欲しいね。」
「手が。」
「ん?」
「手の上に座らないで! ……努力するわ?」

エンタープライズ。
一つ以外のテーブルが片づけられた食堂に、リードが入った。「失礼します。捕虜です。」 プリンが連れてこられている。
奥にアーチャーが独りでいた。「…ご苦労。」
リード:「ほかに御用はありませんか。」
「今は結構だ、大尉。下がれ。」
保安部員と共に出ていくリード。
アーチャー:「かけなさい。」
プリン:「…何の用ですか。」
「座るんだ。」
従うプリン。「私の知ってることは全て話した。」
アーチャー:「仲間のことを聞きたいわけじゃない。君のことを話したい。」
「私の何を。」
「君に重罪の容疑がかかっている、ミスター・プリン。私の母星では、罪人は犯した行為の責任を取らねばならん。有罪なら罰せられる。…この部屋で君の裁きが行われることになった。」
「裁きだと?! あんたたちの法に従う必要はない。」 立ち上がるプリン。
「それを決めるのは私ではない。」
プリンはまた座った。
アーチャー:「宇宙艦隊は、ヴァルカン最高司令部に…裁判の執行者を任命するよう頼んでいたんだ。我々人間よりも冷静で、客観的かつ論理的な人物を。トゥポル副司令官の証拠調べは、既に終わっているようだ。だから、この裁判は…形式的なものでしかない。つまり、覚悟しておいてもらいたい。…彼女の刑罰は非常に…厳しい。」
プリン:「どう厳しい。」
「シフトに遅れただけで、殴られるのは当たり前。しかし、もっと厳しい処罰の対象は、任務怠慢、士官にあるまじき振る舞いだ。…最初この船には、83名のクルーが乗っていたが……76名に減った。」
「私は悪いことはしていない!」
「誘拐を幇助し、逮捕に抵抗した。捜査妨害もある。船に損傷を与える原因を作った。」
「損傷?!」
「ゴフが逃げた時、ダイリチウム水酸基を噴射し、プラズマ排気口を詰まらせた…」
「私は無関係だ。」
「さっきも言ったが、私を説得しても無駄だ。」
そこへトゥポルがやってきた。
礼をするアーチャー。プリンも真似する。
アーチャー:「副司令官。」
トゥポルはヴァルカンのローブを着ていた。「被告人に罪状を知らせましたか?」
アーチャー:「はい。」
「…身体の重さは?」
プリン:「何?!」
「…体重です。」
「72キロだ。」
記録するトゥポル。「身長。」
プリン:「1.8メートル。なぜそんなことを聞くんです。」
「お前の種は何か決まった死後の儀式を行いますか?」
「こんな裁判は不当だ! 我が国の外交官を呼ぶことを要求する。」
アーチャー:「もっともです。異星人の裁判は初めてですからねえ。最高司令部に連絡すべきかもしれません。」
トゥポル:「この件に関して私は一任されています。裁定の度にいちいち上官に相談していたら、かえって目的が、達せられません。…では次は 18時に。」 さっさと出ていった。
「仰せのままに。」
また礼をする 2人。
プリン:「何とかしてくれ。」
アーチャー:「私にはどうしようもない。」
「あんた船長だろ!」
「…副司令官には、貸しがある。はっきり約束はできないが…寛大な措置を願い出てみてもいい。当然? お返しはしてもらう。…依然として、貨物船の行方がつかめない。…君がワープ周波数を思い出してくれたら…。」

脱出ポッド。
コンピューター表示を翻訳するタッカー。
カイターマ:「食べ物はないの? 空腹です。」
タッカー:「頭の上の収納庫をチェックしてみれば。」
「お前がやれ。」
「…忙しい。」
自分で開けるカイターマ。
「水があったら俺にもくれ。」 袋が落ちてきた。「どうも。」
チューブから水を吸うタッカー。ケースを開けられないカイターマに言う。「貸して。」
カイターマは水の袋を代わりに渡されるが、同じチューブを使うのが嫌らしい。先を拭いている。
タッカー:「病気は持ってない。」 ケースを開け、中の食べ物を匂う。
水を飲んだカイターマ。「食べられるの?」
口にするタッカー。「…うん、空腹なら食える。」
カイターマも食べ出した。
タッカー:「最初の車を思い出すな。」
カイターマ:「車?」
「タイヤが 4つの乗り物。車内はこれぐらい狭くてね。ヘ、潮風が吹いてないだけで、同じ状況。よく、チャットキン岬にドライブしたもんだ。海岸沿いに公園があって…彼女と月を眺めた。…心配するな、君に手を出す気はない。」
「そんなことをしたら手を切り落とされます。」
「デートは楽しいぞ?」
「女王は、異性と関わりをもつことはありません。」
「デートしたことないのか。」
「…わたくしだって、4年前に女王に選ばれる前は、貴族の若者たちからよく誘われました。…今は自分の時間であっても、たいてい父の側近がお供につきます。」
「…そりゃ寂しい。」
「…作業を続けて。」
タッカーはうなずいた。

脱出ポッドは惑星へ近づく。
カイターマ:「全て水ね?」
タッカー:「赤道付近に島が集まってる。」
「息はできるの?」
「…酸素に窒素、ごく微量のメタン。大丈夫だ。」
「生命体を感知した?」
「…バイオ・センサーの使い方がわからない。」
「本当に安全な惑星なんでしょうねえ。」
「空気があるのはここだけだ。」
「…着陸を許可します。」
「成功を祈ろう。」

落下していく脱出ポッド。
タッカー:「熱圏に突入。」 衝撃が走った。「左舷の安定装置が壊れた。」
カイターマ:「直せる?!」
「いや、右舷のが一つあれば大丈夫だ。」
大気圏を降下する。
カイターマ:「ミスター・タッカー!」
タッカー:「ここまでは順調だ。8,000メートル、多分メートルだ。7,000メートル。…ブレーキスラスターはちゃんと点火してる。5,000メートル。何かにつかまってろ!」
タッカーにしがみつくカイターマ。
島が近づいてきた。
タッカー:「2,000メートル。1,000メートル。」
もうすぐ地表だ。
タッカー:「こらえて!」 大きな衝撃と共に、逆さまになった。「大丈夫か。」
カイターマ:「何の煙?」
「知るか。」 ハッチに手を伸ばすタッカー。

暗いジャングル。
2人はポッドの外に立っていた。



ジャングルを進む 2人。
カイターマ:「耐えられない暑さね。」
タッカー:「エヴァーグレイズの夏に比べたら楽勝だ。…カがいないだけマシさ。」
つまずきそうになるカイターマ。「どこに行くの?」
タッカー:「あっちだ。キャンプによさそうな場所がある。」
「絶対エンタープライズには発見されないわね。」
「アーチャー船長を甘く見るな?」
靴を手に持っているカイターマ。

カイターマは靴を置き、座った。タッカーが背中を怪我していることに気づく。「血が出てるわ?」
タッカー:「かすり傷だ。」
「服を脱いでちょうだい?」
「後で自分でする。」
「どんな細菌がいるのかもわからない環境なのよ? 感染したらどうするの!」
「後でいい!」
「あなたらに死なれたらわたくしも助からないわ。勝手に死なれたら困ります。」
ため息をつくタッカー。制服を脱ぎだした。
医療ケースを開けるカイターマ。タッカーは上半身裸になった。
液体を選ぶタッカー。「これだ。」 塗ってもらうが、傷にしみるらしい。
カイターマ:「動かないで。食料は一日しかもたないわ。」
「…野生動物が潜んでいそうだ。俺はこういう森で育った。飢え死にすることはない。脱出ポッドのスラスターを利用して火を起こせばいい。お湯を沸かせる。…ありがとう。」
「どういたしまして。」

カイターマが戻ってきた。持っていた木を投げ置く。
タッカー:「それしかなかったのか?」 スラスター部品が近くに置いてある。
「枯れ木なんて落ちていません!」
「もっと探せ。」
座り込むカイターマ。
タッカー:「さっさと行ってこいよ。」
カイターマ:「わたくしは召使いじゃないわ? こういう原始的な環境で育ったのはあなたの方でしょ? あなたが探しなさい!」
「どういう意味だ。」
「肉体労働に向いているのはあなただってことです。」
「改めて言っておくがここは宮殿じゃない。…自分で言っただろ? 俺の助けなしじゃ生きられないって。だから御主人様は俺だ。ジャングルの王様だ! さあたきぎを山ほど拾ってくるまで戻ってくるな!」
「わたくしにそんな口の利き方をして、監獄行きです!」
「勲章をもらいたいね! 俺がいなきゃ君は死んでいる!」
「こんなことなら死んだ方がマシだったわ!」
「庶民はさぞ喜ぶだろうな!」
殴ろうとしたカイターマを押さえるタッカー。2人とも倒れ込む。
そのまま転がり、水に入ってしまった。
カイターマ:「何て人なの?!」
タッカー:「先に手を出したのは君だ!」
「女王を侮辱するからです!」
「俺はただの士官さ、肉体労働向きの…」
カイターマはいきなりタッカーの顔をつかむと、キスを始めた。
同じことを返すタッカー。抱き合う二人。

焚き火のそばで寝ていた、下着姿のタッカー。
下着一枚のカイターマも隣にいる。
火のそばの器に、水を入れるタッカー。
機械音が聞こえる。カイターマも目を覚ました。

脱出ポッドに近づくタッカー。音の発生源だ。
パネルを開け、ケーブルを引きちぎった。
近くの石を手に取る。
カイターマも近づく。「どうしたの?」
タッカー:「誘導ビーコンだ。」 叩き壊す。「船の位置を知るため、誰かがロックオンした。」
「仲間?」
「わからない。」

銃を持ったゴフがジャングルに来た。
脱出ポッドが空なのを知る。
近くにカイターマたちが見えた。

近づくゴフ。
銃で狙い、タッカーを撃つ。逃げ出すカイターマ。
だがそれはタッカーではなく、制服でカモフラージュしているだけだった。
頭として使っていた果物の殻が転がる。
不思議に思い、近づくゴフ。
そこへ、木の上で隠れていたタッカーが飛び降りた。
取っ組み合いになる。ファイティングポーズを取り、何度もゴフを殴るタッカー。
ゴフには効いていないらしく、大きく笑った。
投げ飛ばされ、水に顔を沈められるタッカー。
すると木の棒を持ったカイターマがゴフを殴り始めた。気を失うゴフ。
タッカーを起こすカイターマ。タッカーはゴフを見た。
カイターマ:「ほっときましょう。」
ゴフを抱え、水から出すタッカー。「…銃を探そう。」 水の中を探る。
カイターマ:「…ほかにも誰かいるわ。」
近づいてきたのは、アーチャーたちだった。
銃を探しているタッカーとカイターマ。
アーチャー:「トリップ。」
振り向くタッカー。
アーチャー:「……取り込み中かい?」
タッカーはため息をついた。

異星人船とドッキングしているエンタープライズ。
『航星日誌、2152年9月12日。クリオスの巡洋戦艦※10と合流。誘拐犯たちは、無事収監された。』
廊下を歩くタッカー。「で、即位式はいつ。」
カイターマ:「246日後。」 間に合わせで宇宙艦隊の制服を着ている。
「無理だと思うが、その前にクリオス・プライムを訪ねる機会があるかも。話を聞くと、家族が君に会わせてくれるとは思えないが。」
「恐らく無理ねえ? でも正式に女王になった暁には、わたくしに権限があるわ? 法を変える権限。」
「…どう変えるんだい?」
「ぜひ会いに来て…」 顔を近づけるカイターマ。「自分で確かめて。」
「あ…。」 エアロックを開けるタッカー。
中ではクリオス人が待っていた。振り返りながら入ったカイターマ。
笑うタッカー。

クリオス巡洋戦艦は、エンタープライズを離れた。


※10: Krios battle cruiser
VOY第45話 "The Chute" 「地獄星からの脱出」のアクリティリ・パトロール船の使い回し

・感想
タッカーの災難エピソードシリーズ。やたらと上から見る女王というキャラクターは面白いのですが、ストーリー自体は極めてありがちですね。先週に引き続き、クライマックスの弱さは致命的です。
カイターマ役はインド人女優ということで、TMP アイリーア役の故パーシス・カンバータを思い起こさせます。誘拐犯を罠にはめるアーチャーのシーンは、後でトゥポルの感想 (?) を聞きたかったですね。


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