司令室。 
 アーチャーの音声が流される。『航星日誌、補足。トリップと私は、イノール人※3とのファースト・コンタクトを無事果たし、ケト・イノール※4を発った。休暇も取れ、有意義な時間だった。』 
 サトウ:「この後は、『パン・ザン※5』について、一度記録があるだけです。」 
 リード:「パン・ザン?」 
 「スポーツの一種で、記録によれば船長の知る限り、地球の水球に一番近いと。」 
 トゥポル:「センサーは?」 
 リード:「データは破壊されています。」 
 フロックス:「副司令官、シャトルに血液反応が。人間の血液です。デッキと隔壁の 2ヶ所。船長とタッカー少佐のものだ。リード大尉は拉致されたと。」 
 「でなければ…血を流すわけがない。」 
 トゥポル:「…ケト・イノールへコースをセット。」 
 操舵席へ向かうメイウェザー。
  
 ワープ航行中の異星人船。 
 コックピットにいる、制服を着た異星人※6。「見回ってくる。」 
 ロッカーのロックを解除し、銃を取りだした。 
 ドアの前でコードを入力し、開ける。 
 中は同じ種族の者が見張っていた。 
 たくさんの男たちが、並んで座らされている。足や手を固定された者の中に、アーチャーとタッカーもいた。2人とも私服姿で、顔に怪我をしている。 
 下を向いていたアーチャーを呼ぶタッカー。「船長!」 
 アーチャー:「ん? 責任者か? 違うなら君の上官と話がしたい。」 
 異星人は何も言わず、持っていた装置を使った。 
 すぐにアーチャーの手錠に電流が走る。苦しむアーチャー。 
 身体をのけぞらせるアーチャーは、横の異星人にこずかれた。他にも様々な種族の人物ばかりだ。 
 タッカー:「船長。」 
 アーチャー:「あ…大丈夫だ…。」 
 前にいた男、クロダ※7が話し出す。「おとなしくしていた方がいい。看守は質問が嫌いだからな?」 見張っている異星人と同じ種族のようだ。 
 アーチャー:「…どこへ向かってるんだ…。…連中はカナマール※8って言ってた。そこに心当たりは。」 
 タッカーの隣にいる、別の種族の異星人、ゾーマス※9。「犯罪者コロニーだよ。」 
 タッカー:「…裁判も受けさせないで、いきなり刑務所に送るのか?」 
 「訴訟基地で裁判を受け、判決を受けてからコロニーへ行く。」 
 「無実の場合は。」 
 「捕まったら最後、全員有罪だ。…奴ら何て。」 
 アーチャー:「…密輸をしたと。」 
 「…そりゃ相当ヤバいな。…見せしめにされる。」 
 看守を見るアーチャー。隣の異星人は威嚇する。
  
 ケト・イノール軌道上のエンタープライズ。 
 トゥポル:「ここへは探査任務で来ました。…我々はうちの船長と機関主任が、そちらを訪問後拉致されたと確信しています。」 
 スクリーンに映っているイノール人高官※10。『誰にでしょう。』 護送船の護衛や、クロダと同じ種族だ。 
 トゥポル:「わかりません。」 
 『ここは星系いち人の出入りが多い。毎日何千何万という来訪者がいます。それと同じだけの泥棒や密輸犯もいる。…従ってお察しいただけると思うが部下も非常に忙しい。お役には立てません。』 
 「…特徴だけでも送らせて下さい。あなたの部下の中に見た方がいらっしゃるかもしれません。」
  
 イノール護送船。 
 配られている食事を、クロダは拒否した。 
 臭ってみるアーチャー。 
 タッカー:「ほかにはないのかよ。」 
 後ろにいるノーシカン※11。「気に入らないなら俺が食う。」 
 タッカー:「……よく見ると美味そうだ。」 
 「…こっちへよこせ。」 
 「……断る。」 
 「まだ聞こえないらしいな。」 
 「…面倒な目に遭いたくなかったら俺に話しかけるな。」 
 ノーシカンは立ち上がった。だがすぐに、護衛が手錠に電流を流した。 
 タッカー:「…どうも。」 
 今度はタッカーにも流され、皿を落としてしまう。 
 ゾーマス:「ノーシカンには気をつけた方がいい。気が荒いから。」 
 うなるノーシカン。 
 タッカー:「忠告ありがとう。」 
 ゾーマス:「…何密輸した? ラチナム? イノール・スパイスワイン※12?」 
 「密輸なんかしてない。俺は宇宙船の機関主任、彼は船長だ。」 
 「…船長? 宇宙船の? それいいねえ。…僕もそう言っときゃ、助かったかも。『ゾーマス船長』か、フン!」 
 ため息をつくタッカー。
  
 エンタープライズ。 
 アーチャーとタッカーの姿が表示された、パッドを置くイノール人高官。「彼らが軌道を離れようとした時、パトロール船が止めたようです。」 
 トゥポル:「今どこに?」 
 「我々の護送船の中に。密輸品と思われる物を運んでいて拘留されたらしい。」 
 リード:「無実の人間を捕まえる習慣でも?」 
 「密輸は星系にはびこってる。…部下は不審船に敏感になっています、時にはミスもある。」 
 「今回がそのミスだ。」 
 「…護送船と合流するよう手配した。これが、座標です。」 
 トゥポル:「これ以上ミスが重ならないよう、我々に御同行願います。」
  
 イノール護送船。 
 タッカー:「このまま助けが来なかったら。」 
 アーチャー:「話のわかる判事が…訴訟基地にいてくれることを祈るしかない。」 
 「いなかったら。」 
 「ノーシカンは敵に回さないことだ。」 
 睨むノーシカン。 
 ドアが開き、イノール人看守がやってきた。「アーチャーか? …釈放だ。…船が迎えに来る。」 
 ノーシカン:「どうして釈放される。」 
 タッカー:「無実だからだ。」 
 笑う囚人たち。 
 ノーシカン:「こいつらにいくらつかまされた。」 
 看守:「黙れ。」 
 「俺も無実だ。金を払う。」 
 「黙れと、言ったろ。」 ノーシカンに近づく看守。 
 「全員無実だ!」 
 その時、クロダは手錠を外した。 
 ノーシカン:「いくらか言え!」 
 ノーシカンの手錠に電流を流す看守。 
 クロダ:「いい加減にしろ!」 看守を殴り倒した。 
 蹴って装置を奪い、ノーシカンを解放するクロダ。 
 自分の手錠も外せと騒ぐ男たち。 
 看守を蹴るノーシカン。
 
 
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※3: Enolians
  
※4: Keto-Enol
  
※5: pan zan
  
※6: イノール人看守 Enolian Guard (Brian Morri) 声:相沢正輝
  
※7: Kuroda (マーク・ロルストン Mark Rolston TNG第170話 "Eye of the Beholder" 「謎の幻覚テレパシー」のウォルター・J・ピアース中尉 (Lieutenant Walter J. Pierce)、ENT第82話 "The Augments" 「野望の果て」の Magh 艦長 (Captain Magh) 役) フルネームはクロダ・ロー・エン (Kuroda Lor-ehn) で、後に言及されます。声:野島昭生
  
※8: Canamar 原題
  
※9: Zoumas (ショーン・ウェーレン Sean Whalen) 種族名不明。声:成田剣
  
※10: Enolian Official (ホームズ・R・オズボーン Holmes R. Osborne) 声:小山武宏
  
※11: Nausicaan (Michael McGrady) 声:楠見尚己、DS9 アレキサンダー、ENT シリックなど
  
※12: Enolian spice wine 吹き替えでは単に「スパイスワイン」のみ
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