エンタープライズ エピソードガイド
第42話「沈黙の漂流船」
Future Tense
イントロダクション
※1宇宙空間を漂うポッド状の船。エンタープライズが近づいている。 スクリーンに映る船。 アーチャー:「生体反応は。」 トゥポル:「検知できませんが…船体が、センサーを拡散させています。」 「漂流の原因は?」 リード:「攻撃された形跡がありません。恐らく、事故ではないでしょうか。」 「……出発ベイに収容しろ。」 その船が置かれているシャトル発着ベイに、アーチャーたちがやってきた。 リード:「窓がないなあ。どっちが船首で船尾か、わかりませんね。」 スキャナーを使うトゥポル。「船長! ハッチのようです。」 リード:「溶けて一体化してますねえ。焼き切りますか。」 フェイズ銃を棚から取りだし、ハッチの周りを撃っていく。 アーチャーは端に固定装置を取り付け、ハッチを開けた。咳き込む。 中の安全を確認するトゥポル。アーチャーが入り、ライトを受け取った。 椅子に座っている人物の、後ろ姿が見える。それを回転させると、ひどく損傷した遺体だった。 トゥポルは調べた。「…人間です。」 |
※1: このエピソードは、当初のタイトルは "Crash Landing" (墜落、不時着) でした。ですが 2003年2月19日の放送直前に変更されました。恐らく 2月1日に起きた、スペースシャトル・コロンビアの突入事故を考慮しての処置だと思われます |
本編
医療室に運ばれた遺体。 手術服を着たフロックス。「人間の男性ですねえ。細胞マイクロスキャンで死亡時の年齢が出ます。…ディープスペースの先駆者がほかにいたようですね。」 アーチャー:「人類の歴史が書き換えられることになる。DNA は取り出せるか。」 「組織の損傷は激しいですが、何とか取り出せるでしょう。」 「もし艦隊出身者なら、遺伝子情報がデータベースにあるはずだ。…すぐに照合してみてくれ。」 「急ぎます。」 トゥポルが入る。「付近には、船も居住可能な星域もありません。」 アーチャー:「……もしかすると、ゼフレム・コクレインかもしれない。…一人乗りの船で行方不明になったらしいからな。※2」 「こんな遠くまで来られますか。」 「…消えた後多くの噂が流れたが、実験的なワープ船をテストしていたという…説もあった。…船体かコントロールパネルに、標識は?」 「見つかっていません。」 スキャナーを使うリード。「船体は電磁放射を吸収するようですね。これほど損傷がなければ、センサーでキャッチできなかったでしょう。」 タッカー:「ステルス船ってわけか。どう思う、トラヴィス。…こいつ貨物船だったのかなあ。」 中から出てきたメイウェザー。「貿易航路から 30光年以上ですよ? どうやってこんな遠くまで来ます?」 リード:「誰かに乗せてもらったかもな。」 タッカー:「…だとしたらヒッチハイクの世界記録だ。プラズマ排気口がどこにも見あたらない。スラスタークワドすらない。」 メイウェザー:「動力源らしきものも、何もない。」 「…エンジンなしでどうやってディープスペースまで来るんだ。」 リード:「脱出ポッドかもしれない。」 「…それでも何かしらの推進システムは必要だろ。」 作戦室のアーチャー。「我々が知らないミッションがあるんですか。」 フォレスト※3:『あればいいがね。ヴェガ・コロニー※4から、打ち上げられた船という可能性もあるが…そこから遥か後方だ。…地球貨物協会※5にも問い合わせてみよう。』 コンソールに映っている。 「フロックスがコクレイン博士の家族に依頼して…今、遺伝子情報を送ってもらっています。」 『しかし地球から 100光年だ。世紀の行方不明事件を解決したのなら、いいがなあ。』 「…そうでなければ、更に大きな謎になります。」 第2発着ベイ。 船の底にあるパネルを開ける、タッカーとリード。 リード:「少佐。」 青い液体が付着している。「これは何らかの、生物物質です。」 タッカー:「もしや有機回路か。」 「フロックスを呼んで、見てもらいましょうか。」 「ああ、それがいいな。」 道具を使い、中の構造を外していくタッカー。「何だこれ。」 更にリードは円形のフタをどけた。 中を覗き込むと、長いはしごが見えた。その先は暗闇に消えている。 タッカー:「マルコム。」 リード:「見えてます。」 「よし、幻覚じゃないな。外より内の方が広いなんてありえるか?」 「…ホログラムでしょうか。」 「…ハイパースパナ取ってくれ。」 それを中に落とすタッカー。しばらくした後、落ちた音が響いた。明らかに深い。 リード:「まさか、降りませんよね。」 タッカー:「スパナ取ってくる。」 「ブリッジに連絡すべきです。それから…」 「何だって、マルコム?」 はしごを降りていくタッカー。 リードも続く。一番下まで来た。部屋が広がっている。 リード:「『宇宙探検』とはまた、違った探検だな。」 タッカー:「空間幾何学の論文を読んだことはあるが、こんなのは聞いたことがないな。船長言っても信じないぞ? 自分の目で見なきゃ。…これ何だ。…ワープリアクターか?」 「専門でしょ?」 「…破損してるようだな。オーバーロードかな。」 「…エネルギー反応を感知してます。…かすかですが。」 報告するメイウェザー。「船長、船が 1隻、ワープ解除。インターセプトコースです。」 トゥポル:「…スリバンです。」 アーチャー:「…見てみよう。」 操作するサトウ。 細胞船ではない、大型の船がスクリーンに映る。 トゥポル:「武器は最小限、戦艦ではないですね。」 サトウ:「…通信です。」 うなずくアーチャー。 映るスリバン※6。『お前の船に我々の所有物がある。』 アーチャー:「…残念ながらそんなものはないと…」 『出発ベイにある船に回収要請が出ている。細胞船が 3日前に発見した船だ。我々が回収に来た。』 「あれは地球の船で、パイロットは人間だ。」 『中の死体に興味はない。…出発ベイを減圧して船を放出しろ!』 トゥポルに合図するアーチャー。戦術コンソールへ向かうトゥポル。 アーチャー:「気になるなあ。あの船に何の興味がある。ただの残骸だ。」 スリバン:『放出しろ! 今すぐ!』 トゥポル:「…武器を装填しています。」 アーチャー:「上の者に連絡したらどうだ? シリックという男に、聞いてみろ。私に脅しは効かないとわかるだろ。」 何とか壁のパネルを外すタッカーとリード。 簡素な模様のボタンを押してみる。すると開き、中にいくつかの箱があった。固定されている。 リード:「リリースピンかな。」 タッカーが脇を押してみると外れ、箱を一個取りだした。「機関室へ持っていこう。」 船が揺れた。 エンタープライズを攻撃するスリバン船。 トゥポル:「船首装甲維持。」 メイウェザー:「トラヴィス、旋回だ。フェイズ砲、準備しろ。連中の武器を攻撃するんだ。」 船を出たタッカー。揺れに身体を支える。 タッカー:「タッカーよりブリッジ。」 すると、天井にスリバンが現れた。首が 180度回転している。 気づかないタッカー。「通信不能だ。」 スリバンに後ろから倒された。 すぐにフェイズ銃を取るリード。スリバンはもう一人いる。 一人を撃ち倒すリード。 軽やかに上へ逃げるスリバン。撃ち合いになる。 リード:「少佐。」 気を失ったままのタッカー。スリバンは発着ベイの外に出て、コンソールを操作しようとする。 バランスを失うリード。 サトウは報告した。「誰かが出発ベイを開けようとしています。」 アーチャー:「ロックしろ。」 「…できません!」 「アーチャーよりトリップ。」 応答はない。「すぐ保安チームを送れ。反撃しろ!」 フェイズ銃を撃つリード。 フェイズ砲がスリバン船に命中した。 トゥポル:「スリバン、兵器使用不能。」 アーチャー:「エンジンを狙え。グラップラー、オンラインだ。」 「船長。」 「あの船をここまで欲しがるわけが知りたい。」 メイウェザー:「…去っていきます。」 「追跡しろ。」 転送されるスリバン。 倒れていたもう一人も、非実体化した。 目を覚ますタッカー。リードは辺りを確認する。 スリバン船は遮蔽された。 メイウェザー:「見失いました。」 |
※2: TOS第31話 "Metamorphosis" 「華麗なる変身」より ※3: フォレスト提督 Admiral Forrest (ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong) 前話 "Cease Fire" 「戦場の絆」に引き続き登場。声:金尾哲夫 ※4: Vega Colony ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の虜」など ※5: Earth Cargo Authority ※6: スリバン兵士 Suliban Soldier (Cullen Douglas) 声:伊藤和晃 |
ワープ航行中のエンタープライズ。 『航星日誌、補足。ヴァルカン船タルキアー※7に連絡を取った。3日後ランデブーし、あの船を地球へ運んでもらう。ランデブーポイントに着くまで、またあのスリバンに遭遇しなければいいのだが。』 機関室で箱が開けられている。 タッカー:「強力なシールドでした。何にしろ重要な物ですよ。」 アーチャー:「何だと思う。」 「『ブラックボックス』じゃないかと。」 トゥポル:「事故原因や船籍も、わかるかもしれませんね。」 「起動できればですけどね。船全体と同じ有機回路が使われてます。ぜひ船の内部を見て下さい、目を疑いますよ。」 アーチャー:「そんなに広いのか。」 フロックスの通信が入る。『医療室より船長。』 アーチャー:「アーチャーだ。」 『すぐこちらへ来て下さい。』 トゥポルも向かう。 医療室のフロックス。「無傷の細胞はほんの、数個でしたが何とか遺伝子分析を完了させました。」 モニターを見るアーチャー。「…艦隊データベースとの一致は?」 フロックス:「いいえ? 普通の人間ではありませんでした。」 表示を切り替える。「実は、珍しいヌクレオチド配列がありました。最初突然変異かと思いましたが、染色体構造に見覚えがありまして。異種族データベースに検索範囲を広げました。一致したのが、ヴァルカンです。」 隣に同じ構造が表示された。 「……なぜ人間にヴァルカンの DNA がある。」 「可能性を言えば、ヴァルカンの祖先がいたようですねえ? 曾祖父母より更に前です。」 「その頃人類は、まだヴァルカンと遭遇してない。」 「更に、ほかの種族の遺伝子もいくつか発見しました。」 新たに 3つの構造を映し出すフロックス。「これはテレリアン人※8、こちらはわかりません? …数世代にも渡って、多種族間での交配がなされたようですねえ。」 「…ご苦労、ドクター。トゥポル。」 外へ向かうアーチャー。 アーチャーについてきたトゥポル。「未来のデータベース。」 ドアのロックを解除するアーチャー。「タイムトラベルして来たダニエルスが、部屋に残していった。※9」 暗い部屋に入り、ロッカーを開ける。 トゥポル:「彼の承諾もなしにですか。」 「…内緒にしとけばいい。」 装置を起動するアーチャー。空中に、さまざまな船の図や情報が表示される。 トゥポルは目を留めた。「ヴァルカン船ですね。この型は見たことがありません。」 アーチャー:「まだ造られてないからだ。」 スクロールを早める。 「…他種族との結婚など、前例はごくわずかです。」 「ヴァルカンのゲノムが汚染されるのが心配なのか?」 「2つの種族には、生物的に非常に大きな違いがあるんです。我々は子供は作れません。……人間とヴァルカンです。」 「フン。」 画面を止めるアーチャー。「これじゃないか?」 「背面の形が違います。」 「…もし両者で子供ができたとして、耳は尖ってたのかなあ。」 アーチャーを見るトゥポル。 アーチャー:「これだ。この船だ。……日付を見ろ、900年近く先になってる。…未来の歴史家の話を聞いたが、過去へ戻って実地研究したらしい。あのパイロットがそうかもしれない。」 トゥポル:「船の動力は『時間変異ドライブ』とありますね。」 「もしスリバンの手に渡ったら…分解するな。」 装置を停止させるアーチャー。「そしてエンジンの仕組みを調べるだろう。時間冷戦の流れが変わるかもしれない。」 「船が未来のものと仮定するなら、なぜ回収に来ないんです。」 呼び出しが入った。「アーチャーだ。」 メイウェザー:『また未確認船が、高速ワープで接近中です。』 「スリバンか。」 『いいえ。特定できません。』 エンタープライズを追う、一隻の異星人船。先が尖った小型船だ。 メイウェザー:「距離 2万キロ、更に接近中。」 アーチャー:「……トゥポル。」 トゥポル:「…ソリアン※10船です。非常に排他的で、ヴァルカンともわずかな接触しかありません。母星から、これほど離れた場所まで来るのはまれなことです。」 リード:「…熱反応が尋常じゃありません。船内は恐ろしく熱いようです。200度以上になっています。」 「彼らは、ヒューマノイドではないようですから。」 アーチャー:「…回線オン。」 操作するサトウ。 アーチャー:「船長のアーチャーだ。宇宙艦隊…」 耳障りな高い音が響き渡った。『…ジョナサン・アーチャー……通信状況を改善してくれ。』 アーチャー:「我々に何か用があるのか。」 やはり高音が混じる。『……船を回収しにやって来た。』 アーチャー:「…あの船のことをどうやって知ったんだ。」 ソリアン:『……君たちには危険だ……時間放射能※11がある。』 「…警告感謝する。だが渡すわけには…」 高音だけが短く聞こえた後、船が揺れた。 トゥポル:「トラクタービームで、ロックされました。」 メイウェザー:「減速しています!」 アーチャー:「船体装甲を。船尾魚雷準備だ。」 リード:「ビームがターゲットスキャナーを妨害しています。」 「ビームを止めろ。でないと出発ベイにある船を破壊する。……聞こえたか?」 ソリアン船はトラクタービームを解除し、エンタープライズを抜いて去っていった。 ソリアンの短い通信が最後に聞こえた。 アーチャー:「何だって?」 サトウ:「わかりません、誉め言葉でないのは確かです。」 「……船を渡せという者が、この後どれだけ出てくるんだろうな。」 |
※7: Tal'Kir ※8: Terrelian VOY第101話 "Infinite Regress" 「遥かなるボーグの記憶」など ※9: ENT第11話 "Cold Front" 「時を見つめる男」より ※10: Tholian TOS第64話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」より。ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」でも言及されています。今回登場する船も、TOS で登場したウェブスピナー (クモの巣つむぎ船) と似たような形状です。高画質な壁紙を公式サイトでダウンロードできます ※11: temporal radiation |
食堂。 独りでいるトゥポルに、皿を持ったフロックスが同席する。「よろしいですか?」 トゥポル:「どうぞ。」 「また別の、ヌクレオチド配列を見つけましたよ。ライジェル人※12です、フフン。驚きの連続だ…。」 料理を口にするフロックス。「うーん、うん。ヤケにお腹が空くと思ったら、もうこんな時間でした。フフン。…仕事に没頭していますね? あなたも。」 「…あの船の外壁金属を分析するよう言われていますので。」 「何か発見は?」 「いくつかの珍しい合金を見つけました。しかも、うち一つは半流動体です。」 「うーん、また謎だ。」 「控えめに言っても。」 「フフン、フン。あの船は、未来から来たものだと…船長は思っているんですよねえ?」 「仮説ですが。」 「遺伝子に合金、証拠は積み上がっていますよ?」 「そうでしょうか。」 「あー、ヴァルカン科学理事会か、フフン。新しい説は、なかなか受け入れませんからねえ。…この件を検討すれば、タイムトラベルへの意見は変わるんじゃないですか?」 「意見ではなく、簡単な論理です。」 「デノビュラ人も、知性ある種族は自分たちだけだと思っている時期がありました、うーん。驚愕でしたよ、ブサーリ人※13とファースト・コンタクトした時は、フフン。証拠が目の前にあるのに、信じようとしない者が大勢いた、フーン。時間もかかり葛藤もありましたが、結局定説を変えるしかなかったんです。」 「ドクターもタイムトラベルを信じるんですか?」 「好きなんです、意外性が。私は意外性を、受け入れます。」 「私は論理を信じます。」 「うん。」 「…では失礼、ドクター。」 「おやすみ?」 機関室で作業を続けるタッカー。「よーし、パワーグリッドの初期化を始めよう。」 リード:「パワーグリッドとしてですが? …考えると呆然としますよねえ。」 「何が。」 「あれは 31世紀の船かもしれないんですよ? 昔タイムマシンで未来に行くのが…夢だった。」 「…お前本読む時、結末を先に読んじまうタイプだな。」 「でも未来を夢みたことはあるでしょう。この任務がどうなるかとか。」 「夢みるのと、結末を知るのとは違うからな。」 「もしダニエルスが来て 31世紀に連れて行ってやると言ったら、行かないんですか?」 「……知らない方がいいこともある。」 「それで探検家と言えます?」 「ヘ、全部知ってたら、探検する楽しみがなくなるだろ。マイクロキャリパーを取ってくれ。」 タッカーがそれを使うと、装置が光り始める。「仮に未来の本を、覗けるとしよう。結婚相手の名前が載ってたら、お前見たいか?」 「もちろんですよ。気まずい初デートを何度も、重ねずに済む。」 一緒に笑うタッカー。「そうか。じゃ、ある日その相手と出会う。2、3回デートして、いきなりプロポーズ。そして幸せに暮らしましたとさ、でいいのか?」 リード:「完璧ですね。」 「だがそりゃ、愛して結婚したのか。未来の本がそう言ったからか。」 「『幸せに暮らす』んだったら、どっちでも同じですよ。」 ため息をつくタッカー。光が安定した。 タッカー:「よし、動力オンだ。さて次はどうこの有機回路につなげるかだな。」 リード:「…似てますねえ、コックピットのと。」 「うーん、あそこのをこっちに持ってくるか。インターフェイスさせよう。」 シャトル発着ベイに入るタッカー。「もし過去を見られるっていうんなら、飛びつくね。ずっとステゴサウルスを見たかった。」 リード:「すぐ餌にされますよ。」 「ステゴサウルスは、草食なんだ。」 「過去に戻れるなら、行く年は決まってるな。1588年。」 「…その年何があったんだ。」 「イギリスが、無敵艦隊を破ったんです。」 「ああ、リードって苗字の奴が活躍したんだろ。」 2人は何とか、小型船のパネルを開けた。 シャトル発着ベイに入るタッカー。「もしも過去を見られるっていうんなら、飛びつくね。ずっとステゴサウルスを見たかった。」 リード:「すぐ餌にされますよ。」 「ステゴサウルスは、草食なんだ。」 「…さっき、ここに来たような気が。ああ…過去に戻れるなら、行く年は決まってるな? 1588年。」 同時に言うタッカー。「1588年。何で言う前にわかったんだ?」 リード:「…長時間一緒にいすぎですね。」 笑う。 2人は小型船のパネルを開けた。 シャトル発着ベイに入るタッカー。「もしも過去を見られるっていうんなら、飛びつくね。」 言葉を予想するリード。「…ずっとステゴサウルスを見たかった。」 タッカー:「…すぐ餌に、されますよ。」 「ステゴサウルスは草食なんだ。」 周りを見る 2人。 ブリッジ。 タッカー:「気味悪いったらなかったですよ。あの船のそばに立って、何度も何度も同じ会話をしてたような感じで。」 フロックス:「フーン、2人とも異常は見られませんよ?」 リード:「でも夢や幻覚じゃない。」 トゥポル:「船長、あの船は何らかの高エネルギー粒子を発しています。」 司令室のモニターを見るアーチャー。「ソリアンが言っていた、時間放射能かもしれないな。」 船体図が表示されている。 リード:「あの船のそばに、かなり長くいましたから。」 フロックス:「粒子濃度は低い。影響は続かないでしょう。」 タッカー:「でもどういうことなんだ。」 トゥポル:「放射能のせいで、時間認知がずれたのでは?」 アーチャー:「もしくは、本当に時間が繰り返されたのかもな。…出発ベイを封鎖して、周りのクルーも退避させろ。危険は避けたい。…ブラックボックスの方は。」 タッカー:「オンラインですが、データにアクセスできません。」 「でき次第連絡しろ。解散。」 トゥポル:「…お話があります。」 作戦室を示すアーチャー。 トゥポルは中に入った。「放射能がほかのセクションに広がり、影響するかもしれません。」 アーチャー:「注意しよう。…ヴァルカン船とのランデブーはすぐだ。」 「それまでもちこたえるでしょうか。既に 2つの種族に攻撃を受けました。また追ってくると見るのが論理的です。」 「それはまた何とか振り切れるだろう。」 「…あの船を破壊すべきです。」 「そんなことはしない。こう何度も未来から干渉されるのは我慢ならない。時間冷戦の情報を集めて、そろそろこっちから動いていい頃だろ。」 「仮に時間冷戦が、存在するものだとしても、関わるべきではないと思いますが。」 「スペースドックを離れた時から否応なく関わってる。……ダニエルスが言ってた。まだほかの者たちも絡んでる。ソリアンはその手先かもしれない。」 「船長は好奇心に駆られてエンタープライズを危険にさらしています。」 「何らかの手がかりを得る初めてのチャンスだ、逃すつもりはない! すぐヴァルカンがあの船を地球に運んでくれる、後は艦隊に任せる。」 「船長…」 「言っただろ。…もう決めたことだ。」 ドアを開けるトゥポル。「……次はスリバンは遮蔽してくるでしょう。戦術警報を発した方がいいかと。」 うなずくアーチャー。トゥポルは出ていった。 機関室。 話す機関部員たち。「ナビゲーションシステムの調整を進めて下さい。」「了解。」 アーチャー:「何か出たか。」 タッカー:「出るわけありませんでした。ブラックボックスじゃない。データ保存用のマトリックスかと思ってたら、亜空間信号を発し始めたんですよ。小型送信機のようです。非常用の、ビーコンか何かです。」 トゥポルの通信が入る。『ブリッジよりアーチャー船長。スリバン船が数隻、接近中です。』 アーチャー:「すぐ行く。」 『了解。』 エンタープライズを追う、さまざまなスリバン船。先ほどの貨物船もいる。 戻ってきたアーチャーに言うトゥポル。「20秒で、彼らの射程圏内に入ります。」 アーチャー:「最大ワープに加速。」 操縦するメイウェザー。 トゥポル:「ピッタリとついてきます。」 アーチャー:「ランデブー地点までは。」 「3分以内です。」 「タルキアーに連絡だ。お客が一緒だと知らせろ。」 サトウ:「…応答なし。…通信が入ってます、スリバンです。」 うなずくアーチャー。「仲間を引き連れてきたか?」 スリバン:『ワープを解除し我々の乗船に備えろ。』 「断ったら? あの船の破損がひどくなってもいいのか。」 リード:「敵は武器装填。」 アーチャー:「長距離センサーをよく見てみろ。2、300万キロ先に、ヴァルカンの巡洋戦艦※14がいる。彼らを怒らせたくなければ、引き返した方が身のためだぞ。」 スリバン:『ヴァルカンが地球の船のために危険を冒すものか。』 通信を終える。 スクリーンに映ったスリバン船は、背後から攻撃してきた。 アーチャー:「船尾砲用意、反撃しろ!」 船体から出てきたフェイズ砲が、スリバン船を攻撃する。 互いに撃ち合う。 リード:「腹部装甲ダウン!」 アーチャー:「ヴァルカンは。」 トゥポル:「あと 60万キロです。」 リード:「出発ベイのドアに命中しました。ドアを吹き飛ばす気です。」 アーチャー:「コースとスピードを維持!」 エンタープライズはスリバン船一隻を破壊した。 トゥポル:「あと 20万キロです。」 アーチャー:「ワープを解除しろ。」 通常空間に出るエンタープライズ。 スクリーンに映ったヴァルカン船タルキアーは、停止していた。船体の一部が残骸として散らばっており、小型船に囲まれているようだ。 アーチャー:「…生体反応は。」 トゥポル:「クルーは生存。エンジンは破壊されています。」 サトウ:「通信システムもです。」 メイウェザー:「…船長。」 タルキアーの周りにいた、何隻ものソリアン船が向かってくる。 スクリーンを見つめるアーチャー。 |
※12: Rigelian ENT "Broken Bow, Part I" より ※13: B'Saari ※14: 原語では combat cruiser。後に登場する船は、ENT第27話 "Shockwave, Part II" 「暗黒からの衝撃波(後編)」で登場したディキーアと同タイプのものです |
命じるアーチャー。「ワープに戻るんだ。」 ソリアン船が一斉に、特殊な攻撃をしてきた。逃げようとするエンタープライズだが、動きが止まってしまう。 メイウェザー:「…エンジン停止!」 アーチャー:「兵器は。」 リード:「オフラインです。船体装甲も低下。」 トゥポル:「…細胞船がワープ解除しました。」 すると、前方から来たスリバン船がソリアン船を攻撃し始めた。撃ち合う。 リード:「…スリバンに助けられるなんて。」 アーチャー:「トリップ、ワープエンジンを使いたいがどうなんだ。」 機関室のタッカー。「反物質インジェクターの交換に 2、3時間かかります。」 アーチャー:『兵器はどうだ。』 「パワーリレーが全部、攪乱されてます。」 『なら全部後回しで、例のビーコンを作動させろ。』 「は?」 話すアーチャー。「船の造り主が助けに来るかもしれない。」 タッカーは了解した。「わかりました。」 トゥポルは言う。「そうだとしても、助けが間に合うとはとても思えません。」 アーチャー:「……魚雷の弾頭を外して、手動で作動させるにはどのくらいかかる。」 リード:「4分です、2人ならもっと早く。」 「一旦弾頭を外したら、あまり距離は動かせません。」 「なら魚雷を出発ベイへもちこんでやろう。ブリッジを頼む。」 リードと共にターボリフトに乗るアーチャー。 ソリアンの方が優勢で、次々とスリバン船を破壊していく。 魚雷の先端を開けるアーチャー。「4分だと信じてるからな。」 リード:「あれは推定ですから。」 「簡単じゃないよな。」 「連結部を外します。パワーコンジットを分離して下さい。青と赤のを先に。外れるまで半時計回りに、リリースを回して下さい。」 道具を使うリード。 機関部員は尋ねた。「何でしょう。」 タッカー:「パワーモジュールくれ。」 「はい。」 セットするタッカー。「よし、マイクロキャリパーだ。」 トゥポルは連絡する。「ブリッジよりアーチャー船長。」 コミュニケーターを取り出すアーチャー。「何だ。」 トゥポル:『スリバン船の数は、半数以下になりました。あまり時間がありません。』 アーチャーの声がブリッジに聞こえる。『今急いでる。待機しろ。』 指示するリード。「船長、ロックブレースを持って下さい。」 弾頭が外される。 魚雷の先端を開けるアーチャー。「4分だと信じてるからな。」 リード:「あれは推定ですから。…まただ。時間が繰り返しています。」 「…本当だ。…前はどこまでいったと思う。」 「わかりません。」 「弾頭を外したような気がするが。」 「外では普通に時間が進んでるなら、ソリアンの危険が迫ってる。」 「急がないと。赤と青だったな?」 うなずくリード。 メイウェザーは報告した。「細胞船が…破壊されました。」 トゥポル:「何隻です。」 「…全部です。…ソリアン、インターセプトコースです。」 サトウ:「…通信です。」 ソリアンの声が聞こえる。『……船をよこせ。』 トゥポル:「引き渡す、用意はあります。ただ出発ベイのドアに損傷があるために、もう少し時間がいります。現在修理に当たらせていますが、開けられるようになるには…」 理解できない声が遮った。 メイウェザー:「2隻、円盤部に近づいてきています。…80メートル。…40。」 サトウ:「ドッキングポートにロックオンしました。」 トゥポル:「ハッチ封鎖、保安チームを送って。」 弾頭を外すアーチャー。「コントロールルームへ。ここは私がやる。」 リード:「はい、船長。」 アーチャーは弾頭を小型船の中に入れる。 魚雷の先端を開けるアーチャー。「4分だと信じてるからな。」 リード:「あれは推定ですから。」 顔を見合わせる2人。 アーチャー:「これで何回目だと思う。」 リード:「2回は。もっとかも。」 「今度こそ終えないと。」 素早く作業する 2人。 武器を持った保安部員が集まる。 エアロックのドアが外側から、焼き切られようとしている。 報告するサトウ。「ドアを切断してます!」 弾頭を運ぶアーチャー。「コントロールルームへ。」 外に出て、コンソールを操作するリード。 船のハッチを閉めるアーチャー。 タッカーはビーコンを起動させた。 アーチャーもコントロールルームへ入った。「放出するぞ!」 外に出される小型船。すぐにソリアン船がトラクタービームを使う。 アーチャー:「今だ。」 リード:「もっと離れてからの方がいいと思いますが。」 「今だ!」 ボタンを押すリード。だがブザーが鳴る。 リードはもう一度操作する。 伝えるトゥポル。「トゥポルよりアーチャー船長。弾頭を無力化されました。」 アーチャーは応えた。「そっちへ行く。」 タッカーの目の前から、ビーコン一式が消えた。 医療室の遺体も消滅する。 そして、ソリアンが牽引していた小型船も消え去った。 メイウェザー:「船長、消えました。」 アーチャー:「…消えた?」 トゥポル:「非物質化しました。ソリアン船内にも、感知できません。」 サトウ:「…撤退していきます。」 ソリアン船は、全てワープで去った。 アーチャー:「……なぜ攻撃してこなかった。」 リード:「本当ですね。」 トゥポル:「あの船にしか興味ないのでは?」 アーチャー:「……ヴァルカン船は?」 トゥポル:「…ワープドライブは故障。…生命維持は安定しています。」 「復旧に手を貸そう。…シャトルを準備。ドクターを出発ベイに呼んでくれ。」 サトウ:「了解。」 トゥポルと共にターボリフトに乗るアーチャー。 『航星日誌、補足。ヴァルカンの輸送船がタルキアーの曳航に来る。幸運にも死傷者はなかった。長距離センサーには、ソリアンとスリバンの船影は全く見られない。』 船長用食堂。 タッカー:「もっと調べる時間が欲しかったな。あと何部屋あったかわかりませんよ。」 アーチャー:「うん。」 「見せつけといて、さっさと 31世紀に引き上げちまった。」 トゥポル:「そうだという証拠はありません。」 「…だけど、そうじゃないって証拠もありませんよ? ただわからないのが、なぜあんなに早く回収にきたかです。ビーコン起動から一分以内ですよ?」 アーチャー:「彼らに時間は問題じゃないからな?」 「……問題じゃない?」 「うん、もしもあの船が未来のものなら…船を送ったその人物は、シグナルを突き止め、回収する時間をピンポイントで特定できたんだ。」 「うん。さて…こっちの機関室じゃ時間が大問題だ。」 「フン。」 「修理に戻ります。それじゃ。」 「うん。」 「失礼します。」 出ていくタッカー。 「……最高司令部に謝罪するよ。タルキアーに、被害を出したからな?」 トゥポル:「…タルキアーの船長も言っていましたが、船は代えが利きますから。」 「それに礼も言いたい。惜しみなく、手を貸してくれた。」 「好意をもって受け止められると思います。」 立ち上がるトゥポル。「…最高司令部から、報告書を上げるよう言われているのですが、構わないでしょうか。」 「…ぜひ頼む。…彼ら…信じるかなあ、人間とヴァルカンの染色体が……混じり合う日が来るなんて。」 「タイムトラベルの方が、まだ信じられますね。」 トゥポルは出ていった。 アーチャーは微笑んだ。 |
感想
ENT の設定を生かした好エピソード。スリバンのみならず、ソリアンというファンには嬉しい種族が描かれます。最後にドアを焼き切ろうとまでしているのに、結局姿を見せないのが何とも憎いですね (ソリアンは TOS で奇妙な姿を見せたきり、一度も出ていません)。コクレイン博士が謎の行方不明のまま、という言及もありました。実はゲストが 2人しかおらず、予算が CG に回されたのかもしれませんが、その分? 戦闘シーンは見事です。 時間ネタということで矛盾点はいろいろと挙げられるのかもしれませんが、思わず笑ってしまう「天丼」に免じて目をつぶりたいと思います。重要話を担当しがちな、バーマン&ブラガ製作総指揮コンビにしては面白い…と思ったら、別の方による脚本だったんですね。やっぱり。 |
第41話 "Cease Fire" 「戦場の絆」 | 第43話 "Canamar" 「地獄への護送船」 |