ワープ航行中のエンタープライズ。
『航星日誌、補足。ヴァルカン船タルキアー※7に連絡を取った。3日後ランデブーし、あの船を地球へ運んでもらう。ランデブーポイントに着くまで、またあのスリバンに遭遇しなければいいのだが。』
機関室で箱が開けられている。
タッカー:「強力なシールドでした。何にしろ重要な物ですよ。」
アーチャー:「何だと思う。」
「『ブラックボックス』じゃないかと。」
トゥポル:「事故原因や船籍も、わかるかもしれませんね。」
「起動できればですけどね。船全体と同じ有機回路が使われてます。ぜひ船の内部を見て下さい、目を疑いますよ。」
アーチャー:「そんなに広いのか。」
フロックスの通信が入る。『医療室より船長。』
アーチャー:「アーチャーだ。」
『すぐこちらへ来て下さい。』
トゥポルも向かう。
医療室のフロックス。「無傷の細胞はほんの、数個でしたが何とか遺伝子分析を完了させました。」
モニターを見るアーチャー。「…艦隊データベースとの一致は?」
フロックス:「いいえ? 普通の人間ではありませんでした。」 表示を切り替える。「実は、珍しいヌクレオチド配列がありました。最初突然変異かと思いましたが、染色体構造に見覚えがありまして。異種族データベースに検索範囲を広げました。一致したのが、ヴァルカンです。」 隣に同じ構造が表示された。
「……なぜ人間にヴァルカンの DNA がある。」
「可能性を言えば、ヴァルカンの祖先がいたようですねえ? 曾祖父母より更に前です。」
「その頃人類は、まだヴァルカンと遭遇してない。」
「更に、ほかの種族の遺伝子もいくつか発見しました。」 新たに 3つの構造を映し出すフロックス。「これはテレリアン人※8、こちらはわかりません? …数世代にも渡って、多種族間での交配がなされたようですねえ。」
「…ご苦労、ドクター。トゥポル。」 外へ向かうアーチャー。
アーチャーについてきたトゥポル。「未来のデータベース。」
ドアのロックを解除するアーチャー。「タイムトラベルして来たダニエルスが、部屋に残していった。※9」 暗い部屋に入り、ロッカーを開ける。
トゥポル:「彼の承諾もなしにですか。」
「…内緒にしとけばいい。」
装置を起動するアーチャー。空中に、さまざまな船の図や情報が表示される。
トゥポルは目を留めた。「ヴァルカン船ですね。この型は見たことがありません。」
アーチャー:「まだ造られてないからだ。」 スクロールを早める。
「…他種族との結婚など、前例はごくわずかです。」
「ヴァルカンのゲノムが汚染されるのが心配なのか?」
「2つの種族には、生物的に非常に大きな違いがあるんです。我々は子供は作れません。……人間とヴァルカンです。」
「フン。」 画面を止めるアーチャー。「これじゃないか?」
「背面の形が違います。」
「…もし両者で子供ができたとして、耳は尖ってたのかなあ。」
アーチャーを見るトゥポル。
アーチャー:「これだ。この船だ。……日付を見ろ、900年近く先になってる。…未来の歴史家の話を聞いたが、過去へ戻って実地研究したらしい。あのパイロットがそうかもしれない。」
トゥポル:「船の動力は『時間変異ドライブ』とありますね。」
「もしスリバンの手に渡ったら…分解するな。」 装置を停止させるアーチャー。「そしてエンジンの仕組みを調べるだろう。時間冷戦の流れが変わるかもしれない。」
「船が未来のものと仮定するなら、なぜ回収に来ないんです。」
呼び出しが入った。「アーチャーだ。」
メイウェザー:『また未確認船が、高速ワープで接近中です。』
「スリバンか。」
『いいえ。特定できません。』
エンタープライズを追う、一隻の異星人船。先が尖った小型船だ。
メイウェザー:「距離 2万キロ、更に接近中。」
アーチャー:「……トゥポル。」
トゥポル:「…ソリアン※10船です。非常に排他的で、ヴァルカンともわずかな接触しかありません。母星から、これほど離れた場所まで来るのはまれなことです。」
リード:「…熱反応が尋常じゃありません。船内は恐ろしく熱いようです。200度以上になっています。」
「彼らは、ヒューマノイドではないようですから。」
アーチャー:「…回線オン。」
操作するサトウ。
アーチャー:「船長のアーチャーだ。宇宙艦隊…」
耳障りな高い音が響き渡った。『…ジョナサン・アーチャー……通信状況を改善してくれ。』
アーチャー:「我々に何か用があるのか。」
やはり高音が混じる。『……船を回収しにやって来た。』
アーチャー:「…あの船のことをどうやって知ったんだ。」
ソリアン:『……君たちには危険だ……時間放射能※11がある。』
「…警告感謝する。だが渡すわけには…」
高音だけが短く聞こえた後、船が揺れた。
トゥポル:「トラクタービームで、ロックされました。」
メイウェザー:「減速しています!」
アーチャー:「船体装甲を。船尾魚雷準備だ。」
リード:「ビームがターゲットスキャナーを妨害しています。」
「ビームを止めろ。でないと出発ベイにある船を破壊する。……聞こえたか?」
ソリアン船はトラクタービームを解除し、エンタープライズを抜いて去っていった。
ソリアンの短い通信が最後に聞こえた。
アーチャー:「何だって?」
サトウ:「わかりません、誉め言葉でないのは確かです。」
「……船を渡せという者が、この後どれだけ出てくるんだろうな。」
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※7: Tal'Kir
※8: Terrelian VOY第101話 "Infinite Regress" 「遥かなるボーグの記憶」など
※9: ENT第11話 "Cold Front" 「時を見つめる男」より
※10: Tholian TOS第64話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」より。ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」でも言及されています。今回登場する船も、TOS で登場したウェブスピナー (クモの巣つむぎ船) と似たような形状です。高画質な壁紙を公式サイトでダウンロードできます
※11: temporal radiation
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