DS9 には異星人船、シャーヴァル・ダス※15がドッキングしている。
オブライエン:『個人日誌、マイルズ・オブライエン。宇宙暦 46923.1。クリンゴン士官の日誌の一部の回収に成功。このことはすぐにキラ少佐の耳に入った。すごい情報網だ。』
司令室のスクリーンに、乱れたホンティルの映像が映っている。『キャプテンは正気を失っている。また 2人クルーを処刑した。きっと、医療士官の…。私の部屋で…暴力。サルタナ※16から持ち帰った、テレパス・エネルギードーム※17を開けたのが原因だ。思うに、キャプテンのスパイは…私を…』 映像は途切れた。
司令官室の前に座っているシスコ。「これだけ見れば十分だ。」
オブライエン:「まだあります。」
キラ:「任務に失敗したのが原因で、仲間割れを起こしたのかもしれないわね。」
シスコ:「クリンゴン船に何が起きたかなんか興味はないね。」
オブライエン:「でもクリンゴンは知りたいでしょう。今ダックス大尉と欠けているデータを復元しているところです。時間はかかりますが。」
「何もそこまで。」
集中していないダックス。「でも面白いことがわかるかもしれないわよ? ベンジャミン、あの時のこと覚えてる…」
シスコ:「わかった。君たちがやりたければやればいい。勝手にしろ。」 司令官室へ入った。
解散する一同を見るオドー。
グラスに酒を注ぎ、ダックスに出すクワーク。「さあどうぞ。食前酒のモデーラ※18です。色も綺麗で、味もスイート。ダックス大尉みたいだ。お勘定ツケときます。」
キラが来た。「それぐらいおごってあげたらいいじゃないの。」
クワーク:「ああ…我がステーションが誇る美女が 2人も来るなんて普段の行いがいいからだな。自信もっちゃう! …ところで御注文は?」
「とっとと消えて。」
「…可愛くねえ。」 離れるクワーク。
笑うキラ。「調子はどう、ダックス?」
ダックス:「…一体急にどうしたの? 前線のステーションだもの、いろいろあるけど郷にいれば郷に従えってとこよ?※19」
「…まあ確かにね? でも、前から聞きたかったんだけど。今に満足?」
「…そういうことを考えるのはやめてるのよ。」
「でもそれはおかしいわ? 私に言わせればあなたはこのステーションで一番優秀な士官だもの。飲んでいい?」
「ええ、どうぞ?」
モデーラ食前酒を口にするキラ。「うん、悪くないわ? クワークにしては…。」
ダックス:「ええ、いけるでしょ?」
「…あなたがいなければこのステーションはやっていけないわ?」 キラは更にグラスに注ぐ。
「…さっきから何が言いたいわけ?」
「…私と司令官が対立してるのはあなたも気づいてるでしょ? とにかく一度こうと決めると頑固なんだもの。」
「ええ、てこでも動かないわね? そういえば昔…ロシャニ3※20 で、カリアン人※21に追いつめられたことがあったわ…向こうは敵意丸出しでね、でもベンジャミンが…」
「ねえ、その話ならもう今朝聞かされたわ?」
「あら…そういえばそうだったわね?」
「…あなたから宇宙艦隊司令部に言ってもらえない? ベイジョー人が今回のシスコのやり方に不満をもってるってこと。あなたの意見なら聞くわ。」
「私は初めての任務で勲章をもらったの。提督はヴァルカン人だった。そのおかげで…授与式の間中ずっとね…」
「ダックス。シャーヴァル・ダスを拘留したいの。…そして船を探索して、ドラマイドを没収したいの。そう宇宙艦隊司令部に言ってよ。ベイジョーを守るためなのよ。連邦のためにもなるわ。」
「…私はベンジャミンとは随分長い付き合いになるわ? …もう何年にもなる。…私にとって彼は、息子みたいなものなの。甥っ子というか、ごく親しい身内みたいな存在なのよ。」
「ジャッジアよく聞いてちょうだい。…シスコには出て行ってもらうわ、どんな手を使ってでもね? でも私はあなたまで追放したくないのよ。」
突然響いたグラスの音に、驚くキラ。
それはクワークが立てたものだった。笑うクワーク。
微笑み、近づくキラ。モーンたちが見ている前で、クワークの首元をつかむ。「あんたも一緒に飲まない?」
クワーク:「離して下さいよ…。」
「何か聞いたの?」
「何も。…何も聞いてねえ。」
キラはクワークを突き飛ばした。倒れるクワーク。
キラ:「…じゃあね。」 クワークの店を出ていく。
ため息をつくダックス。
保安室。
オドーは入ってきた者を見た。
クワークが首元に機械をつけ、うめいている。
オドー:「何だそりゃ、フェレンギで流行ってるファッションか?」
クワーク:「…キラ少佐に首を絞められたんだよう。」 痛みながら座る。「ありゃ殺人未遂だぜ。」
「原因は何なんだ。」
「陰謀を聞いちまったんだよ。」
「……陰謀だと?」
「ダックスを味方につけようとして口説いてたんだ。謀反を起こす気さ…。」
「それでダックス大尉は承知したのか。」
「…どっちだって関係ねえ、俺は襲われたんだぞ。」
「いいから質問に答えろ!」
「…どっちとも言えねえな…迷ってたみてえだ。」
「…キラ少佐の行動は最近おかしいって思わないか? ほかのみんなもだ。シスコ司令官もおかしい、クリンゴンの任務レコーダーに何の興味も示さないなんて。ドクター・ベシアもだ。私を治療してくれた時のドクターは何だか変だった。」
「…何だよ、その目は。俺は中立だぞ。」
「ああ…そうらしいな? …司令官と話をしてくるよ。」 外へ向かうオドー。
「オドー、待て。オドー。待てよ、オドー。」
オドーはそのまま、ターボリフトに乗った。
クワーク:「オドー! 殺人未遂はどうしてくれる!」 うなる。
司令室に入るオドー。
ホンティルの声が流れている。『…デッキの倉庫から 12番通路を通り、兵器庫へ。キャプテン・テルパー※22も、私も死ぬ。しかしまだ…この船を、支配しているのは私だ。何とかしてこの船を…』
ダックスがボーッと見ている、ホンティルが映っているモニターに注目するオドー。「司令官は。」
ホンティル:『…これは想像もしていなかった。恐ろしい事態だ。私がやるしかない。』
司令官室のドアチャイムに触れるオドー。
中にはオブライエンがいた。「どうぞー。」
コンソールでホンティルの映像を再生する。『キャプテンはもう、正気を失ってしまっているように思える。』
オドー:「司令官はどこです。」
オブライエン:「ご自分の部屋にいらっしゃる。」
ホンティル:『…可能性は少ない。しかし…リアクター近くの第26デッキに何とか、サルメライト※23装置を仕掛けることができた。敵の捕虜になるより、船を爆破しビーム転送で安全圏へ逃げ出すつもりだ。医療士官のキーボル※24の言うとおりだったのかもしれない。あの、エネルギードームを開けたのが失敗だった。だがこうなった以上、キャプテンのテルパーには死んでもらう。記録終了。』
コンソールを切るオブライエン。
オドー:「どうやら権力闘争があったようですね。何らかの乗っ取りがあったのかもしれない。」
オブライエン:「部下の反乱だろうな、クリンゴンの船じゃ珍しくない事件だ。」
「でも、惑星連邦が管理しているステーションでは反乱はまずありませんよ。」
「心配するな。キラが何か始めたらこっちも黙っちゃいない。」
「……日誌の復元が全部終わるのはいつになりますか。」
「今の処理スピードだと早くても後 7時間はかかる。エントリーを一つずつ処理してるから。復元されたものは随時読めるようにしてある。」
「…お願いします。」
「いいんだよ、オドー。司令官も私も、君のことは高く買ってるんだ。」
オドーは笑うオブライエンを見て、外へ出た。再び中を見る。
廊下を歩いてきたオドー。部屋の前に、2人の宇宙艦隊の保安部員が立っていた。
オドー:「ここで何をしてる。」
保安部員※25:「チーフ・オブライエンの命令です。」
2人を見て、ドアチャイムを押すオドー。
中にいるシスコ。「どうぞ?」 パネルを持っている。
オドー:「…司令官。」
「何だ、オドーか。調子はどうかね。」
「非常に心配です。」
「こんな気持ちのいい日にかね? 悩み事とはもったいないな。」
「…司令官、全員ではないですがみんなの様子が…変なんです。クリンゴンの士官が船の爆発から逃れてきた時から、なぜか一部のスタッフの言動や、態度が…異常なんです。」
全く聞いていない様子のシスコ。
オドー:「…どうも爆発したクリンゴンの船では反乱が起こっていたようなんです。無論このステーションで、反乱が起きるというのではありません。しかし…2、3…気にかかる点が、共通しているんです。」
シスコ:「もしも気になることがあるんなら、オブライエンに言いたまえ。それが彼の仕事だからな。」 描いていたパネルの紙を見せた。「どうだい見てくれ。」
その図に見入るオドー。「……何ですか。」
シスコ:「時計だよ! ……素晴らしい出来だろ……。」
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※15: TNG第78話 "Suddenly Human" 「宇宙孤児ジョノ」に登場した、タラリア戦艦の使い回し
※16: Saltah'na
※17: サルタナ・エネルギードーム Saltah'na energy spheres
※18: Modela aperitif
※19: 原語ではダックスのセリフは全て「こういう言葉があるの。靴は右足から履け、でもバスタブには左足から入れ」と意味不明なことを口走っています。そのためキラが意味をつかめないという表情をします
※20: Rochani III
※21: Kaleans
※22: Tel'Peh
※23: thalmerite VOY第8話 "Ex Post Facto" 「殺された者の記憶」でも言及。吹き替えでは「爆破 (装置)」。また、「第27デッキ」と誤訳
※24: Kee'Bhor
※25: Guard (ランディ・フラグ Randy Pflug) 普段はエキストラで保安部員を演じており、Randy James という名前を使うこともあります。DS9第148話 "Time's Orphan" 「時の迷い子」ではジョーンズ大尉 (Lieutenant Jones) という名前を与えられており、第155話 "Chrysalis" 「愛に目覚める者」でもセリフをもらっています。声はヴァレリアン役の大川さんが兼任
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