容器を手にしているクワーク。「俺は単なるビジネスマンだが、今は亡き偉大なるプレッグ※1は我々フェレンギにとって憧れだった。」 フェレンギ人やモーンの前で話している。「プレッグの名前は今や伝説だ。プレッグ、たった一つのコンピューターチップから一大ホロスイート産業を築き上げた。フェレンギ人ならその、形見を、手に入れたいと思うだろう。宇宙の隅から隅までホロスイートを普及させたフェレンギの英雄だ。その身体の一部だぞ? 自給自足もままならんほど貧しかった星に利益をもたらし、希望を…与えたんだ。」
店に入るオドー。「いくらで売るんだ。」
クワーク:「今こちらのお客さんに言おうとしてたところだが、たったのラチナム 3本※2だ。しかもこっちの利益はほとんどなしだぞ?」
呆れ、歩いていくフェレンギ人。
クワーク:「よし、じゃあ 2本に負けとこう。」 オドーに言う。「…どうも御世話さんで。」
オドー:「3本か。プレッグなら妥当だな?」
「買ってもいいってことかい。」
「ヒューマノイドの死の儀式には興味がある。」
「葬式に?」
「私にとっては謎だ。」
「フーン。」
「死体を燃やす種族もいれば、冷凍にする種族もいるし、更に中には家族の死体に囲まれて暮らす種族もいる。しかし、フェレンギはすさまじい。死体を切り刻んで売るんだからな。」 笑うオドー。「どの種族より、興味をそそられるよ。」
ため息をついたクワーク。「俺は忙しいんだ。」
オドー:「実は偉大なるフェレンギ人実業家たちの死体をコレクションしようかと思っているんだ。その名誉を讃えるためにな? オフィスにショーケースを置くつもりなんだ。お前にはその中の特等席を、取っておいてやろう。」
「…ありがたいねえ。」
オドーはラチナムを見せた。
クワーク:「……じゃあ本気なのか?」
オドー:「私が冗談を言ったことがあったか?」
たくさんある容器の一つを取り出すクワーク。オドーのラチナムを取ろうとする。
オドー:「その前に一つ確かめておきたい。」
クワーク:「何だ言ってみろ。」
「確かにプレッグなのか?」
「ラベルにそう書いてある。」
「そのラベルは信用できる物なんだろうな?」
「フェレンギ当局の封印※3がしてあるじゃないかあ。何を疑うんだ。」
「プレッグかどうかさ。」
「間違いないって。」
「プレッグはまだ生きてる。」
「まだ生きてる?」
「…そう、健在だ。」
「プレッグが?」
「コースラ2号星※4であいつを捕まえた時、お前の企みを話したら笑っていたよ。至って、元気だった。」
「待ってくれ、俺は被害者だ。これが偽物だなんて知らなかった。プレッグだと信じて 5,000個も買ったんだぞ?」
「いやいやいやいやいや、プレッグじゃあないんだ。」
「じゃ誰だ。」
「誰だかな?」
「…じゃあ、誰だか調べてくれ。」
「もちろんだ、任せておけ。」
男の声がした。「オドー。」 ベイジョー人だ。髪型はどこかオドーに似ており、イヤリングはつけていない。
オドー:「モーラ博士※5。」
モーラ:「…何年ぶりだろうな。…いやあ元気そうじゃないか? よかった。上手くやってるようで。」 手を差し出す。
一瞬ためらうが、握手するオドー。「…いらっしゃるなら、なぜ知らせてくれなかったんです。」
モーラ:「寸前まで決まらなくてね。」
「ああ…だが連絡していただきたかったですな?」
クワーク:「何か飲みますか? モーラ博士、でしたよね?」
モーラ:「そうだ。それじゃあ…ディカ・ティー※6をもらおうか。」
離れるクワーク。
笑うモーラ。「うーん。まだ耳が完全にはできとらんなあ。…いやあしかし無理もないだろう。スーツは身体の一部なのか? それから、このブーツは…」
クワーク:「さあどうぞ? お熱いうちに。」
「ありがとう。」
「じゃあその、古い知り合いってわけですか?」
オドー:「モーラ博士はベイジョーの科学者で、私の研究を担当していた。」
モーラ:「オドーの今の姿を創ったのは、この私ということになるだろうな。」
クワーク:「じゃあ家族の再会ってわけだ。やっぱりそうか。いやあ、オドーのお父さんならいつでも大歓迎ですよ?」
オドーとモーラは同時に話した。
オドー:「誰が父と言った…」
モーラ:「いやあ、そうじゃないんだ…」
クワーク:「オドーは自分の口からは言いませんがねえ。ここじゃみんなから一目置かれてまして、頼りにされてるんですよ。」
「そうかね。」
「ええ、実を言いますとたった今もね? 詐欺の捜査を頼んでたんです。」
オドー:「黙ってろ。…あっちへ行きましょう。」
「そうだ、積もる話がそれこそ山ほどおありでしょうからねえ? 博士? 何かありましたらどうぞ御遠慮なく。いつでも私におっしゃって下さい。」
プロムナードを歩くモーラ。「世話好きだなあ。」
オドー:「フン、余計なことですよ。」
「しかし彼は私に、お前を良く見せようとしただけじゃないか? 私をお前の身内だと、そう思ったからだ。なのにお前はそれをあんな風に…」
「博士。」
「まだ社会に溶け込めんのか。」
「できるだけ溶け込んでますよ。」
「具体的に言うとどの程度だね。」
「『できるだけ溶け込んでる』と言ったら…それ以外に、意味はまずないと思いますがね。」
「うん。」
レプリマットに来るオドー。「クワークは詐欺師だ。ロクなもんじゃない。近づかないことです。」
モーラ:「…で? その、ここでは警察的な業務に関わっているようだが。上手くいっているのか?」
「保安チーフとしての仕事を楽しんでますよ。」
「保安チーフか。まあそれも結構だがなあ。…戻りたいんじゃないか?」
「何にです?」
「研究にさ。」
「…とんでもない。」
笑うモーラ。「隠すことはない、私にはわかってる。そりゃあ研究所での生活には不満もあったろう。だが研究は途中だ。そうだろ? お前は謎に満ちている。どこから来たのか何者なのか。今でも知りたいはずだ。」
オドー:「…そりゃもちろん…そうです。」
「やはりなあ。だからこそ私はここへ来たんだ。」
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※1: Plegg
※2: 原語では「ラチナムの板 (strip) 3枚」
※3: 正確には「フェレンギ切断封印 (Ferengi Seal of Dismemberment)」。エンサイクロペディアでは「フェレンギ切断証明 (Ferengi Certificate of Dismemberment)」になっています
※4: Khosla II エンサイクロペディアでは "Khofla II" になっていますが、原語でもコースラと発音しています
※5: モーラ・ポール博士 Dr. Mora Pol (ジェイムズ・スローヤン James Sloyan TNG第58話 "The Defector" 「亡命者」のシートール中尉 (Sublieutenant Setal)/アリダー・ジャロック提督 (Admiral Alidar Jarok)、第173話 "Firstborn" 「クリンゴン戦士への道」のケムター (K'Mtar)/50歳のアレキサンダー・ロジェンコ (Alexander Rozhenko)、VOY第15話 "Jetrel" 「殺人兵器メトリオン」のマボール・ジェトレル博士 (Dr. Ma'Bor Jetrel) 役) 初登場。声:内田稔
※6: Deka tea
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