TNG エピソードガイド
第171話「恐怖のイントロン・ウィルス」
Genesis
イントロダクション
※1※2忙しい医療室。 ハイポスプレーを用意するアリサ・オガワ看護婦※3。「どうしてサイプリオン・サボテン※4の上を転がったりしたんですか?」 ライカー:「…レベッカ・スミス※5って知ってる?」 「新任の戦術士官※6?」 「そう。植物園※7を散歩してる内に、いいムードになったんだ。で気がつくとなぜか、サボテンの上。」 ライカーの背中に長い針がたくさん刺さっている。ピンセットで抜いていくオガワ。 後ろにいるクラッシャー。「で、どういう症状なの?」 バークレイ※8:「目がかすんだり、立ちくらみや動悸もあります。それから、 「医療データベース※10で自己診断しないで、まずここに来いって言ったはずよ…」 「でも、今回は早く病名がわかってよかったですよ。だって、手遅れになる前に細胞の崩壊を食い止められるかもしれないでしょ?」 「あなたはね、テレリアン死亡症候群じゃないの。」 「ほんとですか。絶対?」 「確かよ。」 トリコーダーを自分に当てるバークレイ。「じゃあ、シンバリーン血液熱傷※11ですね。」 クラッシャー:「違う。ほら貸して。…どこにも異常はないじゃないの。」 「でもドクター。」 「あら待って? K-3 の細胞数※12のバランスが少ーし悪いわねえ。」 「K-3 ですか? 大変だ。」 「落ち着いて、大したことないんだから。じゃ、細胞にマイクロスキャン※13をかけるから。ジッとしてて? 2、3分で済むわ。」 クラッシャーはバークレイの手を装置に入れ、歩いていった。 「あ、あの。あ、あ…。」 装置の表示を見るバークレイ。「ああっ!」 データが医療室に入った。 クラッシャー:「小さな患者さんの具合はどう?」 データ:「良好のようです。食欲は、7%増加しました。このところの様子を見ると、そろそろではないでしょうか。」 データが運んできたのは、スポット※14だった。 スポットの腹に触れるクラッシャー。「ああ、こんなに大きくなってる。今週中には元気な子猫が生まれるわ? 一応念のために、羊膜にスキャン※15をかけておきましょうね。それから…」 バークレイ:「ドクター。ドクター。毛細血管が縮んでます。」 データに言うクラッシャー。「失礼。アリサ? スポットの検診をお願い。羊膜にスキャンをかけて?」 オガワ:「はい、ドクター。」 バークレイ:「脳管内圧力※16が異常に上がってるでしょ?」 クラッシャー:「ああ。ええ、確かにそうね。…イオン泳動の活動値※17も高いわ?」 「それって深刻なんですか。かなり?」 「そうね? このままだとあなたの命は、あと 7、80年かしら?」 「8…80年?」 「そうよ、レジ。あなたの病気はただのユーロディラン感冒※18。…心配するようなものじゃないわ。大抵の人には免疫があるんだけど、あなたの場合ウィルスと闘う DNA が眠ってるのよ。」 「うん。遺伝子が欠陥品なんだ。」 「10万ある遺伝子の内、たったの一つがね。人工の T細胞※19で眠ってる DNA を起こせば、自然に病気を退治してくれるわ。」 クラッシャーは注射した。 「あ、あ。」 「2、3日で良くなるはずよ。」 ライカーについている医療士官。「すみましたよ。」 ライカー:「ありがとう。」 「お大事に。」 バークレイ:「おかげさまで、ずっと楽になりました、どうも。」 クラッシャー:「よかった! …独りであれこれ悩まないこと。」 歩いていくバークレイ。 クラッシャーは通りかかったライカーに言った。「植物園へ入らないこと。」 ため息をつくライカー。 オガワ:「どこにも異常ないわ。子猫の性別を知りたい?」 データ:「多くの人間は生まれたときのお楽しみと言って、胎児の性別を知りたがらないようです。…私も、謎のままに留めましょう。」 「そうよねえ? …私も知りたくないもん。」 クラッシャー:「アリサ。」 「…実は私ももうすぐママになるんです。」 「ああ、おめでとう! よかったわね! アンドリュー※20は何て?」 「ショックを受けてましたが、立ち直ってきてます。」 データ:「私もこの 2ヶ月というもの、まるで赤ん坊の誕生を待つ父親のような気持ちで過ごしてきました。私の経験が役に立つなら、ご主人の相談に乗りましょう。」 笑うクラッシャーとオガワ。 |
※1: このエピソードは、クラッシャー役ゲイツ・マクファデンによる唯一の監督作品です。女性キャストが演出するのも史上初 ※2: また、1994年度エミー賞で音響編集賞を受賞、さらにメーキャップ賞と音響ミキシング賞にダブルノミネートされました ※3: Nurse Alyssa Ogawa (パティ・ヤスタケ Patti Yasutake) TNG第167話 "Lower Decks" 「若き勇者達」以来の登場。声:栗山微笑子 ※4: Cyprion cactus 「サイプリオン」は訳出されていません ※5: Rebecca Smith 脚本では「レベッカ・ホワイト (White)」、リック・バーマンの妻の友人にちなんで。姓は訳出されていません ※6: 吹き替えでは「戦略士官」 ※7: arboretum TNG第85話 "Data's Day" 「ヒューマン・アンドロイド・データ」など ※8: レジナルド・バークレー Reginald Barclay (ドワイト・シュルツ Dwight Schultz) TNG第138話 "Ship in a Bottle" 「甦ったモリアーティ教授」以来の登場。声:田中秀幸 ※9: Terellian Death Syndrome テレリアンは TNG第154話 "Liaisons" 「イヤール星の使者」より ※10: 宇宙艦隊医療データベース Starfleet Medical Database ※11: シンバリン血液熱傷 Symbalene blood burn TOS第37話 "The Changeling" 「超小型宇宙船ノーマッドの謎」より。ENT第81話 "Cold Station 12" 「コールド・ステーション」で、実際に症状が描写されました ※12: K-3 cell count ※13: マイクロ細胞スキャン microcellular scan ※14: スポットは当初はオスの設定でしたが (見た目も違う)、TNG第161話 "Force of Nature" 「危険なワープ・エネルギー」では「彼女」と呼ばれてメスとされました ※15: amniotic scan ※16: 血管内圧力 intravascular pressure ※17: 電気泳動活動 electrophoretic activity ※18: Urodelean flu ※19: T-cell ※20: Andrew アンドリュー・パウエル大尉 (Lieutenant Andrew Powell) のこと。TNG "Lower Decks" より。結婚したかは不明ですが、少なくともオガワは姓を変えていないようです |
本編
小惑星帯※21に入っているエンタープライズ。 『航星日誌、宇宙暦 47653.2。現在ウォーフ大尉の指揮の下、新しい戦略システムと兵器の実地テストを行っている。』 ウォーフ:「次は新型の光子魚雷を使ったテストです。破壊力が 11%強化されただけではなく、私が自ら改良を加え目標への命中率も一段と高くなっています。」 ピカード:「素晴らしい、早速見せてくれ。」 「ターゲット座標設定、005 マーク 317。展開パターンはデルタ94※22。発射準備完了です。」 「よーし、撃て。」 光子魚雷を発射するエンタープライズ。 小惑星 2つを破壊したが、魚雷の一つは逸れていった。 ライカー:「どうした。」 ウォーフ:「…一発コースを外れてしまいました。」 ため息をつくピカード。 ウォーフ:「ガイドシステムの故障と思われます。」 ピカード:「自爆させろ。」 「魚雷が反応しません。亜空間起爆部が作動しないようです。」 ライカー:「フェイザーロックオン。」 「もう、射程圏外に出ています。」 「新しいフェイザーでも届かないのか?」 ピカード:「センサーロックを維持しておいてくれ、ウォーフ。追跡してみよう。」 データ:「それは危険ですね。小惑星の間隔が狭すぎます。エンタープライズが、安全に通れる幅ではありません。」 「では、私がシャトルで回収しよう。」 制服の裾を伸ばすピカード。「データ、一緒に来てくれ。」 ライカー:「艦長、本日のシャトルチーフはヘイズ中尉※23です。」 「私もパイロットの資格はちゃんともっているぞ? それにだ、艦長として今回の実験には重大な責任がある。」 微笑むライカー。「わかりました、どうぞごゆっくり。」 ピカード:「ウォーフ…君は、新しいガイドシステムの問題点をじっくり分析しておいてくれ?」 データ:「艦長、出発前に私用を済ませたいのですが。」 ブリッジのターボリフトに入る 2人。 バークレイは尋ねた。「僕が?」 データ:「魚雷を回収して戻ってくるには、恐らく数日かかると思われる。…その間に赤ん坊が生まれるかもしれないから、誰かに見ていて欲しいんだ。」 「いいですとも、喜んで。」 スポットを受け取り、口を鳴らすバークレイ。 「私以外のクルーで、スポットがなついているのは君だけのようだからね?」 「ほんとに? 信じられないなあ、こんなにおとなしいネコちゃんなのにねえ? うーん。」 「君の前ではねえ。…しかし、クルーの中にはスポットの世話をしようとして負傷した人も何人かいるんだ。」 「それで、もう場所は決まったんですか?」 「場所とは?」 ※24「ネコはですねえ、お産するのに落ち着ける場所を選ぶんです。普通は…暗くて静かなところがいいんだけど、例えば…そう、ここはどうかな。」 バークレイは、データの部屋の隅にスポットを置いた。「ところで少佐、父親は誰です?」 「…よくわからないんだ。…スポットがこの部屋を抜け出したのは一度じゃないし、雄猫は艦内に 12匹いるからね? …子猫が生まれたら早速 DNA 鑑定をして突き止めようと思っ…」 通信が入る。『ピカードよりデータ、シャトル格納庫に来てくれ。』 データ:「すぐ行きます。じゃあね、スポット。…バークレイ君が、ついてるから。」 バークレイ:「何も心配いりませんよ。」 スポットの前には遊び道具が置いてある。 エンタープライズを離れるシャトル※25。 うなるウォーフ。苛立っている。 ライカー:「どうした、ウォーフ。」 ウォーフ:「兵器の整備点検を 13回もやり直しましたが、ガイドシステムに異常は見つかりません。」 「魚雷格納庫に問題があるのかもしれん。調べさせよう。」 「そんなに近くに立たないで下さい。」 「…大丈夫か。」 「…はい、大丈夫です。」 「もう 6時間も働き通しだろ。少しは休め。」 「でも…」 「これは命令だ。」 ブリッジを出ていくウォーフ。 魚介類※26などが、たくさんテーブルの上に置いてある。 トロイ:「待たせたかしら。」 ウォーフ:「…食べてる最中に突然現れないで下さい!」 トロイは私服姿だ。「今日のランチは一緒にって約束してたじゃないの。」※27 ウォーフ:「腹が減ったんです。」 「私もペコペコよ?」 テン・フォワードのウェイトレスを呼ぶトロイ。「すみません。」 ウェイトレス:「はい。」 「オンジリン・キャビア※28を、頂けるかしら。味つけは濃いめにね?」 「わかりました。」 ウォーフ:「昼間からキャビアですか。」 トロイ:「塩辛い物が食べたいの。…あなただってすごい取り合わせじゃないの。」 トロイは持ってきた水を飲む。その様子を見るウォーフ。 コップが空になった。「何だか空気が乾燥しすぎてると思わない? 環境設定を間違えてるんじゃないかしら。」 ウォーフはゲップをした。 トロイ:「お行儀悪い。」 ウェイトレスが料理をもってきた。「どうぞ。」 トロイ:「ああ!」 ウェイトレスの身体を見つめるウォーフ。今度はトロイを見る。 トロイ:「どうかした?」 食べ物を皿に投げるウォーフ。「朝から最悪なんです。光子魚雷に欠陥が出ました。私のせいで。」 トロイ:「すぐに自分を責める…」 「私のせいなんです。…私の設計ミスなんだ。」 「落ち着きなさいよ。あなた自分で思ってるより、疲れてるのよ。…少し休んだ方がいいわ?」 「…そうかもしれません。」 ウォーフはまた乱暴に料理を置いた。「それでは失礼!」 「今すぐとは。」 置かれた水を飲むトロイ。 眠っていたウォーフは、毛布を引きちぎった。ベッドを降り、部屋をうろつく。 ソファーの上に立った。柔らかい綿のような物を床に置く。 今度はベッドを裂き、スポンジ状の中身を出す。それを床に置いて布を巻き、抱くようにして眠りについた。 |
※21: TNG第90話 "Galaxy's Child" 「ギャラクシー・チャイルド」でも使われた映像 ※22: spread pattern delta nine four ※23: Lieutenant Hayes TNG第163話 "Parallels" 「無限のパラレル・ワールド」で声だけ、映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」で登場したヘイズは少尉なので別人 ※24: 上段のヴァイオリンのそばにある壺らしき置物は、TNG第70話 "The Most Toys" 「究極のコレクション」で、キヴァス・ファージョのコレクションにあったものの使い回し ※25: 名称は不明ですが、当初はヒュパティア (Hypatia、女性数学者) と名づけられる予定でした ※26: 明らかにタコが置いてあり、クリンゴン・タコ (Klingon octopus) としている資料もあります ※27: 後ろの男女が、テーブルの黒い置物で遊んでいます。このテン・フォワードでのプロップとして使われているのは、日本で 1984年にバンダイが発売した「ペアマッチ」という電子ゲーム (参考ページ) ※28: Ongilin caviar |
機関室のバークレイ。「魚雷格納庫のメイン・ガイドモジュールを外してみたら、前方のセンサー群にパワー変動が見つかりました。フェイズ識別装置の放射不均衡が原因だと思います。…次にやるべきことはレベル4 のチェックです、19 のデッキの補助パワーを切らなきゃいけません…」 ライカー:「ちょっと待ってくれ、わからなくなった。どっちのセンサー群だって?」 「前方ですよ、コンバーターノードにパワー変動があるんです。簡単に直ります、簡単。」 ラフォージ:「このダイヤグラムを見ればわかります。」 パッドを受け取るライカー。「うーん、まあいい。あとで見よう。チェックの方頼む、パワーの件はほかの部署へも伝えておこう。」 警告音に反応するバークレイ。「あ、私が。」 ライカー:「あいつ今日は元気だな。」 ラフォージ:「休めって言ってるんですけど、夕べからずっとああなんです。」 バークレイ:「うーんどうやらジャンクション 17 でプラズマコンジットが切れたようなので、見てきます。」 「待て、俺も行くよ。また報告します。」 艦長席に座っているトロイ※29は、寒がっている。「コンピューター? 艦内の気温設定を、2度上げてちょうだい。相対湿度も、10%上げて。」 ウォーフ:「コンピューター、環境設定を標準に戻してくれ。」 「どうして? こんなに寒いじゃないの。」 「さっきから 3回も気温を上げたでしょう。暑すぎます。」 「我慢してよ。コンピューター、私の指令に従って。」 汗をぬぐうウォーフ。 トロイ:「…もう我慢できない、好きにすればいいわ。」 立ち上がる。 ジェフリーズ・チューブ内のパネルを開けるバークレイ。「ほら、ここだ。コンジットが断絶したみたいだけど…大丈夫。バイパスしますから。」 ケーブルを床から取り出してつないだ。 ラフォージ:「…レジ、ちょっと待ってくれ。…ほら、縁が腐食してるぞ。…何かが隔壁を溶かして、コンジットに穴を開けたんだ。高レベルのコール酸※30反応が見られる、酵素の作用だ。こいつは有機的な溶剤が、原因としか思えない。」 「溶けた部分にバイオスペクトル分析※31をかけてみたら、どうでしょうか。」 「そりゃあいい考えだ。だけど、その前に休憩しよう。」 「僕が片づけちゃいますから、ごゆっくり。」 ため息をつくラフォージ。 操舵士官のダーン少尉※32。「副長、宇宙艦隊から通信が入りました。新しい武器システムの分析結果は、いつ頃出るのかということですが。」 ライカー:「武器システム?」 「そうです。…ここ数日間テストしている。」 「…あれか。」 「…どうしますか、返事は。」 「返事? ……まだ済んでないと言ってくれ。」 トロイはバスタブ※33に浸かっている。制服のままだ。 ウォーフが来た。 トロイ:「何しに来たの?」 ウォーフ:「…君のそばにいたい。」 「コンピューター、室温を 5度上げてちょうだい。」 コップに手を伸ばそうとするトロイ。 ウォーフはトロイの腕をつかむ。勢いでコップが床に落ちて割れた。「俺と一緒に来い!」 トロイ:「離してよ!」 トロイの頬に口を当てるウォーフ。叫ぶトロイ。 ウォーフの口には、血がついていた。 驚くトロイ。押さえた指の隙間から、血が流れている。 医療室のベッドで起き上がるトロイ。「お水を頂ける? …すごく寒い。」 クラッシャー:「体温が 8度も下がってるわ? 視床下部の検査※34をしてみましょう。」 トロイの顔には、生々しい傷跡が見える。 オガワ:「ほかに 3名のクルーが気温について苦情を訴えています。暑いと言う者もいれば、震えている者もいます。」 クラッシャー:「ドクター・セラー※35と、ドクター・ハコピアン※36を呼んで? 何らかのウィルスが発生したみたいだわ、ウォーフも調べてみましょう。」 保安部員が見張っていた、ウォーフに近づくクラッシャー。「ねえウォーフ、最近身体に異常を感じなかった? 頭痛や吐き気や目まい。ウォーフ? …聞こえてる? …バイオスキャンをかけるから、横になってくれる?」 無言のまま、抵抗するウォーフ。 クラッシャー:「いいわ、座ったままでも。…何よ、これどうしたの。」 ウォーフの頬骨の辺りが、隆起していた。 トリコーダーを使うクラッシャー。「ウォーフ、このしこりはいつから。…生物酸性の化合物が詰まってるわ、まるで毒嚢みたい。…ウォーフ…口を開けて。」 ウォーフが口を開けた瞬間、緑色の液体がクラッシャーに降り注いだ※37。 顔を押さえ、倒れるクラッシャー。ウォーフは保安部員から逃げていく。 オガワ:「ハイポスプレーを持ってきて。」 観察ラウンジ。 オガワ:「血行を停止させて※38、毒が全身に回るのを防ぎました。顔面の復元手術が必要ですが、命に別状はありません。」 椅子やテーブルに手を伸ばすバークレイ。「副長、ウォーフの毒ですが。ジャンクション17 および第10・第12デッキを溶かした液物と酵素の組成がまるで同じなんです。」 ライカー:「するとウォーフは船中に。」 「毒!」 「毒を、まいてるのか。」 「きっとそうです。」 オガワ:「行動面に異常の見られるクルーは今のところ 60名です。…記憶喪失や疲労、頭痛などですが。とにかく船の中で何かの病気が広がっていることは、間違い…ありません。」 ライカー:「俺も集中力がなくなってきた。気がつくとボーッとしてしまってまるで…どうなってる。」 ラフォージが来た。「副長! 保安チームを 7班動員してウォーフを追っていますが、どういうわけかセンサーが働かなくなってロックオンできないんです。…警戒態勢を発令したいんですが、レベル2 でよろしいですね※39。」 ライカー:「…さあ、君はどう思う。」 「いいと思います。」 「そうか、じゃあいいんだろう。…何とか態勢の件は任せる。」 「…わかりました。」 「じゃあ艦隊の方には、俺から報告しとく。…仕事に戻れ。…行けよ!」 丸めた手をテーブルにつき、観察ラウンジを後にするオガワ。 ライカー:「コンピューター、亜空間通信を送ってくれ。艦隊司令部へ。…機密チャンネル、承認コード…」 コンピューター※40:『機密チャンネルの作動には、アルファ47 の承認※41が必要です。』 「コンピューター。」 『承認コードをどうぞ。』 無言のライカー。 |
※29: TNG第168話 "Thine Own Self" 「記憶喪失のアンドロイド」で少佐に昇進したことを受け、ブリッジを任されている描写は初 ※30: cholic acid ※31: biospectral analysis あとで「バイオスキャン」とも訳されています ※32: Ensign Dern (カルロス・フェロ Carlos Ferro) 名前は言及されていません。TNG第128話 "Realm of Fear" 「プラズマ放電の謎」にも同名の士官がエキストラで登場していますが、機関部員であり明らかに別人。声:坪井智浩 ※33: 史上初登場 ※34: hypothalamic series 吹き替えでは「低温症の検査」 ※35: Dr. Selar TNG第32話 "The Schizoid Man" 「コンピュータになった男」など ※36: Dr. Hacopian 脚本ブラノン・ブラガの指圧療法士にちなんで ※37: トラクタービームの効果を改造 ※38: 原語では「血行停止 (ユニット) に入れて」。クラッシャーの出番を押さえたのは、マクファデンが監督であるため ※39: 原語では「レベル2 の警戒態勢を発令しましたが、レベル1 にすべきでしょうか」。1 の方が上のようです ※40: コンピューター音声 Computer Voice (メイジェル・バレット Majel Barrett) 声:磯辺万沙子 ※41: alpha four seven authorization |
航行するシャトル。 『航星日誌、補足。3日にわたる捜索の後、我々は無事魚雷を回収した。これよりエンタープライズに戻る。』 データ:「艦長、船が予定の位置にいないのですが。」 ピカード:「…遅れてるのか。」 「わかりません。どの通信チャンネルにも、応答がないんです。」 「付近を、スキャンしてみてくれ。」 星図が拡大され、浮遊しているエンタープライズの図が現れた。 データ:「発見しました、2光年先です。」 ピカード:「針路変更だ。」 シャトル。 前方を見る 2人。 エンタープライズが回転している※42。 データ:「誰も操縦していないんでしょうか。全デッキに、パワー変動が見られます。」 ピカード:「乗組員は。」 「…生命反応はありますが、センサーの数値が乱れていて…特定の生命体を認識することができません。」 「アクシススタビライザーで、軸と回転率をエンタープライズに同調させろ。手動でドックに入る。」 エンタープライズと向きを同調させ、近づいていくシャトル※43。 暗いシャトル格納庫で、シャトルのハッチが開く。ライトを使うピカードとデータ。 そばに置かれた布からは、液体が滴り落ちている。コンテナにも付着している。 パネルを見たデータ。「メインパワーが断絶。全てのシステムは緊急モードに入っています。どのステーションからも、反応はありません。」 ピカード:「クルーはどこにいる。」 「…ここでは艦内センサーにアクセスできません、ブリッジにゆかないと。」 ライトが落ちた廊下には、いろんな音が響いている。 ピカード:「動物の鳴き声だな。」 データ:「そうですね。300 以上の、異なる声が認識できます。」 大きく聞こえた声に振り向く 2人。 ピカード:「何だこれは。」 薄い膜のような物を拾った。 データ:「DNA は、爬虫類のものです。恐らく、脱皮の際に残された表皮ではないかと思いますが。」 「だがこの皮膚は、ヒューマノイドだ。」 「そうですね。どういうことでしょうか。このように脱皮する種族は、エンタープライズにはいないはずです。」 ドアの前で足を止めるデータ。「艦長。」 ピカード:「うーん、カウンセラー・トロイの部屋だ。」 ドアについた粘着性の液体。「彼女はいるか?」 「いいえ。」 「…データ。…入ってみよう、行くぞ。」 がたつきながら開くドア。水の音が響く。 ピカード:「うーわ、どうしてこんなに暑くしたんだろう。」 部屋中で滴る水。 ピカード:「データ、来てくれ。」 バスタブに影が見える。ピカードが水中から起こすと、それはトロイだった。 だが皮膚は変色し、指先が丸くなっている。 ピカード:「ディアナ! どうしたんだ!」 データ:「…DNA が、リボサイアティック流動※44を起こしています。遺伝子コードが再配列されて、細胞が突然変異しているんです。」 口をパクパクさせるトロイ。 データ:「はっきり言って、彼女はもう人間ではありません。」 ピカード:「では何だ。」 「呼吸器系の組織は水中でも空気中でも代謝可能ですし、まぶたが内側にもう一枚※45できています。両生類※46と呼べるでしょう。」 「怪我をしてるな。」 「傷口に、クリンゴンの DNA 反応が。唾液ですね。」 「噛みつかれたのか。」 「そのようです。」 トロイは水の中に戻った。 データ:「全身に、バイオスキャンをかけてみましょう。」 ピカード:「…その前に船のコントロールだ。…ブリッジへ行くぞ。」 水中に沈むトロイ。 操舵コンソールに座り、上を向いたまま絶命しているダーン。コンソールはガタガタになっている。 前方のターボリフトのドアを何とか開け、ピカードたちがブリッジに入った。 ダーンの上半身は引き裂かれたようになっている。 データ:「脊柱の上部が 3個所折られています。」 ピカード:「動物にでも襲われたような傷だ。」 「そうですね?」 「DNA の変化は見られるか。」 「…ええ…変化が表面に出る前に死んだようです。」 乱雑になった椅子。コンソールに白い糸のようなものがついている。 データ:「艦長。…現在船の中には 1,011個の生命体が確認できますが、その全てがカウンセラー・トロイと同様に遺伝子の変動を起こしているようです。」 ピカード:「クルー全員がやられたのか。」 「生命体はあちこちに散らばっています。…しかしその中でも特に数が集中しているのが、植物園とアクアラボ※47です。」 「進行方向は何とか修正したが、メインパワーは切れたままだ。パワートランスファー・グリッドが全て破壊されているな。」 動物らしき声が聞こえた。作戦室からだ。 ドアを開けると、リヴィングストンの水槽を叩いている者がいた。水がこぼれている。 振り返った顔は額が隆起し、毛が伸びていた。手の甲も毛だらけだ。 ピカード:「ウィル!」 ライカー※48は髪も伸びていた。破れた制服。 データ:「艦長。…頭蓋骨が 20%分厚くなって、その分脳が縮んでいます。…我々の言葉は理解できないでしょう。」 ピカード:「ほかの方法でコミュニケートできないか。…ウィル、私の言ってることがわかった…」 ライカーはデスクのコンピューターを投げつけてきた。ピカードに飛びかかる。 フェイザーを撃つデータ。2発受けたところで、ようやくライカーは倒れた。 ピカード:「…まるで原生人だ。」 データ:「ええ、DNA を見ても明らかにそのようです。どうやら、クルーはみんな退化していますね。」 |
※42: エンタープライズが逆さまに描写されるのは珍しい例 ※43: シャトル格納庫へ向かって近づいていく描写は初めて ※44: ribocyatic flux ※45: 瞬膜 nictitating membrane ※46: amphibian ※47: aquatic lab ※48: ジョナサン・フレイクスはオニールの舞台「毛猿」を演じた経験もあります |
ライカーにハイポスプレーを打つピカード。「これで後 7時間は、意識が戻らないはずだ。…何かわかったか。」 データ:「ライカー中佐の、DNA 構造を分析しました。…合成 T細胞が、遺伝子コードを侵食しています。…それによって、潜伏していたイントロン※49が活性化したんです。」 「イントロン?」 「遺伝子コードの一つですが、通常は眠っています。つまり生物が進化する過程で起き去られた名残とでも言うか、数百万年も前の動物の肉体や生体の記憶なんですが、今はもう必要なくなっているものです。…例えばカウンセラーのあごの下にできたえらや、その他の両生類的な特徴の発生源は両生類の記憶をもつイントロンなんです。」 「なるほど? ディアナの DNA はイントロンによって太古の配列に組み替えられたわけか。」 「ええ、そうです。その結果カウンセラーは 5,000万年以上も前に絶滅したはずの生命体に生まれ変わってしまったんです。」 「そしてライカーのイントロンは、彼を人類の祖先の姿に戻してしまったんだな?」 「そうです、正確にはアウストラロピテクス※50。…2人の状態はいずれも進化の段階の一つで、さらにさかのぼれば地球上の生命の起源にまで行き着きます。…イントロンは何百万年もの間に地球上に存在した数多くの生物の遺伝データを含んでいますから、クルーの変身パターンもそれぞれ違ってきているのではないかと思われます。」 「…地球人でない者はどうなんだ?」 「ヒューマノイドの遺伝子は、互いによく似ています。ウィルスは、地球人以外にも同じように影響するはずです。…彼らもそれぞれの世界の原始生命体に向かって、退化しているんです。…今の内に言っておきますが、実は艦長もイントロンウィルスに感染しています。」 「…あと、どれくらいで症状が出る。」 「私の計算によると、今から 12時間以内に変身の第一段階の兆候が現れるはずです。」 「…その後はどうなる?」 「恐らく初期の霊長類に向かって、退化していくものと思われます。…キツネザル※51かピグミーマーモセット※52に、似た生き物でしょう。」 「……それじゃ私が天井にブラブラぶら下がり始める前に、何とか手を打とう。どうすれば元に戻せる。」 「わかりません。とりあえず、細胞にスキャンをかけたいんですがメインコンピューターがやられてしまっていますから。…そうだ、私の部屋のコンピューターはプロセッサーとメモリーが独立していますから…使えるはずです。そこから、始めましょう。」 「よし。」 医療室を出る 2人。 自室を開けるデータ。すると、ネコの鳴き声が聞こえた。 データ:「スポットの子供が産まれたようです。」 床に 5匹の子猫がいた。 ピカード:「腹を空かせている。」 データ:「ええ。どうしてスポットは子供の面倒をみないんでしょうか。」 変な鳴き声が聞こえた。 そこにいたのは、イグアナ※53だった。首輪がついたままになっている。 ピカード:「…イントロンウィルスはヒューマノイド以外にも、威力を発揮するようだな※54。」 データ:「そうですね。」 イグアナになったスポットと、子猫を両方調べる。 「どうした。」 「産まれたのは 24時間以内ですが、スポットの変身が始まったのもほぼ同じ頃と思われるんです。」 「すると…スポットは子供を産むのと同時に退化を始めて爬虫類に変わったというわけだな?」 「ええ、そうです。そしてなぜか子猫たちはイントロンウィルスに感染していません。」 コンピューターを起動させるデータ。「理由は不明です。」 「うーん、そういえば聞いたことがあるぞ? 母親の体内には天然の免疫が存在して、胎児がウィルスに感染するのを防いでくれるそうだ。」 「その通りです。…確かに胎盤や妊婦の血液や羊水※55には、ウィルスを濾過する機能があります。」 「スポットの羊水の中の抗体を使って、イントロンウィルスの働きを止められないだろうか。」 「できるかもしれませんが…やはりヒューマノイドのクルーには、ネコよりもヒューマノイドの羊水を使った方が効果的なのでは。」 「妊娠中のクルーは、いるか。」 「オガワが最近妊娠しました。」 「どこにいる。」 「…第17デッキのセクション21 アルファ※56から、コミュニケーター・シグナルが。」 「植物園だ。」 突然船が揺れた。 データ:「プラズマ排出口に異常が見られます。機関室には誰もいませんね、我々で何とかしましょう。」 ほとんど動かない、イグアナのスポット。 機関室に着いたデータ。「ここから遠隔操作で修理します。」 ピカード:「ワープコアの状況を見てくる。」 部屋のあちこちに、クモの巣のような糸が見える。ワープコアにライトを当てるピカード。 すると突然、人影が現れた。驚くピカード。 その人物の顔や手は大きく変化している。 ピカード:「データ!」 相手は逃げていった。 ピカード:「何だあれは。」 データ:「…バークレイ中尉だと思います。部分的に、蛛形類※57に変身したようですね。」 「…クモか。」 「そうです。…どうしました、艦長?」 「…突然…不安が込み上げてきた。…怖い。…たまらなく。…誰かに見られているような感じだ…上手く言えないが。」 「変身の、第一段階に入られたのかもしれません。初期の霊長類は、肉食動物の獲物でした。ですから、身を守るために知覚は研ぎ澄まされていたものと思われます。」 「…その本能に従うとすれば…急いだ方がいい。」 クモの糸を見るデータ。 医療室。 類人猿のような人物がベッドにいる。 データ:「艦長、オガワの胎児は無事のようです。ウィルスの影響を受けていません。…彼女の羊水を雛形にして、レトロウィルス※58を作ってみましょう。それを使ってイントロンを中和すれば、各自の遺伝子パターンは元に戻るはずです。」 ピカード:「…どれくらいかかる。」 「…遺伝物質の隔離にはさほど時間を要さないでしょうが…まず医療室のコンピューターを元に…」 うなり声が聞こえた。医療室のドアが叩かれる。 ピカード:「何だ。…ああ。」 データ:「…巨大です。体重は約200キロ。厚い、外骨格に覆われています。…種族は、クリンゴンです。」 「…ウォーフか!」 ドアの表面がへこんできた。 |
※49: introns イントロン自体は、DNA で不要な塩基配列として実在するもの ※50: アウストラロピテクス類 Australopithecine ※51: lemur ※52: pygmy marmoset ※53: iguana ※54: ピカードは気づかなかったようですが、作戦室にある水槽で飼っているミノカサゴのリヴィングストンは、クラゲのような生き物に退化していました (退化したライカーと会ったシーン)。VOY第94話 "Hope and Fear" 「裏切られたメッセージ」で登場する、クラゲのような貨物にも似ています ※55: amniotic fluid ※56: 「アルファ」は訳出されていません ※57: arachnid ※58: retrovirus |
広がるドアのへこみ。 ピカード:「フェイザーで気絶させよう。」 データ:「今のウォーフに対して、通常のレベル設定で効果があるかどうか。」 叫ぶウォーフ。 ピカード:「…あの声、怒ってるぞ! とても…攻撃的だ。…どうする気だろう。…本能に従ってるのか? …肉食動物の本能に。…我々を、狙っているのか。」 データ:「ほかの部屋や通路にも、クルーはいるはずです。餌を捕まえて食べるだけなら、わざわざドアを破る必要もないでしょう。」 へこみはドア全体にまで広がってきた。 ピカード:「それでは何だ! …肉食動物がうなり声を上げるのは敵を脅すときと…縄張りを確保するとき…ああそれから、発情期に入ったときだな。…発情期か。…確かにウォーフはトロイに噛みついたが急所は外してるし、大事な器官のある場所も避けている。データ、見ろ! この傷口。」 ベッドのトロイを見る。「これは決して、重いダメージを与えようとしてつけられたものではないだろう。」 データ:「何がおっしゃりたいんです。」 「ウォーフがトロイを交配の相手に選んだんじゃないか。」 「カウンセラーを追って、やってきたんですね?」 「…ここを離れてはトロイの身が危うい。…だがレトロウィルスも作らねば。…何とかして、ウォーフの注意を引いて彼女から遠ざけられないか。」 「クリンゴンは非常に生殖本能の強い種族です。何を使って、おびき出せばいいのか。」 「…クリンゴンは嗅覚が強いはずだ。ディアナのフェロモン※59の複製を作って、彼女が医療室からほかの場所に移ったように見せかけてはどうだろう。」 装置を取り出すデータ。「フェロモンを作っている皮脂腺から、血液のサンプルを抜き取ってみましょう。…これに活性溶液を加えれば、フェロモンの代わりになるはずです。」 ピカード:「増幅はできるか。ディアナの体臭より強くなければ効果がない。」 「…できました、これで大丈夫でしょう。早速、ウォーフを誘い出してみます。」 ピカードはハイポスプレーを手にした。「いやいやいや、君はレトロウィルスに取り組め。…私が行く。」 データ:「艦長、あまりにも危険すぎます。もしもウォーフが…」 「議論している暇はない!」 ドア※60を叩き続けるウォーフ※61。身体は岩のように変化している。 別のドア※62から廊下に出るピカード。ハイポスプレーで空中にフェロモンを散布する。 さらに後ろに下がりながらまいていく。臭いを嗅ぐウォーフ。 移動を始めた。走るピカード。 追うウォーフ。声が近づいてきた。 分岐路であちこちにフェロモンを発射するピカード。まいていない方向へ向かう。 ウォーフが来て分岐路で立ち止まった。ターボリフトのドアを開けるピカード。 差し込む光にウォーフが吠えた。その顔は虫のようにも見える。 気づくピカード。中に入った。「17デッキ! 17デッキだ!」 ボタンを押しても反応しない。 近づいてくるウォーフ。 ドアは閉まったが、外から叩かれる。ウォーフは吠え続ける。 ピカードは天井を見た。ハイポスプレーを捨て、両手でぶら下がって登り始める。 オガワに注射するデータ。「コンピューター、遺伝子を再配列してくれ。」 モニターに図が表示される。 はしごを昇るピカード。脇のジェフリーズ・チューブに入った。 その途端、手に液体が降りかかった。フェイザーを落とす。 天井の格子の上にウォーフがいる。叫び、引き返すピカード。 医療室のコンピューター。『遺伝子再配列進行中。DNA 70%、正常。』 データ:「コンピューター、ヌクレオチドの置き換えを 32%増加だ。」 作業が続く。 ジェフリーズ・チューブを進むピカード。ウォーフにやられた手をかばっている。 後ろから追ってくるウォーフ。叫び、ドアを手で開ける。 ピカードは横にあったパネルを、床に置いた。迫るウォーフ。 つながれているケーブルを手にするピカード。バークレイとラフォージが直していた場所だ。 ケーブルからは電流が流れている。それを壁に刺した。 チューブ全体に電気※63が走るが、ピカードはパネルに乗っているため被害はない。 電流が直撃し、身体を震わせるウォーフ。ピカードがケーブルを外すと、ウォーフは倒れた。 オガワは人間の姿に戻っている。 コミュニケーターに触れるデータ。「データより艦長。」 ピカード:「どうした、データ。」 座り込む。 データ:『レトロウィルスが完成しました。ガス状にして、今から全艦に散布してみます。多少時間がかかると思いますが。』 「…わかった。」 データ:「大丈夫ですか?」 ピカード:「ああ、心配はいらん。…かかってくれ。」 ウォーフは倒れたまま、息をついている。 ピカード:「…ウォーフ大尉…目が覚めたら、元に戻っているぞ。」 『航星日誌、補足。データの活躍でクルーは元の姿に戻り、事件の原因も解明した。バークレイのユーロディラン感冒の治療用に、ドクター・クラッシャーが使った人工 T細胞がイントロンウィルスを発生させたのだ。』 医療室。 バークレイ:「じゃ僕の責任だ。」 クラッシャー:「違うわ? 私が悪いの。あの時は気づかなかったけど、実はあなたの遺伝子には人工 T細胞を変化させる性質があったの。眠ってる細胞を一つだけ起こすつもりが、全部起こしちゃったのよ。イントロンまでね。」 「そのイントロンが…」 誰かに笑いかけるバークレイ。「ああ、どうも。僕を退化させた、原因なんですね。」 「あなた一人じゃないわ? T細胞がウィルスとなって、みんなに感染したの。ところで? これは新種の病気なんだけど、新種の病気には第一号の患者の名前をつけるのが慣習なのよ?」 「ええ! それじゃ今度の病気に、僕の名前をつけるんですか…」 「そうよ? 『バークレイ型プロトモルフォーゼ症候群※64』。」 「『バークレイ型プロトモル、モル…』。素敵な響きですね。」 微笑むクラッシャー。 バークレイ:「ありがとう、ドクター。」 出ていく。 近づくトロイに話すクラッシャー。「クモになったり病気に名前がついたり、大活躍だこと?」 トロイ:「私はしばらく何もしたくないわ…※65。」 通常航行中のエンタープライズ。 |
※59: pheromones ※60: 医療室の部屋番号は第12デッキの 1631。また、ウォーフはドアをへこませたはずですが、外側からはそうは見えません ※61: ウォーフの退化した姿のみ、本来のマイケル・ドーンではなくスタントマンのラスティ・マクレノン (Rusty McLennon) が演じています ※62: 部屋番号は第12デッキの 1629、クラッシャーのオフィス。医療室とつながっています ※63: グリフィス天文台のテスラコイルで撮影した素材を使用 ※64: バークレイ型プロトモルフォシス症候群 Barclay's Protomorphosis Syndrome 現代では患者ではなく、最初に研究・発表した医者にちなむのが通例 (ダウン症など) ※65: 原語では「数週間予定を開けておいた方がよさそうだわ」と言っています。これはクラッシャーのセリフを受けて、バークレイのためにカウンセリングする、もしくはバークレイから離れるという意味かもしれません |
感想など
ブラガ脚本らしい突拍子のなさと、最終シーズンに多い「せっかくなのでやってみました」感が上手く合致したエピソード。キャラクターたちは至って真面目で、映画「エイリアン」を意識したと思われる恐怖シーンもありますが、「次は何に退化してるんだろう」というワクワク感も味わえるという絶妙な展開です。本来人間の進化の系譜とは何も関係ないはずのクモになっちゃったり、お決まりの「あっという間に元通り」な超医学といった首を傾げたくなるような描写もありますが、そんなことは抜きにして気楽に楽しむのがいいんでしょうね。 今回も主役ではないものの活躍したバークレイは、5度目にして TNG では最後の登場。撮影中にノースリッジ地震に見舞われましたが、DS9 "Profit and Loss" 「クワークの愛」同様、被害は最小限でした。 |